説明

排気ガス処理方法及び処理装置

【課題】自動車等の排気ガス中に含まれるNOXをプラズマリアクタにより効率よく吸着しかつNOxをN2に還元する排気ガスの処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】吸着塔内部に吸着剤を備え、排気ガス中のNOxを含む被処理成分を前記塔内に流入し、該吸着剤に吸着させる工程、酸素濃度10vol%以下で純度90vol%以上の窒素ガスを前記塔内部の前記吸着剤に供給する工程、前記工程中において、前記排ガスの有する熱を前記吸着剤に伝熱する工程、前記伝熱により、前記被処理成分の脱着処理及び吸着剤再生を行う工程、前記工程において脱着された被処理成分を、下流に接続又は一体化して配置されたプラズマリアクタ内に導く工程、脱着された被処理成分に前記窒素ガスのプラズマを印加する工程、を備えて、NOxをN2に還元することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンなどの排気ガスの処理方法及び処理装置に関するもので、特に排気ガス中にNOxを含むガスの処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラ、ガスタービン等の燃焼装置で発生した燃焼ガスを排気系を経由して排出する際における排気ガスの規制強化が進められている。一つの方法としては、排気ガス中の有害成分あるいは被処理成分を乾式触媒処理装置を用いて除去処理することが行われている。
【0003】
他方、排気ガス浄化、窒素酸化物(NOx)処理方法の一つとしては、非熱プラズマを用いたPPCP(Pulse Corona Induced Plasma chemical Process)方式、あるいは、湿式化学プロセス装置による窒素(N2)へ還元するハイブリッド方式(特許文献1)がある。
【0004】
また、主としてディーゼルエンジンの排ガス処理を目的として、エンジンの排気ガス流路においてガス中の被処理成分を吸着剤に吸着後、窒素ガス又は低酸素ガスを吸着剤の存在する流路に流し、放電を発生させ前記窒素ガスの非熱プラズマを吸着剤に印加し、被処理成分の脱着処理及び吸着剤の再生及び下流での窒素プラズマによる被処理成分を行う高効率NOx除去の方式がある(特許文献2)。
【0005】
従来火力発電所などの大型固定発生源からの排ガスに対して、集塵装置(粒子捕集)や脱硫装置(DeSOx)は比較的経済的な高性能除去技術を確立してきたが、従来式の選択触媒還元方式では、脱硝装置(DeNOx)には運転温度条件、除去効率、コスト面で大きな問題があった。本発明者らにより、更に、大気圧非平衡低温プラズマ処理と化学反応プロセスを結合させ、プラズマによりまずNOを低電力で完全に酸化させ、生じたNO2をNa2SO3により還元するハイブリッド法により、N2Oなどの副生成物の発生を抑制させつつ、選択的触媒還元法の1/4以下のコストとなる高効率NOx除去法が開発された(特許文献1)。
【0006】
また、主としてディーゼルエンジンの排ガス処理を目的として、エンジンの排気ガス流路においてガス中の被処理成分を吸着剤に吸着後、窒素ガス又は低酸素ガスを吸着剤の存在する流路に流し、放電を発生させ前記窒素ガスの非熱プラズマを吸着剤に印加し、被処理成分の脱着処理及び吸着剤の再生及び下流での窒素プラズマによる被処理成分を行う高効率NOx除去が開発された(特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−117049号
【特許文献2】PCT/JP2004/014737
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車の排出ガス中に含まれる生理的な影響を及ぼす有害物質には、一酸化炭素(CO),窒素酸化物(NOx),炭化水素(HC)など多種類の成分があるが、一酸化炭素に対して必要とする換気量で換気を行えば、その他の有害成分は安全な濃度になるとしている。
【0008】
自動車の排出ガス中には、燃料である炭化水素の燃焼生成物として二酸化炭素(CO2)および水分(H2O)が主成分として含まれるほか、複雑な燃焼過程における中間生成物、未燃焼成分、燃料に含まれる不純物の燃焼生成物、燃料および空気が高温・高圧下におかれるための反応生成物など極めて多種多様の成分が含まれる。
【0009】
これらのうち有害成分として問題となるものの内で、空気が高温・高圧下におかれるために窒素と酸素が反応して生じる窒素酸化物(NOx:NO,NO2など)および不純物からの生成物質としての硫黄酸化物(SOx)などである。
【0010】
その中で、窒素酸化物の従来からの処理方式は、NOxを含む被処理成分を吸着剤に吸着させた後に化学処理を施して除去していたが、本発明は、非熱プラズマを吸着剤に印加して処理し、吸着剤に湿式処理などの複雑な化学処理をすることなく処理することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
主な第1の解決手段は、吸着剤層と、該吸着剤層に接するように埋設された排ガス管を有する吸着塔と、プラズマ処理部とを備え、
排ガスを前記吸着剤層に導入してNOxを含む被処理成分を吸着させる吸着工程と、
一方、被処理成分が吸着された吸着剤層から被処理成分を脱着させるために、前記排ガス管に排ガスを導入して熱交換により吸着剤層に熱を付加すると共に、酸素濃度10vol%以下で純度90vol%以上の窒素ガスを吸着剤層に導入する脱着工程と、
被処理成分を含む窒素ガスをプラズマ処理部に導いてプラズマ処理を行うプラズマ処理工程とからなり、
前記吸着工程と脱着工程とを切り換えて行なうように構成されたことを特徴とする排気ガス処理方法に関する。
【0012】
さらには、前記吸着塔内に、排気ガスの除湿剤をさらに備えたことにある。
【0013】
主な第2の解決手段は、
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、
吸着剤を充填した吸着筐体を内部に設けた吸着塔と、
排気ガス中のNOxを含む被処理成分を前記吸着塔内部の吸着筐体に流入させる流入部と、
酸素濃度10vol%以下で純度90vol%以上の窒素ガスを前記塔内部の前記吸着剤に供給する供給部と、
前記排気ガスの有する熱を前記吸着剤に伝熱して前記被処理成分の脱着処理及び吸着剤再生を行う脱着及び再生処理工程部と、
吸着塔の下流に接続又は一体化して配置されたプラズマリアクタと、
脱着された被処理成分を前記プラズマリアクタ内に供給するとともに前記窒素ガスのプラズマを印加するプラズマ発生工程部、
とを備えた排気ガス処理装置である。
【0014】
本発明のガス処理方法及び処理装置においては、排気ガスの吸着工程の下流にプラズマリアクタを設け、即ち、排気ガス中のNOxなどを吸着剤に吸着させた後、吸着剤に排気ガスの熱を伝熱し、同時に窒素ガスを流しながら、NOxを吸着剤から脱着 (脱着工程) させて下流のプラズマリアクタにて印加してNOxをN2に還元することを特徴とする。
【0015】
さらに本発明では、排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)などの被処理成分を吸着剤に吸着(吸収とも言う)させる吸着工程と、被処理成分の脱着(脱離とも言う)を排気ガスの熱を伝熱させて行う脱着工程と、窒素ガスを主成分とするガスにより吸着剤を再生する工程と、吸着工程の下流にあるプラズマリアクタにて窒素酸化物を処理する工程とを組み合わせることにより、急速かつ高効率に行うシステムを順次に備えるようにしたことを特徴とする。これにより被処理成分を高濃度化すると同時に、吸着剤の再生を行うガス処理方法、ならびにその下流でさらに、窒素ガスを主成分とするプラズマにより、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)などの被処理成分を高効率に除去して大気中に排出する排気ガス処理方法、ならびに以上の技術を利用し、吸着剤の切り替え、排気ガスの循環処理を行い、高効率、省エネルギーなガス処理方法と装置を提供し、地球環境の保全に資するものである。
【発明の効果】
【0016】
前述したように、本発明のガス処理方法及び装置は、吸着材に吸着したNO2等を化学的に処理して化学物質を処分するのではなく、電気的に処理して気体にして分解処理して大気に放出することにより、残留物質が残らない方式を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明による熱脱着を利用した,1実施例のNOx処理システム流路の概略図である。
吸着塔AとBは同じものである。吸着塔AとBは、NOx吸着剤1を充填した部分と、エンジン排ガスの水分を除去する除湿剤2を充填した部分と、からなる筐体3を備える。また,塔内部に管4が埋め込まれており、ここに排気ガスを流通させることで、除湿剤2、NO吸着剤1を加熱し、吸着した水分やNOxを脱着させ、吸着力を再生する。この塔内に埋め込まれた管4の内外では、ガス交換はされず、熱交換のみが生じる。
吸着塔AとBは、NOx吸着工程と吸着剤の再生工程を交互に繰り返す。図では吸着塔Aが再生工程にあり、吸着塔BがNOx吸着工程にある。この状態では開閉バルブ5a:開、5b:閉となっている。
ディーゼルエンジンからの排気ガスは、まず、3方弁aを通って、流入口6から吸着塔Aの内部に埋め込まれた管4を通り、吸着塔AのNOx吸着剤1と除湿剤2を加熱するとともに、自身は冷却される。吸着塔Aを出た排気ガスは空冷熱交換器7で露点以下に冷却され、凝縮した水分はドレインポット8で捕集される。この工程である程度除湿された排気ガスはさらに、吸着塔Bの除湿剤2に流入して、さらに乾燥され、次に3方弁g,fと通って、NOx吸着剤1に流入し、吸着剤によってNOxを除去された後、3方弁eを通って、排気口9から大気中に排出される。
一方、再生工程にある吸着塔Aでは、まず、水分脱着用のエア10が、大気中からエアポンプ(図示なし)等によって供給ライン11から3方弁dを通って、除湿剤2に送り込まれている。加熱されて除湿剤2から脱着した水蒸気はこのエアによって運ばれ、開閉バルブ5aを通って、大気中に排出される。次に、NOx脱着用の窒素12はパイプライン13から3方弁bを通って、NOx吸着剤1に流入し、加熱によって脱着されたNOxを含んで、3方弁cを通ってプラズマリアクタ14に流入する。プラズマリアクタ14ではNOxは窒素非熱プラズマによってN2に還元され、大気中に排出される。
【0018】
吸着塔A,Bの詳細を図2吸着塔の部分断面詳細図に示す。ここの例では、200ccのディーゼルエンジン排気ガスを処理するための装置として示す。図2(1)上面図では、NOx吸着剤1を充填した四角形筐体21を表しており、吸着剤1が充填される部分は、約L48×W12.7×H3.5 cmで構成された四角形枠体22であり、この上面中央部に、フランジ23−1を付けた四角形の開口部23を設け、球形またはシリンダー形の吸着剤ペレット1が枠体内に層状に充填され、蓋体24にて開口部フランジ23−1とでネジ止めされて、密封される。さらに、蓋体の内面には吸着剤押材24−1が付設され、吸着剤ペレットが本体から出ないように施されている。この枠体22の中では図の左側から右側にかけて、排気ガスを導入するための別管、例えば複数の扁平管25が筒体内部の吸着剤充填部分と独立して配置されている。この扁平管25は図2(3)左側面図及び(4)扁平管の正面拡大図に示すように、加熱が充分に活用できるように扁平状にされている。筒体の両側には補助枠体26、27が設けられ、扁平管と導入側との配管ジョイントや他の配管との接続用に用いられる。また、同じ筐体とのつなぎをなす。
【0019】
ここでの実施例では、排気ガスの加熱用伝熱流として管内に流れる方向と窒素ガスの吸着剤中を流れる方向は対抗流とすることがよく、また、除湿剤の水分脱着用エアーの流れも排気ガスの加熱用伝熱流に対抗する流れがよい。即ち、NOxも水分も吸着剤や除湿剤の上流部分ほど多く蓄積されるので、加熱用排ガスも上流ほど高温になるため、再生時は上流部分ほど高温にした方が、熱エネルギーを有効に使えるようにしている。もし、脱着用窒素ガスやエアの流れの向きを、被処理ガスと同一にすると、高温によって脱着したNOxまたは水分が、脱着ガスの下流部分で、再吸着しやすくなる。これは、窒素ガスやエアに運ばれたNOxや水分が、これら成分の蓄積量が少ない吸着剤の領域を通過するためである(蓄積量が少ないと吸着力は強くなる)。
しかし、装置の大きさや装備、配置場所によっては、必ずしも実施例通りの流れとしなくても実施できる。
【0020】
さらに、枠体の上面には開口部以外の側部に配管用の開口部28、29が付設されており、窒素ガス用配管、プラズマリアクタ用配管とジョイントされる。この開口部28,29の下側には金属メッシュ30,31が施設されて、吸着剤ペレットが塔外にあふれ出ることを防いでいる。
【0021】
除湿剤2についても、上記の吸着剤充填用枠体と同様の構成筐体3を用いて、この中には除湿剤としてはシリカゲル,モレキュラシーブ5A,3Aを充填している。これらは,排気ガスNOxの主成分であるNOをほとんど吸着せず,水蒸気のみを吸着するので好適である.
図1で示すように、吸着剤筐体と除湿剤筐体は直列につながり、吸着塔Aを構成し、図2の筐体および配管の上下左右は便宜的なものであり,実際には筐体のどの面を上にするかは塔の配置によって設計できることである。
【0022】
扁平管は適当な径の金属管を圧縮して製作するか、凹面をなす金属短冊を2枚向き合わせ,接合して製作することができる。また、扁平管は、筐体内部には数箇の層状を構成し、ペレットの配置に適している。仕切り板32は、扁平管にガスが入りやすいように設定されている。
【0023】
本発明の流れを図1、図2について説明すると、
加熱用の排気ガスは、図1、図2の左側の流入口6,33から入り、仕切り板32で一旦せき止められてから、扁平な複数の管に流入する。扁平な管を通る排気ガスは扁平管の外側に充填された吸着剤ペレットを加熱した後、扁平管を出て、図の右側の流出口から、塔外に出る。この時、加熱用の排気ガスは吸着剤ペレットと触れることはない。管断面形状を扁平としたのは伝熱面積を大きくするためである。
NO脱着用窒素ガス12は図1の上方から、窒素ガス供給管13を経て塔内に流入し、図2に示すように、開口部29から入り、メッシュ31を通って、吸着剤1ペレットの充填された領域に入る。ガスはペレット間の隙間を通って、NOx成分を吸着除去しながら、図の左方に進み、メッシュ30を通って、上方に出てプラズマリアクタ14に行く。
【0024】
効率よく、本発明の排気ガス処理方法を実施するためには、吸着塔Aと同じ構成の吸着塔Bを直列に連結し、吸着塔Aを伝熱工程を経て出てきた排気ガスは、空冷熱交換器7によって、冷却されドレインポット8を通過して除水されて吸着塔Bの除湿剤2内に送られ、ここで除湿された後、3方弁g及び3方弁fを介して吸着塔BのNOx吸着剤1にて排気ガス中のNOx成分が吸着され、3方弁eを介して、排気口9から大気中に排出される。
【0025】
吸着塔Aと吸着塔Bの構成を1つ塔内に備えることもできるし、吸着塔を2つ並列にして且つ直列につなげることで操作することもできる。いずれも、NOx吸着工程のラインとNOxの再生工程のラインを直列に接続する。
【0026】
図1においては、吸着塔Aから排気ガスが伝熱工程に流入する排気ガスラインと窒素ガスライン及び水分脱着用エアラインおよび吸着塔Bでの排気ガス中のNOx吸着工程、は作動しており(実線で示す)、吸着塔Bからの排気ガスラインなどは休止している(点線で示す)。
【0027】
除湿剤2としてはシリカゲル,モレキュラシーブ5A,3Aを用いた結果を示す。図3(a)はシリカゲルペレットにSV(空間速度=処理流量/吸着剤の嵩)=7643 h-1で水蒸気1.2 vol%,NOx 350 ppmを含むエンジン排気ガスを流通させた場合の下流でのガス濃度を示している。図3の上図に示すように、350 ppmのNOxはほとんど吸着されていないことがわかる。また、図3の下図に示すように、水蒸気は50分間以上にわたり、吸着され、排気ガスは除湿されていることがわかる。これらは、排気ガスNOxの主成分であるNOをほとんど吸着せず、水蒸気のみを吸着するので好適であることを示している。
【0028】
NO吸着剤1にはモレキュラシーブ13Xを用いる。図3(b)はモレキュラシーブ13XペレットにNOx 350 ppmを含むエンジン排気ガスをSV=7643 h-1で流通させた結果である。図3(b)に示すように排気ガスの下流でのNOx濃度は660分間以上に渡り、低濃度に保たれていることがわかる。
【0029】
図4は、1実施例として、200ccのディーゼルエンジンのNOx処理用のプラズマリアクタの説明図である.図4(1)は、プラズマリアクタの上面図であり、(2)は、同側面図であり、(3)は、同正面図であり、(4)は沿面放電素子の正面図である。図4(4)の沿面放電素子正面図で示すような沿面放電素子41を、素子取付け板42、43に、6本づつ取り付けられ、この取付け板42,43が組み合されて,本体容器44には一体として取付けられ、計12本となる。本体容器44および取り付け板42,43はステンレスを用いるが、適度の強度と密閉性を持てばどのような素材でも良い。(2)の側面図、(3)正面図からわかるように、沿面放電素子41は、上下から互い違いに本体内に配置されている。また、電極パターン45が印刷された面が、本体の中心を向くように素子が電極パターンの位置49のように配置されている。本体左側から流入した被処理ガスは、電極パターンが存在する表面のみに接触し、本体右側から流出するように構成されている。
交流電圧による沿面放電素子41は、(4)沿面放電素子正面図に示すように、電極パターン45をセラミック管46の外面に形成し、セラミック管の上部には取り付け用フランジ47が付設されている。例えば、直径13 mmのアルミナセラミック製の筒46の表面に電極パターン45が印刷され、同時に筒内に電極48が埋設されている。表面の電極パターン45と埋設された電極48間に交流高電圧(たとえば、12.5kHz,3.8 kV,(図5の波形1参照)を印加すると、セラミック表面にプラズマが発生し、周囲のNOxをN2に還元する。素子1本あたりの放電電力は約12 Wである。
【0030】
プラズマリアクタで印加する電圧は、図5に示すように、(1)に示す交流高電圧による波形1(AC)でもよく、(2)に示す波形2(パルス)のようなパルス状とすることもある。素子は取り付けフランジを備えるので、取り付け板にネジ止めする。また、電極パターンはセラミック筒の半周分しか印刷されていない。図4(2)側面図からわかるように,電極パターンを印刷された面が、本体の中心を向くように素子が配置されている。被処理ガスは、電極パターンが存在する表面のみに接触し、本体右側から流出する。このような配置とすることで、すべての流通ガスが、電極パターンに接触し、効率的にNOx還元ができる。
【0031】
図4の実施例では2列配列を示したが、可能な素子の配置パターンとして図6の電極の配置(上面)図に示す。沿面放電素子41の電極パターン45が、周囲のガスと触れる限り、特に限定はされない。配置例としては(1)格子状、(2)千鳥状が考えられ、この場合は、電極パターンの存在する面の向きや列数は限定されない。なお、波線はガスの流れ方向を示す。
【0032】
図7は、本発明他実施例のヒーター付吸着塔の部分断面図を示し、実際に加熱によるNO吸着剤の再生と沿面放電素子による脱着NOxの還元を行う工程を端的に示している。内部にヒーター71を持ち、図4のエンジン排ガスが通る扁平管の役割を模している。このヒーター71は、棒状ガラス管72内の半分にニクロム線73による発熱部を備えている。全体の構造としては、ガス入口74とガス出口75を有する耐熱性ガラス筒状容器76を用意し、ガラス筒状容器76の内部のヒーター部分にはMS13Xペレット77を充填する.ヒーター部分には、ガラス容器の外周に断熱材78を囲繞させておく。なお、金属メッシュ79は充填剤77が落ちないように保護している。
【0033】
図8は、本発明のプラズマリアクタ操作を示す部分断面図であり、図4の沿面放電素子41の1本をアルミ製容器81に収めて用いる。このアルミ製容器81はガス入口82とガス出口83を有する。
【0034】
実施例として、350 ppmのNOx(内300 ppmがNO)2 L/minを60〜120分間吸着させ、再生工程では0.5 L/minのN2を吸着時とは逆方向に流して6〜9.5分間NOxを脱着させる。脱着したガスのうち、0.1または0.2 L/minをプラズマリアクタ内に流入させて、下流ガスのNOxを測定する。その結果は、NOx処理の濃度と時間のプロットとして図9に示す。実験的に示すために、○印は吸着時、●は再生時、△は再生なし、の場合を表示する。
【0035】
図9より、プラズマリアクタを通さなかった場合の脱着したNOxの濃度は最高で17000 ppmとなる。脱着ガスのうち0.1または0.2 L/minをプラズマリアクタに流入させると、NOxの大部分が還元処理されることがわかる(瞬間的には0.1 L/minの場合、100 ppm前後、0.2 L/minでは5000 ppm前後が、未処理で、流出したが、量的にはほとんどが還元処理されている)。また、再生工程を行わない場合は、流通開始660分の時点で75 ppmのNOxが、吸着されずに流出したが、120分に1回再生を行うことで、18 ppm以下に保つことができた。以上より、加熱による再生とプラズマにより還元処理を組合わせて、NOx処理システムが、成立することが示された。
【0036】
供給する窒素ガスの酸素濃度については、いままでの経験から、0%の時には、ほぼ0%のNOx残存率、言い換えると100%のNOx除去が達成できているが、酸素濃度が増加するにつれてNOx又はNO残存量は増加し、NO2あるいは少量のHNO3、N2O5、N2O等に変換される割合が大きくなる。酸素濃度が6%以上で10%に近づくとNOの減少量の大部分はNO2等に変換され、実質的な公害の処理はほとんど行われなくなる。
以上から、酸素濃度10vol%以下で純度90vol%以上の窒素ガスを用いた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明1実施例のNOx処理システム流路の概略図である。
【図2】本発明における吸着塔の部分断面詳細図を示す。
【図3】本発明に使用する、除湿剤の特性図(a)と吸着剤の特性図(b)を示す。
【図4】本発明における、プラズマリアクタの説明図である。
【図5】本発明に用いる印加電圧の電圧波形を示す。
【図6】電極の配置を示す上面図である。
【図7】本発明の他実施例に用いるヒーター付吸着塔の部分断面図である。
【図8】本発明の他実施例に用いるプラズマリアクタの部分断面図である。
【図9】本発明における、NOx処理での濃度変化と経過時間を示す。
【符号の説明】
【0038】
A,B 吸着塔
a,b,c,d,e,f,g, 3方弁
1 NO吸着剤
2 除湿剤
3 筐体
4 管
5a,b 開閉弁
6 排気ガス流入口
7 空冷熱交換器
8 ドレインポット
9 排気口
10 水分脱着用エアー
11 エアー供給ライン
12 NO脱着用窒素ガス
13 窒素ガス供給ライン
14 プラズマリアクタ
21 四角形筐体
22 四角形枠体
23 開口部
24 蓋体
25 扁平管
26,27 補助枠体
28、29 配管用開口部
30、31 メッシュ
32 仕切り板
33 流入口
41 沿面放電素子
42,43 素子取付け板
44 本体容器
45 電極パターン
46 セラミック管
47 取付けフランジ
48 電極
49 電極パターン位置
71 ヒーター
72 ガラス管
73 ニクロム線
74 ガス入口
75 ガス出口
76 耐熱性ガラス管
77 ペレット
78 断熱材
79 金属メッシュ
81 アルミニウム容器
82 ガス入口
83 ガス出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤層と、該吸着剤層に接するように埋設された排ガス管を有する吸着塔と、プラズマ処理部とを備え、
排ガスを前記吸着剤層に導入してNOxを含む被処理成分を吸着させる吸着工程と、
一方、被処理成分が吸着された吸着剤層から被処理成分を脱着させるために、前記排ガス管に排ガスを導入して熱交換により吸着剤層に熱を付加すると共に、酸素濃度10vol%以下で純度90vol%以上の窒素ガスを吸着剤層に導入する脱着工程と、
被処理成分を含む窒素ガスをプラズマ処理部に導いてプラズマ処理を行うプラズマ処理工程とからなり、
前記吸着工程と脱着工程とを切り換えて行なうように構成されたことを特徴とする排気ガス処理方法。
【請求項2】
前記プラズマを印加する工程が、交流電圧による沿面放電方式を用いたことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス処理方法。
【請求項3】
前記吸着塔内に、排気ガスの除湿剤をさらに備えた請求項1又は2のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
【請求項4】
前記吸着塔を複数準備し、切り替えできるように配置した請求項1〜3のいずれかに記載の排気ガス処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法を実施するための装置であって、
吸着剤を充填した吸着筐体を内部に設けた吸着塔と、
排気ガス中のNOxを含む被処理成分を前記吸着塔内部の吸着筐体に流入させる流入部と、
酸素濃度10vol%以下で純度90vol%以上の窒素ガスを前記塔内部の前記吸着剤に供給する供給部と、
前記排気ガスの有する熱を前記吸着剤に伝熱して前記被処理成分の脱着処理及び吸着剤再生を行う脱着及び再生処理工程部と、
吸着塔の下流に接続又は一体化して配置されたプラズマリアクタと、
脱着された被処理成分を前記プラズマリアクタ内に供給するとともに前記窒素ガスのプラズマを印加するプラズマ発生工程部、
とを備えた排気ガス処理装置。
【請求項6】
前記プラズマを印加する工程が、交流電圧による沿面放電方式を備えた請求項5に記載の排気ガス処理装置。
【請求項7】
前記吸着筒内に、排気ガスの除湿剤をさらに備えた請求項5又は6のいずれかに記載の排気ガス処理装置。
【請求項8】
前記吸着筐体を複数準備し、切り替えできるように配置した請求項5〜7のいずれかに記載の排気ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−321678(P2007−321678A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153731(P2006−153731)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】