説明

成膜方法、成膜装置及びこれを用いた薄膜モジュール並びに多層薄膜モジュール

【課題】金属性薄膜を簡単な製造設備で安価に製造することが出来、光電変換特性に富んだ薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】金属化合物(金属単体を含む;以下同様)の溶液を、ノズル供給口3に高電圧を印加して噴霧し、微細な液滴微粒子(ナノサイズ)によって基板25上に成膜する。このときノズル供給口3から基板25に飛来する液滴粒子(非繊維状粒子)をグリッド6に衝突させて微細化して基板25に付着させ、この基板25上の成膜を熱、光などで結晶化させる。更に上記グリッド6をノズル供給口3に印加する電位と略々同電位にする。これによってノズル供給口3から噴霧された金属化合物の液滴微粒子は非繊維状粒子の状態で基板に堆積され、微粒子状態で結晶化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜型多層モジュールの成膜方法に係わり、無機化合物又は有機化合物の薄膜を基板上に形成する成膜方法及びこれを用いた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に太陽電池などとして使用されている光電特性を備えた導電性モジュールは、バルク型太陽電池と薄膜型太陽電池が知られている。前者のバルク型太陽電池は、バルク状結晶層を製造し、それをスライス加工してからパネルを製造しているため、効率が良い代わりに形状的制約と製造コスト上の制約が知られている。形状的制約は膜層がバルク成形のためハード(硬質)で厚い膜層となり、その形状も自由に形作れない。またコスト上の制約は大型な製造装置が必要となり製造コストが高価となる。
【0003】
後者の薄膜型太陽電池は、シリコン系、CIS系、色素増感、有機半導体などが知られているが、それぞれ製造方法が確立されていない。特に量産化安定性と変換効率に種々の改善が必要であるとされている。
【0004】
そこで最近、薄膜の成膜方法としてエレクトロスピニング法を利用した方法が提案されるに至っている。このエレクトロスピニング法は製造設備が比較的簡単で安価に製造できることが期待されている。例えば特許文献1(特開2005−330624号公報)には導電性高分子材料(ビニル系高分子)をエレクトロスピニング法によってナノファイバー化し、このファイバーを基板上に堆積して薄膜を形成する方法が提案されている。また特許文献2(特開2006−331790号公報)にはエレクトロスピニング法を利用した色素増感型太陽電池の製造方法が提案されている。
【0005】
このように従来知られているエレクトロスピニング法を用いた導電性の成膜方法は、いずれも有機高分子の材料をナノファイバー化する方法であり、これを太陽電池に応用する場合には、膜層が有機高分子であるため耐久性、特に温度その他の環境によって劣化する問題と、液状化した原溶液を結晶化させたファイバーを基板上に堆積するため、成膜の均一性と、成膜密度に課題があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−330624号公報
【特許文献2】特開2006−331790号公報
【特許文献3】特開2006−328578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように光電特性を有する導電性薄膜を作成する場合に、従来のバルク型成膜では、装置設備が大型となり、製造コストが高くなる問題が知られている。そしてこの膜層を用いた太陽電池は形状特性に制約があり、大型となる問題が知られている。
【0008】
そこで薄膜モジュールを比較的安価に製造することが出来るエレクトロスピニング法で製造することが試みられている。このエレクトロスピニング法で薄膜形成した成膜は従来、前掲特許文献1、2に開示されているように有機半導体、或いは色素増感半導体で、いずれも有機高分子を原材料としている。このため導電性薄膜が有機高分子材料で生成されるため、耐久性に問題があり内部に封止する電解液漏れなど耐久性に問題があることが指摘されている。
【0009】
また前掲特許文献3(特開2006−328578号公報)にはエレクトロスピニング法を用いて金属化合物をナノファイバー化する方法が提案されている。同文献には導電性金属化合物をナノファイバー化する繊維状金属化合物とその製造方法が開示されている。しかし金属化合物をどのような条件で液状化して噴霧するのか開示されていない。
【0010】
仮にこのような金属化合物をナノファイバー化して例えば基板上に成膜しても太陽電池として使用する場合には光電変換特性(効率)に問題が生ずる。繊維状の金属化合物で成膜すると膜密度が低い(単位面積当たりの総表面積が小さい)、また電極層との密着性に問題が生ずる。
【0011】
図7は、従来のエレクトロスピニング法を用いた成膜方法を示すモデル図である。ノズル90から液状化した原溶液91(特許文献1、2のものは有機化合物、特許文献3のものは無機化合物)を滴下し、このノズル90に高電圧を印加して液滴粒子に所定の高電圧を帯電する。一方基板92にはノズル90と逆電位を印加して液滴粒子を吸引する。この過程でヒータ93によってノズル90を加熱して基板92に到達する粒子を基板に堆積する。この過程で液滴粒子は微細なファイバー(ナノファイバー)に結晶化され基板に堆積して膜形成する。このような成膜方法ではノズルで滴下する原溶液を均一な電位に帯電することが難しく、同時に滴下する粒子の大きさがバラつくため微細で均一な膜を形成することが出来ない問題がある。
【0012】
そこで本発明者は、基板と距離を隔てた供給口に、例えば多孔質部材に原溶液を含浸して臨ませ、この原溶液を基板との間に配置したグリッドで電気的に吸引して拡散させ、この拡散吸引した粒子を帯電して基板に飛翔させて成膜し、この成膜を基板上で結晶化するとの着想に至った。これにより基板に微細な結晶構造の金属製成膜を均一に形成することが可能であることを究明するに至った。
【0013】
本発明は、有機化合物或いは無機化合物の成膜を基板上に微細な結晶構造で形成することが出来、そのための製造設備が簡単で安価である薄膜モジュールの製膜方法の提供をその課題としている。
更に、本発明は製造コストが安価であり、耐久性と光電変換特性に富んだ太陽電池の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するため本発明は、無機物又は有機物を液化した非結晶の原溶液を供給口に臨ませ、この供給口の原溶液を基板との間に配置したグリッドで電気的に吸引して拡散させ、グリッドに到達した原溶液の粒子を所定の高電圧に帯電して基板に飛翔させることを特徴としている。このため供給口と基板をゼロ電位に接地し、網目形状のグリッドを高電圧に印加する。更に本発明はこの高電圧を印加するグリッドを基板の成膜面積と略々等しい面積で基板表面と平行に配置する。これによって基板に形成される成膜は均一な厚さで、その結晶構造も均一化することが可能となる。
【0015】
その構成を詳述すると、本発明の成膜方法は、無機物又は有機物を液化した非結晶の原溶液を供給する供給口と、この供給口から距離を隔てて配置された基板と、前記供給口と基板との間に配置されたグリッドとを備える。そして前記供給口と前記基板はゼロ電位に接地すると共に、前記グリッドは所定の高電圧に印加する。これによって前記供給口の原溶液をグリッドに印加した電位で電気的に吸引して拡散させ、グリッドに到達した原溶液の粒子を所定電圧に帯電させて基板に飛翔させる。次いで基板上に形成された膜層に熱又は光を照射して結晶化する。これによって供給口から飛翔された液滴微粒子は非繊維状粒子の状態で基板に膜層形成され、その後この微粒子状態で結晶化されることとなる。
【0016】
次に本発明に係わる太陽電池は、基板と、この基板上に形成した少なくとも一対の対向電極と、この一対の対向電極間に形成した膜層とから構成され、この膜層は前述の成膜方法によって成膜される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、無機物又は有機物を液化した非結晶の原溶液を供給口に臨ませ、この供給口の原溶液を基板との間に配置したグリッドで電気的に吸引して拡散させ、グリッドに到達した原溶液の粒子を所定の高電圧に帯電して基板に飛翔させて膜層を形成し、この基板上に形成した膜層に熱又は光を照射して結晶化するものであるから次の効果を奏する。
【0018】
まず液化した原溶液は、供給口からこれと距離を隔てて配置したグリッドに印加される高電圧で電気的に吸引されるためグリッドの形状に応じた方向に均一に拡散される。このように均一に拡散された微粒子はグリッドに到達して所定の高電圧に帯電され、ゼロ電位の基板に向かって飛翔する。このため基板上には非繊維状微粒子の膜層が微細粒子で均一厚さに堆積されるため、均一な結晶構造で安定した導電性薄膜を成膜することが可能となる。
【0019】
更に本発明はグリッドを基板の成膜面積と略々同一の面積で基板表面に平行に配置することにより、グリッドで帯電された原溶液の微粒子はこのグリッドからほぼ平行線で飛翔して基板に堆積するため均一厚さの膜層を形成することが可能となる。
【0020】
また、グリッドから飛翔した原溶液の微粒子は基板に膜層を形成した後、基板に熱又は光を照射して結晶化するため、原溶液に含まれる水分やアルコール分は基板上で直ちに蒸発し、目的元素は基板温度の作用のもとで結晶格子を形成するため高密度の結晶膜を形成することが出来る。
【0021】
更に、本発明は原溶液の供給口と基板との間に配置したグリッドによって原溶液の粒子を吸引拡散するのと同時に、帯電して基板に飛翔させるため粒子の大きさ、粒子の成膜速度をグリッドの形状と印加電圧でコントロールすることが可能となり、基板に照射するエネルギーの最適化によって高品質で結晶サイズの大きな多結晶膜や配向した多結晶膜を形成することも可能である。
【0022】
このように本発明は例えば異なる金属化合物などの多層構造の成膜も可能であり、均質で微細(ナノメートルサイズ)の結晶膜を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係わる導電性薄膜の製造装置の全体構成を示す説明図。
【図2】本発明に係わる導電性薄膜の成膜方法の原理モデルを示す説明図。
【図3】(a)(b)(c)図1の装置における原溶液の供給口の構造説明図。
【図4】本発明に係わる導電性薄膜の製造方法における工程説明図であり、(a)は第1工程、(b)は第2工程、(c)は第3工程、(d)は第4工程を示す説明図。
【図5】本発明に係わる導電性薄膜の製造方法における工程説明図であり、(e)は第5工程、(f)は第6工程、(g)は第7工程を示す説明図。
【図6】(a)は本発明に係わる太陽電池の構成を示し、(b)は多層薄膜モジュールの構造図。
【図7】従来のエレクトロスピニングによる成膜方法を示すモデル説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図示の本発明の好適な実施の態様に基づいて本発明を詳述する。まず本発明に係わる導電性薄膜の製造装置、製造方法及びこれを用いた多層モジュール、太陽電池の順に説明する。
【0025】
[導電性薄膜の製造装置]
図1は本発明に係わる導電性薄膜の成膜方法に使用する製造装置Aを示す全体説明図である。この製造装置Aはチェンバ1と、このチェンバ内に配置されたステージ2と、原溶液タンク4と、原液供給口3と、電源ユニット5で構成されている。
【0026】
チェンバ1は、通常の無塵作業室で合っても良いが、より安定した結晶構造の膜層を得るためには、アルゴンガス(Ar)、窒素ガス(N2)などのガスを充填する。図示11はガスタンクであり、外部ボンベからチェンバ1内に供給される。尚チェンバ1内には空気を所定圧力、所定温室で供給する構想であっても良い。
【0027】
ステージ2は、導電性薄膜を形成する基板25をセットするテーブルで構成されている。このステージ2は後述する原液供給口3と所定間隔(Lk)で位置付けられ、ノズル供給口中心からの法線(図1X)とテーブル平面(セット面)21が直角となるように配置されている。上記ステージ2には基板25を載置するセット面21が設けられ、図示しないチャッキング機構で基板25を固定セットするようになっている。
【0028】
またステージ2にはセットした基板25を加熱する加熱手段22が配置(例えば埋設)されている。この加熱手段22は伝熱ヒータ、高周波加熱ユニットなどで構成され、セット面21に固定された基板25に熱エネルギーを付与する。この加熱手段22で基板表面(成膜面)の温度を所定温度に設定できる。つまり加熱手段22には図示しない温度制御装置(例えば制御CPU)に連結され、基板表面温度を検出して所定温度に保持するように制御する。
【0029】
上記基板25は、青板ガラスなどのガラス材、或いは合成樹脂ブレートなど用途目的に応じて選択された素材で、所定の形状に構成されている。この基板25は前述のステージ2のセット面21に固定される。
【0030】
上記原液供給口3はチェンバ1内に配置され、ステージ2との間に所定間隔Lk隔てた位置に配置される。この原液供給口3は原溶液タンク4と供給パイプ41で連結され、原溶液タンク4と供給パイプ41との間には昇圧ポンプなどの圧力調整装置(不図示)が配置されている。また原液供給口3には吐出量調整機構(ディスペンサ)が内蔵されている。この原液供給口3は後述するグリッド6(面形状)に原溶液を晒すように構成される。このため図3(a)に示す原液供給口3は環状ノズル3aに含浸性の多孔質部材3bが充填してある。
【0031】
また同図(b)に示す原液供給口3はノズル3cを複数(3c1、3c2、3c3、3c4)配置し、面状グリッド6に均等に原液を臨ませている。また同図(c)に示す原液供給口3dは面状多孔質部材で構成している。このように原液供給口3は原液を滴下或いは噴霧するように針状ノズルで構成する必要はなく、面状のグリッド6に原液を晒すように多孔質部材などで面形状に構成するか、或いは複数のノズルを面状に配列することが好ましい。
【0032】
[グリッドの構成]
上述のように距離Lkを隔てて、互いに対向配置されている原液供給口3と基板25との間にはグリッド6が配置され、このグリッド6は(1)原液供給口3から原液粒子を電気的に吸引して拡散し、(2)格子状の網目で原液粒子が互いに衝突して微細化する流れ(爆裂状態)を形成し、更に(3)原液粒子を所定の高電圧に帯電するように機能する。
【0033】
上記(1)の機能を達するため、前述の原液供給口3をゼロ電位に接地し、この原液供給口3に給送される原液を実質的にゼロ電位にコントロールする。これと共にグリッド6には所定の高電圧を印加する。図示の装置は原液供給口3とグリッド6との距離を10cmに設定し、グリッド電圧を10〜30kVに設定してある。これによって原液供給口3に浸出した原液はグリッド6から電気的に吸引されグリッドに向けて粒子状に拡散する。
【0034】
上記(2)の機能を達するため、グリッド6は規則模様或いは不規則模様の網目形状に形成され、原液供給口3から原液粒子が基板25に拡散する。このとき原液粒子がグリッド6を通過する際に網目に衝突して飛散(爆裂状態)し、この粒子同士の衝突で微細化が促進される。
【0035】
上記(3)の機能を達するため、グリッド6は所定電圧(例えば10〜30kV)に印加する。一方、ステージ2にセットした基板25の表面(成膜面)はステージ2を接地することによって実質的にゼロ電位に保持する。これによって原液供給口3から電気的に吸引拡散された原液粒子はグリッド6を通過する際に互いに衝突(爆裂)して微細化する(前記(2)の作用)。これ共にグリッド6に到達した原液粒子は印加電圧によって帯電される。この帯電でグリッド6を通過する原液粒子と基板25(成膜表面)との間に所定の電位差が生じ、原液粒子はグリッド6から基板表面に向けて飛翔する。この電気的に発生する原液粒子の飛翔によって基板25の成膜表面には原液粒子が堆積する。この原液粒子の堆積によって基板25には所定の膜層が形成される。
【0036】
上述の作用において基板25の成膜表面の面積とグリッド6の面積をほぼ同一に形成することによってグリッド6から基板25に飛翔する原液粒子は平行線状に飛散され、より均一な厚さの成膜が可能である。
【0037】
このようにグリッド6は規則模様又は不規則模様の格子パターン、多穴ハニカムパターンなどに形成されこの穴の直径(間隔)は、100μm以下が好ましい。そしてグリッド6は導電性ワイヤ(金属ワイヤ)を格子パターンに編み合わせて作成するか、或いは金属板を緻密にくり抜いたパンチメタルなどで作成する。この場合のグリッド材質としては、錆びにくい低抵抗な金属及び金属合金が好ましく、ステンレスやニッケル、ステンレス上に金や銀をめっきしたもの、主材質ニッケルと銅、鉄、モルブデン等の合金であるハステロイ、インコネル、モネルなどが好適である。
【0038】
上述のグリッド6は格子或いは多穴などの網目形状に構成され、前述のステージ2にセットした基板25の成膜面積(正しくはステージ2に設定される成膜面積)とほぼ同一面積に形成し、同時にステージ2の成膜面と平行に配置することがより均一な成膜のために好ましい。
【0039】
上述のステージ2には前述したように加熱手段22が配置され、基板25上に形成された膜層に熱エネルギーを印加する。これによって膜層に含浸される水分、アルコールなどの添加物は比較的短時間で蒸発され除去される。そして基板上には目的物質の結晶形成が
熱エネルギーで促進される。
【0040】
[導電性薄膜の製造方法]
次に図4及び図5に基づいて本発明に係わる導電性薄膜の製造方法について説明する。図示の製造工程は太陽電池52の製造工程を示し、I-III-VI族化合物、III-VI族化合物で成膜する工程を含んでいる。以下順次その工程について説明する。
【0041】
ガラス洗浄(工程1)
基板材料、例えば青板ガラスなどの材料を用途に応じた形状に形成し、その成膜面を洗浄する。これは従来知られた工程であり、用途に応じて選択した素材で所定形状の基板25を作成し、これを洗浄する。この基板25は通常、ガラスなどの透明絶縁性板で構成され、扁平形状の平面板に形成される。
【0042】
裏面電極形成(工程2)
基板25の裏面に電極を形成する。基板25上に裏面電極27を例えばモリブデン(Mo)などで形成する。これは従来知られた工程であり、基板25の裏面にモリブデンなどで薄膜(電膜)を形成する。この電膜は本発明の成膜方法によらず、電着などの方法を用いる。
【0043】
電極パターニング形成(工程3)
上記基板25に形成した裏面電極27をスリッタでカットしてパターン電極を形成する。このパターニング工程は既に広く知られているのでその説明を省く。
【0044】
金属膜層形成(工程4)
そこで本発明はパターン電極(裏面電極)27を形成した基板25に金属(金属化合物)の薄膜を形成する。これは図1に基づいて説明したように薄膜形成する。図示のものは基板25上にCu-In-Ga-S系I-III-VI族化合物、Zn-Se系II-VI族化合物、In-As系III-V族化合物、透明電極用II-VI族等の化合物、Cu-Zn-Sn-S系I-II-IV-VI族化合物の薄膜を形成する場合を示す。
【0045】
このため例えばCuCl、InCl、N−Nジメチルセレン化尿素、(NHCS、ZnCl2などI-III-VI族化合物、III-V族化合物、II-VI族化合物、III-VI族化合物の何れか1つを含む原材料を、超純水及び/又はメタノールなどのアルコール類で溶融する。この原溶液は少なくとも水又は、アルコール類のいずれか1つを含む混合または、独立した金属化合物の溶液である。
【0046】
この場合、水又はアルコールの含有量を、全体の90重量%以上で構成し、その溶融粘度は0.3mPa・s乃至10mPa・sでモル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルに設定する。これによって非繊維状粒子状態でノズルから原材料を飛翔させることが可能となる。
【0047】
メカニカルパターニング形成(工程5)
上述のように形成した基板25上の薄膜層をスリッタでカットしてバッファ層29と金属膜層28を一括分割する。
【0048】
n型透明電極層形成(工程6)
基板25上に導電性薄膜を形成した後、この薄膜の上に透明電極30を積層形成する。この透明電極30は例えばZnO,Alをスパッタリング或いは有機化学CVAによって形成する。これは既に知られた工程でありその説明を省く。
【0049】
メカニカルパターニング形成(工程7)
上記のように基板25上に裏面電極27と導電性膜27xと透明電極30を積層形成し、メカニカルパターニング(機械的スクライブなど)で出力線を形成する。更にその上に封止用ガラスを積層させ光はこの封止用ガラス16の上から入射するように構成する。
【0050】
そこで本発明の金属膜層28の形成について説明する。本発明は基板(太陽電池の場合は裏電極層27)25上に金属若しくは金属化合物の導電性薄膜27xを形成することを特徴としている。この導電性薄膜27xは図1で説明した製造装置Aによって形成する。
【0051】
[導電性薄膜モジュール及び太陽電池の説明]
図6(b)は上述の成膜方法で形成した薄膜モジュール50を示す。このモジュール50は透明基板(ガラス、プラスチックスなど)51の上に透明電極層52を形成する。そしてメカニカルパターニングで電極52a、52bを形成する。この透明電極層52の上に透明層53、コーティング層54を形成する。
【0052】
上記透明電極層52は、InSnOx、ZnOなどの金属化合物を、超純水及び/又はメタノールで溶解して、粘度0.3mPa・s乃至10mPa・sで、モル濃度が0.0001乃至0.1モル/リットルの原溶液を形成する。そしてこの原溶液を透明基板51上に飛翔させて液滴微粒子の状態で堆積させる。そして所定厚さの膜層を形成した後、この基板に200℃〜400℃の熱を付加して結晶化する。これによって導電性薄膜が形成され、この導電層をメカニカルパターニングして多層薄膜モジュール50を作成する。
【0053】
図6(a)は太陽電池モジュール55を示し、56はフレームであり、57はこのフレーム56に複数配列された太陽電池を示す。図示58はパネル電極である。太陽電池57は前述した導電性薄膜27xで構成されている。
【符号の説明】
【0054】
A 製造装置
1 チェンバ
2 ステージ
3 原液供給口
3a 環状ノズル
3b 多孔質部材
3c ノズル(3c1〜3c4)
3d 面状多孔質部材
4 原溶液タンク
5 電源供給ユニット
6 グリッド
6A 平面形状グリッド
6B フード状グリッド(実施例2)
6C 円筒形状グリッド(実施例3)
11 不活性ガスタンク
21 セット面
22 加熱手段
25 基板
27 裏面電極
27x 導電性薄膜
28 金属膜層
29 バッファ層
33 貯室
34 針状先端部
35 高電圧電極
36 加熱ヒータ
41 供給パイプ
50 薄膜モジュール
51 透明基板
52 透明電極層
53 透明層
54 コーティング層
55 太陽電池モジュール
56 フレーム
57 太陽電池
58 パネル電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物又は有機物を液化した非結晶の原溶液を供給する供給口と、
この供給口から距離を隔てて配置された基板と、
前記供給口と基板との間に配置されたグリッドと、
を備え、
前記供給口と前記基板はゼロ電位に接地されると共に、前記グリッドは所定の高電圧に印加され、
前記グリッドに印加された電位で前記供給口の原溶液を電気的に吸引して、
このグリッドで原溶液の粒子を帯電させて前記基板に飛翔させることによって前記基板上に膜層を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記供給口は、原溶液を前記グリッドに向けて滴下する複数のノズル供給口か若しくは原溶液を含浸させた面状開口部で構成され、
この開口部の前記グリッドと対向する総面積は前記グリッドの面積より小さく形成され、
前記グリッドの面積は前記基板の成膜面積と略々等しく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記グリッドには多数の透過孔が形成され、この透過孔は高電位に印加されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記基板上に形成される膜層は、I-III-VI族化合物、III-VI族化合物のいずれか1つを含む金属化合物であることを特徴とする請求項1に記載の成膜方法。
【請求項5】
ガラス基板上に形成した電極層と、
前記電極層上に形成した導電性薄膜層と、
前記導電性薄膜層の上に形成した透明電極層と、
から構成され、
前記導電性薄膜層は請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法で形成されることを特徴とする薄膜モジュール。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成した少なくとも1対の対向電極と、
前記一対の対向電極間に形成した導電性薄膜層と、
を備え、
前記導電性薄膜層は請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法で形成されることを特徴とする多層薄膜モジュール。
【請求項7】
基板と、
前記基板と距離を隔てて配置された供給口と、
前記供給口に無機物又は有機物を液化した非結晶の原溶液を移送するタンクと、
前記基板と前記供給口の間に配置された網目形状のグリッドと、
前記グリッドに高電圧を印加する電源ユニットと、
前記基板に熱又は光を照射するエネルギー照射手段と、
から構成され、
前記供給口及び前記基板は、ゼロ電位に接地されると共に、前記グリッドは所定の高電圧に印加され、
このグリッドに印加された電位で前記供給口の原溶液を電気的に吸引して拡散させると共に、
このグリッドで吸引した原溶液の液滴粒子を所定電位に帯電して前記基板に飛翔させて基板上に膜層を形成し、この膜層に前記エネルギー照射手段で熱又は光を照射して結晶化することを特徴とする導電性薄膜の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−14776(P2011−14776A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158748(P2009−158748)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【出願人】(306022454)新電元センサ−デバイス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】