説明

手術用吸引管

【課題】出血している血管組織を効果的に圧迫止血する機能を備え、効率良く出血を吸引可能な手術用吸引管を提案すること。
【解決手段】手術用吸引管1を手術箇所に挿入し、半球面状の先端面3aをその血管組織11の部分に押し付けて出血を吸引する。出血は、多孔質素材からなる吸引管先端部分3の微細孔に毛細管力によって吸い込まれ、中空部2bを介して外部に吸引される。微細孔が血管組織11に接触しているので、血管組織11の一部が吸引力によって引き剥がされて吸引されてしまうことがなく、血管組織が吸引されて傷が付き出血がかえって多くなる等の弊害の発生を防止できる。吸引した血管組織が吸引孔に詰まって吸引できなくなることもない。手術箇所の血管組織11は半球面形状の先端面3aによって圧迫されているので、出血を吸引しながら、当該血液組織11の出血部分を圧迫止血することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡下手術、皮膚外科手術、口腔内手術、骨関節手術、胸腔手術、腹腔手術、脳内手術、頭頸部手術などの手術において、手術箇所から血液や洗浄液などの液体を吸引して除去するために用いる手術用吸引管に関する。
【背景技術】
【0002】
手術用吸引管は、一般に、細長い円筒状の吸引管からなり、この吸引管の先端部には多数の吸引孔が形成されているものもある。手術用吸引管には吸引ポンプなどの負圧源が接続されており、手術用吸引管の先を患者の手術箇所に挿入して位置決めすると、手術箇所からの出血、そこに溜まっている洗浄液などが吸引孔から吸引管本体部分の内部に吸引され、吸引管本体部分を通って外部に除去される。
【0003】
ここで、血液などの吸引時に、出血している血管組織やその周囲組織を同時に吸い込んでしまうと、組織が吸引孔あるいは吸引管本体部分の内部に詰まり、血液などを吸引できなくなってしまう。また、血管組織が吸引されることにより、出血箇所の血管部分が大きく開き、出血を増加させてしまうおそれもある。
【0004】
吸引孔の詰まりなどを防止するために、特許文献1に開示の吸引器においては、吸引管の先端部の吸引用の穴を筒状のスポンジのカバーで覆うようにしている。吸引管の吸引用の穴がスポンジで覆われているので、吸引用の穴が手術箇所の血管組織に直接に接触して目詰まりが発生することを回避でき、血液などの吸引性能を維持できる。
【0005】
また、特許文献2に開示の手術用吸引ノズルにおいては、先端に吸引口を備えた吸引管を筒状カバーによって同軸状態に囲むようにしている。筒状カバーによって吸引管が手術箇所の人体組織に直接に接触しないので、血管組織などが吸引により損傷を受けることを防止でき、吸引口が目詰まりしてしまうことも防止できる。
【0006】
さらに、特許文献3に開示の医療用吸引管においては、当該吸引管を多重の筒構造とし、外側の筒に形成した多数の孔から吸引された血液などの液体を毛細管力によって内側の筒に形成した孔に導き、内側の筒の内側を吸引することにより、内側の筒内に入り込んだ液体を吸引して外部に排出するようにしている。手術箇所の人体組織に接触する外側の筒の孔には大きな吸引力が作用しないので、人体組織の一部が吸引されて損傷を受けたり、吸引された組織によって孔が詰まるという弊害を防止できる。
【特許文献1】実開平7−22743号公報
【特許文献2】特開平9−299475号公報
【特許文献3】特開2001−231850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の手術用吸引管においては、その問題点として、吸引用の孔が人体組織に直接に触れて人体組織が吸引されて損傷が生ずる点、および、吸引された組織によって吸引用の孔が目詰まりして吸引性能が低下する点に着目され、これらの問題点を解決するために各種の提案がなされている。
【0008】
ここで、手術用吸引管は手術箇所に先端部が位置決めされるので、この先端部分を利用して、手術箇所における出血している血管組織を効果的に圧迫しながら止血凝固を行うことができると便利である。また、出血している血管組織を拡大視できる機能が付いていると便利である。しかしながら、このような点については従来においては何ら着目されておらず、したがって、そのための提案も何らなされていない。
【0009】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、出血している血管組織を効果的に圧迫止血する機能を備えた手術用吸引管を提案することにある。
【0010】
また、本発明の課題は、血管組織を拡大視する機能を備えた手術用吸引管を提案することにある。
【0011】
さらに、本発明の課題は、上記の各機能と共に、人体組織を吸い込むことがなく、人体組織を傷つけることがなく、しかも、吸引用の孔に目詰まりが生ずることがない手術用吸引管を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の手術用吸引管は、
筒状の吸引管本体部分と、
この吸引管本体部分の先端開口を封鎖している吸引管先端部分と、
前記吸引管本体部分の中空部に連通している複数の吸引孔とを有し、
前記吸引管先端部分の先端面形状は、球面などの凸曲面によって規定されており、
前記吸引孔は、前記吸引管本体部分の外周面部分、前記吸引管先端部分、および、前記吸引管本体部分と前記吸引管先端部分の境界部分のうち、少なくとも一つの部分に形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の手術用吸引管の先端面は凸曲面となっている。したがって、血液などの吸引時に、その先端面で手術箇所における出血している血管部分を圧迫することにより、出血部分を圧迫止血することができる。また、先端面により血管部分を圧迫しても、凸曲面となっているので血管組織に傷が付くこともない。例えば、前記吸引管先端部分を、中空あるいは中実の球状体あるいは半球状体とすればよい。
【0014】
また、本発明の手術用吸引管では、前記吸引管先端部分が透明な素材から形成されており、当該吸引管先端部分の前記先端面は凸レンズ面であることを特徴としている。例えば、前記吸引管先端部分に球状レンズを形成することができる。
【0015】
手術用吸引管の先端部分に凸レンズを形成しておけば、出血している血管組織を当該凸レンズを介して拡大視することができる。したがって、吸引管先端部分の先端面によって圧迫止血した血管を、当該吸引管先端部分を介して拡大した直視下で、止血凝固させる操作を行うことができる。
【0016】
ここで、本発明においては、前記吸引管本体部分と前記吸引管先端部分の境界部分を、前記吸引管先端部分に比べて括れた部分となるようにし、当該境界部分に前記吸引孔を形成しておくことが望ましい。
【0017】
吸引孔を手術用吸引管の先端ではなく、それよりも後側の部位における括れた部分に形成しておくと、吸引孔が直接に血管組織に接触することを回避できる。したがって、吸引孔に血管組織が吸引され、血管組織が傷ついてしまうという弊害を回避できる。また、血管組織を吸引することがないので、吸引孔が血管組織で封鎖されて目詰まり状態になり、血液などを吸引する能力が低下するという弊害も回避できる。さらには、括れた境界部分によって形成される空間に出血が溜まり、溜まった血液が吸引孔を介して吸引されるので、血液組織を吸引孔の中に吸い込んでしまうことを確実に防止できる。
【0018】
次に、本発明においては、前記吸引管先端部分と前記吸引管本体部分の境界部分に、前記吸引管本体部分の中空部に繋がる複数個の吸引孔が形成されており、前記吸引管先端部分の表面の少なくとも一部分に、毛細管力によって液体が移動可能な微細溝が多数形成されており、各微細溝の一端が前記境界部分まで延びていることが望ましい。
【0019】
このように血管組織に直接に接触あるいは圧迫させる吸引管先端部分の表面に微細溝を形成しておけば、これらの微細溝を介して血液を効率良く吸引孔が形成されている位置まで移動させることができる。したがって、血液などの液体の吸引性能を高めることができる。
【0020】
また、上記のような吸引孔を形成する代わりに、前記吸引管先端部分を、毛細管力によって液体を吸引可能な多数の微細孔が内部に形成されている多孔質素材から形成し、これらの微細孔を前記吸引孔として機能させ、これらの微細孔を介して吸引された液体を前記吸引管本体部分の前記中空部に導くこともできる。この場合においても、血液組織に直接に接触している吸引管先端部分の微細孔を介して効率良く血液などの液体を吸引できる。また、毛細管力が発生する程度の微細孔であるので、血管組織を吸い込むことはないので、直接に血管組織に接触していても血管組織が傷つくおそれもない。特に、先端面が凸曲面とされているので、血管組織の損傷を確実に防止できる。
【0021】
一方、本発明の手術用吸引管では、前記吸引管本体部分と前記吸引管先端部分は単一部品として形成することができる。
【0022】
この代わりに、これらを別個に製作しておき、前記吸引管本体部分の前記先端開口に、別個に成形した前記吸引管先端部分を固定してもよい。この場合、前記吸引管先端部分に、前記吸引管本体部分の前記先端開口に差し込み固定されている連結用の軸部を形成しておき、この軸部の外周面と前記吸引管本体部分の内周面の間に複数の連通溝を形成し、これらの連通溝における前記吸引管本体部分の先端開口側の端を前記吸引孔として機能させ、これらの連通溝の他端を前記吸引管本体部分の中空部に連通させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の手術用吸引管を用いると、血液を吸引孔から吸引しながら、その凸曲面の先端面によって出血している血管組織を効果的に圧迫しながら止血できるという作用効果が得られる。
【0024】
また、凸レンズとして機能する吸引管先端部分を備えている場合には、血液を吸引しながら、出血部分を拡大視しながら出血部分を圧迫止血できるという作用効果が得られる。
【0025】
さらに、吸引管本体部分と吸引管先端部分の境界部分を括れた部分とし、ここに吸引孔を設けた場合には、吸引孔に血管組織が直接接触することがなく、括れた境界部分に溜まった血液が吸引孔から吸引される。よって、血管組織の損傷、血管組織の吸引、血管組織による吸引孔の目詰まりのいずれも起こすことなく、血液などの液体を手術箇所から吸引できるという作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した手術用吸引管の実施の形態を説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1(a)および(b)は実施の形態1に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。実施の形態1に係る手術用吸引管1は、円筒状の吸引管本体部分2と、この吸引管本体部分2の円形の先端開口2aを封鎖している吸引管先端部分3とを備えている。吸引管先端部分3は、吸引管本体部分2の外径寸法とほぼ同一の直径の半球形状のものであり、半球面状の先端面3aを備えている。
【0028】
吸引管本体部分2は例えばプラスチック成形部品であり、吸引管先端部分3は、毛細管力によって血液などの液体を吸引可能な大きさの多数の微細孔が内部に形成されている多孔質素材からなる部品である。この吸引管先端部分3は、その平坦な円形の後端面3bが、吸引管本体部分2の先端開口2aに同軸状態で、溶着、接着接合、その他の方法により固定されている。
【0029】
この構成の手術用吸引管1を手術箇所に挿入し、半球面状の先端面3aをその血管組織11の部分に押し付け、この状態で出血を吸引する。出血は、多孔質素材からなる吸引管先端部分3に形成されている微細孔に毛細管力によって吸い込まれる。微細孔は内部において、円形の後端面3bから吸引管本体部分2の内部の中空部2bに繋がっている。この中空部2bには不図示の吸引ポンプによる吸引力が作用しており、負圧状態になっている。したがって、中空部2bに導かれた血液はここを通って吸引される。
【0030】
吸引管本体部分2に形成した大きな吸引孔が直接に血管組織11に接触して吸引動作を行う場合とは異なり、毛細管力が作用する微細孔が血管組織11に接触しており、血管組織11の一部が吸引力によって引き剥がされて吸引されてしまうことがない。よって、血管組織が吸引されて傷が付き出血がかえって多くなる等の弊害の発生を防止できる。また、吸引した血管組織が吸引孔に詰まって吸引できなくなることもない。さらに、手術箇所の血管組織11は半球面形状の先端面3aによって圧迫されているので、出血を吸引しながら、当該血液組織11の出血部分を圧迫止血することができる。
【0031】
ここで、多孔質素材からなる吸引管先端部分3の形状は半球形状に限らず、凸曲面を備えた形状のものであればよい。例えば、図2(a)、(b)に側面図および縦断面図を示す手術用吸引管1Aのように、球状体の吸引管先端部分3Aを取り付けても良い。なお、手術用吸引管1Aのその他の構成は図1の手術用吸引管1と同一であるので、図2における対応する部位には同一の符号を付してある。
【0032】
また、図1および図2の実施の形態では、多孔質素材からなる吸引管先端部分3、3Aをそれぞれ、中実の半球体、中実の球状体としてあるが、中空状のものとすることもできる。例えば、図3(a)、(b)に側面図および縦断面図を示す手術用吸引管1Bのように、吸引管先端部分3Bを中空の球状体としてもよい。なお、手術用吸引管1Bのその他の構成は図1の手術用吸引管1と同一であるので、図3における対応する部位には同一符号を付してある。
【0033】
(実施の形態2)
図4(a)および(b)は実施の形態2に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。実施の形態2の手術用吸引管20は、円筒状の吸引管本体部分22と、この吸引管本体部分22の円形の先端開口22aを封鎖している吸引管先端部分23とを備えている。吸引管先端部分23は、吸引管本体部分22の外径寸法とほぼ同一の直径の半球形状のものであり、半球面状の先端面23aを備えている。
【0034】
吸引管本体部分22および吸引管先端部分23は、例えば単一のプラスチック成形品である。これらを個別に成形して相互に接合してもよい。吸引管先端部分23の表面には、その先端面23aの頂点23cを中心として一定の角度間隔で平坦な円環状の後端面33bまで延びる多数本の微細溝23eが形成されている。微細溝23eは、毛細管力によって血液などの液体が移動可能な大きさの溝である。
【0035】
また、吸引管本体部分22の円形の先端開口22aの円環状端面は、その円周方向に沿って一定の角度間隔で半円形に切り欠かれており、この円環状端面と吸引管先端部分33の平坦な円環状後端面33bとの間に、複数個の吸引孔24が形成されている。各吸引孔24は内部の中空部22bに繋がっている。
【0036】
この構成の手術用吸引管20では、手術箇所の血管組織11を半球面状の先端面23aによって圧迫しながら血液を吸引して除去し、また、圧迫止血を施すことができる。血管組織11の出血は吸引管先端部分23の半球面状の先端面23aに形成されている多数状の微細溝23dに吸い取られ、微細溝23dに沿って吸引孔24の側に導かれ、吸引孔24に作用している吸引力によって吸引管本体部分22の中空部22bに吸い込まれた後、中空部22を通って外部に排出される。この構成の手術用吸引管20によっても、実施の形態1の手術用吸引管1と同様な作用効果が得られる。
【0037】
ここで、表面に微細溝が形成されている吸引管先端部分23の形状は半球形状に限らず、凸曲面を備えた形状のものであればよい。例えば、図5(a)、(b)および(c)に側面図、縦断面図および正面図を示す手術用吸引管20Aのように、球状体の吸引管先端部分23Aを取り付けても良い。なお、手術用吸引管20Aのその他の構成は図4の手術用吸引管1と同一であるので、図5における対応する部位には同一の符号を付してある。
【0038】
この構成の手術用吸引管20Aにおいては、吸引管本体部分22の外径寸法に比べて、吸引管本体部分23Aの直径が大きい。したがって、吸引孔24が形成されている部分、すなわち、吸引管本体部分22と吸引管先端部分23Aの境界部分が、吸引管先端部分23Aに比べて小径となった括れ状態になっている。したがって、手術箇所に挿入されて、吸引管本体部分23Aがその血管組織を圧迫した状態においては、吸引孔24が形成されている部分が直接に血管組織に接触して血管組織の一部が吸引されてしまうことがなく、吸引孔24に目詰まりが生ずることもない。さらに、吸引孔24と血管組織の間には隙間が生じ、ここに、血管組織の出血が溜まる。したがって、当該隙間に位置している吸引孔24から効率良く出血を吸引して外部に排出できるという作用効果が得られる。
【0039】
なお、図4、5に示す例では、吸引管先端部分23、23Aを中空のものとしてあるが、中実のものとすることも可能である。
【0040】
(実施の形態3)
図6(a)および(b)は、実施の形態3に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。実施の形態3の手術用吸引管30は、基本的に、図5に示す手術用吸引管20Aと同様である。異なる点は、吸引管本体部分32の先に取り付けた吸引管先端部分33の表面に微細溝が形成されていないことと、吸引管先端部分33が透明な素材から形成された中実の凸レンズ体(球状レンズ)となっていることである。
【0041】
この構成の手術用吸引管30においては、その球体状の吸引管先端部分33の球状面33aによって血管組織を圧迫しながら出血を吸引孔34を介して吸引できる。また、出血している血管組織の部分を、吸引管先端部分33を介して拡大して直視しながら吸引操作および圧迫止血操作を行うことができる。よって、これらの操作を正確に行うことができるという作用効果が得られる。また、図5に示す手術用吸引管20Aと同様な作用効果も得られる。
【0042】
ここで、吸引管先端部分33は、先端面が凸曲面形状のものであれば、球状体以外の凸レンズ形状でもよい。例えば、図7(a)および(b)に側面図および縦断面図を示す手術用吸引管30Aでは、吸引管先端部分33Aが半球状の前側部分331と、この後側の取り付け円錐台状の後側部分332とを備えた中空体から形成されている。また、前側部分331にはその中心に向けて肉厚が漸増した凸レンズ部分が形成されている。
【0043】
また、図6の手術用吸引管30においては、吸引管本体部分32と吸引管先端部分33を、接着、溶着などの方法により固定することができる。これらの間の固定方法としては、はめ込み構造を採用することも可能である。
【0044】
例えば、図8に示す手術用吸引管30Bのように、吸引管先端部分33Bとして、球状体333と、この外周面から半径方向に突出している十字状断面の軸部334とを備えた形状のものとし、軸部334の根元部分のみを残し、吸引管本体部分32の先端開口32aから中空部32b内にはめ込み固定してもよい。勿論、接着剤を併用してもよい。この結果、軸部334と、吸引管本体部分32の内周面との間に連通溝35が形成される。本例では4条の連通溝35が形成される。これらの連通溝35は、吸引管本体部分32の先端開口32aが外部に露出しており、これらが吸引孔34として機能する。また、これらの連通溝35の他端は吸引管本体部分32の中空部32bに連通している。
【0045】
また、図9に示す手術用吸引管30Cのように、吸引管先端部分33Cとして、球状体343と、この外周面から半径方向に突出している円筒状の連結筒344とを備えた形状のものとし、この連結筒334に、吸引管本体部分32の先端開口32aの側の部分を差し込むようにしてもよい。この場合には、図6の場合と同様に、球状体343と連結筒344の間の部位に、円周方向に沿って所定の角度間隔で吸引孔34を形成しておけばよい。
【0046】
図8、9に示すように、はめ込み式あるいは差し込み式の構造を採用すると、既存の吸引管を吸引管本体部分32として利用することができるので、便利である。
【0047】
(実施の形態4)
図10(a)および(b)は、本発明を適用した実施の形態4に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。実施の形態4に係る手術用吸引管40は、上記の実施の形態2と実施の形態3を組み合わせた構成のものである。すなわち、手術用吸引管40は、円筒状の吸引管本体部分42と、この先端開口42aに取り付けた中空の球体からなる吸引管先端部分43とを備えている。吸引管先端部分43の表面における前側半分の先端面は半球面431であり、この部分は透明な凸レンズ(球面レンズ)として機能する。これに対して、その後側半分の半球面432には多数の微細溝433が形成されている。
【0048】
吸引管本体部分42の先端開口42aを規定している円環状端面には円周方向に沿って一定の角度間隔で半円形に切り取られた切り欠き部が形成されており、ここに取り付けた吸引管先端部分43の後側の半球面432との間に複数個の吸引孔44が形成されている。微細溝433は吸引管本体部分の先端開口42aの円形端面に向かう溝であり、血液などの液体が毛細管力で移動できる微細なものである。
【0049】
この構成の手術用吸引管40では、半球面432によって血管組織を圧迫しながら、微細溝433によって効率良く出血を吸引孔44に向けて導き、ここから内部に吸引して排出することができる。
【0050】
(実施の形態の作用効果)
上記の各実施の形態によるメリットを以下に纏めて説明する。
【0051】
まず、第1のメリットは、出血する血管組織を吸い込んでしまい出血を吸引できなくなったり、出血を増加させることなく、吸引管の先端部分により効果的に圧迫止血できる、ということである。
【0052】
第2のメリットは、吸引管先端部分の凸レンズで出血する血管組織を拡大視できる、ということである。
【0053】
第3のメリットは、吸引管先端部分と吸引管本体部分の境界部分にできる間隙に出血した血液を集めることができる、ということである。
【0054】
第4のメリットは、吸引管先端部分と吸引管本体部分の境界部分に形成される括れ部分に吸引孔が形成されているので、血管組織を吸い込むことなく血液を吸引できる、ということである。
【0055】
さらに、第5のメリットは、吸引管先端部分の凸曲面で圧迫止血した血管を、透明球状レンズと組織の隙間より、拡大直視下に血管を止血凝固できる、ということである。
【0056】
(その他の実施の形態)
吸引管本体部分は直線状のものでなくてもよく、湾曲していてもよい。また、吸引管本体部分は円筒でなくてもよく、楕円形、多角形などの筒状であってもよい。
【0057】
さらに、本発明の手術用吸引管は、顕微鏡下手術、皮膚外科手術、口腔内手術、骨関節手術、胸腔手術、腹腔手術、脳内手術、頭頸部手術などの各種の手術に用いることができる。それぞれの場合に適合するように、吸引管本体部分の大きさ、吸引管先端部分の大きさ、吸引孔の大きさ、個数を適宜変更することにより、微小な手術から大きな手術まで対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。
【図2】実施の形態1の変形例を示す側面図および縦断面図である。
【図3】実施の形態1の変形例を示す側面図および縦断面図である。
【図4】実施の形態2に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。
【図5】実施の形態2の変形例を示す側面図および縦断面図である。
【図6】実施の形態3に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。
【図7】実施の形態3の変形例を示す側面図および縦断面図である。
【図8】実施の形態3の変形例を示す縦断面図および横断面図である。
【図9】実施の形態3の変形例を示す説明図である。
【図10】本発明を適用した実施の形態4に係る手術用吸引管を示す側面図および縦断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1、20、20A、30A、30B、30C、40 手術用吸引管
2、22、32、42 吸引管本体部分
2a、22a、32a 先端開口
2b、22b、32b、42b 中空部
3、23、23A、33、33A、33B、43 吸引管先端部分
3a 先端面
11 血管組織
23c 頂点
24、34、44 吸引孔
331 前側部分
332 後側部分
333 球状体
334 軸部
343 球状体
344 連結筒
431、432 半球面
433 微細溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の吸引管本体部分と、
この吸引管本体部分の先端開口を封鎖している吸引管先端部分と、
前記吸引管本体部分の中空部に連通している複数の吸引孔とを有し、
前記吸引管先端部分の先端面形状は、球面などの凸曲面によって規定されており、
前記吸引孔は、前記吸引管本体部分の外周面部分、前記吸引管先端部分、および、前記吸引管本体部分と前記吸引管先端部分の境界部分のうち、少なくとも一つの部分に形成されていることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項2】
請求項1に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管先端部分は、中空あるいは中実の球状体あるいは半球状体であることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項3】
請求項1に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管先端部分は透明な素材から形成されており、
当該吸引管先端部分の前記先端面は凸レンズ面であることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項4】
請求項3に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管先端部分には球状レンズが形成されていることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管本体部分と前記吸引管先端部分の境界部分は、前記吸引管先端部分に比べて括れた部分となっており、
当該境界部分に前記吸引孔が形成されていることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管先端部分と前記吸引管本体部分の境界部分に、前記吸引管本体部分の中空部に繋がる複数個の吸引孔が形成されており、
前記吸引管先端部分の表面の少なくとも一部分には、毛細管力によって液体が移動可能な微細溝が多数形成されており、
各微細溝の一端は前記境界部分まで延びていることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項7】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管先端部分は、毛細管力によって液体を吸引可能な多数の微細孔が内部に形成されている多孔質素材から形成されており、
これらの微細孔が前記吸引孔として機能し、これらの微細孔を介して吸引された液体が前記吸引管本体部分の前記中空部に導かれることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管本体部分と前記吸引管先端部分は単一部品として形成されていることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項9】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管本体部分の前記先端開口に、別個に成形した前記吸引管先端部分が固定されていることを特徴とする手術用吸引管。
【請求項10】
請求項9に記載の手術用吸引管において、
前記吸引管先端部分は、前記吸引管本体部分の前記先端開口に差し込み固定されている連結用の軸部を備えており、
この軸部の外周面と前記吸引管本体部分の内周面の間には複数の連通溝が形成されており、
これらの連通溝における前記吸引管本体部分の先端開口側の端が前記吸引孔として機能し、これらの連通溝の他端が前記吸引管本体部分の中空部に連通していることを特徴とする手術用吸引管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−82455(P2009−82455A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256244(P2007−256244)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(507323204)
【出願人】(507323215)
【出願人】(594001764)
【Fターム(参考)】