説明

感染症に対する候補薬

本発明は、感染症または他の感染性疾患に対する宿主の防御を増強するための薬剤としてのプラスミノーゲン/プラスミンおよびその誘導体の使用に関する。本発明は、動物モデルの細菌性関節炎および自然中耳炎に対する宿主の防御を評価することにより感染症に対する宿主の防御を増強する化合物のスクリーニング方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染性疾患、および特に細菌が細胞外マトリックスを侵す壊死病状を防御、予防、および/または治療するための化合物および方法に関する。特に、本発明は、改善された感染防御、壊死組織のより良好な清浄化、および機能的および審美的に満足な組織の再形成をもたらすそのような化合物および方法に関する。本発明は、細菌感染症および組織壊死を研究するための動物モデル、ならびに細菌感染症および組織壊死に対する薬剤を同定および評価し、治療方法を強化するためのスクリーニング方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
感染性疾患は、細菌やウイルスのような病原体、ならびに単細胞の真菌および原虫から大きな複雑な後生動物、例えば寄生虫の範囲の真核生物により生じる。病原性細菌は、宿主との相互作用を仲介する毒性因子を含み、病原体の複製と伝搬を促進する宿主細胞由来の特定の反応を引き起こす。ウイルスは、宿主細胞の機構を妨害してウイルスタンパク質を産生し、ウイルスゲノムを複製することに依存している。病原体は、環境と直接接触する上皮表面に付着するか侵入することにより宿主に定着することが多い。ウイルスは主として宿主細胞に入るためにレセプター介在性エンドサイトーシスに依存するのに対し、細菌は細胞付着と食菌経路を活用する(1)。病原性真菌、原虫、および他の真核性寄生生物は、典型的には感染の進行中に種々の異なる形態を経る。これらの形態に変換する能力は通常、寄生生物が宿主中で生存し、疾病を引き起こすために必要である。
【0003】
新しい病原体に宿主が曝露する最初の数時間および数日間は、先天性の免疫系が侵入する病原体に対する最初の防御機構である。しかしながら、特異的適応免疫反応の開始も必要である。固有免疫反応は、非感染宿主には存在しない病原体の保存された特徴を認識する身体の能力に依存する。これには、細菌表面の多くの分子種、およびある種のウイルスの二本鎖RNAが含まれる。微生物の表面分子は、該微生物をマクロファージおよび好中球により食菌させるために標的化し、炎症反応を生じるための補体系も活性化する。
【0004】
細菌は、食菌から逃れるための種々の戦略を発達させている。例えば、それらは走化性および食菌を阻害し、食細胞を殺滅またはコロニー化することができる。食細胞は分解酵素、抗菌ペプチド、および反応性酸素種の組み合わせを用いて侵入する微生物を殺す(2)。さらに、それらは、炎症反応を引き起こし、適応免疫系の力を導き始める情報伝達分子を放出する。他方、細菌は、適応免疫系に対する異なる戦略、例えば分子擬態、抗体の抑制、細胞内に隠れる、または血流中への抗原の放出、を発達させた(3)。
【0005】
すべてのウイルスと多くの細菌および原虫を含む細胞内病原体は宿主細胞内で複製し、種々のメカニズムにより侵入する。ウイルスは、主として宿主細胞に入るためにレセプター介在エンドサイトーシスに依存するが、細菌は細胞付着と食菌経路を利用する。原虫は、通常著しい代謝的支出を必要とする独特な侵入戦略を用いる。一旦内側に入ると、細胞内病原体は、その複製に適した生態的地位を探し出し、しばしば宿主細胞膜交通を変化させ、細胞内に移動するために細胞骨格を利用する。
【0006】
Staphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)は、しばしば細菌性関節炎と関連した微生物であり、滑膜炎、軟骨および骨の破壊、最終的に関節の変形をもたらす。哺乳動物、鳥、およびは虫類を含む種々の動物種が自然(自発性)S. aureus関節炎の発現について検討されており、これらは該疾患を誘発するための潜在的モデルである。
【0007】
プラスミノーゲン活性化因子(PA)系は、種々のタイプの関節炎の発現に重要な役割を果たすことが示唆されている一般的タンパク質分解系である。プラスミノーゲンは、2種の生理学的PA、組織型PA(tPA)またはウロキナーゼ型PA(uPA)のいずれかにより広域プロテアーゼのプラスミンに活性化することができる。
【0008】
中耳炎は、耳の炎症状態と定義される。中耳炎は、一般的な風邪を除き最も一般的な子供の病気である。中耳炎に関連する最も重要な病因因子は上部気道の細菌またはウイルス感染症である。中耳炎は一般的に良性であり、自己限定性疾患であるが、それにも関わらず、抗生物質の処方率は高い。実際に、中耳炎治療における抗生物質の効果は証拠がなく、現在のところ、外科的介入が再発性急性中耳炎(AOM)および慢性中耳炎または滲出性中耳炎(OME)を治療するのに選択される療法である。
【0009】
患者皮膚の正常細菌叢(すなわち、S. aureusおよびStreptococcus pyogenes(化膿性連鎖球菌))による急速な定着(コロニー形成)が損傷後に起きることがよく知られている。特に1950年代初期に火傷患者の感染原因としてStreptococcus pyogenesの事実上の排除をもたらしたペニシリンGの導入後、S. aureusは、創傷感染の主な病原体になった。したがって、S. aureusは、開放創傷感染症における最も一般的な細菌種の1つである。切り傷と火傷は、臨床でみられる最も一般的な傷のタイプである。
【0010】
抗生物質と他の抗菌剤は、第二次世界大戦以来感染性疾患の治療に広く用いられてきた。疾患を生じる微生物に対する抗菌剤の成功は、近代医学の大きな達成事項である。しかし、多くの抗菌剤は薬剤耐性の発現により以前ほど有効ではない。抗生物質耐性発現の重要因子は、感染性生物の新しい環境条件への素早い適応能力である。徐々に、ある細菌は抗生物質の効果を回避する方法を発達させた。抗生物質の広範な使用は、細菌がこれらの強力な薬剤に対して生存することができる進化的適応を促したと考えられる。抗生物質耐性は、微生物に生存する恩恵を与え、感染を身体から排除しにくくする。最終的に、微生物を撃退する困難さが増すと、病院または他の施設で感染するリスクが増加する。結核、淋病、マラリア、および幼児耳感染症のような疾患は、現在は数年前より治療するのが困難である。薬剤耐性は、抗生物質の助けがなければ感染症を撃退できない重症患者を収容している病院では特に困難な問題である。これらの患者における抗生物質の多用が、薬剤耐性を生じる細菌の変化を選択する。残念なことに、これは最強の抗生物質の存在下でも生存する能力が大きい細菌を生じることにより問題を悪化させる。このさらに強力な薬剤耐性菌は、被害を受けやすい入院患者を餌食にし続ける。したがって、感染症に対する感染防御を改善するために新規治療戦略の必要性が高いという認識が増している。
【0011】
壊死は、細胞および生組織のプログラムされていない死や偶発的な死に対して与えられた名称である。壊死はプログラムされた細胞死の一部であるアポトーシスより秩序だっていない。アポトーシスと違って、免疫系の食細胞による壊死で生じた細胞屑の清浄化は、疾患による死は一般的に死にかけている細胞を取り込むように付近の食細胞に命令する「自分を食べろ」という細胞情報を送らないので一般により難しい。この情報伝達がないことが、細胞がアポトーシスを受けた場合より壊死で死んだ死細胞に免疫系が局在し、再利用するのを難しくする。細胞膜損傷後の細胞内容物の放出は壊死における炎症の原因である。
【0012】
損傷、感染症、癌、梗塞、毒素注入、および炎症を含む多くの壊死の原因がある。細胞の必須システムに対する重度の損傷は、他のシステムに対する二次的損傷、いわゆる「影響の連鎖」をもたらす。壊死は、細胞成分や全細胞自体を消化することができる、リソソームにより放出される特別な酵素により生じる。細胞が受けた損傷は、リソソーム膜を傷つけるか、または酵素の放出をもたらす非体系的連鎖反応を始めさせるかもしれない。アポトーシスと異なり、壊死で死ぬ細胞は、他の細胞を損傷する有害な化学物質を放出することがある。生検物質の壊死は固定や凍結により食い止められる。
【0013】
現在、4つの主な壊死の治療方法がある。第1は外科的除去であり、これは最も速やかなので大きな壊死領域や厚い痂皮が存在する場合に推奨される。第2は機械的除去であり、これには水治療法、デキストラノマー、および傷口の洗浄が含まれる。第3は酵素的除去であり、用いる酵素は主にコラゲナーゼ(例えばSantyl)であり、その効果は感染症が存在する場合は遅すぎる。第4は自己融解法によるものであり、これは創傷液中の酵素によるものであるがその効果はきわめて遅い。しかしながら、4つの治療法はどれも、機能的で審美的に満足な壊死の除去と組織の再形成をもたらさない。したがって、壊死をうまく除去する新規治療戦略の必要性は高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
細菌性関節炎、開放創傷感染、中耳炎、および壊死のような感染症を治療するための現在の治療方法には上記のような欠点がある。したがって、当該分野において一般的に感染症を治療するための改良された戦略の必要性が高い。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要約)
本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分、およびプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物を感染性疾患と組織壊死のための新規改良戦略に用いることができるという驚くべき発見に関する。本発明の局面は、炎症細胞を活性化し、細菌を殺し、壊死組織を除去し、サイトカインの発現を促進することにより、例えば、S. aureus誘発関節炎および開放創傷感染に対する防御の役割を果たすプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲン活性化経路の他のメンバーもしくはプラスミノーゲン活性化能を有する化合物に関する。そのような感染状態には、さらに、感染性疾患、ならびに組織感染が例えば組織特異的感染防御、全体的身体感染防御、急性感染症、慢性感染症、慢性潰瘍、開放創傷感染、および糖尿病性潰瘍時に一般に観察される他の疾患が含まれる。
【0016】
ある態様において、本発明は、有効量の、プラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物、またはプラスミノーゲンを直接またはプラスミノーゲン活性化経路を介して活性化する能力を有する化合物を投与することを含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療方法に関する。
【0017】
ある態様において、プラスミノーゲンを直接またはプラスミノーゲン活性化経路を介して活性化する能力を有する化合物には、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼ、ならびにプラスミノーゲン活性化経路の部分の組換え型および変異体が含まれる。
【0018】
ある態様において、感染性疾患は細菌感染性疾患またはウイルス感染性疾患である。
【0019】
さらなる態様において、該細菌性感染性疾患は、中耳炎、細菌性関節炎、歯肉炎、歯周炎、結膜炎、創傷感染、外科的創傷感染、壊死、肺炎、火傷および/または感染症により生じる呼吸器官の損傷、および糖尿病、静脈または静脈/動脈複合不全、または感染性関節炎などに罹患した患者の感染性慢性脚潰瘍、感染により生じた関節組織の損傷から選ばれ、好ましくは中耳炎または細菌性関節炎である。
【0020】
ある態様において、該組成物は2またはそれ以上の化合物の組み合わせを含む。ある態様において、該組成物はさらに少なくとも1の抗生剤(抗生物質製剤)を含む。
【0021】
さらなる態様において、抗生剤は、テトラサイクリン、アンフェニコール、ベータ・ラクタム、ペニシリン、スルホンアミド、マクロライド、リンコサミド、ストレプトガミン、ストレプトマイシン、キノロン、およびメトロニダゾールからなる群から選ばれる。
【0022】
ある態様において、対象は哺乳動物、特にヒトである。さらなる態様において、対象はプラスミンまたはプラスミノーゲンが欠乏(欠損)している。欠乏は、先天性、後天性、および/または局所的でありうる。
【0023】
ある態様において、該化合物は、全身性、局所性(locally、topically)、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、直腸内(経直腸的)に、または吸入、局所注射、もしくは関節内注射により投与される。好ましい態様において、局所投与および/または局所注射を用いる。
【0024】
ある態様において、該化合物は、適切なポリペプチド担体および/または1またはそれ以上の安定化剤と組み合わせて投与される。
【0025】
さらなる態様において、該化合物は、0.0001〜約1g、好ましくは0.005mg〜約100mg、より好ましくは約0.05〜約50mgの用量で投与される。用量(mg)は感染領域の平方センチメーターに比例する(すなわち、mg/cm2感染領域)。
【0026】
さらなる態様において、該化合物の投与は少なくとも1回、好ましくは少なくとも毎日反復される。
【0027】
さらなる態様において、投与は本発明化合物を含む創傷被覆材を感染領域に適用することにより行われる。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、感染性疾患の防御、予防、および/または治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に、有効量の適切な化合物を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0029】
ある態様において、本発明は、有効量の適切な化合物を含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療用の医薬組成物に関する。
【0030】
ある態様において、本発明は、有効量の適切な化合物および少なくとも1の抗生剤もしくは抗真菌剤を別のバイアルに含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療に用いるキットに関する。
【0031】
ある態様において、本発明は、感染症に対する宿主の防御を促進するのに有用な物質の同定方法であって、
(a)被検物質を細菌性関節炎を有する動物に投与し、
(b)少なくとも1のパラメーター:(i)殺菌度(細菌の殺滅度)、(ii)壊死組織形成、(iii)炎症細胞の活性化、(iv)感染症、例えば細菌性関節炎のサイトカインの発現、を評価し、
(c)工程(b)の選択したパラメーターをコントロール値と比較し、
(d)選択したパラメーターがコントロール値と比較して、感染症に対する宿主の防御を促進するのに有用な薬剤としてより有益なあらゆる被検物質を選択する、ことを含む方法に関する。
【0032】
ある態様において、該動物は野生型動物およびプラスミノーゲンの内因性発現を欠くトランスジェニック動物からなる群のメンバーから選ばれる。
【0033】
ある態様において、本発明はプラスミノーゲンの存在を診断的に測定することを含む進行中の感染症の診断方法に関する。
【0034】
ある態様において、本発明は、患者由来の試料(ここで、試料は、体液、血清、排泄された老廃物、例えば尿または糞便、呼気など)中のプラスミノーゲンの測定に用いるキットであって、プラスミノーゲン決定因子ならびに患者の試料を回収、保存、および/または試験するための手段を含む、進行中の感染症および/または進行中の治療の効果を測定するためのキットに関する。
(発明の説明)
【0035】
本明細書の耳に関する結果は、プラスミノーゲンが慢性中耳炎の自然発現を防御する役割を果たすことを示した。今回の結果は、ある種の中耳炎の臨床治療にプラスミノーゲンを用いることも示唆する。したがって、これらの知見は、プラスミノーゲン活性化経路の成分が新規前炎症因子としてあらゆる感染性疾患の予防および治療に役割を果たすことを示唆する。特に、プラスミノーゲン活性化経路の成分の前炎症効果には、炎症細胞を活性化し、細菌を殺し、壊死組織を除去し、サイトカインの発現を増強し、適切な組織の再形成を改善することが含まれる。この結論は、すべての感染性病原体、本明細書の試験に用いた主な細菌種であるS. aureusにより生じる膨大な種々の感染性疾患、および本特許出願で試験した種々の感染モデル(感染性関節炎、火傷誘発性感染、切開誘発性感染、および中耳炎を含む)に対する全体的な宿主の防御メカニズムの理解に基づく。
【0036】
感染性疾患は、現在、全ての癌を合わせた以上に、世界のすべてのヒトの死の約3分の1を引き起こす。多くの種類の病原体がヒトの疾患を引き起こす。最もよく知られているのはウイルスと細菌である。他の感染性病原体には、単細胞の真菌および原虫から寄生虫のような大きく複雑な後生動物におよぶ真核生物がある。各個々の病原体は種々の方法で疾患を引き起こし、感染症の基礎生物学の理解を困難にする。しかしながら、すべての病原体は病原体の複製と伝搬を促進する方法で宿主細胞と相互作用する能力を共有するが、この宿主と病原体の相互作用は多様である。病原体は、環境と直接接触する皮膚表面のような上皮表面に付着するかそこから侵入することにより宿主に定着する。すべてのウイルスならびに多くの細菌および原虫を含む細胞内病原体は、宿主細胞内で複製し、種々のメカニズムにより侵入する。ウイルスは、宿主細胞に入るために主にレセプター介在エンドサイトーシスに依存するが、細菌は細胞付着と食菌経路を利用する。原虫は、通常著しい代謝的支出を必要とする独特な侵入戦略を用いる。一旦内側に入ると、細胞内病原体は、その複製に適した生態的地位を探し出し、しばしば宿主細胞膜交通を変化させ、細胞内に移動するために細胞骨格を利用する。個々の宿主細胞の挙動を変化させるのに加え、病原体は、新しい宿主に伝搬するのに有利なように宿主生物の挙動を変化させることが多い。病原体は急速に進化し、新しい感染性疾患が頻繁に出現し、古い疾病はヒトが治療、予防、および根絶しようとする試みを逃れる新しい方法を獲得する。さらに、ワクチンや抗生物質のような感染性疾患に対する大きな進歩に伴い、病原体も、1)薬剤を破壊する酵素を産生し、2)薬剤に感受性でなくなるように薬剤の分子標的を変化させ、または3)標的への接近を妨げることにより薬剤耐性を発現させた。したがって、薬剤耐性病原体はますます大きな問題である。
【0037】
病原体がヒトに侵入するために種々の方法を発達させたにも関わらず、宿主の防御機構が感染に対処するパターンは限られている。宿主の防御機構には、適応免疫系と固有の免疫系の両方が含まれる。適応免疫系は以前に特定の病原体と出会ったことを記憶し、それが再度攻撃したときに固有の免疫系の助けを借りてその病原体を破壊するのに対し、固有の免疫系は、適応免疫系のようには特定病原体に対して特異的でない。すなわち、固有の免疫系は、侵入する病原体に対する最初の防御機構であり、特異的な適応免疫反応を引き起こすのにも必要である。
【0038】
固有免疫反応は、非感染宿主には存在しない病原体の保存された特徴を認識する身体の能力に依存する。この特徴には、例えば細菌のペプチドグリカン細胞壁および鞭毛、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、およびグラム陽性菌のテイコ酸、真菌の細胞壁中のザイモサン、グリカン、およびキチン、ならびにほとんどウイルスの二本鎖RNAが含まれる。これら病原体特異的分子の多くは、炎症性細胞のToll様レセプタータンパク質により認識される。脊椎動物では、微生物の表面分子は、微生物の膜を崩壊し、微生物をマクロファージおよび好中球により食菌させるために標的化し、炎症反応を生じさせるように共に作用する1群の血液タンパク質である補体系も活性化する。食細胞は分解酵素、抗菌ペプチド、および反応性酸素種の組み合わせを用いて侵入する微生物を殺す。炎症性細胞も分泌酵素や内部酵素により感染の結果形成された壊死組織を分解する。さらに、それらは、炎症反応を引き起こし、適応免疫系の力を導き始める情報伝達分子を放出する。ウイルスに感染した細胞は、死細胞/死にかけの細胞、Toll様タンパク質、およびデフェンシンを介してマクロファージにより認識される。これらマクロファージはさらに炎症性サイトカインを分泌し、ファゴリソゾーム中のウイルスタンパク質を加水分解し、付近のリンパ節や脾臓にウイルスタンパク質を提示し、より炎症性細胞を活性化することにより反応する。補体系はウイルスを認識し、ウイルスを殺す炎症性細胞を活性化し、さらに抗体を産生する適応免疫系を誘導することができる。
【0039】
上記のように、固有免疫系では炎症性細胞(好中球およびマクロファージ)は、ウイルスおよび細菌、単細胞真菌および原虫から寄生虫のような大きく複雑な後生動物までのすべての種類の感染に対する宿主の防御に中心的役割を果たす。炎症性細胞は、直接、またはToll様レセプターや補体レセプターのような種々の細胞表面レセプターを介して病原体を活発に探し、飲み込み、破壊する。病原体が大きな寄生虫のように大きすぎる場合は、一群のマクロファージおよび好中球は侵入者の周りに集まる。活性化マクロファージも活性部位にさらなる食細胞を補充する。炎症性細胞は、炎症反応を仲介し、増幅する種々の情報伝達分子も分泌する。感染性病原体に対するB細胞介在性適応免疫反応において、新たに生じた抗体は、そのFabフラグメントを介して病原体上の抗原、およびそのFcフラグメントを介して炎症性細胞(主としてマクロファージ)上の表面レセプター(FcR)と結合し、炎症性細胞と病原体を結合させ、さらに病原体を殺す。
【0040】
開示した発見に基づくプラスミノーゲンおよびその誘導体の投与は、炎症性細胞を活性化し、細菌を殺し、壊死組織を除去し、サイトカインの発現を増大し、正常細胞の再形成を促すことにより例えばS. aureus誘発細菌性関節炎、開放創傷感染、および中耳炎に対する防御に多能的役割を果たす。これらすべての効果は、炎症性細胞がすべての種類の感染症に及ぼす強力な機能の別の局面である。本発明者らが持つデータ全てを説明するために作業仮説をたてた。この仮説のキーポイントは、プラスミノーゲンが炎症性細胞の活性を強化し、殺菌、壊死組織の除去、サイトカイン発現の促進、および正常組織の再形成の促進といった工程を仲介することである。上記のように、炎症性細胞(好中球およびマクロファージ)は、ウイルスおよび細菌、単細胞真菌および原虫から寄生虫のような大きい複雑な後生動物までのあらゆる種類の感染に対する宿主の防御に中心的役割を果たす。したがって、本発明において報告した発見は、プラスミノーゲンおよびその誘導体がすべての感染性疾患および壊死に対する宿主の防御における新規薬剤候補であるという結論を支持する。
【0041】
本発明の実施例を、種々のモデルで異なる角度からプラスミノーゲン活性化因子系の強力な抗感染的役割を証明するために示す。実施例1は、plg-/-マウスが細菌性関節炎誘発後にplg+/+マウスに比べてより重症の組織破壊とより重症の慢性炎症を有することを示す。
【0042】
これらplg-/-マウスは、細菌を殺すことについて機能障害があり(実施例3)、IL-10の発現レベルが低い(実施例9)が、感染した関節へのマクロファージおよび好中球の浸潤にはplg-/-マウスに明らかな障害はみられない(実施例4)。抗生物質治療は、細菌を殺し、炎症を低下させるが、plg-/-マウスにおける壊死組織の形成を減少させない(実施例2)。しかしながら、plg-/-マウスへのヒトプラスミノーゲン(hPlg)の全身または局所的補充は、S. aureus誘発性細菌性関節炎に対する正常宿主防御を修復し(実施例5および6)、感染した膝関節におけるIL-6タンパク質発現を増加させた(実施例8)。plg+/+マウスへのヒトプラスミノーゲンの局所的補完は、S. aureus感染症に対する自己防御を増強し(実施例7)、プラスミノーゲンが抗生物質より優れた抗感染剤であり、野生型正常動物に効果的に用いることができることを強く示唆した。感染に対する宿主の防御と組織の再形成におけるプラスミノーゲン活性化系の重要性は、さらにuPA-/-マウスの使用により示される(実施例10)。実施例10は、プラスミノーゲンは活性化因子の非存在下では効果が低いようであるので、活性化プラスミノーゲンを活性化する因子が治療薬としても有用でありうることを示す。さらに、感染に対する宿主の防御におけるプラスミノーゲンの本質的役割が、別の細菌性関節炎モデル(細菌のi.v.注射、実施例11および12)、および別の2種類の開放創傷感染モデル、切開創(切り傷)(実施例13)、および火傷の傷(実施例14)におけるplg-/-マウスの使用によりさらに確認された。中耳炎の自然発生の検討は、試験したすべてのplg-/-マウスは耳の感染症を有するが、plg+/+マウスはすべて無感染のままであったことを示す(実施例17)。耳組織からの細菌の回収は、1種類の細菌のみが6匹のplg+/+マウスのうちの1匹で同定されたが、4種類の細菌が6匹のplg-/-マウスのうちの5匹に同定されたことを示した(実施例15および16)。全体としてこれら実施例は、種々の抗感染性の局面からプラスミノーゲンの多能的役割を特徴づけ、プラスミノーゲンおよびその誘導体がすべての感染性疾患に対する宿主の防御における新規薬剤候補であるとの結論を強く支持する。
【発明の効果】
【0043】
本発明のプラスミノーゲン化合物および方法は、感染症または壊死状態に向けた炎症反応をもたらすので、本発明の化合物および方法はすべての感染性疾患、特に細菌性感染性疾患、および壊死に対する防御を提供しうる。そのような感染状態には、感染性疾患、および組織感染が例えば感染防御時に一般的に観察される他の疾患、慢性潰瘍、および糖尿病性潰瘍が含まれる。そのような壊死は、本明細書で試験した疾患モデルのみならず、組織壊死も誘発しうる他の種類の疾患、例えば、(阻血性)大腿骨頭壊死、乳頭壊死、股関節壊死、腎皮質壊死、急性尿細管(tubular)壊死、急性網膜壊死、急性尿細管壊死、心筋梗塞、膵臓壊死、虚血性大腸炎、壊死性筋膜炎に存在する。損傷、感染症、癌、梗塞、毒物注入(invenomation)、治るのが遅く治らない傷、糖尿病、および炎症を含む多くの壊死の原因がある。さらに、重度の炎症、組織破壊、壊死、および細菌増殖はすべてプラスミノーゲン欠乏動物で永続的に存続したことが発見され、細菌感染症および組織壊死を研究するための新規モデル、および細菌感染症および組織壊死の増強に対する薬剤および処置方法を同定および評価するためのスクリーニング方法を提供する。
【0044】
したがって、第1の局面において、本発明は、感染性疾患を防御、予防、および/または治療するための医薬組成物を製造するための、プラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物、または直接もしくはプラスミノーゲン活性化経路の上流成分を活性化することにより間接的にプラスミノーゲンを活性化する能力を有する化合物の使用に言及する。
【0045】
好ましい態様において、プラスミノーゲン活性化経路の成分は、プラスミノーゲン、ヒト組換えプラスミン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルおよびプロテアーゼドメインの1またはそれ以上を含むプラスミノーゲンおよびプラスミンの変異体および類似体、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、tPA、およびuPAから選ばれる。
【0046】
別の好ましい態様において、プラスミノーゲンの活性化能を有する化合物は、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼ、およびプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変異体から選ばれる。
【0047】
一般に、プラスミノーゲン活性化経路の成分、またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物は、全身的、局所的(locally、topically)、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、直腸内に、または吸入、局所注射、関節内注射により投与することができる。好ましい態様において、局所投与および/または局所注射を用いる。
【0048】
また、プラスミノーゲン活性化経路の成分、またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物は、適切なポリペプチド担体、例えばアルブミン、ゼラチンなど、および/または1またはそれ以上の安定化剤、例えば界面活性剤、シクロデキストリン、サッカライド、ジメチルスルホキシド、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、抗酸化剤、金属キレート剤、酵素阻害剤などを組み合わせて投与することができる。そのような添加剤を用いて、吸着/吸収を最小限にし、凝集を減少させ、溶解性を改善し、酸化を減少させ、分解を減少させることを含む多くの方法で生成物の安定性を改善することができる。特定のタンパク質に適した担体を考案する方法は当該分野でよく知られている。
【0049】
さらに、一例としてプラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物は、0.0001〜約1g、好ましくは0.005mg〜約100mg、より好ましくは約0.05〜約50mgの用量で投与することができよう。用量(mg)は、感染領域の平方センチメートルに比例する(すなわちmg/cm2感染領域)。
【0050】
さらに、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物の投与は、例えば少なくとも1回、好ましくは少なくとも毎日反復してよい。
【0051】
本発明および特許請求の範囲との関連において、対象はあらゆる哺乳動物対象、特にヒト対象でありうる。
【0052】
また、別の好ましい態様において、感染性疾患は細菌性感染性疾患である。
【0053】
特に、細菌性感染性疾患は、中耳炎、細菌性関節炎、歯肉炎、歯周炎、結膜炎、角膜炎、創傷感染、外科的創傷感染、膣感染症/損傷、壊死、感染症、例えば肺炎、火傷および/または感染症により生じる呼吸器の損傷、および糖尿病、全身感染症、静脈または静脈/動脈複合不全による感染症もしくは感染性関節炎などに罹患した患者の感染性慢性脚潰瘍、感染により生じた関節組織の損傷への二次感染から選ばれる。特に、添付の実施に示すように、本発明は、中耳炎、細菌性関節炎、火傷に関連する感染症、および切開創関連感染症を治療するのに有効である。
【0054】
Staphylococcus aureusは、滑膜の炎症、軟骨および骨の破壊、最終的に関節の変形をもたらす細菌性関節炎に最もしばしば関連する微生物である。
【0055】
細菌性関節炎は、急速に進行し、破壊性の高いヒトの関節疾患である。関節リウマチのような炎症性疾患を含むすべての破壊性関節疾患は、細菌性関節炎の発生率の増加と関連がある。関節移植や免疫抑制治療のようなある種の治療法は、細菌性関節炎の頻度の増加を示す。S. aureusは、非淋菌性細菌性関節炎症例の約60%の原因菌である。リウマチ性疾患の患者では、この値はさらに高く、75%に及ぶ。細菌性関節炎の実験モデルは以前に用いられてきた。ほとんどの場合、細菌を関節内に注射する。関節へのS. aureus感染による罹患率と死亡率は、新規抗生物質の使用にも関わらず高いままである。S. aureusの抗生物質に対する多剤耐性の保有率の増加は、大きな公衆衛生上の関心事である。したがって、宿主防御を顕著に増大することができる強力な新規薬剤の必要性が大きい。
【0056】
中耳炎は、一般的な風邪を除くと最も一般的な幼児期の疾患である。中耳炎に関連する最も重要な病因因子は、上気道の細菌またはウイルス感染症である。中耳炎は一般に良性で自己限定性疾患であるが、それにも関わらず、抗生物質の処方率が高い。事実、中耳炎の治療における抗生物質の効果は証拠がなく、今までのところ外科的介入が再発性急性中耳炎(AOM)および滲出性中耳炎(OME)の治療に最適な治療法である。
【0057】
患者皮膚の正常細菌叢(すなわち、S. aureusおよびStreptococcus pyogenes(化膿性連鎖球菌))による急速な定着(コロニー形成)が損傷後に起きることがよく知られている。特に1950年代初期に火傷患者の感染原因としてStreptococcus pyogenesの事実上の排除をもたらしたペニシリンGの導入後、S. aureusは、創傷感染の主な病原体になった。したがって、S. aureusは、開放創傷感染症における最も一般的な細菌種の1つである。切り傷と火傷は、臨床で観察される最も一般的な傷のタイプである。細菌性関節炎の状況と同様に、細菌の薬剤耐性の問題が増大することにより、宿主の防御を顕著に増大することができる強力な新規薬剤の必要性が大きい。
【0058】
基本的に、本発明は、細菌、ウイルス、および真菌の感染症により生じる感染性疾患を含むすべての感染性疾患の治療に有効である。
【0059】
基本的に、本発明のプラスミノーゲン化合物および方法は、感染症、感染性疾患、または壊死状態に対する炎症反応をもたらすので、本発明の化合物および方法はすべての感染性疾患、特に細菌、ウイルス、および真菌の感染症により誘発される感染性疾患に対する有効な治療法を提供しうる。
【0060】
本発明に従って治療することができる感染性疾患または症状をもたらしうる細菌性および真菌性病原体には、限定されるものではないが、以下のグラム陰性およびグラム陽性細菌、細菌ファミリー、および真菌が含まれる:アクチノマイセス(例えば、ノカルジア)、アシネトバクター、Cryptococcus neoformans、アスペルギルス、バチルス(Bacillaceae)(例えば、Bacillus anthrasis)、バクテロイデス(例えば、Bacteroides fragilis)、ブラストマイコシス(Blastomycosis)、ボルデテラ、ボレリア(例えば、Borrelia burgdorferi)、ブルセラ、カンジダ(Candidia)、カンピロバクター、クラミジア、クロストリジウム(例えば、Clostridium botulinum、Clostridium dificile、Clostridium perfringens、Clostridium tetani)、コクシジオイデス、コリネバクテリウム(例えば、Corynebacterium diptheriae)、クリプトコッカス、皮膚真菌症(Dermatocycoses)、大腸菌(E.coli)(例えば、腸管毒素原性大腸菌および腸管出血性大腸菌)、エンテロバクター(例えば、Enterobacter aerogenes)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)(クレブシエラ、サルモネラ(例えば、Salmonella typhi、Salmonella enteritidis、Salmonella typhi)、セラチア、エルシニア、シゲラ)、エリシペロスリクス、ヘモフィルス(例えば、Haemophilus influenza B型)、ヘリコバクター、レジオネラ(例えば、Legionella pneumophila)、レプトスピラ、リステリア(例えば、Listeria monocytogenes)、マイコプラズマ、マイコバクテリウム(例えば、Mycobacterium lepraeおよびMycobacterium pneumoniae)、ビブリオ(例えば、Vibrio cholerae)、ナイセリア(Neisseriaceae)(例えば、Neisseria gonorrhea、Neisseria meningitidis)、パスツレラ(Pasteurellacea)、プロテウス、シュードモナス(例えば、Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア(Rickettsiaceae)、スピロヘータ(例えば、Treponema spp.、Leptospira spp.、Borrelia spp.)、シゲラ(Shigella spp.)、スタフィロコッカス(例えば、Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(メニンギオコッカス)、肺炎球菌(ニューモコッカス)、およびストレプトコッカス(例えば、Streptococcus pneumoniae、およびA、B、およびC群連鎖球菌)、およびウレアプラズマ。
【0061】
これら細菌、寄生生物、および真菌ファミリーは、限定されるものではないが、以下のものを含む疾患または症状を生じうる:敗血症、例えば菌血症、溶血性敗血症;および真菌血症;中枢神経系の細菌感染症、例えばライム神経ボレリア症、細菌性髄膜炎および脳炎、脳トキソプラズマ症および神経梅毒;細菌性眼疾患、例えば、細菌性結膜炎、感染性角結膜炎、感染性角膜炎、眼結核、およびブドウ膜炎;細菌性耳感染症、例えば中耳炎、外耳炎;性感染症、例えばクラミジア感染症、淋病、および梅毒;感染性皮膚疾患、例えば、蜂窩織炎、皮膚真菌症、および細菌性皮膚疾患、例えば、放線菌症、血管腫症、膿瘡、丹毒、ブドウ球菌皮膚感染症、皮膚梅毒、および皮膚結核;細菌性膣症;呼吸器感染症、例えば百日咳および肺炎、例えば肺炎球菌性肺炎、ブドウ球菌性肺炎、およびマイコプラズマ性肺炎;尿路感染症、例えば細菌尿症;創傷感染、例えば、外科的創傷感染、慢性感染性皮膚潰瘍、壊死、開放創傷感染;細菌性関節炎;感染性骨疾患、例えば骨炎、骨髄炎、骨膜炎、脊椎炎、および骨関節結核;心血管感染症、例えば細菌性心内膜炎、心血管梅毒、および心血管結核;歯周病、例えば歯肉炎および歯周炎;AIDS関連日和見感染;骨盤内感染;感染性妊娠合併症。従って、これらは本発明に従って治療することができる。本発明が有効な感染性疾患のより広範なリストについては、ウェブページのhttp://www.health.vic.gov.au/ideas/diseases/quicklinks.htm.または感染性疾患について開示する当該分野のあらゆる関連雑誌(参考文献リスト参照)に記載されている。
【0062】
本発明の化合物およびプラスミノーゲン活性化経路は、細菌感染症および壊死病状の場合と同様にウイルス性感染症に対する炎症反応をもたらすため、本発明の化合物および方法は、下記のものを含むウイルス感染症および病状に対する同様に有用な防御をもたらす。
【0063】
感染性疾患または症状を生じ、本発明に従って治療することができるウイルス性物質には、限定されるものではないが以下のものが含まれる:アルボウイルス感染症、例えばブルータング、デング、アルボウイルス脳炎、サシチョウバエ熱、リフトバレー熱、ダニ媒介疾患、および黄熱;ウイルス性細気管支炎;中枢神経系ウイルス性疾患、例えば脳炎、ウイルス性髄膜炎、脊髄炎、ポリオ(灰白髄炎)、および仮性狂犬病;DNAウイルス感染症、例えばアデノウイルス感染症、アフリカブタ熱、サーコウイルス感染症、ヘパドナウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症(限定されるものではないが単純ヘルペス、帯状疱疹、およびサイトメガロウイルス感染症を含む)、パピローマウイルス感染症、パルボウイルス感染症、ポリオーマウイルス感染症、およびポックスウイルス感染症;ウイルス性脳炎、例えばアルボウイルス脳炎、単純ヘルペス脳炎、および水痘帯状疱疹脳炎、ウイルス性眼感染症、例えば、ウイルス性結膜炎、サイトメガロウイルス性網膜炎、眼部帯状疱疹、およびヘルペス性角膜炎;ウイルス性肝炎、例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、およびE型肝炎;日和見感染、例えば、AIDS関連日和見感染;ウイルス性肺炎;RNAウイルス感染症、例えば、アレナウイルス感染症、アストロウイルス感染症、ビルナウイルス感染症、ブニヤウイルス感染症(限定されるものではないがハンタウイルス感染症を含む)、カリシウイルス感染症、アルボウイルス脳炎、フラビウイルス感染症、ウイルス性出血熱、モノネガウイルス感染症(限定されるものではないが、ラブドウイルス感染症(例えば狂犬病)、パラミクソウイルス感染症、例えばモルビリウイルス感染症(限定されるものではないが麻疹を含む)、ニューモウイルス感染症(限定されるものではないが、RS(呼吸器合胞体)ウイルス感染症を含む)、およびルブラウイルス感染症(限定されるものではないが、おたふく風邪を含む)を含む)、ニドウイルス感染症(限定されるものではないが、コロナウイルス感染症、例えば重症急性呼吸器症候群(SARS)を含む)、オルソミクソウイルス感染症(例えば、インフルエンザ)、ピコルナウイルス感染症(例えば、エンテロウイルス感染症)、レオウイルス感染症(限定されるものではないが、ロタウイルス感染症を含む)、レトロウイルス感染症(限定されるものではないが、レンチウイルス感染症を含む)、およびトガウイルス感染症;ウイルス性性感染症;ウイルス性皮膚疾患、例えば、伝染性紅斑、突発疹、単純ヘルペス、伝染性軟属腫、およびイボ;遅発性ウイルス疾患、例えばAIDS、進行性多巣性白質脳症、および亜急性硬化性全脳炎;腫瘍ウイルス感染症、例えば、エプスタイン・バーウイルス感染症、マレック病、およびパピローマウイルス感染症、およびウイルス血症。
【0064】
別の態様において、該組成物は、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物である2またはそれ以上の化合物の組み合わせを含む。
【0065】
さらに別の態様において、該組成物はさらに少なくとも1の抗生剤を含む。
【0066】
抗生剤は、例えばテトラサイクリン、アンフェニコール、ベータ・ラクタム、ペニシリン、スルホンアミド、マクロライド、リンコサミド、ストレプトガミン、ストレプトマイシン、キノロン、およびメトロニダゾール、ならびにあらゆる適切な抗菌剤、マイコサイド、または防かび剤からなる群から選ばれる。
【0067】
さらに別の態様において、感染性疾患の防御、予防、および/または治療は、感染性病原体に対する免疫反応を含む。
【0068】
第二の局面において、本発明は、感染性疾患の防御、予防、および/または治療方法であって、そのような処置を必要とする対象に、有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物を含む医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0069】
さらに別の局面において、本発明は、有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物、および医薬的に許容される担体を含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療用の医薬組成物に関する。
【0070】
さらに別の局面において、本発明は、有効量のプラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物および少なくとも1の抗生剤、抗ウイルス剤または抗真菌剤を別個のバイアルに含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療に用いる部分のキットに関する。
【0071】
さらなる局面において、本発明は以下の工程を含む感染に対する宿主の防御を促すのに有用な物質の同定方法に関する:(a)細菌性関節炎を有する動物に被検物質を投与し、(b)以下のパラメータ(i)細菌の殺滅度、(ii)壊死組織形成、(iii)炎症性細胞の活性化、(iv)感染症、例えば細菌性関節炎のサイトカイン発現の少なくとも1を、蛍光または放射性同位元素による生体マーカー標識、体液または組織乳剤の微生物学的プラークアッセイ、FACS分析、ELISA、組織学的検査、および/または細胞毒性アッセイを用いて評価し(細菌の殺滅については、ある組織/臓器から細菌を簡単に回収することができる。壊死組織の形成については、剖検した組織を定量することができる。炎症細胞の活性化については、種々の炎症細胞マーカーの組織化学、ELISA、ウエスタンブロッティングで測定することができる。サイトカインの発現については、サイトカインレベルの検出用キットがある。これらの方法はすべて本明細書の実施例の項に含まれ、用いることができる。)、(c)工程(b)の選択したパラメーターをコントロール値と比較し(ここで、プラスミノーゲンを陽性コントロールとして、非処置群を陰性コントロールとして用いることができる)、(d)選択したパラメーターが感染に対する宿主の防御を促すのに有用な物質としてコントロール値に比べて有益である被検物質を選択する。
【0072】
好ましい態様において、モデル動物の試験は、野生型動物およびプラスミノーゲンの内因性発現を欠くトランスジェニック動物からなる群のメンバーから選ばれる。
【0073】
さらに別の局面において、本発明は、診断的にプラスミノーゲンの存在を測定することを含む進行中の感染症の診断方法に関する。
【0074】
さらに別の局面において、本発明は、進行中の感染症および/または進行中の治療の効果を測定するための、プラスミノーゲン決定因子、ならびに患者試料を回収し、保存し、および/または試験する手段を含む、患者由来の試料(ここで、該試料は、体液、血清、排泄された老廃物、例えば尿や便、呼気など)中のプラスミノーゲンの測定に用いるキットに関する。
【0075】
したがって、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物である活性物質を含む組成物を投与することを含む宿主の感染の防御を改善する方法を提供する。好ましくは、該活性物質は、プラスミンもしくはプラスミノーゲン、またはプラスミンもしくはプラスミノーゲンの類似体から選ばれる。最も好ましくは、該活性成分はプラスミノーゲンである。活性物質は、当該分野で知られたあらゆる投与経路により投与することができる。限定されるものではないが、好ましい投与経路には、局所適用および局所注射が含まれる。該物質は、可能であれば感染領域上に適用される創傷被覆材中に存在してもよく、該物質は創傷被覆材から感染部位に移行する。該物質は、リンス溶液、点眼液、およびうがい溶液など中に存在してもよく、感染領域を消毒するのに適用される。
【0076】
本発明は、プラスミンまたはプラスミノーゲンである活性成分を投与することを含む、感染宿主の防御が遅れるか弱まった病状の感染に対する宿主の防御を開始する方法も提供する。特定の態様において、本発明の方法は、局所的または全身的にプラスミンまたはプラスミノーゲンが低レベルの病状における感染防御を改善するのに用いることができる。そのような病状は、先天性および/または後天性でありうる。
【0077】
プラスミンまたはプラスミノーゲンの全身的欠乏を伴う先天的病状の例には、限定されるものではないが、プラスミノーゲン(PLG)遺伝子(GenBank参照配列受託No:NM 000301、GeneID:5340、この中のアミノ酸残基番号は、GenBank受託No:NP 000292に示す成熟ヒトペプチドを参照する)の突然変異を含み、プラスミノーゲン異常症、例えばALA601THR、VAL355PHE、SER572PROおよびGLY732ARG、またはI型プラスミノーゲン、例えばARG216HIS、TRP597TER、GLU460TER、LYS212DEL、およびLYSl9GLUを生じる。先天性プラスミノーゲン欠乏症が存在する場合はプラスミノーゲンである薬剤の投与が好ましい。
【0078】
後天的な全身的および/または局所的プラスミンまたはプラスミノーゲン異常(欠陥)の例は、妊娠、老齢、ストレス、肥満、および温度変化のような生理学的状態の変化によるものでありうる。種々の疾患状態、外科手術、放射線照射、および食習慣も繊維素溶解不全状態をもたらすメカニズムを引き起こしうる。抗癌剤、経口避妊薬、サイトカイン、および血液成分を含む種々の薬剤も、患者を血栓性合併症に罹りやすくする一過性繊維素溶解不全を生じうる。繊維素溶解不全状態の患者ポピュレーションの同定は、心筋梗塞や血栓性脳卒中のような重篤な事象をもたらすことがある血栓性合併症を防止するための重要な工程である。機能的方法および免疫学的方法はともに今や繊維素溶解不全の急速診断に利用可能になってきた。すなわち、繊維素溶解不全による血栓性合併症のリスクがある患者を評価することが重要である。
【0079】
別の態様において、本発明は、プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンの活性化因子、またはプラスミンのタンパク分解活性を増強する化合物である化合物または薬剤を投与することによりヒトまたは非ヒト対象における感染症を治療し、感染防御を増強する方法を提供する。
【0080】
さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物である活性成分を含む組成物を投与することを含む、細菌性関節炎および/または中耳炎に対する感染防御を改善する方法を提供する。好ましい態様において、該活性成分はプラスミノーゲンであり、該組成物は局所適用により投与される。
【0081】
さらに、本発明は、プラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物を含む組成物の局所もしくは全身投与を含む、組成物を投与することにより壊死形成を減少または予防する方法を提供する。該組成物は、ゲル、ローション、バーム、ペースト、傷用包帯、または創傷被覆材の部分でありうる。あるいはまた、該組成物は全身投与することができる。ある態様において、本発明の方法は、感染症、潰瘍、及び壊死の発生および形成を減少させるために形成外科手術と組み合わせて適用される。
【0082】
さらに別の態様において、本発明は、プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、またはプラスミンのタンパク質分解活性を増強する化合物である化合物または薬剤を投与することによりプラスミン-プラスミノーゲン系の活性の不全がある対象における感染の治療および感染防御の増強方法を提供する。
【0083】
本発明は、さらに動物モデルの感染防御を改善するのに有用な化合物の同定方法を提供する。本発明の方法によれば、プラスミノーゲン欠乏動物を感染させ、該動物に被検化合物を予め決定した経路で投与する。次に、プラスミノーゲン欠乏動物における感染防御を、例えば野生型動物における感染防御のようなコントロール値と比較し、被検化合物が感染防御率を改善するかまたは壊死形成を減少させるか否かを評価する。本発明の方法のために好ましい動物モデルは、プラスミノーゲンの対立遺伝子の1つまたは両方を欠くノックアウトマウス、またはトランスジェニックマウスである。ある態様において、膝関節を感染させ、該関節の宿主防御をプラスミノーゲン添加の存在下および非存在下で試験した。別の態様において、中耳炎の自然発生を追跡する。鼓膜の肉眼的外観を注意深く観察し、耳顕微鏡下で記録し、鼓膜の宿主防御をプラスミノーゲン添加の存在下および非存在下で試験する。さらに別の態様において、開放創傷、例えば火傷および切開創を感染させ、受傷部位における感染に対する宿主の防御をプラスミノーゲン添加の存在下および非存在下で試験する。
【0084】
さらに、本発明は、プラスミノーゲンを発現するin vitroまたはin vivoモデルを含む感染に対する宿主の防御を改善するのに用いることができる薬剤のin vivoスクリーニング方法を提供する。該in vivoモデルは、野生型またはプラスミノーゲン欠乏の動物を含む。スクリーニングする1またはそれ以上の薬剤を投与した後、プラスミノーゲンおよび/またはプラスミンの活性またはレベルを測定する。好ましい態様において、動物モデルは、膝関節の細菌性関節炎モデルであり、細菌性関節炎を薬剤投与の前もしくは後または薬剤投与と同時に誘発する。別の態様において、動物モデルは開放創傷感染モデルであり、該開放創傷感染を薬剤投与の前もしくは後または薬剤投与と同時に誘発する。
【0085】
本発明は、プラスミノーゲン活性の活性化因子またはプラスミノーゲン発現の模倣化合物を含む組成物を投与することにより感染性疾患に対する宿主の防御を改善する方法も提供する。好ましくは、プラスミノーゲンは感染領域において高濃度を達成するよう局所投与される。別の態様において、該組成物は、プラスミノーゲン/プラスミン活性を模倣する化合物および同様の活性を有する分子を含む。さらに別の態様において、該組成物はプラスミノーゲンの発現を上方調節する薬剤を含む。
【0086】
さらに、本発明は、プラスミノーゲンまたはプラスミノーゲン活性化因子の発現を上方調節する薬剤を投与することにより慢性感染症および壊死を治療する方法を提供する。
【0087】
さらに、本発明は、細菌性関節炎および中耳炎および開放創傷感染の宿主防御を改善し、および/または感染に対する宿主の防御を改善し、および/または治癒しつつある創傷の壊死組織形成を減らすための医薬を製造するための、プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンもしくはプラスミンのフラグメント、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲン類似体、プラスミン類似体、またはプラスミノーゲン活性化経路の成分の類似体、またはプラスミノーゲンの活性化能を有する化合物を含む群の化合物の使用に関する。
【0088】
本発明の上記特徴および多くの他の利点は、添付の図面と組み合わせて以下の詳細な説明を参照してより理解されるようになろう。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】plg+/+(左)およびplg-/-(右)マウスの関節炎膝関節の代表的切片の組織像。Plg+/+およびplg-/-マウスに1x106CFUのS. aureusを関節内注射した。(A、C、E):関節炎誘導後各第7、14、および28日のplg+/+マウスの関節炎膝関節。(B、D、F):関節炎誘導後各第7、14、および28日のplg-/-マウスの関節炎膝関節。(G):抗生物質治療後7日目のplg+/+マウスの関節炎膝関節。(H):抗生物質治療後7日目のplg-/-マウスの関節炎膝関節。壊死組織が関節腔内に観察される(矢印)。滑膜(Sm)。
【0090】
【図2】各時点での感染関節における壊死組織の定量。感染関節における壊死組織の量を材料と方法に記載のごとく組織学的にスコア付けした。Plg+/+およびplg-/-マウスを1x106 CFUのS. aureus注射後第7日、第14日、および第28日で比較した。結果を平均±SDで示す。** = p<0.01(student t検定による)。
【0091】
【図3】1x106 CFUのS. aureusを関節内注射したplg+/+およびplg-/-マウスの感染膝関節中の好中球数およびマクロファージ数。A.浸潤好中球数を細菌注射後第1日、第7日、および第14日に比較した。バーはマウス5匹の平均値を示す。B.浸潤マクロファージ数を細菌注射後第1日、第7日、および第14日に比較した。バーはマウス5匹の平均値を示す。誤差バーはSDを示す。
【0092】
【図4】プラスミノーゲン補給後のplg+/+およびplg-/-マウスの全膝関節の組織学的分析。A、B:細菌注射後第7日および第14日のplg+/+マウスのコントロール関節炎膝関節。C、D:細菌注射後第7日および第14日のplg-/-マウスのコントロール関節炎膝関節(PBSを注射)。E:細菌注射後第0日〜第7日にヒトプラスミノーゲン(hPlg)を補給したplg-/-関節炎膝関節。F:細菌注射後第7日〜第14日にヒトプラスミノーゲンを補給したplg-/-関節炎膝関節。
【0093】
【図5】滑膜中のIL-6タンパク質発現レベル。plg+/+およびplg-/-マウスからの膝関節の典型的切片の免疫染色。A:細菌注射後第7日のplg+/+マウスのPBS処置コントロール関節炎膝関節。B:細菌注射後第7日のplg-/-マウスのPBS処置コントロール関節炎膝関節。C:細菌注射後第0日〜第7日にヒトプラスミノーゲン(hPlg)を補給したplg-/-関節炎膝関節。ピンク色は滑膜中のIL-6を示す(矢印)。
【0094】
【図6】非感染および感染膝関節中のIL-1Oタンパク質の発現レベルのウエスタンブロット分析。A.溶解物中のIL-1Oレベル。レーン1:plg-/-マウスの非感染膝関節溶解物;レーン2:plg+/+マウスの非感染膝関節溶解物;レーン3:細菌注射後第3日のplg-/-関節炎膝関節;レーン4:細菌注射後第3日のplg+/+関節炎膝関節;レーン5:細菌注射後第7日のplg-/-関節炎膝関節;レーン6:細菌注射後第7日のplg+/+関節炎膝関節。B、コントロールとしてのAの各レーンに対応する溶解物中のβアクチンレベル。実験を少なくとも3回反復し、典型的結果を示した。
【0095】
【図7】野生型マウスおよびplg欠乏マウスの典型的中耳の形態(トルイジンブルー染色(AおよびB)、ならびにフィブリン(CおよびD)およびケラチン(EおよびF)の免疫組織化学染色)。A.野生型マウスの中耳。中耳腔(MEC)内に浸出物質は検出されない。B.plg欠乏マウスの中耳。中耳腔中に中耳炎が存在する。CおよびD.フィブリン(フィブリノーゲン)について免疫化学染色により分析した野生型マウスおよびplg欠乏マウスの各中耳。EおよびF.ケラチンについて免疫化学染色により分析した野生型マウスおよびplg欠乏マウスの各中耳。O、耳小骨。バー:50μm。
【0096】
【図8】野生型およびplg欠乏マウスの中耳のT細胞、B細胞、マクロファージ、および好中球の免疫組織化学染色。野生型コントロール(A、C、E、G)および典型的plg欠乏マウス(B、D、F、H)の中耳をT細胞(AおよびB)、B細胞(CおよびD)、マクロファージ(EおよびF)、および好中球(GおよびH)の免疫組織化学染色により分析した。O、耳小骨。バー:50μm。
【0097】
【図9】1x106 CFUのS. aureus Phillipsを膝関節に接種した後に種々の局所および全身治療を行ったpig-/-およびplg+/+マウスの膝関節中の細菌数。
【0098】
【図10】S. aureusを膝関節に接種後3日間のplg(黒ボックス)またはPBS(白ボックス)を局所注射した後のplg+/+マウスの膝関節中の細菌数。Plgを局所注射した野生型マウスではPBSを局所注射した野生型より細菌数が5倍有意に低かった。
【0099】
【図11】uPA欠乏および野生型マウスの膝関節中の細菌数。野生型マウスではS. aureusの接種後第0日に細菌数が急速に低下したが、uPA欠乏マウスでは試験期間を通して細菌数は常に2.0x105 CFU以上であった。
【0100】
【図12】1x106 CFUのS. aureusを関節内注射後第7日(A、D)、第14日(B、E)、および第28日(C、F)のuPA欠乏(uPA-/-、左)および野生型((uPA+/+、右)マウスの関節炎膝関節の典型的切片の組織像。uPA-/-マウスでは実験を通して、浮腫、組織破壊、および壊死組織形成がはるかに大きかったが、uPA+/+マウスでは関節炎誘導後第7日に一過性に炎症がみられ、その後減少した。
【0101】
【図13】plg+/+およびplg-/-マウス間の体重変化の比較。1x106 CFUの細菌注射後の体重変化の経時変化。マウスの体重を第1日から第21日まで24時間毎にチェックした。
【0102】
【図14】敗血症性関節炎の重症度。材料と方法に記載した関節炎指数を用いて敗血症性関節炎の重症度を評価した結果。関節炎は1x1O6 CFUのS. aureus Phillipsを静脈内注射して誘導した。Plg+/+マウス(n=15)およびplg-/-マウス(n=16)。各時点を平均±SEMで示す。統計的有意検定はMann-whitney u-検定を用いて行った(欠乏マウス対コントロールマウス)。* P<0.05を有意とみなした。
【0103】
【図15】プラスミノーゲン欠乏は、敗血症性関節炎の組織学的特徴を悪化させる。サフラニン-Oで染色した足(paw)関節切片の組織像。plg+/+(左)およびplg-/-(右)マウスへの1x106 CFUのS. aureusの静脈内注射後の関節炎の足関節の典型的切片の形態。関節炎発症後第1(A)、第3日(B)、第7日(C)、および第14日(D)の野生型マウスの関節炎足関節。関節炎発症後第1(E)、第3日(F)、第7日(G)、および第14日(H)のplg-/-マウスの関節炎足関節。
【0104】
【図16】感染足首関節の壊死組織。壊死は組織観察に基づいた。壊死が確認されたいくつかの試料をさらにTUNEL染色で確認した。
【0105】
【図17】感染足首関節におけるフィブリン沈着。関節炎膝関節のフィブリンの免疫組織化学的検出。パラフィン包埋組織切片をウサギ抗ネズミフィブリン(フィブリノーゲン)抗体で染色した。褐色は陽性を示す。関節炎発症後のplg+/+(左)およびplg-/-(右)マウスの第14日の関節炎膝関節。plg-/-およびplg+/+感染関節の同様のフィブリン沈着。
【0106】
【図18】背部皮膚に1x107 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種した切開創を導入後にplgまたはPBSで局所治療したplg-/-マウスの損傷組織の細菌数。
【0107】
【図19】背部皮膚に1x107 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種した切開創を導入後にplgまたはPBSで局所治療したplg-/-マウスの典型的外観。
【0108】
【図20】火傷皮膚に1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種した火傷損傷を導入後にplgまたはPBSで局所治療したplg-/-マウスの損傷組織の細菌数。
【0109】
(定義)
本明細書で用いた用語は、一般的には、本発明の文脈内および各用語が用いられている特定の文脈において当該分野における通常の意味を有する。ある用語は、本発明の組成物および方法ならびにその製造および使用方法を説明するのに当業者にさらなる手引きを与えるために以下または本明細書の他の箇所で論じている。
【0110】
「プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲン活性化経路の成分、プラスミノーゲン類似体、例えば、ミニ-プラスミン、プラスミン類似体、プラスミノーゲン活性化経路の成分の類似体、プラスミノーゲン活性化因子を含む群の化合物」は、それぞれプラスミノーゲンまたはプラスミンの効果を直接または間接的にもたらす化合物をいう。
【0111】
「プラスミノーゲン活性化経路の成分」は、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミノーゲンの1またはそれ以上のドメイン、例えばクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメイン(例えばミニ-プラスミノーゲン)の1またはそれ以上を含むプラスミノーゲンの変異体および類似体;プラスミン、ならびにプラスミンの少なくとも1またはそれ以上のドメイン、例えばクリングルドメインおよびタンパク質分解ドメイン(例えばミニ-プラスミンおよびδ-プラスミン)の1またはそれ以上を含むプラスミンの変異体および類似体;例えば、uPAおよびtPA、ならびにtPAまたはuPAの1またはそれ以上のドメイン(例えば、クリングルドメインおよびタンパク質分解ドメインの1またはそれ以上)を含むtPAおよびuPAの変異体および類似体により例示されるプラスミノーゲンの形成または活性化をもたらす事象のカスケードにより、プラスミノーゲンを活性化する最終的効果を有するプラスミノーゲン活性化因子を表す。プラスミノーゲン、プラスミン、tPA、およびuPAの変異体には、すべてのヒトの天然の遺伝子変異体およびこれらタンパク質の他の哺乳動物形、ならびに保存的アミノ酸置換により得られるこれらタンパク質の突然変異体を含む。プラスミノーゲンまたはプラスミンの「類似体」は、エンザイモグラフィ(enzymography)、ELISA(酵素免疫測定法)およびFACS(蛍光活性化セルソーター)により測定されるそれぞれプラスミノーゲンまたはプラスミンに類似した効果を実質的にもたらす化合物である。先に記載した変換プラスミン活性のレベルを測定するアッセイもある:Ny,A.、Leonardsson,G.、Hagglund,A.C、Hagglof,P.、Ploplis,V.A.、Carmeliet,P.、およびNy,T.(1999). Ovulation in plasminogen-deficient mice. Endocrinology 140、5030-5035.)。プラスミノーゲン活性化経路の成分の「類似体」は、この類似体を活性化するプラスミンの活性レベルにより測定されるプラスミノーゲン活性化経路の成分と類似の効果を実質的にもたらす化合物である。
【0112】
「壊死」とは、身体内の組織の死をいう。壊死は、負傷、放射線照射、または化学薬品で十分な血液が組織に供給されないときに生じる。壊死は不可逆的である。負傷、感染症、癌、梗塞、毒物注入、慢性創傷、潰瘍、および炎症を含む多くの壊死の原因がある。
【0113】
「局所的」および「局所適用」は、活性成分の非全身的、局所的投与を表す。すなわち、局所適用は、活性成分を目的とする領域の外部表面に適用することを表しうる。
【0114】
「局所注射」は、目的とする領域の組織およびその付近内に活性成分を非全身的に局所投与するこという。
【0115】
「関節内注射」は、2つの繋がっている骨の間の関節腔内に活性成分を局所投与することをいう。
【0116】
「感染性疾患」および「感染」は、宿主生物への外来種の有害な定着をいう。感染では、感染生物は増殖に宿主の資源を利用しようとする(通常、宿主を犠牲にして)。感染生物、すなわち病原体は、宿主の正常機能に干渉し、慢性創傷、壊疽、感染した手足の損失、また死すらもたらし得る。宿主の感染に対する反応は炎症である。口語的には病原体は、通常、微小な生物と考えられ、最もよく知られているのはウイルスと細菌である。他の感染性病原体は、ウイロイド(viroid)および真核生物(単細胞の真菌および原虫から複雑な後生動物(例えば寄生虫)に及ぶ)がある。
【0117】
タンパク質または化合物の「活性」は、タンパク質または化合物が特定の反応を有し、反応に影響を及ぼし、調節し、参加し、または促進することをいう。一般的には、タンパク質または他の化合物の活性は測定することができる。例えば、プラスミン、PA、およびMMP、およびモジュレーターのような酵素の場合、酵素活性は反応の生成物を生成する速度、例えば時間および酵素の単位あたりの生成された生成物の量(例えば濃度または重量)で表すことができる。PAI-1またはuPAのようなモジュレーターの場合、活性は、反応速度またはその反応で形成される生成物の量を、阻害もしくは促進、増加もしくは減少、上方調節もしくは下方調節するモジュレーターの能力を表しうる。
【0118】
「損傷(創傷)」は、外部物質によって生じる上皮、結合組織、および筋肉組織を含む器官または組織の構造破壊である。損傷の例には、限定されるものではないが、打撲、擦り傷、裂傷、切断、刺し傷、および火傷が含まれる。特殊なタイプの損傷には、形成外科手術処置の結果であるものがある。
【0119】
「中耳炎」は、耳の炎症病状と定義される。急性中耳炎(AOM)および滲出性中耳炎(OME)を含む中耳炎は、一般的な風邪を除き最も一般的な小児の疾患である(5)。中耳炎に関連する最も重要な病因因子は、上気道の細菌またはウイルス感染症である。中耳炎における中耳浸出物の生化学的組成は、中耳粘膜の炎症性変化を反映する。該液体は、浸出液および腺からの分泌産物、ならびに炎症性細胞からの生成物、および細菌の混合物である。
【0120】
本明細書において疾患または病状について対象の「治療」または対象を「治療する」とは、損傷の治癒が弱まるか遅くなるといった疾患または病状の臨床症状を弱めるか改善することを意味する。
【0121】
損傷の治癒を「増強する」とは、損傷が治癒する速度が増すことを意味する。あるいはまた、損傷の治癒を「増強する」は、治癒中または治癒後の瘢痕組織の形成を減らすことを意味する。
【0122】
本明細書において「対象」はヒトおよび非ヒト動物の両方を含む。非ヒト動物には、限定されるものではないが、実験動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモットなど;家畜(domestic animal)、例えばイヌおよびネコ;および家畜(farm animal)、例えばヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、およびウシが含まれる。本発明の非ヒト動物は、哺乳動物もしくは非哺乳動物;脊椎動物または無脊椎動物であってよい。
【0123】
アッセイの「コントロール」、「コントロール値」、または「基準値」は、例えば皮膚損傷の治癒または穿孔した鼓膜の治癒、または本明細書に記載のあらゆる他のアッセイの変化を検出するのに用いる値である。例えば、鼓膜の穿孔の治癒を試験する場合は、物質の阻害/刺激効果は、コントロールの鼓膜の損傷または穿孔の治癒と比較することにより評価することができる。コントロールまたは基準は、例えば予め決定した基準値であるか、または実験的に決定することができる。そのようなアッセイにおいて、例えばコントロールまたは基準は、薬剤または活性物質に曝露されていない動物における同様の損傷または穿孔の治癒でありうる。
【0124】
疾患または病状「のリスクがある」、「に罹りやすい」、または「に感受性がある」対象とは、該疾患または病状に罹るかまたは発現する個体のリスクが平均ポピュレーションより高いことを意味する。
【0125】
化合物の「欠乏(欠損)」は、化合物の量、レベル、または濃度が正常値より有意に低いことを意味する。例えば、プラスミノーゲン欠乏動物では、プラスミノーゲンの体液および組織レベルは野生型動物より有意に低い。
【0126】
本明細書で用いている「約(aboutまたはapproximately)」は、ある値または範囲の50%内、好ましくは20%内、より好ましくは5%内であることを意味する。
【0127】
別の値と「実質的に異なる」値は、2つの値の間に統計的有意差があることを意味しうる。当該分野で知られたあらゆる適切な統計学的方法を用いて差が有意か否かを評価することができる。「統計的有意」差は、有意が少なくとも90%の信頼区間、より好ましくは95%の信頼区間で決定されることを意味する。
分子生物学的定義
【0128】
本発明によれば、当該分野の技術内にある常套的分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を用いることができよう。そのような技術は文献で十分説明されている。例えば、Sambrook et al.(Molecular Cloning - A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989);Glover(DNA Cloning:A Practical Approach、Volumes IおよびII、1985);HamesおよびHiggins(Nucleic Acid Hybridization、1985);HamesおよびHiggins(Transcription and Translation、1984);Freshney(Animal Cell Culture、1986);Perbal(A Practical Guide To Molecular Cloning、1984);およびAusubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、Inc., 1994)参照。
【0129】
本明細書で用いているときは、以下の用語は下記の定義を有する。
【0130】
「タンパク質」または「ポリペプチド」(本明細書では互換性に用いる)は、ペプチド結合と呼ばれる化学結合により一緒に結合しているアミノ酸と呼ばれる化学的構成要素の1またはそれ以上の鎖を含む。
【0131】
「酵素」は、好ましくは、全てまたは大部分が、1またはそれ以上の化学反応もしくは生化学反応を程度の差はあるが特異的に触媒または促進するタンパク質からなるあらゆる物質を意味する。用語「酵素」は、触媒的ポリヌクレオチド(例えばRNAまたはDNA)も表しうる。「試験」酵素は、それが酵素の特性を有するか否かを決定するために試験される物質である。
【0132】
「天然」または「野生型」タンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞は、天然のタンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞を意味する。
【0133】
「突然変異」、「変化」、「変異体」、または「修飾」タンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞は、親タンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞から変化するかもしくは誘導され、またはそれらと何らかの差もしくは変化があるタンパク質、酵素、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞を意味する。遺伝子の変化には、限定されるものではないが、プロモーター領域、または転写に影響を及ぼす他の領域の変化を含み、これはタンパク質の発現レベルの変化をもたらしうる。突然変異体もしくは修飾タンパク質もしくは酵素は、通常、必ずではないが、突然変異体ポリヌクレオチドまたは遺伝子から発現する。
【0134】
「突然変異」または「変化」は、突然変異体タンパク質、ポリヌクレオチド、遺伝子、または細胞を生じるあらゆる過程もしくは機序を意味する。これは、タンパク質、ポリヌクレオチド、もしくは遺伝子配列が変化したあらゆる突然変異、突然変異から生じるあらゆるタンパク質、ポリヌクレオチド、もしくは遺伝子配列、突然変異したポリヌクレオチドもしくは遺伝子配列から発現したあらゆる発現産物(例えばタンパク質)、およびそのような突然変異から生じる細胞中のあらゆる検出可能な変化を含む。
【0135】
「機能保存的変異体」は、限定されるものではないが、あるアミノ酸の同様の特性(例えば、酸性、塩基性、疎水性など)を有するアミノ酸への置換を含む、タンパク質や酵素の全体的コンフォメーションおよび機能を変化させずに特定のアミノ酸残基が変化している(「保存的アミノ酸置換」)タンパク質または酵素である。同様の特性を有するアミノ酸は当該分野でよく知られている。例えば、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンは、親水性塩基性アミノ酸であり、互換性でありうる。同様に、イソロイシン、疎水性アミノ酸は、ロイシン、メチオニン、またはバリンと置換することができる。保存的であると示されたもの以外のアミノ酸はタンパク質や酵素で異なってよく、同様の機能を持つあらゆる2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列類似性(類似性はMEGALIGNアルゴリズムに基づく)パーセントは変化し、例えばCluster Methodクラスター法のようなアラインメントスキームに従って決定すると70%〜99%であってよい。「機能保存的変異体」は、BLASTまたはFASTAアルゴリズムにより決定したアミノ酸同一性が、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%であり、比較する天然もしくは親タンパク質または酵素と同じかまたは実質的に同様の特性もしくは機能を有するポリペプチドまたは酵素も含む。
プラスミノーゲン活性化系
【0136】
プラスミンは、PA系の重要な成分である。プラスミンは、フィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、およびプロテオグリカンを含むECMの種々の成分を分解する能力を有する広域スペクトルのプロテアーゼである(6)。さらに、プラスミンは、いくつかのプロ-マトリックスメタロプロテイナーゼ(プロ-MMP)を活性MMPに変換することができる。したがって、プラスミンは、細胞外タンパク質分解の重要な上流調節因子であるかもしれないことが示唆されている。プラスミンは、2つの生物学的PAのtPAまたはuPAのいずれかのタンパク質分解による開裂を介してチモーゲンプラスミノーゲンから形成される。プラスミノーゲンは、比較的高レベルで血漿および他の体液中に存在するので、PA系の調節は、主としてPAの合成および活性のレベルで生じる。PA系の成分の合成は、種々の因子、例えばホルモン、成長因子、およびサイトカインによって高度に調節される。さらに、プラスミンおよびPAの特異的生理学的阻害因子が存在する。プラスミンの主な阻害因子はα2-抗プラスミンである(7)。PAの活性は、uPAおよびtPAの両方を阻害するPAI-1、および主としてuPAを阻害するPAI-2により調節される。ある種の細胞は、タンパク質分解活性を細胞表面に導くことができるuPA(uPAR)に対する特異的細胞表面レセプターも有する。
【0137】
プラスミノーゲンは、791アミノ酸からなる一本鎖糖タンパク質(成熟ヒトペプチド、GenBank受託No:NP 000292)で、分子量は約92kDaである(8;9)。プラスミノーゲンは、主として肝臓で合成され、ほとんどの細胞外液中に豊富である。血漿中のプラスミノーゲン濃度は約2μMである。したがって、プラスミノーゲンは、組織および体液中のタンパク質分解活性の大きな潜在的供給源を構成する。
【0138】
プラスミノーゲンは2つの分子形:Glu-プラスミノーゲンおよびLys-プラスミノーゲンで存在する。天然の分泌および非開裂形はアミノ末端(N-末端)グルタミン酸を有し、Glu-プラスミノーゲンと呼ばれる。しかしながら、プラスミン存在下では、Glu-プラスミノーゲンはLys76-Lys77で開裂してLys-プラスミノーゲンになる。Glu-プラスミノーゲンに比べてLys-プラスミノーゲンはフィブリンに対する高い親和性を有し、高率にPAにより活性化される。プラスミノーゲンのこれら2つの形は、uPAまたはtPAによりArg560-Val561のペプチド結合で開裂し、ジスルフィド結合した2本鎖プロテアーゼのプラスミンを形成させることができる。プラスミノーゲンのアミノ末端部分は、5本のホモローガスなトリプルループ(いわゆる、クリングル)を含み、カルボキシ末端部分は、プロテアーゼドメインを含む。クリングルのあるものは、プラスミノーゲンとフィブリンおよびその阻害因子α2-APとの特異的相互作用を仲介するリジン結合部位を含む。新しい興味深い知見は、クリングル1〜4からなるプラスミノーゲンの38-kDaフラグメントが血管新生の強力な阻害因子であるということである。このフラグメントは、アンギオスタチンと呼ばれ、種々のMMPによるタンパク質分解開裂を介してプラスミノーゲンから生じさせることができる。
【0139】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの分解は、病的血栓形成の防止に極めて重要である(10)。また、プラスミンは、ラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、およびゼラチンを含むECMの種々の他の成分に基質特異性を有し、プラスミンもECMの再形成(remodeling)に重要な役割を果たすことを示唆する。間接的に、プラスミンは、あるプロ−MMPを活性MMP(MMP-1、MMP-2、MMP-3およびMMP-9を含む)に変換する能力を介してECMのさらなる成分を分解することもできる。したがって、プラスミンは細胞外タンパク質分解の重要な上流調節因子であるかもしれないことが示唆された。
感染を試験するための細菌性関節炎モデル
【0140】
Staphylococcus aureusは、細菌性関節炎の最もしばしば関連する微生物であり、滑膜の炎症、軟骨および骨の破壊,および最終的に関節の変形をもたらす(11)。哺乳動物、鳥、およびは虫類を含む種々の動物種は、自発性S. aureus関節炎を発現することが観察されており、該疾患を誘導するための潜在的モデルである。重要な特性であるブドウ球菌が身体を通して伝搬し関節に達する経路を検討し、ヒトの細菌性関節感染症の大多数が血行性に伝搬することが明確に示された。すなわち、感染モデルをもたらす生細菌を送達する最適な方法は、静脈内(i.v.)注射である。他方、細菌接種の関節内経路は、発症の初期段階を迂回するので、細菌性関節炎のより明確なモデルを提供する。すなわち、本試験では局所細菌増殖、組織破壊、壊死組織形成、および炎症をよりよく研究するために細菌を送達するための関節内法を主にモデルとして用いた。しかしながら、本発明者らは、i.v.注射を介してS. aureusを用いる一連の細菌性関節炎試験も行った。両モデルから得たデータは同程度の結果を示し、ともに、プラスミノーゲン/プラスミンがS. aureus性細菌性関節炎に対する宿主の防御に必須であるという結論を支持した。
【0141】
患者の正常皮膚細菌叢(すなわち、S. aureusおよびStreptococcus pyogenes)の急速な定着が負傷後に起きることが良く知られている。特に、火傷の患者の感染原因としてのStreptococcus pyogenesの実質的な排除をもたらした1950年代初期のペニシリンGの導入後は、S. aureusが創傷感染の主な原因菌になった。したがって、S. aureusは、開放創傷感染の最も一般的な細菌種の1つである。切開創および火傷は、臨床においてみられる最も一般的な損傷である。したがって、本願において、本発明者らが用いた開放創傷感染モデルは、実際的に最も一般的な損傷のタイプである火傷および切開創における創傷感染の主な病原体であるS. aureusによる感染症である。したがって、これら2つの開放創傷感染モデルから得られたデータは知識の臨床的状況への応用を実行可能にするための非常に重要な示唆を与えると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0142】
以下の実施例によりさらに本発明を説明する。しかしながら、これら実施例は単に本発明の例示であって、本発明の範囲および意味を何ら限定するものではない。特に、本発明の多くの修飾および変更は、本明細書を読めば当業者に明らかであり、その精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。
【実施例1】
【0143】
S. aureus性細菌性関節炎のplg-/-マウスにおける持続的炎症および組織破壊
本実施例は、プラスミノーゲン欠乏マウスが野生型コントロール同胞種に比べて持続的炎症および組織破壊を有することを示す。S. aureus性細菌性関節炎ではplg+/+マウスよりplg-/-マウスで有意により重度の組織病理学的変化がみられる。
方法
【0144】
マウス:混合遺伝背景のプラスミノーゲンヘテロ接合(plg+/-)マウス(129xC57BL/6)を交雑してplg+/+、plg+/-、およびplg-/-マウスを作製した。8〜12週齢の雄plg+/+およびplg-/-マウスを実験に用いた(Ploplis VA、Carmeliet P、Vazirzadeh S、Van Vlaenderen I、Moons L、Plow EF、Collen D:Effects of disruption of the plasminogen gene on thrombosis、growth、and health in mice. Circulation 1995、92:2585-2593)。
【0145】
細菌性関節炎の誘導: 試験に用いた細菌株は、S. aureus Phillips(Dr. Hook、Department of rheumatology and Clinical immunology、Gothenburg University、Sweden)の厚意による)であった。10μlの無菌PBS中1x106コロニー形成単位(CFU)のS. aureus Phillipsをマウスの右膝関節に局所注射して関節炎を誘発した。コントロールとして、左膝関節に10μ無菌PBSのみを注射した。接種後の種々の時点でマウスを屠殺し、試料を疾患の重症度を評価するために採取した。Umea Universityの地域倫理委員会は全ての実験プロトコールを承認した。
【0146】
組織学的分析:細菌注射後第7日、第14日、および第28日に、マウスを屠殺し、全膝関節の試料を組織学的分析用に回収した。簡単には、膝関節を最初に4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋し、次いで8μm切片を作成した。組織切片を含むスライドを、組織学的分析用にサフラニン-Oで染色した。少なくとも10の膝関節を各試験群に含めた。
【0147】
感染関節の壊死組織の定量:膝関節の組織切片の画像をLeica DM LB顕微鏡(Leica、Wetzlar、Germany)に取り付けたLeica DC300Fデジタルカメラで撮影した。感染関節の壊死組織の量を測定するために、全膝関節組織切片の画像を倍率x50で50x40グリッドに分割した。壊死組織を含むグリッド内の各四角を「ヒット」としてカウントした。3つの独立した無作為に選んだ切片を各関節からカウントし、同じ遺伝子型の別のマウスからの5関節を各時点で用いた。「ヒット」の平均値を計算し、示した。
結果
【0148】
細菌性関節炎の臨床的結果に対するプラスミンの効果を試験するために、マウスの膝関節内に1x106 CFUのS. aureus Philipsを注射した。その後、マウスを種々の時点で屠殺し、膝関節を解剖した。関節内注射後第7日、第14日、および第28日の膝関節試料の肉眼検査は、plg+/+マウスが膝関節内に同レベルの僅かな腫脹を有することを示した。しかしながら、plg-/-マウスでは、細菌を注射した膝関節の大きさは全試験期間中に増加した。第28日の細菌注射した膝関節は有意に肥大し、関節腔は膿状物で満たされ、滑膜表面は強く腫れた。
【0149】
第7日、第14日、および第28日に、plg+/+およびplg-/-マウスの細菌注射した膝関節を組織学的分析用に調製した。図1に示すように、全ての観察時点で、かなりより重症の関節炎がplg+/+マウスよりplg-/-マウスで観察された。第7日に、plg+/+マウスでは、炎症性細胞が関節腔に浸潤し、滑膜は正常より厚く、軟骨表面は分解していた(図1A、Sm)。第14日に、炎症性細胞が腐食骨の近傍に観察された(図1C、矢印)。しかしながら、第28日に、炎症性細胞数は減少し、損傷した軟骨および骨組織の修復が始まった(図1E)。疾患の発現パターンはplg-/-マウスでは完全に異なった。第7日に、plg-/-マウスでは、多量の炎症性細胞が関節腔に浸潤し、骨の種々の部分が腐食され、壊死組織が観察された(図1B)。第14日に、滑膜は第7日より厚くなり、壊死領域は増加した。軟骨の分解および骨の腐食は、第7日よりはるかに重症であった(図1D)。第28日に、全膝関節はほぼ完全に分解し、壊死組織と小さな軟骨部分だけが残っていた(図1F)。試料切片の半定量的試験は、全疾病進行中に、plg-/-マウスではplg+/+マウスより壊死組織のレベルが有意に高いことを示した(図2)。これらのデータは、S. aureus誘発細菌性関節炎の間に、plg-/-マウスではplg+/+マウスより組織病理学的変化が有意に重症であることを示す。
【実施例2】
【0150】
抗生物質治療は細菌を殺し、炎症を減少させるが、plg-/-マウスの壊死組織の形成を減少させない。
方 法
【0151】
本実験は、いくらかの動物に抗生物質を投与する以外は実施例1と同様に行った。
【0152】
抗生物質治療:抗生物質のクロキサシリン(AstraZeneca、Sodertalje、Sweden)を、無菌PBSに溶解し、細菌注射後第7日から12時間毎に用量0.5mg/g体重でマウスに腹腔内注射した。細菌注射後第14日にマウスを殺した。
結 果
【0153】
plg+/+およびplg-/-マウスにおける疾患発現に対する抗生物質治療の効果も観察した。マウスに第0日に細菌を注射し、細菌注射後第7日〜第14日にクロキサシリンで2回/日処置した。第14日の、注射した関節からの細菌の回収は、plg-/-マウスにおいてクロキサシリン治療後に細菌が完全に殺されたことを示した(データ示さず)。組織病理学的分析は、クロキサシリンで処置しなかったマウス(図1C)に比べて、抗生物質治療後のplg+/+マウスでは炎症が弱まったことを示した(図1G)。クロキサシリン処置plg-/-マウスにおいて、同じ処置をしたplg+/+マウスより炎症レベルはまだ高かった(図1H)。顕著に、壊死組織の小さな領域が滑膜に残っていた(矢印、図1H)。これらのデータは、クロキサシリンの腹腔内投与は、plg-/-マウスの膝関節から細菌を除去し、組織破壊を減少させ、組織修復過程を修復するのに成功した。しかしながら、抗生物質処置後のplg-/-マウスの膝関節には壊死組織の大きな領域が残っていた。
【実施例3】
【0154】
プラスミノーゲン欠乏は細菌浄化を弱める。
方 法
本実験は、細菌をカウントする以外は実施例1と同様に行った。
細菌のカウント:細菌注射後第2、3、4、5、7、14、および28日に、膝関節を得、1mlの無菌PBS中でホモゲナイズした。連続希釈後、ホモジネートの溶液をLB寒天プレート上に塗布し、37℃で一夜培養した。次に、生細菌コロニーをカウントし、各ホモジネート中の細菌数を評価した。
結 果
【0155】
次に、細菌性関節炎誘発後のplg+/+およびplg-/-マウスの膝関節における細菌増殖を観察した。表1に示すように、plg+/+マウスでは、感染膝関節中のS. aureus量は細菌注射後第2日から急速に減少した。第7日に、S. aureusは、plg+/+マウスの50%(7/14)で検出不能であった。第14日に、S. aureusは、plg+/+マウスの80%(8/10)で検出不能であり、他の2匹のマウスでは1x103 CFU以下の菌が検出された。第28日に、細菌はすべてのplg+/+マウスで完全に排除された。全く対照的に、すべてのplg-/-マウスは全実験期間を通して感染膝関節中にS. aureusがみられた(表1)。第28日に、plg-/-マウスの接種した関節のS. aureus量は、第0日に注射した量より27倍高かった。これらのデータは、plg-/-マウスの膝関節における細菌浄化は弱まったことを示し、プラスミンが感染に対する宿主の防御時の細菌を殺す過程に関与することを示唆する。
表1.1x106 CFUのS. aureus Philipsの関節内注射後のplg+/+およびplg-/-マウスの膝関節中の細菌の回収
【0156】
【表1】

*生細菌が検出可能なレベルであった膝関節における平均細菌数。
**データは、各群の、生細菌が検出可能なレベルであった膝関節の数/試験した膝関節の総数を表す。
【実施例4】
【0157】
plg-/-マウスでは、感染関節へのマクロファージおよび好中球の浸潤の明らかな減少はなかった。
方 法
【0158】
本実験は、免疫組織化学的分析および炎症細胞のカウント以外は実施例1と同様に行った。
【0159】
免疫組織化学的分析:パラフィン包埋切片(8μm)を脱パラフィンし、再水和し、次いで内因性パーオキシダーゼ活性を0.3% H2O2で10分間ブロックした。室温で20分間、5%ウサギ血清とインキュベーションした後、スライドを、それぞれマクロファージに対する抗マウス一次抗体(クローンF4/80、MCAP497、Serotec、UK)または好中球に対する抗マウス一次抗体(MCA771G、Serotec、UK)と4℃で一夜インキュベーションした。次に、マクロファージと好中球を免疫染色するため、スライドをすすぎ、さらに室温で1時間ヤギ抗ラットIgG(SC-2019、Santa Cruz、California)抗体とインキュベーションした。
【0160】
炎症細胞のカウント:総細胞数/切片を倍率x400で5視野の領域から得た。すべてのカウントは各切片につきデュプリケートで行い、平均値/切片を計算した。3つの独立した切片を各関節からカウントし、同じ遺伝子型の別のマウスからの5つの関節を各時点で用いた。
結 果
【0161】
免疫組織化学分析を実施し、plg+/+およびplg-/-マウスの感染膝関節内へのマクロファージおよび好中球の浸潤を観察した。炎症細胞の浸潤を切片上に存在する陽性染色細胞の数をカウントすることにより定量した。各関節から3つの独立した切片をカウントし、各時点で各遺伝子型からの5関節試料を試験に含めた(図3Aおよび3B)。plg+/+およびplg-/-マウスの両方で、細菌注射の24時間以内に同様の数の好中球およびマクロファージが感染膝関節の滑膜内に浸潤していた。次いで、第7日および第14日に、plg+/+およびplg-/-マウスの両方の蓄積した好中球およびマクロファージの数は、第1日に比べて有意に増加した。これらのデータは、細菌注射後24時間以内から第14日まで、感染関節への好中球とマクロファージの浸潤がplg+/+マウスに比べてplg-/-マウスで低下したことを示唆する。しかしながら、好中球およびマクロファージの浸潤はplg-/-マウスで明らかに低下したが、これら細胞の正常機能、特に殺菌能力は顕著に低下した。
【実施例5】
【0162】
plg-/-マウスへのヒトプラスミノーゲン(hPlg)の全身性補給は、S. aureus感染に対する正常な宿主防御を回復した。
方 法
【0163】
本実験は、いくらかのマウスにヒトプラスミノーゲンを投与し、ウエスタン分析した以外は実施例1と同様に行った。
plg-/-マウスへのヒトプラスミノーゲンの補給
【0164】
実験プロトコール1では、マウスの両膝関節内に10μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所投与して関節炎を誘発した。細菌接種の6時間前に、6匹の各plg-/-マウスに100μl無菌PBS中の1mg ヒトプラスミノーゲン(hPlg)(Biopool、Umea、Sweden)を静脈内(i.v.)注射で24時間間隔で7日間補給した。コントロールとして、6匹のplg+/+および6匹のplg-/-マウスを7日間の実験期間中24時間間隔で無菌PBSのみを注射した。細菌注射後第7日にマウスを屠殺し、膝関節試料を解剖し、脱灰し、組織学的および免疫組織化学的分析用に処理した。
【0165】
実験プロトコール2では、関節炎を実験プロトコール1同様に誘発した。細菌接種第7日から、6匹の各plg-/-マウスに100μl無菌PBS中の1mgのhPlgをi.v.注射により補給した。次いで、同量のプラスミノーゲンを7日間24時間間隔で注射した。コントロールとして、6匹のplg+/+および6匹のplg-/-マウスに無菌PBSのみを7日間24時間間隔で注射した。注射後第14日にマウスを屠殺し、膝関節試料を解剖し、脱灰し、組織学的分析用に処理した。
結 果
【0166】
プラスミンがS. aureus性細菌性関節炎に対する宿主防御に役割を果たすことを確認するため、hPlgを補給したplg-/-マウスにおける細菌性関節炎の発現を観察した。最初に、6匹の-/-マウスに細菌注射後第0日〜第7日にhPlgを補給する実験を行った。次に、すでに細菌性関節炎を発現している6匹のplg-/-マウスに対するhPlgの7日間の補給効果を検討した。図4Aおよび4Bに示すように、plg+/+マウスに無菌PBSを投与すると、滑膜に中等度の炎症が観察されたが、骨構造は比較的完全であった。図4Cおよび4Dに示すように、plg-/-マウスに無菌PBSのみを投与すると、滑膜組織部分に壊死組織が観察され、炎症および組織破壊は、plg+/+群よりはるかに重症であった。plg-/-マウスに第0日から第7日までhPlgを補給すると(図4E)、組織病理学的特性はPBSを投与したplg+/+マウスに類似していた。図4Fに示すように、plg-/-マウスにhPlgを第7日から第14日まで投与すると、PBSを投与したplg-/-マウスより関節形態は実質的により完全であり、炎症レベルは、plg+/+コントロール群と同程度であった。さらに、hPlgを投与した群の滑膜の壊死組織領域は非常に小さかった。表2に示すように、plg-/-マウスに細菌注射後7日間hPlgを補給すると殺菌能力も回復した。これらのデータは、プラスミン(プラスミノーゲン)が、関節炎膝関節中のS. aureusの浄化および感染に対する宿主の防御の完全性に本質的に必要であることを明確に示す。
【表2】

【実施例6】
【0167】
plg-/-マウスへのヒトプラスミノーゲン(hPlg)の局所的補給はS.aureus感染に対する正常な宿主防御を回復した。
方 法
【0168】
マウスの両膝関節内に10μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種して細菌性関節炎を誘発した。細菌接種後15分に6匹の-/-マウスの一方の膝関節に40μlのヒトプラスミノーゲン(PBS中10μg/μl、Biopool、Umea、Sweden)を膝関節組織周辺への局所注射により補給した。次に、ヒトプラスミノーゲンを7日間24時間間隔で補給した。局所注射のコントロールとして、6匹のplg-/-マウスに細菌接種後15分に、次いで7日間の実験期間中24時間間隔で40μlの無菌PBSのみを膝関節組織周辺に局所注射した。野生型マウスのコントロールとして、2匹のplg+/+マウスに細菌接種後15分に、次いで7日間24時間毎に40μlの無菌PBSのみを投与した。全身注射したplg-/-マウスのコントロールとして、2匹のplg-/-マウスに、細菌接種前1時間、次いで7日間24時間毎に100μlのヒトプラスミノーゲン(10μg/μl)を静脈内投与した。
【0169】
細菌接種後第7日にマウスを屠殺して膝関節を採取し、1mlの無菌PBS中でホモゲナイズした。連続希釈後、ホモジネートの溶液をLB寒天プレート上に塗布し、37℃で一夜培養した。次に、生細菌コロニーをカウントし、各ホモジネート中のS. aureusの細菌数を求めた。
結 果
【0170】
S.aureus接種plg-/-マウスに7日間プラスミノーゲンを局所注射すると、これらマウスのPBS局所処置に比べて細菌数を100倍有意に減少させるのに成功した(表3および図9)。ヒトプラスミノーゲンを全身注射したplg-/-マウスまたはPBSを局所注射したplg+/+マウスでもいずれも膝関節中のS.aureusを殺すのに成功した。これらのデータは、ヒトプラスミノーゲンの局所注射がplg-/-マウスの正常な殺菌能力を回復することができることを明確に示す。
【表3】

【実施例7】
【0171】
plg+/+マウスへのヒトプラスミノーゲンの局所補給は、S.aureus感染に対する宿主防御を増強する。
方 法
【0172】
マウスの膝関節に10μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種して細菌性関節炎を誘発した。細菌接種後15分に、7匹のplg+/+マウスの一方の膝関節に、50μlのヒトプラスミノーゲン(hPlg、PBS中10μg/μl、Biopool、Umea、Sweden)を膝の皮下および膝関節組織周辺に局所注射して補給した。次に、ヒトプラスミノーゲンを第0日から第2日まで24時間間隔で同じパターンで補給した。局所注射のコントロールとして、細菌接種後15分に、7匹のplg+/+マウスの膝皮下および膝関節組織周囲に50μlの無菌PBSのみを局所注射し、次いで実験期間の第0日から第2日まで24時間間隔で同じ局所注射を行った。
【0173】
細菌接種後第3日にマウスを屠殺して膝関節を採取し、1mlの無菌PBS中でホモゲナイズした。連続希釈後、ホモジネートの溶液をLB寒天プレート上に塗布し、37℃で一夜培養した。次に、生細菌コロニーをカウントし、各ホモジネート中のS. aureusの細菌数を求めた。
結 果
【0174】
plg+/+マウスの膝関節に3日間ヒトプラスミノーゲンを局所注射すると、PBS処置コントロールplg+/+マウス群に比べて生S.aureus数が5倍有意に減少させるのに成功した。これらデータは、ヒトプラスミノーゲンが野生型動物においても細菌感染に対する宿主の防御を強化する強力な前炎症因子であることを明確に示す。これらのデータ(表4、図10)は、さらにプラスミノーゲンが臨床使用のための新規抗感染剤の候補であることを示唆する。
【表4】

【実施例8】
【0175】
Plg-/-マウスへのプラスミノーゲンの補給は、感染膝関節におけるIL-6タンパク質発現を増大した。
方 法
【0176】
本実験はIL-6の免疫組織化学的染色を除き、実施例5と同様に行った。
【0177】
IL-6の免疫染色のために、切片をすすぎ、ブタ抗ウサギIgG抗体(P0217、DAKO、Denmark)と室温で1時間インキュベーションした。発色反応をDAKO基質キット(K3464、DakoCytomation AEC substrate、USA)により発現させ、次いでスライドをヘマトキシリンで対比染色した。スライドを陰性コントロールとして一次抗体の代わりにウサギ血清とインキュベーションし、それらは全て陰性を示した。
結 果
【0178】
IL-6は、リンパ球の活性化、増殖、および分化に関与することが報告されており、IL-6の欠如は感染への感受性を増大する。したがって、本発明者らは、プラスミンが細菌性関節炎におけるIL-6発現にいかなる作用を示すかについて検討した。組織切片用の試料をplg-/-マウスへのhPlg補給中に得、免疫組織化学的染色を行った。plg-/-マウスに細菌注射後7日間無菌PBSを投与すると、IL-6タンパク質レベルはplg+/+マウスに比べて有意に低下した(図5Aおよび5B)。図5Cに示すように、plg-/-マウスに細菌注射後7日間hPlgを投与すると、IL-6タンパク質発現はplg+/+マウスと同レベルに増加した。これらのデータは、プラスミンが細菌性関節炎時の膝関節におけるIL-6発現の調節に関与することを示す。
【実施例9】
【0179】
plg-/-関節と比較したplg+/+関節における高レベルのIL-10発現
方 法
本実験は、ウエスタンブロット分析を除き、実施例1と同様に行った。
ウエスタンブロット分析
【0180】
細菌注射後第3日および第7日にマウスを屠殺し、全膝関節を採取した。関節をホモゲナイズし、NP-40緩衝液(0.5% Nonidet P-40、50mM Tris-HCl(pH7.4)、150 mM NaCl、1mM NaF、1mM EDTA、1mM Na3VO4、0.25mM PMSF、5μg/mlアプロチニン、1μg/mlロイペプチン、1μg/mlペプスタチン、および15%グリセロール)中、氷上で30分間溶解させた。溶解物を同じタンパク質濃度に調整した。ウエスタンブロット分析を、ヤギ抗マウスIL-10抗体(AF-417-NA、R & D systems、UK)およびβ-アクチンに対するマウスモノクローナル抗体(Sigma-Aldrich Sweden AB、Stockholm、Sweden)を用いて、記載(12)のごとく行った。ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)結合抗ヤギおよび抗マウス二次抗体はBiorad(Hecules、CA、USA)から得た。
結 果
【0181】
以前の研究は、インターロイキン-10(IL-10)が敗血症性関節炎の動物モデルにおいて抗炎症効果を有することを示した(13)。プラスミンが細菌性関節炎時のIL-10発現に如何なる作用を有するかを試験するため、ウエスタンブロット分析を行ってplg+/+マウスとplg-/-マウスのIL-10レベルを比較した。細菌注射後第3日および第7日に、関節ホモゲネートを溶解し、IL-10に対するウエスタンブロッティングを行った。非感染膝関節において、plg-/-マウスではplg+/+マウスよりIL-10レベルが劇的に低下した(図6A、各レーン1および2)。第3日に、両遺伝子型のマウスのIL-10レベルは上昇したが、plg-/-では依然としてplg+/+マウスよりIL-10レベルが有意に低かった(図6A、レーン3および4)。第7日のplg-/-マウスのIL-10レベルは依然として第3日と同レベルであったが、plg+/+マウスではIL-10レベルが低下した(図6A、レーン5、レーン6)。まとめてこれらのデータは、IL-10はIL-6と共同して細菌性関節炎時の炎症プロセスを調節し、プラスミンはIL-6およびIL-10発現の調節に関与することを示唆する。
【実施例10】
【0182】
uPAは、S.aureus性膝感染症に対する宿主防御および組織再形成に重要である。
方 法
【0183】
第0日に、野生型およびuPA欠乏(uPA-/-)マウスの膝関節に10μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所関節内接種して細菌性関節炎を誘発した(14)。第7、14、21、および28日にマウスを屠殺し、膝関節を採取し、次いで1mlの無菌PBS中でホモゲナイズした。連続希釈後、ホモジネートの溶液をLB寒天プレート上に塗布し、37℃で一夜培養した。次に、生細菌コロニーをカウントし、各ホモジネート中のS. aureusの細菌数を求めた。
【0184】
別の実験において、uPA欠乏および野生型マウスの膝関節に10μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所関節内接種して細菌性関節炎を誘発した。細菌注射後第7日、第14日、および第28日に、マウスを屠殺し、全膝関節の試料を組織学的分析用に回収した。簡単には、膝関節を最初に4%パラホルムアルデヒドで固定し、パラフィン包埋し、次いで8μmの切片を作製した。組織切片を含むスライドを、組織学的分析用にサフラニン-Oで染色した。少なくとも10の膝関節を各実験群に含めた。
結 果
【0185】
野生型およびuPA欠乏マウスにS. aureus性細菌性関節炎を誘発した後、野生型群では平均細菌数が第7日から第28日まで連続的に低下している。第14日に、7匹のマウスのうち4匹で細菌が完全に浄化された。しかしながら、uPA欠乏群では、平均細菌数は、基本的に第0日から第28日まで一定である(図11)。第14日以後細菌数は低下し続けたが、第14日と第28日の間に有意差はなかった。細菌接種後第28日で実験を終了したが、膝関節は第14日以後完全に破壊されていたことから、uPA欠乏マウスではそれより遅い時点で細菌を殺すことができるとは思われない。第14日からは、広範なレベルの壊死組織がuPA欠乏膝関節に蓄積している。組織検査では、野生型マウスは第7日に一過性の炎症を示したが、その後炎症レベルは急速に減少し、uPA欠乏マウスは、実験期間を通して持続的な組織の炎症および浮腫、広範な組織破壊と壊死組織の形成を示した(図12)。これらのデータ(表5、図11および12)は、uPAがS. aureus誘発関節炎の対する宿主の防御時に細菌を殺すのに重要であることを明確に示し、さらにプラスミノーゲン活性化因子経路の成分が感染に対する宿主の防御時に重要な役割を果たすことと関連がある。
【表5】

【実施例11】
【0186】
200μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを静脈内注射後のplg-/-マウスの細菌性関節炎における高レベルの体重損失と関節炎の重症度
方 法
plg+/+およびplg-/-マウスに、200μl無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsを静脈内(i.v.)注射して細菌性関節炎を誘発した。接種後毎日個々にマウスを追跡した。足(paw)を24時間毎に検査し、接種後第21日にすべてのマウスを屠殺した。関節炎は、可視的な関節の腫脹および/または掌(palm)、手関節(wrist)および足関節(ankle)の紅斑で定義した。関節炎の強さを評価するため、肉眼検査により各足につき0〜5ポイントのスコアを生じる系を用いて、臨床スコア付け(関節炎指数)を行った(0 = 正常、1 = わずかな腫脹または紅斑;2 = 軽度の腫脹および紅斑;3 = 中等度の腫脹および紅斑;4 = 顕著な腫脹および紅斑;5 = 顕著な腫脹および変形)。各試験動物について4つ全ての足からのスコアを加えることにより総スコアを計算し、各個々のマウスについて0〜20の範囲の関節炎スコアを得た。マウスの体重を第0日から第21日まで毎日測定した。
結 果
【0187】
プラスミノーゲン欠乏が静脈注射誘発細菌性関節炎モデルにおける関節への細菌の侵入に影響するか否かを評価するため、境界的腫脹および紅斑で定義した関節炎の発症日と発生率を細菌接種後24時間毎に追跡した(表6)。plg+/+およびplg-/-マウスにおける発症日はそれぞれ5.0±2.2および4.4±2.0であった(P = 0.5021)。さらに、plg+/+マウスとplg-/-マウス間の関節炎の発生率は同じであった。これらの結果は、plg+/+およびplg-/-マウスのいずれも静脈内接種によるS.aureus性関節炎に感受性であることを示唆する。しかしながら、本試験では顕著な所見がみられ、plg-/-マウスの38%(12/32)に後部の麻痺がみられたが、plg+/+マウスは3.3%(1/30)のみが麻痺を示した。
【0188】
S.aureusの静脈内接種後の一般健康状況を追跡するため、各マウスの体重を試験期間中毎日測定した。図13に示すように、感染第1週中、plg+/+およびplg-/-マウスは共に大きな体重減少を示し、それぞれ第7日に最大体重の24%および26%に達した。感染後7日間にplg+/+の体重は徐々に増加した。一方、plg-/-マウスでは実験を通して有意な体重減少が連続的に観察された(p<0.05)。
【0189】
細菌性関節炎の臨床的発現も、plg+/+およびplg-/-マウスにおいて1x106のS. aureusを静脈内接種後3週間追跡した。図14に示すように、plg+/+およびplg-/-マウスはいずれも細菌性関節炎を発現した。最初の3日間の炎症の重症度にplg+/+およびplg-/-マウス間で差はなかった。しかしながら、第7日からはplg-/-マウスではplg+/+マウスより炎症が重症であり、差は有意であった(p<0.05)。plg+/+マウスでは、第14日に重症度がピークに達し、以後徐々に減少した。実験終了時に、28匹のplg+/+マウスの8匹が関節炎から回復した。plg-/-マウスでは、全実験期間中、関節炎の重症度が増加し、実験終了時にplg-/-マウスの関節炎からの回復はみられなかった。まとめるとこれらのデータは、プラスミノーゲンが血液循環からの細菌の侵入に必須ではないが、膝関節の細菌感染症に対する宿主の防御および細菌性関節炎時の健康状態を維持するのに必須であることを明確に示唆する。
【表6】

【実施例12】
【0190】
無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsの静脈内注射後のplg-/-マウスの細菌性関節炎における組織破壊と壊死組織の形成のより重篤な発現
方 法
200μlの無菌PBS中の1x106 CFUのS. aureus Phillipsの静脈内(i.v.)注射によりplg+/+およびplg-/-マウスに細菌性関節炎を誘発した。
【0191】
足関節および足の組織病理学的検査を行うため、足関節および足を解剖し、4%緩衝ホルマリンで24時間固定した。固定した組織を15%EDTA中で3週間脱灰し、脱水し、パラフィン包埋した。手関節の8μm切片をサフラニン-0で染色し、次いでファストグリーン/鉄ヘマトキシリンで対比染色した。
【0192】
免疫組織化学的分析のため、パラフィン包埋切片(8μm)を脱パラフィンし、次いでエタノールおよび蒸留水で再水和した。内因性パーオキシダーゼ活性を3% H2O2で10分間ブロックした。次に、フィブリン検出のため5%ウサギ血清と室温で20分間インキュベーションした。次に、スライドにヤギ抗マウスfbn/fbgを室温で30分間重層した。洗浄後、ウサギIgG抗ヤギIgGを室温で20分間重層した。洗浄後、PAPを室温で20分間重層した。DAKO基質クロモゲン系AECキットで発色させ、洗浄後マイヤーのヘマトキシリンで対比染色した。
結 果
【0193】
観察された関節の炎症の持続性が組織学的変化と関連するか否かを試験するため、感染plg+/+およびplg-/-マウスからの足関節の組織学的分析を行った。関節をサフラニン-Oで染色し、次いでファストグリーン/鉄およびヘマトキシリンで対比染色した。図15に示すように、plg+/+マウスでは、発症日後1日で炎症は非常にわずかであった(図15A)。発症日後3日で、滑膜は過形成になるが、軟骨は完全であった(図15B)。発症日後7日で炎症性細胞は関節腔内に浸潤した(図15C)。発症日後14日には滑膜は第7日よりはるかに厚かった(図15D)。図15Eに示すようにplg-/-マウスでは発症後1日で炎症レベルもわずかであった。しかしながら、発症日後3日では滑膜は第1日よりはるかに厚く、炎症性細胞は骨に侵入し始めた(図15F)。発症日後7日で、炎症性細胞は全足関節に侵入し、骨のある部分が分解した(図15G)。発症日後14日で、ほとんどの骨および軟骨は完全に分解した(図15H)。さらに、発症日後14日で、plg+/+マウスでは炎症が重症であったが、plg-/-マウスに比べて非常にわずかであった。臨床所見は、組織病理学的検査により実証され、plg-/-マウスが軟骨および骨の両方で有意に高いレベルの破壊を示すことを明確に示した。同時に、plg+/+マウスは、plg-/-マウスより関節炎の重症度が有意に低かった。プラスミンは、組織再形成に有益な効果を示した。
【0194】
細胞レベルの関節炎の発現と軽減を試験するため、壊死組織の顕微鏡分析をplg-/-およびplg+/+マウスで行った。関節中の壊死組織はplg-/-マウスでは早くも細菌接種後第3日にみられた。図16および図15G、Hに示すように、壊死組織の大きな領域がplg-/-マウスでみられたのに対し、plg+/+マウスでは重症の炎症がみられるときでもほとんど壊死はみられなかった。これらのデータは、プラスミノーゲン欠乏マウスが壊死組織を除去することができず、組織破壊を生じることを示す。
【0195】
繊維素溶解におけるプラスミノーゲンの活性化の確立された役割に基づいて、プラスミノーゲンの損失はフィブリン沈着の増加をもたらす。膝関節中のフィブリン含有量をフィブリンの免疫組織化学により分析した(図17)。しかしながら、本発明者らは、plg-/-マウスに関してplg+/+コントロールマウスのすべての腫脹した関節のフィブリン沈着が同レベルであることをみいだした。これらのデータは、フィブリン沈着が恐らくplg-/-マウスで観察されたより重症の細菌性関節炎の原因ではないことを明確に示す。
【実施例13】
【0196】
プラスミノーゲンは、plg-/-マウスにおける切開創の治癒時のS.aureus感染症に対する宿主の防御に重要である。
方 法
【0197】
切開創をつくるために、最初にplg-/-マウスの背側を電気バリカンで注意深く剃り、70%エタノールで清浄化した。次に、マウスの背側の正中線に沿って15mmの長さで切開した。15分間後、10ulのPBS中の1x107 CFUのS. aureusを局所適用し、開放創上に塗布した。さらに、50ulのプラスミノーゲンを開放創から5mm離れた開放創の両側に皮下注射した。コントロールplg-/-マウスには、50ulのPBSのみを細菌を接種した開放創に局所注射した。次に、50ulのプラスミノーゲン(10ug/ul)またはPBSを第0日に行ったのと同様に第10日まで24時間毎に注射した。第11日にマウスを屠殺し、損傷試料、損傷隣接部の周囲および組織下を注意深くばらばらにし、1mlの無菌PBS中でホモゲナイズした。連続希釈後、ホモゲネートの溶液をLBプレートに塗布し、37℃で一夜インキュベーションした。次に、生細菌コロニーをカウントし、各ホモゲネート中のS.aureusの細菌数を求めた。
結 果
【0198】
プラスミノーゲンが細菌性関節炎モデルのように開放創傷感染モデルでも同様の殺菌作用を示すか否かを検討するため、plg-/-マウスに切開創を生じさせ、さらに107 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種した。次に、これらマウスにヒトプラスミノーゲンまたはコントロールPBSを10日間局所注射した。これらマウスの組織試料からの細菌の回収は、ヒトプラスミノーゲンの局所治療はコントロールPBS処置plg-/-マウスに比べて細菌数を10倍低下させるのに成功したことを示す(表7、図18)。これらデータは、プラスミノーゲンが開放損傷に伴う感染症に対する宿主の防御(例えば殺菌)に重要な役割を果たすことを明確に示す。さらに、プラスミノーゲンの局所注射も感染創傷の治癒を著しく改善した(図19)。要するに、これらの結果は、プラスミノーゲンが、2タイプの細菌性関節炎に対する宿主の防御、感染創傷の治癒および開放創傷感染に対する宿主の防御により評価した種々のタイプの外傷に対する宿主の防御に必須であることを示唆する。
【表7】

【実施例14】
【0199】
プラスミノーゲンは、plg-/-マウスの火傷の治療中のS.aureus感染に対する宿主の防御に重要である。
方 法
【0200】
熱湯による火傷モデルを作製するため、最初にマウスを麻酔して眠らせる。次に、火傷させる領域を注意深く剃毛し、25gの100℃の熱い金属棒を鉗子で6秒間、垂直および自由に置いた。金属棒は沸騰した熱湯で予め加熱する。6秒間の火傷は、該領域に重度の熱損傷を生じる。該領域を熱湯で火傷させたら、マウス背部表面を注意深く拭き取り、過剰の水を除去する。約15分間後、30ulの1x106 CFUのS. aureusを火傷領域の中心部にただ皮下注射した。さらに15分間後、50ulのプラスミノーゲン(lOug/ul)を熱湯で火傷させた領域の辺縁周辺の2つの部位に1部位あたり25ul皮下注射した。コントロールplg-/-PBS群には、50ulのPBSをプラスミノーゲンと同様に注射した。次に、第0日から第9日まで火傷領域に上下または左右に毎日交代させながら毎日注射を行う。plg+/+群では、マウスを火傷だけさせ、いかなる局所治療もせずに放置した。実験終了時に、火傷の損傷の外観をカメラで記録し、組織試料(火傷領域およびその下の薄層の組織)を注意深く解剖して取り出し、1ml無菌PBS中でホモゲナイズした。連続希釈後、ホモゲネートの溶液をLB寒天プレート上に塗布し、37℃で一夜培養した。次に、生細菌コロニーをカウントし、各ホモゲネート中のS.aureus細菌数を求めた。
結 果
【0201】
プラスミノーゲンが火傷創傷感染モデルでも細菌性関節炎モデルと同様の殺菌作用を示すか否かを検討するため、plg-/-マウスに火傷の損傷を負わせ、さらに1x106 CFUのS. aureus Phillipsを局所接種した。次に、これらマウスに9日間ヒトプラスミノーゲンまたはコントロールPBSを局所注射した。火傷後第10日に得たこれらマウスの組織試料からの細菌の回収は、plg-/-マウスにおいてヒトプラスミノーゲンの局所処置がコントロールPBS処置plg-/-マウスに比べて細菌数を10倍減少させるのに成功したことを示し(表8、図20)、これは局所注射をしなかったplg+/+マウスの細菌数よりも低い。これらデータは、プラスミノーゲンが開放火傷創傷に伴う感染症に対する宿主の防御(例えば殺菌)の重要な役割を果たすことを明確に示す。要するに、これらの結果は、プラスミノーゲンが2タイプの細菌性関節炎、開放創傷(火傷、切開)の治癒および開放創傷感染に対する宿主の防御により評価されたように種々のタイプの外傷に対する宿主の防御に必須であることを示唆する。
【表8】

【実施例15】
【0202】
野生型およびplg欠乏マウスにおける自然(自発的)慢性中耳炎の発生率
方 法
実験方法:18週間中、マウスを種々の時間間隔で25μl Dormicum(登録商標)(Roche AB、Stockholm、Sweden)、25μl Hypnorm(登録商標)(Janssen Pharmaceutica、Beerse、Belgium)および50μl無菌水の混合物100μlの腹腔内注射により麻酔した。鼓膜(TM)の肉眼所見(詳しく説明)を注意深く試験し、耳顕微鏡(otomicroscope)下で記録した。18週間の終了時に、すべての動物を屠殺し、18匹の動物(野生型、n=7;plg欠乏、n=11)の耳を、それぞれ、細菌の同定(野生型、n=6;plg欠乏、n=6)、樹脂包埋(野生型、n=4;plg欠乏、n=6)、およびパラフィン包埋(野生型、n=4;plg欠乏、n=10)用に無作為に3群に分けた。
【0203】
樹脂およびパラフィン包埋:頭蓋骨を以前に記載されたごとく樹脂およびパラフィン包埋用に回収した(15)。形態学のために、樹脂包埋試料を全中耳腔を通して薄切(1μm)し、トルイジンブルーで染色した。パラフィン包埋試料を免疫組織化学用に全中耳腔を通して薄切(5μm)した。
結 果
【0204】
慢性中耳炎の発現を試験するため、6週齢の野生型およびplg欠乏マウスを選んだ。実験マウスの鼓膜および中耳腔の状態を実験開始時、9週齢、13週齢、18週齢、および24週齢に検査した。耳顕微鏡的に、自然慢性中耳炎を、中耳腔中に浸出物質がみられるかまたはみられない不透明、白色、および肥厚した鼓膜で定義した。表9に示すように、野生型マウス(雄および雌両方)は18週間の実験期間中、いかなる中耳浸出物または外耳道(EEC)からの排液も生じなかった。耳顕微鏡により示されたように、野生型マウスの鼓膜は薄く、透明で、正常に位置していた(データ示さず)。対照的に、plg欠乏マウスでは、自然中耳炎の耳の数は、実験期間中雄雌同程度に徐々に増加した。実験終了時に、種々の程度の炎症性変化を示す自然中耳炎が残りのplg欠乏マウスのすべての耳に発現していた(表9)。
【表9】

a データは、感染・炎症のある耳の数/各群の耳の総数で示す。
b 形態学的に分析すると、耳顕微鏡下で正常を示したplg欠乏マウスの中耳は、鼓膜に付着している中耳腔中の薄層の不定形の組織塊のみを伴う、それほど顕著ではない炎症性変化を有することがわかった。
【実施例16】
【0205】
野生型およびplg欠乏マウスの中時腔から単離した細菌の同定
方 法
この実験は、細菌学的同定を除き、実施例8と同様に行った。
細菌学的同定:野生型およびplg欠乏群からの鼓室胞を解剖して軟部組織を除去し、該胞の骨床(bony floor)の小片をナイフで除去した。無菌スワブを中耳腔(MEC)内に浸漬し、スワブを使って材料をさらにLuriaブロス(LB)プレート上に塗布し、速やかに37℃で48時間培養した。得られたコロニーをCowan & Steelに従って同定した(16)。
結 果
【0206】
実験終了時に、6個の野生型および6個のplg欠乏マウスの耳からの鼓室胞を、細菌同定用に無作為に収集した。表10に示すように、細菌は6個の野生型試料のうちの1個にのみにみられた。細菌はStreptococcus sanguinisと同定された。しかしながら、plg欠乏マウスから得た6個の中耳腔試料のうちの5個から細菌が単離された。同定された種は、Staphylococcus aureus、Micrococcus luteus、Streptococcus sobrinus、およびStreptococcus mutansであった。同定された細菌はすべてグラム陽性であった。
【表10】

【実施例17】
【0207】
野生型およびplg欠乏マウスにおける中耳の光学顕微鏡検査
方 法
この実験は、免疫組織化学染色以外は実施例8と同様に行った。
免疫組織化学染色:パラフィン包埋切片をエタノール濃度が減少する系列中で再水和し、次いで蒸留水ですすいだ。内因性パーオキシダーゼ活性を3% H2O2で10分間ブロックし、スライドをさらにPBSで洗浄した。次に、連続切片を下記の抗体で処理した。すべての免疫組織化学染色において、一次抗体の代わりに非免疫動物の血清でインキュベーションした隣り合ったスライドを陰性コントロールに用いた。
【0208】
炎症性細胞を検出するために、T細胞(クローン53-7.3、希釈1:50;BD Biosciences Pharmingen、Stockholm、Sweden)、B細胞(クローンRA3-6B2、希釈1:250;BD Biosciences Pharmingen)、マクロファージ(MCAP497、希釈1:500;Serotec、Oxford、U.K.)および好中球(CL8993AP、希釈1:200;Cedarlane Laboratories、Hornby、Ontario、Canada)に対するラット抗マウスモノクローナル一次抗体を用いた。免疫組織化学染色を行うため、スライドを最初に回収し、正常ウサギ血清(Dako Patts、Copenhagen、Denmark)とインキュベーションし、次いで適切な濃度の種々の一次抗体とインキュベーションした。次に、スライドをビオチン化ウサギ抗ラットIgG(Dako Patts)とインキュベーションし、さらにアビジン-ビオチン-パーオキシダーゼ複合体(ABC)法(Vector Laboratories、Burlingame、CA)を用いて処理した。
【0209】
ウサギ抗ヒトポリクローナル抗体(10550、ICN Pharmaceuticals、Aurora、Ohio)を一次抗体に用いるパーオキシダーゼ抗パーオキシダーゼ(PAP)法によりサイトケラチンを免疫組織化学的に検出した。簡単には、組織切片を含むスライドを最初に37℃で8分間0.1%トリプシン(pH 7.8)で回収し、5%非免疫ブタ血清(Dako Patts)でブロックし、PBSで1:100に希釈した一次抗体とインキュベーションした。次に、ブタ抗ウサギ結合抗体(Dako Patts)、次いでウサギPAP複合体(Dako Patts)を適用した。
【0210】
フィブリン(フィブリノーゲン)を、ヤギ抗マウスポリクローナル抗体(Nordic Immunological Laboratories、Tilburg、The Netherlands)を一次抗体に用いるPAP法により免疫組織化学的に検出した。最初にウサギ血清(Dako Patts)、次いでPBS中の希釈1:500の一次抗体とインキュベーションし、次いでスライドをウサギ抗ヤギ結合抗体(Dako Patts)とインキュベーションした。次に、スライドをヤギPAP複合体(Dako Patts)とインキュベーションした。
【0211】
すべてのスライドをジアミノベンジジン(DAB)反応(Vector Laboratories)により褐色沈着物として可視化し、マイヤーのヘマトキシリンで対比染色した。スライドをライカDMLB顕微鏡下で光学顕微鏡検査し、画像をパーソナルコンピュータに接続したライカDC300Fカメラでデジタル記録した。個々の画像のコントラストと明るさの調整はAdobe Photoshop 7.0ソフトウエアを用いて行った。
結 果
【0212】
実験終了時に、形態学的染色を野生型およびplg欠乏マウスからの樹脂包埋試料を用いて行った。図7Aに示すように、野生型マウスの鼓膜および中耳は正常構造を示した。鼓膜は典型的な薄い三層構造:外側の角化表皮層、中間の固有層、および中耳腔の上皮層と隣接する内側の上皮層、を示した。中耳腔の中耳浸出物は検出されなかった。しかしながら、plg欠乏マウスでは試験したすべての中耳に炎症性変化が観察された。鼓膜は肥厚し、不定形の組織塊が付着し、時にそれはほぼ全中耳腔を満たしていた(図7B)。多くの試料において、外耳道も不定形組織で満たされていた(図7D)。
【0213】
実験期間終了時に、免疫組織化学染色を行い、中耳内のフィブリンおよびケラチンの分布を調べた(図7C、7D、7E、7F)。野生型マウスにおいて、フィブリン(フィブリノーゲン)およびケラチンに対する弱い免疫反応のみが鼓膜の上皮表面に観察された(図7Cおよび7E)。しかしながら、図7Dに示すように、plg欠乏マウスにおいて、鼓膜および中耳腔の粘膜を覆う不定形組織がフィブリンに対する免疫反応性を持つことが観察された。不定形組織の構造は、種々の領域および種々の試料で、ゆるい網状からスメア状まで、またはさらに密に押し固まったものまで変化した(データ示さず)。フィブリンの免疫反応性が外耳道の不定形組織でも観察された。ほとんどのplg欠乏マウスにおいて、鼓膜および周囲の外耳道の表皮層のケラチン染色はかなり肥厚していた(図7F)。
【0214】
炎症性細胞の浸潤を試験するため、野生型およびplg欠乏マウスからのパラフィン切片をT細胞、B細胞、マクロファージおよび好中球について染色した。図8A、8C、8E、および8Gに示すように、野生型マウスの鼓膜および中耳粘膜には炎症性細胞はほとんど検出できなかった。しかしながら、plg欠乏マウスにおいて、T細胞、B細胞、マクロファージ、および好中球がすべて鼓膜、ならびに中耳および外耳道を満たす不定形組織にみられた(図8B、2D、8F、および8H)。T細胞およびB細胞は比較的少なく、鼓膜および中耳粘膜にわずかに分布していた(図8Bおよび8D)。中耳粘膜において、マクロファージは最も豊富な炎症性細胞種であり(図8F)、好中球は外耳道に広がる不定形組織に優勢な細胞種であった(図8H)。全体として、これらの結果は、プラスミノーゲンが慢性中耳炎の自然発生を防ぐのに本質的な役割を果たすことを示唆する。
【0215】
先の実施例は例示であって、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を何ら限定するものではない。本明細書に記載のすべての参考文献は本明細書の一部を構成する。
(参考文献リスト)
【0216】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染性疾患の防御、予防、および/または治療用の医薬組成物を製造するための、プラスミノーゲンを直接またはプラスミノーゲン活性化経路を介して活性化する能力を有するかまたはプラスミノーゲン活性化経路の成分である化合物の使用。
【請求項2】
プラスミノーゲン活性化経路の成分が、プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、Glu-プラスミノーゲン、プラスミン、プラスミノーゲンおよびプラスミンのクリングルドメイン、ミニ-プラスミノーゲン、ミニ-プラスミン、プラスミノーゲン活性化因子、tPA、およびuPAから選ばれる請求項1記載の使用。
【請求項3】
プラスミノーゲンを直接またはプラスミノーゲン活性化経路を介して活性化する能力を有する化合物が、ストレプトキナーゼ、サルプラーゼ、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、パミテプラーゼ、スタフィロキナーゼ、およびプラスミノーゲン活性化経路の成分の組換え型および変異体から選ばれる請求項1記載の使用。
【請求項4】
感染性疾患が細菌感染性疾患またはウイルス感染性疾患である請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
細菌感染性疾患が、中耳炎、細菌性関節炎、歯肉炎、歯周炎、結膜炎、創傷感染、外科的創傷感染、壊死、肺炎、火傷および/または感染症により生じる呼吸器官の損傷および糖尿病、静脈不全または静脈/動脈複合不全、または感染性関節炎などに罹患した患者の感染性慢性脚潰瘍、感染により生じた関節組織の損傷、好ましくは中耳炎または細菌性関節炎から選ばれる請求項4記載の使用。
【請求項6】
該組成物が請求項1〜3に記載の2またはそれ以上の化合物の組み合わせを含む先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
該組成物がさらに少なくとも1の抗生剤を含む先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
抗生剤が、テトラサイクリン、アンフェニコール、ベータ・ラクタム、ペニシリン、スルホンアミド、マクロライド、リンコサミド、ストレプトガミン、ストレプトマイシン、キノロン、およびメトロニダゾールからなる群から選ばれる請求項7記載の使用。
【請求項9】
対象が哺乳動物、特にヒトである先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
対象がプラスミンまたはプラスミノーゲン欠乏(欠損)症である先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
欠乏が先天性、後天性、および/または局所性である請求項10記載の使用。
【請求項12】
該化合物が全身的、局所的(locally、topically)、静脈内、筋肉内、皮下、髄腔内、または経直腸的に、または吸入、局所注射、関節内注射で投与される先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
該化合物が適切なポリペプチド担体または安定化剤と組み合わせて投与される先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
該化合物が、0.05mg〜約10mg、好ましくは約0.5〜約5mgの用量で投与される先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
該化合物の投与が少なくとも1回、好ましくは少なくとも毎日反復される先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
該投与が、請求項1〜15に記載の化合物を含む創傷被覆材を感染領域に適用することにより行われる先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
感染性疾患の防御、予防、および/または治療が感染性病原体に対する免疫反応を誘導することを含む先の請求項のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
感染性疾患の防御、予防、および/または治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に、有効量の請求項1〜17に記載の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項19】
有効量の請求項1〜17に記載の化合物を含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療用の医薬組成物。
【請求項20】
有効量の請求項1〜17に記載の化合物および少なくとも1の抗生剤もしくは抗真菌剤を別のバイアルに含む感染性疾患の防御、予防、および/または治療に用いる部分のキット。
【請求項21】
感染症に対する宿主の防御を促進するのに有用な物質の同定方法であって、
(a)被検物質を細菌性関節炎を有する動物に投与し、
(b)少なくとも1のパラメーター:(i)殺菌度、(ii)壊死組織形成、(iii)炎症細胞の活性化、(iv)感染症、例えば細菌性関節炎のサイトカインの発現、を評価し、
(c)工程(b)の選択したパラメーターをコントロール値と比較し、
(d)選択したパラメーターがコントロール値と比較して、感染症に対する宿主の防御を促進するのに有用な物質としてより有益なあらゆる被検物質を選択することを含む方法。
【請求項22】
該動物が野生型動物およびプラスミノーゲンの内因性発現を欠くトランスジェニック動物からなる群のメンバーから選ばれる請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−502600(P2010−502600A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526572(P2009−526572)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050585
【国際公開番号】WO2008/026999
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(509060110)オムニオ・ヒーラー・アクチボラゲット (2)
【氏名又は名称原語表記】OMNIO HEALER AB
【Fターム(参考)】