説明

成形用金型及び該成形用金型を備えた成形装置

【課題】内筒体と外筒体と該両筒体の間に配設される中間筒体と各筒体の間に介設されるゴム材料とを一体成形するための成形用金型において、型閉じ状態にて、中間筒体により区画される内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとのそれぞれにゴム材料を充填する際に、各キャビティ内に発生する加硫ガス等に起因した剥離や膨れといったゴム材料の成形不良を防止する。
【解決手段】外側キャビティ17に連通するエア排出流路を備えるとともに、ゴム注入流路を、内側及び外側キャビティ16,17にそれぞれゴム材料を導く内側及び外側注入流路部36,37に分岐させて、各注入流路部36,37の流路断面積を、外側キャビティ17へのゴム材料の充填速度が、内側キャビティ16へのゴム材料の充填速度以下になるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
内筒体と、その外周を囲む外筒体と、該内筒体及び該外筒体の間に配設される中間筒体と、各筒体の間に介設されるゴム材料とからなるゴム成形体を成形するための成形用金型、及び、該成形用金型を備えた成形装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内筒体と、内筒体の周囲にこれと同軸に設けられた外筒体と、両筒体の間に介設されたゴム材料とからなる防振用のゴム成形体の成形用金型は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この成形用金型は、型閉じ可能な上型と下型とを備えている。ゴム成形体を成形するにあたっては、この上型と下型との間に内筒体と外筒体とをセットし、上型と下型とを型閉じすることで内筒体の外周にキャビティを形成する。そうして、キャビティを形成した後に、上型に形成された注入流路からゴム材料を注入し、キャビティ内にゴム材料を充填する。これにより、内筒体と外筒体とにゴム材料が加硫接着されてゴム成形体の成形が完了する。
【0004】
このような成形用金型では、ゴム材料の剥離や膨れと言った成形不良を防止するべく、成形時にキャビティ内のエア(ガス)をキャビティ外に適切に排出する必要がある。例えば、特許文献2に示すものでは、キャビティに連通するガス排出孔を設けて、成形時にゴム材料の充填圧力によってキャビティ内のエアをキャビティ外に自然に排出するようにしている。
【0005】
また、上述の防振用のゴム成形体として、内筒体及び外筒体の間にさらに中間筒体を備えた三重筒構造(例えば、特許文献3及び4参照)を採用する場合がある。この構造では、中間筒体を設けることによって軸直方向の剛性を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−079551号公報
【特許文献2】特開2008−55881号公報
【特許文献3】特開2008−45710号公報
【特許文献4】特開2009−2394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に示す成形用金型を用いて、上記特許文献2及び3に示す中間筒体を備えた三重筒構造のゴム成形体を成形する場合には、上型と下型との間に、内筒体、外筒体及び中間筒体をセットして、その状態で上型と下型とを型閉じすればよい。これにより、中間筒体により区画される内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとが形成される。そして、該形成された各キャビティにゴム材料を充填することで三重筒構造のゴム成形体を成形することができる。
【0008】
この三重筒構造のゴム成形体の成形用金型に対して、上記特許文献2に示すエア排出構造を適用することで、キャビティ内のエア等に起因するゴム材料の成形不良を防止することができる。この場合、内側及び外側キャビティの双方にそれぞれエア排出孔を設けることが考えられるが、該排出孔に付着したゴム材料の除去作業を容易化する観点及び排出孔の加工コストを低減する観点から、一方のキャビティにのみエア排出孔を設けることが好ましい。この場合、他方のキャビティにエア排出口を設けない代わりに、例えば、中間筒体に切欠き部を設ける等して両キャビティ間のエアの流通を許容するようにすればよい。
【0009】
ところで、上記三重筒構造のゴム成形体の成形用金型に対して、特許文献1に記載された注入流路構造を単に適用すると、一つの注入流路から内側及び外側キャビティの双方にゴム材料を注入する構成となる。この構成においては、注入流路の出口開口を、中間筒体の上端面に対峙させて内側キャビティと外側キャビティとの双方に跨るように形成することが考えられる。そうすることで、注入流路から注入されたゴム材料は、中間筒体の上端面にぶつかった後、その内周面側と外周面側とに分岐して流下することとなり、内側及び外側キャビティの双方にゴム材料を充填することができる。
【0010】
しかしながら、このような充填方式では、中間筒体の上端面にぶつかたゴム材料が中間筒体の内周面側に流れるか外周面側に流れるか極めて不安定なため、エア排出孔が設けられた一方のキャビティ(内側又は外側キャビティ)の充填が、他方のキャビティよりも先に完了してしまう場合がある。この結果、該他方のキャビティの充填が完了する前に、該一方のキャビティに設けられたエア排出孔がゴム材料によって閉塞され、その後はキャビティ内のエア(他方のキャビティ内のエア)をエア排出孔から適切に排出することができなくなるという問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内筒体と、その外周を囲む外筒体と、内筒体及び外筒体の間に配設される中間筒体と、各筒体の間に介設されるゴム材料とからなるゴム成形体を成形するための成形用金型に対して、その構成に工夫を凝らすことで、成形時に、中間筒体により区画される内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとの双方から確実にエアを排出させて、ゴム材料の成形不良を防止しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、内側キャビティと外側キャビティ間のエアの流通を許容するエア流通部と、内側キャビティ又は外側キャビティに連通して、キャビティ内のエアを直接又はエア流通部を介して排出させるエア排出流路とを備えるとともに、当該エア排出流路が連通する一方のキャビティへのゴム材料の充填速度が、他方のキャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにゴム注入流路部を構成した。
【0013】
具体的には、請求項1の発明では、上型と下型とを備え、該上型及び下型の間に、内筒体とその外周を囲む外筒体と該内筒体及び該外筒体の間に配設される中間筒体とを予めセットした状態で、上記上型及び下型を型閉じすることで、上記中間筒体により区画された内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとを形成し、該形成された内側キャビティ及び外側キャビティに上記上型又は下型に設けられたゴム注入流路からゴム材料を充填することで、上記3つの筒体とゴム材料とからなるゴム成形体を成形可能に構成された成形用金型を対象とする。
【0014】
そして、上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通して両キャビティ間のエアの流通を許容するエア流通部と、上記外側キャビティに連通して、該外側キャビティ内のエアが直接、排出されるとともに、上記内側キャビティ内のエアが上記エア流通部及び上記外側キャビティを通って排出されるように構成されたエア排出流路とを備え、上記ゴム注入流路は、上記ゴム材料が導入される導入流路部と、該導入流路部から分岐され、該導入流路部内のゴム材料を内側キャビティ及び外側キャビティへそれぞれ導く内側注入流路部及び外側注入流路部と、を有し、上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度が、上記内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにそれぞれ設定されているものとする。
【0015】
この構成によれば、成形時には、外側キャビティ内のエアを直接、エア排出流路から排出するとともに、内側キャビティ内のエアをエア流通部及び外側キャビティを通じてエア排出流路から排出することができる。これにより、成形時にゴム材料の加硫反応等により生成される反応ガスをこのエアと共にキャビティ外に排出することができ、ゴム材料の剥離や膨れといった成形不良を防止することができる。
【0016】
また、ゴム注入流路の導入流路部内に導入されたゴム材料を内側キャビティへと導く内側注入流路部と、該ゴム材料を外側キャビティへと導く外側注入流路部とを独立に設けて、該内側及び外側注入流路部の流路断面積を、外側キャビティへのゴム材料の充填速度が、内側キャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにそれぞれ設定するようにしたことで、エア排出流路が設けられた外側キャビティへのゴム材料の充填完了時期を、内側キャビティへのゴム材料の充填完了時期と同じか又はそれよりも遅らせることができる。これにより、エア排出流路(詳しくはエア排出流路における外側キャビティとの連通開口)が充填済みのゴム材料によって閉塞される時期を極力、遅らせて、エア排出流路による両キャビティ内のエア排出性を、ゴム材料の充填が完了する直前まで維持することができる。よって、エア排出性の低下に起因して上述の成形不良が生じるのを確実に防止することが可能となる。
【0017】
また、エア排出流路を内側及び外側キャビティのそれぞれに対して設けるのではなく、外側キャビティにのみ設けるようにしたことで、エア排出流路の加工コストを低減することができるとともに、排出流路に付着したゴム材料の除去作業を容易化することができる。
【0018】
尚、本明細書において、「充填速度」とは、単位時間当たりのゴム充填率(%)の変化量を意味する。この定義によれば、例えば、内側キャビティと外側キャビティとの充填速度が等しいことは、各キャビティの充填開始から完了までの時間(充填率100%になるまでの時間)が等しいことを意味している。
【0019】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度が、該内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定されているものとする。
【0020】
この構成によれば、エア排出流路が設けられた外側キャビティへのゴム材料の充填完了時期を、内側キャビティへのゴム材料の充填完了時期よりも遅らせることができる。これにより、請求項1の発明と同様の作用効果をより一層確実に得ることができる。
【0021】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、上記エア排出流路における上記外側キャビティとの連通開口は、型閉じ状態において上記内筒体の筒軸方向から見たときに、上記外側注入流路部における上記外側キャビティとの連通開口に対して、該筒軸を挟んで180°反対側に位置しているものとする。
【0022】
この構成によれば、外側キャビティにおけるゴム材料の最終充填部(ゴム材料の流動先端部)の近傍に、エア排出流路の連通開口を形成することができる。したがって、エア排出流路の連通開口を、両キャビティへのゴム材料の充填が完了する直前まで流通状態に維持してそのエア排出性を維持することができる。
【0023】
請求項4の発明では、請求項1乃至3のいずれか一つの発明において、上記エア排出流路は、上記上型の下面又は上記下型の上面に形成された凹状溝により構成されているものとする。
【0024】
この構成によれば、エア排出流路を、型閉じ状態において型の合わせ面となる上型の下面又は下型の上面に形成された凹状溝により構成するようにしたことで、上型及び下型が型開き状態にあるときには、排出流路(凹状溝)が外部に露出することとなる。これにより、作業者は、型開き状態にあるときに、排出流路内にゴム材料が付着しているか否かを視認することができ、その除去作業が容易になる。
【0025】
請求項5の発明では、上型と下型とを備え、該上型及び下型の間に、内筒体とその外周を囲む外筒体と内筒体及び外筒体の間に配設される中間筒体とを予めセットした状態で、上記上型及び下型を型閉じすることで、上記中間筒体により区画された内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとを形成し、該形成された内側キャビティ及び外側キャビティに上記上型又は下型に設けられたゴム注入流路からゴム材料を充填することで、上記3つの筒体とゴム材料とからなるゴム成形体を成形可能に構成された成形用金型を対象とする。
【0026】
そして、上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通して該両キャビティ間のエアの流通を許容するエア流通部と、上記内側キャビティに連通して、該内側キャビティ内のエアが直接、排出されるとともに、上記外側キャビティ内のエアが上記エア流通部及び上記内側キャビティを通って排出されるように構成されたエア排出流路とを備え、上記ゴム注入流路は、上記ゴム材料が導入される導入流路部と、該導入流路部から分岐され、該導入流路部内のゴム材料を内側キャビティ及び外側キャビティへそれぞれ導く内側注入流路部及び外側注入流路部と、を有し、上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度が、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにそれぞれ設定されているものとする。
【0027】
この構成によれば、成形時には、内側キャビティ内のエアを直接、エア排出流路から排出するとともに、外側キャビティ内のエアをエア流通部及び内側キャビティを通じてエア排出流路から排出することができる。これにより、成形時にゴム材料の加硫反応等により生成される反応ガスをこのエアと共にキャビティ外に排出することができ、ゴム材料の剥離や膨れといった成形不良を防止することができる。
【0028】
また、導入流路部内に導入されたゴム材料を内側キャビティへと導く内側注入流路部と、該ゴム材料を外側キャビティへと導く外側注入流路部とを独立に設けて、該内側及び外側注入流路部の流路断面積を、内側キャビティへのゴム材料の充填速度が、外側キャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにそれぞれ設定するようにしたことで、エア排出流路が設けられた内側キャビティへのゴム材料の充填完了時期を、外側キャビティへのゴム材料の充填完了時期と同じか又はそれよりも遅らせることができる。こうして、請求項1の発明と同様に、エア排出流路が充填済みのゴム材料によって閉塞される時期を極力、遅らせて、エア排出流路による両キャビティ内のエア排出性を、ゴム材料の充填が完了する直前まで維持することができる。よって、エア排出性の低下に起因して上述の成形不良が生じるのを確実に防止することが可能となる。
【0029】
請求項6の発明では、請求項5の発明において、上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度が、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定されているものとする。
【0030】
これによれば、請求項5の発明と同様の作用効果をより一層確実に得ることができる。
【0031】
請求項7の発明では、請求項5又は6の発明において、上記エア排出流路における上記内側キャビティとの連通開口は、型閉じ状態において上記内筒体の筒軸方向から見たときに、上記内側注入流路部における該内側キャビティとの連通開口に対して、該筒軸を挟んで180°反対側に位置しているものとする。
【0032】
この構成によれば、内側キャビティにおけるゴム材料の最終充填部(ゴム材料の流動先端部)の近傍に、エア排出流路の連通開口を形成することができる。したがって、エア排出流路の連通開口を、両キャビティへのゴム材料の充填が完了する直前まで流通状態に維持してそのエア排出性を維持することができる。
【0033】
請求項8の発明では、請求項1乃至7のいずれか一つの発明において、上記中間筒体は、その筒軸方向に沿って複数に分割された分割構造を有するものであり、上記中間筒体を構成する各分割体は、型閉じ状態において、上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通させるように、上記上型及び下型の間に互いに隙間を空けてセットされるものであり、上記エア流通部は、型閉じ状態において、上記中間筒体を構成する各分割体の間に形成される上記隙間からなるものとする。
【0034】
この構成によれば、中間筒体を複数の分割体で構成して、各分割体同士を互いに隙間を空けてセットして、この隙間をエア流通部として利用するようにしたことで、上型や下型に両キャビティを連通するための孔や溝を形成する必要がなくなり、これによって、型の加工コスト及びメンテナンス工数を低減することができる。また、成形後のゴム成形体の外筒体に絞り加工を施す場合に、内筒を構成する各分割体が径方向に移動することができるため、製品性能を確保する点でも有用である。
【0035】
請求項9の発明では、請求項1乃至8のいずれか一つの発明において、上記中間筒体には、上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通させるように切欠き部又は貫通孔部が形成されており、上記エア流通部は、上記切欠き部又は上記貫通孔部からなるものとする。
【0036】
この構成によれば、請求項8の発明と同様に、上型や下型に加工を施すことなく、中間筒体に形成された切欠き部又は貫通孔部を利用して、エア流通部を形成することができる。よって、型の加工コスト及びメンテナンス工数を低減することができる。
【0037】
請求項10の発明では、請求項1乃至9のいずれか一つに記載の成形用金型を備えた成形装置を対象とする。
【0038】
そして、上記成形用金型に設けられた上記エア排出流路に接続され、上記内側キャビティ及び上記外側キャビティ内の真空引きを行うための真空引き装置を備えているものとする。
【0039】
この構成によれば、内側及び外側キャビティ内のエアを、真空引き装置によって強制的に吸引することができ、これにより、エア排出流路からのエアの排出性をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明の成形用金型によると、中間筒体により区画される内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとを連通して該両キャビティ間のエアの流通を許容するエア流通部と、内側キャビティ又は外側キャビティに連通して、キャビティ内のエアを直接又はエア流通部を介して排出させるエア排出流路とを備えるとともに、当該エア排出流路が連通する一方のキャビティへのゴム材料の充填速度が、他方のキャビティへのゴム材料の充填速度以下となるように注入流路部を構成したことで、成形時に、エア排出流路が充填済みのゴム材料によって閉塞される時期を極力、遅らせて、内側キャビティと外側キャビティとの双方から確実にエアを排出させることができ、延いては、ゴム材料の成形不良を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る成形用金型を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る成形用金型によって成形されるゴム成形体を示す縦断面図である。
【図3】半割構造を有する中間筒体の一方を示す斜視図である。
【図4】上型を示す下側から見た平面図である。
【図5】上型を示す上側から見た平面図である。
【図6】注入流路の詳細を示す拡大断面図である。
【図7】図1のVII−VII線断面図である。
【図8】実施形態2を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0043】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係る成形装置Aを示す。この成形装置Aは、自動車のサスペンションブッシュ等に使用される防振用のゴム成形体100(図2参照)を成形するためのものであって、成形用金型1と成形時に型1内の真空引きを行うための真空引き装置50とを備えている。
【0044】
成形品である上記ゴム成形体100は、図2に示すように、同心状に配設された3つの筒体2〜4とゴム材料とを一体成形した三重筒構造を有している。具体的には、ゴム成形体100は、内筒体2と、その外周を囲む外筒体3と、内筒体2及び外筒体3の間に配設される中間筒体4と、各筒体2〜4の間に介設される防振ゴム部5,6とで構成されている。内筒体2及び外筒体3はそれぞれ、筒状の金属部材で構成されている。外筒体3の軸方向の一側端部は、径方向外側に鍔状に折り曲げられてフランジ部3aを形成している。中間筒体4は、同じく金属部材により構成されていて、内筒体2及び外筒体3とは異なり、筒軸方向に沿って径方向に2分割された半割構造を有している(図3参照)。中間筒体4を構成する各分割体4a,4bには、その厚さ方向に貫通する複数(本実施形態では4つ)の連通孔4fが形成されている。尚、図3では、見易いように一方の分割体4aを実線で示し、他方の分割体4bを二点鎖線で示している。
【0045】
成形用金型1は、上型10、中型11及び下型12を備えている。下型12は、上型10に対して上下動することで型閉じ及び片開き可能になっている。ゴム成形体100を成形する際には、上型10と下型12との間に上記内筒体2、中間筒体4、及び外筒体3をセットした状態で、上型10と下型12とを中型11を挟んで型閉じすることによりキャビティ15が形成される。
【0046】
上記キャビティ15は、中間筒体4及び内筒体2間に挟まれた内側キャビティ16と、中間筒体4及び外筒体3間に挟まれた外側キャビティ17とからなり、内側キャビティ16及び外側キャビティ17は、中間筒体4により区画されて互いに同心円状に配置されている。内側キャビティ16と外側キャビティ17とは、型閉じ状態において、中間筒体42に形成された上記連通孔4f、及び、中間筒体4を構成する各分割体4a,4bの間に形成される後述の隙間4s(図3参照)を介して連通される。
【0047】
上型10及び下型12には、内筒体2を固定してその位置決めを行うための位置決めピン18がそれぞれ設けられている(図1及び図5参照)。位置決めピン18の先端部は、内筒体2の挿入性を高めるために円錐台状(テーパ状)に形成されている。位置決めピン18の先端部を除く部分は円柱状に形成されており、各位置決めピン18の基端寄りの部分はそれぞれ、上型10及び下型12に設けられたピン固定孔13に圧入されている。内筒体2は、型閉じ状態において、位置決めピン18が内挿された状態で上型10と下型12とによって上下方向から挟み込むようにして保持される。上型10の下面及び下型12の上面にはそれぞれ、ピン固定孔13に隣接してその周囲を囲むように平坦状のシール面19が形成されており、型閉じ状態において、該シール面19が内筒体2の両端面に圧接される。
【0048】
また、上型10の下面及び下型12の上面には、ピン固定孔13を中心として内側土手部30と外側土手部31とが同心円状に形成されている(図1及び図4参照)。内側土手部30は、上記シール面19に隣接してその外周を囲むように形成されており、外側土手部31は、内側土手部30を囲むように該内側土手部30との間に所定間隔を隔てて形成されている。内側土手部30及び外側土手部31はそれぞれ、内側キャビティ16及び外側キャビティ17内に膨出するように形成されている。この2つの土手部30,31の間隔は、中間筒体4の厚さよりもやや大きめに設定されており、両土手部30,31の間に形成される環状凹部32に中間筒体4の軸方向の両端部を嵌め込むことにより、中間筒体4の位置決めがなされる。
【0049】
中間筒体4は、型閉じ状態において、その軸方向の両端部が上記環状凹部32に嵌め込まれた状態で、上型10と下型12とによって上下方向から挟み込むように保持される。環状凹部32の底面には、該底面から隆起する6つの位置決め座部33が形成されている。6つの位置決め座部33は、環状凹部32の周方向に等間隔に形成されている。各位置決め座部33は、内側土手部30の外周面から外側土手部31の内周面まで延びている。6つの位置決め座部33は、型閉じ状態において、中間筒体4の筒軸方向の両端面に圧接される。6つの位置決め座部33のうち、環状凹部32の径方向において対向する2つの位置決め座部33は、その頂面の幅方向中央部に位置決め片33bを有していて、断面凸型状に形成されている。中間筒体4の各分割体4a,4bは、この位置決め片33bを挟んでその両側にセットされ、この位置決め片33bによって、各分割体4a,4bの周方向位置の位置決めがなされる。そうして、環状凹部32にセットされた各分割体4a,4bの間には、この位置決め片33bの幅Dに対応したスリット状の隙間4s(図3参照
が形成される。
【0050】
中型11には、外筒体3を嵌入するための円筒孔11fが形成されている。円筒孔11fの上端部には、外筒体3のフランジ部3aに嵌合する円形穴11gが形成されている。外筒体3は、型閉じ状態において、中型11の円筒孔11fに嵌め込まれた状態で上型10と下型12とによって上下方向から挟み込むようにして保持される。上型10の下面及び下型12の上面には、上記外側土手部31に隣接してその外周を囲むようにシール面14が形成されており、型閉じ状態では、この環状シール面14が外筒体3の筒軸方向の両端面に圧接される。
【0051】
上型10の下面には、この環状シール面14を横切ってキャビティ径方向(図1の左右方向)に延びる溝部20が形成されており、シール面14のうちこの溝部20が設けられた部分は、型閉じ状態であっても外筒体3の上端面に密着せずに、エア排出流路21(後述する)と外側キャビティ17とを連通する連通開口22を形成する。
【0052】
エア排出流路21は、中型11と上型10との合わせ面に形成されている。具体的には、エア排出流路21は、中型11の上面に形成された断面半円形状の凹状溝と上型10の下面とで形成される密閉流路からなる。エア排出流路21は、外側キャビティ17の外周部から径方向外側に延びた後、平面視で略直角に折れ曲がって延びて、型外に設けられた真空引き装置50に接続される(図5参照)。
【0053】
<注入流路の構成)
上型10には、内側及び外側キャビティ16,17にゴム材料を注入するための1つの注入流路34(図1、図5及び図6参照)が形成されている。注入流路34は、ゴム材料が導入される導入流路部35と、該導入流路部35から分岐され、該導入流路部35内のゴム材料を内側キャビティ16及び外側キャビティ17へそれぞれ導く内側注入流路部36及び外側注入流路部37とを備えている。
【0054】
導入流路部35は、上型10の上面に開口するとともに、そこから下側に向かって上型の下面近傍まで延びている。導入流路部35は、下側ほど縮径するテーパ状をなし、平面視で中間筒体4の丁度、真上に位置している。導入流路部35の上側の開口35fには、不図示のゴム射出機が接続されており、ゴム射出機から射出されたゴム材料は、該開口35fを介して導入流路部35内に導入される。
【0055】
内側注入流路部36は、導入流路部35の下端部から内側キャビティ16に向かって斜めに延びて、内側土手部30の頂縁部の内周面側に形成されたに開口している。そうして、内側注入流路部36は、導入流路部35と内側キャビティ16とを連通している。
【0056】
外側注入流路部37は、内側注入流路部36とは別の独立した流路であり、導入流路部35の下端部から外側キャビティ17に向かって下方に延びて、外側土手部31の頂縁部に開口している。そうして、外側注入流路部37は、導入流路部35と外側キャビティ17とを連通している。
【0057】
上記エア排出流路21における外側キャビティ17との連通開口22は、型閉じ状態において内筒体2の筒軸方向から見たときに、上記外側注入流路部37における上記外側キャビティ17との連通開口に対して該筒軸を挟んで180°反対側に位置している(図5参照)。
【0058】
上記内側及び外側注入流路部36,37はそれぞれ、長さ方向の全体に亘って流路断面積が一定のストレート状に形成されている。内側注入流路部36及び外側注入流路部37の流路断面積は、該外側注入流路部37からの外側キャビティ17へのゴム材料の充填速度が、内側注入流路部36からの内側キャビティ16へのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定されている。ここで、「充填速度」とは、単位時間当たりのゴム材料の充填率(%)の変化量を意味している。
【0059】
<成形方法>
次に、この成形用金型1を用いたゴム成形体100の成形方法について説明する。
【0060】
先ず、下型12の上に中型11を載せてセットする。
【0061】
そして、内筒体2、外筒体3、及び中間筒体4の必要な箇所にそれぞれ接着剤を塗布する。
【0062】
次に、内筒体2を下型12に突設された位置決めピン18の先端部から被せるようにセットする。
【0063】
次いで、外筒体3を中型11の円筒孔11fに嵌め込んでセットするとともに、中間筒体4を下型12に形成された環状凹部32に嵌め込んでセットする。
【0064】
そうして、各筒体2〜4のセットが完了した後に、下型12及び中型11を上昇させて、上型10及び下型12を中型11を挟んで型閉じする。これにより、各筒体2〜4は、上型10及び下型12により上下方向の両側から挟持されて固定され、組み合われた3つの型10〜12内には、中間筒体4によって区画さる内筒体2側の内側キャビティ16と外筒体3側の外側キャビティ17とが形成される。
【0065】
次いで、ゴム射出機からゴム材料(未加硫ゴム組成物)を射出して、それをゴム注入流路34の導入流路部35へと導入するとともに、該導入流路部35から内側及び外側注入流路部36,37を介して内側及び外側キャビティ16,17内にそれぞれ流入させる。
そうして、各キャビティ16,17にゴム材料を充填する。また、各キャビティ16,17へのゴム材料の充填開始(流入開始)と同時又はその直前に、真空引き装置50を起動して各キャビティ16,17内の真空引きを開始する。
【0066】
そして、各キャビティ16,17へのゴム材料の充填完了後に、型締めを行い、所定温度で所定時間そのままの状態を保持する。このとき、ゴムが加硫して防振ゴム部5,6が成形される同時にその防振ゴム部5,6が各筒体2〜4に加硫接着され、それらが一体化して製品であるゴム成形体100が成形される。
【0067】
以上の如く、上記実施形態1では、各キャビティ16,17へのゴム材料の充填時には、真空引き装置50よりエア排出流路21を介して各キャビティ16,17内に負圧を作用させることで、内側キャビティ16内のエアを、中間筒体4の各分割体4a,4bの間の隙間4sから外側キャビティ17を通ってエア排出流路21から排出するとともに、外側キャビティ17内のエアを直接、エア排出流路21から排出することができる。これにより、成形時にゴム材料の加硫反応等により生成される反応ガスをこのエアと共にキャビティ外に排出することができ、ゴム材料の剥離や膨れといった成形不良を防止することができる。
【0068】
ところで、上記の如く、キャビティ15が中間筒体4によって内側キャビティ16と外側キャビティ17とに区画された成形用金型1では、エア排出流路21が設けられる外側キャビティ17へのゴム材料の充填速度が、内側キャビティ16へのゴム材料の充填速度よりも大きいと、内側キャビティ16へのゴム材料の充填が完了する前に、エア排出流路21の外側キャビティ17との連通開口22がゴム材料により閉塞されて、その後は、エア排出流路21を介した内側キャビティ16内のエア抜きが不可能になってしまう。この結果、内側キャビティ内に充填されたゴム材料に剥離等の成形不良が生じるという問題がある。
【0069】
これに対して、上記実施形態1では、ゴム注入流路34を、ゴム材料が導入される導入流路部35と、該導入流路部35から分岐され、該導入流路部35内のゴム材料を内側キャビティ16及び外側キャビティ17へそれぞれ導く内側注入流路部36及び外側注入流路部37とで構成するとともに、内側注入流路部36及び外側注入流路部37の流路断面積を、外側キャビティ17へのゴム材料の充填速度が、内側キャビティ16へのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定するようにした。
【0070】
これにより、エア排出流路21が設けられた外側キャビティ17へのゴム材料の充填完了時期を、内側キャビティ16へのゴム材料の充填完了時期よりも遅らせることができる。この結果、エア排出流路21(詳しくはエア排出流路21における外側キャビティ17との連通開口22)が充填済みのゴム材料によって閉塞される時期を極力、遅らせて、エア排出流路21による両キャビティ16,17内のエア排出性を、ゴム材料の充填が完了する直前まで維持することができる。よって、エア排出性の低下に起因した上記成形不良を確実に防止することが可能となる。
【0071】
また、上記実施形態1では、上記エア排出流路21における上記外側キャビティ17との連通開口22は、型閉じ状態において上記内筒体2の筒軸方向から見たときに、外側注入流路部37における外側キャビティ17との連通開口に対して、該筒軸を挟んで180°反対側に位置している(図5参照)。
【0072】
これにより、外側キャビティ17におけるゴム材料の最終充填部(ゴム材料の流動先端部)の近傍に、エア排出流路21の連通開口22を形成することができる。よって、外側キャビティ17へのゴム材料の充填が完了する直前まで、エア排出流路21の連通開口22を流通状態に維持してエア排出性を維持することができる。
【0073】
また、上記実施形態1では、エア排出流路21を、上型10及び中型11の合せ面部に形成するようにしたことで、型開き状態にあるときには、エア排出流路(凹状溝)が外部に露出するため、作業者はエア排出流路21内に付着したゴム材料を視認することができ、その除去作業が容易になる。
【0074】
(実施形態2)
図8は、本発明の実施形態2を示し、ゴム注入流路34及びエア排出流路21の配置構成を上記実施形態1とは異ならせたものである。尚、図5と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜省略する。
【0075】
すなわち、上記実施形態1では、ゴム注入流路34を1つだけ設けるようにしているが、本実施形態2では、2つのゴム注入流路34を設けて、それらを内筒体2の筒軸を挟んで互いに180°反対側に形成するようにしている。これによれば、ゴム材料を各キャビティ16,17に対して内筒体2の筒軸を挟んで対称に充填することができ、ゴム材料の不均一や成形不良を防止することができる。
【0076】
上記エア排出流路21は、型10内で第1エア排出流路21aと第2エア排出流路21bとの2つに分岐していて、外側キャビティ17に対して2カ所から連通している。第1エア排出流路21aの外側キャビティ17との連通開口22aと、第2エア排出流路21bの外側キャビティ17との連通開口22bとは、内筒体2の筒軸を挟んで互いに180°反対側に形成されている。
【0077】
各連通開口22a,22bは、各ゴム注入流路34に対し、平面視で内筒体2の筒軸回りに90°の位置に形成されている。すなわち、各連通開口22a,22bは、平面視で、2つのゴム注入流路34の軸心を結ぶ直線に直交し且つ内筒体2の筒軸中心を通る直線上に位置している。これによれば、連通開口22a,22bを、ゴム注入流路34から極力遠ざけて配置することができるため、ゴム材料の充填が完了する直前まで、各連通開口22a,22bを流通状態に維持することができる。
【0078】
このように、本実施形態では、2つのゴム注入流路34を内筒体2の筒軸を挟んで相対向して配置することで、ゴム材料を各キャビティ16,17に対して均一に充填することを可能としつつ、ゴム材料の充填が完了する直前までエア排出流路21の流通状態を維持してそのエア排出性を維持することができる。
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記各実施形態に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。すなわち、上記各実施形態では、内側注入流路部36及び外側注入流路部37の流路断面積は、該外側注入流路部37からの外側キャビティ17へのゴム材料の充填速度が、内側注入流路部36からの内側キャビティ16へのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定されているが、該両充填速度が等しくなるように設定してもよい。
【0079】
また、上記各実施形態では、中間筒体4を径方向に2つに分割するようにしているが、3つ以上に分割してもよいし、分割せず一体成形するようにしてもよい。中間筒体4を一体成形した場合でも、型閉じ状態において、上型10及び下型12の環状凹部32の底面と中間筒体4との間には、位置決め座部33の高さ分だけ隙間(エア流通部)が形成されるため、該隙間を介して内側及び外側キャビティ17が連通する。したがって、内側キャビティ16内の空気を該隙間から外側キャビティ17を介してエア排出流路21へと排出することができる。
【0080】
また、上記各実施形態では、エア排出流路21を外側キャビティ17に連通させるようにしているが、内側キャビティ16に連通させるようにしてもよい。この場合、内側注入流路部36及び外側注入流路部37の流路断面積は、該内側注入流路部36からの内側キャビティ16へのゴム材料の充填速度が、外側注入流路部37からの外側キャビティ17へのゴム材料の充填速度以下になるようにそれぞれ設定すればよい。また、エア排出流路21における内側キャビティ16との連通開口22を、型閉じ状態において上記内筒体2の筒軸方向から見たときに、内側注入流路部36における内側キャビティ16との連通開口に対して、該筒軸を挟んで180°反対側に位置するように形成することが好ましい。
【0081】
また、上記各実施形態では、エア排出流路21に接続された真空引き装置50により、両キャビティ16,17内の空気を該エア排出流路21から強制的に排出させるようにしているが、必ずしも真空引き装置50を設ける必要はなく、ゴム材料の充填圧によって自然に排出させるようにしてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、注入流路34を構成する内側及び外側注入流路部36,37はそれぞれ流路断面積が一定のストレート状に形成されているが、これに限ったものではなく、例えば、流路の出口側ほど縮径するテーパ状に形成するようにしてもよい。この場合、各注入流路部36,37の出口断面積(つまり最小流路断面積)を調整することで、各キャビティ16,17へのゴム材料の充填速度を上述した比率に設定すればよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、エア排出流路21を中型11の上面に形成するようにしているが、これに限ったものではなく、例えば、上型10の下面に形成するようにしてもよい。また、上記各実施形態では、上型10及び下型12を中型11を挟んで型閉じするようにしているが、必ずしも中型11を設ける必要はなく、上型10及び下型12を直接型閉じするようにしてもよい。この場合、エア排出流路21を下型12の上面に形成するようにしてもよい。
【0084】
また、上記各実施形態では、上記中間筒体4に連通孔4fが形成されていて、該連通孔4fを介して両キャビティ16,17が連通するようになっているが、連通孔4の代わりに、例えば中間筒体4の筒軸方向の端部に、該筒軸方向の外側に開口する切欠き部を形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、内筒体と、その外周を囲む外筒体と、内筒体及び外筒体の間に配設される中間筒体、各筒体の間に介設されるゴム材料とからなるゴム成形体を成形可能に構成された成形用金型、及び、該成形用金型を備えた成形装置に有用であり、特に、成形時にキャビティ内のエアを排出するためのエア排出流路を備えた成形用金型及び該成形用金型を備えた成形装置に有用である。
【符号の説明】
【0086】
A 成形装置
1 成形用金型
2 内筒体
3 外筒体
4 中間筒体
4f 連通孔(エア流通部)
4s 隙間(エア流通部)
10 上型
11 中型
12 下型
16 内側キャビティ
17 外側キャビティ
21 エア排出流路
21a 第1エア排出流路
21b 第2エア排出流路
22 連通開口
23 凹状溝
34 ゴム注入流路
35 導入流路部
36 内側注入流路部
37 外側注入流路部
50 真空引き装置
100 ゴム成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを備え、該上型及び下型の間に、内筒体とその外周を囲む外筒体と該内筒体及び該外筒体の間に配設される中間筒体とを予めセットした状態で、上記上型及び下型を型閉じすることで、上記中間筒体により区画された内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとを形成し、該形成された内側キャビティ及び外側キャビティに上記上型又は下型に設けられたゴム注入流路からゴム材料を充填することで、上記3つの筒体とゴム材料とからなるゴム成形体を成形可能に構成された成形用金型であって、
上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通して該両キャビティ間のエアの流通を許容するエア流通部と、
上記外側キャビティに連通して、該外側キャビティ内のエアが直接、排出されるとともに、上記内側キャビティ内のエアが上記エア流通部及び上記外側キャビティを通って排出されるように構成されたエア排出流路とを備え、
上記ゴム注入流路は、上記ゴム材料が導入される導入流路部と、該導入流路部から分岐され、該導入流路部内のゴム材料を内側キャビティ及び外側キャビティへそれぞれ導く内側注入流路部及び外側注入流路部と、を有し、
上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度が、上記内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
請求項1記載の成形用金型において、
上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度が、該内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成形用金型において、
上記エア排出流路における上記外側キャビティとの連通開口は、型閉じ状態において上記内筒体の筒軸方向から見たときに、上記外側注入流路部における上記外側キャビティとの連通開口に対して、該筒軸を挟んで180°反対側に位置していることを特徴とする成形用金型。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成形用金型において、
上記エア排出流路は、上記上型の下面又は上記下型の上面に形成された凹状溝により構成されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項5】
上型と下型とを備え、該上型及び下型の間に、内筒体とその外周を囲む外筒体と内筒体及び外筒体の間に配設される中間筒体とを予めセットした状態で、上記上型及び下型を型閉じすることで、上記中間筒体により区画された内筒体側の内側キャビティと外筒体側の外側キャビティとを形成し、該形成された内側キャビティ及び外側キャビティに上記上型又は下型に設けられたゴム注入流路からゴム材料を充填することで、上記3つの筒体とゴム材料とからなるゴム成形体を成形可能に構成された成形用金型であって、
上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通して該両キャビティ間のエアの流通を許容するエア流通部と、
上記内側キャビティに連通して、該内側キャビティ内のエアが直接、排出されるとともに、上記外側キャビティ内のエアが上記エア流通部及び上記内側キャビティを通って排出されるように構成されたエア排出流路とを備え、
上記ゴム注入流路は、上記ゴム材料が導入される導入流路部と、該導入流路部から分岐され、該導入流路部内のゴム材料を内側キャビティ及び外側キャビティへそれぞれ導く内側注入流路部及び外側注入流路部と、を有し、
上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度が、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度以下となるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項6】
請求項5記載の成形用金型において、
上記内側注入流路部及び上記外側注入流路部の流路断面積は、該内側注入流路部からの上記内側キャビティへのゴム材料の充填速度が、該外側注入流路部からの上記外側キャビティへのゴム材料の充填速度よりも小さくなるようにそれぞれ設定されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項7】
請求項5又は6記載の成形用金型において、
上記エア排出流路における上記内側キャビティとの連通開口は、型閉じ状態において上記内筒体の筒軸方向から見たときに、上記内側注入流路部における該内側キャビティとの連通開口に対して、該筒軸を挟んで180°反対側に位置していることを特徴とする成形用金型。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の成形用金型において、
上記中間筒体は、その筒軸方向に沿って複数に分割された分割構造を有するものであり、
上記中間筒体を構成する各分割体は、型閉じ状態において、上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通させるように、上記上型及び下型の間に互いに隙間を空けてセットされるものであり、
上記エア流通部は、型閉じ状態において、上記中間筒体を構成する各分割体の間に形成される上記隙間からなることを特徴とする成形用金型。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の成形用金型において、
上記中間筒体には、上記内側キャビティと上記外側キャビティとを連通させるように切欠き部又は貫通孔部が形成されており、
上記エア流通部は、上記切欠き部又は上記貫通孔部からなることを特徴とする成形用金型。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の成形用金型を備えた成形装置であって、
上記成形用金型に設けられた上記エア排出流路に接続され、上記内側キャビティ及び上記外側キャビティ内の真空引きを行うための真空引き装置を備えていることを特徴とする成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−56219(P2012−56219A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202688(P2010−202688)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】