説明

排ガス浄化装置及びそれを用いた排ガス浄化方法

【課題】アッシュの堆積による粒子状物質の酸化性能の低下が十分に抑制され、アッシュの堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮することが可能な排ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関21からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒23を備える排ガス浄化装置であって、前記酸化触媒23が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置並びにそれを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から排出されるガスには、燃焼により生じた粒子状物質(PM:Particulate Matter)やオイル中の添加剤等からなるアッシュ(Ash)等の有害物質が含まれている。このような有害物質の中でも粒子状物質は動植物に悪影響を及ぼす大気汚染物質として知られている。そのため、内燃機関から排出される粒子状物質を浄化するために酸化触媒を利用することが検討されてきた。
【0003】
例えば、国際公開2007/043442号パンフレット(特許文献1)においては、セリウムとジルコニウムの複合酸化物からなる担体と前記担体に担持されたAg又はAgの酸化物とからなる酸化触媒が開示されている。また、特開2010−264359号公報(特許文献2)においては、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、第12族元素及び第13族元素からなる群より選択される少なくとも2種以上を含む酸素放出能を有する複合酸化物(実施例ではいずれもCeZrOを利用)と、前記複合酸化物に担持されたAgとを備える酸化触媒が開示されている。さらに、特開2007−196135号公報(特許文献3)においては、銀が担持されたベーマイトを焼成することにより得られる酸化触媒を用いることが開示されている。また、特開2010−75797号公報(特許文献4)においては、TiO上にAgが担持されている酸化触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1〜4に記載のような従来の酸化触媒においては、使用時にガス中に含まれているアッシュが酸化触媒上に堆積された場合に、そのアッシュにより粒子状物質と酸化触媒との接触が妨げられて粒子状物質の浄化性能が低下していた。また、このようにして粒子状物質の浄化性能が低下した酸化触媒を再生させるためには排ガスを高温とする必要があり、触媒の浄化性能の再生処理に燃料を大量に消費していたことから、特許文献1〜4に記載のような従来の酸化触媒を用いた場合には内燃機関の燃費の低下を招いてしまうという問題もあった。更に、特許文献1〜4に記載のような従来の酸化触媒は、上述のように使用により粒子状物質の浄化性能が変化することから、触媒の浄化性能の再生処理を施す時期やその際の温度条件等を設定することが困難であったばかりか、触媒をパティキュレートフィルタ等の基材に担持させていた場合には多量の粒子状物質の酸化による熱でその基材が破壊されてしまう場合もあった。このように、特許文献1〜4に記載のような従来の酸化触媒においては、アッシュの堆積に起因して十分に浄化性能を発揮することができなかった。
【0004】
一方、触媒へのアッシュの堆積を防止するという観点から、特開2008−309160号公報(特許文献5)においては、酸化触媒を担持するフィルタを、多孔質波板と多孔質平板の対を基本単位とし、前記多孔質波板の波板稜線が交互に直交するように積層した成形体としつつ、その成形体に対して前記波板稜線の一方向から排ガスを流入させて、その排ガスが流入する面と反対側の面や排ガスが流入する方向と直交する側面の一つの面に排ガスの通過を遮る手段を設け、且つ、前記排ガスの通過を遮る手段が、排ガスの通過と遮断を切り替えることができるような構造とすることが開示されている。また、特開2008−088903号公報(特許文献6)においては、酸化触媒を担持するフィルタを、排気ガスの流れ方向に延びる複数のセルが平行に配設された構造としつつ、排気ガス流路の下流側の端面に、隣接するセルの出口側開口部を交互に閉鎖して該出口側開口部が開いたセルと閉じたセルとを形成することが可能となるようなプラグプレートを接離可能なようにして設けることが開示されている。そして、このような特許文献5〜6に記載の技術においては、フィルタの開口部の開口と閉鎖を制御することにより触媒へのアッシュの堆積を防止している。しかしながら、特許文献5〜6に記載のようなフィルタを用いたとしても完全にアッシュを除去することはできず、一部のアッシュがフィルタの隔壁や酸化触媒の表面に強く付着してしまうことから、アッシュの堆積に起因した粒子状物質の浄化性能の低下を必ずしも十分に防止することができなかった。また、特許文献5〜6に記載のフィルタを備える排ガス浄化用装置は経済性(コスト)の点においても十分なものとはいえず、現状においては実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2007/043442号パンフレット
【特許文献2】特開2010−264359号公報
【特許文献3】特開2007−196135号公報
【特許文献4】特開2010−75797号公報
【特許文献5】特開2008−309160号公報
【特許文献6】特開2008−088903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アッシュの堆積による粒子状物質の酸化性能の低下が十分に抑制され、アッシュの堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮することが可能な排ガス浄化装置、及び、その排ガス浄化装置を用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置おいて、前記酸化触媒を、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えるものとすることにより、アッシュの堆積による酸化性能の低下が十分に抑制され、アッシュの堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置であって、
前記酸化触媒が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えること、
を特徴とするものである。
【0009】
上記本発明の排ガス浄化装置においては、前記銀含有物質が、銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀及びリン酸銀からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒が、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒をパティキュレートフィルタ上に担持したものであることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程とを交互に実施するように制御する第一制御手段を更に備えることが好ましい。
【0012】
さらに、上記本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒に堆積された前記排ガス中のアッシュの量を推定するアッシュ堆積量推定手段を更に備えることが好ましく、そのようなアッシュ堆積量推定手段を備える場合においては、前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施するように制御する第二制御手段を更に備えることがより好ましい。
【0013】
また、本発明の排ガス浄化方法は、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置を用いて該酸化触媒に排ガスを接触させることにより前記粒子状物質を浄化する排ガス浄化方法であって、
前記酸化触媒が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えるものであること、
を特徴とする方法である。
【0014】
上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記銀含有物質が、銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀及びリン酸銀からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
また、上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記酸化触媒が、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒をパティキュレートフィルタ上に担持したものであることが好ましい。
【0016】
また、上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程とを交互に実施することが好ましい。
【0017】
さらに、上記本発明の排ガス浄化方法においては、前記排ガス浄化装置が、前記酸化触媒に堆積された前記排ガス中のアッシュの量を推定するアッシュ堆積量推定手段を更に備えたものであり、且つ、
前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施することが好ましい。
【0018】
なお、本発明の排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法によって、アッシュの堆積による粒子状物質の酸化性能の低下が十分に抑制され、アッシュの堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
【0019】
本発明の排ガス浄化装置においては、銀含有物質を担体に担持した酸化触媒を利用している。ここで、このような銀含有物質を利用した場合のPMの酸化について検討する。このような銀含有物質はAgの元素を含有するものである。そして、このような銀含有物質を使用した場合、通常の使用条件下において内燃機関からの排ガスが高温で且つ水蒸気を含有するものとなった場合(高温水蒸気存在下)に、そのAg元素が銀含有物質から解離し、Agイオン(Ag)が生成され得る。例えば、本発明にかかる銀含有物質として好適な硫酸銀(AgSO)を用いた場合を例に挙げて説明すると、高温水蒸気存在下ではAgイオンと硫酸イオン(SO2−)とが解離することにより、Agイオンが生成される。そして、このようにして生成されたAgイオンは粒子状物質(PM)の主成分であるカーボン(C)と接触すると還元されてメタル状態のAgとなり、そのAgイオンと接触したPMは酸化される。なお、このようなPMの酸化反応により、AgイオンはAg(メタル)となるが、このようなAg(メタル)は空燃比がリーンである排ガス(リーン雰囲気の排ガス)中の酸素と接触することで再度Agイオンとなり、その酸素からは酸素イオン(O2−)が生成される。このようなPMの酸化処理(PM酸化処理1)の一連の反応は下記反応式(1)〜(2)で表すことができる。
【0020】
(1) 4Ag+C+2O2−→4Ag+CO
(2) 4Ag+O→4Ag+2O2−
[なお、このようなPM酸化処理1において起こる反応に関して、前記銀含有物質として銀(メタル)を単独で用いる場合には、高温のリーン雰囲気下において、反応式(2)によりAgイオンが形成されて反応が進行して、PMが除去される。]。
【0021】
また、前記酸化触媒において前記銀含有物質は担体に担持されたものである。このように担体と組み合わせて銀含有物質を用いた場合に、銀含有物質の溶融が引き起こされると、銀含有物質から生成されたAgイオンは担体表面全体を覆うように分散する。例えば、銀含有物質がAgSOの場合、その融点は660℃であり、PMが酸化される温度領域では一部が溶融状態になっていると考えられる。そのため、担体に担持された銀含有物質を備える酸化触媒においては、AgイオンとPMとの接触点が著しく増大し、非常に高度なPM酸化活性を得ることが可能となる。また、このような酸化触媒は空燃比がリッチである排ガス(リッチ雰囲気の排ガス)に曝されると、前記銀含有物質が還元性ガス(例えばH)と反応し、担体上にメタル状態のAgが生成される。そして、このようにして生成されたメタル状態のAgに気相中の酸素(O)が接触するとAgOが生成され、かかるAgOにPMが接触するとPMが酸化される(PM酸化処理2)。ここで、銀含有物質として硫酸銀(AgSO)を用いた場合を例に挙げて説明すると、このようなPM酸化処理2における一連の反応は、下記反応式(3)〜(5)で表すことができる。
【0022】
(3) AgSO+2H→2Ag+2HO+SO
(4) 4Ag+O→2Ag
(5) 2AgO+C(PM)→4Ag+CO
[なお、このようなPM酸化処理2に関して、前記銀含有物質としてAg(メタル)を単独で用いる場合には、反応式(4)と(5)に示す反応によりPMが除去される。]。
【0023】
このようなPM酸化処理1〜2を比較すると、PM酸化処理2を採用してPMを酸化した場合の方がPM酸化活性がより高いものとなる。そのため、銀含有物質を利用する場合、担体に担持した酸化触媒とし、その酸化触媒がリッチ雰囲気の排ガスに接触するように制御する工程を実施して、その触媒中に含まれるAgをメタル状態とさせた後、リーン雰囲気の排ガスを接触させることにより、より高度なPM酸化活性を得ることが可能となるものと本発明者らは推察する。
【0024】
以下、図1を参照しながら、排ガスの浄化工程について検討する。先ず、従来の排ガス浄化装置について検討すると、排ガスを排ガス浄化装置中の酸化触媒に接触させると、排ガスにはPMの他にエンジンオイルに含まれる添加剤等から生成されるアッシュ(灰分、不燃物)も含まれるため、担体11と銀含有物質12(メタル状の銀を含む概念)とを含む触媒上にはPMとともにアッシュ13も堆積される。そして、酸化触媒上へのアッシュ13の堆積が進むと、アッシュ13の堆積した層が形成されて酸化触媒中の活性点(例えば銀イオンや銀酸化物等)とPMとの接触が妨げられ、酸化触媒のPM酸化活性が低下する。このように、従来の酸化触媒を用いた場合には、堆積したアッシュに起因してPMと酸化触媒中の活性点(例えば銀イオンや銀酸化物等)との接触が阻害されるため、上述のようなPM酸化処理1〜2に示す反応を十分に引き起こすことができなかった。
【0025】
これに対して、本発明にかかる酸化触媒においては、Caの硫酸塩及びCaのリン酸塩のうちの少なくとも1種の金属塩が担体11として利用され、その担体11上に銀含有物質12が担持されている。そして、このような担体に利用される金属塩は、アッシュに含まれる成分であるため、アッシュと非常に近い性質を有するものである。そのため、図1(b)に示すように、触媒上にアッシュ13が堆積されても、高温水蒸気存在下での解離や高温での溶融により、銀含有物質12から移動性の銀化合物(Agイオンを含む概念)12’が生成され、担体11からアッシュ13の表面(排ガスと接触可能な表面)に移動性銀化合物12’を移動させることが可能である(図1(c))。そして、アッシュ13の表面へ移動した移動性銀化合物12’は、アッシュ13の表面でPMと接触して、上述のようなPM酸化処理1に示す反応(反応式(1)〜(2))を引き起こすことができるものと本発明者らは推察する。
【0026】
また、酸化触媒にアッシュ13が堆積されている場合に、酸化触媒をリーン雰囲気の排ガスに接触させると、銀含有物質12がアッシュ13中の硫酸カルシウムから硫酸イオン(SO2−)を受け取って移動性銀化合物12’(この場合にはAgSO)が形成される(図1(b)〜(c))。このようなAgSOは、その融点が660℃であり、PMが酸化される温度領域ではその一部が溶融状態になっているため、担体11からアッシュ13の表面上への移動性が高い化合物であり、アッシュ13の表面(排ガスと接触可能な表面)上を容易に移動する。そして、リッチ雰囲気の排ガスを接触させると、表面上に移動した前記移動性銀化合物12’に起因して、アッシュ12の表面上にメタル状の銀(銀含有物質12)が析出される(図1(d))。このようにしてメタル状の銀(銀含有物質12)が析出した後においては、上記反応式(4)と(5)に示す反応でPMを酸化することが可能となり、より高度なPM酸化性能を得ることも可能となるものと本発明者らは推察する。
【0027】
以上、説明したように、本発明にかかる酸化触媒は、アッシュ13が堆積されても、アッシュ13の表面上に銀含有物質12を移動させることが可能であり、PMと銀含有物質12との接触点の低下を十分に抑制することが可能である。言い換えれば、本発明にかかる酸化触媒は、堆積したアッシュ自体を触媒(銀含有物質12)の担体として利用して、触媒活性の低下を抑制できる。そのため、本発明においては、アッシュ13の堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮させることができるものと本発明者らは推察する。また、このような酸化触媒に堆積したアッシュが基準値(閾値)を超えた場合に、リッチ雰囲気の排ガスに接触させる工程を実施することで、アッシュの表面でAgをメタル状態として上記反応式(4)と(5)に示す反応でPMを酸化することも可能となる。そのため、酸化触媒に堆積したアッシュが基準値を超えた場合に、リッチ雰囲気の排ガスに接触させる工程を実施することで、より高度な酸化活性を発現させることも可能となるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、アッシュの堆積による粒子状物質の酸化性能の低下が十分に抑制され、アッシュの堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮することが可能な排ガス浄化装置、及び、その排ガス浄化装置を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】使用時における酸化触媒の状態を経時的に示す概念図であり、図1(a)は使用前の酸化触媒の状態を概念的に示す模式図であり、図1(b)は酸化触媒上にアッシュが堆積した状態を概念的に示す模式図であり、図1(c)はアッシュの表面上を移動性銀化合物が移動する状態を概念的に示す模式図であり、図1(d)は酸化触媒上に堆積したアッシュの表面上に銀含有物質が析出した状態を概念的に示す模式図である。
【図2】内燃機関に接続された状態の本発明の排ガス浄化装置の好適な一実施形態を示す模式図である
【図3】本発明にかかる第一制御手段によって粒子状物質の堆積量や触媒温度に応じてリーンガス供給工程を実施するよう制御する場合の制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。
【図4】本発明にかかる第二制御手段によって行われる制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。
【図5】実施例1〜7及び比較例1〜5で得られた酸化触媒を用いた排ガス浄化装置のアッシュ堆積前及びアッシュ堆積後の50%PM酸化温度を示すグラフである。
【図6】実施例1〜4及び比較例3で得られた酸化触媒のDPFに担持されている触媒成分のXRDパターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0031】
先ず、本発明の排ガス浄化装置について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置であって、
前記酸化触媒が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えること、
を特徴とするものである。
【0032】
このような酸化触媒中の前記担体は、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなるものである。本発明においては、このような金属塩を担体に用いることで、担体がアッシュと非常に近い性質を有するものとなるため、アッシュが堆積しても、その担体に担持されている銀含有物質をアッシュの表面上に効率よく移動させることが可能となり、触媒活性点をアッシュの表面上に移動させることができるため、アッシュの堆積による触媒活性の低下を十分に抑制することができる。また、このような担体として利用する金属塩の中でも、より高度な触媒活性を発現させることが可能であり且つより十分にアッシュの堆積による触媒活性の低下を抑制できるという観点から、Caの硫酸塩を用いることが特に好ましい。このような金属塩としてCaの硫酸塩を利用した場合には、アッシュが基本的に同じ成分であることから、アッシュの表面上に、より高度に銀含有物質を分散させることが可能となる傾向にあり、アッシュの堆積後においても、より高度な触媒活性を発現できる傾向にある。なお、このような金属塩は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
【0033】
このような金属塩からなる担体としては、銀含有物質を分散性の高い状態で多く含有することができるという観点から、粒子状のものを用いることが好ましい。また、担体が粒子状のものである場合には、前記担体の粒子の平均一次粒子径が0.1〜500nmの粒子であることが好ましく、1〜50nmであることがより好ましい。なお、このような担体の平均一次粒子径は、X線回折装置を用いて粉末X線回折ピークの線幅からシェラーの式(Scherrer’s equation)を用いて算出することにより測定することができる。
【0034】
また、担体が粒子状のものである場合には、前記担体の粒子の平均二次粒子径が0.1〜10μmの粒子であることが好ましく、0.1〜1.0μmであることがより好ましい。このような平均二次粒子径が前記下限未満では、高温雰囲気下では凝集し易くなるため、触媒活性が低下し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PMとの接触性が失われるため、活性が低下することに加え、フィルタへ担持し難くなる傾向にある。なお、このような担体の平均二次粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0035】
また、このような担体としては比表面積が0.1〜300m/gであることが好ましく、1〜100m/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では銀含有物質を十分に担持することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、銀含有物質のアッシュへの移動が困難になる傾向にある。
【0036】
さらに、このような担体の製造方法は特に制限されず、上記金属塩を製造することが可能な公知の方法を適宜利用することができる。また、このような担体としては市販の金属塩を利用してもよく、ボールミル等によりミリングして、そのサイズを適宜調製してもよい。
【0037】
また、前記酸化触媒においては、前記担体に銀含有物質が担持されている。このような銀含有物質は、Agを含有しているものであり、メタル状の銀又は銀の化合物である。本発明においては、このような銀含有物質を用いることによって、銀含有物質中のAg元素がAgイオンとなったり或いは銀含有物質中のAg元素がアッシュから硫酸イオン(SO2−)を受けとってAgSO(移動性銀化合物:本発明においてはAgイオンやAgSOを言い、アッシュの表面上を効率よく移動可能な化合物である。)となり、触媒成分である銀含有物質を排ガスと接触することが可能なアッシュの表面部分に移動させて十分に分散した状態とすることが可能であるため、触媒にアッシュが堆積しても、Agの元素とPMとの接触点の低下を十分に抑制できる。すなわち、本発明においては、前記担体と前記銀含有物質を用いることで、使用時に堆積したアッシュを銀含有物質の担体として利用することを可能として、アッシュの堆積後においても十分に高度な触媒活性を発揮させることを可能とする。
【0038】
このような銀含有物質としては、より高度な触媒活性を得られることから、メタル状の銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀、リン酸銀が好ましく、銀、硫酸銀がより好ましい。なお、このような酸化銀、炭酸銀、硫酸銀、リン酸銀は、触媒の使用中に、銀含有物質中の銀元素がアッシュから硫酸イオン(SO2−)を受け取って硫酸銀(AgSO)となったり、雰囲気ガス中の酸素により酸化されて酸化銀(AgO)となったり、粒子状物質の酸化により生成されたCO又はCOがCO2−として吸着されて炭酸銀(AgCO)となったり、アッシュからリン酸イオンを受けとってリン酸銀(AgPO)となることによっても生成され得るものである。このように、前記銀含有物質は、用いる担体の種類や使用時の排ガスの雰囲気や進行している反応によっても、その形態が変化するものである。なお、このような銀含有物質は1種を単独で含有するものであってもよく、或いは、2種以上を混合して含有するものであってもよい。なお、前記担体の種類やその担体に担持されている銀含有物質の種類は、X線回折測定をしてX線回折パターンを求めて、ピークの位置から存在する結晶の種類を求めることにより確認できる。
【0039】
また、このような銀含有物質の担持量としては特に制限されないが、銀(メタル)による換算で、前記担体100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることが特に好ましい。このような銀含有物質の担持量が前記下限未満では粒子状物質の酸化性能を十分に高度なものとすることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えても酸化性能が飽和してしまうため、コストが高くなる傾向にある。
【0040】
さらに、このような銀含有物質を担持する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、銀含有物質又はその前駆体の分散液やゾルを用いて担体の表面上に被覆(その後必要に応じて焼成)する方法や、蒸着法(例えば、化学蒸着法、物理蒸着法、スパッタ蒸着法)等を用いることにより担体に担持する方法等を適宜採用することができる。
【0041】
また、このような酸化触媒は、前記金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えていればよく、その形態は特に制限されず、ペレット形状のペレット触媒の形態等としてもよく、フィルタに担持した形態としてもよい。このようなフィルタとしては特に制限されず、公知のフィルタを適宜利用することができ、例えば、パティキュレートフィルタ(DPF)、モノリス状のフィルタ、ハニカム状のフィルタ、ペレット状のフィルタ、プレート状のフィルタ、発泡状セラミック製のフィルタ等が挙げられる。また、このようなフィルタの材質も特に制限されず、公知の材料を適宜利用することができ、例えば、コージエライト、炭化ケイ素、ムライト、チタン酸アルミニウム等のセラミックス、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属等が挙げられる。また、前記酸化触媒をフィルタに担持した形態のものとする場合においては、より高度な粒子状物質の酸化性能が得られることから、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒をパティキュレートフィルタに担持した形態のものとすることがより好ましい。
【0042】
また、このようなフィルタとしては、平均細孔径が1〜300μmの細孔を有するものを用いることが好ましい。このような平均細孔径を有する基材を用いることで、より効率よく粒子状物質を酸化して浄化することが可能となる。
【0043】
また、前記酸化触媒を前記フィルタに担持した形態のものとする場合には、酸化触媒によるコート層が形成されていることが好ましく、そのコート層の厚みは0.025〜25μmであることが好ましく、0.035〜10μmであることがより好ましい。前記コート層の厚みが前記下限未満では前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒によりフィルタの表面を十分に被覆できず、粒子状物質との接触点が減少して十分に高度な酸化性能を付与することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒によりフィルタの細孔が閉塞され、排ガスの圧力損失が増大してエンジン効率が低下する傾向にある。
【0044】
さらに、前記酸化触媒を前記フィルタに担持した形態のものとする場合には、前記フィルタに担持する前記担体の量は特に制限されず、内燃機関等に応じてその量を適宜調整することができるが、フィルタの体積1リットルに対して1〜300gであることが好ましく、10〜100gであることがより好ましい。このような担持量が前記下限未満では、十分に高度な触媒性能を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒によりフィルタの細孔が閉塞され、排ガスの圧力損失が増大してエンジン効率が低下する傾向にある。
【0045】
また、このようなフィルタは、気孔率が30〜70%(より好ましくは40〜65%)であるものが好ましい。ここにいう「気孔率」とは、基材内部の空洞部分の体積率をいう。また、このような気孔率が前記下限未満では、排ガス中の粒子状物質により細孔が閉塞し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、排ガス中の粒子状物質を捕集しにくくなるとともにフィルタの強度が低下する傾向にある。
【0046】
また、前記酸化触媒を前記フィルタに担持した形態のものとする場合において、かかる酸化触媒を製造する方法は特に制限されず、例えば、予め前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒を調製しておき、それをフィルタに担持する方法や、フィルタに対して担体を担持する工程と前記フィルタに担持された前記担体に対して銀含有物質を担持せしめる工程とを実施することにより前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒をフィルタに担持する方法等を適宜採用することができる。また、触媒や担体をフィルタに担持する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用でき、例えば、触媒又は担体のスラリーを調製し、そのスラリーをフィルタに被覆(その後必要に応じて焼成)する方法等を適宜利用することができる。なお、このような酸化触媒としては本発明の効果を損なわない範囲において粒子状物質を酸化するための触媒に用いることが可能な公知の他の成分を適宜用いてもよい。
【0047】
さらに、本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒により内燃機関から排出されるガス(排ガス)に含まれる粒子状物質を酸化して除去する。そのため、本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒に前記排ガスが接触することが可能なように前記酸化触媒を配置すればよく、例えば、内燃機関からの排ガスが流通する排ガス管内のガス流路に前記酸化触媒を配置した形態としてもよい。なお、このような内燃機関としては特に制限されず、公知の内燃機関を適宜用いることができ、例えば、自動車のエンジン(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)であってもよい。
【0048】
また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒を備えていればよく、他の構成は特に制限されるものではないが、前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程(リーンガス供給工程)と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程(リッチガス供給工程)とを交互に実施するように制御する第一制御手段を更に備えることが好ましい。このようなリーンガス供給工程とリッチガス供給工程とを交互に実施することで、効率よく粒子状物質を酸化して浄化することが可能となる。なお、本発明においては、前記リッチガス供給工程により、担体又は担体に析出されたアッシュの表面上にメタル状の銀を析出させることが可能であり、これにより触媒の活性を高めることができる。このため、本発明においては、前記リッチガス供給工程を触媒の活性化工程として適宜実施し、その後、リーンガス供給工程を実施して粒子状物質を浄化することが好ましい。なお、このような第一制御手段としては、前記酸化触媒に前記空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程(リーンガス供給工程:触媒の活性化工程)とを交互に複数回実施するように制御できるようにしてもよい。
【0049】
このように、第一制御手段は、前記排ガス中の燃料と酸素との比(空燃比)を、実施する工程に応じてリッチ又はリーンにして排ガスを酸化触媒に接触させるように制御することが可能なものである。このような第一制御手段により、空燃比がリッチ又はリーンである排ガスを酸化触媒に接触させる方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、エンジン回転数、アクセル開度、スロットル開度、トルク、吸気流量、燃料噴射量等のデータと排ガスの空燃比との関係のマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて内燃機関の運転状況を変化させることにより、排ガスの空燃比を特定の雰囲気にして、その排ガスを特定の時間、酸化触媒に接触させる方法や、各種センサーを利用して雰囲気に関するデータを求め、内燃機関の運転状況を変化させることにより、排ガスの空燃比を特定の雰囲気にして、その排ガスを特定の時間、酸化触媒に接触させる方法、各種センサーを利用して雰囲気に関するデータを求め、別途設けた空気導入手段(例えば空気ポンプ)や燃料噴出手段により排ガス中に空気や燃料を別途添加することにより、排ガスの空燃比を特定の雰囲気(リーン又はリッチ)にして、その排ガスを特定の時間、酸化触媒に接触させる方法等を適宜採用することができる。なお、ここにいう「空燃比がリッチである」とは、排ガス中の燃料と酸素の当量比(燃料/酸素)が1を超えるような雰囲気(より好ましくは前記当量比が1.05〜1.5となる雰囲気)であることを意味する。また、「空燃比がリーンである」とは、排ガス中の燃料と酸素の当量比(燃料/酸素)が1未満となるような雰囲気(より好ましくは前記当量比が0.5〜0.95)となる雰囲気)であることを意味する。
【0050】
さらに、このような第一制御手段としては、粒子状物質の堆積による圧力損失を効率よく防止するという観点から、粒子状物質の堆積量が基準値(閾値)を超えたものと判断される場合に、前記リーンガス供給工程において触媒温度を昇温するように制御することが可能なものとすることがより好ましい。このような粒子状物質の堆積量を算出する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関の運転状況及び排ガス浄化装置の使用履歴等と粒子状物質の堆積量とに関するマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて粒子状物質の堆積量を算出する方法、酸化触媒の前後の排ガスの圧力の差を検出して圧力差と粒子状物質の堆積量とに関するマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて粒子状物質の堆積量を算出する方法、圧力差を吸入空気量で補正することにより粒子状物質堆積量を算出する方法、及び、それらの方法をすべて採用する方法等を採用することができる。また、本発明の排ガス浄化装置においては粒子状物質の堆積量を算出に必要な各種センサーを適宜用いてもよい。
【0051】
また、このような第一制御手段においては、酸化触媒の種類やその温度等によって前記各工程の最適な実施時間や複数回実施する際の最適な回数(繰り返し回数)等が異なるため、酸化触媒の温度に応じて各工程の実施時間や繰り返し回数等を変更して前記各工程を実施するように制御することが好ましい。なお、このような実施時間や繰り返し回数を求める方法は特に制限されないが、酸化触媒の温度と前記各工程を実施する時間や実施する回数の変化による粒子状物質の浄化効率の変化との関係のマップを予め作成しておき、そのマップに基づいて求める方法等を採用してもよい。
【0052】
また、このような第一制御手段としては、前述のような制御を可能とするものであればよく、特に制限されず、例えば、内燃機関に接続されたエンジンコントロールユニット(ECU)を利用するものとしてもよい。このようなECUは、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の周辺装置を組み合わせたコンピュータとして構成されたものである。また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記第一制御手段による前記制御を可能とするために、触媒の温度、酸化触媒に接触する前後の排ガスの圧力差、車速、エンジンの回転数、トルク等を検出するための手段を更に備えていてもよく、このような検出手段としては公知のものを適宜用いることができる。
【0053】
また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記酸化触媒に堆積された前記排ガス中のアッシュの量を推定するアッシュ堆積量推定手段を更に備えることが好ましい。このような酸化触媒へのアッシュの堆積量を推定する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関の運転状況及び排ガス浄化装置の使用履歴等とアッシュの堆積量とに関するマップを予め作成しておき、そのマップに基づいてアッシュの堆積量を推定する方法、第一制御手段により前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程と前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程とを交互に実施して粒子状物質を十分に除去した後に、酸化触媒の前後の排ガスの圧力の差圧を検出し、検出された差圧から酸化触媒へのアッシュの堆積量を推定する方法等を採用してもよい。
【0054】
このようなアッシュ堆積量推定手段としては、酸化触媒に堆積されたアッシュ堆積量を推定できるものであればよく、特に制限されず、例えば、内燃機関に接続されたエンジンコントロールユニット(ECU)を利用するものとしてもよい。また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記アッシュ堆積量推定手段によるアッシュ量の推定を可能とするために、酸化触媒に接触する前後の排ガスの圧力差、車速、エンジンの回転数、トルク等の必要なデータを適宜検出するための手段を更に備えていてもよい。
【0055】
また、本発明の排ガス浄化装置が前記アッシュ堆積量推定手段を備える場合においては、前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値(閾値)を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施するように制御する第二制御手段を更に備えることがより好ましい。このように、第二制御手段において、アッシュの堆積量の推定値に応じて、前記排ガス中の燃料と酸素との比(空燃比)を、リッチ雰囲気にして排ガスを酸化触媒に接触させるように制御することで、堆積したアッシュの表面上にメタル状のAgを析出させて、PMと活性点とが接触する機会を十分に維持することができ、十分に高度なPM酸化活性を維持することが可能となる。なお、このような第二制御手段により、空燃比がリッチ雰囲気の排ガスを酸化触媒に接触させる方法としては特に制限されず、例えば、前述の第一制御手段において説明した特定の雰囲気のガスを接触させる方法と同様の方法(例えば内燃機関の運転状況を変化させることにより、排ガスの空燃比をリッチ雰囲気とする方法等)を採用してもよい。
【0056】
更に、このような第二制御手段としては特に制限されないが、例えば、内燃機関に接続されたエンジンコントロールユニット(ECU)を利用するものとしてもよい。また、本発明の排ガス浄化装置においては、前記第二制御手段による前記制御を可能とするために、前記第二制御手段を前記アッシュ堆積量推定手段からのデータを入力できるような構成とするとともに、排ガスの雰囲気を測定するために、酸化触媒に接触する前後の排ガスの圧力差、車速、エンジンの回転数、トルク等を検出するための手段を更に備える構成のものとしてもよい。
【0057】
次に、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置を用いて該酸化触媒に排ガスを接触させることにより前記粒子状物質を浄化する排ガス浄化方法であって、
前記酸化触媒が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えるものであること、
を特徴とする方法である。
【0058】
このような排ガス浄化装置は上記本発明の排ガス浄化装置と同様のものである。そして、このような排ガス浄化装置中における前記酸化触媒に排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明にかかる酸化触媒を配置することにより、酸化触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
【0059】
また、このような排ガス浄化方法においては、前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程(リーンガス供給工程)と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程(リッチガス供給工程)とを交互に実施することが好ましい。このように前記各工程を交互に実施することにより、空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程において、触媒中にメタル状のAgを析出させることが可能となり、その後、空燃比がリーンである排ガスが前記酸化触媒に接触すると、前述の反応式(4)〜(5)に示す反応を効率よく引き起こさせることが可能となり、より高い粒子状物質に対する酸化性能が得られる傾向にある。すなわち、本発明においては、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施することで、触媒中にメタル状のAgを析出させて触媒活性をより高度なものとすることができ、かかる工程により触媒を活性化させることができる。なお、このような各工程の実施時間は、酸化触媒の設計や内燃機関の種類等によっても異なるものであるため一概には言えないが、一概には言えないが、例えば、前記リーンガス供給工程の実施時間を100〜500時間とし、前記リッチガス供給工程の実施時間を1〜60分間としてもよい。
【0060】
また、粒子状物質の堆積による圧力損失を効率よく防止するという観点から、推定される粒子状物質の堆積量が基準値(閾値)を越えるものと判断される場合に、前記各工程を実施することが好ましい。この場合には、粒子状物質を十分に酸化して浄化するために、温度が350〜650℃となる条件下において、前記各工程を実施することが好ましい。このような温度が前記下限未満では粒子状物質を十分に酸化して浄化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒温度を昇温させるための燃料消費量が多くなり、燃費が悪化する傾向にある。
【0061】
また、このような排ガス浄化方法においては、前記排ガス浄化装置を、前記酸化触媒に堆積された前記排ガス中のアッシュの量を推定するアッシュ堆積量推定手段を更に備えた構成のものとして、前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値(閾値)を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程(リッチガス供給工程)を実施することが好ましい。このように、アッシュの堆積量が基準値(閾値)を超えた場合に、前記リッチガス供給工程を実施することで、アッシュの表面上にメタル状の銀を析出させることが可能となり、アッシュの堆積により触媒活性が低下することを、より十分に抑制することができる。すなわち、アッシュの堆積量が基準値(閾値)を超えた場合に前記リッチガス供給工程を実施することで、アッシュの表面上にメタル状の銀を析出させることが可能となるため、アッシュが堆積されても、より高度な触媒活性を維持することができる。
【0062】
前記アッシュの堆積量の基準値(閾値)としては、酸化触媒の設計等によっても異なるものであり、一概に言えるものではなく、粒子状物質の酸化活性の観点から、その値を適宜設定すればよい。また、前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程(リッチガス供給工程)を実施する場合においては、リッチガス供給工程を温度が350〜550℃となる条件下において1〜60分間実施することが好ましい。このような温度や時間が前記下限未満ではアッシュの表面上に十分に銀(メタル)を析出させることが困難となり、十分に触媒活性を向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとリッチガス供給工程を実現するための燃料消費量が多くなり、燃費が悪化する傾向にある。
【0063】
次に、図面を参照しながら、本発明の排ガス浄化装置及び本発明の排ガス浄化方法の好適な一実施形態について、より詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
図2は、内燃機関に接続された状態の本発明の排ガス浄化装置の好適な一実施形態を示す模式図である。図2に示す実施形態においては、内燃機関21と、内燃機関に接続された排ガス管22と、排ガス管内のガス流路に配置された酸化触媒23と、内燃機関と接続された制御手段24と、酸化触媒23に接触する前後の排ガスの圧力を測定することが可能な圧力センサー25と、酸化触媒23の温度を測定することが可能な温度センサー26とを備える。
【0065】
また、図2に示す実施形態においては内燃機関21として自動車のディーゼルエンジンを利用している。また、前記排ガス管22としては特に制限されず、公知のものを適宜利用でき、本実施形態においては排ガス管22として市販のものを利用する。また、図2に示す実施形態においては酸化触媒23として、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒がパティキュレートフィルタ(DPF)に担持された形態のものを用いている。また、制御手段24としてはエンジンコントロールユニット(ECU)を利用している。
【0066】
また、このような制御手段24においては、内燃機関21のエンジン回転数、アクセル開度、スロットル開度、トルク、吸気流量、燃料噴射量等のデータと排ガスの空燃比との関係のマップに基づいて、酸化触媒に接触させる排ガスの空燃比の雰囲気を判定し、内燃機関21への燃料の添加量やエンジン回転数、トルク、吸気量等を適宜変更させて排ガスの空燃比の雰囲気を制御することを可能としている(前記第一制御手段)。また、このような制御手段24においては、圧力センサー25が接続され、圧力センサー25から入力されるデータに基づいて酸化触媒の前後の排ガスの圧力の差を検出して圧力差と粒子状物質の堆積量とに関するマップ(予め作成したもの)に基づいて粒子状物質の堆積量を算出することも可能としている。
【0067】
また、このような制御手段24においては、内燃機関の運転状況(回転数やトルク等)の履歴とアッシュの堆積量とに関するマップ(予め作成されたもの)に基づいてアッシュの堆積量を推定することを可能としている(前記アッシュ堆積量推定手段)。そして、このような制御手段24においては、アッシュの堆積量の算出結果に基づいて、内燃機関21への燃料の添加量やエンジン回転数、トルク、吸気量等を適宜変更させて排ガスの空燃比の雰囲気を制御することも可能としている(前記第二制御手段)。また、圧力センサー25及び温度センサー26としては市販の機器を用いている。なお、図2中の矢印はガスの流れを概念的に表したものである。
【0068】
次に、このような図2に示す実施形態の排ガス浄化装置に用いて排ガスを浄化する際の前記第一制御手段による制御および前記第二制御手段制御による制御の方法の好適な例を、フローチャートを参照しながら説明する。
【0069】
図3は、第一制御手段によって粒子状物質の堆積量や触媒温度に応じてリーンガス供給工程を実施するよう制御(前記リーンガス供給工程において触媒温度を昇温するように制御)する場合の制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。すなわち、先ず、ステップ1では、制御手段24において、制御手段24に入力された圧力センサー25から入力されるデータに基づいて酸化触媒の前後の排ガスの圧力の差を検出し、そのデータに基づいて粒子状物質の堆積量Mを算出し、求められた粒子状物質の堆積量M(推定値)が基準値M1を超えているか否かを判断する。そして、粒子状物質の堆積量Mが基準値M1を超えていればステップ2へ進み、粒子状物質の堆積量Mが基準値M1以下であればスタートに戻る。また、ステップ2では、制御手段24において温度センサー26から入力されたデータに基づいて酸化触媒23の温度Tを算出し、酸化触媒23の温度Tが基準温度T1を超えているか否かを判断する。そして、酸化触媒23の温度Tが基準温度T1を超えていればステップ3へ進み、酸化触媒23の温度Tが基準温度T1以下であれば、ステップ4に進む。このようなステップ4では、酸化触媒23の昇温操作が行われ、その後、スタートに戻る。なお、ステップ4で実施される昇温操作としては、内燃機関21の運転状況を変化させて排ガス温度を上昇させる方法を採用している。また、ステップ3では、酸化触媒23に対して空燃比がリーン雰囲気となる排ガスをt1時間接触させる工程を実施する運転を実施し、排ガス中の粒子状物質を酸化してステップ5に進む。また、ステップ5では、制御手段24において圧力センサー15から入力されたデータに基づいて酸化触媒23に接触する前後の排ガスの圧力の差P(差圧P)がP1未満であるか否かを判断する。そして、差圧PがP1未満である場合には、ステップ6に進み、差圧PがP1以上である場合にはスタートに戻る。また、ステップ6では、制御手段24において算出される粒子状物質の予想堆積量Mが0となるようにリセットし、その後、スタートに戻る。
【0070】
なお、前記ステップ3におけるt1の時間は粒子状物質の浄化効率の観点から予め求めて決定した値である。また、このような温度T1は用いる酸化触媒の種類等の排ガス浄化装置の設計に応じて、粒子状物質を浄化するのに好適な温度に適宜その設定を変更することができる。例えば、前記温度T1を350〜650℃の範囲のうちのいずれかの温度に設定し、高温状態で粒子状物質の浄化工程を実施するようにしてもよい。
【0071】
図4は、第二制御手段による制御の好適な一実施形態を示すフローチャートである。すなわち、先ず、ステップ101では、制御手段24においてアッシュの堆積量Aを算出し、それにより推定されたアッシュの堆積量が基準値A1を超えているか否かを判断する。そして、アッシュの堆積量Aが基準値A1を超えていればステップ102へ進み、アッシュの堆積量Aが基準値A1以下であればスタートに戻る。また、ステップ102では、制御手段24により、酸化触媒23に対して空燃比がリッチ雰囲気となる排ガスをt101時間接触させる工程(リッチガス供給工程)を実施し、排ガス中のアッシュを酸化してステップ103に進む。なお、このようなステップ102においてリッチ雰囲気の排ガスを接触させる工程は、制御手段24により内燃機関の運転状況を適宜変更することで達成できる。また、ステップ103では、制御手段24において算出されるアッシュの予想堆積量Aが0となるようにリセットし、その後、スタートに戻る。なお、前記ステップ102におけるt101の値は、酸化触媒の粒子状物質の浄化性能の観点から予め求めて決定した値である。なお、このようなステップ102におけるリッチガス供給工程により、アッシュの表面上に十分にAgを析出させることが可能となり、酸化触媒の粒子状物質の浄化活性を十分に維持することが可能である。
【0072】
以上、図2〜4を参照して本発明の排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法の好適な一実施形態について、より詳細に説明したが、本発明の排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示す実施形態においては、前記第一及び第二制御手段において、内燃機関10の運転状況を変更させることで酸化触媒に接触させる排ガスの空燃比の雰囲気を制御しているが、本発明の排ガス浄化装置において、酸化触媒に接触させる排ガスの空燃比の雰囲気を制御する方法は特に制限されず、例えば、内燃機関21と酸化触媒23との間の領域において排ガス中の酸素濃度を測定できる空燃比センサーや、燃料供給手段(例えばスプレー式の燃料添加装置)又は空気ポンプ等を排ガス管23に接続し、これらを用いて排ガスの空燃比を測定して空燃比の状態を判断しながら、その空燃比の状態に応じて酸化触媒23に接触する排ガス中に燃料又は空気を導入させるようにして酸化触媒に接触させる排ガスの空燃比の雰囲気を制御する方法等を採用してもよい。このように、本発明の排ガス浄化装置酸化触媒においては、前記酸化触媒を備えていればよく、他の構成は特に制限されるものではない。また、図2〜4に示す実施形態においては、第一制御手段により粒子状物質の堆積量や触媒温度に応じてリーンガス供給工程を実施するよう制御しているが、第一制御手段においては前記リーンガス供給工程と前記リッチガス供給工程交互に実施するように制御することが可能であればよく、その制御の方法は上記実施形態に限定されるものではない。また、第二制御手段を用いる場合において、その制御の方法は上記実施形態に特に制限されるものではなく、アッシュの堆積量の推定値が基準値を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施するように制御することが可能な方法であれば適宜利用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
〈酸化触媒の調製〉
硫酸カルシウム0.5水和物(焼き石膏、和光純薬工業製)にイオン交換水を加え、ボールミルでミリングして、平均二次粒子径が0.6μmの硫酸カルシウムの粒子を含有するスラリーを形成した。次に、コージェライト製の市販のDPF(直径30mm、長さ50mm、気孔率60%、平均細孔径30μm、日本ガイシ社製)を準備し、前記スラリーを前記DPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた。次いで、前記スラリーを含浸させたDPFから、吸引機を用いて余分なスラリーを除去し、110℃で16時間乾燥した後、500℃で3時間焼成した。このような焼成により、前記硫酸カルシウム0.5水和物を硫酸カルシウム(無水物)に変更でき、これにより硫酸カルシウム(無水物)をDPFに強く担持(付着)させることができた。このようにして硫酸カルシウム(無水物)をDPFに担持したところ、DPFの容量1Lあたりの硫酸カルシウムの担持量(コート量)は67.5g/Lであった。
【0075】
次に、90℃のイオン交換水に硫酸銀(和光純薬工業製)を溶解させて硫酸銀水溶液を調製した。次いで、前記硫酸銀水溶液を、DPFの容量1Lあたりの硫酸銀の担持量が10.8g/Lとなるようにして、前記硫酸カルシウムの担持されているDPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた。次に、前記硫酸銀水溶液を含浸させたDPFを110℃で16時間乾燥した後、300℃で3時間焼成して、DPFの隔壁に担持(コート)されている硫酸カルシウムに硫酸銀を担持して、DPFに担持された形態の酸化触媒を製造した。なお、DPFの容量1Lあたりの硫酸銀の担持量は10.8g/Lであった。また、DPFの容量1Lあたりの銀の金属換算による硫酸銀の担持量は7.5g/Lであり、硫酸カルシウム(担体)100質量部に対する銀の金属換算による硫酸銀の担持量は11.11質量部であった。なお、DPFの隔壁に担持(コート)されている硫酸カルシウムに硫酸銀が担持された触媒のコート層の厚みは2μmであった。
【0076】
〈PM付着処理(I)〉
前記酸化触媒を石英ガラス製の排ガス管(内径:30mm、長さ1000mm)の中心部に配置した後、その排ガス管の一方の開口部(以下、「入り口」という。)から内部に向かって、燃焼粒子発生器(Combustion Aerosol Standard; CAST、Matter Engineering社製)を用いて発生させた粒子状物質(PM)を、室温(25℃)の空気と一緒に導入し、室温(25℃)条件下で、PMと空気の混合物を前記酸化触媒に接触させることによって前記酸化触媒にPMを付着させた(PM付着処理(I))。なお、このようなPM付着処理においては、前記酸化触媒に対する空気の流量が20L/分となるようにした。また、このようなPM付着処理による前記酸化触媒へのPMの付着量はDPFの容量1Lあたり2g/Lであった。
【0077】
〈PM浄化処理(I)〉
前記PM付着処理(I)によりPMを付着させた酸化触媒が配置された排ガス管を用い、その入り口(前述のPMと空気の混合物を導入した開口部)から、触媒への入ガス温度:500℃、流量:30L/分の条件でNガスを15分間導入して、Nガスを前記酸化触媒に供給した後、室温(25℃)まで冷却する前処理を行った。
【0078】
次いで、前記排ガス管の入り口から表1に示すリーン雰囲気のモデルガスA(空燃比がリーンであるガスのモデル)を、20℃/分の昇温速度で30℃〜810℃(触媒への入りガス温度)まで昇温しながら、流量:30L/分の条件で導入して、前記前処理後の酸化触媒に対してモデルガスAを接触させた後、前記排ガス管の出口(もう一方の開口部)から排出されるガス(出ガス)中のCO及びCOの濃度を測定して、その濃度から酸化されたPMの量を算出し、酸化触媒に付着したPMの総量が当初の付着量の50%となる際の入りガス酸化したときの温度(50%PM酸化温度)を求めて、酸化性能を評価した。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。なお、このような50%PM酸化温度が低いほど、PM酸化性能(酸化活性)が高い触媒であると言える。
【0079】
【表1】

【0080】
〈アッシュ堆積処理〉
前記PM浄化処理(I)を施した後の前記酸化触媒に対して、JIS2号燃料(硫黄分5〜7ppm)を使用して実エンジン(直列6気筒)からの排ガスを供給して、アッシュを堆積させた。すなわち、JIS2号燃料(硫黄分5〜7ppm)を使用して実エンジン(直列6気筒)を運転させて、そのエンジンからの排ガスを前記排ガス管の入り口から導入し、酸化触媒の触媒床温度が500℃(一定)となるように温度条件を調整して、PM浄化処理(I)を施した後の前記酸化触媒に対して排ガスを500時間継続して供給した。なお、このような実エンジン(直列6気筒)からの排ガスの供給工程は、該エンジンからの排ガスを取り出して12本の排ガス管(実施例1〜7及び比較例1〜5で用いたPM浄化処理(I)後の酸化触媒を配置した排ガス管:実施例2〜7及び比較例1〜5については後述する。)に対して、同じ条件で同じ排ガスが流入するようにして行った。このような排ガスの供給の結果、各酸化触媒へのアッシュの堆積量はいずれも13g/Lであり、デジタルマイクロスコープで観察したDPF隔壁上のアッシュ堆積厚さはいずれも約50μmであった。
【0081】
〈PM付着処理(II)〉
前記アッシュ堆積処理後の酸化触媒に対して、PM付着処理(I)と同様の方法を採用してPMを付着させる処理を行った。なお、PMの付着量はDPFの容量1Lあたり2g/Lであった。
【0082】
〈PM浄化処理(II)〉
前記PM浄化処理(I)を施した後の前記酸化触媒を用いてPM浄化処理(I)と同様の方法を採用してPMを浄化せしめて、50%PM酸化温度を求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0083】
このようにして、実施例1においては、酸化触媒の調製、PM付着処理(I)、PM浄化処理(I)、アッシュ堆積処理、PM付着処理(II)、PM浄化処理(II)を順に実施して、酸化触媒を備える排ガス浄化装置(本実施例においてはモデルガスAを排ガスと模して、かかる排ガスの流路に酸化触媒を配置したもの)のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。
【0084】
(実施例2)
後述のリッチガス供給処理を、前記PM付着処理(I)及び前記PM付着処理(II)を実施する前の酸化触媒に対して、それぞれ施した以外は、実施例1と同様にして、前記酸化触媒を備える排ガス浄化装置(本実施例においてはモデルガスA及びBを排ガスと模して、排ガスの流路に酸化触媒を配置したもの)のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。このように、実施例2においては、酸化触媒の調製、リッチガス供給処理、PM付着処理(I)、PM浄化処理(I)、アッシュ堆積処理、リッチガス供給処理、PM付着処理(II)、PM浄化処理(II)の順で各処理を行った。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0085】
〈リッチガス供給処理〉
表2に示すリッチ雰囲気のモデルガスB(空燃比がリッチであるガスのモデル)を、酸化触媒への入りガス温度:400℃(一定)、流量:30L/分の条件で前記酸化触媒に対して12分間供給した。
【0086】
【表2】

【0087】
(実施例3)
前記リッチガス供給処理におけるモデルガスBの酸化触媒への入りガス温度をいずれも400℃から500℃に変更した以外は、実施例2と同様にして、前記酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0088】
(実施例4)
前記リッチガス供給処理におけるモデルガスBの酸化触媒への供給時間をいずれも12分間から60分間に変更した以外は、実施例2と同様にして、前記酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0089】
(実施例5)
〈酸化触媒の調製〉
リン酸カルシウム(和光純薬工業製)にイオン交換水を加え、ボールミルでミリングして、平均二次粒子径が0.6μmのリン酸カルシウムの粒子を含有するスラリーを形成した。次に、コージェライト製の市販のDPF(直径30mm、長さ50mm、気孔率60%、平均細孔径30μm、日本ガイシ社製)を準備し、前記スラリーを前記DPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた。次いで、前記スラリーを含浸させたDPFから、吸引機を用いて余分なスラリーを除去し、110℃で16時間乾燥した後、500℃で3時間焼成した。このような焼成により、リン酸カルシウムをDPFに強く担持(付着)させることができた。このようにしてリン酸カルシウムをDPFに担持したところ、DPFの容量1Lあたりのリン酸カルシウムの担持量(コート量)は67.5g/Lであった。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0090】
次に、90℃のイオン交換水に硫酸銀(和光純薬工業製)を溶解させて硫酸銀水溶液を調製した。次いで、前記硫酸銀水溶液を、DPFの容量1Lあたりの硫酸銀の担持量が10.8g/Lとなるようにして、前記リン酸カルシウムの担持されているDPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた。次に、前記硫酸銀水溶液を含浸させたDPFを110℃で16時間乾燥した後、300℃で3時間焼成して、DPFの隔壁に担持(コート)されている硫酸カルシウムに硫酸銀を担持して、DPFに担持された形態の酸化触媒を製造した。なお、DPFの容量1Lあたりの硫酸銀の担持量は10.8g/Lであった。なお、DPFの容量1Lあたりの硫酸銀の担持量を銀(メタル)で換算すると7.5g/Lであり、リン酸カルシウム(担体)100質量部に対する銀換算による硫酸銀の担持量は11.11質量部であった。
【0091】
上述のようにして得られた酸化触媒を用いた以外は、実施例1と同様にして、前記酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。このように、実施例5においては、酸化触媒の調製、PM付着処理(I)、PM浄化処理(I)、アッシュ堆積処理、PM付着処理(II)、PM浄化処理(II)の順で各処理を行った。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0092】
(実施例6)
酸化触媒として、実施例5で採用している酸化触媒の調製の方法と同様の方法を採用して得られた酸化触媒を用いた以外は、実施例2と同様にして、前記酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。このように、実施例6においては、酸化触媒の調製、リッチガス供給処理、PM付着処理(I)、PM浄化処理(I)、アッシュ堆積処理、リッチガス供給処理、PM付着処理(II)、PM浄化処理(II)の順で各処理を行った。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0093】
(実施例7)
前記リッチガス供給処理におけるモデルガスBの酸化触媒への入りガス温度をいずれも400℃から500℃に変更した以外は、実施例6と同様にして、前記酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0094】
(比較例1)
酸化触媒の調製に際して硫酸銀の担持を行わず、硫酸カルシウム(無水物)を担持したDPFに(硫酸カルシウムの担持量(コート量):67.5g/L)をそのまま酸化触媒(比較のための酸化触媒)として利用した以外は、実施例1と同様にして、比較のための酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0095】
(比較例2)
〈触媒の調製〉
酸化触媒の調製に際して硫酸銀の担持を行わなかった以外は実施例5で採用している酸化触媒の調製工程と同様にして、リン酸カルシウムを担持したDPF(リン酸カルシウムの担持量(コート量):67.5g/L、比較のための酸化触媒)を得た。
【0096】
このようにして調製した比較のための酸化触媒(リン酸カルシウムを担持したDPF)を、前記酸化触媒として利用した以外は、実施例1と同様にして、比較のための酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0097】
(比較例3)
〈触媒の調製〉
先ず、実施例1の酸化触媒の調製の際に用いたDPFと同様のDPFを準備した。次に、セリアゾル(多木化学製の商品名「ニードラールU−15」)を、前記DPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた(含浸工程)。次に、前記ゾルを含浸させたDPFから、吸引機で余分なゾルを除去し、大気中、250℃で1時間の焼成した(焼成工程)。このような含浸工程及び焼成工程を、DPFの容量1Lあたりのセリアの担持量が67.5g/Lとなるまで繰り返し実施し、セリアが担持されたDPFを得た。次に、硝酸プラセオジム(III)の水和物(和光純薬工業製)を溶解した硝酸プラセオジム水溶液を調製した。次いで、前記硝酸プラセオジム水溶液を、DPFの容量1LあたりのPr11の担持量が7.5g/Lとなるようにして、前記セリアが担持されたDPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させ、800℃で24時間焼成し、比較のための酸化触媒を得た。なお、Pr11担持量はDPFの容量1Lあたり7.5g/Lであるが、800℃での焼成によりセリアと酸化プラセオジムとの複合酸化物(Ce0.9Pr0.1)が形成されたものと推察される。
【0098】
このようにして調製した比較のための酸化触媒(セリアと酸化プラセオジムとの複合酸化物を担持したDPF)を、前記酸化触媒(比較のための酸化触媒)として利用した以外は、実施例1と同様にして、比較のための酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0099】
(比較例4)
〈触媒の調製〉
先ず、実施例1の酸化触媒の調製の際に用いたDPFと同様のDPFを準備した。次に、セリアゾル(多木化学製の商品名「ニードラールU−15」)及びジルコニアゾル(第一稀元素化学工業製、酢酸ジルコニール)を、固形分のセリアとジルコニアの質量比(セリア:ジルコニア)が30:70となるようにして混合して混合液を調製した。次いで、前記混合液を前記DPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた(含浸工程)。次に、前記混合液を含浸させたDPFから、吸引機で余分な混合液を除去し、大気中、250℃で1時間の焼成した(焼成工程)。このような含浸工程及び焼成工程を、DPFの容量1Lあたりのセリア及びジルコニアの混合物の担持量が67.5g/Lとなるまで繰り返し実施した後、700℃で5時間焼成して、セリア及びジルコニアが担持されたDPFを得た。なお、DPFの容量1Lあたりのセリア及びジルコニアの混合物の担持量は67.5g/Lであり、DPFの容量1Lあたりのセリアとジルコニアのそれぞれの担持量は、20.3g/L(セリア)、47.3g/L(ジルコニア)であった。
【0100】
次に、イオン交換水に硝酸銀(東洋化学工業製)を溶解させて硝酸銀水溶液を調製した。次いで、前記硝酸銀水溶液を、DPFの容量1Lあたりの銀(メタル)の担持量が7.5g/Lとなるようにして、前記セリア及びジルコニアが担持されたDPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させ、500℃で5時間焼成して、DPFの隔壁に担持(コート)されているセリア及びジルコニアに銀を担持して、DPFに担持された形態の比較のための酸化触媒を製造した。なお、DPFの容量1Lあたりの銀の担持量は7.5g/Lであった。
【0101】
このようにして調製した比較のための酸化触媒(銀が担持されたセリア及びジルコニアからなる触媒を担持したDPF)を、前記酸化触媒として利用した以外は、実施例1と同様にして、比較のための酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0102】
(比較例5)
〈触媒の調製〉
先ず、実施例1の酸化触媒の調製の際に用いたDPFと同様のDPFを準備した。次に、アルミナゾル(日産化学社製の商品名「A520」)を前記DPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させた(含浸工程)。次に、前記混合液を含浸させたDPFから、吸引機で余分な混合液を除去し、大気中、250℃で1時間の焼成した(焼成工程)。このような含浸工程及び焼成工程を、DPFの容量1Lあたりのアルミナの担持量が30g/Lとなるまで繰り返し実施した後、700℃で5時間焼成して、アルミナが担持されたDPFを得た。なお、DPFの容量1Lあたりのアルミナの混合物の担持量は30g/Lであった。
【0103】
次に、イオン交換水に硝酸銀(東洋化学工業製)を溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、前記硝酸銀水溶液を、DPFの容量1Lあたりの銀(メタル)の担持量が7.5g/Lとなるようにして、前記セリア及びジルコニアが担持されたDPFの隔壁細孔内に入り込むように含浸させ、500℃で5時間焼成して、DPFの隔壁に担持(コート)されているアルミナに銀を担持して、DPFに担持された形態の比較のための酸化触媒を製造した。なお、DPFの容量1Lあたりの銀の担持量は7.5g/Lであった。
【0104】
このようにして調製した比較のための酸化触媒(銀が担持されたアルミナからなる触媒を担持したDPF)を、前記酸化触媒として利用した以外は、実施例1と同様にして、比較のための酸化触媒を備える排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度をそれぞれ求めた。得られた50%PM酸化温度の結果を図5に示す。
【0105】
[実施例1〜7及び比較例1〜6で用いた排ガス浄化装置の特性の評価]
〈X線回折(XRD)測定〉
実施例1〜4及び比較例1において、アッシュ堆積処理を実施する前の段階の各酸化触媒のDPFの触媒の担持(コート)層から粉末状の試料をそれぞれ取り出し、各試料に対してX線回折(XRD)測定を行った。このようなXRD測定により得られたXRDパターンを図6に示す。なお、図6中、記号の丸(○)は丸記号が付された位置のピークがAg(メタル)に由来するXRDピークであることを示し、三角(△)は三角記号が付された位置のピークがAgSOに由来するXRDピークであることを示す。
【0106】
図6に示す結果からも明らかなように、実施例1で用いたアッシュ堆積処理前の酸化触媒においては、XRDパターンにおいて硫酸カルシウムとAgSOの結晶相のピークのみが観測され、担体(硫酸カルシウム)に担持されている成分がAgSOのみであることが分かった。これに対して、実施例2で用いたアッシュ堆積処理前の酸化触媒においては、XRDパターンにおいて硫酸カルシウム、AgSO及びAg(メタル)の結晶相のピークが観測され、担体(硫酸カルシウム)に担持されている成分がAgSO及びAg(メタル)であることが分かった。また、実施例3〜4においては、XRDパターンにおいて硫酸カルシウムとAg(メタル)のピークが観測され、担体(硫酸カルシウム)に担持されている成分がメタル状の銀のみであることが分かった。このような結果から、リッチガスを供給することにより、担体上にメタル状の銀を析出させることが可能であることが確認された。なお、比較例1においては、XRDパターンから硫酸カルシウムのみであることが確認された。
【0107】
〈50%PM酸化温度の結果〉
図5に示す各排ガス浄化装置のアッシュ堆積処理前及びアッシュ堆積処理後の50%PM酸化温度の結果に基づいて、各排ガス浄化装置の触媒性能を評価した。
【0108】
図5に示す結果からも明らかなように、酸化触媒にアッシュ堆積処理を実施する前の実施例1〜7で得られた排ガス浄化装置と比較例1〜2得られた排ガス浄化装置のPM酸化活性を比較すると、実施例1〜7で得られた排ガス浄化装置はいずれも、比較例1及び2得られた排ガス浄化装置と比較して50%PM酸化温度が低く、比較例1〜2得られた排ガス浄化装置よりも優れたPM酸化性能を有することが分かった。このような結果は、比較例1〜2得られた排ガス浄化装置のようにDPFに硫酸カルシウム又はリン酸カルシウムを担持しただけではPM酸化活性が発現しないためであると本発明者らは推察する。
【0109】
次に、実施例1〜7で得られた排ガス浄化装置と比較例3〜5得られた排ガス浄化装置のPM酸化活性を比較すると、アッシュ堆積処理を実施する前の各装置のPM酸化活性はほぼ同等の水準のものであると言える。一方、アッシュ堆積処理を実施した後においては、比較例3〜5で得られた排ガス浄化装置はPM酸化性能が著しく低下するのに対して、実施例1〜7で得られた排ガス浄化装置はいずれもアッシュ堆積処理を実施する前とほぼ同等のPM酸化性能を示し、アッシュの堆積後においても十分に高度なPM酸化活性を維持できることが確認された。なお、アッシュ堆積処理を実施後においても比較例4で得られた排ガス浄化装置は比較的高いPM酸化活性を示しているが、アッシュ堆積による活性変化が大きく、実用上で大きな障壁のあるものであることが分かった。また、比較例4においては、アッシュの堆積厚さを50μmとしていたが、実際の使用時にアッシュ堆積厚さが更に大きくなると、PM酸化性能が更に低下することが考えられる。また、図5に示す結果から、リッチガスを供給する処理を施した場合(実施例2〜4、6〜7)には、排ガス浄化装置がより高度なPM酸化性能を有するものとなることが確認された。
【0110】
このような結果から、本発明の排ガス浄化装置(実施例1〜7)はいずれも、比較のための排ガス浄化装置(比較例1〜5)と比べて、アッシュ堆積後においても、十分に高度なPM酸化活性を維持することが可能であることが分かった。その結果、本発明の排ガス浄化装置(実施例1〜7)はいずれも、PMに被覆された触媒の活性を高精度で確実に再生させることが可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明によれば、アッシュの堆積による粒子状物質の酸化性能の低下が十分に抑制され、アッシュの堆積後においても十分に高度な粒子状物質の酸化性能を発揮することが可能な排ガス浄化装置、及び、その排ガス浄化装置を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【0112】
したがって、本発明の排ガス浄化装置及び排ガス浄化方法は、例えばディーゼルエンジンからの排ガスを浄化するための装置又は方法として特に有用である。
【符号の説明】
【0113】
11…担体、12…銀含有物質、12’ …移動性銀化合物、13…アッシュ、21…内燃機関、22…排ガス管、23…酸化触媒、24…制御手段、25…圧力センサー、26…温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置であって、
前記酸化触媒が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えること、
を特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記銀含有物質が、銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀及びリン酸銀からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記酸化触媒が、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒をパティキュレートフィルタ上に担持したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程とを交互に実施するように制御する第一制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記酸化触媒に堆積された前記排ガス中のアッシュの量を推定するアッシュ堆積量推定手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施するように制御する第二制御手段を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
内燃機関からの排ガスに含まれる粒子状物質を酸化して浄化するための酸化触媒を備える排ガス浄化装置を用いて該酸化触媒に排ガスを接触させることにより前記粒子状物質を浄化する排ガス浄化方法であって、
前記酸化触媒が、Caの硫酸塩及びリン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の金属塩からなる担体と、該担体に担持された銀含有物質とを備えるものであること、
を特徴とする排ガス浄化方法。
【請求項8】
前記銀含有物質が、銀、酸化銀、炭酸銀、硫酸銀及びリン酸銀からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の排ガス浄化方法。
【請求項9】
前記酸化触媒が、前記担体と前記銀含有物質とを備える触媒をパティキュレートフィルタ上に担持したものであることを特徴とする請求項7又は8に記載の排ガス浄化方法。
【請求項10】
前記酸化触媒に空燃比がリーンである排ガスを接触させる工程と、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程とを交互に実施することを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化方法。
【請求項11】
前記排ガス浄化装置が、前記酸化触媒に堆積された前記排ガス中のアッシュの量を推定するアッシュ堆積量推定手段を更に備えたものであり、且つ、
前記アッシュ堆積量推定手段により推定されるアッシュの堆積量が基準値を超えた場合に、前記酸化触媒に前記空燃比がリッチである排ガスを接触させる工程を実施することを特徴とする請求項7〜10のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219715(P2012−219715A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86450(P2011−86450)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】