説明

手動変速機

【課題】HV−MT車用の手動変速機であってコンパクトなものを提供すること。
【解決手段】 この変速機は、内燃機関から動力が入力される入力軸Aiと、電動機から動力が入力される出力軸Aoとを備える。この変速機は、動力伝達系統がAi−Ao間で確立されない(ニュートラルとは異なる)EV走行用の変速段(EV)と、動力伝達系統がAi−Ao間で確立されるHV走行用の複数の変速段(2速〜5速)とを有する。変速段の選択・確立を行うための複数のスリーブS1〜S3のうちの1つ(特定スリーブS1)が、「EV」と「2速」の確立のために割り当てられる。シフトレバーSLをN位置から「2速のシフト完了位置」に移動する場合、特定スリーブS1が「中立位置」から「2速位置」に移動して「2速」が確立される。一方、シフトレバーSLをN位置から「EVのシフト完了位置」に移動する場合、特定スリーブS1が「中立位置」から移動しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関と電動機とを備えた車両に適用される手動変速機に関し、特に、内燃機関の出力軸と手動変速機の入力軸との間に摩擦クラッチが介装された車両に適用されるものに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力源としてエンジンと電動機とを備えた所謂ハイブリッド車両が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。ハイブリット車両では、電動機の出力軸が、内燃機関の出力軸、変速機の入力軸、及び変速機の出力軸の何れかに接続される構成が採用され得る。以下、内燃機関の出力軸の駆動トルクを「内燃機関駆動トルク」と呼び、電動機の出力軸の駆動トルクを「電動機駆動トルク」と呼ぶ。
【0003】
近年、手動変速機と摩擦クラッチとを備えたハイブリッド車両(以下、「HV−MT車」と呼ぶ)に適用される動力伝達制御装置が開発されてきている。ここにいう「手動変速機」とは、運転者により操作されるシフトレバーのシフト位置に応じて変速段が選択されるトルクコンバータを備えない変速機(所謂、マニュアルトランスミッション、MT)である。また、ここにいう「摩擦クラッチ」とは、内燃機関の出力軸と手動変速機の入力軸との間に介装されて、運転者により操作されるクラッチペダルの操作量に応じて摩擦プレートの接合状態が変化するクラッチである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−224710号公報
【発明の概要】
【0005】
ハイブリッド車両では、内燃機関駆動トルクと電動機駆動トルクの両方を利用して車両が走行する状態(以下、「HV走行」と呼ぶ)が実現され得る。近年、このHV走行に加えて、内燃機関を停止状態(内燃機関の出力軸の回転が停止した状態)に維持しながら電動機駆動トルクのみを利用して車両が走行する状態(以下、「EV走行」と呼ぶ)が実現できるハイブリッド車両が開発されてきている。
【0006】
HV−MT車において、運転者がクラッチペダルを操作しない状態(即ち、クラッチが接合された状態)においてEV走行を実現するためには、変速機の入力軸が回転しない状態を維持しながら変速機の出力軸が電動機駆動トルクにより駆動される必要がある。このためには、電動機の出力軸が変速機の出力軸に接続されることに加え、変速機が「変速機の入力軸と変速機の出力軸との間で動力伝達系統が確立されない状態」に維持される必要がある。
【0007】
以下、「(クラッチを介して)内燃機関から動力が入力される入力軸」と「電動機から動力が入力される(即ち、電動機の出力軸が動力伝達可能に常時接続された)出力軸」とを備えた手動変速機を想定する。この手動変速機では、入力軸・出力軸間での動力伝達系統の確立の有無にかかわらず、電動機駆動トルクを手動変速機の出力軸(従って、駆動輪)に任意に伝達することができる。
【0008】
従って、この手動変速機を利用してHV走行に加えて上記のEV走行を実現するためには、手動変速機の変速段として、HV走行用の「変速機の入力軸・出力軸間で動力伝達系統が確立される変速段」(以下、「HV走行用変速段」と呼ぶ)に加えて、EV走行用の「変速機の入力軸・出力軸間で動力伝達系統が確立されない変速段」(ニュートラルとは異なる変速段。以下、「EV走行変速段」と呼ぶ)が設けられる必要がある。
【0009】
即ち、この手動変速機では、シフトレバーをシフトパターン上において複数のHV走行用変速段に対応するそれぞれのシフト完了位置に移動することにより、入力軸・出力軸間で、「減速比」が対応するHV走行用変速段に対応するそれぞれの値に設定される動力伝達系統が確立され、シフトレバーをシフトパターン上においてEV走行用変速段に対応するシフト完了位置(ニュートラル位置とは異なる)に移動することにより、入力軸・出力軸間で動力伝達系統が確立されない。
【0010】
通常、このような手動変速機では、変速段の選択・確立を行うための複数のスリーブ(及びフォークシャフト)のうち1つのスリーブ(及びフォークシャフト)(以下、「特定スリーブ(特定フォークシャフト)」と呼ぶ)が、EV走行用変速段と、複数のHV走行用変速段のうちの1つ(以下、「特定変速段」と呼ぶ)の確立のために割り当てられる。そして、シフトレバーをニュートラル位置から、「特定変速段のシフト完了位置」及び「EV走行用変速段のシフト完了位置」の何れの位置へ移動しても、特定スリーブ(特定フォークシャフト)の軸方向位置は中立位置から移動する。
【0011】
具体的には、シフトレバーをニュートラル位置から「特定変速段のシフト完了位置」へ移動することによって、特定スリーブ(特定フォークシャフト)の軸方向位置が、中立位置から「特定変速段が確立される位置」に移動する。これにより、変速機の入力軸・出力軸間で特定変速段に対応する減速比を有する動力伝達系統が確立される。
【0012】
一方、シフトレバーをニュートラル位置から「EV走行用変速段のシフト完了位置」へ移動することによっても、特定スリーブ(特定フォークシャフト)の軸方向位置が、前記中立位置から、前記中立位置に対して「特定変速段が確立される位置」と反対側の位置に移動してしまう。この結果、特定スリーブ(特定フォークシャフト)の軸方向における全移動範囲が広くなる。このことは変速機のハウジングの大型化、並びに、それに伴う重量の増加を招く。
【0013】
上述のように、EV走行用変速段が選択される場合、ニュートラルが選択される場合と同様、変速機の入力軸・出力軸間にて動力伝達系統が確立されない。この観点からみれば、シフトレバーをニュートラル位置から「EV走行用変速段のシフト完了位置」へ移動する場合、特定スリーブ(特定フォークシャフト)が前記中立位置から移動する必要はない。このことは、特定スリーブ(特定フォークシャフト)の軸方向における全移動範囲をより狭くできる余地があること、従って、変速機のハウジングをより小型化できる余地があることを意味する。
【0014】
本発明の目的は、「(摩擦クラッチを介して)内燃機関から動力が入力される入力軸」と「電動機から動力が入力される出力軸」とを備え、且つ、複数の「HV走行変速段」と「EV走行変速段」とを備えたHV−MT車用の手動変速機であって、コンパクトなものを提供することにある。
【0015】
本発明による手動変速機は、移動部材(S&SシャフトのIL)と、特定スリーブ(S1)と、特定フォークシャフト(FS1)とを備える。移動部材は、前記シフト操作部材を前記シフトパターン上においてニュートラル位置から「EV走行用変速段のシフト完了位置」へ移動することによって第1位置から第2位置に移動し、前記シフト操作部材を前記シフトパターン上において前記ニュートラル位置から「HV走行用変速段のうちの1つである特定変速段(2速)のシフト完了位置」へ移動することによって前記第1位置から前記第1位置に対して前記第2位置と反対側の第3位置に移動する。典型的には、前記移動部材は、「前記シフト操作部材のセレクト操作(車両左右方向の操作)によって軸方向に移動し又は軸周りに回動し且つ前記シフト操作部材のシフト操作(車両前後方向の操作)によって軸周りに回動し又は軸方向に移動するシフトアンドセレクトシャフト」の側面から突出するインナレバーである。ここで、前記特定変速段は、前記複数のHV走行用変速段(2速〜5速)のうちで、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の割合が最も大きい変速段(2速)であることが好適である。
【0016】
特定スリーブは、前記入力軸及び前記出力軸の一方の軸に相対回転不能且つ軸方向に相対移動可能に設けられる。特定スリーブは、前記一方の軸に相対回転可能に設けられた前記特定変速段の遊転ギヤ(G2o)を前記一方の軸に対して相対回転不能に固定するために前記特定変速段の遊転ギヤと係合可能となっている。
【0017】
特定フォークシャフトは、前記特定スリーブと連結され、軸方向に移動することによって前記特定スリーブを軸方向に駆動する。特定フォークシャフトは、その軸方向位置が第4位置(中立位置)にあるときに前記特定スリーブが前記特定変速段の遊転ギヤと係合せず、その軸方向位置が第5位置(2速位置)にあるときに前記特定スリーブが前記特定変速段の遊転ギヤと係合する。
【0018】
なお、本発明に係る手動変速機は、それぞれが前記入力軸又は前記出力軸に相対回転不能に設けられた複数の固定ギヤであってそれぞれが前記複数の変速段のそれぞれに対応する複数の固定ギヤ(G2i、G3i、G4i、G5i)と、それぞれが前記入力軸又は前記出力軸に相対回転可能に設けられた複数の遊転ギヤであってそれぞれが前記複数の変速段のそれぞれに対応するとともに対応する変速段の前記固定ギヤと常時歯合する複数の遊転ギヤ(G2o、G3o、G4o、G5o)と、それぞれが前記入力軸及び前記出力軸のうち対応する軸に相対回転不能且つ軸方向に相対移動可能に設けられた複数のスリーブであってそれぞれが前記複数の遊転ギヤのうち対応する遊転ギヤを前記対応する軸に対して相対回転不能に固定するために前記対応する遊転ギヤと係合可能な複数のスリーブ(S1、S2、S3)と、それぞれが前記複数のスリーブのそれぞれと連結され且つ軸方向に移動可能な複数のフォークシャフト(FS1、FS2、FS3)と、前記「シフトアンドセレクトシャフト」と、を備える。前記特定スリーブは、前記複数のスリーブのうちの1つであり、前記特定フォークシャフトは、前記複数のフォークシャフトのうちの1つである。
【0019】
本発明に係る手動変速機の特徴は、調整機構を備えたことにある。前記調整機構は、前記移動部材と前記特定フォークシャフトとの係合状態を調整する。前記調整機構は、前記移動部材が前記第1位置から前記第2位置に移動する際、前記移動部材が前記特定フォークシャフトを軸方向に駆動せずに前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第4位置に維持され、前記移動部材が前記第1位置から前記第3位置に移動する際、前記移動部材が前記特定フォークシャフトを軸方向に駆動して前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第4位置から前記第5位置に移動するように構成される。前記調整機構の具体的な構成については後に詳述する。
【0020】
上記構成によれば、シフト操作部材をニュートラル位置から「特定変速段のシフト完了位置」へ移動する場合には特定スリーブ(特定フォークシャフト)が前記第4位置(中立位置)から前記第5位置(2速位置)に移動する一方で、シフト操作部材をニュートラル位置から「EV走行用変速段のシフト完了位置」へ移動する場合には特定スリーブ(特定フォークシャフト)が前記第4位置(中立位置)から移動しない(前記中立位置に維持される)。以下、係る構成を「EV側非駆動機構」と呼ぶ。
【0021】
本発明によれば、「EV側非駆動機構」を採用することによって、「EV側非駆動機構」が採用されない場合(即ち、シフト操作部材をニュートラル位置から「EV走行用変速段のシフト完了位置」へ移動する場合に、特定スリーブ(特定フォークシャフト)が前記第4位置から、前記第4位置に対して前記第5位置と反対側の位置に移動する場合)に比して、特定スリーブ(特定フォークシャフト)の軸方向における全移動範囲が狭くなる。このことは、変速機のハウジングの小型化、並びに、それに伴う重量の減少に貢献し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るHV−MT車用の手動変速機を含む動力伝達制御装置のN位置が選択された状態における概略構成図である。
【図2】N位置が選択された状態におけるS&Sシャフト及び複数のフォークシャフトの位置関係を示した模式図である。
【図3】「特定スリーブ及び特定フォークシャフト」とS&Sシャフトとの係合状態を示した模式図である。
【図4】「特定スリーブ及び特定フォークシャフト」以外の「スリーブ及びフォークシャフト」とS&Sシャフトとの係合状態を示した模式図である。
【図5】シフトパターンの詳細を示した図である。
【図6】EV位置が選択された状態における図1に対応する図である。
【図7】EV位置が選択された状態における図2に対応する図である。
【図8】2速位置が選択された状態における図1に対応する図である。
【図9】2速位置が選択された状態における図2に対応する図である。
【図10】3速位置が選択された状態における図1に対応する図である。
【図11】3速位置が選択された状態における図2に対応する図である。
【図12】4速位置が選択された状態における図1に対応する図である。
【図13】4速位置が選択された状態における図2に対応する図である。
【図14】5速位置が選択された状態における図1に対応する図である。
【図15】5速位置が選択された状態における図2に対応する図である。
【図16】N位置が選択された状態における、S&Sシャフトのインナレバーと特定フォークシャフト(特定ヘッド)との間の係合状態を示した図である。
【図17】N位置からEV位置への移行が完了した状態における、S&Sシャフトのインナレバーと特定フォークシャフト(特定ヘッド)との間の係合状態を示した図である。
【図18】N位置から2速位置への移行の途中における、S&Sシャフトのインナレバーと特定フォークシャフト(特定ヘッド)との間の係合状態を示した図である。
【図19】N位置から2速位置への移行が完了した状態における、S&Sシャフトのインナレバーと特定フォークシャフト(特定ヘッド)との間の係合状態を示した図である。
【図20】2速位置からN位置への移行の途中における、S&Sシャフトのインナレバーと特定フォークシャフト(特定ヘッド)との間の係合状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る手動変速機M/Tを備えた車両の動力伝達制御装置の一例(以下、「本装置」と呼ぶ)について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本装置は、「動力源としてエンジンE/GとモータジェネレータM/Gとを備え、且つ、トルクコンバータを備えない手動変速機M/Tと、摩擦クラッチC/Tとを備えた車両」、即ち、上記「HV−MT車」に適用される。この「HV−MT車」は、前輪駆動車であっても、後輪駆動車であっても、4輪駆動車であってもよい。
【0024】
(全体構成)
先ず、本装置の全体構成について説明する。エンジンE/Gは、周知の内燃機関であり、例えば、ガソリンを燃料として使用するガソリンエンジン、軽油を燃料として使用するディーゼルエンジンである。
【0025】
手動変速機M/Tは、運転者により操作されるシフトレバーSLのシフト位置に応じて変速段が選択されるトルクコンバータを備えない変速機(所謂、マニュアルトランスミッション)である。M/Tは、E/Gの出力軸Aeから動力が入力される入力軸Aiと、M/Gから動力が入力されるとともに車両の駆動輪へ動力を出力する出力軸Aoと、を備える。入力軸Ai及び出力軸Aoは互いに平行に配置されている。出力軸Aoは、M/Gの出力軸そのものであってもよいし、M/Gの出力軸と平行であり且つM/Gの出力軸とギヤ列を介して常時動力伝達可能に接続された軸であってもよい。M/Tの構成の詳細は後述する。
【0026】
摩擦クラッチC/Tは、E/Gの出力軸AeとM/Tの入力軸Aiとの間に介装されている。C/Tは、運転者により操作されるクラッチペダルCPの操作量(踏み込み量)に応じて摩擦プレートの接合状態(より具体的には、Aeと一体回転するフライホイールに対する、Aiと一体回転する摩擦プレートの軸方向位置)が変化する周知のクラッチである。
【0027】
C/Tの接合状態(摩擦プレートの軸方向位置)は、クラッチペダルCPとC/T(摩擦プレート)とを機械的に連結するリンク機構等を利用してCPの操作量に応じて機械的に調整されてもよいし、CPの操作量を検出するセンサ(後述するセンサP1)の検出結果に基づいて作動するアクチュエータの駆動力を利用して電気的に(所謂バイ・ワイヤ方式で)調整されてもよい。
【0028】
モータジェネレータM/Gは、周知の構成(例えば、交流同期モータ)の1つを有していて、例えば、ロータ(図示せず)が出力軸Aoと一体回転するようになっている。即ち、M/Gの出力軸とM/Tの出力軸Aoとの間では動力伝達系統が常時確立されている。以下、E/Gの出力軸Aeの駆動トルクを「EGトルク」と呼び、M/Gの出力軸(出力軸Ao)の駆動トルクを「MGトルク」と呼ぶ。
【0029】
また、本装置は、クラッチペダルCPの操作量(踏み込み量、クラッチストローク等)を検出するクラッチ操作量センサP1と、ブレーキペダルBPの操作量(踏力、操作の有無等)を検出するブレーキ操作量センサP2と、アクセルペダルAPの操作量(アクセル開度)を検出するアクセル操作量センサP3と、シフトレバーSLの位置を検出するシフト位置センサP4と、を備えている。
【0030】
更に、本装置は、電子制御ユニットECUを備えている。ECUは、上述のセンサP1〜P4、並びにその他のセンサ等からの情報等に基づいて、E/Gの燃料噴射量(スロットル弁の開度)を制御することでEGトルクを制御するとともに、インバータ(図示せず)を制御することでMGトルクを制御する。
【0031】
(M/Tの構成)
以下、M/Tの構成の詳細について図1〜図5を参照しながら説明する。図1及び図5に示すシフトレバーSLのシフトパターンから理解できるように、本例では、選択される変速段(シフト完了位置)として、前進用の5つの変速段(EV、2速〜5速)、及び後進用の1つの変速段(R)が設けられている。以下、後進用の変速段(R)についての説明は省略する。「EV」は上述したEV走行用変速段であり、「2速」〜「5速」はそれぞれ上述したHV走行用変速段である。以下、説明の便宜上、「N位置」、「EV−2セレクト位置」、「5−Rセレクト位置」を含むセレクト操作範囲に対応するシフト位置の範囲を総称して「ニュートラル範囲」と呼ぶ。
【0032】
M/Tは、スリーブS1、S2、及びS3を備える。S1、S2、及びS3はそれぞれ、出力軸Aoと一体回転する対応するハブに相対回転不能且つ軸方向に相対移動可能に嵌合された、「2速」用のスリーブ、「3速−4速」用のスリーブ、及び「5速」用のスリーブである。
【0033】
図2及び図3に示すように、スリーブS1は、フォークシャフトFS1と(フォークを介して)一体に連結されている。図2及び図4に示すように、スリーブS2、S3は、フォークシャフトFS2、FS3と(フォークを介して)それぞれ一体に連結されている。FS1、FS2、及びFS3(従って、S1、S2、及びS3)はそれぞれ、シフトレバーSLの操作と連動するS&Sシャフトに設けられたインナレバーIL(図2に斜線で示す)によって軸方向(図2では上下方向、図1、図3及び図4では左右方向)に駆動される。
【0034】
図2〜図4では、S&Sシャフトとして、シフトレバーSLのシフト操作(図1、図5では上下方向の操作)によって軸方向に平行移動し且つシフトレバーSLのセレクト操作(図1、図5では左右方向の操作)によって軸中心に回動する「セレクト回転型」が示されているが、SLのシフト操作によって軸中心に回動し且つSLのセレクト操作によって軸方向に平行移動する「シフト回転型」が使用されてもよい。
【0035】
図4に示すように、FS2(FS3)には、シフトヘッドH2(H3)が一体に設けられている。SLの位置がシフト操作(車両前後方向の操作)によって「ニュートラル範囲」から車両前方側及び後方側の何れの方向に移動しても、即ち、インナレバーILの軸方向位置(図4における左右方向の位置)が、SLの「ニュートラル範囲」に対応する基準位置から何れの方向に移動しても、ILがH2(H3)を軸方向に押圧することによって、FS2(FS3)、従って、S2(S3)の軸方向位置が「中立位置」から移動する。
【0036】
図3に示すように、FS1には、FS1に対してその支点周りに回動可能に連結されたシフトヘッドH1が連結されている。H1の周りの構造の詳細については後に詳述する(図16〜図20)。SLの位置がシフト操作によって「ニュートラル範囲」(EV−2セレクト位置)から「2速のシフト完了位置」へ移動する場合、即ち、インナレバーILの軸方向位置(図3における左右方向の位置)が、前記基準位置から一方側(図3において左方向)に移動する場合、ILがH1を押圧することによって、FS1、従って、S1の軸方向位置が「中立位置」から「2速位置」に移動する。一方、SLの位置がシフト操作によって「ニュートラル範囲」(EV−2セレクト位置)から「EVのシフト完了位置」へ移動する場合、即ち、インナレバーILの軸方向位置(図3における左右方向の位置)が、前記基準位置から他方側(図3において右方向)に移動する場合、ILがH1と係合しないことによって、FS1、従って、S1の軸方向位置が「中立位置」から移動しない(「中立位置」に維持される)。
【0037】
このように、FS1(のH1)とILとの間で、上述した「EV側非駆動機構」が確立されている。この点については後に詳述する(図16〜図20)。即ち、S1〜S3のうちS1が前記「特定スリーブ」に対応し、FS1〜FS3のうちFS1が前記「特定フォークシャフト」に対応し、H1〜H3のうちH1が前記「特定シフトヘッド」に対応している。以下、各変速段について順に説明していく。
【0038】
図1、2に示すように、シフトレバーSLが「N位置」(より正確には、ニュートラル領域)にある状態では、スリーブS1、S2、及びS3の全てが「中立位置」にある。この状態では、S1、S2、及びS3はそれぞれ、対応する何れの遊転ギヤとも係合していない。即ち、入力軸Aiと出力軸Aoとの間では動力伝達系統が確立されない。
【0039】
図6、7に示すように、シフトレバーSLが「N位置」から(EV−2セレクト位置を経由して)「EVのシフト完了位置」に移動する際、上述した「EV側非駆動機構」の作用によって、S&SシャフトのILがFS1に連結されたヘッドH1の「EV側係合部」と係合しない。従って、FS1(従って、S1)は「中立位置」に維持される。スリーブS2、S3はそれぞれ「中立位置」にある。換言すれば、スリーブS1〜S3の位置は、SLが「N位置」(ニュートラル領域)にある状態から変化しない。
【0040】
この状態では、図6に太い実線で示すように、入力軸Aiと出力軸Aoとの間では動力伝達系統が確立されず、M/Gと出力軸Aoとの間でのみ動力伝達系統が確立される。即ち、「EV」が選択された場合、E/Gを停止状態(E/Gの出力軸Aeの回転が停止した状態)に維持しながらMGトルクのみを利用して車両が走行する状態(即ち、上記「EV走行」)が実現される。即ち、この車両では、「EV」を選択することにより、EV走行による発進が可能である。なお、「N位置」(ニュートラル領域)と「EV位置」との識別は、例えば、シフト位置センサP4の検出結果、並びに、S&Sシャフトの位置を検出するセンサの検出結果等に基づいて達成され得る。
【0041】
図8、9に示すように、シフトレバーSLが「N位置」から(EV−2セレクト位置を経由して)「2速のシフト完了位置」に移動すると、S&SシャフトのILがFS1に連結されたヘッドH1の「2速側係合部」を「2速」方向(図9では下方向)に駆動することによって、FS1(従って、S1)のみが(図9では下方向、図8では左方向)に駆動される。この結果、スリーブS1が「2速位置」に移動する。スリーブS2、S3はそれぞれ「中立位置」にある。
【0042】
この状態では、S1は、遊転ギヤG2oと係合し、遊転ギヤG2oを出力軸Aoに対して相対回転不能に固定している。また、遊転ギヤG2oは、入力軸Aiに固定された固定ギヤG2iと常時噛合している。この結果、図8に太い実線で示すように、M/Gと出力軸Aoとの間で動力伝達系統が確立されることに加えて、入力軸Aiと出力軸Aoとの間で、G2i及びG2oを介して「2速」に対応する動力伝達系統が確立される。即ち、「2速」が選択された場合、クラッチC/Tを介して伝達されるEGトルクと、MGトルクとの両方を利用して車両が走行する状態(即ち、上記「HV走行」)が実現される。
【0043】
図10、11に示すように、シフトレバーSLが「N位置」から「3速のシフト完了位置」に移動すると、S&SシャフトのILがFS2に連結されたヘッドH2の「3速側係合部」を「3速」方向(図11では上方向)に駆動することによって、FS2(従って、S2)のみが(図11では上方向、図10では右方向)に駆動される。この結果、スリーブS2が「3速位置」に移動する。スリーブS1、S3はそれぞれ「中立位置」にある。
【0044】
この状態では、S2は、遊転ギヤG3oと係合し、遊転ギヤG3oを出力軸Aoに対して相対回転不能に固定している。また、遊転ギヤG3oは、入力軸Aiに固定された固定ギヤG3iと常時噛合している。この結果、図10に太い実線で示すように、M/Gと出力軸Aoとの間で動力伝達系統が確立されることに加えて、入力軸Aiと出力軸Aoとの間で、G3i及びG3oを介して「3速」に対応する動力伝達系統が確立される。即ち、「3速」が選択された場合、「2速」が選択された場合と同様、上記「HV走行」が実現される。
【0045】
以下、図12〜図15に示すように、シフトレバーSLが「4速」又は「5速」にある場合も、「2速」や「3速」の場合と同様、上記「HV走行」が実現される。即ち、「4速」、「5速」ではそれぞれ、M/Gと出力軸Aoとの間で動力伝達系統が確立されることに加えて、入力軸Aiと出力軸Aoとの間で、「G4i及びG4o」、「G5i及びG5o」を介して、「4速」、「5速」に対応する動力伝達系統が確立される。
【0046】
以上、本例では、「EV」のみがEV走行用の変速段であり、「2速」〜「5速」はHV走行用の変速段である。EGトルクの伝達系統について、「Aoの回転速度に対するAiの回転速度の割合」を「MT減速比」と呼ぶものとすると、「2速」から「5速」に向けてMT減速比(GNoの歯数/GNiの歯数)(N:2〜5)が次第に小さくなっていく。
【0047】
なお、上記の例では、スリーブS1〜S3の軸方向位置は、シフトレバーSLとスリーブS1〜S3とを機械的に連結するリンク機構(S&Sシャフトとフォークシャフト)等を利用してシフトレバーSLのシフト位置に応じて機械的に調整されている。これに対し、スリーブS1〜S3の軸方向位置が、シフト位置センサP4の検出結果に基づいて作動するアクチュエータの駆動力を利用して電気的に(所謂バイ・ワイヤ方式で)調整されてもよい。この場合においても、スリーブS1〜S3のうちスリーブS1(特定スリーブ)の軸方向位置は、上述した「EV側非駆動機構」が確立されるように制御される。
【0048】
(E/Gの制御)
本装置によるE/Gの制御は、大略的に以下のようになされる。車両が停止しているとき、或いは、「N」又は「EV」が選択されているとき、E/Gが停止状態(燃料噴射がなされない状態)に維持される。E/Gの停止状態において、HV走行用の変速段(「2速」〜「5速」の何れか)が選択されたことに基づいて、E/Gが始動される(燃料噴射が開始される)。E/Gの稼働中(燃料噴射がなされている間)では、アクセル開度等に基づいてEGトルクが制御される。E/Gの稼働中において、「N」又は「EV」が選択されたこと、或いは、車両が停止したことに基づいて、E/Gが再び停止状態に維持される。
【0049】
(M/Gの制御)
本装置によるM/Gの制御は、大略的に以下のようになされる。車両が停止しているとき、或いは、「N」が選択されているとき、M/Gが停止状態(MGトルク=0)に維持される。M/Gの停止状態において、「EV」が選択されたことに基づいて、MGトルクを利用した通常発進制御が開始される。通常発進制御では、MGトルクがアクセル開度及びクラッチストロークに基づいて制御される。通常発進制御でのMGトルクは、「手動変速機と摩擦クラッチとを備え且つ動力源として内燃機関のみを搭載した通常車両」が「1速」で発進する際における「アクセル開度及びクラッチストローク」と「クラッチを介して手動変速機の入力軸へ伝達される内燃機関のトルク」との関係を規定する予め作製されたマップ等を利用して決定される。通常発進制御の終了後は、「EV」の選択時、或いは、「2速」〜「5速」(複数のHV走行用変速段)の選択時において、アクセル開度等に基づいてMGトルクが制御される。そして、車両が停止したことに基づいて、M/Gが再び停止状態に維持される。
【0050】
(EV側非駆動機構の具体的な構成)
以下、図16〜図20を参照しながら、本装置によるEV側非駆動機構の具体的な構成について説明する。図3におけるシフトヘッドH1の周辺部の拡大図である図16に示すように、シフトヘッドH1は、フォークシャフトFS1に対して、ピン等を利用して、その支点H1c周りに回動可能に連結されている。シフトヘッドH1は、EV側係合部H1aと、2速側係合部H1bとを備える。EV側係合部H1aは、FS1を軸方向の「EV側」(図16において右方向)に駆動するためにS&SシャフトのインナレバーILと係合可能となっている。2速側係合部H1bは、FS1を軸方向の「2速側」(図16において左方向)に駆動するためにILと係合可能となっている。
【0051】
<N位置>
図16に示すように、シフトレバーSLの位置が「N位置」(より正確には、ニュートラル領域)にある場合、フォークシャフトFS1(従って、スリーブS1)の軸方向位置は「中立位置」にあり、インナレバーILの軸方向位置は前記基準位置にある。この状態では、ヘッドH1は、FS1に対して第1回動姿勢にある。第1回動姿勢では、EV側係合部H1aは、ILから遠ざかる。従って、ILの軸方向(図16の左右方向)の移動に際し、2速側係合部H1bはILと係合可能となっている一方、EV側係合部H1aはILと係合不能となっている。
【0052】
<N位置→EV位置>
図17に示すように、シフトレバーSLが「N位置」(より正確には、EV−2セレクト位置)から「EVのシフト完了位置」に移動する際、即ち、インナレバーILが前記基準位置から「EV」方向(図17において右方向)に移動する際、ヘッドH1が第1回動姿勢に維持されていることに起因して、ILがEV側係合部H1aと係合しない。この結果、フォークシャフトFS1が軸方向に駆動されず、FS1の軸方向位置は、「中立位置」に維持される。
【0053】
<N位置→2速位置>
図18に示すように、シフトレバーSLが「N位置」(より正確には、EV−2セレクト位置)から「2速のシフト完了位置」に移動する際、即ち、インナレバーILが前記基準位置から「2速」方向(図18において左方向)に移動する際、その途中の段階にて、インナレバーILが2速側係合部H1bと係合開始する。この結果、ILが第1回動姿勢にあるヘッドH1の2速側係合部H1bを押圧することによって、ヘッドH1が支点H1c周りにモーメント(図18において反時計回り、図中の黒矢印を参照)を受ける。この結果、H1は、第1回動姿勢から第2回動姿勢まで回動される。
【0054】
その後もILがH1のH1bを押圧し続けることによって、図19に示すように、H1が第2回動姿勢に維持されながら、フォークシャフトFS1が軸方向(図19において左方向)に駆動される。この結果、FS1の軸方向位置が「中立位置」から「2速位置」に移動する。なお、FS1が「中立位置」から「2速位置」に移動していく際、ヘッドH1が第2回動姿勢を維持するように、ヘッドH1の下面がケース(ハウジング)の一部である平面部(斜線で示した部分を参照)によってガイドされる。第2回動姿勢では、EV側係合部H1aは、ILに近づく。従って、ILの軸方向(図19の左右方向)の移動に際し、2速側係合部H1bに加えてEV側係合部H1aもILと係合可能となっている。
【0055】
<2速位置→N位置>
図20に示すように、シフトレバーSLが「2速のシフト完了位置」から「N位置」(より正確には、EV−2セレクト位置)に移動する際、即ち、インナレバーILが「2速」方向の位置から前記基準位置に戻る際、その途中の段階にて、インナレバーILがEV側係合部H1aと係合開始する。この結果、ILが第2回動姿勢にあるヘッドH1のEV側係合部H1aを押圧することによって、ヘッドH1が支点H1c周りにモーメント(図20において時計回り、図中の黒矢印を参照)を受けながら、フォークシャフトFS1が軸方向(図20において右方向)に駆動される。その後もILがH1のH1aを押圧し続けることによって、上述した図16に示すように、FS1の軸方向位置が「2速位置」から「中立位置」に戻るとともに、H1の姿勢が第2回動姿勢から第1回動姿勢に戻される。
【0056】
以上のように、シフトヘッドH1の回動を利用することによって、<N位置→2速位置>ではフォークシャフトFS1(従って、スリーブS1)が軸方向に駆動される一方、<N位置→EV位置>ではフォークシャフトFS1(従って、スリーブS1)が軸方向に駆動されない。即ち、「EV側非駆動機構」が達成されている。
【0057】
(作用・効果)
上記のように、本発明の実施形態に係る手動変速機M/Tでは、「EV側非駆動機構」が採用されている。この結果、「EV側非駆動機構」が採用されない場合(即ち、シフトレバーSLを「N位置」から「EVのシフト完了位置」へ移動すると、スリーブS1が「中立位置」から、「中立位置」に対して「2速位置」と反対側の位置に移動する場合)に比して、スリーブS1(フォークシャフトFS1)の軸方向における全移動範囲が狭くなる。このことは、変速機のハウジングの小型化、並びに、それに伴う重量の減少に貢献し得る。
【0058】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、スリーブS1〜S3が共に入力軸Aiに設けられているが、スリーブS1〜S3が共に出力軸Aoに設けられていてもよい。また、スリーブS1〜S3のうちの一部が出力軸Aoに残りが入力軸Aiに設けられていてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、スリーブS1(前記「特定スリーブ」)の軸方向位置によって「EV」と「2速」とが切り替えられるようになっている(即ち、前記特定変速段が「2速」に設定されている)が、スリーブS1(前記「特定スリーブ」)の軸方向位置によって「EV」と「2速以外のHV走行用変速段」(「3速」〜「5速」の何れか)が切り替えられるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
M/T…変速機、E/G…エンジン、C/T…クラッチ、M/G…モータジェネレータ、Ae…エンジンの出力軸、Ai…変速機の入力軸、Ao…変速機の出力軸、CP…クラッチペダル、AP…アクセルペダル、BP…ブレーキペダル、P1…クラッチ操作量センサ、P3…アクセル操作量センサ、P4…シフト位置センサ、ECU…電子制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源として内燃機関(E/G)と電動機(M/G)とを備えた車両に適用される、トルクコンバータを備えない手動変速機(M/T)であって、
前記内燃機関から動力が入力される入力軸(Ai)と、
前記電動機から動力が入力されるとともに前記車両の駆動輪へ動力を出力する出力軸(Ao)と、
運転者により操作されるシフト操作部材(SL)をシフトパターン上において前記内燃機関及び前記電動機の両方の駆動力を利用し得る状態で走行するための複数のハイブリッド走行用変速段(2速〜5速)に対応するそれぞれのシフト完了位置に移動することによって、前記入力軸と前記出力軸との間で、前記出力軸の回転速度に対する前記入力軸の回転速度の割合である変速機減速比が対応するハイブリッド走行用変速段に対応するそれぞれの値に設定される動力伝達系統を確立し、前記シフト操作部材を前記シフトパターン上において前記内燃機関及び前記電動機の駆動力のうち前記電動機の駆動力のみを利用して走行するための電動機走行用変速段(EV)に対応するシフト完了位置に移動することによって、前記入力軸と前記出力軸との間で動力伝達系統を確立しない変速機変速機構(M)と、
を備え、
前記変速機変速機構は、
前記シフト操作部材を前記シフトパターン上においてニュートラル位置から前記電動機走行用変速段のシフト完了位置へ移動することによって第1位置(基準位置)から第2位置に移動し、前記シフト操作部材を前記シフトパターン上において前記ニュートラル位置から前記複数のハイブリッド走行用変速段のうちの1つである特定変速段(2速)のシフト完了位置へ移動することによって前記第1位置から前記第1位置に対して前記第2位置と反対側の第3位置に移動する移動部材(S&SシャフトのIL)と、
前記入力軸及び前記出力軸の一方の軸に相対回転不能且つ軸方向に相対移動可能に設けられた特定スリーブであって前記一方の軸に相対回転可能に設けられた前記特定変速段の遊転ギヤ(G2o)を前記一方の軸に対して相対回転不能に固定するために前記特定変速段の遊転ギヤと係合可能な特定スリーブ(S1)と、
前記特定スリーブと連結され、軸方向に移動することによって前記特定スリーブを軸方向に駆動する特定フォークシャフトであって、その軸方向位置が第4位置(中立位置)にあるときに前記特定スリーブが前記特定変速段の遊転ギヤと係合せず、その軸方向位置が第5位置(2速位置)にあるときに前記特定スリーブが前記特定変速段の遊転ギヤと係合する特定フォークシャフト(FS1)と、
前記移動部材と前記特定フォークシャフトとの係合状態を調整する調整機構であって、前記移動部材が前記第1位置から前記第2位置に移動する際、前記移動部材が前記特定フォークシャフトを軸方向に駆動せずに前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第4位置に維持され、前記移動部材が前記第1位置から前記第3位置に移動する際、前記移動部材が前記特定フォークシャフトを軸方向に駆動して前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第4位置から前記第5位置に移動するように構成された調整機構(H1)と、
を備えた、手動変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の手動変速機において、
前記調整機構は、
前記特定フォークシャフトに対してその支点(H1c)周りに回動可能に連結された特定シフトヘッドであって、前記特定フォークシャフトを軸方向における前記第5位置から前記第4位置への方向に駆動するために前記移動部材と係合可能な第1係合部(H1a)と、前記特定フォークシャフトを軸方向における前記第4位置から前記第5位置への方向に駆動するために前記移動部材と係合可能な第2係合部(H1b)を備えた特定シフトヘッド(H1)を備え、
前記移動部材が前記第1位置から前記第2位置に移動する際、前記移動部材が前記特定フォークシャフトに対して第1回動姿勢にある前記特定シフトヘッドの前記第1係合部と係合しないことによって、前記特定フォークシャフトが軸方向に駆動されず、前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第4位置に維持され、
前記移動部材が前記第1位置から前記第3位置に移動する際、前記移動部材が前記特定フォークシャフトに対して前記第1回動姿勢にある前記特定シフトヘッドの前記第2係合部を押圧することによって、前記特定シフトヘッドが前記特定フォークシャフトに対して前記第1回動姿勢から第2回動姿勢まで回動されるともに、前記特定フォークシャフトが軸方向に駆動され、前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第4位置から前記第5位置に移動するように構成され、
前記移動部材が前記第3位置から前記第1位置に移動する際、前記移動部材が前記第2回動姿勢にある前記特定シフトヘッドの前記第1係合部を押圧することによって、前記特定シフトヘッドが前記第2回動姿勢から前記第1回動姿勢まで回動されるともに、前記特定フォークシャフトが軸方向に駆動され、前記特定フォークシャフトの軸方向位置が前記第5位置から前記第4位置に移動するように構成された、手動変速機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の手動変速機において、
前記特定変速段は、前記複数のハイブリッド走行用変速段(2速〜5速)のうちで、前記変速機減速比が最も大きい変速段(2速)である、手動変速機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−171595(P2012−171595A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38618(P2011−38618)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】