説明

感光性樹脂組成物

【課題】 アルカリ現像性が良好であり、かつ、感度および解像度に優れたフォトスペーサ用感光性樹脂組成物感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 芳香族エポキシ樹脂を変性してなる(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、ヒンダードフェノール構造を有する化合物(C)、及び光ラジカル重合開始剤(D)を含有するアルカリ現像可能なフォトスペーサ用感光性樹脂組成物(Q)を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により硬化し、アルカリ現像可能なフォトスペーサ用感光性樹脂組成物と、該組成物を用いて形成した液晶セル内のギャップ保持のために設けられるフォトスペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置が脚光をあびており、その製造プロセスにおいて感光性樹脂が多用されている。例えば、カラーフィルタ上の画素に相当する部分は、着色顔料分散レジストであり、ブラックマトリックスにもレジストが使用されている。そのような部分に使用されるレジストとしては、マスクを通して感光すると、光が照射された部分のみが固まり、現像により未露光部が剥離されるいわゆるネガ型レジストが多用されている。
【0003】
さて、液晶表示装置技術においては、カラーフィルタ側基板と薄膜トランジスタ(TFT)側基板の両基板間に液晶層の厚みを保つために、スペーサと呼ばれるガラス又は樹脂製の透明球状体粒子(ビーズ)をセル内部に散布している。このスペーサは透明な粒子であることから、画素内に液晶と一諸にスペーサが入っていると、黒色表示時にスペーサ粒子を介して光が漏れてしまい、また、液晶が封入されている両基板間にスペーサ粒子が存在することによって、スペーサ粒子近傍の液晶分子の配向が乱され、この部分で光漏れを生じ、液晶表示装置のコントラストが低下し表示品質に悪影響を及ぼすといった問題を有している。また、例えば、強誘電性液晶のように、両基板間の間隔(液晶層の厚み)が狭い液晶表示装置においては、このスペーサ粒子を用いて両基板間の間隔を均一に精度よく保ことは困難なことである。
【0004】
これに対しては、例えば、感光性樹脂を用い、部分的なパターン露光、現像というフォトリソグラフィー法により、所望の位置、例えば、画素間に位置する格子パターン状のブラックマトリクス上に、柱状の樹脂製スペーサを形成する方法が提案され、実用化されている。このようなスペーサを以下フォトスペーサという。このフォトスペーサは、画素を避けた位置に形成できるので、上記の方法を用いた場合のように表示品質に悪影響を及ぼすことがなくなり、表示品質の向上が望める。
【0005】
一方、近年、LCD(Liquid Crystal Display)の高画質化の観点から前記ブラックマトリクスの径が小さくなるのに伴い、表示品質を保持するためにフォトスペーサの更なる高精細化が要求されてきている。
【0006】
しかしながら、これまで用いられている感光性樹脂組成物の場合は、パターン形成の際に、露光時の照射光の干渉などによる光線の広がりにより、硬化すべき範囲の周辺までが少なからず硬化してしまって、高解像度のフォトスペーサーが得られないという課題があった。これに対する対策として、光の吸収を抑制する目的で脂環式化合物を使用する(特許文献−1)、特定の光ラジカル重合開始剤種を使用する(特許文献−2)等の工夫が検討されているが、感度が低下してしまうという課題があった。
【特許文献−1】特開平06−138659
【特許文献−2】特開2002−202597
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、アルカリ現像性が良好であり、高解像度と感度を両立する感光性樹脂組成物を提供し、これにより高精細なフォトスペーサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、芳香族エポキシ樹脂を変性してなる(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、ヒンダードフェノール構造を有する化合物(C)、及び光ラジカル重合開始剤(D)を含有するアルカリ現像可能なフォトスペーサ用感光性樹脂組成物(Q);及びこれを硬化させて形成された液晶セル内のギャップ保持のために設けられたフォトスペーサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感光性樹脂組成物及びそれから得られたフォトスペーサは、以下の効果を奏する。
・感光性樹脂組成物はアルカリ現像性に優れている。
・感光性樹脂組成物は感度に優れている。
・感光性樹脂組成物は解像度に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、芳香族エポキシ樹脂を変性してなる(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する親水性樹脂(A)[以下において、単に(A)と表記する場合がある]、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)[以下において、単に(B)と表記する場合がある]、ヒンダードフェノール構造を有する化合物(C)[以下において、単に化合物(C)、もしくは単に(C)と表記する場合がある]および、光ラジカル重合開始剤(D)[以下において、単に(D)と表記する場合がある]を含有し、アルカリ現像性に優れ、かつ感度および解像度に優れるフォトスペーサを提供するものである。
なお、上記及び以下において、例えば「(メタ)アクリレート」などの(メタ)を付した表現は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」などを意味する。
【0011】
以下において、本発明の感光性樹脂組成物の必須構成成分である(A)〜(D)について、順に説明する。
【0012】
本発明における芳香族エポキシ樹脂を変性してなる(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する親水性樹脂(A)における親水性の指標はHLBにより規定され、一般にこの数値が大きいほど親水性が高いことを示す。
(A)のHLB値は、(A)の樹脂骨格(例えば、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂など)によって好ましい範囲が異なるが、好ましくは4〜19、さらに好ましくは5〜18、特に好ましくは6〜17である。4以上であればフォトスペーサの現像を行う際に、現像性がさらに良好であり、19以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好である。なお、本発明におけるHLBは、小田法によるHLB値であり、親水性−疎水性バランス値のことであり、有機化合物の有機性の値と無機性の値との比率から計算することができる。
HLB≒10×無機性/有機性
また、無機性の値及び有機性の値は、文献「界面活性剤の合成とその応用」(槇書店発行、小田、寺村著)の501頁;または、「新・界面活性剤入門」(藤本武彦著、三洋化成工業株式会社発行)の198頁に詳しく記載されている。
【0013】
また、(A)の溶解度パラメーター(以下、SP値という。)は、好ましくは7〜14、さらに好ましくは8〜13、特に好ましくは11〜13である。7以上であるとさらに現像性が良好に発揮でき、14以下であると硬化物の耐水性がさらに良好である。
【0014】
本発明におけるSP値は、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE, FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(147〜154頁)」
SP値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(分散性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
【0015】
(A)は、現像性の観点からカルボキシル基を有する。カルボキシル基の含有量は酸価で示される。
(A)の酸価は、好ましくは10〜500mgKOH/gである。10mgKOH/g以上であると、現像性がさらに良好に発揮されやすく、500mgKOH/g以下であれば硬化物の耐水性がさらに良好に発揮できる。
【0016】
本発明における酸価はアルカリ性滴定溶液を用いた指示薬滴定法により測定できる。
方法は以下の通りである。
(i)試料約1gを精秤して三角フラスコに入れ、続いてアセトンを加え溶解する。
(ii)フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液で滴定する。指示薬の微紅色が30秒続いたときを中和の終点とする。
(iii)次式を用いて決定する。
酸価(KOHmg/g)=(A×f×5.61)/S
ただし、A:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液のmL数。
f:0.1mol/L水酸化カリウム滴定用溶液の力価
S:試料採取量(g)
【0017】
(A)の好ましい製造法は、芳香族エポキシ樹脂(A0)(以下、単に(A0)と表記する場合がある)中のエポキシ基に、(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸を反応させてエポキシ基を開環させて水酸基を生成させ、該水酸基の一部に多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物(e)(以下、単に(e)と表記する場合がある)を反応させる方法である。
【0018】
(A0)としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。
(A0)のうち好ましいのは硬化性の観点からフェノールノボラックエポキシ樹脂およびクレゾールノボラックエポキシ樹脂である。
(A)の製造に使用される(メタ)アクリロイル基含有モノカルボン酸としては、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0019】
(A)の製造に使用される多価カルボン酸および多価カルボン酸無水物(e)としては、不飽和多価カルボン酸(例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸およびシトラコン酸など)およびそれらの無水物(例えば、無水マレイン酸など)、並びに飽和多価(2〜6価)カルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸、ドデカン二酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸およびオクタデセニルコハク酸などの脂肪族飽和多価カルボン酸;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸およびナフタレンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸)およびそれらの無水物(例えば、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、ペンタデセニル無水コハク酸およびオクタデセニル無水コハク酸などの脂肪族飽和多価カルボン酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物およびナフタレンテトラカルボン 酸無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物)が挙げられる。好ましいのは、反応性及び現像性の観点から飽和多価カルボン酸無水物である。
【0020】
(A)の製造における、(メタ)アクリル酸/(A0)の仕込み重量比は、好ましいのは(A)の(メタ)アクリロイル基の濃度が1.0mmol/g以上となるような(メタ)アクリル酸の仕込み重量比である。アクリル酸/(A0)の仕込み重量比は上記の観点から、好ましくは0.072以上/1、さらに好ましくは0.079〜0.72/1である。また、メタクリル酸の重量比は上記の観点から、好ましくは0.092以上/1、さらに好ましくは0.10〜0.092/1である。
【0021】
本発明における(メタ)アクリロイル基の濃度は、二重結合へのアミンの付加反応(マイケル付加)を利用した滴定法により測定できる。方法は以下の通りである。
(i)試料約1gを精秤して三角フラスコに入れ、続いてアセトン約10mlを加え溶解する。
(ii)モルホリン標準液[モルホリンとメタノールを1:4(容量比)で混合したもの]10mlを加え、さらに50%酢酸標準液[酢酸とイオン交換水を1:1(容量比)で混合したもの]1.5mlを加えてよく振とうした後、室温で15分間放置する。
(iii)アセトニトリル15ml及び無水酢酸10mlを上記三角フラスコに加えよく振とうする。
(iv)記録式自動滴定装置を用いて、0.5mol/Lの塩酸・メタノール滴定用溶液を用いて滴定する。
(v)同時に空試験を実施し、下式にて決定する。
二重結合濃度(mmol/g) = f × (A−B) / 2S
ただし、A:試料の滴定に要した0.5mol/L塩酸・メタノール滴定用溶液のmL数。
B:空試験に要した0.5mol/L塩酸・メタノール滴定用溶液のmL数。
f:0.5mol/L塩酸・メタノール滴定用溶液の力価。
S:試料採取量(g)
【0022】
(A0)と(メタ)アクリル酸の反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは5〜30時間である。また、必要により触媒(例えば、トリフェニルホスフィンなど)およびラジカル重合禁止剤(ヒドロキノン、p−メトキシフェノールなど)を用いてもよい。触媒およびラジカル重合禁止剤の使用量は(メタ)アクリル酸の重量に基づいて、通常0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
また、(A0)の(メタ)アクリル酸付加物の重量に対する、多価カルボン酸もしくは多価カルボン酸無水物(e)の仕込み当量は、(A)の酸価が、好ましくは10〜500mgKOH/gとなるような仕込み当量であり、例えば、(e)が2価カルボン酸もしくはその無水物である場合、[(e)の仕込み当量(ミリ当量)]/[(A0)の(メタ)アクリル酸付加物の重量(g)]は、上記の観点から、好ましくは0.18〜8.9ミリ当量/g、さらに好ましくは0.53〜7.1ミリ当量/gである。
(A0)の(メタ)アクリル酸付加物と(e)との反応における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは3〜10時間である。
【0023】
(A)の数平均分子量(以下Mnと略記することがある)は、感光性樹脂組成物としての感度と解像度の観点から、通常500〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、特に好ましくは1,500〜5,000である。 (A)のMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)例えば HLC−8220(東ソー・テクノシステム(株)製)を使用して、ジメチルフォルムアミドを溶媒に、ポリスチレン樹脂を分子量の校正試薬として測定することができる。
【0024】
本発明において、感光性樹脂組成物中の1つの成分として用いられる多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)(以下、単に(B)と表記する場合がある)としては、公知の多官能(メタ)アクリレートモノマーであれば、とくに限定されずに用いられ、2官能(メタ)アクリレート(B1)、3官能(メタ)アクリレート(B2)および4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)が挙げられる。
【0025】
2官能(メタ)アクリレート(B1)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(メタクリレートのSP値=12.5、アクリレートのSP値=10.3)、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0026】
3官能(メタ)アクリレート(B2)としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0027】
4〜6官能(メタ)アクリレート(B3)としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0028】
(B)のうち好ましいものは、(B2)及び(B3)、さらに好ましいものは(A)との相溶性の観点から水酸基を含有するもの及びそれと水酸基を含有しないものとの混合物であり、特に好ましくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、並びにこれらの併用である。市場から容易に入手できる(B)としては、例えば、アロニックスM−403(東亞合成(株)製:ペンタエリスリトールトリアクリレート)、ライトアクリレートPE−3A(共栄社化学(株)製:ペンタエリスリトールトリアクリレート)、ネオマーDA−600(三洋化成工業(株)製:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物)等が挙げられる。
【0029】
また、本発明における(B)には、その一部に感光性アクリルオリゴマー(B4)を含んでいてもよい。(B4)としては、Mnが1,000以下であって、カルボキシル基を含有せず、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有するウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどが挙げられる。
(B)中の(B4)の含有量は好ましくは50%以下、さらに好ましくは30%以下である。
【0030】
本発明において感光性樹脂組成物(Q)中の成分として含まれるヒンダードフェノール骨格を有する化合物(C)としては、1分子中にヒンダードフェノール骨格を1個有する化合物(C1)、2個有する化合物(C2)、3個以上有する化合物(C3)が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、ヒンダードフェノール骨格を有する化合物(C)を含有することによって感度が低下しないで解像度が向上するという効果を発揮できる。
【0031】
ヒンダードフェノール構造とは、フェノール化合物のフェノール性水酸基のオルト位置に分岐アルキル基が結合した構造のことである。
【0032】
(C1)としては、2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4、6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,6,10−テトラ−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン、3−4’−ヒドロキシ−3’−5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸−n−オクタデシル、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート等が挙げられ、(C2)としては、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、3,6−ジオキサオクタメチレン=ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート]、4,4’−チオビス(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、チオジエチエレンビス[3−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート等が挙げられ、(C3)としては1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。これらのうち好ましいのは(C3)であり、さらに好ましいのは1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。
【0033】
感光性樹脂組成物(Q)中の1つの成分として用いられる光ラジカル重合開始剤(D)としては例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシ−ベンゾフェノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−クロロチオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジイソプロピルチオキサントン、ミヒラーズケトン、ベンジル−2,4,6−(トリハロメチル)トリアジン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9ーアクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス(9−アクリジニル)プロパン、ジメチルベンジルケタール、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、トリブロモメチルフェニルスルホン及び2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。(D)は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいのは、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンである。
【0034】
(D)は、市販のものが容易に入手することができる。例えば2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノ−1−プロパノンとしては、イルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オンとしては、イルガキュア369(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、(Q)の全固形分の重量に基づいて、(A)を好ましくは20〜80重量%(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)、さらに好ましくは25〜70%、特に好ましくは28〜59%含有する。
20%以上であれば現像性がさらに良好、80%以下であれば感度がさらに良好になる。なお、本発明における「固形分」とは、溶剤以外の成分をいう。
【0036】
(Q)の固形分の重量に基づく(B)の含有量は、19〜79%が好ましく、さらに好ましくは28〜70%、特に好ましくは40〜67%である。19%以上であれば、硬化物の感度がさらに好ましくなり、79%以下であれば、さらに解像度が良好になる。
【0037】
添加剤(C)の添加量は、光硬化性樹脂組成物の固形分に対して、0.5〜5%が好ましく、さらに好ましくは0.8〜5%、特に好ましくは1〜5%である。0.5%以上であれば解像度がさらに良好に発揮でき、5%以下であれば感度がさらに良好である。
【0038】
(Q)の固形分の重量に基づく(D)の含有量は、0.5〜7%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5%である。0.5%以上であれば感度がさらに良好に発揮でき、7%以下であれば解像度がさらに良好に発揮できる。
【0039】
感光性樹脂組成物(Q)は、必要によりさらにその他の成分(E)を含有していてもよい。
(E)としては、無機微粒子(E1)、増感剤(E2)、並びにその他の添加剤(E3)(例えば、無機顔料、シランカップリング剤、染料、蛍光増白剤、黄変防止剤、消泡剤、消臭剤、芳香剤、殺菌剤、防菌剤及び防かび剤等)が挙げられる。
【0040】
無機微粒子(E1)としては、金属酸化物および金属塩が使用できる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素および酸化アルミニウム等が挙げられる。金属塩としては、例えば、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウム等が挙げられる。これらのうちで、耐熱透明性および耐薬品性の観点から、金属酸化物が好ましく、さらに好ましくは、酸化ケイ素および酸化チタン、特に酸化ケイ素が好ましい。無機微粒子は、透明性の観点から、体積平均一次粒子径が1〜200nm、好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜120nm、特に好ましくは5〜20nmのものである。
【0041】
増感剤(E2)としては、ニトロ化合物(例えば、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン及び2−ニトロフルオレン等)、芳香族炭化水素(例えば、アントラセン及びクリセン等)、硫黄化合物(例えば、ジフェニルジスルフィド等)及び窒素化合物(例えば、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン及びテトラシアノエチレン等)等が用いられる。
【0042】
(E1)、(E2)及び(E3)の含有量は、感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、それぞれ以下の量である。無機微粒子(E1)の含有量は、好ましくは0〜50%、さらに好ましくは0〜45%、特に好ましくは0〜40%である。50%以下であれば現像性がさらに良好に発揮でき、40%以下であれば、特に弾性回復特性が優れる。
増感剤(E2)の含有量は、好ましくは0〜5%、さらに好ましくは0〜4%、特に好ましくは0〜3%であり、光ラジカル重合開始剤(D)の重量に対する増感剤(E2)の含有量の比率は、好ましくは1以下、さらに好ましくは0.8以下である。その他の添加剤(E3)の含有量の合計は、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0〜20%である。また、その他の成分(E)の合計の添加量は、感光性樹脂組成物(Q)の固形分の重量に基づいて、好ましくは0〜59%、さらに好ましくは0〜30%である。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、その固形分以外に溶剤(F)を含有していてもよい。溶剤(F)としては、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテルおよびプロピレングリコールモノアルキルエーテルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンなど)、およびエステル類(ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールアルキルエーテルアセテートなど)が挙げられる。(F)のうち好ましいのはケトン類およびエステル類である。
【0044】
溶剤(F)を含有する場合、溶剤の含有量は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物(Q)の重量に基づいて、好ましくは40〜90%、さらに好ましくは50〜90%、特に好ましくは60〜90%である。なお、溶剤の配合量には前述の(A)および(B)の製造に使用されそのまま残存した溶剤も含まれる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)は、例えば、プラネタリーミキサーなどの公知の混合装置により、上記の各成分を混合等することにより得ることができる。また感光性樹脂組成物(Q)は、通常、室温で液状であり、その粘度は、25℃で0.1〜10,000mPa・s、好ましくは1〜8,000mPa・sである。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)はアルカリ現像性が良好であり、硬化の際の感度および解像度に優れているので、特に液晶セル内のギャップ保持のために設けられるフォトスペーサ用の感光性樹脂組成物として適している。
【0047】
以下において本発明のフォトスペーサについて説明する。本発明のフォトスペーサは、上記の感光性樹脂組成物(Q)を硬化させて形成された液晶セル内のギャップ保持のために設けられるフォトスペーサである。フォトスペーサは、カラーフィルタ基板とTFT基板とを貼り合わせた時に液晶セルのギャップを決めるものであり、液晶表示装置の表示品質にとって重要な役割を果たす。フォトスペーサの高さは、通常2〜5μm程度の範囲で一定の高さを持つものであり、その均一性が要求される。また、高さの他、フォトスペーサに要求される形状、大きさ、密度等は液晶表示装置の設計によって適宜決定される。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物(Q)を用いてフォトリソグラフィー法によってフォトスペーサを形成する方法について以下に説明する。
(1)感光性樹脂組成物の塗布:
本発明の(Q)を、基板上にロールコート、スピンコート、スプレーコート、スリットコート等、公知の方法によって均一に塗布し、乾燥させて感光性樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。塗布装置としては、公知の塗布装置が使用でき、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、グラビアコーター及びコンマコーター等が挙げられる。
【0049】
(2)着色層上に設けられた透明共通電極上へのフォトスペーサの形成:
上記の感光性樹脂組成物層を、必要に応じて熱を加えて乾燥させる(プリベーク)。乾燥温度としては、10℃以上が好ましく、さらに好ましくは12℃以上、特に好ましくは15℃以上、最も好ましくは20℃以上であり、また100℃未満が好ましく、さらに好ましくは90℃以下、特に好ましくは60℃以下、最も好ましくは50℃以下である。乾燥時間は、30秒以上が好ましく、さらに好ましくは1分以上、特に好ましくは2分以上であり、また10分以下が好ましく、さらに好ましくは8分以下、特に好ましくは5分以下である。乾燥は、減圧、常圧どちらでもよいが、減圧の方が好ましい。また、空気中、不活性ガス中どちらで行ってもよいが、不活性ガス中が好ましい。
【0050】
(3)露光:
所定のフォトマスクを介して光により、感光性樹脂組成物層の露光を行う。本発明の感光性樹脂組成物であれば、直径5〜10μm程度(面積20〜100μm2程度)のマスク開口部であっても、精度良く、すなわち直径6〜12μm(面積30〜120μm2)の範囲でパターンを形成することができる。
【0051】
露光に用いる光としては、可視光線、紫外線、レーザー光線等が挙げられる。光線源としては、太陽光、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、半導体レーザー等が挙げられる。露光量としては、特に限定されないが、好ましくは20〜300mJ/cm2である。
【0052】
(4)現像:
未露光部を現像液で除去し、現像を行う。ここで現像に用いる現像液は、通常、アルカリ水溶液を用いる。現像液として用いることのできるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機物の水溶液;ヒドロキシテトラメチルアンモニウム、ヒドロキシテトラエチルアンモニウム等の有機物の水溶液が挙げられる。これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることもでき、また、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤を添加して用いることもできる。現像方法としては、ディップ方式とシャワー方式があるが、シャワー方式の方が好ましい。現像液の温度は、好ましくは25〜40℃で使用される。現像時間は、膜厚や感光性樹脂組成物の溶解性に応じて適宜決定される。
【0053】
(5)ポストベーク:
硬化をより確実にするために、必要に応じて加熱(ベーク)を行ってもよい。ベークを行う場合、ベーク温度としては、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは150〜240℃、特に好ましくは180〜230℃である。ベーク時間は5分〜6時間、好ましくは15分〜4時間、特に好ましくは30分〜3時間である。ベークは、減圧、常圧どちらでもよいが、減圧の方が好ましい。また、空気中、不活性ガス中どちらで行ってもよいが、不活性ガス中が好ましい。
【0054】
[実施例]
以下、実施例および製造例を以て本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を意味する。
【0055】
[親水性樹脂(A)の製造]
<製造例1>
加熱冷却・攪拌措置、環流冷却管、および窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN−1020」(日本化薬(株)製、エポキシ当量200)200部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート245部を仕込み、110℃まで加熱して均一に溶解させた。続いて、アクリル酸76部(1.07モル部)、トリフェニルホスフィン2部、およびp−メトキシフェノール0.2部を仕込み、110℃にて10時間反応させた。反応物にさらにテトラヒドロ無水フタル酸91部(0.60モル部)を仕込み、さらに90℃5時間反応させ、冷却後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えて固形分含有量を調整し、カルボキシル基およびアクリロイル基を有する親水性ポリマー(A−1)(Mn:2,200、SP値:11.26、HLB値:6.42、酸価:91mgKOH/g)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(固形分含有量は25%)。なお、MnはGPC測定機器(HLC−8120GPC、東ソー(株)製)、カラム(TSKgel GMHXL2本+TSKgel Multipore HXL−M、東ソ(株)製)を用いて、GPC法により測定されるポリスチレン換算の値として求めた。また、SP値、HLB値、酸価は、前述のようにして求めた。以下の製造例および比較例についても同様の測定法である。
【0056】
<製造例2>
製造例1と同様のコルベンに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂EPPN―201(日本化薬(株)製 エポキシ当量190)190部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート238部を仕込み、110℃まで加熱して均一溶解させた。続いて、アクリル酸76部、トリフェニルホスフィン2部、およびp−メトキシフェノール0.2部を仕込み、110℃にて10時間反応させた。反応物にさらにテトラヒドロ無水フタル酸91部を仕込み、さらに90℃5時間反応させ、その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで固形分含有量が25%となるように希釈し、アクリロイル基とカルボキシル基を有する親水性樹脂(A−2)(Mn:2,300、SP値:11.91、HLB値:6.81、酸価:94mgKOH/g、アクリロイル基濃度:2.94mmol/g) のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を得た(固形分含量は25%)。
【0057】
<比較製造例1>
製造例1と同様のコルベンに、イソボルニルメタクリレート50部(33モル%)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート30部(33モル%)、メタクリル酸20部(34モル%)、およびシクロヘキサンノン150部を仕込み、80℃まで加熱した。系内の気相部分を窒素で置換したのち、あらかじめ作成しておいたアゾビスイソブチロニトリル(V−60:和光純薬(株)製、以下AIBNと称す)5部をシクロヘキサノン50部に溶解した溶液55部を80℃のコルベン中に10分間で滴下し、さらに同温度で3時間反応させ、水酸基とカルボキシル基を有する親水性ポリマー(A−1’)(Mn:8,800、SP値:11.86、HLB値:11.98、酸価:102mgKOH/g)のシクロヘキサノン溶液を得た(固形分含有量は25%)。
【0058】
<実施例1〜5および比較例1〜5>
[感光性樹脂組成物の製造]
表1の配合例に従い、ガラス製の容器に各親水性ポリマーの溶液を仕込み、さらに下記の(B−1)、(C−1)、(C−2)、(C−1’)、(C−2’)及び(D−1)を仕込み、均一になるまで攪拌し、さらに追加の溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を添加して実施例の感光性樹脂組成物(Q1)〜(Q6)、および比較例の感光性樹脂組成物(Y1)〜(Y5)を製造した。なお、表1中の配合部数の数字はいずれも重量部であり、下段の( )内はそれぞれの成分の感光性樹脂組成物中における固形分換算での含有量を表す。
【0059】
B−1(多官能(メタ)アクリレート):「ネオマーDA−600」(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物:三洋化成工業(株)製)、
C−1ヒンダードフェノール構造を有する化合物:1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、
C−2ヒンダードフェノール構造を有する化合物:ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
C−1’(比較の化合物):メチルヒドロキノン
C−2’(比較の化合物):トリフェニルホスファイト
D−1(光ラジカル重合開始剤):「イルガキュア907」(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
【0060】
【表1】

【0061】
[現像性の評価]
感光性樹脂組成物(Q1)〜(Q6)、および(Y1)〜(Y5)を、それぞれガラス基板上に仕上り膜厚が5μmになるようにスピンコートし、25℃で5分間乾燥し、その後1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間現像を行い、現像性を評価した。結果を表2に示す。評価基準は以下の通りである。
◎:目視により残留物無し。
○:目視により残留物わずかにあり。
△:目視により残留物が多い。
【0062】
[感度の評価]
感光性樹脂組成物(Q1)〜(Q6)、および(Y1)〜(Y5)を、それぞれガラス基板上に仕上がり膜厚が5μmになるようにスピンコートし、25℃で5分間乾燥し、コダック社製のスケールT−14を通して高圧水銀灯の光を100mJ/cm2照射した。尚、フォトマスクと基板との間隔(露光ギャップ)は100μmで露光した。露光後速やかに1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて30秒間現像し、塗膜の残留している段数で感度を示した。この数値が大きいほど感度は高いといえる。
【0063】
[解像度の評価]
感光性樹脂組成物(Q1)〜(Q6)、および(Y1)〜(Y5)を、それぞれガラス基板上に、仕上り膜厚が5μmになるようにスピンコートし、25℃で5分間乾燥し、フォトスペーサ形成用のフォトマスクを通して高圧水銀灯の光を100mJ/cm2照射した。尚、フォトマスクと基板との間隔(露光ギャップ)は100μmで露光した。露光後速やかに1%炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像をした。水洗を施したのち、230℃で60分間ポストベークしてフォトスペーサをカラーフィルタ上に形成した。レーザー顕微鏡にてフォトスペーサの下底径を測定し、これを解像度の評価とした。小さいほど解像度が高いといえる。
【0064】
【表2】

【0065】
表2から判るように、本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、現像性が良好でありかつ感度および解像性に優れたフォトスペーサを形成することができる。
比較例1では、(A)を使用しておらず、解像度・感度に劣る。比較例2〜5では、ヒンダードフェノール構造を有する化合物を含有しておらず、比較例2は感度に劣り、比較例3〜5は解像度に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物は、フォトスペーサ用に好適に使用できる。
さらに、その他にも各種のレジスト材料、例えば、フォトソルダーレジスト、感光性レジストフィルム、感光性樹脂凸版、スクリーン版、光接着剤またはハードコート剤などの用途の感光性樹脂組成物として好適である。
さらに、金属(例えば、鉄、アルミニウム、チタン、銅等)、プラスチック(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテルフタラート、ポリ(メタ)アクリレート)、紙、ガラス、ゴム及び木材等の各種材料に対するコーティング剤、塗料、印刷インキ及び接着剤としても使用でき、成型材料等としても応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族エポキシ樹脂を変性してなる(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する親水性樹脂(A)、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)、ヒンダードフェノール構造を有する化合物(C)、並びに光ラジカル重合開始剤(D)を含有するアルカリ現像可能なフォトスペーサ用感光性樹脂組成物(Q)。
【請求項2】
芳香族エポキシ樹脂がフェノールノボラックエポキシ樹脂、又はクレゾールノボラックエポキシ樹脂である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
感光性樹脂組成物(Q)の固形分の合計重量に基づいて、親水性樹脂(A)を20〜80重量%、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)を19〜79重量%、ヒンダードフェノール構造を有する化合物(C)を0.5〜5重量%、及び光ラジカル重合開始剤(D)を0.5〜7重量%含有する請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の感光性樹脂組成物を硬化させて形成されたフォトスペーサ。

【公開番号】特開2009−36858(P2009−36858A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199279(P2007−199279)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】