説明

成膜装置、水蒸気酸素バリア積層体、光学機能性フィルタ及び光学表示装置

【課題】成膜速度を増大し、大面積のフィルムに成膜することができ、かつ、緻密な成膜を得ることができる成膜装置を提供すること。
【解決手段】本発明の成膜装置は、プラズマリニアソース7を有するプラズマ化学気相成長手段と、プラズマリニアソース7と所定間隔をおいて配置されているイオンエッチングローラー5を有するイオンエッチング処理手段と、プラズマリニアソース7とイオンエッチングローラー5との間においてフィルム3を通過させるフィルム搬送手段と、を具備する。前記プラズマ化学気相成長手段は、プラズマリニアソース7により発生する誘導結合プラズマによってフィルム3に成膜を行い、この成膜と同時に前記イオンエッチング処理手段はイオンエッチングローラー5からのイオンによってフィルム3にイオンエッチング処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの上に膜を製造する成膜装置、この成膜装置により製造された水蒸気酸素バリア積層体並びにこの水蒸気酸素バリア積層体を具備する光学機能性フィルタ及び光学表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のFPDとして期待される電子ペーパー及び有機EL、又は、広範囲での普及が進んでいるLCDに関し、これらFPDのフレキシブル化を達成するため又は軽量化、コストダウン及びガラス基板の割れ等の製造時のスループット向上のため、ガラス基板をプラスチックフィルムに置き換えたいという要求が高まっている。また、有機ELでは、蛍光灯に替わる代替照明方法としても注目されており、この場合、軽量化及び安全確保などの理由からプラスチックフィルムを用いることが求められている。
【0003】
ガラス基板は周囲環境の酸素や水蒸気による内部素子の劣化を抑制するため必要とされるガスバリア性が備わっている。しかし、軟包装材料用のガスバリアフィルムはそのバリアレベルには達しておらず、プラスチックフィルムが適用され得る電子ペーパー及び有機ELなどでは、食品包材用バリアフィルムの100倍から1万倍のガスバリア性が必要とも言われている。
【0004】
このような高いガスバリア性を有するプラスチックフィルムを実現するために、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法及びスパッタリング法などの物理成膜法は、大面積化やロール・ツー・ロールという搬送手段への適用が容易であることから、これらの方法を用いて、高いガスバリア性の発現が期待できるものとして検討されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、物理成膜法は、薄膜の成長過程において、柱状の成長や島状の成長をすることが一般的であるため、膜中にグレイン・バウンダリーが発生し、高いガスバリア性を発現することが困難である。このため、膜厚を厚くすることでガスバリア性を発現させることが考えられる。この場合には、膜厚が厚くなると、薄膜の内部応力が無視できなくなり、クラック等が発生し、逆にガスバリア性の低下を招くことが分っている。
【0006】
一方、化学成膜に属する化学気相成長法(CVD法)及びプラズマ化学気相成長法(プラズマCVD法)は、その膜成長過程において、柱状の成長や島状の成長をしにくいため膜中のグレイン・バウンダリー発生頻度が低いから、高いガスバリア性を発現することが期待されている。しかし、CVD法を用いる場合、成膜速度の遅さや、大面積化、ロール・ツー・ロールという搬送手段への適用の困難さという大きな問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−35128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、成膜速度を増大し、大面積のフィルムに成膜することができ、かつ、緻密な成膜を得ることができる成膜装置、この成膜装置により製造される水蒸気酸素バリア積層体並びにこの水蒸気酸素バリア積層体を具備する光学機能性フィルタ及び光学表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係る成膜装置は、プラズマリニアソースを有するプラズマ化学気相成長手段と、前記プラズマリニアソースと所定間隔をおいて配置されているイオンエッチングローラーを有するイオンエッチング処理手段と、前記プラズマリニアソースと前記イオンエッチングローラーとの間においてフィルムを通過させるフィルム搬送手段と、を具備し、前記プラズマ化学気相成長手段は、前記プラズマリニアソースにより発生する誘導結合プラズマによって前記フィルムに成膜を行い、前記イオンエッチング処理手段は、前記プラズマ化学気相成長手段による成膜と同時に前記イオンエッチングローラーからのイオンによって前記フィルムにイオンエッチング処理を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項1の発明の発明によれば、プラズマリニアソースとイオンエッチングローラーとの間においてフィルムを通過させながら、プラズマ化学気相成長手段によって前記フィルムに成膜を行い、この成膜と同時にイオンエッチング処理手段のイオンによって前記フルムにイオンエッチング処理を行うため、成膜速度を増大し、大面積のフィルムに成膜することができる。また、請求項1の発明の発明によれば、プラズマ化学気相成長手段による成膜とイオンエッチング処理手段によるイオンエッチング処理を同時に行うため、成膜中に発生する結合の弱い分子をエッチングすることができるから、結合の強い分子のみで成膜を形成することにより緻密な成膜を得ることができる。
【0011】
請求項2の発明に係る成膜装置は、請求項1に記載の成膜装置において、前記プラズマリニアソースのプラズマ発生周波数が1MHzから100MHzの周波数帯であり、前記イオンエッチングローラーに印加するバイアス周波数が1kHzから100MHzの周波数帯であることを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明と同じ効果を有し、かつ、より緻密な成膜を得ることができる。
【0013】
請求項3の発明に係る成膜装置は、請求項1又は請求項2に記載の成膜装置において、前記プラズマリニアソースにおいて用いる原料ガスが、有機珪素化合物ガス又は無機珪素化合物ガスであり、前記プラズマリニアソースにおいて用いる反応性ガスが、少なくともNO、NH、N及びOいずれか1つ又はこれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ効果を有し、かつ、より優れた水蒸気バリア性及び酸素バリア性を有する水蒸気酸素バリア積層体を製造することができる。
【0015】
請求項4の発明に係る水蒸気酸素バリア積層体は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の成膜装置を用いてプラスチックフィルムに成膜され水蒸気透過度が0.01g/m/day以下であり、かつ、酸素透過度が0.01cm/m/day以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明によれば、優れた水蒸気バリア性及び酸素バリア性を有する水蒸気酸素バリア積層体を提供することができる。
【0017】
請求項5の発明に係る光学機能性フィルタは、請求項4に記載の水蒸気酸素バリア積層体を具備することを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明によれば、優れた水蒸気バリア性及び酸素バリア性を有する水蒸気酸素バリア積層体を具備する光学機能性フィルタを提供することができる。
【0019】
請求項6の発明に係る光学表示装置は、請求項4に記載の水蒸気酸素バリア積層体を具備することを特徴とする。
【0020】
請求項6の発明によれば、優れた水蒸気バリア性及び酸素バリア性を有する水蒸気酸素バリア積層体を具備する光学表示装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、成膜速度を増大し、大面積のフィルムに成膜することができ、かつ、緻密な成膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る成膜装置を示す概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る成膜装置のイオンエッチングローラー5を側面から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る成膜装置を示す概略図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る成膜装置は、成膜チャンバー1、繰り出しローラー2、巻き取りローラー4、プラズマリニアソース7及びイオンエッチングローラー5を具備している。これらの巻き出しローラー2、巻き取りローラー4、プラズマリニアソース7及びイオンエッチングローラー5は、成膜チャンバー1の内部に配置されている。
【0025】
繰り出しローラー2は、イオンエングローラー5の上に配置されている。巻き取りローラー4は、イオンエッチングローラー5の下に配置されている。繰り出しローラー2には、フィルム3が巻かれている。このフィルム3の一端部は、繰り出しローラー2から繰り出され、プラズマリニアソース7とイオンエッチングローラー5との間を経て巻き取りローラー4に巻き取られている。繰り出しローラー2及び巻き取りローラー4の近くには、それぞれ案内ローラー21、41が配置されている。これらの案内ローラー21、41は、フィルム3を案内してフィルム3の搬送経路を規定する。
【0026】
フィルム3は、プラズマリニアソース7とイオンエッチングローラー5との間において、イオンエッチングローラー5の外表面に接触するように配置されている。繰り出しローラー2及び巻き取りローラー4は、フィルム3への成膜の時に駆動装置(図示せず)により矢印方向a、bへ回転され、フィルム3を矢印方向cへ所定の速さでプラズマリニアソース7とイオンエッチングローラー5との間においてフイルム3を通過させる。繰り出しローラー2、巻き取りローラー4、案内ローラー21、41及び前記駆動装置は、プラズマリニアソース7とイオンエッチングローラー5との間においてフィルム3を通過させるフィルム搬送手段を構成している。
【0027】
図2は、本発明の一実施の形態に係る成膜装置のイオンエッチングローラー5を側面から見た概略図である。イオンエッチングローラー5は、金属被覆部51と、電圧印加部52と、絶縁部材53と、を具備している。電圧印加部52は、イオンエッチングローラー5の中心部に配置されている。絶縁部材53は、電圧印加部52を被覆するように配置されている。金属被覆部51は、絶縁部材53を被覆するように絶縁部材53の外表面から所定間隔をおいて配置されている。金属被覆部51は、アースされている。電圧印加部52には、マッチングボックス61が接続されている。
【0028】
このマッチングボックス61には、エッチング用交流電源6が接続されている。マッチングボックス61及びエッチング用交流電源6は、成膜チャンバー1の外に配置されている。マッチングボックス61は、エッチング用交流電源6の電力制御を行っている。主制御部9は、成膜チャンバー1の外に配置されている。マッチングボックス61は、主制御部9からの制御信号を受けて、エッチング時にエッチング用交流電源6からの交流電圧を電圧印加部52に印加するものである。イオンエッチングローラー5、マッチングボックス61及びエッチング用交流電源6は、イオンエッチングローラー5からのイオンによってフィルム3にイオンエッチング処理を行うイオンエッチング処理手段を構成している。
【0029】
プラズマリニアソース7は、プラズマ発生用コイル71と、プラズマ発生室72と、ガス導入管73と、を具備している。プラズマ発生用コイル71は、プラズマ発生室72を包囲するように配置されている。プラズマ発生用コイル71は、マッチングボックス81に接続されている。マッチングボックス81は、プラズマ発生用交流電源8に接続されている。マッチングボックス81は、プラズマ発生用交流電源8の電力制御を行っている。マッチングボックス81は、主制御部9からの制御信号を受けて、誘導結合プラズマによる成膜時にプラズマ発生用交流電源8からの交流電圧をプラズマ発生用コイル71に印加するものである。
【0030】
プラズマ発生室72は、ガス導入管73を介してガス供給装置10に接続されている。このガス供給装置10は、成膜チャンバー1の外に配置されている。ガス供給装置10は、所定のガスをガス導入管73に供給するものである。プラズマ発生室72には、ガス供給装置10から供給されるガスがガス導入管73を介して導入される。ガス供給装置10は、主制御装置9に接続されている。ガス供給装置10は、主制御装置9からの制御信号を受けて、誘導結合プラズマによる成膜時に所定のガスをガス導入管73に供給するものである。プラズマリニアソース7、電圧印加制御部81、プラズマ発生用交流電源8及びガス供給装置10は、誘導結合プラズマによる成膜時に、プラズマリニアソース7により発生する誘導結合プラズマによってフィルム3に成膜を行うプラズマ化学気相成長手段を構成している。
【0031】
本発明の一実施の形態に係る成膜装置は、前記プラズマ化学気相成長手段が、プラズマリニアソース7により発生する誘導結合プラズマによってフィルム3に成膜を行い、かつ、前記イオンエッチング処理手段が、前記プラズマ化学気相成長手段による成膜と同時にイオンエッチングローラー5からのイオンによってフィルム3にイオンエッチング処理を行うものである。
【0032】
ガス供給装置10は、例えば、SiH等に代表される無機珪素化合物ガス、又は、HMDS、TEOSなどに代表される有機珪素化合物ガスなどを供給し、また、NO、NH、N及びOのいずれか1つ又はこれらを組み合わせた反応性ガス又はAr、Heなどの希ガスを供給する。プラズマ発生室72に、ガス供給装置10からの前記ガス導入管73を介して導入され、かつ、プラズマ発生用コイル71にプラズマ発生用交流電源8からの交流電圧が印加されると、プラズマリニアソース7は誘導結合プラズマを発生してフィルム3に成膜を行う。
【0033】
この成膜と同時に、前記イオンエッチング処理手段が、イオンエッチングローラー5からのイオンによってフィルム3にイオンエッチング処理を行う。これにより、イオンエッチングローラー5の外表面の上でSiOx、SiNx、SiON等の珪素系の薄膜が成膜される。この時に、マッチングボックス61は、エッチング用交流電源6からの交流電圧を電圧印加部52に印加する。この場合に、電圧印加部52に印加する交流電圧のバイアス周波数は、1kHzから100MHzの周波数帯であることが望ましい。
【0034】
本発明の一実施の形態に係る成膜装置は、プラズマリニアソース7により発生する誘導結合プラズマによってフィルム3に成膜を行っているため、簡便な構成で高いプラズマ密度を得ることが可能である。プラズマ密度の高さは、一般的にプラズマ化学気相成長手段において重要であるラジカル密度の高さと因果関係があり、プラズマ密度の高いほどラジカル密度は高く、このため成膜速度も速い。一般的な平行平板の高周波プラズマのプラズマ密度が、10〜1011/cmであるのに対し、誘導結合プラズマは、最大で1012/cmのプラズマ密度を得ることが可能である。誘導結合プラズマ以外の高密度プラズマ発生手段(方法)としては、ECRプラズマ手段、ヘリコン波プラズマ手段又はヘリカル共振プラズマ手段等がある。これらを用いて高密度プラズマを発生してもよいが、装置の構成が複雑になる。また、ECRプラズマ手段は、プラズマ自体に指向性があるため、ステップカバレッジ性では見劣りするなどの欠点もある。
【0035】
本発明の一実施の形態に係る成膜装置にあっては、プラズマリニアソース7のプラズマ発生周波数が1MHzから100MHzの周波数帯であり、イオンエッチングローラー5に印加するバイアス周波数が100kHzから100MHzの周波数帯であることが好ましい。プラズマリニアソース7のプラズマ発生周波数が1MHzに満たない場合にあってはプラズマ密度が小さくなってしまい、成膜スピードが低下してしまう場合がある。プラズマリニアソース7のプラズマ発生周波数は高ければ高いほど好ましいが、プラズマリニアソース7のプラズマ発生周波数が100MHzを超える場合には成膜装置のコストがかかりすぎてしまう。また、イオンエッチングローラー5に印加するバイアス周波数が1kHzに満たない場合にあっては、エッチング能力が高すぎてしまいフィルム表面を角にエッチングしてしまうことがあり、このとき成膜が十分にできなくなってしまう。一方、イオンエッチングローラー5に印加するバイアス周波数が100MHzを越える場合には、イオンエッチングローラーに高い電圧を印加することができなくなってしまい、フィルム表面を十分にイオンエッチングすることができなくなってしまう。
【0036】
プラズマリニアソース7を用いて成膜を実施するのと同時に、イオンエッチングローラー5にバイアスの交流電圧がエッチング用交流電源6により印加される。この時の交流電圧の周波数は、1kHz以上100MHz以下であることが好ましい。これは、イオンエッチングローラー5の幅にもよるが、定在波の影響を抑え、イオンエッチングローラー5の幅方向に対し、均等にバイアスの交流電圧がかかるようにするためである。さらには交流電圧の周波数は、40.68MHz以下であって10kHz以上であることがより望ましい。
【0037】
本発明の一実施の形態に係る成膜装置においては、前記プラズマ化学気相成長手段による成膜と前記イオンエッチング処理手段によるイオンエッチング処理を同時に行うため、成膜中に発生する結合の弱い分子をエッチングすることができるから、結合の強い分子のみで成膜を形成することにより緻密な成膜を得ることができる。一般に、誘導結合プラズマなどの高密度プラズマは、低シース電圧である。このため、独自にバイアスを用いなければ、任意のイオン衝撃をフィルム(基材)3に与えることはできない。
【0038】
本発明は、積層体を形成する上で、例えば、電子ビーム蒸着手段、スパッタリング手段、パルスレーザー成膜手段、イオンプレーティング手段又はプラズマ化学気相成長手段などと組み合わせてもよい。
【0039】
(積層体の構成)
本発明の実施の形態に係る積層体は、フィルム上に本発明の成膜装置を用いて形成されたものである。本発明の実施の形態に係る積層体のフィルム(基材)3として用いるプラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサルフォン、ポリカーボネート又はトリアセチルセルロースなどである。
【0040】
本発明の成膜装置で成膜するフィルム3の表面を平滑化させるためにハードコートの塗工処理を行っても良い例を以下に挙げる。
【0041】
フィルム3の表面を平滑化させるためにハードコートの塗工処理に使用する(メタ)アクリレートを以下に挙げる。(メタ)アクリレートとしては、反応性アクリル基が分子内に1個以上持つ化合物ならばどれを用いてもよい。
【0042】
(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソボニルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフたェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート又はジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることができる。
【0043】
また、フィルム3の表面を平滑化させるハードコートの塗工処理に使用する多官能(メタ)アクリレートして、ウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、分子内にウレタン結合と(メタ)アクリレート構造を持つものであればどれを用いてもよく、ジイソシアネートとジオールおよび水酸基含有(メタ)アクリレートから生成されるものを使用することができる。
【0044】
ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート又はキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0045】
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリエチレンオキサイドジオール、ポリプロピレンオキサイドジオール、ポリテトラメチレンオキサイドジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジール又はポリカーボネートジオール等を挙げることができる。
【0046】
また、水酸基を持ったアクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン変性物、2−ヒドロキシエチルアクリレートオリゴマー、2−ヒドロキシプロピルアクリレートオリゴマー又はペンタエリスリトールトリアクリレート等を例として挙げることができる。
【0047】
多官能アクリレートとしては、ポリエステルアクリレートも用いることができる。ポリエステルアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシアクリレート又は2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させ容易に形成されるものを挙げることができる。
【0048】
またエポキシアクリレートも使用することができる。エポキシアクリレートとしては、エポキシ樹脂のエポキシ基を開環しアクリル酸でアクリル化することにより得られるアクリレートであり、芳香環、脂環式のエポキシを用いたものがより好ましく用いられる。
【0049】
また、フィルム3の表面を平滑化させるハードコートの塗工処理にポリオールとイソシアネートの反応により得られるバインダーを使用してもよい。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルウレタンポリオール、アクリルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート又はその水素添加体等を挙げることができる。
【0050】
本発明の一実施の形態に係る水蒸気酸素バリアフィルタは、前述の成膜装置により成膜されるものである。
【0051】
本発明の一実施の形態に係る光学機能性フィルタは、前述の成膜装置により成膜される水蒸気酸素バリアフィルタを具備するものである。本発明の一実施の形態に係る光学機能性フィルタは、液晶表示装置用のフィルタ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ用のフィルタ又は電子ペーパー用フィルタ等に用いることが可能である。
【0052】
本発明の一実施の形態に係る光学表示装置は、前述の成膜装置により成膜される水蒸気酸素バリアフィルタを具備するものである。本発明の一実施の形態に係る学表示装置は、具体的には、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ又は電子ペーパー等である。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
次に、本発明の実施例1を図面に基いて詳細に説明する。
本発明の実施例1においては、図1に示すように、ロール・ツー・ロール型の前記搬送手段、前記プラズマ化学気相成長手段及び前記イオンエッチング処理手段が用いた。イオンエッチングロール5は、直径が150mmであり、幅が700mmである。また、プラズマリニアソース7は、幅が670mmである。イオンエッチングロール5及びプラズマリニアソース7の処理の有効幅は、それぞれ600mmである。フィルムとしてはフィルム厚が100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。
【0054】
(実施例1)
プラズマリニアソース7に印加する高周波の周波数は13.56MHzとされ、プラズマリニアソース7に供給される供給電力は2kWとした。また、プラズマ発生室72には、HMDSガスが100sccmで供給され、Oガスが700sccmd供給され、プラズマ発生室72の成膜気圧は10Paとした。この時に、イオンエッチングローラー5には、100MHzの高周波の交流電圧が印加され、イオンエッチングローラー5に供給する供給電力は0.3kWとされた。成膜の膜厚は、物理膜厚で100nmとされた。以上により、PENフィルム上にSiOx膜を備える水蒸気酸素バリア積層体を得た。
【0055】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を図面に基いて詳細に説明する。
本発明の実施例2においても、図1に示すように、ロール・ツー・ロール型の前記搬送手段、前記プラズマ化学気相成長手段及び前記イオンエッチング処理手段が用いた。イオンエッチングロール5は、直径が150mmであり、幅が700mmである。また、プラズマリニアソース7は、幅が670mmである。イオンエッチングロール5及びプラズマリニアソース7の処理の有効幅は、それぞれ600mmである。フィルムとしてはフィルム厚が100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。
【0056】
プラズマリニアソース7に印加する高周波の周波数は13.56MHzとし、プラズマリニアソース7に供給される供給電力は2kWとした。また、プラズマ発生室72には、HMDSガスが100sccmで供給され、Oガスが700sccmで供給され、プラズマ発生室72の成膜気圧は10Paとした。この時に、イオンエッチングローラー5には1kHzの高周波の交流電圧が印加し、イオンエッチングローラー5に供給する供給電力は0.3kWとされた。成膜の膜厚は物理膜厚で100nmとした。以上により、PENフィルム上にSiOx膜を備える水蒸気酸素バリア積層体を得た。
【0057】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3を図面に用いて詳細に説明する。
本発明の実施例3においても、図1に示すように、ロール・ツー・ロール型の前記搬送手段、前記プラズマ化学気相成長手段及び前記イオンエッチング処理手段が用いた。イオンエッチングロール5は、直径が150mmであり、幅が700mmである。また、プラズマリニアソース7は、幅が670mmである。イオンエッチングロール5及びプラズマリニアソース7の処理の有効幅は、それぞれ600mmである。フィルムとしてはフィルム厚が100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。
【0058】
プラズマリニアソース7に印加する高周波の周波数は100MHzとし、プラズマリニアソース7に供給される供給電力は2kWとした。また、プラズマ発生室72には、HMDSガスが100sccmで供給し、Oガスが700sccmで供給し、プラズマ発生室72の成膜気圧は10Paとした。この時に、イオンエッチングローラー5には100kHzの高周波の交流電圧が印加し、イオンエッチングローラー5に供給される供給電力は1kWとした。成膜の膜厚は物理膜厚で100nmとした。
【0059】
(実施例4)
次に、実施例4を図面に基づいて詳細に説明する。
比較例1においても、図1に示すように、ロール・ツー・ロール型の前記搬送手段、前記プラズマ化学気相成長手段及び前記イオンエッチング処理手段が用いた。イオンエッチングロール5は、直径が150mmであり、幅が700mmである。また、プラズマリニアソース7は、幅が670mmである。イオンエッチングロール5及びプラズマリニアソース7の処理の有効幅は、それぞれ600mmである。フィルムとしてはフィルム厚が100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。
【0060】
プラズマリニアソース7に印加する高周波の周波数は、13.56MHzとし、プラズマリニアソース7に供給される供給電力は2kWとした。また、プラズマ発生室72には、HMDSガスが100sccmで供給され、Oガスが700sccmで供給され、プラズマ発生室72の成膜気圧は10Paとした。この時に、イオンエッチングローラー5には0.9kHzの高周波の交流電圧が印加し、イオンエッチングローラー5に供給する供給電力は0.3kWとした。成膜の膜厚は物理膜厚で100nmとした。以上により、PENフィルム上にSiOx膜を備える水蒸気酸素バリア積層体を得た。
【0061】
(実施例5)
次に、実施例5を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例5においても、図1に示すように、ロール・ツー・ロール型の前記搬送手段、前記プラズマ化学気相成長手段及び前記イオンエッチング処理手段が用いた。イオンエッチングロール5は、直径が150mmであり、幅が700mmである。また、プラズマリニアソース7は、幅が670mmである。イオンエッチングロール5及びプラズマリニアソース7の処理の有効幅は、それぞれ600mmである。フィルムとしてはフィルム厚が100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。
【0062】
プラズマリニアソース7に印加する高周波の周波数900kHzとし、プラズマリニアソース7に供給される供給電力は2kWとした。また、プラズマ発生室72には、HMDSガスが100sccmで供給し、Oガスが700sccmで供給し、プラズマ発生室72の成膜気圧は10Paとした。この時に、イオンエッチングローラー5には100kHzの高周波の交流電圧が印加され、イオンエッチングローラー5に供給される供給電力は0.3kWとされた。成膜の膜厚は物理膜厚で100nmとした。以上により、PENフィルム上にSiOx膜を備える水蒸気酸素バリア積層体を得た。
【0063】
(比較例1)
次に、比較例1を図面に基づいて詳細に説明する。
比較例1においても、図1に示すように、ロール・ツー・ロール型の前記搬送手段、前記プラズマ化学気相成長手段及び前記イオンエッチング処理手段が用いられた。イオンエッチングロール5は、直径が150mmであり、幅が700mmである。また、プラズマリニアソース7は、幅が670mmである。イオンエッチングロール5及びプラズマリニアソース7の処理の有効幅は、それぞれ600mmである。フィルムとしてはフィルム厚が100μmのポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)を用いた。
【0064】
プラズマリニアソース7に印加する高周波の周波数13.56MHzとし、プラズマリニアソース7に供給される供給電力は2kWとした。また、プラズマ発生室72には、HMDSガスが100sccmで供給され、Oガスが700sccmで供給され、プラズマ発生室72の成膜気圧は10Paとした。この時に、イオンエッチングローラー5には電力を供給しなかった。成膜の膜厚は物理膜厚で100nmとした。以上により、PENフィルム上にSiOx膜を備える水蒸気酸素バリア積層体を得た。
【0065】
(評価結果)
本発明の実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5及び比較例1の水蒸気酸素バリア積層体における水蒸気透過度および酸素透過度は、MOCON法により測定した。水蒸気透過度の測定にはMOCON AQUATRANR model1を用いた。また、酸素透過度は、MOCON OX−TRANR2/20を用い測定した。実施例1〜5及び比較例1の水蒸気酸素バリア積層体における水蒸気透過度および酸素透過度を表1に示す。
【0066】
【表1】



【0067】
表1に示すように、実施例1〜5の水蒸気酸素バリア積層体にあっては、比較例1の水蒸気酸素バリア積層体と比較して、バリア性が向上していることが確認された。特に、プラズマリニアソースのプラズマ発生周波数を1MHzから100MHzの周波数帯とし、イオンエッチングソースに印加するバイアス周波数を1kHzから100MHzの周波数帯とした実施例1、実施例2、実施例3における成膜の水蒸気透過度は、0.01g/m/day以下であり、高い防湿性が発現されていることが確認された。また、本発明の実施例1、実施例2、実施例3における成膜の酸素透過度は、測定限界の0.01cm/m/day以下であり、高い酸素バリア性の発現が確認された。
【符号の説明】
【0068】
1 成膜チャンバー
2 繰り出しローラー
3 フィルム
4 巻き取りローラー
5 イオンエッチングローラー
6 エッチング用交流電源
7 プラズマリニアソース
8 プラズマ発生用交流電源
9 主制御部
10 ガス供給装置
51 金属被覆部
52 電圧印加部
53 絶縁部材
71 プラズマ発生用コイル
72 プラズマ発生室
73 ガス導入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマリニアソースを有するプラズマ化学気相成長手段と、
前記プラズマリニアソースと所定間隔をおいて配置されているイオンエッチングローラーを有するイオンエッチング処理手段と、
前記プラズマリニアソースと前記イオンエッチングローラーとの間においてフィルムを通過させるフィルム搬送手段と、を具備し、
前記プラズマ化学気相成長手段は、前記プラズマリニアソースにより発生する誘導結合プラズマによって前記フィルムに成膜を行い、
前記イオンエッチング処理手段は、前記プラズマ化学気相成長手段による成膜と同時に前記イオンエッチングローラーからのイオンによって前記フィルムにイオンエッチング処理を行うことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記プラズマリニアソースのプラズマ発生周波数が1MHzから100MHzの周波数帯であり、前記イオンエッチングローラーに印加するバイアス周波数が1kHzから100MHzの周波数帯であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記プラズマリニアソースにおいて用いる原料ガスは、有機珪素化合物ガス又は無機珪素化合物ガスであり、前記プラズマリニアソースにおいて用いる反応性ガスは、少なくともNO、NH、N及びOいずれか1つ又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の成膜装置を用いてプラスチックフィルムに成膜され水蒸気透過度が0.01g/m/day以下であり、かつ、酸素透過度が0.01cm/m/day以下であることを特徴とする水蒸気酸素バリア積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の水蒸気酸素バリア積層体を具備することを特徴とする光学機能性フィルタ。
【請求項6】
請求項4に記載の水蒸気酸素バリア積層体を具備することを特徴とする光学表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−18881(P2010−18881A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81829(P2009−81829)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】