説明

感染性医療廃棄物から再生されたプラスチックならびにそれから製造された医療用デバイス

感染性医療廃棄物からプラスチックを再生し、再生プラスチックから医療用デバイスを製造する方法が記載される。感染性医療廃棄物から再生されたプラスチックから作られる医療用デバイスも記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、混ぜられた医療廃棄物からプラスチックを再生し再利用する方法に関する。より具体的には、本発明の実施形態は、再生プラスチックから医療用デバイスを作成するのに使用される、混ぜられた感染性医療用鋭利物(medical sharps)廃棄物からプラスチックを再生する方法、ならびに再生プラスチックから作られる医療用デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
医療廃棄物の処分は環境上の観点から見て重要な懸案事項である。感染性である場合が多い医療廃棄物は、現在は、滅菌され、ごみ埋立処理地で非常に長い期間を経ることになる。医療廃棄物の多くの部品が再利用可能であると見なされる場合であっても、これらの部品は、感染性材料による汚染の恐れ、および感染性物質を含有する医療廃棄物と関連する欠点のため再使用されない。これにより、それでなければ再利用可能な材料の数千万ポンドもの廃棄物が生じ、ごみ埋立処理地の貴重な空間を占領している。
【0003】
医療廃棄物としては、鋭利物容器(使用済みおよび未使用の両方)、プラスチック、金属、ガラス、注射器、ゴム、紙、布地、血液、病原体、ならびに他の感染性材料を挙げることができる。医療廃棄物の部品は、通常、廃棄物容器内で混ぜられる。滅菌は、高圧蒸気滅菌、γ線照射、エチレンオキシドへの暴露、マイクロ波への暴露、高周波への暴露、高温への暴露、およびこれらの技術の組み合わせを含むがそれらに限定されない、多数の技術によって実行することができる。これらの技術の多くは、不快な臭いを残す場合があり、微量の血液が依然として目に見えることがあり、また、滅菌済みプラスチックの物理的性質が変化する場合があることから、特に望ましいものではない。したがって、滅菌技術の選択は、結果として得られた滅菌済み材料を再生し再利用する能力に対する影響を有し得る。
【0004】
プラスチックの再利用は、プラスチックの出所が良性である場合は比較的一般的な慣例である。しかし、感染性廃棄物と混ぜられたプラスチックは、一般的に、有用な製品へと、特に医療用デバイスへと再利用されることはない。特許文献1は、再生プラスチックおよびごみ固形化燃料を得るため、高周波電磁放射を使用して医療廃棄物を処理する方法について記載しているが、恐らくは、高周波電磁滅菌を使用してプラスチックを滅菌することの有効性が限定されているため、再生プラスチックを鋭利物処分容器以外の医療用デバイスに使用することについては記載されていない。感染性廃棄物と混ぜられた他の材料からプラスチックを分離し、滅菌し、再生する、より効率的で効果的な方法を提供することが望ましいだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,833,922号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】www.redbag.com/site/Corp/how.htm
【非特許文献2】www.redbag.com/Site/Documents/SSMGilpenPaper0011.pdfで入手可能なGilpen, "Superheated Water and Steam Sterilization and Grinding of Hospital and Laboratory Waste,"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高周波電磁放射が、感染性廃棄物と混ぜられ汚染されたプラスチックを滅菌することに本質的に限定されるという点は別にして、感染性廃棄物と混ぜられたプラスチックを再生し再利用するための協調的努力は不足している。したがって、特許文献1に記載されるタイプなどの再利用技術が存在する一方で、かかる技術が医療用デバイスに使用するためにプラスチックを再生することに使用されてきたとは考えられない。それ故、かかる再生および再利用の努力を協調させるための改善されたシステムおよび方法を提供することが有利であろう。したがって、感染性医療廃棄物から使用可能な材料を再生し再利用して、新しい医療用デバイスを得る方法を開発することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、感染性医療廃棄物からプラスチックを再生することによって医療用デバイスを作成する方法を対象とする。可塑性樹脂は、使用済み医療用デバイスを収容している医療廃棄物容器が混ざり合ったものから回収された、滅菌、細断、および洗浄済みの医療廃棄物材料から得られ、その細断、滅菌、および洗浄はほぼ同時に行われる。可塑性樹脂は新しい医療用デバイスの形に形成される。
【0009】
詳細な一実施形態では、細断、滅菌、および洗浄は液媒中で行われる。特定の実施形態では、プラスチックは、浮き沈み(float−sink)技術によって、金属、ガラス、ゴム、および高密度プラスチックから分離される。特定の実施形態では、低密度プラスチックが得られる。より具体的な実施形態では、使用済み医療廃棄物を細断し、滅菌し、洗浄するために、ほぼ水および蒸気のみが使用される。
【0010】
特定の実施形態では、再生プラスチックはほぼポリプロピレンおよびポリエチレンのみを含む。いくつかの詳細な実施形態では、方法は、可塑性樹脂を新しい医療用デバイスに組み込む前に、それを配合(または再配合)することをさらに含む。
【0011】
1つまたは複数の実施形態では、使用済み医療廃棄物容器内のほぼすべてのポリプロピレンおよびポリエチレンが、プラスチック医療廃棄物容器およびその内容物から回収され、その合計は、医療廃棄物容器内の廃棄物の約60〜70%を占めることがある。
【0012】
いくつかの実施形態では、医療廃棄物は現場で処理されてプラスチックが再生され、それを集荷し、搬送して、新しい医療用デバイスへと加工することができる。他の実施形態では、医療廃棄物容器は、医療設備からごみ処理センタへと搬送される。詳細な実施形態では、方法は、医療設備からプラスチック医療廃棄物容器を定期的に集荷するスケジュールを決めることをさらに含む。
【0013】
特定の実施形態では、再生プラスチックから形成された新しい医療用デバイスは、医療廃棄物容器、流路を有さない(non−fluid path)医療用デバイス(例えば、プランジャロッド)、および流路を有する医療用デバイス(例えば、バレル)から成る群から選択される。詳細な実施形態では、新しい医療廃棄物容器は、成型低密度プラスチック、ガラス部品、および金属部品を含む鋭利物容器である。
【0014】
本発明の追加の実施形態は、ほぼ同時に細断、滅菌、および洗浄されている医療廃棄物から得られた、再生プラスチックから得られたプラスチックから形成された医療用デバイスを対象とする。プラスチックは、ゴム、混合プラスチック、金属、ガラス、およびそれらの組み合わせ、ならびに他の医療廃棄物から成る群から選択された、混ぜられた感染性医療廃棄物から再生される。
【0015】
詳細な実施形態では、使用済み医療廃棄物は、プラスチック、ならびにガラスおよび金属の1つまたは複数を収容する鋭利物容器を含む。
【0016】
本発明のさらなる実施形態は、使用済み医療廃棄物材料を再利用する方法を対象とする。医療設備に対する医療廃棄物容器の供給が調整される。医療設備からの使用済み医療廃棄物容器の収集が調整される。使用済み医療廃棄物容器からのプラスチックの再生が調整される。再生プラスチックからの医療用デバイスの製造が調整される。医療設備に対する医療用デバイスの供給が調整される。特定の実施形態では、使用済み医療廃棄物容器は感染性廃棄物を含有する。
【0017】
詳細な実施形態では、医療用デバイスは、未使用プラスチックから製造される医療用デバイスよりも低コストで、再利用プラスチックから作ることができ、調整するステップはそれぞれ単一の事業体によって行われる。
【0018】
特定の実施形態では、使用済み医療廃棄物容器およびそれらの内容物からのプラスチックの再利用は、廃棄物をほぼ同時に細断、滅菌、および洗浄する技術を含む。より特定的な実施形態では、使用済み医療廃棄物容器およびそれらの内容物からのプラスチックの再利用は、浮き沈み技術を使用して、細断済み廃棄物からプラスチックを分離することを含む。
【0019】
さらに特定的な実施形態では、有効性および効率が改善された高度な再利用プロセスが提供される。1つまたは複数の実施形態によれば、高度なプロセスは、医療廃棄物を含有する鋭利物医療用容器から始まり、再生プラスチックを提供するため、隔離プロセス、粉砕プロセス、選別プロセス、金属分離プロセス、色分離プロセス、ならびにポリマー分離プロセスおよび揮発成分除去プロセスを1つまたは複数の様々な組み合わせで含むことができる。再生プラスチックは、好ましくは、危険性材料に関する業界標準を満たすか、またはそれを上回る。かかる高度なプロセスから作られた好ましい医療用デバイスは、100ppm未満の重金属を含有し、懸案材料をほとんどまたはまったく有さない医療廃棄物容器である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について記載する前に、本発明は、以下の説明において記述される構造またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な形で実施または実行することができる。
【0021】
本明細書および添付の請求項で使用するとき、用語「医療用デバイス」は、医療廃棄物容器、流路を有さないデバイス、および流路を有するデバイスを含むがそれらに限定されない、あらゆる医療用デバイスを指す。適切な医療用デバイスとしては、医療廃棄物容器(例えば、鋭利物医療用容器、薬品廃棄物容器、RCRA容器、および化学療法剤容器)、皮下注射器、カテーテル、洗浄用注射器、尿カップ、プラスチックチューブ、注入瓶(pour bottles)、ならびに滅菌ラップが挙げられるが、それらに限定されない。流路を有する医療用デバイスとしては、皮下注射器、カテーテル、洗浄用注射器、プラスチックチューブ、流体採集チューブが挙げられ、具体的には鋭利物廃棄物容器を除外する。
【0022】
本明細書および添付の請求項で使用するとき、用語「医療廃棄物」は、プラスチック、成型プラスチック部品、ゴム、ガラス、金属、紙、布地、および血液の1つまたは複数を含むがそれらに限定されない、混ぜられた医療廃棄物を指す。医療廃棄物の例としては、プラスチックと、ガラス、金属、ゴムの1つまたは複数とを含有する使用済み鋭利物容器が挙げられるが、それに限定されない。
【0023】
本明細書および添付の請求項で使用するとき、用語「調整する」は、活動を直接実施することによって、あるいは特定の活動を他者が実施するように指示することによって、指定の活動を計画し指示することを意味する。調整は、実施すること、実行させること、発注すること、購入すること、受注すること、販売することなどを含んでもよいが、それらに限定されない。例えば、医療廃棄物容器の収集の調整としては、医療廃棄物容器を個人で集荷すること、廃棄物容器を集荷するために従業員を送ること、廃棄物容器を集荷するように別会社の従業員に依頼することを挙げることができるが、それらに限定されない。1つまたは複数の実施形態では、調整は、単一の事業体、例えば医療用デバイスのメーカおよび/または供給業者によって実施されてもよい。したがって、医療用デバイス供給業者/メーカは、さらに後述されるような再利用スキームにおける中心的な事業体である。
【0024】
本明細書および添付の請求項で使用するとき、「再生」、「再生する」、および「再生すること」は、廃棄製品から有用物質を回収することを指す。再生プロセスの特定の例は、プラスチック廃棄物と汚染された感染性医療廃棄物との混合物から使用可能なプラスチック材料を回収することを伴う。本明細書および添付の請求項で使用するとき、「再利用する」または「再利用すること」は、新しい製品を作り出すのに使用するため、使用済みまたは廃棄材料を処理する行為を意味する。本明細書を読むことによって理解されるように、使用済みプラスチックデバイスを再利用する再利用作業は、使用済みプラスチックデバイスからプラスチック材料を再生し、再生プラスチックから新しい製品を作り出すことを伴うことになる。
【0025】
本発明の1つまたは複数の実施形態は、再利用プラスチックから医療用デバイスを作成する方法を対象とする。方法は、医療廃棄物を含有するプラスチック医療廃棄物容器の混合物から再生された、滅菌済み医療廃棄物材料から可塑性樹脂を得ることを含む。可塑性樹脂は再利用医療用デバイスへと形成される。
【0026】
詳細な実施形態では、無菌の細断済みプラスチック医療廃棄物材料は、好ましくは液媒中で、ほぼ同時に細断、滅菌、および洗浄され、それによって作業の効率および有効性が向上する。細断および滅菌に適した技術としては、Red Bag Solutions(Baltimore,Meryland)(www.redbag.com)によって採用されている、同社のSteam Sterilizer Macerator(「SSM」)プロセスを含む技術が挙げられるが、それに限定されない。簡潔には、SSMプロセスは感染性廃棄物をタンク内に封入する。蒸気および過熱水がタンクに加えられる。廃棄物が浸漬され、ポンプ式粉砕機(pump grinder)によって廃棄物をカッタおよびポンプインペラに通して、材料を細断する。この細断は「浸軟(maceration)」と呼ばれることもある。細断済み材料はタンクに戻され、システムを通して循環させながら連続的に小片へと切断される。廃棄物が完全に細断されると、廃棄物流は、約133.33℃(272°F)まで加熱され、その温度で約6分間保たれる。次に、廃棄物を冷却するために冷水がシステムに注入され、廃棄物がフィルタへと放出されて、液状廃棄物から固体が分離される。Red Bag Solutionsのプロセスに関するさらなる情報については、非特許文献1および非特許文献2を参照されたい。
【0027】
本明細書で使用するとき、「滅菌」は、表面、機器、食品もしくは医療品、または生物培地からの伝播性病原体(菌、バクテリア、ウィルス、胞子など)を有効に死滅させる、または排除する任意のプロセスを包含するものとする。そのため、この用語は、1つまたは複数の伝播性病原体を完全に死滅させるプロセス、ならびに1つまたは複数の伝播性病原体のレベルが処理前のレベルに比べて低減されるプロセスを包含する。好ましい実施形態では、1つまたは複数の伝播性病原体に対する死滅率は106、より好ましくは1012である。例えば、Red Bag SolutionsによるSSMプロセスを使用すると、106という死滅率は、250℃で15分間加熱することによって達成することができ、1012という死滅率は、250℃で30分間加熱することによって達成することができる(「過剰死滅(overkill)」として知られる)。非特許文献2と同様に、250℃超過およびそれ未満の温度での等価の時間が決定されてもよい。用語「滅菌」はまた、医療廃棄物を消毒または殺菌するプロセスを包含するものとする。
【0028】
特定の一実施形態では、医療廃棄物を含有する医療廃棄物容器は、ほぼ液体水および蒸気のみを使用して滅菌される。このプロセスの特定の利益は、望ましくない化学物質が廃棄物に付加されるのを防ぐことである。それに加えて、液体水および蒸気を使用するシステムは無臭であり、その結果、プラスチック材料の劣化が最小限に抑えられるか、または劣化がなくなるとともに、細断、滅菌、および洗浄をほぼ同時に行うことが可能になる。ほぼ同時に細断、滅菌、および洗浄された材料は、本質的に、不快な臭いまたは血液の目に見える痕跡を有さない。
【0029】
細断、滅菌、および洗浄済みの廃棄物は、医療廃棄物容器と容器の内容物との組み合わせである。細断、滅菌、および洗浄済みの廃棄物のプラスチック部分は、概して、フレークと呼ばれる形態である。プラスチックは、再利用可能になる前に、この混合物から再生しなければならない。特定の一実施形態では、プラスチックは、浮き沈み技術によって、金属および/もしくはガラス、または他の部品から再生される。浮き沈み分離において、廃棄物は既知の比重を有する浴液に入れられる。浴液よりも低い比重を有する廃棄物材料は浮かび、より高い比重を有する材料は沈むことになる。例えば、細断済み滅菌済みの廃棄物は、ポリプロピレンよりも高い比重を有する浴液に入れられてもよい。これによって、ポリプロピレンおよびより低い比重を有するポリエチレンは、浴液の表面に浮かぶことになる。ガラス、金属、および他のプラスチックは底に沈むことがある。様々なプラスチック種を細断済み滅菌済み廃棄物から選択的に分離するため、浴液の比重は、様々な添加剤を用いて変化させることができる。同時に細断および滅菌を行うことの1つの特定の利点は、そうでない場合は廃棄物を滅菌前に細断することが必要になり、結果として細断機器が汚染される点である。それに加えて、Red Bag SolutionsによるSSMプロセスを使用すると、同時の細断および滅菌プロセスは、別個の洗浄プロセスまたは水簸機(elutriator)を必要としない。
【0030】
詳細な実施形態では、再生プラスチックはほぼポリプロピレンおよびポリエチレンのみを含む。プラスチックの組成は、滅菌される医療廃棄物に応じて変わる。滅菌され分離される医療廃棄物のバッチはそれぞれ、異なるポリプロピレン/ポリエチレン比を有する可能性がある。この比は、製造すべき製品の仕様に応じて調節が必要なことがある。特定の実施形態では、再利用医療廃棄物から得られるプラスチックは、材料の物理的性質を制御するため再配合されてもよい。
【0031】
詳細な実施形態では、使用済み医療廃棄物容器内のほぼすべてのポリプロピレンおよびポリエチレンがプラスチック医療廃棄物容器から回収され、それが、医療廃棄物容器内の廃棄物の約60〜70%を占めることがある。「ほぼすべて」によって、好ましくは、75%、80%、85%、90%、95%、99%、および99.9%超過を意味する。
【0032】
詳細な実施形態では、医療廃棄物は現場で処理されてプラスチックが再生され、それを集荷し、搬送して、新しい医療用デバイスへと加工することができる。他の実施形態では、医療廃棄物容器は、医療設備からごみ処理センタへと搬送される。詳細な実施形態では、方法は、医療設備からごみ処理センタへ処理のために、次にリサイクル業者へと、プラスチック医療廃棄物容器の定期的に集荷または配送するスケジュールを決めることをさらに含む。
【0033】
本発明の追加の実施形態は、ゴム、混合プラスチック、金属、ガラス、紙、布地、血液、およびそれらの組み合わせを含んでもよい混ぜられた感染性医療廃棄物から分離された、細断、滅菌、および洗浄済み医療廃棄物から得られたプラスチックから形成される医療用デバイスを対象とする。特定の実施形態では、プラスチックは、プラスチックと、ガラスおよび金属の1つまたは複数との混合物から分離される。詳細な実施形態では、プラスチックが再生される使用済み医療廃棄物は、プラスチックを含み、かつガラスおよび金属の1つまたは複数を含有する鋭利物容器およびその内容物である。
【0034】
高度な再利用プロセスの特定の一実施形態を次に提供する。しかし、このプロセスで提供されるステップは異なる順序で行われてもよく、所望の純度および加工の経済性に応じて、いくつかのステップは完全に省略されてもよいことに留意されたい。使用済み医療用針、静脈カテーテル、および他の鋭利物医療器具が蓄積される、鋭利物(赤色)医療用容器を参照するが、プロセスはそれに限定されるものではなく、他の医療用デバイスに適用されてもよい。
【0035】
高度なプロセスの一実施形態では、例えば、上述したRed Bag SolutionsのSSMプロセスなどの浸軟プロセスを使用して、医療用鋭利物容器を粉砕、細断、滅菌、および洗浄する前に、医療用鋭利物容器は、必要に応じて、化学療法剤(黄色)容器および薬品廃棄物容器(青色および白色)など、他の感染性医療廃棄物から隔離される。さらなる実施形態では、鋭利物医療用容器の内容物は浸軟プロセスの前に除去することができる。
【0036】
鋭利物容器の粉砕、細断、および滅菌に続いて、フレークを、例えば約1.91または0.95cm(約3/4または3/8インチ)のフレークなどのより微細なサイズまで、さらに粉砕することができる。これは、適切な粉砕機と、例えば、オーガー式供給機(auger feeder)を備えたボックスダンパ/サージビンとを併用して行うことができる。フレークサイズは例示であり、本発明を限定するものではないことが理解されるであろう。
【0037】
次に、適切な分離装置、例えば振動スクリーン分離機を通して、粉砕済みフレークを分類することができる。大きすぎるサイズおよび小さすぎるサイズのフレークが除去され、さらに所望に応じてそれらの成分へと分離することができる。例えば、小さすぎるフレークは、金属、ガラス、ゴム、および重いプラスチックを含有することがあり、それらを所望に応じて選び出し再処理するか、または単に廃棄することができる。
【0038】
次に、所望のスクリーン分類を施したフレークを乾式分級機に供給することができ、そこで、サイズ、形状、および密度に基づいてフレークが分類され、特にほこり、ごみ、紙、布地などが除去される。
【0039】
次に、所望の乾式分級を施したフレークを上述の浮き沈み分離プロセス(または等価の乾式分離プロセス)にかけることができ、そこで特定の密度に基づいて材料が分離される。このように、所望のポリマー樹脂フレークを収集することができ、残りの金属、ガラス、ゴム、および高密度プラスチックを所望に応じて選び出し再処理するか、または単に廃棄することができる。
【0040】
次に、所望の浮き沈み分離を施したポリマー樹脂フレークを乾燥させ、乾式分級機に再供給することができる。次に、所望の乾式分級を再び施したフレークを任意の数の分離プロセスにかけて、ポリマー樹脂フレークをさらに精製することができる。例えば、ポリマー樹脂フレークを順次、金属分離機(例えば、鉄および/または非鉄)に供給して残りのあらゆる金属汚染物質を除去し、色分離機(例えば、光学式、NIR分光法、レーザ分光法)に供給して有色汚染物質を除去し、ポリマー分離機(例えば、X線、蛍光、NIR分光法、レーザ分光法)に供給して不要なポリマーフレークを除去することができる。この特定の例では、ポリプロピレンフレークは保存され、あらゆるポリエチレン、ポリウレタン、およびポリイソプレンフレークが廃棄される。当然ながら、各ステップで除去された汚染物質を所望に応じて再処理するか、または単に廃棄することができる。
【0041】
次に、所望の樹脂フレークを、揮発成分除去のために揮発成分除去チャンバに入れ、次に合否分析のために感覚分析器(sensory analyzer)に通すことができる。不合格の材料は再処理するか、または単に廃棄することができる。再生プラスチックを構成する合格の材料は、次に、追加の周知の成分(例えば、他の樹脂、成核剤、静電気防止剤、酸化防止剤、安定剤など)とブレンドし、押出し成形し、造粒してペレットの形にすることができる。医療廃棄物で充填された鋭利物医療用容器を用いた1つの実際の行程では、容器内のプラスチック全体および医療廃棄物の60%超過がペレットに再生された。
【0042】
再生プラスチックを含むペレットは、例えば、医療用鋭利物容器、化学療法剤容器、および薬品廃棄物容器など、新しい医療用デバイスの形に射出成形することができる。注射器プランジャなどの流路を有さない医療用デバイスも形成することができる。所望に応じて、再生プラスチックを1つまたは複数の安全性臨床検査にかけることができる。
【0043】
上述のステップの一部またはすべては、当該分野においてその例が知られている、オペレータ制御システムによって制御することができる。
【0044】
再生プラスチックから作られた新しい医療用デバイスは、人間の手によって安全に扱われる。例えば、医療廃棄物で充填された鋭利物医療用容器を用いた1つの実際の行程では、再生プラスチックは3ppmの重金属を含有し、これは100ppmの最大許容限度よりも大幅に低かった。それに加えて、懸案材料はほとんどまたはまったく存在しなかった。このように、危険性材料と、医療用鋭利物廃棄物容器の再使用と関連する臭いとの両方に対する欠点が取り除かれた。
【0045】
本発明のさらなる実施形態は、使用済み医用素材を再利用する方法を対象とする。これらの方法は環境も保護し、ごみ埋立処理地からの廃棄物材料を流用する。方法は、医療設備に対する医療用鋭利物廃棄物容器の供給を調整するステップと、医療設備からの使用済み医療用鋭利物廃棄物容器の収集を調整するステップと、使用済み医療廃棄物容器からのプラスチックの再利用を調整するステップと、再利用プラスチックからの医療用デバイスの製造を調整するステップと、医療設備に対する医療用デバイスの供給を調整するステップとを含む。
【0046】
本発明の1つの態様では、単一の事業体が再生および再利用努力を調整し、つまり、組織化または指示する。特定の一実施形態では、単一の事業体は医療用デバイスメーカまたは医療用デバイス供給業者である。医療用デバイスのメーカまたは供給業者は、さらに後述するように、再生および再利用スキームを含む様々な活動を調整する。
【0047】
特定の一実施形態では、事業体は、病院、診療所、大学、診察室、または医療廃棄物容器を利用する他の設備など、医療設備に対する医療廃棄物容器の供給を調整する。医療廃棄物容器が使用されるか、または感染性廃棄物を含む医療廃棄物で充填された後、それらの再利用の努力をするための収集を容易にする形でそれらを処分することができる。再利用スキームの1つのステップは、医療設備からの使用済み医療用鋭利物容器の収集を調整することを伴い、これは様々なやり方で達成することができる。これには、例えば従業員に容器を集荷させること、または第三者に報酬を支払うことを含む、医療廃棄物容器の集荷を第三者に指示もしくは要請することによって、事業体自身が容器を集荷することが挙げられるが、それに限定されない。
【0048】
スキームの別のステップは、再生プラスチックを提供するため、使用済み医療用鋭利物廃棄物容器からのプラスチックの再生を調整することを伴う。これは、使用済み廃棄物容器を収集する事業体に、混合医療廃棄物などの混合廃棄物の再生および/または再利用を扱う設備へとそれら容器を配達させることによって達成することができる。配達時間を短縮しコストを縮減するため、調整を行う事業体または調整役が、再生または再利用作業を医療設備に非常に近接または隣接させて設定することが望ましく、かつコスト効率がよい場合があることが認識されるであろう。プラスチックを再生し滅菌する再生プロセスが比較的清潔かつ無臭であるいくつかの例では、再生作業を医療設備内で、例えば医療設備の別棟で、または地下で行うのが可能なことがある。あるいは、再生プラスチックを利用して再利用医療用デバイスが製造される製造工場に近接して、隣接して、または工場内で、再生努力が行われるように調整することができる。当然ながら、これらのシナリオはいずれも作業に必須なものではないが、スキーム全体の効率およびコストを向上するのに望ましいことがある。再生材料は、細断プラスチック、プラスチックチップ、プラスチックペレット、プラスチックフレークなど、任意の適切な形態であることができる。
【0049】
再生プラスチック材料は、再利用された内容物を有する新しい医療用デバイスを作成するのに使用される。医療用デバイスのメーカまたは供給業者は、様々なやり方で医療用デバイスの製造を調整することができる。例えば、メーカは、再生プラスチックを、医療用デバイス製造プロセスで使用されるその設備の1つに配送させてもよい。再生プラスチックは、医療用デバイスの仕様に応じて、全体が再生プラスチックから成る、または一部分が再生プラスチックから成るデバイスを作成するのに使用されてもよい。別の実施形態では、調整は、第三者に対して再生プラスチックを医療用デバイスの製造に使用するように指示することを伴ってもよい。やはり、作られる新しい医療用デバイスは、全体を再生プラスチックで作成することができ、または、医療用デバイスを構成する材料の一部が再生プラスチックであってもよい。あるいは、プラスチックが望ましい医療用途および/または非医療用途の両方に使用するため、再生プラスチックをバイヤに販売することができる。
【0050】
次に、製造済み医療用デバイスは医療設備に供給される。好ましくは、これは調整された供給活動であり、単一の事業体によって、例えば医療用デバイスのメーカまたは供給業者によって行われてもよい。したがって、医療設備に対する医療用デバイスの供給の調整としては、医療設備に対して医療用デバイスを個人で販売もしくは付与すること、または別の人間もしくは会社にそれを依頼/報酬を支払うことが挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
したがって、上述のスキームは、医療廃棄物中のプラスチックが確実に再生され、新しい製品へと再利用され、医療設備に供給される、調整された包括的なやり方を提供する。一実施形態によるスキームは、単一の事業体による調整によって容易にされる。
【0052】
詳細な実施形態では、医療用デバイスは、未使用プラスチックから製造された医療用デバイスよりも低価格で提供される。
【0053】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、「ある実施形態」に対する言及は、実施形態と関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所で、「1つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、「ある実施形態において」などの語句が出てきた場合、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な形で組み合わされてもよい。
【0054】
特定の実施形態を参照して本発明について本明細書に記載してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理および適用についての例示に過ぎないことを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置を様々に修正および変形できることが、当業者には明白になるであろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびそれらの等価物の範囲内にある修正および変形を含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療廃棄物を含有する1つまたは複数の医療用鋭利物容器を提供するステップと、
前記1つまたは複数の医療用鋭利物容器、およびその内容物を滅菌、細断、および洗浄して、細断、滅菌、および洗浄済みフレークを提供するステップと、
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークを押出し成形し造粒してペレットの形にするステップと、
前記ペレットを医療用デバイスの形に形成するステップと
を含むことを特徴とする、医療用デバイスを作成する方法。
【請求項2】
前記医療用デバイスは医療廃棄物容器であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医療廃棄物は、滅菌、細断、および洗浄の前に、前記1つまたは複数の医療用鋭利物容器から除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
医療廃棄物を含有する前記1つまたは複数の医療用鋭利物容器は、滅菌、細断、および洗浄の前に、化学療法剤容器および/または薬品廃棄物容器から隔離されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の医療用鋭利物容器およびその内容物は、ほぼ同時に細断、滅菌、および洗浄されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の医療用鋭利物容器およびその内容物は、少なくとも約250℃の温度で少なくとも約15分間滅菌されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に1つまたは複数の追加のプロセスにかけられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前にさらに粉砕されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前にスクリーン分類されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に乾式分級機に供給されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に浮き沈み分離されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、金属、ガラス、ゴム、および/または重いプラスチックを含む材料から分離されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に金属分離プロセスにかけられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に色分離プロセスにかけられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前にポリマー分離プロセスにかけられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記分離プロセスは分光法を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記医療用デバイスの形に形成された前記ペレットは、実質的にポリプロピレンから成ることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に揮発成分除去されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項19】
前記細断、滅菌、および洗浄済みフレークは、押出し成形および造粒の前に1つまたは複数の添加剤と混合されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記1つまたは複数の添加剤は、樹脂、成核剤、静電気防止剤、酸化防止剤、および/または安定剤を含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1のプロセスによって作成されることを特徴とする医療用鋭利物容器。
【請求項22】
100ppm未満の重金属を有し、懸案材料を実質的に有さないことを特徴とする請求項21に記載の医療用鋭利物容器。
【請求項23】
感染性医療廃棄物を含有する1つまたは複数の医療用鋭利物容器を提供するステップと、
前記1つまたは複数の医療廃棄物容器をほぼ同時に細断、滅菌、および洗浄して、細断、滅菌、および洗浄済みプラスチックフレークを提供するステップと、
前記細断、滅菌、および洗浄済みプラスチックフレークをさらに粉砕するステップと、
前記さらに粉砕されたフレークを浮き沈み分離するステップと、
前記浮き沈み分離されたフレークを1つまたは複数の分光法に基づく分離プロセスにかけて、再生プラスチックを得るステップと
を含むことを特徴とする、感染性医療廃棄物からプラスチックを再生する方法。
【請求項24】
前記容器内および前記医療廃棄物中の前記プラスチックは、ほぼすべて再生されることを特徴とする請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2013−505152(P2013−505152A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529928(P2012−529928)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049275
【国際公開番号】WO2011/035119
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】