説明

手押し車の駐車ブレーキ機構

【課題】従来に比べて簡単な操作だけで駐車状態にすることが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を得る。
【解決手段】取付部34aは、ハンドル部11の側部に取り付けられている。取付部34aには、軸32がハンドル部11長手方向外側に向かって設けられている。また、レバー部31が、軸32を中心にハンドル部11回りに所定角度回動できるように、軸32にレバー部31の一端部31aが支持されている。レバー部31の一端部31aには、ブレーキ用ワイヤーの一端が接続されており、取付部34から下方へ延設されている。レバー部31の一端部31aの外側において、駐車ブレーキ操作用のボタン部30が、軸32の長手方向に沿って摺動できるように、軸32の周りに設けられている。ボタン部30には、レバー部31の一端部31a先端が嵌挿可能な溝部30aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者によって後方から押し動かされる、高齢者用手押し車、ベビーカー、ショッピングカート等の各種手押し車の車輪を制動するための駐車ブレーキ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手押し車の駐車ブレーキ機構は公知となっており、例えば、下記特許文献1に開示されているものがある。なお、この特許文献1には、ハンドルに設けたブレーキ操作部のブレーキ操作によりブレーキワイヤーを引張又は開放して、車輪近傍に配置されたブレーキ本体を作動又は開放するようにした手押し車のブレーキ機構において、ブレーキ操作部は、ハンドル軸の外周に回転自在に装着した筒状回転グリップと、ハンドル軸と回転グリップとの間に介在し、且つブレーキワイヤーの一端に連結されて、回転グリップの正逆回転動作で、ブレーキワイヤーを引張又は開放するワイヤー運動変換手段とを有してなるブレーキ機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−19960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の手押し車においては、ブレーキ操作をとっさに行うことができるものであるが、手押し車を駐車状態にするには、上記筒状回転グリップをロックすることができる角度まで回転する必要があった。近年では、さらに簡単な操作だけで手押し車を駐車状態にすることが可能なブレーキ機構が望まれている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、従来に比べて簡単な操作だけで駐車状態にすることが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、所定箇所に取り付け可能な取付部と、前記取付部に所定方向に押動可能に設けられたボタン部と、前記取付部に設けられた軸に対して回動可能となるように一端部が支持されているとともに、前記ボタン部の少なくとも一部に接することが可能な部位を有したレバー部と、前記レバー部にブレーキ用ワイヤーを介して接続されているブレーキ用ワイヤー接続部と、前記ブレーキ用ワイヤー接続部から延出している方向と逆方向に突出した突出部とを有し、手押し車の枠体に沿って摺動自在に取り付け可能な摺動部材と、一端が前記摺動部材に接続され、他端が前記ブレーキ用ワイヤー接続部から前記ブレーキ用ワイヤーが延出している方向と逆方向に前記摺動部材を付勢するように前記手押し車の枠体に接続可能な圧縮弾性部材と、前記手押し車の車輪に設けられ、前記摺動部材の前記突出部と係合可能な係合部とを備え、前記ボタン部が所定位置まで押動された際、前記摺動部材が前記車輪に向かって移動するように、前記レバー部が前記ブレーキ用ワイヤーを介した前記圧縮弾性部材の付勢力によって所定角度回動して停止するとともに、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部とが係合し前記車輪の回転を係止するように構成されているものである。
【0007】
上記(1)の構成によれば、従来に比べて簡単な操作だけで駐車状態にすることが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0008】
(2) 上記(1)の手押し車の駐車ブレーキ機構においては、前記軸が、前記ボタン部の内部に前記ボタン部の押動可能な方向に沿って配置され、前記ロック機構が、前記ボタン部内壁において前記軸と略垂直方向に形成された溝部を有したものであり、前記ボタン部が所定位置まで押動された際、前記レバー部の一端部の先端が前記溝部に嵌挿されるとともに前記レバー部が回動するように、前記ブレーキ用ワイヤーが前記レバー部に接続されていることが好ましい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、簡易な構成であるにもかかわらず、確実に、従来に比べて簡単な操作だけで駐車状態にすることが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0010】
(3) 上記(2)の手押し車の駐車ブレーキ機構においては、前記軸の周囲に設けられ、前記ボタン部を前記取付部から遠ざかる方向に向けて付勢する別の圧縮弾性部材を備えており、前記レバー部の一端部の先端が前記ボタン部の前記溝部に嵌挿されている際、前記レバー部を前記溝部に嵌挿するように回動する方向と逆方向に回動するように操作することで、前記溝部から前記レバー部の一端部の先端を抜き出すとともに、前記別の圧縮弾性部材の付勢力によって前記ボタン部を前記取付部から遠ざかる方向に向けて移動させて、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部との係合を解除した後、前記レバー部の位置を保持することが可能な部位を前記ボタン部が有していることが好ましい。
【0011】
上記(3)の構成によれば、簡単な操作だけで、駐車ブレーキを解除することが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0012】
(4) 別の観点として、上記(1)の手押し車の駐車ブレーキ機構においては、前記ボタン部が、略中央部を中心として回動するように前記取付部に設けられ、前記レバー部が、前記ボタン部の押動可能な方向に対して略垂直方向に回動するように前記軸部に支持されている一端部、及び、前記ボタン部に掛合することが可能であるとともに前記ブレーキ用ワイヤーが接続された他端部を有した本体部と、前記本体部の略中央から延設された取っ手部とを含むものであり、前記ボタン部が所定位置まで押動され回動した際、前記ボタン部に掛合していた前記レバー部の他端部が前記ボタン部から外れるとともに、前記レバー部が前記ブレーキ用ワイヤーを介した前記圧縮弾性部材の付勢力を利用して回動することによって前記摺動部材を摺動させるように構成されているものであってもよい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、簡易な構成であるにもかかわらず、確実に、従来に比べて簡単な操作だけで駐車状態にすることが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0014】
(5) 上記(4)の手押し車の駐車ブレーキ機構においては、前記ボタン部と前記取付部との間に設けられ、前記ボタン部の押動方向と逆方向に向けて付勢する別の圧縮弾性部材を備え、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部とが係合し前記車輪の回転を係止している場合であって、前記レバー部の取っ手部を所定位置まで操作することによって前記ブレーキ用ワイヤーが引っ張られ、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部との係合が解除された際、前記別の圧縮弾性部材の付勢力を利用して前記ボタン部の押動方向と逆方向に前記ボタン部が回動し、前記レバー部の他端部を前記ボタン部に掛合するように構成されていることが好ましい。
【0015】
上記(5)の構成によれば、簡単な操作だけで、駐車ブレーキを解除することが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0016】
(6) 上記(5)の手押し車の駐車ブレーキ機構においては、前記摺動部材の前記突出部が設けられている側と反対側に、ブレーキ用の摩擦抵抗部が設けられており、前記ブレーキ用ワイヤーを引っ張るように前記レバー部を所定角度回動させる操作を行って前記摺動部材を摺動させることにより、前記摩擦抵抗部が前記車輪に接触可能となるように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記(6)の構成によれば、操作者が操作し続けている限りブレーキをかけ続けたり、かけ続けていたブレーキを解除したりすることができる通常のブレーキ機能を兼ね備えた手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る駐車ブレーキ機構を備えている手押し車を示した概略斜視図である。
【図2】図1の手押し車を示した概略側面図である。
【図3】図1に示した手押し車のハンドル部及び駐車ブレーキ機構のボタン部周辺の構成を示す概略断面図である。
【図4】図1に示した手押し車の駐車ブレーキ機構におけるボタン部周辺の構成を一部切り欠いて示した図であって、(a)が駐車ブレーキ機構の動作前状態を示す図、(b)が駐車ブレーキ機構の動作後状態を示す図である。
【図5】図1に示した手押し車の駐車ブレーキ機構における摺動部材周辺の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る駐車ブレーキ機構が取り付けられた手押し車のハンドル部を示した概略斜視図である。
【図7】(a)が図6に示した駐車ブレーキ機構のボタン部周辺の構成を示す概略側面図、(b)が(a)のA−A矢視断面図である。
【図8】(a)が図6に示した駐車ブレーキ機構のボタン部周辺の構成を示す概略上視図、(b)が(a)のB−B矢視断面図である。
【図9】図6に示した手押し車の駐車ブレーキ機構におけるボタン部周辺の構成を一部切り欠いて示した図であって、(a)が駐車ブレーキ機構の動作前状態を示す図、(b)が駐車ブレーキ機構の動作後状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
以下、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る駐車ブレーキ機構を備えている手押し車を説明する。なお、便宜のため、後述するブレーキ用ワイヤーについては、図示していないことがある。
【0020】
図1及び図2に示したように、手押し車100は、左右一対の前部枠体1a、1bと、左右一対の後部枠体2a、2bと、左右一対の背部枠体3a、3bと、左右一対の可動部材4a、4bと、枠部材5と、左右一対の第1連結杵6a、6bと、左右一対の第2連結杵7a、7bと、ロック機構20と、駐車ブレーキ機構とを備えているものである。
【0021】
前部枠体1a、1bのそれぞれの下端部には、首振り機構8を介して車輪9が枢着されている。車輪9は、2輪を並列してなるものであり、該2輪は首振り機構8に設けられている軸(図示せず)の両端部に回転自在に軸支されている。また、前部枠体1a、1bのそれぞれの上端部には、背部枠体3a、3bが固定されるとともに、後部枠体2a、2bの上端部が回動自在に支持・接続される接続部材12a、12bが設けられている。
【0022】
後部枠体2a、2bそれぞれの下端部には、前後方向に回転自在な車輪10が枢着されている。また、後部枠体2a、2bのそれぞれの上端部は、前部枠体1a、1bの上端部に設けられた接続部材12a、12bに所定角度回動自在となるように接続されている。
【0023】
背部枠体3a、3bの上端部にはハンドル部11が設けられ、背部枠体3a、3bのそれぞれの下端部は接続部材12a、12bに固定されている。
【0024】
可動部材4a、4bは、前部枠体1a、1bの長手方向に沿って、接続部材12a、12bの下端部から前部枠体1a、1bの途中までの間を可動自在となるように設けられている。また、可動部材4a、4b間には、可動部材4a、4bを前部枠体1a、1bの所定位置でロックするロック機構20が架設されている。
【0025】
ロック機構20は、可動部材4a、4bを可動部材4a、4bを一体的にかつ連通自在に連結する連結水平パイプ21と、連結水平パイプ21の中空部内に摺動自在に収納された左右一対の棒状のロックピン(図示せず)と、該ロックピンのそれぞれに固定され、かつ連結水平パイプ21の所定個所に軸心方向に形成したスロット23a、23bから外側に突出する操作ノブ22a、22bと、を備えているものである。また、前部枠体1a、1bの対向面側には、上記ロックピン(図示せず)と協働する複数の位置決め穴(図示せず)が前部枠体1a、1bの長手方向に形成されており、可動部材4a、4bについて前部枠体1a、1bに対する高さ位置を調整した上で、各操作ノブ22a、22bを操作して、各ロックピンの先端部を前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に差し込むことにより、可動部材4a、4bを前部枠体1a、1bに固定可能にしたものである。また、ロック機構20は、上述した左右一対のロックピン(図示せず)の間に配設されているとともに各ロックピンを対向する前部枠体1a、1b方向に向けてそれぞれ弾性的に付勢する圧縮バネ又はゴム部材などの圧縮弾性部材を備えており、左右の操作ノブ22a、22bを寄せた状態で、各ロックピンの先端部を各前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に位置決めしたあと、左右の操作ノブ22a、22bを離すことによって各ロックピンの先端部を前部枠体1a、1bの該当位置決め穴に差し込むことができるようになっている。
【0026】
枠部材5は、略コ字状の部材であって、シートを張ることによって座部としたり、袋状シートの縁部を取り付けることによって荷物入れ部の一部としたりすることができるようになっている。図1においては、シートを張って座部としたものを示している。
【0027】
第1連結杵6a、6bは、各一端部が枠部材5の各側部に回動自在に接続され、各他端部が各可動部材4a、4bに回動自在に接続されているものである。
【0028】
第2連結杵7a、7bは、各一端部が各後部枠体2a、2bの略中間部に回動自在に接続され、各他端部が各可動部材4a、4bに回動自在に接続されているものである。
【0029】
駐車ブレーキ機構は、主に、ボタン部30、取付部34a、摺動部材40、巻きバネ41(圧縮弾性部材)、係合部42とを備えている。
【0030】
取付部34a、34bは、図3に示すように、ハンドル部11の両側部それぞれに取り付けられている。取付部34aには、軸32がハンドル部11長手方向外側に向かって設けられ、取付部34bには、軸33がハンドル部11長手方向外側に向かって設けられている。また、略コ字状のレバー部31が、ハンドル部11長手方向に沿って設けられており(図1参照)、軸32、33を中心にハンドル部11回りに所定角度回動できるように、軸32にレバー部31の一端部31aが支持されているとともに軸33にレバー部31の他端部31bが支持されている(図3参照)。また、レバー部31の一端部31aには、図4に示すように、ブレーキ用ワイヤー部35におけるワイヤーの一端が接続されており、取付部34から下方へ延設されている。また、図3に示すように、レバー部31の一端部31aの外側において、ボタン部30が、軸32の長手方向に沿って摺動できるように、軸32の周りに設けられている。
【0031】
ボタン部30は、内壁に、軸32と略垂直方向に形成された溝部30aと、レバー部31の一端部31aの下方への回動を一時的に停止させている突部30bとを有したものである。なお、溝部30aの幅は、レバー部31の一端部31a先端部の厚みより大きくなるように構成されており、ボタン部30の押動に伴って溝部30aが取付部34a側にスライドすることによって、レバー部31の一端部31a先端部が嵌挿されるとともにレバー部31が下方へ回動できるようになっている。また、ボタン部30を取付部34aから遠ざかる方向に向けて付勢する巻きバネ36(圧縮弾性部材)が、軸32の周囲に設けられている。これにより、レバー部31の一端部31a先端部が、ボタン部30の溝部30aに嵌挿されている際、レバー部31を溝部30aに嵌挿するように回動する方向と逆方向(ここでは、上方)に回動するように操作者が操作することで、溝部30aからレバー部31の一端部31a先端部を抜き出すとともに、巻きバネ36の付勢力によってボタン部30を取付部34aから遠ざかる方向に向けて自動的に移動させることができる。ここで、一変形例として、巻きバネ36の代わりに、同機能を有したゴム部材などの圧縮弾性部材を用いてもよい。
【0032】
摺動部材40は、図5に示すように、後部枠体2a下部の車輪10に隣接する位置において後部枠体2aの長手方向(図5の矢印方向)に摺動自在に取り付けられている摺動部材本体40aと、ブレーキ用ワイヤー部35におけるワイヤーの他端が接続固定されているブレーキ用ワイヤー接続部40bと、ブレーキ用ワイヤー接続部から延出している方向と逆方向に突出した突出部40cと、突出部40cが設けられている側と反対側に設けられた通常ブレーキ用の摩擦抵抗部40dとを有しているものである。なお、駐車ブレーキ機構が動作していない場合、摩擦抵抗部40dは、ブレーキ用ワイヤー部35におけるワイヤーを引っ張るようにレバー部31を所定角度回動させる操作を行い、摺動部材40を上方へ摺動させることにより、車輪10内側に接触できるようになっており、本実施形態においては、一般的なブレーキ機構をも併せ持っている。
【0033】
巻きバネ41は、図5に示すように、一端が摺動部材40に接続され、他端が、ブレーキ用ワイヤー接続部40bからブレーキ用ワイヤー部35におけるワイヤーが延出している方向と逆方向に摺動部材40を付勢するように後部枠体2aに接続されているものである。ここで、一変形例として、巻きバネ41の代わりに、ゴム部材などの圧縮弾性部材を用いてもよい。
【0034】
係合部42は、図5に示すように、車軸43を中心に放射状に形成されているものであるとともに、車輪10の車輻部10a(図5では図示せず。図2参照)内側に固設され、摺動部材40の突出部40cと係合できるようになっているものである。
【0035】
次に、図1、図4、図5を参照しつつ、本実施形態に係る駐車ブレーキ機構の駐車ブレーキ動作及び駐車ブレーキ解除動作の一例について説明する。
【0036】
(駐車ブレーキ動作)
まず、ボタン部30を所定位置まで押動して、駐車ブレーキ機構の動作前の状態(図1及び図4(a)参照)から、ブレーキ用ワイヤー部35を介した巻きバネ41の付勢力を利用して、レバー部31の一端部31a先端部を溝部30aに嵌挿させるとともに、レバー部31が下方へ所定角度回動するように動作させる(図4(b)参照)。これに連動して、図5に示した状態から、摺動部材40が車輪10側に向かって移動し、摺動部材40の突出部40cと係合部42とが係合するので、車輪10の回転が係止される。これにより、手押し車100の駐車が行われることになる。
【0037】
(駐車ブレーキ解除動作)
まず、駐車ブレーキ機構の動作後の状態(図4(b)参照)から、レバー部31を上方に引き上げる操作を行い、ブレーキ用ワイヤー部35を介して摺動部材40の突出部40cと係合部42との係合を解除し、各部位を図5に示した状態にする。このとき、ボタン部30は、巻きバネ36の付勢力によって、駐車ブレーキ機構の動作前の状態(図4(a)参照)に戻る。続いて、レバー部31の操作を停止することで、レバー部31の一端部31a先端部が突部30bの先端部に当接し、レバー部31が下方へ回動しないように掛止される。これにより、手押し車100の駐車が解除され、走行可能になる。
【0038】
本実施形態によれば、従来に比べて簡単な操作、すなわち、ボタン部30を押動する操作を行うだけで駐車状態にすることが可能な手押し車100の駐車ブレーキ機構を提供できる。また、ハンドル部11に手を添えたまま、容易に操作することが可能であるので、安全性の面でも従来に比べ高いものとなっている。
【0039】
また、レバー部31を引き上げるという簡単な操作だけで、駐車ブレーキを解除することが可能な手押し車100の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0040】
また、操作者がレバー部31を引き上げ続けている限りブレーキをかけ続けたり、操作者がレバー部31を離すことで、かけ続けていたブレーキを解除したりすることができる通常のブレーキ機能を兼ね備えた手押し車100の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0041】
<第2実施形態>
次に、図6〜図9を参照して、本発明の第2実施形態に係る駐車ブレーキ機構を説明する。なお、本実施形態に係る駐車ブレーキ機構における取付部、ボタン部、及びレバー部以外の部位は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略することがある。
【0042】
本実施形態に係る駐車ブレーキ機構は、図6に示すように、グリップ62が両先端部に設けられた略コ字形状のハンドル部61における一端部に取り付け可能な取付部51と、略中央部を中心として回動するように取付部51に設けられたボタン部52と、取付部51内部に設けられた軸部51aに回動可能に支持されているレバー部53とを備えているものである。なお、ハンドル部61は、各種の手押し車に取り付けることが可能なものである。
【0043】
ボタン部52は、図7(b)に示すように、断面が略への字状のものである。取付部51とボタン部52との間には、ボタン部52の押動方向(図7(b)矢印参照)と逆方向に向けて付勢するバネ部材55が設けられている。ここで、一変形例として、バネ部材55の代わりに、ゴム部材などの圧縮弾性部材を用いてもよい。
【0044】
レバー部53は、図8(b)に示すように、ボタン部52の押動可能な方向に対して略垂直方向に回動するように軸部51aに支持されている一端部53a、及び、ボタン部52の下部に掛合することが可能であるとともにブレーキ用ワイヤー部54におけるワイヤーが接続された他端部53bを有した本体部と、該本体部の略中央から延設された取っ手部53cとを備えているものである。なお、ブレーキ用ワイヤー部54におけるワイヤーは、第1実施形態と同様の摺動部材(図5に示した摺動部材40と同構成のもの)に固定接続されている。なお、駐車ブレーキ機構が動作していない場合、第1実施形態と同様の摩擦抵抗部(図5に示した摩擦抵抗部40dと同構成のもの)は、ブレーキ用ワイヤー部54におけるワイヤーを引っ張るようにレバー部53を所定角度回動させる操作を行い、該摺動部材を上方へ摺動させることにより、第1実施形態と同様の車輪(図5に示した車輪10と同構成のもの)内側に接触できるようになっており、本実施形態においては、一般的なブレーキ機構をも併せ持っている。
【0045】
次に、図7〜図9を参照しつつ、本実施形態に係る駐車ブレーキ機構の駐車ブレーキ動作及び駐車ブレーキ解除動作の一例について説明する。
【0046】
(駐車ブレーキ動作)
まず、図7(b)に示した矢印方向にボタン部52を押動して、駐車ブレーキ機構の動作前の状態(図7及び図9(a)参照)から、ブレーキ用ワイヤー部54を介した巻きバネ(図5に示した巻きバネ41と同構成のもの)の付勢力を利用して、ボタン部52に掛合していたレバー部53の他端部をボタン部52から外す(図9(b)参照)。これに連動して、レバー部53が回動することにより、摺動部材が車輪(図5に示した車輪10と同構成のもの)側に向かって移動し、摺動部材の突出部(図5に示した突出部40cと同構成のもの)と係合部(図5に示した係合部42と同構成のもの)とが係合するので、該車輪の回転が係止される。これにより、手押し車の駐車が可能となる。
【0047】
(駐車ブレーキ解除動作)
まず、駐車ブレーキ機構の動作後の状態(図9(b)参照)から、レバー部53の取っ手部53cを所定位置まで上方に引き上げる操作を行い、ブレーキ用ワイヤー部54におけるワイヤーを引っ張って摺動部材40の突出部40cと係合部42との係合を解除し、第1実施形態と同様、各部位を図5に示した状態にする。このとき、ボタン部52は、バネ部材55の付勢力によって押動方向と逆方向に回動し、駐車ブレーキ機構の動作前の状態(図7及び図9(a)参照)に戻る。続いて、レバー部53の操作を停止することで、レバー部53の他端部53bがボタン部52に当接し、レバー部53が下方へ回動しないように掛合又は掛止される。これにより、手押し車の駐車が解除され、走行可能になる。
【0048】
本実施形態の構成によれば、従来に比べて簡単な操作、すなわち、ボタン部52を押動する操作を行うだけで駐車状態にすることが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。また、グリップ62に手を添えたまま、容易に操作することが可能であるので、安全性の面でも従来に比べ高いものとなっている。
【0049】
また、レバー部53を引き上げるという簡単な操作だけで、駐車ブレーキを解除することが可能な手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0050】
また、操作者がレバー部53を引き上げ続けている限りブレーキをかけ続けたり、操作者がレバー部53を離すことで、かけ続けていたブレーキを解除したりすることができる通常のブレーキ機能を兼ね備えた手押し車の駐車ブレーキ機構を提供できる。
【0051】
また、レバー部53が従来から存在するブレーキ構造の形状の一つであるので、若年者、お年よりなど様々な人にとって操作しやすい駐車ブレーキ機構を提供することができる。
【0052】
<変形例>
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記各実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態においては、取付部をハンドル部に取り付けたものとしたが、これに限られず、取付部の形状を取り付けたい部位の形状に合わせたものとして、駐車ブレーキ機構の操作を手押し車の様々な部位においてできるようにしてもよい。
【0053】
また、上記各実施形態においては、手押し車における車輪のうち一つの車輪の回転だけを止めて駐車できる駐車ブレーキ機構を示したが、手押し車における車輪のうち他の車輪の回転だけを止めて駐車できる駐車ブレーキ機構としてもよいし、手押し車における車輪のうち2輪以上の回転を止めて駐車できる駐車ブレーキ機構としてもよい。なお、後方車輪両輪の回転を止めて駐車できる駐車ブレーキ機構を採用する場合、片手ずつ独立して操作できる左右一対の駐車ブレーキ機構を設けることが安全性の点から好ましい。
【符号の説明】
【0054】
1a、1b 前部枠体
2a、2b 後部枠体
3a、3b 背部枠体
4a、4b 可動部材
5 枠部材
6a、6b 第1連結杵
7a、7b 第2連結杵
8 首振り機構
9、10 車輪
10a 車輻部
11、61 ハンドル部
12a、12b 接続部材
21 連結水平パイプ
22a、22b 操作ノブ
23a、23b スロット
20 ロック機構
30、52 ボタン部
30a 溝部
30b 突部
31、53 レバー部
32、33 軸
34a、34b、51 取付部
35、54 ブレーキ用ワイヤー
36、41 巻きバネ
40 摺動部材
40a 摺動部材本体
40b ブレーキ用ワイヤー接続部
40c 突出部
40d 摩擦抵抗部
42 係合部
43 車軸
51a 軸部
53a 一端部
53b 他端部
53c 取っ手部
55 バネ部材
62 グリップ
100 手押し車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定箇所に取り付け可能な取付部と、
前記取付部に所定方向に押動可能に設けられたボタン部と、
前記取付部に設けられた軸に対して回動可能となるように一端部が支持されているとともに、前記ボタン部の少なくとも一部に接することが可能な部位を有したレバー部と、
前記レバー部にブレーキ用ワイヤーを介して接続されているブレーキ用ワイヤー接続部と、前記ブレーキ用ワイヤー接続部から延出している方向と逆方向に突出した突出部とを有し、手押し車の枠体に沿って摺動自在に取り付け可能な摺動部材と、
一端が前記摺動部材に接続され、他端が前記ブレーキ用ワイヤー接続部から前記ブレーキ用ワイヤーが延出している方向と逆方向に前記摺動部材を付勢するように前記手押し車の枠体に接続可能な圧縮弾性部材と、
前記手押し車の車輪に設けられ、前記摺動部材の前記突出部と係合可能な係合部とを備え、
前記ボタン部が所定位置まで押動された際、前記摺動部材が前記車輪に向かって移動するように、前記レバー部が前記ブレーキ用ワイヤーを介した前記圧縮弾性部材の付勢力によって所定角度回動して停止するとともに、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部とが係合し前記車輪の回転を係止するように構成されていることを特徴とする手押し車の駐車ブレーキ機構。
【請求項2】
前記軸が、前記ボタン部の内部に前記ボタン部の押動可能な方向に沿って配置され、
前記ボタン部が、内壁において前記軸と略垂直方向に形成された溝部を有したものであり、
前記ボタン部が所定位置まで押動された際、前記レバー部の一端部の先端が前記溝部に嵌挿されるとともに前記レバー部が回動するように、前記ブレーキ用ワイヤーが前記レバー部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の手押し車の駐車ブレーキ機構。
【請求項3】
前記軸の周囲に設けられ、前記ボタン部を前記取付部から遠ざかる方向に向けて付勢する別の圧縮弾性部材を備えており、
前記レバー部の一端部の先端が前記ボタン部の前記溝部に嵌挿されている際、前記レバー部を前記溝部に嵌挿するように回動する方向と逆方向に回動するように操作することで、前記溝部から前記レバー部の一端部の先端を抜き出すとともに、前記別の圧縮弾性部材の付勢力によって前記ボタン部を前記取付部から遠ざかる方向に向けて移動させて、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部との係合を解除した後、前記レバー部の位置を保持することが可能な部位を前記ボタン部が有していることを特徴とする請求項2に記載の手押し車の駐車ブレーキ機構。
【請求項4】
前記ボタン部が、略中央部を中心として回動するように前記取付部に設けられ、
前記レバー部が、前記ボタン部の押動可能な方向に対して略垂直方向に回動するように前記軸部に支持されている一端部、及び、前記ボタン部に掛合することが可能であるとともに前記ブレーキ用ワイヤーが接続された他端部を有した本体部と、前記本体部の略中央から延設された取っ手部とを含むものであり、
前記ボタン部が所定位置まで押動され回動した際、前記ボタン部に掛合していた前記レバー部の他端部が前記ボタン部から外れるとともに、前記レバー部が前記ブレーキ用ワイヤーを介した前記圧縮弾性部材の付勢力を利用して回動することによって前記摺動部材を摺動させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の手押し車の駐車ブレーキ機構。
【請求項5】
前記ボタン部と前記取付部との間に設けられ、前記ボタン部の押動方向と逆方向に向けて付勢する別の圧縮弾性部材を備え、
前記摺動部材の前記突出部と前記係合部とが係合し前記車輪の回転を係止している場合であって、前記レバー部の取っ手部を所定位置まで操作することによって前記ブレーキ用ワイヤーが引っ張られ、前記摺動部材の前記突出部と前記係合部との係合が解除された際、前記別の圧縮弾性部材の付勢力を利用して前記ボタン部の押動方向と逆方向に前記ボタン部が回動し、前記レバー部の他端部を前記ボタン部に掛合するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の手押し車の駐車ブレーキ機構。
【請求項6】
前記摺動部材の前記突出部が設けられている側と反対側に、ブレーキ用の摩擦抵抗部が設けられており、
前記ブレーキ用ワイヤーを引っ張るように前記レバー部を所定角度回動させる操作を行って前記摺動部材を摺動させることにより、前記摩擦抵抗部が前記車輪に接触可能となるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の手押し車の駐車ブレーキ機構。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−247593(P2010−247593A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97512(P2009−97512)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(598087841)株式会社幸和製作所 (10)
【Fターム(参考)】