排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法
【課題】NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、触媒を担持した部分の温度を均一温度に加熱することができて、速やかに触媒の浄化機能を効率よく利用できる排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置10を備えた排気ガス浄化システム1において、前記排気ガス浄化装置10の触媒を担持した部分の外周をヒータ31で包み、該ヒータ31に流す電流が周方向に流れるように、該ヒータ31の通電部分を長手方向に分割して設ける。
【解決手段】排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置10を備えた排気ガス浄化システム1において、前記排気ガス浄化装置10の触媒を担持した部分の外周をヒータ31で包み、該ヒータ31に流す電流が周方向に流れるように、該ヒータ31の通電部分を長手方向に分割して設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を担持した部分の外周にヒータを配置した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスを浄化するための装置の一つに、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の浄化のためのNOx浄化触媒装置がある。このNOx浄化触媒装置の一つに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して、酸素過剰な排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒を担持した装置がある。このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスが酸素過剰なリーン空燃比状態では、NOxを吸蔵し、酸素濃度が低いか、空燃比が1より小さいリッチ空燃比状態では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。
【0003】
また、排気ガス浄化装置の別の装置として、NOxを吸蔵することはできないが、貴金属を主に担持して、その酸化作用により、CO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)を酸化除去する酸化触媒装置がある。更に、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を捕集して、フィルタに担持した酸化触媒やPM酸化触媒により酸化除去する触媒付きフィルタ装置がある。
【0004】
これらの排気ガス浄化装置を使用して、内燃機関から排出される排気ガス中のNOx、CO、HC、PM等の有害成分を浄化して、これらの有害成分の大気中への放出量を減少し、排出基準以下にまで下げている。
【0005】
しかしながら、これらの触媒を使用した排気ガス浄化システム(排気ガスの後処理システム)では、触媒が活性化して浄化反応が可能となる温度まで、触媒を昇温させる必要がある。触媒の種類にもよるが、概略、200℃〜250℃の温度に到達すると、触媒はその浄化反応を開始する。そのため、触媒の温度がこの活性化温度に到達するまでは、排気ガス中の有害成分を触媒反応で除去することはできず、有害成分がそのまま大気中へ排出されてしまうという問題がある。言い換えれば、触媒を用いた排気ガス浄化システムでは、触媒が浄化反応を始める温度への到達時間が短ければ、その分だけ大気中へ放出される有害成分の量を減らすことができる。
【0006】
従って、これらのNOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置を備えた排気ガス浄化システムにおいては、エンジン始動直後等で、触媒の温度が低い場合に活性化温度までの到達時間を短くするために、排気ガスを触媒の内周部へ集中して流し、加熱される触媒を担持した部分を少なくすることが考えられる。
【0007】
これに関連して、触媒の上流に流路制御機構を設けて、排気ガスの温度が低い時には触媒の中心部に排気ガスの流れを集中して、触媒温度の活性化温度への到達を早くし、排気ガスの温度が高い時には触媒の周辺部に集中して排気ガスを流し、排気ガスが高温となっても、触媒でのサルフェートの生成、及び堆積を防止するディーゼルエンジンの触媒コンバータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このディーゼルエンジンの触媒コンバータでは、触媒コンバータのハウジングの外表面に複数の冷却ファンを設けると効果的であるとし、サルフェートの生成を抑えるために、排気ガスが高温状態になった時に、排気ガスを、触媒の中央部には流さずに、温度が低い触媒の周辺部に集中して通過させている。
【0009】
しかしながら、外周部の温度を低温に保つことは、サルフェートの生成を抑えることには有効であると考えられるが、NOx浄化のためには触媒の活性化温度以上に触媒全体の温度を上げる必要があるので、外周部の低温化はNOx浄化の面からは好ましくない。また、触媒内に生成したサルフェートを除去するために、温度を上げて脱硫させる場合に、触媒の外周部の温度上昇が難しく、外周部の脱硫再生が難しくなるという問題がある。
【0010】
また、酸化触媒を担持させた高温排気ガス処理部を中央に、加熱手段を取り付けた低温排気ガス処理部を周辺に設けて、排気ガス温度が酸化触媒活性化温度以下である場合には、加熱手段を作動させて排気ガスを酸化触媒活性化温度以上に加熱して低温排気ガス処理部に流して、始動時や排気ガス温度が低下した場合における排気ガス浄化効率を向上させ、また、排気ガス温度が酸化触媒活性化温度以上である場合には、加熱手段の作動を停止し、排気ガスを高温排気ガス処理部に流して、酸化触媒による有害成分の浄化を行う自動車用排気ガス処理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
この自動車用排気ガス処理装置では、排気ガス温度が高い場合には高温排気ガス処理部と低温排気ガス処理部に排気ガスを流して浄化し、また、エンジンの始動時や排気ガスが高温から低温になった場合には、経路を切り換えて、加熱手段経由で周辺部の低温排気ガス処理部に流入させる。これにより排気ガスを加熱手段で触媒活性化温度以上に加熱し、この加熱された排気ガスを低温排気ガス処理部に流入させて浄化している。
【0012】
しかしながら、一般的には、放熱の関係から、触媒の中央部が高い温度に成り易く、周辺部は低い温度に成り易いので、低温排気ガス処理部を周辺側に設けているこの自動車用排気ガス処理装置の構成は熱効率が悪いという問題がある。
【0013】
これに対して、本発明者は、外周部の触媒の昇温時間を短くする手段として、電熱ヒータを低温に成り易い外周部の外周を覆って配置して、このヒータに通電することにより、外周部を外側から加熱することを考えた。
【0014】
この外周側にヒータを配置することに関連して、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集するランダムに積層された不織布から成るセラミック繊維材の外側に通電金網を巻き付けたディーゼルパティキュレートフィルタが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0015】
このディーゼルパティキュレートフィルタでは、排気ガスを外周側の通電金網から内周側のセラミック繊維材に流すとともに、この通電金網に通電してフィルタ本体を加熱してセラミック繊維材に捕集されたパティキュレートを加熱して焼却してフィルタを再生している。
【0016】
しかしながら、単純に排気ガス浄化装置の外周に通電金網を設けただけでは、通電金網に通電して加熱しようとすると、外周全体が一様に加熱されてしまう。そのため、排気ガス中の有害成分が触媒反応で生じる熱が排気ガスの移動により下流側に伝達されるため、下流側の温度が上流側の温度よりも高くなってしまい、排気ガス浄化装置の触媒を均一温度に加熱できない。触媒が均一温度にならないと、再生処理を行わない通常の排気ガスの有害成分の浄化時においては、低温部では活性化が不完全となり、高温部ではサルフェートの蓄積の問題が生じ、また、触媒を高温にする必要がある脱硫処理時には、低温部では脱硫処理が不完全となり、高温部では触媒の劣化の問題が生じる。
【特許文献1】特開平10−299465号公報
【特許文献2】特開2002−295233号公報
【特許文献3】特開平08−312328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、触媒を担持した部分の温度を均一温度に加熱することができて、速やかに触媒の浄化機能を効率よく利用できる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化システムは、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けて構成する。
【0019】
この構成によれば、排気ガス浄化装置の触媒容器を介して放熱する熱量を、ヒータへの通電による加熱で補うことができ、触媒を担持した部分の外周部全体の温度低下を抑制することができる。また、触媒を担持した部分の外周部を、内燃機関からの排気ガスの熱量に依存することなく、ヒータへの通電により加熱して昇温させて活性化温度域内に維持できるので、活性化温度に昇温するまでの時間を著しく短縮できる。従って、触媒が活性化温度域に昇温するまでの間に放出される有害成分の排出量を著しく減少することができる。
【0020】
また、一般的には、排気ガス浄化装置の下流側では触媒反応によって発生する熱により上流側よりも温度が高くなるが、ヒータの電流を周方向に並列的に流すことで、排気ガス浄化装置の長手方向毎に電流量を変化せることができ、排気ガスの上流側から下流側になるに従って、それぞれ異なった加熱ができるようになり、触媒の温度を全体的に均一に維持することが比較的容易にできる。つまり、ヒータの材料に温度が上昇すると電気抵抗が減少する一般的なヒータの材料を使用すると、温度が低く電流抵抗値が小さい部分には電流量が増加して効率よく加熱できると共に、温度が高く電流抵抗値が高い部分では電流量が減少して加熱を抑制することができる。
【0021】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成する。
【0022】
この構成によれば、暖機運転や低負荷運転等の排気ガス温度が低い場合には、中央筒部のみに排気ガスを流して中央筒部の触媒の温度を迅速に活性化温度以上にすることができる。その一方で、排気ガスの容積流量が増加して、排気ガスを外周部へも流す時に、外周部の触媒の昇温の遅れが著しく大きくなるが、ヒータを設けてこのヒータで加熱することで、この外周部の触媒の昇温の遅れを防止できる。つまり、この2分割構造において、特に外周部にヒータを設ける効果が大きくなる。
【0023】
また、内燃機関の始動直後において、排気ガスにより内燃機関からの排気熱が触媒を担持する部分に伝達されて触媒の温度を上昇させる場合に、排気ガスを中心部分に集中させることが行われる。この場合に、外周部と中央筒部の間に遮熱構造の筒状の仕切り壁、言い換えれば、保温リングを設けているので、熱容量を小さくした中央筒部に被加熱部を限定することができる。
【0024】
従って、加熱すべき熱容量を小さくすると共に中央筒部から外周部への熱伝達を少なくしているので、活性化温度まで昇温するのに必要な時間を短くすることができる。また、外周部を昇温する必要が生じて、ヒータに通電して外周部の外周を加熱する際でも、遮熱構造の筒状の仕切り壁で加熱部分の熱容量を少なくすると共に外周部から中央筒部への熱伝達を少なくしているので、外周部の温度を短時間で昇温させることができる。
【0025】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記ヒータに通電する電流量により前記触媒を担持した部分の外周部位の温度を推定し、この推定値に基づいて、前記ヒータへの通電量を制御して、前記触媒を担持した部分の温度制御を行うように構成する。
【0026】
ヒータの抵抗はその配置した場所の温度によって変化し、その抵抗に応じて、一定電圧で通電する電流量は変化するので、電流量を温度のセンサ信号として使用でき、この電流量から触媒外周部温度を推定しながら、印加電圧の制御を行うことにより、より適切な温度分布にすることが比較的容易にできる。
【0027】
なお、通電時以外においても、加熱には至らない程度の低電圧をヒータに印加すれば微弱電流が流れるので、この微弱電流を検知することで、この微弱電流からヒータ部位の温度を求め、触媒を担持した部分の外周温度を推定し、その値に応じて通電電圧のオンオフと通電量を制御して触媒を担持した部分の外周部位の温度制御を行うことが容易にできる。
【0028】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記ヒータの通電電流を計測することで、触媒の活性化温度を推定し、この活性化温度から触媒の劣化度合いを推定する。
【0029】
また、触媒が活性化して触媒反応が発生するようになると、反応熱が発生して温度が上昇し始めるので、この温度上昇の開始時のヒータ通電電流を計測することで、触媒の活性化温度の上昇の程度を推定することができる。一方、触媒は劣化により触媒反応の開始温度である活性化温度が次第に高温側にシフトする。従って、触媒温度に密接な関係を持つヒータの電流値の温度上昇開始時の通電電流の変化から触媒の劣化度合いを把握することができる。なお、排気ガスの流れ方向(排気ガス浄化装置の長手方向)にヒータを分割して数列配置することで、触媒の劣化状況を更に細かく把握することも可能となる。
【0030】
そして、上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化方法は、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成すると共に、前記外周部の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けた排気ガス浄化システムの排気ガス浄化方法であって、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整することを特徴とする。
【0031】
この「第1指標温度」は、中央筒部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言う。これは、触媒の温度を直接計測するのは難しい場合が多いので、代わりにこの触媒の温度に密接な関係を持った温度、例えば、中央筒部に流入する排気ガスの温度や中央筒部から流出する排気ガスの温度を用いることもある。そのため、この代わりに用いる温度も含む表現として「第1指標温度」と表現している。
【0032】
また、第1判定温度は触媒の活性化温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、200℃〜300℃の範囲内の温度であり、例えば250℃に設定される。
【0033】
この方法によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、第1指標温度が低く、排気ガスの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部に排気ガスを流して、中央筒部の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。また、第1指標温度が高く排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部と外周部の両方に排気ガスを流して、排気ガスが通過する部分の容積を増やして、排気ガスに対する空間速度を下げて、排気ガスが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。
【0034】
また、外周部に排気ガスを流す場合に、ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整するので、外周部を外周側から加熱して速やか活性化温度に昇温させることができ、昇温後は通電量を調整して外周部の触媒の温度を活性化温度域内に維持することができる。
【0035】
また、上記の排気ガス浄化方法において、脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態と前記ヒータによる温度調整をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了する。
【0036】
この「第1指標温度」は、中央筒部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言い、この「第2指標温度」は、外周部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言う。これは、触媒の温度を直接計測するのは難しい場合が多いので、代わりにこの触媒の温度に密接な関係を持った温度、例えば、中央筒部又は外周部に流入する排気ガスの温度や中央筒部又は外周部から流出する排気ガスの温度を用いることもある。そのため、この代わりに用いる温度も含む表現として「第1指標温度」「第2指標温度」と表現している。
【0037】
また、第2判定温度及び第3判定温度は、中央筒部又は外周部の触媒の脱硫処理が可能となる温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、650℃〜750℃の範囲内の温度であり、例えば700℃と650℃に設定される。なお、通常は熱劣化という理由から、第3判定温度は第2版定温度よりも低く設定される。
【0038】
また、第1判定時間は、中央筒部の触媒の脱硫処理が完了するまでの時間であり、第2判定時間は、外周部の触媒の脱硫処理が完了するまでの時間である。これらの時間は、予め行った実験の結果等に基づいて設定される。なお、通常は低温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するバリウムの方が高温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するカリウムよりも脱離し易いという理由から第2判定時間は第1判定時間よりも短く設定される。
【0039】
この方法によれば、触媒を高温にする必要がある脱硫処理において、第1指標温度が第2判定温度を超えてから第1判定時間を超えるまでは、筒状の仕切り壁の遮熱構造により保温性がよく昇温が早い中央筒部に排気ガスを流して、この中央筒部の脱硫処理を完了するまで行う。また、中央筒部の脱硫処理が完了したら、中央筒部に比べて触媒の昇温が遅れ易い外周部に排気ガスを流して外周部の脱硫処理を集中的に行う。そのため、触媒全体の脱硫を効率よく行うことができる。また、この外周部に排気ガスを流す時には、前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整するので、速やかに外周部の触媒の温度を脱硫処理可能な温度に昇温して維持することができる。
【0040】
例えば、NOx吸蔵還元型触媒では、NOx浄化性能は硫黄の吸着により悪化する。この硫黄の吸着は約600℃以下の温度で生じるが、その一方で、脱硫には約650℃以上の高温を必要とする。従って、硫黄の吸着は高温には達し難い触媒の外周部にまで及ぶことになるが、脱硫では、触媒温度を更に高い温度にする必要がある。しかし、外周部は容易に高温に達しないため、硫黄が残留し易いという問題がある。
【0041】
この問題に対して、本発明では、筒状の遮熱構造(仕切り壁)を触媒を担持する部分の径方向の内側と外側の間に設けて、中央筒部と外周部を形成し、脱硫処理の後半で外周部だけの脱硫処理を行って、排気ガスが通過し難く温度も上がり難い外周部を、執拗に脱硫処理することで、触媒の全体に亘って十分な脱硫を行うことができるようになる。
【0042】
その結果、触媒の浄化性能の維持に必要な還元処理、言い換えれば、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できるので、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部のみを高温に加熱することで中央筒部が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0043】
また、更に、外周部の周囲にヒータを設けているので、脱硫処理時において外周部の触媒をより効率よく昇温することができる。
【0044】
また、上記の排気ガス浄化方法において、前記第2指標温度として、前記ヒータの通電電流量を用いる。ヒータの抵抗はその配置した場所の温度によって変化し、その抵抗に応じて、一定電圧で通電する電流量は変化するので、電流量を温度のセンサ信号として使用できる。なお、通電時以外においても、加熱には至らない程度の低電圧をヒータに印加すれば微弱電流が流れるので、この微弱電流を検知することで、この微弱電流からヒータ部位の温度を求め、触媒を担持した部分の外周温度を推定できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置において、触媒の浄化性能の温度依存性を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる。
【0046】
この構成によれば、排気ガス浄化装置から放熱する熱量を、ヒータによる加熱で補うことができ、触媒を担持した部分の温度低下を抑制することができる。また、触媒を担持した部分の外周部の温度を、排気ガスの熱量に依存することなく、ヒータによる加熱で昇温させて活性化温度域に維持できるので、活性化温度に昇温な時間を殆ど無くすことができる。従って、触媒が活性化温度域までの昇温するまでの間に放出される有害成分の排出を著しく減少することができる。
【0047】
また、長手方向に分割したヒータに対して、電流を周方向に並列的に流すことで、長手方向毎に異なった加熱ができ、温度が低い部分の加熱と、温度が高い部分の加熱の抑制を簡単に行うことができるので、触媒の温度を短時間で昇温して全体的に均一に維持することが比較的容易にできるようになる。
【0048】
また、一般的なヒータの材料は温度が上昇すると電気抵抗が減少する特性を示すことが多いので、このヒータの材料を使用すると、通常は、排気ガス浄化装置の加熱過程では触媒の反応熱により下流側の触媒を担持している部分の昇温が速くなるが、下流側の温度が上昇してその部分のヒータの温度が他の部位のヒータの温度よりも高くなると、その部位の通電抵抗が他の部位の電気抵抗よりも大きくなるので、一定電圧で並列に通電するだけでも、通電抵抗が大きくなった分だけ通電電流が小さくなり発熱量が減少するので、温度が均一化するように加熱される。
【0049】
また、本発明に係る排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置において、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、保温性が良い中央筒部に排気ガスを流して、中央筒部の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。
【0050】
また、排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部と外周部の両方に排気ガスを流して、排気ガスが通過する部分の容積を増やして、排気ガスに対する空間速度を下げて、排気ガスが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。この外周部に排気ガスを流す場合に、ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整するので、外周部を外周側から加熱して速やか活性化温度に昇温させることができ、昇温後は通電量を調整して外周部の触媒の温度を活性化温度域内に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法について、図面を参照しながら説明する。
【0052】
図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)の排気通路2に、排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持したNOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置のいずれか又は幾つかの組み合わせで形成される排気ガス浄化装置10を配置して構成される。
【0053】
排気ガス浄化装置10がNOx吸蔵還元型触媒を担持したNOx浄化触媒装置の場合には、排気ガス中のNOxを浄化するために、モノリス触媒で形成される。このモノリス触媒のコージェライトハニカム等の担持体に酸化アルミニウム、酸化チタン等の触媒コート層を設ける。この触媒コート層に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の触媒金属と、バリウム(Ba)等のNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)とからなるNOx吸蔵還元触媒を担持させて構成される。
【0054】
このNOx吸蔵還元型触媒は、酸素濃度が高い排気ガスの状態、即ち、空燃比リーン状態の時に、排気ガス中のNOxをNOx吸蔵材が吸蔵することにより、排気ガス中のNOxを浄化し、酸素濃度が低いか空燃比が1より小さい空燃比リッチ状態か、あるいは、空燃比が1の空燃比ストイキ状態の時に、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを触媒金属の触媒作用により還元することにより、大気中へのNOxの流出を防止する。
【0055】
このNOx吸蔵還元型触媒は、空燃比リーン状態が継続すると、NOx吸蔵材が硝酸塩に変化してしまうため、NOx吸蔵能力が飽和する前に、排気ガスを空燃比リッチ状態にする再生制御を行って、吸蔵したNOxを放出及び還元して、NOx吸蔵能力を回復している。
【0056】
この排気ガス浄化装置10が、酸化触媒を担持した酸化触媒装置の場合には、排気ガス中のHC(炭化水素)を酸化して排気ガス温度を上昇させたり、排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化してNO2 (二酸化窒素)にしてNOx(窒素酸化物)を浄化し易くしたりするために、多孔質のセラミックのハニカム構造等の担持体に、白金等の酸化触媒を担持させて形成される。
【0057】
また、排気ガス浄化装置10が、触媒付きフィルタ装置の場合には、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を浄化するために、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネル(排気ガスの通路)の入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタ等で形成される。このフィルタの部分に、比較的高温ではPMやHCの酸化を促進するように、また、比較的低温ではHCを吸着できるように、白金や酸化セリウム等の触媒が担持される。排気ガス中のPMは、この触媒付きフィルタ装置の多孔質セラミックの壁で捕集される。
【0058】
この触媒付きフィルタ装置では、PMの捕集量が増加して圧力損失が増加するのを防止するために、PMの捕集量が所定の捕集量を超えた場合や触媒付きフィルタ装置の前後差圧が所定の差圧量を超えた場合に、排気ガス温度を上昇して、触媒付きフィルタ装置をPMの燃料温度以上に昇温する排気昇温制御を行う。この排気昇温制御では、未燃燃料供給制御を含む空燃比リッチ制御が行われる。
【0059】
この排気ガス処理装置10の触媒を担持した部分を、図1及び図3に示すように、外周部11と中央筒部12の二つに分けて、その間隙に筒状のリングである仕切り壁13を遮熱構造に形成して配置する。更に、その外周部11の周囲に保温のための遮熱性を有する保温構造14を設けて構成する。この保温構造14は、空気を多量に含む発泡材等で形成し、保温性と遮熱性(断熱性)を高めると共に、触媒の担持体を格納する容器としての役割も果たすように構成される。この保温構造14を設けることにより、触媒の活性化時や脱硫処理時において、触媒をより効率よく昇温することができるようになる。
【0060】
この中央筒部12を円筒形状に形成し、外周部11をその周囲に設けて、排気ガス浄化装置10を円筒形状に形成した場合には、この中央筒部12の外径と、外周部の外径の比を、昇温時間を基にして、触媒の使用条件を考慮して設定する。言い換えれば、中央筒部の断面積と外周部の断面積の比を昇温時間を基にして触媒の使用条件を考慮して設定する。
【0061】
筒状の仕切り壁13は、図4に示すように、波板13aを間に挟んだ二枚の板13b、13cで形成された二重壁構造を折り曲げてリング状に形成し、長さ方向の両端部を排気ガスが流入及び流出ができないように閉塞して構成する。このリング状の波板13aによって、二枚の板13b、13cとの接触面積を減少して熱伝導による熱の移動を減少すると共に、波板13aと二重壁13b、13cとの間に形成した空間部13dに空気を充填し、この熱伝導率の低い空気により遮熱性を増加する。
【0062】
更に、エンジンの排気通路2と外周部11との間の第1通路15に第1バルブ16を、排気通路2と中央筒部12との間の第2通路17に第2バルブ18を設ける。この第1バルブ16を開くことにより排気ガスGを外周部11に流し、第2バルブ18を開くことにより排気ガスGを中央筒部12に流すように構成する。
【0063】
この構成によれば、触媒を担持した部分11、12を遮熱構造の筒状の仕切り壁13により二つに分けて、各部分11、12の熱容量を減少したので、暖機運転の場合等、触媒の温度を速やかに活性化温度以上に上げる必要がある場合には、触媒を担持した部分の熱容量が全体に比べて減少した中央筒部12側のみに排気ガスGを流すことにより、速やかに触媒の温度を上昇して触媒を活性化できる。その結果、活性化までの時間が短縮され、その分、排気ガスG中の有害成分の大気中への放出量を減少することができる。
【0064】
このときに、外周部11と中央筒部12との間に設けた筒状の仕切り壁13を遮熱構造に形成して、熱の移動を抑制して中央筒部12から外周部11へ移動する熱量を減少しているので、排気ガスGの熱を中央筒部12の昇温に効率よく利用でき、その分中央筒部12の触媒の温度を迅速に昇温できる。また、保温構造14も中央筒部12の昇温に間接的に寄与する。
【0065】
例えば、触媒を担持した部分の断面積を同じにして、中央筒部12の容積と外周部11の容積を等しいものとして形成し、触媒の加熱に必要な熱量を変えずに、触媒を担持した部分の熱容量を半減するようにして、中央筒部12にのみに排気ガスGを流すように構成する。この場合には、エンジンの始動直後から触媒の温度Tc2を所定の温度(例えば、200℃)まで昇温させるのに必要な時間は約半分となり、触媒が活性化するまでの排気ガス中の有害成分の排出量を減らすことが可能となる。
【0066】
また、排気ガスGの温度Tgが上がり排気ガスGの容積流量が大きくなった場合には、中央筒部12に排気ガスGを流しつつ、外周部11側にも排気ガスGを流すことにより、排気ガスが通過する触媒を担持した部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接する時間を長くして触媒反応を促進することができる。これにより、排気ガスの有害成分に対して十分な浄化を行う。
【0067】
また、中央筒部12の触媒の温度Tc1を測定するために、温度センサである熱電対19を中央筒部12の下流側の外周部位に配置すると共に、外周部11の触媒の温度Tc2を測定するために、熱電対20を外周部11の下流側の外周部位に配置する。更に、排気ガス浄化装置10に流入する排気ガスGの温度Tgを測定するために、熱電対21を排気ガス浄化装置10の上流側の排気通路2に配置する。
【0068】
これらの熱電対19、20、21の計測値Tc1、Tc2、Tgは、エンジンの運転を制御するエンジン制御装置(ECU)3に入力され、これらの計測値Tc1、Tc2、Tgに基づいて、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉操作が行われる。なお、外周部11の温度を検出する熱電対19の代わりに、次に述べるようなネット状ヒータ31の通電電流を用いる場合には、この熱電対19は不要となる。
【0069】
本発明においては、図5に示すように、保温構造14の内側となる外周部11の全体に亘って、小径ワイヤをネット状に編み込んで形成したネット状ヒータ(ヒータ)31で包み込み、更に、その周囲を電気的な絶縁性と気密性を有する絶縁シールマット32で包み込む。それと共に、このネット状ヒータ31に流す電流が周方向に流れるように、このネット状ヒータ31の通電部分を、排気ガス浄化装置10の長手方向(排気ガスGの通過方向)に分割して構成する。このネット状ヒータ31としては、例えば、数kwの電力で温度差が400度程度になるような加熱が可能なように、ヒータ線径を例えば0.5mm程度とし、数mm間隔となるように編み込んで、この編み込んだネット状ヒータ31を長手方向に数個並べて、外周部11に巻き付けて構成する。この分割された数個のネット状ヒータ31は通電電極31aに電気的に並列にそれぞれ接続される。この2本の通電電極31aはネット状ヒータ21及び絶縁シールマット32のそれぞれの合わせ部に設けられた電極装着溝11aに、絶縁体11bを挟んで挿入し固定する。
【0070】
この通電電極31aは排気ガス浄化装置12の容器の外側に引き出すために、図6及び図7に示すように、セラミックス製の絶縁管31b、セラミックス製の絶縁シールプレート31c等を挟み、電気的絶縁性と排気ガスに対するシール性の両方を確保しながら保温構造14に固定し、通電電極31aの取り出し部から、図8に示すようにリード線33により印加電圧を調整する電圧調整及び制御ユニット34に接続され、この電圧調整及び制御ユニット34は、リード線35により、電源となるバッテリ36に接続される。そして、この電圧調整及び制御ユニット34により、ネット状ヒータ31への印加電圧を制御することにより、通電電流量を調整し、外周部11を昇温させるように構成する。この印加電圧の制御は、エンジン制御装置3から出力される制御信号により行われる。
【0071】
このネット状ヒータ31は、図9に示すような単一のネット状ヒータ(抵抗R)31Xで形成せずに、図10に示すように、長手方向に分割されたn本のネット状ヒータ(抵抗r=R×n)31で形成され、電流を周方向に並列的に流すことで、長手方向毎の加熱を可能とする。
【0072】
この図10の例では、長手方向に5分割されており、一箇所の抵抗の温度が上昇しても全体の抵抗への影響は5分の1に過ぎず、全体としての抵抗値が大きくなるのは、外周部11の全体の温度が昇温して、多くの各部の抵抗の値が大きくなる場合に限られる。
【0073】
更に、ネット状ヒータの構成では、一本の抵抗でその部分全体の抵抗とするよりは、複数の抵抗となる線を編み込んで、電気抵抗を発生する部分を分散させて外周部11の該当部位を覆うような構成になる。従って、排気ガス浄化装置10のように、比較的大きな場合でも、全体を覆った抵抗の温度変化による抵抗変化を通電の電流量の変化によって全体的に検出することが可能となる。従って、これらのヒータの抵抗値への印加電圧を定電圧とした状態で通電電流値を検出すれば、外周部11の外周全域の平均的温度に近い値を推定することができる。
【0074】
この構成によれば、長手方向に分割したネット状ヒータ31に対して、並列に電流を流すことにより、触媒温度や触媒を担持した部分の外周表面に密接な関係を持つネット状ヒータ31の温度を、目標温度に対して温度が低い状態から短時間で一様に加熱することができる。
【0075】
つまり、温度が上昇すると電気抵抗が減少する一般的なヒータの材料を使用すると、通常は、排気ガス浄化装置10の加熱過程では下流側の触媒を担持している部分の昇温が速くなるが、この構成では、下流側の温度が上昇してその部分のネット状ヒータ31の温度が他の部位に配置したネット状ヒータ31の温度よりも高くなると、その部位の通電抵抗が他の部位の電気抵抗よりも大きくなるので、一定電圧で並列に通電するだけでも、通電抵抗が大きくなった分だけ通電電流が小さくなり発熱量が減少するので、温度が均一化する。
【0076】
例えば、NOx吸蔵還元型触媒では、NOからNO2への酸化反応に温度範囲があり、NO2をNO3の形で吸着するためには、500℃以下(触媒の種類によってこの温度値は多少変わる)であることが望ましい。従って、触媒温度を活性化温度以上に維持する場合には、排気ガスの入口側を加熱して、触媒反応熱により温度が上昇し易い出口側は加熱しない方が望ましいことになるが、ネット状ヒータに流す電流が周方向に流れるように、ネット状ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けることにより、排気ガス浄化装置10の全体の触媒の温度を活性化温度以上で、かつ、500℃以下に維持することができるようになる。
【0077】
次に、ネット状ヒータ31に関して、ヒータ材製造メーカの資料から投入電力を求めて、ヒータの線径を求めた場合について説明する。円筒形状のヒータの内部に触媒を担持した部分を装着するとして、その外周面から加熱するとした場合には、加熱面積Sは、触媒を担持した部分の外径が190.5mm(7.5インチ)で、長さが177.8mm(7.0インチ)から、S=π×0.1905×0.1778=0.106m2 となる。
【0078】
ここで、外周への放熱も考慮に入れた実用炉の設計実績から、800℃の上昇まで6分間で加熱するためには、約14kwが必要となる。
【0079】
これを基に必要な抵抗R2は、28V印加電圧として、R2=28×28/14,000=0.056Ωとなり、ヒータの長さを0.6mで本数をnとすると、r2=0.056×nとなる。ここでn=50とすると、r2=0.056×50=2.8Ωとなり、この値に近いヒータ材の線径は、0.63mmφとなる。なお、このヒータ材の抵抗は4.154Ω/mとなり、0.6mでは、2.49Ωとなる。
【0080】
なお、6分間での800℃の昇温ではなく、6分間での400℃の昇温とした場合には、放熱量などを考慮すると電力が約4kwとなり、抵抗R3=28×28/4,000=0.196Ωとなり、n=50では、r3=50×0.196=9.8Ωとなり、この値に近いヒータ材の線径は0.315mmφとなる。なお、このヒータ材の抵抗は16.62Ω/mとなり、0.6mでは10Ωとなる。
【0081】
また、ネット状ヒータ31に通電する電流量により触媒を担持した部分の外周部位の温度を推定し、この推定値に基づいて、ネット状ヒータ31への通電量を制御して、触媒を担持した部分の温度制御を行うように構成する。
【0082】
つまり、ネット状ヒータ31の抵抗はその配置した場所の温度によって変化し、その抵抗に応じて、一定電圧で通電する電流量は変化するので、電流量を温度センサの信号として使用できる。従って、この電流量から外周部位の温度を推定しながら、印加電圧の制御を行う。これにより、より適切な温度分布にすることが比較的容易にできる。
【0083】
なお、通電時以外においても、加熱には至らない程度の低電圧をネット状ヒータ31に印加すれば微弱電流が流れるので、この微弱電流を検知することでこの微弱電流からネット状ヒータ31の部位の温度を求め、触媒を担持した部分の外周温度を推定し、その値に応じて通電電圧のオンオフと通電量を制御して触媒を担持した部分の外周部位の温度制御を行う。
【0084】
更に、ネット状ヒータ31の通電電流を計測することで、触媒の活性化温度を推定し、この活性化温度から触媒の劣化度合いを推定する。
【0085】
つまり、触媒は劣化により触媒反応の開始温度である活性化温度が次第に高温側にシフトする特性を有しており、その一方で、触媒が活性化して触媒反応が発生するようになると、反応熱が発生して温度が上昇し始め、ネット状ヒータ31の電気抵抗が増加し始めるので、この温度上昇の開始時のネット状ヒータ31への通電電流を計測することで、触媒の活性化温度の上昇の程度を推定することができる。従って、触媒温度に密接な関係を持つネット状ヒータ31の電流値の温度上昇開始時の通電電流の変化から触媒の劣化度合いを把握することができる。なお、排気ガスGの流れ方向(排気ガス浄化装置10の長手方向)にネット状ヒータ31を分割して配置することで、触媒の劣化状況を更に細かく把握することも可能となる。
【0086】
また、排気ガス浄化装置10をNOx浄化触媒装置で構成し、触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を使用する場合には、中央筒部12には、NOx吸蔵材としてカリウムを担持させ、外周部11には、NOx吸蔵材としてバリウムを担持させて構成することが好ましい。この構成によれば、高温用(450℃〜550℃)のカリウムを高温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が高い中央筒部12に設け、低温用(250℃〜450℃)のバリウムを、低温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が低い外周部11に設けているので、異なった触媒成分でより効率よくNOx吸蔵性能を発揮することができるようになる。
【0087】
次に、上記の構成の排気ガス浄化システム1における排気ガス浄化方法について説明する。通常の運転状態では、第1バルブ16と第2バルブ18の両方を開いて、排気ガスGを外周部11と中央筒部12の両方に流して、排気ガスG中の有害成分を触媒作用により浄化する。また、暖機運転や低負荷運転等の排気ガスGが低温であり、触媒を迅速に活性化させる必要がある場合と、触媒を硫黄被毒から回復させる脱硫処理で、触媒を高温にする必要がある場合は、第1バルブ16と第2バルブ18はそれぞれの場合に応じて次のように制御される。
【0088】
最初に、暖機運転や低負荷運転の場合について、図11の制御フローを参照しながら説明する。エンジンが始動されて、図11の制御フローが上級の制御フローから呼ばれてスタートすると、ステップS11で、排気ガスGの温度(第1指標温度)Tgと予め設定した第1判定温度T1が入力される。ステップS12で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1以下であるか否かが判定される。この図11の制御フローでは、中央筒部11の触媒の温度を指標する第1指標温度として、中央筒部11に流入する排気ガスGの温度Tgを用いている。なお、熱電対19で計測される温度Tc1を用いることもできる。
【0089】
このステップS12の判定で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1以下であれば(YES)、ステップS13に行き、第1バルブ16を閉じて第2バルブ18を開く。これにより排気ガスGを中央筒部12のみに流す。この制御をした後、予め設定した時間(排気ガスの温度Tgのチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。
【0090】
ステップS12の判定で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1を超えたときには(NO、ステップS14に行き、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を開く、即ち、第2バルブ18を開いたまま、第1バルブ16を開く。これにより、排気ガスGを中央筒部12と外周部11の両方に流す。この制御をした後、予め設定した時間(排気ガスの温度Tgのチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。
【0091】
このステップS11〜ステップS13又はステップS11〜ステップS14を繰り返し実行し、エンジンが停止された場合には、割り込みが発生し、ステップS15の終了処理を行って、上級の制御フローに戻り、上級の制御フローの終了と共に、図11の制御フローも終了する。
【0092】
本発明においては、このステップS14で第1バルブを開いて排気ガスGを外周部11に流し始める時に、ネット状ヒータ31に通電して外周部11を外側から加熱し、外周部11の触媒を昇温して迅速に活性化温度以上にし、活性化温度に到達した後は活性化温度域内に維持する。
【0093】
上記の制御により、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1が予め設定した第1判定温度T1以下では、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開いて排気ガスGを中央筒部12のみに流し、第1指標温度Tc1が第1判定温度T1を越えたときには、第2バルブ18を開いたまま第1バルブ18を開いて排気ガスGを中央筒部12と外周部11の両方に流すと共にネット状ヒータ31に通電して加熱しながら通電量を調整して外周部11の温度を調整する。
【0094】
この構成によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、排気ガスGの温度Tgが低く、排気ガスGの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部12に排気ガスGを流して、中央筒部12の触媒を迅速に昇温することができる。また、排気ガスGの温度Tgが高く排気ガスGの容積流量が大きいときには、中央筒部12と外周部11の両方に排気ガスGを流して、排気ガスGが通過する部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。それと共に、外周部11の外周に配置したネット状ヒータ31により外周部11を加熱して外周部11の触媒を迅速に昇温し、活性化温度域内に維持することができる。従って、触媒が活性化するまでの時間を短縮でき、触媒が活性化するまでに大気中に放出される排気ガスG中の有害成分の量を減少できる。
【0095】
この第1判定温度T1は触媒の活性化温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、200℃〜300℃の範囲内の温度であり、例えば250℃に設定される。
【0096】
なお、エンジンの始動時や低負荷運転の場合には、この図5の制御フローが有効になるが、低負荷運転から高負荷運転に移って排気ガスの温度Tgが上昇したときは、ステップS14の第1バルブ16と第2バルブ18を共に開いた状態になるので、必ずしも、図11の制御フローを停止する必要はない。
【0097】
次に、触媒の温度を高い温度にする必要がある脱硫処理の場合について、図12及び図13の制御フローを参照しながら説明する。図12の制御フローと図13の制御フローとは、図12の下端のAと図13の上端のAとにより接続している一つの制御フローである。
【0098】
この排気ガス浄化システム1において、脱硫処理を行う場合には、上級の制御フローによって、図5の制御フローから、図12及び図13の制御フローに切替られる。ここでは、第1指標温度として、熱電対19の計測温度Tc1を用い、第2指標温度として熱電対20の計測温度Tc2を用いているが、第1指標温度かつ第2指標温度として熱排気ガスGの温度Tgを用いるようにしてもよい。
【0099】
図12及び図13の制御フローは、脱硫処理を行う場合の制御であり、スタートすると、図12のステップS21で、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1と予め設定した第2判定温度T2と予め設定された第1判定時間t1を入力する。次に、ステップS22で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2以下であるか否かを判定する。
【0100】
ステップS22の判定で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2以下である場合(YES)には、ステップS23に行き、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開く。これにより、排気ガスGを中央筒部12のみに流す。この制御をした後、予め設定した時間(第1指標温度Tc1のチェックのインターバルに関係する時間)の間経過した後に、ステップS21に戻る。
【0101】
ステップS22の判定で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた場合には(NO)、ステップS24で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間td1をカウントする。次のステップS25で、この第1脱硫処理時間td1が予め設定された第1判定時間t1を経過したか否かを判定する。このステップS25の判定で、この第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過していない場合には(NO)、そのままの状態で、予め設定した時間(第1脱硫処理時間td1のチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS21に戻る。
【0102】
ステップS25の判定で、第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過した場合には(YES)、A経由で、図13のステップS26に行き、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を閉じて排気ガスGを外周部11のみに流す。
【0103】
次のステップS27で、外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2と予め設定した第3判定温度T3と予め設定した第2判定時間t2を入力する。次のステップS28で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3以下か否かを判定する。ステップS28の判定で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3以下で、第3判定温度T3を超えていない場合には(YES)、予め設定した時間(第2指標温度Tc2のチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS27に戻る。
【0104】
ステップS28の判定で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた場合には(NO)、次のステップS29で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間td2をカウントする。次のステップS30で、この第2脱硫処理時間td2が予め設定された第2判定時間t2を経過したか否かを判定する。このステップS30の判定で、この第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過していない場合には(NO)、そのままの状態で、予め設定した時間(第2脱硫処理時間td2のチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS27に戻る。
【0105】
ステップS30の判定で、この第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過した場合には(YES)、ステップS31に行き、第1脱硫処理時間td1と第2脱硫処理時間td2のリセット等の脱硫処理の終了の処理を行ってから、上級の制御スローにリターンする。
【0106】
なお、通常は、第3判定温度は第2判定温度よりも低く、第2判定時間は第1判定時間よりも短く設定される。これは、低温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するバリウムの方が高温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するカリウムよりも脱離し易いからである。そして、触媒の種類や排気ガス浄化装置10にもよるが、例えば、第2判定温度T2は700℃〜750℃程度に、第3判定温度T3は650℃〜700℃程度に設定され、第1判定時間t1は480s〜600s程度に、第2判定時間t2は180s〜300s程度に設定される。
【0107】
本発明においては、このステップS26で第1バルブを開いて排気ガスGを外周部11に流し始める時に、ネット状ヒータ31に通電して外周部11を外側から加熱し、外周部11の触媒を昇温して迅速に第3判定温度T3以上にする。
【0108】
なお、熱電対19で測定される外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2の代わりに、ネット状ヒータ31の通電電流Iを用いる場合には、図13の第2指標温度Tc2の代わりに通電電流Iを用い、第3判定温度T3の代わりに判定電流値Icを用いる。この場合は、図13の制御フローは、ステップS27と28が、図14の制御フローのステップS27Aと28Aとなる。
【0109】
この場合に、局所的に温度が上昇して一箇所の抵抗が大きくなっても、全体の抵抗への影響は小さく、全体としての抵抗値が大きくなるのは、触媒を担持している外周部11の全体の温度が上がり多くの抵抗の値が大きくなる場合に限られる。ネッ状ヒータ31では抵抗が分散しており、排気ガス浄化装置10のように、温度を検出するための対象物が大きい場合には、ヒータの抵抗値の変化を定電圧のもとで、全体の電流値としての通電電流Iを検出することで、全体の平均温度に近い値を使った制御が可能となる。
【0110】
この制御により、脱硫処理を行っている場合に、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1が予め設定した第2判定温度T2以下では、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開いて排気ガスを中央筒部12のみに流し、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えてから、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間td1が予め設定された第1判定時間t1を経過するまでは、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉状態をそのまま継続し、第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過したときに、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を閉じて排気ガスGを外周部11のみに流すと共にネット状ヒータ31に通電して加熱しながら通電量を調整して外周部11の温度を調整し、更に、外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2が予め設定した第3判定温度T3を超えると、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間td2が予め設定した第2判定時間t2を経過するまでは、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉状態とネット状ヒータ31による温度調整をそのまま継続し、第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過すると、脱硫処理を終了する。
【0111】
この脱硫処理の場合の排気ガス浄化方法によれば、触媒を高温にする必要がある脱硫処理において、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えてから第1判定時間t2を超えるまでは、筒状の仕切り壁13の遮熱構造により保温性がよく昇温が早い中央筒部12に排気ガスGを全量流して、この中央筒部11の脱硫処理を完了するまで行い、その後、保温構造により保温性がよいが中央筒部12に比べて触媒の昇温が遅れ易い外周部11に排気ガスGを全量流すと共に、ネット状ヒータ31に通電して外周部11を加熱して外周部11の脱硫処理を集中的に行うことができる。
【0112】
そのため、中央筒部12の脱硫処理に際しては、中央筒部12からの熱移動を仕切り壁13で抑制しているので、中央筒部12の加熱処理時間を減らすことができ、また、外周部11の脱硫処理に際しては、仕切り壁13と保温構造14とで外周部11からの熱移動を抑制し、更に、ネット状ヒータ31によって加熱しているので、外周部11の加熱処理時間を著しく減らすことができる。従って、各部分の昇温を迅速に行うことができ、触媒全体の脱硫処理を効率よく行うことができ、脱硫処理のために必要となる時間と燃料消費量を減少できる。
【0113】
その上、脱硫処理の前半で、中央筒部12だけを脱硫処理し、脱硫処理の後半で外周部11だけをネット状ヒータ31で加熱しながら脱硫処理して、排気ガスGが通過し難く温度も上がり難い触媒の外周部11を、執拗に脱硫処理することで、触媒の全体に亘って十分な脱硫を行うことができる。そのため、浄化能力を良好な状態に維持できる。
【0114】
その結果、触媒の浄化性能の維持に必要な還元処理、言い換えれば、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できるので、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部11のみを高温に加熱することで中央筒部12が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0115】
なお、上記の図12及び図13(又は図14)の制御フローでは、脱硫処理の回数は、中央筒部12と外周部11とで同じ回数となるが、更に、硫黄処理を外周部11と中央筒部12とに分けて行うように構成すれば、比較的硫黄の吸着し難い外周部11の処理回数を減らすことができるので、より燃料消費量を低減することができるようになる。
【0116】
上記の構成の排気ガス浄化システム1によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置10において、触媒の浄化性能の温度依存性を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる。
【0117】
この構成によれば、排気ガス浄化装置10から放熱する熱量を、ネット状ヒータ31による加熱で補うことができ、触媒を担持した部分の温度低下を抑制することができる。また、触媒を担持した部分の外周部11の温度を、排気ガスGの熱量に依存することなく、ネット状ヒータ31による加熱で昇温させて活性化温度域に維持できるので、活性化温度に昇温な時間を殆ど無くすことができる。従って、触媒が活性化温度域までの昇温するまでの間に放出される有害成分の排出を著しく減少することができる。
【0118】
また、長手方向に分割したネット状ヒータ31に対して、電流を周方向に並列的に流すことで、長手方向毎に異なった加熱ができ、温度が低い部分の加熱と、温度が高い部分の加熱の抑制を簡単に行うことができるので、触媒の温度を短時間で昇温して全体的に均一に維持することが比較的容易にできるようになる。
【0119】
また、上記の排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置10において、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、保温性が良い中央筒部12に排気ガスGを流して、中央筒部12の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。
【0120】
また、排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部12と外周部11の両方に排気ガスGを流して、排気ガスGが通過する部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。この外周部11に排気ガスGを流す場合に、ネット状ヒータ31に通電して加熱しながら通電量を調整して外周部11の温度を調整するので、外周部11を外周側から加熱して速やか活性化温度に昇温させることができ、昇温後は通電量を調整して外周部11の触媒の温度を活性化温度域内に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】排気ガス浄化装置の排気ガスの入口の構成を示す図である。
【図3】排気ガス浄化装置の横断面を示す図である。
【図4】排気ガス浄化装置の筒状の仕切り壁の構成を示す図3のHで示す楕円部分の拡大図である。
【図5】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの構成を示す図である。
【図6】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの通電電極の引き出し部構成を示す図である。
【図7】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの通電電極の引き出し部構成を示す図6のJで示す楕円部分の拡大図である。
【図8】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの通電の構成を示す図である。
【図9】単一のネット状ヒータの通電の状態を模式的に示す図である。
【図10】複数のネット状ヒータの並列通電の状態を模式的に示す図である。
【図11】本発明に係る排気ガス浄化方法の暖機運転及び低負荷運転の場合の制御フローの一例を示す図である。
【図12】本発明に係る排気ガス浄化方法の脱硫処理に場合の制御フローの一例の前半を示す図である。
【図13】図12の制御フローの後半を示す図である。
【図14】ヒータの通電電流を用いた場合の図12の制御フローの後半を示す図である。
【符号の説明】
【0122】
1 排気ガス浄化システム
2 エンジンの排気通路
3 エンジン制御装置(ECU)
10 排気ガス浄化装置
11 外周部
12 中央筒部
13 仕切り壁
14 保温構造
15 第1通路
16 第1バルブ
17 第2通路
18 第2バルブ
19、20、21 熱電対
31 ネット状ヒータ(ヒータ)
32 絶縁シールマット
33、35 リード線
34 電圧調整及び制御ユニット
36 バッテリ(電源)
G 排気ガス
I 通電電流
Ic 判定電流値
T1 第1判定温度
T2 第2判定温度
T3 第3判定温度
Tc1 第1指標温度
Tc2 第2指標温度
Tg 排気ガスの温度
t1 第1判定時間
t2 第2判定時間
td1 第1脱硫処理時間
td2 第2脱硫処理時間
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を担持した部分の外周にヒータを配置した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスを浄化するための装置の一つに、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)の浄化のためのNOx浄化触媒装置がある。このNOx浄化触媒装置の一つに、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を貴金属と共に担持して、酸素過剰な排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化して硝酸塩として触媒上に吸着させて、NOxを浄化するNOx吸蔵還元型触媒を担持した装置がある。このNOx吸蔵還元型触媒は、排気ガスが酸素過剰なリーン空燃比状態では、NOxを吸蔵し、酸素濃度が低いか、空燃比が1より小さいリッチ空燃比状態では、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを還元雰囲気中で還元して、NOxを低減する。
【0003】
また、排気ガス浄化装置の別の装置として、NOxを吸蔵することはできないが、貴金属を主に担持して、その酸化作用により、CO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)を酸化除去する酸化触媒装置がある。更に、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を捕集して、フィルタに担持した酸化触媒やPM酸化触媒により酸化除去する触媒付きフィルタ装置がある。
【0004】
これらの排気ガス浄化装置を使用して、内燃機関から排出される排気ガス中のNOx、CO、HC、PM等の有害成分を浄化して、これらの有害成分の大気中への放出量を減少し、排出基準以下にまで下げている。
【0005】
しかしながら、これらの触媒を使用した排気ガス浄化システム(排気ガスの後処理システム)では、触媒が活性化して浄化反応が可能となる温度まで、触媒を昇温させる必要がある。触媒の種類にもよるが、概略、200℃〜250℃の温度に到達すると、触媒はその浄化反応を開始する。そのため、触媒の温度がこの活性化温度に到達するまでは、排気ガス中の有害成分を触媒反応で除去することはできず、有害成分がそのまま大気中へ排出されてしまうという問題がある。言い換えれば、触媒を用いた排気ガス浄化システムでは、触媒が浄化反応を始める温度への到達時間が短ければ、その分だけ大気中へ放出される有害成分の量を減らすことができる。
【0006】
従って、これらのNOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置を備えた排気ガス浄化システムにおいては、エンジン始動直後等で、触媒の温度が低い場合に活性化温度までの到達時間を短くするために、排気ガスを触媒の内周部へ集中して流し、加熱される触媒を担持した部分を少なくすることが考えられる。
【0007】
これに関連して、触媒の上流に流路制御機構を設けて、排気ガスの温度が低い時には触媒の中心部に排気ガスの流れを集中して、触媒温度の活性化温度への到達を早くし、排気ガスの温度が高い時には触媒の周辺部に集中して排気ガスを流し、排気ガスが高温となっても、触媒でのサルフェートの生成、及び堆積を防止するディーゼルエンジンの触媒コンバータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
このディーゼルエンジンの触媒コンバータでは、触媒コンバータのハウジングの外表面に複数の冷却ファンを設けると効果的であるとし、サルフェートの生成を抑えるために、排気ガスが高温状態になった時に、排気ガスを、触媒の中央部には流さずに、温度が低い触媒の周辺部に集中して通過させている。
【0009】
しかしながら、外周部の温度を低温に保つことは、サルフェートの生成を抑えることには有効であると考えられるが、NOx浄化のためには触媒の活性化温度以上に触媒全体の温度を上げる必要があるので、外周部の低温化はNOx浄化の面からは好ましくない。また、触媒内に生成したサルフェートを除去するために、温度を上げて脱硫させる場合に、触媒の外周部の温度上昇が難しく、外周部の脱硫再生が難しくなるという問題がある。
【0010】
また、酸化触媒を担持させた高温排気ガス処理部を中央に、加熱手段を取り付けた低温排気ガス処理部を周辺に設けて、排気ガス温度が酸化触媒活性化温度以下である場合には、加熱手段を作動させて排気ガスを酸化触媒活性化温度以上に加熱して低温排気ガス処理部に流して、始動時や排気ガス温度が低下した場合における排気ガス浄化効率を向上させ、また、排気ガス温度が酸化触媒活性化温度以上である場合には、加熱手段の作動を停止し、排気ガスを高温排気ガス処理部に流して、酸化触媒による有害成分の浄化を行う自動車用排気ガス処理装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
この自動車用排気ガス処理装置では、排気ガス温度が高い場合には高温排気ガス処理部と低温排気ガス処理部に排気ガスを流して浄化し、また、エンジンの始動時や排気ガスが高温から低温になった場合には、経路を切り換えて、加熱手段経由で周辺部の低温排気ガス処理部に流入させる。これにより排気ガスを加熱手段で触媒活性化温度以上に加熱し、この加熱された排気ガスを低温排気ガス処理部に流入させて浄化している。
【0012】
しかしながら、一般的には、放熱の関係から、触媒の中央部が高い温度に成り易く、周辺部は低い温度に成り易いので、低温排気ガス処理部を周辺側に設けているこの自動車用排気ガス処理装置の構成は熱効率が悪いという問題がある。
【0013】
これに対して、本発明者は、外周部の触媒の昇温時間を短くする手段として、電熱ヒータを低温に成り易い外周部の外周を覆って配置して、このヒータに通電することにより、外周部を外側から加熱することを考えた。
【0014】
この外周側にヒータを配置することに関連して、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集するランダムに積層された不織布から成るセラミック繊維材の外側に通電金網を巻き付けたディーゼルパティキュレートフィルタが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0015】
このディーゼルパティキュレートフィルタでは、排気ガスを外周側の通電金網から内周側のセラミック繊維材に流すとともに、この通電金網に通電してフィルタ本体を加熱してセラミック繊維材に捕集されたパティキュレートを加熱して焼却してフィルタを再生している。
【0016】
しかしながら、単純に排気ガス浄化装置の外周に通電金網を設けただけでは、通電金網に通電して加熱しようとすると、外周全体が一様に加熱されてしまう。そのため、排気ガス中の有害成分が触媒反応で生じる熱が排気ガスの移動により下流側に伝達されるため、下流側の温度が上流側の温度よりも高くなってしまい、排気ガス浄化装置の触媒を均一温度に加熱できない。触媒が均一温度にならないと、再生処理を行わない通常の排気ガスの有害成分の浄化時においては、低温部では活性化が不完全となり、高温部ではサルフェートの蓄積の問題が生じ、また、触媒を高温にする必要がある脱硫処理時には、低温部では脱硫処理が不完全となり、高温部では触媒の劣化の問題が生じる。
【特許文献1】特開平10−299465号公報
【特許文献2】特開2002−295233号公報
【特許文献3】特開平08−312328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、触媒を担持した部分の温度を均一温度に加熱することができて、速やかに触媒の浄化機能を効率よく利用できる排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化システムは、排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けて構成する。
【0019】
この構成によれば、排気ガス浄化装置の触媒容器を介して放熱する熱量を、ヒータへの通電による加熱で補うことができ、触媒を担持した部分の外周部全体の温度低下を抑制することができる。また、触媒を担持した部分の外周部を、内燃機関からの排気ガスの熱量に依存することなく、ヒータへの通電により加熱して昇温させて活性化温度域内に維持できるので、活性化温度に昇温するまでの時間を著しく短縮できる。従って、触媒が活性化温度域に昇温するまでの間に放出される有害成分の排出量を著しく減少することができる。
【0020】
また、一般的には、排気ガス浄化装置の下流側では触媒反応によって発生する熱により上流側よりも温度が高くなるが、ヒータの電流を周方向に並列的に流すことで、排気ガス浄化装置の長手方向毎に電流量を変化せることができ、排気ガスの上流側から下流側になるに従って、それぞれ異なった加熱ができるようになり、触媒の温度を全体的に均一に維持することが比較的容易にできる。つまり、ヒータの材料に温度が上昇すると電気抵抗が減少する一般的なヒータの材料を使用すると、温度が低く電流抵抗値が小さい部分には電流量が増加して効率よく加熱できると共に、温度が高く電流抵抗値が高い部分では電流量が減少して加熱を抑制することができる。
【0021】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成する。
【0022】
この構成によれば、暖機運転や低負荷運転等の排気ガス温度が低い場合には、中央筒部のみに排気ガスを流して中央筒部の触媒の温度を迅速に活性化温度以上にすることができる。その一方で、排気ガスの容積流量が増加して、排気ガスを外周部へも流す時に、外周部の触媒の昇温の遅れが著しく大きくなるが、ヒータを設けてこのヒータで加熱することで、この外周部の触媒の昇温の遅れを防止できる。つまり、この2分割構造において、特に外周部にヒータを設ける効果が大きくなる。
【0023】
また、内燃機関の始動直後において、排気ガスにより内燃機関からの排気熱が触媒を担持する部分に伝達されて触媒の温度を上昇させる場合に、排気ガスを中心部分に集中させることが行われる。この場合に、外周部と中央筒部の間に遮熱構造の筒状の仕切り壁、言い換えれば、保温リングを設けているので、熱容量を小さくした中央筒部に被加熱部を限定することができる。
【0024】
従って、加熱すべき熱容量を小さくすると共に中央筒部から外周部への熱伝達を少なくしているので、活性化温度まで昇温するのに必要な時間を短くすることができる。また、外周部を昇温する必要が生じて、ヒータに通電して外周部の外周を加熱する際でも、遮熱構造の筒状の仕切り壁で加熱部分の熱容量を少なくすると共に外周部から中央筒部への熱伝達を少なくしているので、外周部の温度を短時間で昇温させることができる。
【0025】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記ヒータに通電する電流量により前記触媒を担持した部分の外周部位の温度を推定し、この推定値に基づいて、前記ヒータへの通電量を制御して、前記触媒を担持した部分の温度制御を行うように構成する。
【0026】
ヒータの抵抗はその配置した場所の温度によって変化し、その抵抗に応じて、一定電圧で通電する電流量は変化するので、電流量を温度のセンサ信号として使用でき、この電流量から触媒外周部温度を推定しながら、印加電圧の制御を行うことにより、より適切な温度分布にすることが比較的容易にできる。
【0027】
なお、通電時以外においても、加熱には至らない程度の低電圧をヒータに印加すれば微弱電流が流れるので、この微弱電流を検知することで、この微弱電流からヒータ部位の温度を求め、触媒を担持した部分の外周温度を推定し、その値に応じて通電電圧のオンオフと通電量を制御して触媒を担持した部分の外周部位の温度制御を行うことが容易にできる。
【0028】
上記の排気ガス浄化システムにおいて、前記ヒータの通電電流を計測することで、触媒の活性化温度を推定し、この活性化温度から触媒の劣化度合いを推定する。
【0029】
また、触媒が活性化して触媒反応が発生するようになると、反応熱が発生して温度が上昇し始めるので、この温度上昇の開始時のヒータ通電電流を計測することで、触媒の活性化温度の上昇の程度を推定することができる。一方、触媒は劣化により触媒反応の開始温度である活性化温度が次第に高温側にシフトする。従って、触媒温度に密接な関係を持つヒータの電流値の温度上昇開始時の通電電流の変化から触媒の劣化度合いを把握することができる。なお、排気ガスの流れ方向(排気ガス浄化装置の長手方向)にヒータを分割して数列配置することで、触媒の劣化状況を更に細かく把握することも可能となる。
【0030】
そして、上記の目的を達成するための本発明の排気ガス浄化方法は、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成すると共に、前記外周部の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けた排気ガス浄化システムの排気ガス浄化方法であって、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整することを特徴とする。
【0031】
この「第1指標温度」は、中央筒部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言う。これは、触媒の温度を直接計測するのは難しい場合が多いので、代わりにこの触媒の温度に密接な関係を持った温度、例えば、中央筒部に流入する排気ガスの温度や中央筒部から流出する排気ガスの温度を用いることもある。そのため、この代わりに用いる温度も含む表現として「第1指標温度」と表現している。
【0032】
また、第1判定温度は触媒の活性化温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、200℃〜300℃の範囲内の温度であり、例えば250℃に設定される。
【0033】
この方法によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、第1指標温度が低く、排気ガスの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部に排気ガスを流して、中央筒部の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。また、第1指標温度が高く排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部と外周部の両方に排気ガスを流して、排気ガスが通過する部分の容積を増やして、排気ガスに対する空間速度を下げて、排気ガスが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。
【0034】
また、外周部に排気ガスを流す場合に、ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整するので、外周部を外周側から加熱して速やか活性化温度に昇温させることができ、昇温後は通電量を調整して外周部の触媒の温度を活性化温度域内に維持することができる。
【0035】
また、上記の排気ガス浄化方法において、脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態と前記ヒータによる温度調整をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了する。
【0036】
この「第1指標温度」は、中央筒部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言い、この「第2指標温度」は、外周部の触媒の温度そのもの又はその温度を指標する温度のことを言う。これは、触媒の温度を直接計測するのは難しい場合が多いので、代わりにこの触媒の温度に密接な関係を持った温度、例えば、中央筒部又は外周部に流入する排気ガスの温度や中央筒部又は外周部から流出する排気ガスの温度を用いることもある。そのため、この代わりに用いる温度も含む表現として「第1指標温度」「第2指標温度」と表現している。
【0037】
また、第2判定温度及び第3判定温度は、中央筒部又は外周部の触媒の脱硫処理が可能となる温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、650℃〜750℃の範囲内の温度であり、例えば700℃と650℃に設定される。なお、通常は熱劣化という理由から、第3判定温度は第2版定温度よりも低く設定される。
【0038】
また、第1判定時間は、中央筒部の触媒の脱硫処理が完了するまでの時間であり、第2判定時間は、外周部の触媒の脱硫処理が完了するまでの時間である。これらの時間は、予め行った実験の結果等に基づいて設定される。なお、通常は低温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するバリウムの方が高温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するカリウムよりも脱離し易いという理由から第2判定時間は第1判定時間よりも短く設定される。
【0039】
この方法によれば、触媒を高温にする必要がある脱硫処理において、第1指標温度が第2判定温度を超えてから第1判定時間を超えるまでは、筒状の仕切り壁の遮熱構造により保温性がよく昇温が早い中央筒部に排気ガスを流して、この中央筒部の脱硫処理を完了するまで行う。また、中央筒部の脱硫処理が完了したら、中央筒部に比べて触媒の昇温が遅れ易い外周部に排気ガスを流して外周部の脱硫処理を集中的に行う。そのため、触媒全体の脱硫を効率よく行うことができる。また、この外周部に排気ガスを流す時には、前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整するので、速やかに外周部の触媒の温度を脱硫処理可能な温度に昇温して維持することができる。
【0040】
例えば、NOx吸蔵還元型触媒では、NOx浄化性能は硫黄の吸着により悪化する。この硫黄の吸着は約600℃以下の温度で生じるが、その一方で、脱硫には約650℃以上の高温を必要とする。従って、硫黄の吸着は高温には達し難い触媒の外周部にまで及ぶことになるが、脱硫では、触媒温度を更に高い温度にする必要がある。しかし、外周部は容易に高温に達しないため、硫黄が残留し易いという問題がある。
【0041】
この問題に対して、本発明では、筒状の遮熱構造(仕切り壁)を触媒を担持する部分の径方向の内側と外側の間に設けて、中央筒部と外周部を形成し、脱硫処理の後半で外周部だけの脱硫処理を行って、排気ガスが通過し難く温度も上がり難い外周部を、執拗に脱硫処理することで、触媒の全体に亘って十分な脱硫を行うことができるようになる。
【0042】
その結果、触媒の浄化性能の維持に必要な還元処理、言い換えれば、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できるので、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部のみを高温に加熱することで中央筒部が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0043】
また、更に、外周部の周囲にヒータを設けているので、脱硫処理時において外周部の触媒をより効率よく昇温することができる。
【0044】
また、上記の排気ガス浄化方法において、前記第2指標温度として、前記ヒータの通電電流量を用いる。ヒータの抵抗はその配置した場所の温度によって変化し、その抵抗に応じて、一定電圧で通電する電流量は変化するので、電流量を温度のセンサ信号として使用できる。なお、通電時以外においても、加熱には至らない程度の低電圧をヒータに印加すれば微弱電流が流れるので、この微弱電流を検知することで、この微弱電流からヒータ部位の温度を求め、触媒を担持した部分の外周温度を推定できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る排気ガス浄化システムによれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置において、触媒の浄化性能の温度依存性を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる。
【0046】
この構成によれば、排気ガス浄化装置から放熱する熱量を、ヒータによる加熱で補うことができ、触媒を担持した部分の温度低下を抑制することができる。また、触媒を担持した部分の外周部の温度を、排気ガスの熱量に依存することなく、ヒータによる加熱で昇温させて活性化温度域に維持できるので、活性化温度に昇温な時間を殆ど無くすことができる。従って、触媒が活性化温度域までの昇温するまでの間に放出される有害成分の排出を著しく減少することができる。
【0047】
また、長手方向に分割したヒータに対して、電流を周方向に並列的に流すことで、長手方向毎に異なった加熱ができ、温度が低い部分の加熱と、温度が高い部分の加熱の抑制を簡単に行うことができるので、触媒の温度を短時間で昇温して全体的に均一に維持することが比較的容易にできるようになる。
【0048】
また、一般的なヒータの材料は温度が上昇すると電気抵抗が減少する特性を示すことが多いので、このヒータの材料を使用すると、通常は、排気ガス浄化装置の加熱過程では触媒の反応熱により下流側の触媒を担持している部分の昇温が速くなるが、下流側の温度が上昇してその部分のヒータの温度が他の部位のヒータの温度よりも高くなると、その部位の通電抵抗が他の部位の電気抵抗よりも大きくなるので、一定電圧で並列に通電するだけでも、通電抵抗が大きくなった分だけ通電電流が小さくなり発熱量が減少するので、温度が均一化するように加熱される。
【0049】
また、本発明に係る排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置において、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、保温性が良い中央筒部に排気ガスを流して、中央筒部の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。
【0050】
また、排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部と外周部の両方に排気ガスを流して、排気ガスが通過する部分の容積を増やして、排気ガスに対する空間速度を下げて、排気ガスが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。この外周部に排気ガスを流す場合に、ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整するので、外周部を外周側から加熱して速やか活性化温度に昇温させることができ、昇温後は通電量を調整して外周部の触媒の温度を活性化温度域内に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明に係る実施の形態の排気ガス浄化システム及び排気ガス浄化方法について、図面を参照しながら説明する。
【0052】
図1に、本発明の実施の形態の排気ガス浄化システム1の構成を示す。この排気ガス浄化システム1は、エンジン(内燃機関)の排気通路2に、排気ガスG中の有害成分を浄化する触媒を担持したNOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置のいずれか又は幾つかの組み合わせで形成される排気ガス浄化装置10を配置して構成される。
【0053】
排気ガス浄化装置10がNOx吸蔵還元型触媒を担持したNOx浄化触媒装置の場合には、排気ガス中のNOxを浄化するために、モノリス触媒で形成される。このモノリス触媒のコージェライトハニカム等の担持体に酸化アルミニウム、酸化チタン等の触媒コート層を設ける。この触媒コート層に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の触媒金属と、バリウム(Ba)等のNOx吸蔵材(NOx吸蔵物質)とからなるNOx吸蔵還元触媒を担持させて構成される。
【0054】
このNOx吸蔵還元型触媒は、酸素濃度が高い排気ガスの状態、即ち、空燃比リーン状態の時に、排気ガス中のNOxをNOx吸蔵材が吸蔵することにより、排気ガス中のNOxを浄化し、酸素濃度が低いか空燃比が1より小さい空燃比リッチ状態か、あるいは、空燃比が1の空燃比ストイキ状態の時に、吸蔵したNOxを放出すると共に、この放出されたNOxを触媒金属の触媒作用により還元することにより、大気中へのNOxの流出を防止する。
【0055】
このNOx吸蔵還元型触媒は、空燃比リーン状態が継続すると、NOx吸蔵材が硝酸塩に変化してしまうため、NOx吸蔵能力が飽和する前に、排気ガスを空燃比リッチ状態にする再生制御を行って、吸蔵したNOxを放出及び還元して、NOx吸蔵能力を回復している。
【0056】
この排気ガス浄化装置10が、酸化触媒を担持した酸化触媒装置の場合には、排気ガス中のHC(炭化水素)を酸化して排気ガス温度を上昇させたり、排気ガス中のNO(一酸化窒素)を酸化してNO2 (二酸化窒素)にしてNOx(窒素酸化物)を浄化し易くしたりするために、多孔質のセラミックのハニカム構造等の担持体に、白金等の酸化触媒を担持させて形成される。
【0057】
また、排気ガス浄化装置10が、触媒付きフィルタ装置の場合には、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を浄化するために、多孔質のセラミックのハニカムのチャンネル(排気ガスの通路)の入口と出口を交互に目封じしたモノリスハニカム型ウォールフロータイプのフィルタ等で形成される。このフィルタの部分に、比較的高温ではPMやHCの酸化を促進するように、また、比較的低温ではHCを吸着できるように、白金や酸化セリウム等の触媒が担持される。排気ガス中のPMは、この触媒付きフィルタ装置の多孔質セラミックの壁で捕集される。
【0058】
この触媒付きフィルタ装置では、PMの捕集量が増加して圧力損失が増加するのを防止するために、PMの捕集量が所定の捕集量を超えた場合や触媒付きフィルタ装置の前後差圧が所定の差圧量を超えた場合に、排気ガス温度を上昇して、触媒付きフィルタ装置をPMの燃料温度以上に昇温する排気昇温制御を行う。この排気昇温制御では、未燃燃料供給制御を含む空燃比リッチ制御が行われる。
【0059】
この排気ガス処理装置10の触媒を担持した部分を、図1及び図3に示すように、外周部11と中央筒部12の二つに分けて、その間隙に筒状のリングである仕切り壁13を遮熱構造に形成して配置する。更に、その外周部11の周囲に保温のための遮熱性を有する保温構造14を設けて構成する。この保温構造14は、空気を多量に含む発泡材等で形成し、保温性と遮熱性(断熱性)を高めると共に、触媒の担持体を格納する容器としての役割も果たすように構成される。この保温構造14を設けることにより、触媒の活性化時や脱硫処理時において、触媒をより効率よく昇温することができるようになる。
【0060】
この中央筒部12を円筒形状に形成し、外周部11をその周囲に設けて、排気ガス浄化装置10を円筒形状に形成した場合には、この中央筒部12の外径と、外周部の外径の比を、昇温時間を基にして、触媒の使用条件を考慮して設定する。言い換えれば、中央筒部の断面積と外周部の断面積の比を昇温時間を基にして触媒の使用条件を考慮して設定する。
【0061】
筒状の仕切り壁13は、図4に示すように、波板13aを間に挟んだ二枚の板13b、13cで形成された二重壁構造を折り曲げてリング状に形成し、長さ方向の両端部を排気ガスが流入及び流出ができないように閉塞して構成する。このリング状の波板13aによって、二枚の板13b、13cとの接触面積を減少して熱伝導による熱の移動を減少すると共に、波板13aと二重壁13b、13cとの間に形成した空間部13dに空気を充填し、この熱伝導率の低い空気により遮熱性を増加する。
【0062】
更に、エンジンの排気通路2と外周部11との間の第1通路15に第1バルブ16を、排気通路2と中央筒部12との間の第2通路17に第2バルブ18を設ける。この第1バルブ16を開くことにより排気ガスGを外周部11に流し、第2バルブ18を開くことにより排気ガスGを中央筒部12に流すように構成する。
【0063】
この構成によれば、触媒を担持した部分11、12を遮熱構造の筒状の仕切り壁13により二つに分けて、各部分11、12の熱容量を減少したので、暖機運転の場合等、触媒の温度を速やかに活性化温度以上に上げる必要がある場合には、触媒を担持した部分の熱容量が全体に比べて減少した中央筒部12側のみに排気ガスGを流すことにより、速やかに触媒の温度を上昇して触媒を活性化できる。その結果、活性化までの時間が短縮され、その分、排気ガスG中の有害成分の大気中への放出量を減少することができる。
【0064】
このときに、外周部11と中央筒部12との間に設けた筒状の仕切り壁13を遮熱構造に形成して、熱の移動を抑制して中央筒部12から外周部11へ移動する熱量を減少しているので、排気ガスGの熱を中央筒部12の昇温に効率よく利用でき、その分中央筒部12の触媒の温度を迅速に昇温できる。また、保温構造14も中央筒部12の昇温に間接的に寄与する。
【0065】
例えば、触媒を担持した部分の断面積を同じにして、中央筒部12の容積と外周部11の容積を等しいものとして形成し、触媒の加熱に必要な熱量を変えずに、触媒を担持した部分の熱容量を半減するようにして、中央筒部12にのみに排気ガスGを流すように構成する。この場合には、エンジンの始動直後から触媒の温度Tc2を所定の温度(例えば、200℃)まで昇温させるのに必要な時間は約半分となり、触媒が活性化するまでの排気ガス中の有害成分の排出量を減らすことが可能となる。
【0066】
また、排気ガスGの温度Tgが上がり排気ガスGの容積流量が大きくなった場合には、中央筒部12に排気ガスGを流しつつ、外周部11側にも排気ガスGを流すことにより、排気ガスが通過する触媒を担持した部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接する時間を長くして触媒反応を促進することができる。これにより、排気ガスの有害成分に対して十分な浄化を行う。
【0067】
また、中央筒部12の触媒の温度Tc1を測定するために、温度センサである熱電対19を中央筒部12の下流側の外周部位に配置すると共に、外周部11の触媒の温度Tc2を測定するために、熱電対20を外周部11の下流側の外周部位に配置する。更に、排気ガス浄化装置10に流入する排気ガスGの温度Tgを測定するために、熱電対21を排気ガス浄化装置10の上流側の排気通路2に配置する。
【0068】
これらの熱電対19、20、21の計測値Tc1、Tc2、Tgは、エンジンの運転を制御するエンジン制御装置(ECU)3に入力され、これらの計測値Tc1、Tc2、Tgに基づいて、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉操作が行われる。なお、外周部11の温度を検出する熱電対19の代わりに、次に述べるようなネット状ヒータ31の通電電流を用いる場合には、この熱電対19は不要となる。
【0069】
本発明においては、図5に示すように、保温構造14の内側となる外周部11の全体に亘って、小径ワイヤをネット状に編み込んで形成したネット状ヒータ(ヒータ)31で包み込み、更に、その周囲を電気的な絶縁性と気密性を有する絶縁シールマット32で包み込む。それと共に、このネット状ヒータ31に流す電流が周方向に流れるように、このネット状ヒータ31の通電部分を、排気ガス浄化装置10の長手方向(排気ガスGの通過方向)に分割して構成する。このネット状ヒータ31としては、例えば、数kwの電力で温度差が400度程度になるような加熱が可能なように、ヒータ線径を例えば0.5mm程度とし、数mm間隔となるように編み込んで、この編み込んだネット状ヒータ31を長手方向に数個並べて、外周部11に巻き付けて構成する。この分割された数個のネット状ヒータ31は通電電極31aに電気的に並列にそれぞれ接続される。この2本の通電電極31aはネット状ヒータ21及び絶縁シールマット32のそれぞれの合わせ部に設けられた電極装着溝11aに、絶縁体11bを挟んで挿入し固定する。
【0070】
この通電電極31aは排気ガス浄化装置12の容器の外側に引き出すために、図6及び図7に示すように、セラミックス製の絶縁管31b、セラミックス製の絶縁シールプレート31c等を挟み、電気的絶縁性と排気ガスに対するシール性の両方を確保しながら保温構造14に固定し、通電電極31aの取り出し部から、図8に示すようにリード線33により印加電圧を調整する電圧調整及び制御ユニット34に接続され、この電圧調整及び制御ユニット34は、リード線35により、電源となるバッテリ36に接続される。そして、この電圧調整及び制御ユニット34により、ネット状ヒータ31への印加電圧を制御することにより、通電電流量を調整し、外周部11を昇温させるように構成する。この印加電圧の制御は、エンジン制御装置3から出力される制御信号により行われる。
【0071】
このネット状ヒータ31は、図9に示すような単一のネット状ヒータ(抵抗R)31Xで形成せずに、図10に示すように、長手方向に分割されたn本のネット状ヒータ(抵抗r=R×n)31で形成され、電流を周方向に並列的に流すことで、長手方向毎の加熱を可能とする。
【0072】
この図10の例では、長手方向に5分割されており、一箇所の抵抗の温度が上昇しても全体の抵抗への影響は5分の1に過ぎず、全体としての抵抗値が大きくなるのは、外周部11の全体の温度が昇温して、多くの各部の抵抗の値が大きくなる場合に限られる。
【0073】
更に、ネット状ヒータの構成では、一本の抵抗でその部分全体の抵抗とするよりは、複数の抵抗となる線を編み込んで、電気抵抗を発生する部分を分散させて外周部11の該当部位を覆うような構成になる。従って、排気ガス浄化装置10のように、比較的大きな場合でも、全体を覆った抵抗の温度変化による抵抗変化を通電の電流量の変化によって全体的に検出することが可能となる。従って、これらのヒータの抵抗値への印加電圧を定電圧とした状態で通電電流値を検出すれば、外周部11の外周全域の平均的温度に近い値を推定することができる。
【0074】
この構成によれば、長手方向に分割したネット状ヒータ31に対して、並列に電流を流すことにより、触媒温度や触媒を担持した部分の外周表面に密接な関係を持つネット状ヒータ31の温度を、目標温度に対して温度が低い状態から短時間で一様に加熱することができる。
【0075】
つまり、温度が上昇すると電気抵抗が減少する一般的なヒータの材料を使用すると、通常は、排気ガス浄化装置10の加熱過程では下流側の触媒を担持している部分の昇温が速くなるが、この構成では、下流側の温度が上昇してその部分のネット状ヒータ31の温度が他の部位に配置したネット状ヒータ31の温度よりも高くなると、その部位の通電抵抗が他の部位の電気抵抗よりも大きくなるので、一定電圧で並列に通電するだけでも、通電抵抗が大きくなった分だけ通電電流が小さくなり発熱量が減少するので、温度が均一化する。
【0076】
例えば、NOx吸蔵還元型触媒では、NOからNO2への酸化反応に温度範囲があり、NO2をNO3の形で吸着するためには、500℃以下(触媒の種類によってこの温度値は多少変わる)であることが望ましい。従って、触媒温度を活性化温度以上に維持する場合には、排気ガスの入口側を加熱して、触媒反応熱により温度が上昇し易い出口側は加熱しない方が望ましいことになるが、ネット状ヒータに流す電流が周方向に流れるように、ネット状ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けることにより、排気ガス浄化装置10の全体の触媒の温度を活性化温度以上で、かつ、500℃以下に維持することができるようになる。
【0077】
次に、ネット状ヒータ31に関して、ヒータ材製造メーカの資料から投入電力を求めて、ヒータの線径を求めた場合について説明する。円筒形状のヒータの内部に触媒を担持した部分を装着するとして、その外周面から加熱するとした場合には、加熱面積Sは、触媒を担持した部分の外径が190.5mm(7.5インチ)で、長さが177.8mm(7.0インチ)から、S=π×0.1905×0.1778=0.106m2 となる。
【0078】
ここで、外周への放熱も考慮に入れた実用炉の設計実績から、800℃の上昇まで6分間で加熱するためには、約14kwが必要となる。
【0079】
これを基に必要な抵抗R2は、28V印加電圧として、R2=28×28/14,000=0.056Ωとなり、ヒータの長さを0.6mで本数をnとすると、r2=0.056×nとなる。ここでn=50とすると、r2=0.056×50=2.8Ωとなり、この値に近いヒータ材の線径は、0.63mmφとなる。なお、このヒータ材の抵抗は4.154Ω/mとなり、0.6mでは、2.49Ωとなる。
【0080】
なお、6分間での800℃の昇温ではなく、6分間での400℃の昇温とした場合には、放熱量などを考慮すると電力が約4kwとなり、抵抗R3=28×28/4,000=0.196Ωとなり、n=50では、r3=50×0.196=9.8Ωとなり、この値に近いヒータ材の線径は0.315mmφとなる。なお、このヒータ材の抵抗は16.62Ω/mとなり、0.6mでは10Ωとなる。
【0081】
また、ネット状ヒータ31に通電する電流量により触媒を担持した部分の外周部位の温度を推定し、この推定値に基づいて、ネット状ヒータ31への通電量を制御して、触媒を担持した部分の温度制御を行うように構成する。
【0082】
つまり、ネット状ヒータ31の抵抗はその配置した場所の温度によって変化し、その抵抗に応じて、一定電圧で通電する電流量は変化するので、電流量を温度センサの信号として使用できる。従って、この電流量から外周部位の温度を推定しながら、印加電圧の制御を行う。これにより、より適切な温度分布にすることが比較的容易にできる。
【0083】
なお、通電時以外においても、加熱には至らない程度の低電圧をネット状ヒータ31に印加すれば微弱電流が流れるので、この微弱電流を検知することでこの微弱電流からネット状ヒータ31の部位の温度を求め、触媒を担持した部分の外周温度を推定し、その値に応じて通電電圧のオンオフと通電量を制御して触媒を担持した部分の外周部位の温度制御を行う。
【0084】
更に、ネット状ヒータ31の通電電流を計測することで、触媒の活性化温度を推定し、この活性化温度から触媒の劣化度合いを推定する。
【0085】
つまり、触媒は劣化により触媒反応の開始温度である活性化温度が次第に高温側にシフトする特性を有しており、その一方で、触媒が活性化して触媒反応が発生するようになると、反応熱が発生して温度が上昇し始め、ネット状ヒータ31の電気抵抗が増加し始めるので、この温度上昇の開始時のネット状ヒータ31への通電電流を計測することで、触媒の活性化温度の上昇の程度を推定することができる。従って、触媒温度に密接な関係を持つネット状ヒータ31の電流値の温度上昇開始時の通電電流の変化から触媒の劣化度合いを把握することができる。なお、排気ガスGの流れ方向(排気ガス浄化装置10の長手方向)にネット状ヒータ31を分割して配置することで、触媒の劣化状況を更に細かく把握することも可能となる。
【0086】
また、排気ガス浄化装置10をNOx浄化触媒装置で構成し、触媒としてNOx吸蔵還元型触媒を使用する場合には、中央筒部12には、NOx吸蔵材としてカリウムを担持させ、外周部11には、NOx吸蔵材としてバリウムを担持させて構成することが好ましい。この構成によれば、高温用(450℃〜550℃)のカリウムを高温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が高い中央筒部12に設け、低温用(250℃〜450℃)のバリウムを、低温の排気ガスの通過が多く、NOx浄化処理中に全体としての平均温度が低い外周部11に設けているので、異なった触媒成分でより効率よくNOx吸蔵性能を発揮することができるようになる。
【0087】
次に、上記の構成の排気ガス浄化システム1における排気ガス浄化方法について説明する。通常の運転状態では、第1バルブ16と第2バルブ18の両方を開いて、排気ガスGを外周部11と中央筒部12の両方に流して、排気ガスG中の有害成分を触媒作用により浄化する。また、暖機運転や低負荷運転等の排気ガスGが低温であり、触媒を迅速に活性化させる必要がある場合と、触媒を硫黄被毒から回復させる脱硫処理で、触媒を高温にする必要がある場合は、第1バルブ16と第2バルブ18はそれぞれの場合に応じて次のように制御される。
【0088】
最初に、暖機運転や低負荷運転の場合について、図11の制御フローを参照しながら説明する。エンジンが始動されて、図11の制御フローが上級の制御フローから呼ばれてスタートすると、ステップS11で、排気ガスGの温度(第1指標温度)Tgと予め設定した第1判定温度T1が入力される。ステップS12で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1以下であるか否かが判定される。この図11の制御フローでは、中央筒部11の触媒の温度を指標する第1指標温度として、中央筒部11に流入する排気ガスGの温度Tgを用いている。なお、熱電対19で計測される温度Tc1を用いることもできる。
【0089】
このステップS12の判定で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1以下であれば(YES)、ステップS13に行き、第1バルブ16を閉じて第2バルブ18を開く。これにより排気ガスGを中央筒部12のみに流す。この制御をした後、予め設定した時間(排気ガスの温度Tgのチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。
【0090】
ステップS12の判定で、排気ガスGの温度Tgが第1判定温度T1を超えたときには(NO、ステップS14に行き、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を開く、即ち、第2バルブ18を開いたまま、第1バルブ16を開く。これにより、排気ガスGを中央筒部12と外周部11の両方に流す。この制御をした後、予め設定した時間(排気ガスの温度Tgのチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS11に戻る。
【0091】
このステップS11〜ステップS13又はステップS11〜ステップS14を繰り返し実行し、エンジンが停止された場合には、割り込みが発生し、ステップS15の終了処理を行って、上級の制御フローに戻り、上級の制御フローの終了と共に、図11の制御フローも終了する。
【0092】
本発明においては、このステップS14で第1バルブを開いて排気ガスGを外周部11に流し始める時に、ネット状ヒータ31に通電して外周部11を外側から加熱し、外周部11の触媒を昇温して迅速に活性化温度以上にし、活性化温度に到達した後は活性化温度域内に維持する。
【0093】
上記の制御により、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1が予め設定した第1判定温度T1以下では、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開いて排気ガスGを中央筒部12のみに流し、第1指標温度Tc1が第1判定温度T1を越えたときには、第2バルブ18を開いたまま第1バルブ18を開いて排気ガスGを中央筒部12と外周部11の両方に流すと共にネット状ヒータ31に通電して加熱しながら通電量を調整して外周部11の温度を調整する。
【0094】
この構成によれば、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、排気ガスGの温度Tgが低く、排気ガスGの容積流量も小さいので保温性が良い中央筒部12に排気ガスGを流して、中央筒部12の触媒を迅速に昇温することができる。また、排気ガスGの温度Tgが高く排気ガスGの容積流量が大きいときには、中央筒部12と外周部11の両方に排気ガスGを流して、排気ガスGが通過する部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。それと共に、外周部11の外周に配置したネット状ヒータ31により外周部11を加熱して外周部11の触媒を迅速に昇温し、活性化温度域内に維持することができる。従って、触媒が活性化するまでの時間を短縮でき、触媒が活性化するまでに大気中に放出される排気ガスG中の有害成分の量を減少できる。
【0095】
この第1判定温度T1は触媒の活性化温度以上の温度であり、触媒の種類にもよるが、200℃〜300℃の範囲内の温度であり、例えば250℃に設定される。
【0096】
なお、エンジンの始動時や低負荷運転の場合には、この図5の制御フローが有効になるが、低負荷運転から高負荷運転に移って排気ガスの温度Tgが上昇したときは、ステップS14の第1バルブ16と第2バルブ18を共に開いた状態になるので、必ずしも、図11の制御フローを停止する必要はない。
【0097】
次に、触媒の温度を高い温度にする必要がある脱硫処理の場合について、図12及び図13の制御フローを参照しながら説明する。図12の制御フローと図13の制御フローとは、図12の下端のAと図13の上端のAとにより接続している一つの制御フローである。
【0098】
この排気ガス浄化システム1において、脱硫処理を行う場合には、上級の制御フローによって、図5の制御フローから、図12及び図13の制御フローに切替られる。ここでは、第1指標温度として、熱電対19の計測温度Tc1を用い、第2指標温度として熱電対20の計測温度Tc2を用いているが、第1指標温度かつ第2指標温度として熱排気ガスGの温度Tgを用いるようにしてもよい。
【0099】
図12及び図13の制御フローは、脱硫処理を行う場合の制御であり、スタートすると、図12のステップS21で、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1と予め設定した第2判定温度T2と予め設定された第1判定時間t1を入力する。次に、ステップS22で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2以下であるか否かを判定する。
【0100】
ステップS22の判定で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2以下である場合(YES)には、ステップS23に行き、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開く。これにより、排気ガスGを中央筒部12のみに流す。この制御をした後、予め設定した時間(第1指標温度Tc1のチェックのインターバルに関係する時間)の間経過した後に、ステップS21に戻る。
【0101】
ステップS22の判定で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた場合には(NO)、ステップS24で、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間td1をカウントする。次のステップS25で、この第1脱硫処理時間td1が予め設定された第1判定時間t1を経過したか否かを判定する。このステップS25の判定で、この第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過していない場合には(NO)、そのままの状態で、予め設定した時間(第1脱硫処理時間td1のチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS21に戻る。
【0102】
ステップS25の判定で、第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過した場合には(YES)、A経由で、図13のステップS26に行き、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を閉じて排気ガスGを外周部11のみに流す。
【0103】
次のステップS27で、外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2と予め設定した第3判定温度T3と予め設定した第2判定時間t2を入力する。次のステップS28で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3以下か否かを判定する。ステップS28の判定で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3以下で、第3判定温度T3を超えていない場合には(YES)、予め設定した時間(第2指標温度Tc2のチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS27に戻る。
【0104】
ステップS28の判定で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた場合には(NO)、次のステップS29で、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間td2をカウントする。次のステップS30で、この第2脱硫処理時間td2が予め設定された第2判定時間t2を経過したか否かを判定する。このステップS30の判定で、この第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過していない場合には(NO)、そのままの状態で、予め設定した時間(第2脱硫処理時間td2のチェックのインターバルに関係する時間)を経過した後に、ステップS27に戻る。
【0105】
ステップS30の判定で、この第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過した場合には(YES)、ステップS31に行き、第1脱硫処理時間td1と第2脱硫処理時間td2のリセット等の脱硫処理の終了の処理を行ってから、上級の制御スローにリターンする。
【0106】
なお、通常は、第3判定温度は第2判定温度よりも低く、第2判定時間は第1判定時間よりも短く設定される。これは、低温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するバリウムの方が高温用のNOx吸蔵還元型触媒で使用するカリウムよりも脱離し易いからである。そして、触媒の種類や排気ガス浄化装置10にもよるが、例えば、第2判定温度T2は700℃〜750℃程度に、第3判定温度T3は650℃〜700℃程度に設定され、第1判定時間t1は480s〜600s程度に、第2判定時間t2は180s〜300s程度に設定される。
【0107】
本発明においては、このステップS26で第1バルブを開いて排気ガスGを外周部11に流し始める時に、ネット状ヒータ31に通電して外周部11を外側から加熱し、外周部11の触媒を昇温して迅速に第3判定温度T3以上にする。
【0108】
なお、熱電対19で測定される外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2の代わりに、ネット状ヒータ31の通電電流Iを用いる場合には、図13の第2指標温度Tc2の代わりに通電電流Iを用い、第3判定温度T3の代わりに判定電流値Icを用いる。この場合は、図13の制御フローは、ステップS27と28が、図14の制御フローのステップS27Aと28Aとなる。
【0109】
この場合に、局所的に温度が上昇して一箇所の抵抗が大きくなっても、全体の抵抗への影響は小さく、全体としての抵抗値が大きくなるのは、触媒を担持している外周部11の全体の温度が上がり多くの抵抗の値が大きくなる場合に限られる。ネッ状ヒータ31では抵抗が分散しており、排気ガス浄化装置10のように、温度を検出するための対象物が大きい場合には、ヒータの抵抗値の変化を定電圧のもとで、全体の電流値としての通電電流Iを検出することで、全体の平均温度に近い値を使った制御が可能となる。
【0110】
この制御により、脱硫処理を行っている場合に、中央筒部12の触媒の温度を指標する第1指標温度Tc1が予め設定した第2判定温度T2以下では、第1バルブ16を閉じると共に第2バルブ18を開いて排気ガスを中央筒部12のみに流し、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えてから、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間td1が予め設定された第1判定時間t1を経過するまでは、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉状態をそのまま継続し、第1脱硫処理時間td1が第1判定時間t1を経過したときに、第1バルブ16を開いて第2バルブ18を閉じて排気ガスGを外周部11のみに流すと共にネット状ヒータ31に通電して加熱しながら通電量を調整して外周部11の温度を調整し、更に、外周部11の触媒の温度を指標する第2指標温度Tc2が予め設定した第3判定温度T3を超えると、第2指標温度Tc2が第3判定温度T3を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間td2が予め設定した第2判定時間t2を経過するまでは、第1バルブ16と第2バルブ18の開閉状態とネット状ヒータ31による温度調整をそのまま継続し、第2脱硫処理時間td2が第2判定時間t2を経過すると、脱硫処理を終了する。
【0111】
この脱硫処理の場合の排気ガス浄化方法によれば、触媒を高温にする必要がある脱硫処理において、第1指標温度Tc1が第2判定温度T2を超えてから第1判定時間t2を超えるまでは、筒状の仕切り壁13の遮熱構造により保温性がよく昇温が早い中央筒部12に排気ガスGを全量流して、この中央筒部11の脱硫処理を完了するまで行い、その後、保温構造により保温性がよいが中央筒部12に比べて触媒の昇温が遅れ易い外周部11に排気ガスGを全量流すと共に、ネット状ヒータ31に通電して外周部11を加熱して外周部11の脱硫処理を集中的に行うことができる。
【0112】
そのため、中央筒部12の脱硫処理に際しては、中央筒部12からの熱移動を仕切り壁13で抑制しているので、中央筒部12の加熱処理時間を減らすことができ、また、外周部11の脱硫処理に際しては、仕切り壁13と保温構造14とで外周部11からの熱移動を抑制し、更に、ネット状ヒータ31によって加熱しているので、外周部11の加熱処理時間を著しく減らすことができる。従って、各部分の昇温を迅速に行うことができ、触媒全体の脱硫処理を効率よく行うことができ、脱硫処理のために必要となる時間と燃料消費量を減少できる。
【0113】
その上、脱硫処理の前半で、中央筒部12だけを脱硫処理し、脱硫処理の後半で外周部11だけをネット状ヒータ31で加熱しながら脱硫処理して、排気ガスGが通過し難く温度も上がり難い触媒の外周部11を、執拗に脱硫処理することで、触媒の全体に亘って十分な脱硫を行うことができる。そのため、浄化能力を良好な状態に維持できる。
【0114】
その結果、触媒の浄化性能の維持に必要な還元処理、言い換えれば、触媒の浄化能力を回復する再生処理のための時間や回数を減少できるので、この再生処理で必要な燃料消費量を低減できる。従って、車両に搭載する触媒の容量を減少して、搭載性を確保すると共にコストを低減することができる。また、脱硫処理において、冷え易い触媒の外周部11のみを高温に加熱することで中央筒部12が過剰な高温に晒されて触媒が劣化することを抑制することができる。
【0115】
なお、上記の図12及び図13(又は図14)の制御フローでは、脱硫処理の回数は、中央筒部12と外周部11とで同じ回数となるが、更に、硫黄処理を外周部11と中央筒部12とに分けて行うように構成すれば、比較的硫黄の吸着し難い外周部11の処理回数を減らすことができるので、より燃料消費量を低減することができるようになる。
【0116】
上記の構成の排気ガス浄化システム1によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置10において、触媒の浄化性能の温度依存性を考慮して、触媒の浄化性能を速やかに且つ効率よく利用できる。
【0117】
この構成によれば、排気ガス浄化装置10から放熱する熱量を、ネット状ヒータ31による加熱で補うことができ、触媒を担持した部分の温度低下を抑制することができる。また、触媒を担持した部分の外周部11の温度を、排気ガスGの熱量に依存することなく、ネット状ヒータ31による加熱で昇温させて活性化温度域に維持できるので、活性化温度に昇温な時間を殆ど無くすことができる。従って、触媒が活性化温度域までの昇温するまでの間に放出される有害成分の排出を著しく減少することができる。
【0118】
また、長手方向に分割したネット状ヒータ31に対して、電流を周方向に並列的に流すことで、長手方向毎に異なった加熱ができ、温度が低い部分の加熱と、温度が高い部分の加熱の抑制を簡単に行うことができるので、触媒の温度を短時間で昇温して全体的に均一に維持することが比較的容易にできるようになる。
【0119】
また、上記の排気ガス浄化方法によれば、NOx浄化触媒装置、酸化触媒装置、触媒付きフィルタ装置等の触媒を用いた排気ガス浄化装置10において、エンジン始動直後の暖機運転や低負荷運転のときには、保温性が良い中央筒部12に排気ガスGを流して、中央筒部12の触媒を迅速に昇温して、活性化までの時間を短縮することができる。
【0120】
また、排気ガスの容積流量が大きいときには、中央筒部12と外周部11の両方に排気ガスGを流して、排気ガスGが通過する部分の容積を増やして、排気ガスGに対する空間速度を下げて、排気ガスGが触媒に接触する時間を長くして触媒反応を促進することができる。この外周部11に排気ガスGを流す場合に、ネット状ヒータ31に通電して加熱しながら通電量を調整して外周部11の温度を調整するので、外周部11を外周側から加熱して速やか活性化温度に昇温させることができ、昇温後は通電量を調整して外周部11の触媒の温度を活性化温度域内に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施の形態の排気ガス浄化システムの構成を示す図である。
【図2】排気ガス浄化装置の排気ガスの入口の構成を示す図である。
【図3】排気ガス浄化装置の横断面を示す図である。
【図4】排気ガス浄化装置の筒状の仕切り壁の構成を示す図3のHで示す楕円部分の拡大図である。
【図5】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの構成を示す図である。
【図6】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの通電電極の引き出し部構成を示す図である。
【図7】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの通電電極の引き出し部構成を示す図6のJで示す楕円部分の拡大図である。
【図8】排気ガス浄化装置のネット状ヒータの通電の構成を示す図である。
【図9】単一のネット状ヒータの通電の状態を模式的に示す図である。
【図10】複数のネット状ヒータの並列通電の状態を模式的に示す図である。
【図11】本発明に係る排気ガス浄化方法の暖機運転及び低負荷運転の場合の制御フローの一例を示す図である。
【図12】本発明に係る排気ガス浄化方法の脱硫処理に場合の制御フローの一例の前半を示す図である。
【図13】図12の制御フローの後半を示す図である。
【図14】ヒータの通電電流を用いた場合の図12の制御フローの後半を示す図である。
【符号の説明】
【0122】
1 排気ガス浄化システム
2 エンジンの排気通路
3 エンジン制御装置(ECU)
10 排気ガス浄化装置
11 外周部
12 中央筒部
13 仕切り壁
14 保温構造
15 第1通路
16 第1バルブ
17 第2通路
18 第2バルブ
19、20、21 熱電対
31 ネット状ヒータ(ヒータ)
32 絶縁シールマット
33、35 リード線
34 電圧調整及び制御ユニット
36 バッテリ(電源)
G 排気ガス
I 通電電流
Ic 判定電流値
T1 第1判定温度
T2 第2判定温度
T3 第3判定温度
Tc1 第1指標温度
Tc2 第2指標温度
Tg 排気ガスの温度
t1 第1判定時間
t2 第2判定時間
td1 第1脱硫処理時間
td2 第2脱硫処理時間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成することを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記ヒータに通電する電流量により前記触媒を担持した部分の外周部位の温度を推定し、この推定値に基づいて、前記ヒータへの通電量を制御して、前記触媒を担持した部分の温度制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
前記ヒータの通電電流を計測することで、触媒の活性化温度を推定し、この活性化温度から触媒の劣化度合いを推定することを特徴とする請求項1、2又は3記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成すると共に、前記外周部の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けた排気ガス浄化システムの排気ガス浄化方法であって、
前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項6】
脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態と前記ヒータによる温度調整をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了することを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化方法。
【請求項7】
前記第2指標温度として、前記ヒータの通電電流量を用いることを特徴とする請求項6記載の排気ガス浄化方法。
【請求項1】
排気ガス中の有害成分を浄化する触媒を担持した排気ガス浄化装置を備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けたことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成することを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
前記ヒータに通電する電流量により前記触媒を担持した部分の外周部位の温度を推定し、この推定値に基づいて、前記ヒータへの通電量を制御して、前記触媒を担持した部分の温度制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
前記ヒータの通電電流を計測することで、触媒の活性化温度を推定し、この活性化温度から触媒の劣化度合いを推定することを特徴とする請求項1、2又は3記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
前記排気ガス浄化装置の触媒を担持した部分を遮熱構造の筒状の仕切り壁により外周部と中央筒部の二つに分けて、内燃機関の排気通路と前記外周部との間に第1バルブを、前記排気通路と前記中央筒部との間に第2バルブを設け、前記第1バルブを開くことにより排気ガスを前記外周部に流し、前記第2バルブを開くことにより排気ガスを前記中央筒部に流すように構成すると共に、前記外周部の外周をヒータで包み、該ヒータに流す電流が周方向に流れるように、該ヒータの通電部分を長手方向に分割して設けた排気ガス浄化システムの排気ガス浄化方法であって、
前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第1判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第1判定温度を越えたときには、前記第2バルブを開いたまま前記第1バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部と前記外周部の両方に流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整することを特徴とする排気ガス浄化方法。
【請求項6】
脱硫処理を行っている場合に、前記中央筒部の触媒の温度を指標する第1指標温度が予め設定した第2判定温度以下では、前記第1バルブを閉じると共に前記第2バルブを開いて排気ガスを前記中央筒部のみに流し、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えてから、前記第1指標温度が前記第2判定温度を超えた時間の総和である第1脱硫処理時間が予め設定された第1判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態をそのまま継続し、前記第1脱硫処理時間が前記第1判定時間を経過したときに、前記第1バルブを開いて前記第2バルブを閉じて排気ガスを前記外周部のみに流すと共に前記ヒータに通電して加熱しながら通電量を調整して外周部の温度を調整し、更に、前記外周部の触媒の温度を指標する第2指標温度が予め設定した第3判定温度を超えると、前記第2指標温度が前記第3判定温度を超えた時間の総和である第2脱硫処理時間が予め設定した第2判定時間を経過するまでは、前記第1バルブと前記第2バルブの開閉状態と前記ヒータによる温度調整をそのまま継続し、前記第2脱硫処理時間が前記第2判定時間を経過すると、脱硫処理を終了することを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化方法。
【請求項7】
前記第2指標温度として、前記ヒータの通電電流量を用いることを特徴とする請求項6記載の排気ガス浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−48112(P2010−48112A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211125(P2008−211125)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]