説明

感光性樹脂組成物及びプリント配線板の製造方法

【課題】一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に硬化物層を形成させるための感光性樹脂組成物であって、優れた解像度、密着性、光感度及びめっき耐性を有するのみならず、剥離性にも優れる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に硬化物層を形成させるために、(A)バインダーポリマーと、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含有し、(B)成分に含有される感光性樹脂組成物中の固形分1kg当たりのエチレン性不飽和基の総モル数が、1.5〜3.5のものである感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板の製造分野では、回路の保護及び接触抵抗の低減等を目的として、回路上に金属めっき加工が行われている。また、携帯電子機器の普及に伴い、使用される実装部品の形態は小型化に有利な Chip Scale Package(CSP)やBall Grid Array(BGA)が急速に増えている。このような実装部品は、実装パッド(はんだパッド)等を除いたプリント配線板の回路導体の全面にソルダーレジストを形成して、パッドの部分等に金属めっき加工を施し、実装部品とめっき加工されたパッドとをはんだボールによって係合させ、配線板と接続させている。金属めっき加工には、良好な金属結合を確保するために、多くの場合、金めっきが用いられている。
【0003】
そして、上記分野における金めっきの方法は、電解めっき法から無電解めっき法へ急速に移行している。これは、プリント配線板の小型化・高密度化が進捗したこと、電極用リード線が不要で均一なめっき膜厚及び平滑な表面が得られること等に基づくものであり、無電解めっきへの移行は携帯電子機器用基板において特に顕著である。
【0004】
近年急速に市場が拡大している携帯電話等の携帯電子機器に用いられる基板に無電解めっき法を用いた場合、落下衝撃や入力キーを押す力による曲げにより、CSPやBGA等の実装部品が基板表面から脱落しやすい等の問題が発生している。その一因は、無電解めっき法によるプリント配線板が、電解めっき法によるものよりも、はんだボール接続信頼性が低いためであると考えられている。
【0005】
このはんだボール接続信頼性を向上させるためには、CSPやBGA等の電子部品のプリント配線板への表面実装を、回路形成がされた基板上に所定のパターンでソルダーレジストを形成させ、その上に感光性樹脂組成物の層を所定のパターンで形成させて、無電解めっきを行った後に、感光性樹脂組成物の層をアルカリ水溶液等を用いて剥離除去する方法により行うことが考えられる。
【0006】
このような感光性樹脂組成物として、以下の特許文献1記載の液状レジストインキ組成物や、以下の特許文献2記載の感光性熱硬化性樹脂組成物が提案されている。
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】特開平1−141904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1,2に記載されている感光性樹脂組成物について詳細に検討を行った結果、該感光性樹脂組成物は、従来の回路形成がされていないフラットな基板上に直接適用するものであることから、良好な光感度及び解像度を得るための従来の感光性樹脂組成物の組成をそのまま適用することができないことを見出した。すなわち、本発明者らは、上述のプリント配線板への電子部品の実装方法では、既にソルダーレジストが形成され表面に凹凸のある配線基板の該表面上に感光性樹脂組成物が適用されるため、その解像度、密着性、光感度及びめっき耐性等の特性が低下する傾向にあることが判明した。
【0008】
更に詳細な検討を行ったところ、該感光性樹脂組成物の上記の密着性等の特性を維持するためにソルダーレジストとの密着性を向上させた場合、アルカリ水溶液を用いても該感光性樹脂組成物をソルダーレジストから剥離除去できなくなることも確認された。
【0009】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に硬化物層を形成させるための感光性樹脂組成物であって、優れた解像度、密着性、光感度及びめっき耐性を有するのみならず、剥離性にも優れる感光性樹脂組成物及びそれを用いたプリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上記感光性樹脂組成物に含有される特定の化合物中の特定の基が、該感光樹脂組成物の上記密着性等に影響を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に硬化物層を形成させるためのものであって、(A)バインダーポリマーと、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含有しており、当該感光性樹脂組成物中の固形分1kg当たりの前記(B)成分に含まれるエチレン性不飽和基の総モル数が、1.5〜3.5であることを特徴とする。
【0012】
一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の表面には、凹凸が存在していることに加え、感光性樹脂組成物が接触するのは表面樹脂層である。よって、回路形成がなされていない状態の回路形成用基板の導体層に積層させる従来の感光性樹脂組成物層を回路形成基板に直接適用することはできない。しかしながら、本発明者らは、感光性樹脂組成物に含有される光重合性化合物中のエチレン性不飽和基の数を、上述のように調整することにより、表面樹脂層を備えており且つ表面凹凸を有する回路形成済基板を用いた場合であっても、解像度、密着性、光感度及びめっき耐性のいずれをも向上させることが可能になり、更には優れた剥離性をも有することを新たに見出したものである。
【0013】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分として、ビスフェノールA系ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド,プロピレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の密着性等を一層向上させることができる。
【0014】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(D)着色剤をも含有しており、該(D)成分として、下記一般式(1);
【化2】



で表される化合物を含有することが好ましい。なお、式中R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜18のカルボキシレート基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数2〜18のアルケニルオキシ基、炭素数2〜18のアルキニルオキシ基、炭素数2〜18のアリルオキシ基、炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数1〜18のアルキルスルホニル基又は炭素数1〜18のアルキルスルフィニル基を示す。これにより、該感光性樹脂組成物はめっき浴の汚染を抑制することもできる。
【0015】
また本発明は、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の表面樹脂層上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなり且つ一定のパターンを有する硬化物層を形成し、回路形成済基板上に表面樹脂層及び硬化物層をこの順に備えた積層基板を得る第1の工程と、該積層基板に対して無電解めっきを行う第2の工程と、該無電解めっきが施された積層基板から、一定のパターンを有する硬化物層を除去する第3の工程と、を含むプリント配線板の製造方法であって、該感光性樹脂組成物が、本発明の感光性樹脂組成物であることを特徴とする。
【0016】
さらに、第2の工程を実施した後に、表面樹脂層を硬化させる第4の工程を含むことが好ましく、該第2の工程が、積層基板に対して無電解ニッケル−金めっきを行う工程であると更に好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に硬化物層を形成させるための感光性樹脂組成物であって、優れた解像度、密着性、光感度及びめっき耐性を有するのみならず、剥離性にも優れた感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述したように、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板のその表面樹脂層上に硬化物層を形成させるためのものであって、(A)バインダーポリマーと、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤とを含有しており、(B)成分に含有される該感光性樹脂組成物中の固形分1kg当たりのエチレン性不飽和基の総モル数が、1.5〜3.5のものである。
【0020】
ここで、「回路形成済基板」とは、絶縁体層とその上に形成された導体層を備える基板であって、該導体層が所定形状の回路を形成しているものをいう。また、「一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板」とは、回路形成済基板の回路形成がされている面上に表面樹脂層を備え、該層が一定のパターンを有するものをいう。さらに、「表面樹脂層」とは回路形成済基板上に形成された樹脂層であり、典型的にはエポキシ樹脂等の強靭な硬化性樹脂からなるものである。
【0021】
((A)成分)
(A)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらのバインダーポリマーは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
バインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有した単量体を重合(ラジカル重合等)して得られたものであることが好ましい。エチレン性不飽和二重結合を有した単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、等のマレイン酸系単量体が挙げられ、これら以外にも、フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸が例示可能である。
【0023】
なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸をいい、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートをいう。
【0024】
バインダーポリマーは、アルカリ溶液を用いてアルカリ現像を行う場合の現像性の見地から、カルボキシル基を有するポリマーの1種又は2種以上からなることが好ましい。
【0025】
可撓性の見地からは、上記カルボキシル基を有するポリマーは、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれらと共重合し得るモノマー(以下「共重合モノマー」という。)との共重合体であることが好ましい。共重合モノマーとしては、可撓性を更に向上させるためにスチレン及び/又はスチレン誘導体が好ましく、スチレンがより好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとスチレン及び/又はスチレン誘導体との共重合体においては、スチレン及び/又はスチレン誘導体の合計の重量比率は、重合性単量体の全重量を基準として、3〜30重量%であることが好ましく、4〜28重量%であることがより好ましく、5〜27重量%であることが特に好ましい。スチレン及び/又はスチレン誘導体の含有量の総和が3重量%未満では密着性が不十分となる傾向にあり、また、30重量%を超えると剥離片が大きくなって剥離時間が長くなる傾向がある。なお、ここでの「重量%」は質量基準と同等とする(以下同様)。
【0027】
また、(A)成分の酸価は、30〜200mgKOH/gであることが好ましく、45〜150mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では現像時間が長くなる傾向があり、200mgKOH/gを超えると光硬化した感光性樹脂組成物の耐現像液性が低下する傾向がある。
【0028】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる(標準ポリスチレンを用いた検量線による換算)。この測定法によれば、バインダーポリマーのMwは、20000〜300000が好ましく、25000〜150000がより好ましい。Mwが20000未満では耐現像液性が低下する傾向にあり、300000を超えると現像時間が長くなる傾向にある。またバインダーポリマーの分散度(Mw/Mn)は1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.5であることがより好ましい。分散度が3.0を超えると接着性及び解像度が低下する傾向にある。
【0029】
以上説明したバインダーポリマーは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。
【0030】
((B)成分)
(B)成分は、上述のように、分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物であって、(B)成分に含有される感光性樹脂組成物中の固形分1kg当たりのエチレン性不飽和基の総モル数が、1.5〜3.5のものである。
【0031】
ここで、「感光性樹脂組成物中の固形分」とは、一定のパターンが形成された表面樹脂層を備える回路形成済基板に感光性樹脂組成物を塗布するために溶剤に溶解させる固体状の溶質のことをいう。
【0032】
また、(B)成分に含有されるエチレン性不飽和基は、光重合の際に別の光重合性化合物との結合に関与するものである。従って、例えば光重合性化合物がビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物である場合、該化合物1分子当たりの「エチレン性不飽和基」の数は2となる。
【0033】
エチレン性不飽和基の総モル数が上述の数値範囲である光重合性化合物を用いることにより、表面樹脂層を備え、表面凹凸を有する回路形成済基板を用いた場合であっても、解像度、密着性、光感度及びめっき耐性のいずれをも向上させることが可能になり、更には優れた剥離性(アルカリ剥離性)をも有することが可能となる。
【0034】
エチレン性不飽和基の総モル数が1.5未満であると、特にめっき層の一部がその下地層と吸着しない傾向にあり、3.5を越えるとアルカリ水溶液による剥離が困難になる傾向にあり、生産性が低下してしまう。また、剥離残りが発生しやすく、プリント配線板の品質不良の原因となってしまう。このような観点及び本発明の効果を一層発揮する観点から、エチレン性不飽和基の総モル数は1.5〜2.5であると好ましく、1.6〜2.0であるとより好ましい。
【0035】
(B)成分である光重合化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマーが挙げられ、これら以外にも、ノニルフェノキシポリオキシエチレンアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β’−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示可能である。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14であり、プロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。ここで「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。そして「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(−CH2−CH2−O−)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(−CH2−CH2−CH2−O−)のブロック構造を有することを意味する。
【0037】
分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
そして、上記のノニルフェノキシポリエチレンオキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシウンデカエチレンオキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
これらのなかでも、(B)成分は、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましく、該ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物は下記一般式(2);
【化3】



で表される化合物であることが好ましい。なお、式中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、X及びYはそれぞれ独立に炭素数2〜6のアルキレン基を示し、p及びqはp+q=4〜40となるように選ばれる正の整数を示す。さらに、R11及びR12はいずれもメチル基であることが好ましく、X及びYはいずれもエチレン基であることが好ましく、p及びqはp+q=10〜40となるように選ばれる正の整数であることが好ましい。
【0040】
ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、(B)成分のMwは、GPCに基づき、1000以上であることが好ましく、1500以上であることがより好ましく、2000以上であることが更に好ましく、2500以上であることが特に好ましい。また、Mwの上限は5000であることが好ましい。Mwが1000未満では剥離性が低下する傾向があり、5000を超えると感光性樹脂組成物の粘度が上昇して作業性が低下する傾向がある。
【0042】
((C)成分)
(C)成分としては、例えば、ベンゾフェノン;N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;アルキルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
これらのなかでも、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体及びN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンがより好ましい。
【0044】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体は、例えば、下記一般式(3);
【化4】



で表される化合物である。なお、式中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、フェニル基又は置換フェニル基を示す。
【0045】
好適なトリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−フルオロフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロ−p−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジブロモフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−クロロナフチル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(m,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,2’−ビス(p−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(p−ヨードフェニル)イミダゾール二量体、2,2’−ビス(m−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルイミダゾール二量体、2,2’−ビス(m,p−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルイミダゾール二量体等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
N,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンは、例えば、下記一般式(4);
【化5】



で表される化合物である。ここで、式中、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立にアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)を示す。
【0047】
好適なN,N’−テトラアルキル−4,4’−ジアミノベンゾフェノンとしては、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0048】
((D)成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、着色剤を(D)成分として含有してもよい。この(D)成分である着色剤は、感光時のハレーションを十分に防止すべく、色相を安定化させるために感光性樹脂組成物に添加されるものである。
【0049】
(D)成分としては、N−[4−[[4−(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチル−エタナミニウムサルフェート(ダイヤモンドグリーン)、N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)フェニルメチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチル−エタナミニウムサルフェート、マラカイトグリーン、エチルバイオレット、アシッドマゼンダ等のトリフェニルメタン系染料、スチリール系染料、メタロシアニン系染料、オキソノール系染料等が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
これらのうち、無電解めっき汚染性に優れる観点から、下記一般式(1);
【化6】



で表される化合物を含有することが好ましい。なお、式中R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基,炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜18のカルボキシレート基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数2〜18のアルケニルオキシ基、炭素数2〜18のアルキニルオキシ基、炭素数2〜18のアリルオキシ基、炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数1〜18のアルキルスルホニル基又は炭素数1〜18のアルキルスルフィニル基を示す。
【0051】
上記R1、R2、R3及びR4は、一般的染料として工業的に入手可能である観点から、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基,炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数1〜18のアルキルスルホニル基、炭素数1〜18のカルボキシレート基であることが好ましく、炭素数1〜18のアルキル基,炭素数1〜18のアルコキシル基であることがより好ましく、同一又は異なる炭素数1〜18のアルキル基であることが更に好ましく、同一又は異なる炭素数1〜8のアルキル基であることが特に好ましく、同一の炭素数1〜8のアルキル基であることが更に一層好ましい。
【0052】
上記一般式(2)で表される化合物としては、例えばR1、R2、R3及びR4が全てエチル基である4−(p−(ジエチルアミノ)−α−フェニルベンジリデン)−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデンサルフェート(N−[4−[[4−(ジエチルアミノ)フェニル]フェニルメチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチル−エタナミニウムサルフェート)や、4−(p−(ジメチルアミノ)−α−フェニルベンジリデン)−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデンサルフェート(N−[4−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]フェニルメチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチル−エタナミニウムサルフェート)が挙げられる。これらは1種類を単独で或いは2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかで、4−(p−(ジエチルアミノ)−α−フェニルベンジリデン)−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデンサルフェートはベーシックグリーン1又はブリリアントグリーンとして知られており、めっき汚染性が低く容易に入手可能なことから極めて好ましい。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物においては、(A)成分40〜80重量部と(B)成分20〜60重量部との合計100重量部に対する、(C)成分及び(D)成分の配合量を、それぞれ、0.01〜20重量部及び0.001〜0.5重量部とすることが好ましく、それぞれ、0.05〜10重量部及び0.005〜0.2重量部とすることがより好ましい。また、(B)成分の総重量を基準としたビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物の配合量は、3〜90重量%であることが好ましい。
【0054】
(D)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の全重量を基準として0.001〜0.5重量%であることが好ましく、0.005〜0.2重量%であることがより好ましい。(D)成分の含有量を上記範囲内にすることにより、高い解像度、密着性及び光感度を保ったまま、めっきの際の感光性樹脂組成物によるめっき浴汚染を、大幅に低減することが可能となる。
【0055】
また、(C)成分として4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及び2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体を含み、これらを含んだ上で(D)成分にダイヤモンドグリーン、マラカイトグリーン及びビクトリアピュアブルーの少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0056】
なお、感光性樹脂組成物には、(A)〜(D)成分以外の成分として、必要に応じて、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、はく離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを更に含有することができる。
【0057】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解する。その際、固形分30〜60%程度の溶液とすることもできる。
【0058】
本発明の感光性樹脂組成物は感光性エレメントに構成されることも可能である。感光性エレメントは、支持体と、支持体上に形成された上記本発明の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層と、を備えるものである。なお、感光性樹脂組成物層上には、層を被覆する保護フィルムを更に備えていてもよい。
【0059】
感光性樹脂組成物層は、本発明の感光性樹脂組成物を上述したような溶剤に溶解して固形分30〜60重量%程度の溶液とした後に、係る溶液を支持体上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等の公知の方法で行うことができ、乾燥は70〜150℃、5〜30分間程度で行うことができる。また、感光性樹脂組成物中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2重量%以下とすることが好ましい。
【0060】
感光性樹脂組成物層の厚さは乾燥後の厚さで、1〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。この厚さが1μm未満では工業的に塗工困難となり、100μmを超えると接着力、解像度が低下する傾向がある。
【0061】
支持体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。厚さは5〜25μmであることが好ましく、8〜20μmであることがより好ましく、10〜20μmであることが特に好ましい。厚さが5μm未満では現像前の支持体はく離の際に、支持体が破れやすくなる傾向があり、25μmを超えると解像度が低下する傾向がある。
【0062】
保護フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。厚さは5〜30μmであることが好ましく、10〜28μmであることがより好ましく、15〜25μmであることが特に好ましい。厚さが5μm未満ではラミネートの際、保護フィルムが破れやすくなる傾向があり、30μmを超えると廉価性に劣る傾向がある。
【0063】
本発明の感光性エレメントは、クッション層、接着層、光吸収層、ガスバリア層等の中間層や保護層等を更に有していてもよい。また得られた感光性エレメントはシート状、又は巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0064】
次に、本発明のプリント配線板の製造方法について説明する。
【0065】
本発明のプリント配線板の製造方法は、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の表面樹脂層上に、上述した本発明の感光性樹脂組成物の硬化物からなる、一定のパターンを有する硬化物層を形成し、回路形成済基板上に表面樹脂層及び硬化物層をこの順に備えた積層基板を得る第1の工程と、積層基板に対して無電解めっきを行う第2の工程と、無電解めっきがされた積層基板から、一定のパターンを有する硬化物層を除去する第3の工程とを含んでいる。
【0066】
上記方法では第1の工程において、表面樹脂層上に感光性樹脂組成物を積層し、該組成物の所定部分に活性光線を照射して硬化部を形成せしめ、次いで、該硬化部以外の部分を除去することにより、一定のパターンを有する硬化物層を形成することもできる。
【0067】
また、上記の第1の工程において、一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に、上述した本発明の感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を積層し、該層の所定部分に活性光線を照射して硬化物層を形成せしめ、次いで、該硬化物層以外の部分を除去することにより一定のパターンを有する硬化物層を形成し、回路形成済基板上に表面樹脂層及び硬化物層をこの順に備えた積層基板を得るようにしてもよい。かかる場合においては、感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を約70〜150℃に加熱しながら、圧力約0.1〜1MPa(約1〜10kgf/cm2)で加熱圧着して、積層することが好ましく、かかる積層は減圧下で行ってもよい。
【0068】
上記製造方法においては、表面樹脂層及び感光性樹脂組成物層のいずれもがパターニングされるが、両層のパターニングは、ネガマスク又はポジマスクを介して活性光線(紫外線等)を照射し、照射後除去すべき部分を公知の方法で除去することにより形成することが好ましい。感光性樹脂組成物については、上記マスクを用い紫外線で硬化層を形成した後に、未硬化部分を、例えば、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液等のアルカリ性水溶液(pHは9〜11が好ましく、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等が添加されていてもよい。)により除去(現像)することができる。現像後は、約60〜250℃の加熱及び/又は約0.2〜10J/cm2の露光により、一定のパターンを有する感光性樹脂組成物層(硬化物層)を、後硬化させることが好ましい。これにより、該硬化物層はより安定化される。
【0069】
パターニングの結果、回路形成済基板における回路(導体層)の少なくとも一部を露出させ、無電解めっきにより回路(導体層)上にめっき層の形成を行う。無電解めっきとしては、無電解ニッケルめっきが挙げられ、無電解ニッケルめっき上には、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、銅、スズ等の金属めっきを行ってもよい。これらのなかで、無電解ニッケル上に金めっきを施す無電解ニッケル−金めっきが、めっきの信頼性等の観点から好ましい。
【0070】
無電解めっきの後は、一定のパターンを有する感光性樹脂組成物層(硬化物層)を除去する。除去に当たっては、例えば、現像に用いたアルカリ性水溶液より更に強アルカリ性の水溶液を用いることが好ましい。強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1〜10重量%水酸化ナトリウム水溶液、1〜10重量%水酸化カリウム水溶液、1〜50重量%モノエタノールアミン水溶液、1〜50重量%トリエタノールアミン水溶液等が挙げられ、除去の方法としては、例えば、室温〜70℃の範囲で、浸漬やスプレーを行う方法が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
まず表1に示す材料を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0073】
【表1】



【0074】
なお、表1において、*1は、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業株式会社製)、*2は、2,2−ビス(4−(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業株式会社製)、*3は、PO/EO変性ウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製)、*4は、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(三洋化成工業株式会社製)、*5は、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート(日立化成工業株式会社製)、*6は、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレングリコール鎖の繰り返し単位は6〜7、新中村化学工業株式会社製)、*7は、イソシアヌレート変性トリアクリレート(新中村化学工業株式会社製)、*8は、4−(p−(ジエチルアミノ)−α−フェニルベンジリデン)−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデンサルフェート(富士化成貿易株式会社製)、*9は、N−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)フェニルメチレン−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン)−N−メチルメタミニウム蓚酸塩(保土谷化学工業株式会社製)、*10は、アイゼン ビクトリア ピュアブルーBOH(商品名、保土谷化学工業株式会社製)をそれぞれ示す。さらに、表1中の数値の単位は重量部である。
【0075】
次に、得られた感光性樹脂組成物の溶液を、寸法(幅380mm×厚さ20μm)のポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という。)上に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布した後、熱風対流式乾燥機を用いて100℃で乾燥し、感光性樹脂組成物層を形成させた。乾燥後、厚さ35μmのポリエチレンフィルムで感光性樹脂組成物層を被覆し、ロールで加圧して、感光性エレメントを得た。
【0076】
(回路形成済基板の作製)
縦12.5cm×横20cm×厚さ1.6mmの両面銅張りエポキシ積層板(日立化成工業(株)製、MCL−E−61)の片面の銅箔表面に周縁部1cmを残してエッチングレジストを形成し、不要な銅箔をエッチング除去し、金属端子(パッド)や配線の回路を形成した後、残余のエッチングレジストをはく離して、回路形成済基板を得た。裏面は全面エッチングし、ガラスエポキシ表面が露出した状態にした。
【0077】
(表面樹脂層の形成)
得られた回路形成済基板の回路面に、フォトレジスト(太陽インキ(株)製、PSR−4000)を、周縁部1cm全面に塗布し、80℃で30分乾燥した。その後、フォトツールを介し、露光機((株)オーク製作所製、HMW−590)を用いて、めっきする実装パッド部を除く全面を露光した。未露光部分を1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(30℃)でスプレー現像し、パッド部上のフォトレジストを除去して、レジストパターンを形成し、その後、150℃で1時間加熱することにより熱硬化させ、回路形成済基板上に表面樹脂層(ソルダーレジスト)を形成した。
【0078】
(感光性樹脂組成物層の形成)
表面樹脂層を備えた回路形成済基板の両面に、先に得られた実施例1〜6及び比較例1〜2にかかる感光性エレメントにおける感光性樹脂組成物層を、圧力0.4MPa、温度100℃、ラミネート速度1.5m/分でラミネートし、積層した。積層された感光性樹脂組成物層の実装パッドを除く全面を露光し、現像してレジストパターンを形成した。その後、150℃で1時間加熱することにより感光性樹脂組成物層を熱硬化させ、回路形成済基板上に表面樹脂層及び硬化物層(硬化した感光性樹脂組成物層)がこの順に形成されパターニングがされた積層基板を得た。
【0079】
以上により得られた感光性エレメント及び積層基板について、以下の方法により特性評価を行った。
【0080】
(めっき耐性)
得られた積層基板に関し、以下の処理を、連続して行った。
(a)脱脂処理
Z−200(株式会社ワールドメタル製、商品名)に、50℃で、1分間浸漬処理した。
(b)水洗
室温で、2分間、流水で洗浄した。
(c)ソフトエッチング
100g/Lの過硫酸アンモニウム浴に、室温で、1分間浸漬処理した。
(d)水洗
室温で、2分間、流水で洗浄した。
(e)酸洗処理
10%硫酸溶液に、室温で、1分間浸漬処理した。
(f)水洗
室温で、2分間、流水で洗浄した。
(g)活性化
無電解めっき用触媒溶液SA−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に、室温で、5分間浸漬処理した。
(h)水洗
室温で、2分間、流水で洗浄した。
(i)無電解ニッケルめっき
Ni−Pめっき(P含有量7%)液であるNIPS−100(日立化成工業株式会社製、商品名)に、95℃で、20分間浸漬処理した。
(j)水洗
室温で、2分間、流水で洗浄した。
(k)置換型無電解金めっき
置換型無電解金めっき液オーロテックSF(アトテック株式会社製、商品名)に、85℃で、10分間浸漬処理した。
(l)後処理
めっき終了後、水洗し、85℃で15分間乾燥した。
【0081】
こうして得られためっき加工された積層基板について、視認で、硬化物層(硬化した感光性樹脂組成物層)の破れの有無、特にパッド部周囲を調べた。
【0082】
(剥離特性)
得られた積層基板を、予め50℃に加温した3%の水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、硬化物層(硬化した感光性樹脂組成物層)が剥離するのに要した時間と、剥離残りの有無を観察した。
【0083】
上記試験方法により得られた結果を以下の表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
なお、表2において、「エチレン性不飽和基モル数」とは感光性樹脂組成物中の固形分1kg当たりの(B)成分に含有されるエチレン性不飽和基の総モル数のことをいう。また、めっき耐性について、「○」は硬化物層の破れが認められなかったことを意味し、「×」は硬化物層の破れが認められたことを意味する。さらに、剥離特性について、「○」は剥離残りが認められなかったことを意味し、「×」は剥離残りが認められたことを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に硬化物層を形成させるための感光性樹脂組成物であって、
(A)バインダーポリマーと、(B)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有しており、
前記(B)成分は、該(B)成分に含まれる感光性樹脂組成物中の固形分1kg当たりのエチレン性不飽和基の総モル数が、1.5〜3.5のものであることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)成分として、ビスフェノールA系ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド,プロピレンオキシド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(D)着色剤を含有しており、該(D)成分として、下記一般式(1);
【化1】


(式中R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、アリール基、炭素数1〜18のカルボキシレート基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数2〜18のアルケニルオキシ基、炭素数2〜18のアルキニルオキシ基、炭素数2〜18のアリルオキシ基、炭素数2〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜18のアルキルチオ基、炭素数1〜18のアルキルスルホニル基又は炭素数1〜18のアルキルスルフィニル基を示す。)
で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
一定のパターンを有する表面樹脂層を備える回路形成済基板の前記表面樹脂層上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなり且つ一定のパターンを有する硬化物層を形成し、前記回路形成済基板上に前記表面樹脂層及び前記硬化物層をこの順に備えた積層基板を得る第1の工程と、
前記積層基板に対して無電解めっきを行う第2の工程と、
前記無電解めっきが施された前記積層基板から、前記一定のパターンを有する硬化物層を除去する第3の工程と、を含むプリント配線板の製造方法であって、
前記感光性樹脂組成物として請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程を実施した後に、前記表面樹脂層を硬化させる第4の工程を含むことを特徴とする請求項4記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程が、前記積層基板に対して無電解ニッケル−金めっきを行う工程であることを特徴とする請求項4又は5記載のプリント配線板の製造方法。


【公開番号】特開2010−217903(P2010−217903A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96491(P2010−96491)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【分割の表示】特願2003−273584(P2003−273584)の分割
【原出願日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】