説明

排気浄化装置

【課題】パティキュレートフィルタの強制再生時における選択還元型触媒の急激な温度上昇によって高い濃度のアンモニアが選択還元型触媒からスリップする問題を防止する。
【解決手段】パティキュレートフィルタ14の強制再生時に、選択還元型触媒5内を流動する排気ガス3中のアンモニア濃度が排気ガス3中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒5の温度の上昇を設定勾配に保持するための温度調節手段30を備えて選択還元型触媒5内のNOx量とアンモニア量をバランスさせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的にNOxを還元剤と反応させる性質を備えた選択還元型触媒を装備し、該選択還元型触媒の上流側に必要量の還元剤を添加して該還元剤を選択還元型触媒上で排気ガス中のNOx(窒素酸化物)と還元反応させ、これによりNOxの排出濃度を低減し得るようにしたものがある。
【0003】
他方、プラント等における工業的な排煙脱硝処理の分野では、還元剤にアンモニア(NH3)を用いてNOxを還元浄化する手法の有効性が既に広く知られているところであるが、自動車の場合には、アンモニアそのものを搭載して走行することに関し安全確保が困難であるため、近年においては、毒性のない尿素水を還元剤として使用することが研究されている。
【0004】
即ち、尿素水を選択還元型触媒の上流側で排気ガス中に添加すれば、該排気ガス中で尿素水がアンモニアと炭酸ガスに熱分解され、選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxがアンモニアにより良好に還元浄化されることになる(例えば特許文献1参照)。
【0005】
又、ディーゼルエンジンの排気浄化を図る場合、排気ガス中のNOxを除去するだけでは十分ではなく、排気ガス中に含まれるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)についてもパティキュレートフィルタを通して捕集する必要があるが、この種のパティキュレートフィルタを採用する場合には、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタの再生を図る必要がある。
【0006】
このため、パティキュレートフィルタの前段に、フロースルー型の酸化触媒を付帯装備させ、パティキュレートの堆積量が増加してきた段階で前記酸化触媒より上流の排気ガス中に燃料を添加する等してパティキュレートフィルタを強制再生することが考えられている。
【0007】
つまり、酸化触媒より上流の排気ガス中に燃料を添加すれば、その添加燃料(HC)が前段の酸化触媒を通過する間に酸化反応するので、その反応熱で昇温した排気ガスの流入により直後のパティキュレートフィルタの触媒床温度が上げられてパティキュレートが燃やし尽くされ、パティキュレートフィルタの再生化が図られることになる。
【0008】
一般的に、前述した如き燃料添加を実行するための具体的手段としては、圧縮上死点付近で行われる燃料のメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射を実行して排気ガス中に燃料を添加することが考えられているが、その添加燃料を効率良く強制再生に活用し且つ排気ガスが極力温度降下しないうちに添加燃料を酸化処理するためには、前記パティキュレートフィルタ及びその前段の酸化触媒を選択還元型触媒よりも上流側に配置することが好ましいものと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−155914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、選択還元型触媒の前段でパティキュレートフィルタの強制再生を行うと、その前段の酸化触媒で添加燃料が酸化反応することによる発熱と、パティキュレートフィルタにおける捕集済みのパティキュレートが燃焼することによる発熱とにより、パティキュレートフィルタの出側における排気ガスの温度が例えば約500℃以上にも急激に上昇してしまう問題がある。
【0011】
図7は選択還元型触媒の触媒温度と選択還元型触媒がアンモニアを吸着する吸着量との関係である吸着特性Aを示したものである。選択還元型触媒は、アンモニアの吸着と離脱を同時に行っており、図7に示すように、触媒温度が高くなるとアンモニア吸着量は急激に減少する挙動を示す。従って、図7の所定の温度で運転していた状態から触媒温度が急激に上昇した場合には、吸着していたアンモニアが選択還元型触媒から一気に離脱するようになる。
【0012】
図8は選択還元型触媒の触媒温度と選択還元型触媒内のアンモニア濃度の理想的状態をを示したもので、触媒温度Bは、選択還元型触媒の活性が高い活性温度(中心値)の近傍の目標温度になるようにしているが、実際の触媒温度は運転状況などによって変動する。又、選択還元型触媒に対して吸着と離脱が行われることによる選択還元型触媒内の排気ガス中のアンモニア濃度Cは、排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適したアンモニア濃度(バランス濃度)となるように尿素水の添加が調節され、これによって選択還元型触媒内の排気ガス中のアンモニア量とNOx量が略バランスしてNOxの除去を行うようになっている。
【0013】
図9はパティキュレートフィルタの強制再生時における触媒温度Bと触媒内のアンモニア濃度Cとの関係を示したものである。パティキュレートフィルタの強制再生は、通常車両を停止した後に行うようにしており、このため、強制再生は前記触媒温度が前記目標温度よりも低い温度の状態から行うことになるが、前記したように、例えば排気ガス中に燃料を添加することによってパティキュレートフィルタの強制再生を行うと、排気ガス温度が急激に上昇するために、図9の触媒温度Bは、B’で示すように急激に上昇するようになる。このような触媒温度の急激な上昇によって前記図7において示したように選択還元型触媒に保持されていたアンモニアは一気に離脱し、このために、触媒内のアンモニア濃度Cはハッチングを施した増加量C’のように急激に増加することになる。ここで、前記パティキュレートフィルタの強制再生時には排気ガス中のNOx量も若干増加するために、この増加したNOxによって前記増加したアンモニアの一部は消費されることになるものの、これによる消費量は僅かであり、よって、前記増加量C’のアンモニアは余剰となって選択還元型触媒から一気に外部にスリップ(排出)されるようになる。尚、選択還元型触媒5の後段にアンモニア酸化触媒15を設けてスリップしてくるアンモニアを除去することも考えられているが、前記したように、高い濃度のアンモニアがスリップした場合には、処理し切れずに外部に排出されてしまう問題があった。
【0014】
上記したように、従来の排気浄化装置においては、高い濃度のアンモニアがスリップすることによって、排気ガスがアンモニア臭を生じるという問題を有していた。
【0015】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであり、パティキュレートフィルタの強制再生時における選択還元型触媒の急激な温度上昇によって高い濃度のアンモニアが選択還元型触媒からスリップする問題を防止するようにした排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の排気浄化装置は、エンジンの排気管の途中に選択還元型触媒を装備し且つ該選択還元型触媒の上流側に還元剤として尿素水を添加してNOxを還元浄化するようにしたNOx浄化装置と、尿素水の添加位置より上流の排気管に、酸化触媒を前段に付帯装備して配置されたパティキュレートフィルタとを有し、該パティキュレートフィルタ入口の排気温度を高めてパティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼しパティキュレートフィルタの強制再生を行うようにした排気浄化装置であって、前記パティキュレートフィルタの強制再生時に、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持するための温度調節手段を備えて選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量をバランスさせるようにしたことを特徴とする。
【0017】
而して、上記本発明の排気浄化装置では、パティキュレートフィルタの強制再生時に、温度調節手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持するので、選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量とがバランスし、選択還元型触媒から高い濃度のアンモニアがスリップすることは防止される。
【0018】
又、本発明の排気浄化装置は、エンジンの排気管の途中に選択還元型触媒を装備し且つ該選択還元型触媒の上流側に還元剤として尿素水を添加してNOxを還元浄化するようにしたNOx浄化装置と、尿素水の添加位置より上流の排気管に、酸化触媒を前段に付帯装備して配置されたパティキュレートフィルタとを有し、該パティキュレートフィルタ入口の排気温度を高めてパティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼しパティキュレートフィルタの強制再生を行うようにした排気浄化装置であって、前記パティキュレートフィルタの強制再生時に、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニアが排気ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加するためのNOx量増加手段を備えて選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量をバランスさせるようにしたことを特徴とする。
【0019】
而して、上記本発明の排気浄化装置では、パティキュレートフィルタの強制再生時に、NOx量増加手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニアが排気ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加するので、選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量とがバランスし、選択還元型触媒から高い濃度のアンモニアがスリップすることは防止される。
【0020】
又、パティキュレートフィルタの強制再生時に、温度調節手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持することと、NOx量増加手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニアが排気ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加することを同時に行うことにより、選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量とがバランスし、選択還元型触媒から高い濃度のアンモニアがスリップすることは防止される。
【0021】
上記排気浄化装置において、前記温度調節手段は、エンジンに対するメイン噴射とポスト噴射を制御する燃料噴射制御器に対して、ポスト噴射の噴射量を指令するようにしたポスト噴射制御器であってもよい。
【0022】
又、上記排気浄化装置において、前記温度調節手段は、酸化触媒の上流に燃料を添加する燃料添加装置と、該燃料添加装置による燃料添加量を制御する燃料添加制御器であってもよい。
【0023】
又、上記排気浄化装置において、前記温度調節手段は、酸化触媒の上流に備えたバーナ装置と、該バーナ装置による燃料の添加量を制御するためのバーナ制御器であってもよい。
【0024】
又、上記排気浄化装置において、前記NOx量増加手段は、エンジンに対するメイン噴射とポスト噴射を制御する燃料噴射制御器に対して、メイン噴射の遅角制御を指令して排気ガス中のNOx量を増加させる噴射角度制御器であってもよい。
【0025】
又、上記排気浄化装置において、前記NOx量増加手段は、エンジンの排気ガスを吸気に再循環する排気再循環装置と、該排気再循環装置による排気再循環量の減少を指令して排気ガス中のNOx量を増加させる排気再循環量制御器であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の排気浄化装置によれば、排気昇温手段により排気温度を高めるパティキュレートフィルタの強制再生時に、温度調節手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持するので、選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量とがバランスするようになり、選択還元型触媒から高い濃度のアンモニアがスリップする問題を防止し、排気ガスによるアンモニア臭の発生を防止できる効果がある。
【0027】
又、本発明の排気浄化装置によれば、排気昇温手段により排気温度を高めるパティキュレートフィルタの強制再生時に、NOx量増加手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニアが排気出ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加するので、選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量とがバランスするようになり、選択還元型触媒から高い濃度のアンモニアがスリップする問題を防止し、排気ガスによるアンモニア臭の発生を防止できる効果がある。
【0028】
又、前記排気昇温手段により排気温度を高めるパティキュレートフィルタの強制再生時に、温度調節手段によって、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持することと、NOx量増加手段によって、選択還元型触媒内を流動するエンジン排出ガス中のアンモニアがエンジン排出ガス中のNOxによって消費され尽すように排気ガス中のNOx量を増加することを同時に行うことにより、選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量とがバランスするようになり、選択還元型触媒から高い濃度のアンモニアがスリップする問題を防止し、排気ガスによるアンモニア臭の発生を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施する形態の一例としての排気浄化装置の全体概要構成図である。
【図2】図1に示す温度調節手段の他の例を示す全体概要構成図である。
【図3】本発明を実施する形態の他の例としての排気浄化装置の全体概要構成図である。
【図4】図3に示すNOx量増加手段の他の例を示す全体概要構成図である。
【図5】図1、図2の形態によって選択還元型触媒の温度を設定勾配に沿って上昇させる例を示すグラフである。
【図6】図3、図4の形態によって選択還元型触媒内のNOx濃度を増加させる例を示すグラフである。
【図7】選択還元型触媒の触媒温度と選択還元型触媒がアンモニアを吸着する吸着量との関係を示すグラフである。
【図8】選択還元型触媒の触媒温度と選択還元型触媒内のアンモニア濃度の理想的な状態を示すグラフである。
【図9】パティキュレートフィルタの強制再生時における触媒温度と触媒内のアンモニア濃度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1に示す排気浄化装置は、ディーゼルエンジン1から排気マニホールド2を介して排出される排気ガス3が流通する排気管4の途中に、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒5を設けている。
【0032】
この選択還元型触媒5の入側には噴射ノズル6が設置されており、該噴射ノズル6と所要場所に設けた尿素水タンク7との間が、尿素水噴射弁8を備えた尿素水供給ライン9により接続され、該尿素水供給ライン9の途中に装備した供給ポンプ10の駆動により尿素水タンク7内の尿素水11(還元剤)を尿素水噴射弁8を介し選択還元型触媒5の上流側に添加し得るようになっていて、これら噴射ノズル6、尿素水タンク7、尿素水噴射弁8、尿素水供給ライン9、供給ポンプ10により尿素水添加装置12が構成されている。
【0033】
又、前記尿素水添加装置12による尿素水11の添加位置(噴射ノズル6の開口位置)より上流の排気管4には、酸化触媒13を前段に付帯装備し且つ自身にも酸化触媒を一体的に担持したパティキュレートフィルタ14が装備されており、また、前記選択還元型触媒5の直後には、リークアンモニア対策として余剰のアンモニアを酸化処理するためのアンモニア酸化触媒15が装備されている。
【0034】
前記ディーゼルエンジン1の排気管4の途中には排気ガス3によって駆動されるターボチャージャ16が設けてあり、エアクリーナ17から取入れてターボチャージャ16で圧縮した空気はインタークーラ18で冷却した後、吸気マニホールド19を介してディーゼルエンジン1の各気筒に供給されるようになっている。
【0035】
更に、前記ディーゼルエンジン1には、排気ガス3の一部をEGR配管20により取り出してEGRクーラ21により冷却した後、EGRバルブ22を介して前記吸気マニホールド19に供給するようにした排気再循環装置23を設けている。
【0036】
また、図示しない運転席のアクセルには、アクセル開度をディーゼルエンジン1の負荷として検出するアクセルセンサ24(負荷センサ)が備えられていると共に、ディーゼルエンジン1の適宜位置には、その回転数を検出する回転センサ25が装備されており、これらアクセルセンサ24及び回転センサ25からのアクセル開度信号24a及び回転数信前記号25aが燃料噴射制御を含むエンジン制御コンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)である制御装置26に入力されるようになっている。
【0037】
前記制御装置26には、アクセル開度信号24a及び回転数信号25aから判断される現在の運転状態に応じ、各気筒内に燃料を噴射する燃料噴射装置27の各インジェクタの電磁弁に向けて燃料をメイン噴射する燃料噴射信号28aと、をメイン噴射に続いてポスト噴射を指令するポスト噴射信号28bとを指令するようにした燃料噴射制御器28を設けている。
【0038】
この燃料噴射制御器28は、アクセル開度信号24a及び回転数信号25aに基づき通常モードの燃料噴射信号28aを決定して出力する一方、パティキュレートフィルタ14の強制再生を行う必要が生じた際には、通常モードから再生モードに切り替わり、圧縮上死点(クランク角0゜)付近で行われる燃料のメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミング(開始時期がクランク角90゜〜130゜の範囲)でポスト噴射を行うポスト噴射信号28bを決定して出力するようにしている。
【0039】
つまり、このようにメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射が行われると、このポスト噴射により排気ガス3中に未燃の燃料(主としてHC:炭化水素)が添加されることになり、この未燃の燃料がパティキュレートフィルタ14の前段の酸化触媒13を通過する間に酸化反応し、その反応熱で昇温した排気ガス3の流入により直後のパティキュレートフィルタ14の触媒床温度が上げられてパティキュレートが燃焼除去されることになる。
【0040】
ここで、上記制御装置26においては、ディーゼルエンジン1の回転数信号25aと燃料噴射信号28aの出力値から判る燃料の噴射量とを抽出し、これら回転数と噴射量とによるパティキュレートの発生量マップからディーゼルエンジン1の現在の運転状態に基づくパティキュレートの基本的な発生量を推定し、この基本的な発生量に対しパティキュレートの発生にかかわる各種の条件を考慮した補正係数を掛け且つ現在の運転状態におけるパティキュレートの処理量を減算して最終的な発生量を求め、この最終的な発生量を時々刻々積算してパティキュレートの堆積量を推定し、その堆積量が所定の目標値に達したものと推定された時に、燃料噴射制御器28により通常モードの燃料噴射信号28aからポスト噴射信号28bへと切り替えるようになっている。
【0041】
図1に示す形態では、パティキュレートフィルタ14の強制再生時には、排気ガス3の温度が上昇することにより選択還元型触媒5の温度も上昇し、選択還元型触媒5に吸着していたアンモニアが離脱して選択還元型触媒5内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が上昇することになるため、選択還元型触媒5内のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度となるように、選択還元型触媒5の温度の上昇を設定勾配に保持するための温度調節手段30を制御装置26に設けている。
【0042】
温度調節手段30は、ポスト噴射制御器31を有しており、該ポスト噴射制御器31には、パティキュレートフィルタ14の強制再生時におけるポスト噴射量と選択還元型触媒5の温度との関係、及び選択還元型触媒5の温度と選択還元型触媒5内のアンモニア濃度との関係が経験値から予め求められて入力されている。そして、前記ポスト噴射制御器31に強制再生の開始信号32が入力されると、ポスト噴射制御器31は、選択還元型触媒5内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように、選択還元型触媒5の温度を図5の設定勾配αに沿って上昇させるべく、燃料噴射制御器28にポスト噴射量指令31aを出力して、ポスト噴射量を制御するようにしている。又、選択還元型触媒5入口の排気ガス温度を検出する温度計29が設けてあり、該温度計29からの検出温度信号29aが前記ポスト噴射制御器31に入力されて、選択還元型触媒5の温度をフィードバックにより補正するようにしている。
【0043】
而して、図1の形態では、前記ディーゼルエンジン1の通常の運転時は、燃料噴射制御器28からの燃料噴射信号28aによって燃料の噴射量が制御されており、排気管4からの排気ガス3は、パティキュレートフィルタ14によりパティキュレートが除去された後、尿素水添加信号8a,10aによって作動される前記尿素水添加装置12により尿素水11が添加されて気化したアンモニアの存在下で選択還元型触媒5によりNOxが除去されて排気ガス3の浄化が行われる。
【0044】
パティキュレートフィルタ14の強制再生時には、燃料噴射制御器28は通常時のメイン噴射を行う燃料噴射信号28aからメイン噴射に続いてポスト噴射を行うポスト噴射信号28bに切り替える制御を行うことになるが、この時、開始信号32が入力された燃料添加制御器40は、燃料38の添加によって昇温される選択還元型触媒5の温度が図5に示す設定勾配αに沿って上昇するように、燃料添加装置39に燃料添加指令40aを出力して燃料38の添加量を制御するようにしている。
【0045】
尚、前記パティキュレートの強制再生時には、尿素水添加装置12による尿素水11の添加は停止するようにしている。
【0046】
上記したように、ポスト噴射制御器31によって選択還元型触媒5の温度が図5に示す設定勾配αに沿って上昇されるようにしたので、選択還元型触媒5内のNOx量は均等化した僅かな増加量C’で生じるのみとなり、このために選択還元型触媒5内でのNOx量とアンモニア量とは略バランスするようになる。よって、選択還元型触媒5から高い濃度のアンモニアがスリップする問題は防止され、排気ガスによるアンモニア臭は発生しなくなる。又、上記したように、僅かな増加量C’からなるアンモニアは選択還元型触媒5の後段に設けたアンモニア酸化触媒15によって処理することができる。
【0047】
図2は、前記図1の温度調節手段30の他の例を示したものであり、図2の温度調節手段30は、パティキュレートフィルタ14の前段に配置した酸化触媒の上流に設けるようにした添加ノズル33と所要場所に設けた燃料タンク34の間が、添加弁35を備えた燃料添加ライン36により接続され、該燃料添加ライン36の途中に装備した供給ポンプ37の駆動により燃料タンク34内の燃料38を添加弁35を介しパティキュレートフィルタ14前段の酸化触媒13の上流側に添加し得るようにした燃料添加装置39を備えている。
【0048】
一方、前記制御装置26には、強制再生の開始信号32が入力されることより、前記燃料添加装置39による燃料添加量を制御するための燃料添加指令40aを出力するようにした燃料添加制御器40を設けている。燃料添加制御器40には、パティキュレートフィルタ14の強制再生時における燃料添加装置39による燃料の添加量と選択還元型触媒5の温度との関係、及び選択還元型触媒5の温度と選択還元型触媒5内のアンモニア濃度との関係が経験値から予め求められて入力されている。又、燃料添加制御器40には前記選択還元型触媒5入口の排気ガス温度を検出する温度計29からの検出温度信号29aが入力されている。
【0049】
尚、図2の形態では、燃料噴射制御器28は通常モードのメイン噴射による燃料噴射信号28aのみをディーゼルエンジン1に出力する場合を示しているが、前記燃料添加装置39による燃料添加と同時に、図1で示したようにポスト噴射信号28bをディーゼルエンジン1に出力してポスト噴射を同時に行うようにしてもよい。
【0050】
又、前記温度調節手段30としては、図示しないが、パティキュレートフィルタ14の前段に配置した酸化触媒の上流にバーナ装置を備え、更に、該バーナ装置による燃料の添加量を制御するためのバーナ制御器を備えるようにしてもよく、この場合、バーナ装置による燃焼と、前記図1に示したポスト噴射信号28bによるポスト噴射を同時に行うようにしてもよい。
【0051】
而して、図2の形態では、パティキュレートフィルタ14の強制再生時には、燃料添加制御器40からの燃料添加指令40aによって燃料添加装置39によりパティキュレートフィルタ14前段の酸化触媒13の入口に燃料38が添加されるが、この時、燃料添加制御器40は、燃料38の添加によって昇温される選択還元型触媒5の温度が、図5に示す設定勾配αに沿って上昇するように燃料添加装置39に燃料添加指令40aを出力して燃料38の添加量を制御するようにしている。
【0052】
上記したように、燃料添加装置39及び燃料添加制御器40により選択還元型触媒5の温度を図5に示す設定勾配αに沿って上昇させるようにしたので、選択還元型触媒5内のNOx量は均等化した僅かな増加量C’で生じるのみとなり、このために選択還元型触媒5内でのNOx量とアンモニア量とは略バランスするようになり、よって、選択還元型触媒5から高い濃度のアンモニアがスリップする問題は防止され、排気ガスによるアンモニア臭は発生しなくなる。
【0053】
図3は、本発明の他の形態を示したもので、パティキュレートフィルタ14の強制再生時には、排気ガス3の温度が上昇することにより選択還元型触媒5の温度も上昇し、選択還元型触媒5に吸着していたアンモニアが離脱して選択還元型触媒5内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が上昇することになる。従って、このように選択還元型触媒5内のアンモニア濃度が急激に増加してもそのアンモニアが排気ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加させるためのNOx量増加手段41を設けている。
【0054】
図3に示すNOx量増加手段41は、噴射角度制御器42を有しており、該噴射角度制御器42には、パティキュレートフィルタ14の強制再生時における選択還元型触媒5の温度と選択還元型触媒5内のアンモニア濃度との関係、及び、メイン噴射の遅角と排気ガス3中のNOx濃度との関係が経験値から予め求められて入力されている。そして、前記噴射角度制御器42に強制再生の開始信号32が入力されると、噴射角度制御器42は、図6に示すように選択還元型触媒5内を流動する排気ガス中のNOx濃度Dの増加量D’が、強制再生時に選択還元型触媒5内で増加するアンモニア濃度Cの増加量C’を消費し尽すように、燃料噴射制御器28に遅角制御指令42aを出力して、メイン噴射の遅角制御を行うようにしている。又、選択還元型触媒5入口の排気ガス温度を検出する温度計29からの検出温度信号29aが前記噴射角度制御器42に入力されている。尚、前記パティキュレートフィルタ14の強制再生は、図1に示したように、燃料噴射制御器28からのポスト噴射信号28bによって排気ガス温度を上昇させても、又は、図2に示したように、燃料添加装置39と燃料添加制御器40によって排気ガス温度を上昇させてもよい。
【0055】
而して、図3の形態では、パティキュレートフィルタ14の強制再生時には、例えば燃料噴射制御器28によって通常時のメイン噴射による燃料噴射信号28aからメイン噴射に続いてポスト噴射を行うポスト噴射信号28bに切り替えられるが、この時、強制再生の開始信号32が入力された噴射角度制御器42は遅角制御指令42aを燃料噴射制御器28に出力してメイン噴射を遅角制御するようにしているので、図6に示す如く選択還元型触媒5内のNOx濃度Dは、増加量D’のように増加する。
【0056】
このように、パティキュレートフィルタ14の強制再生時に噴射角度制御器42による制御によって図6に示すように排気ガス3中のNOx濃度Dが増加量D’のように増加されるので、強制再生時にアンモニア濃度Cが増加量C’のように増加しても、このアンモニアの増加量C’が、前記NOx濃度Dの増加量D’によって消費し尽されることになる。このとき、テールパイプ5a出口での排気ガスのNOxが増加することはなく安定している。よって、選択還元型触媒5から高い濃度のアンモニアがスリップする問題は防止され、排気ガスによるアンモニア臭は発生しなくなる。
【0057】
図4は、前記図3のNOx量増加手段41の他の例を示したものであり、図4のNOx量増加手段41は、強制再生の開始信号32が入力されることより、排気再循環装置23による排気再循環量を減少させるようにした排気再循環量制御器43を有している。排気再循環量制御器43には、パティキュレートフィルタ14の強制再生時における選択還元型触媒5の温度と選択還元型触媒5内のアンモニア濃度との関係、及び、排気再循環装置23による排気再循環量と排気ガス3中のNOx濃度との関係が経験値から予め求められて入力されている。そして、前記排気再循環量制御器43に強制再生の開始信号32が入力されると、排気再循環量制御器43はEGRバルブ22に再循環量減少指令43aを出力して排気再循環量を減少させ、これにより排気ガス3中のNOx量を増加させるようにしている。又、前記排気再循環量制御器43には前記選択還元型触媒5入口の排気ガス温度を検出する温度計29からの検出温度信号29aが入力されている。尚、前記パティキュレートフィルタ14の強制再生には、図1に示したように、燃料噴射制御器28からのポスト噴射信号28bによって排気ガス温度を上昇させても、又は、図2に示したように、燃料添加装置39と燃料添加制御器40によって排気ガス温度を上昇させてもよい。
【0058】
而して、図4の形態では、パティキュレートフィルタ14の強制再生時には、例えば燃料噴射制御器28によって通常時のメイン噴射による燃料噴射信号28aからメイン噴射に続いてポスト噴射を行うポスト噴射信号28bに切り替える制御を行うことになるが、この時、強制再生の開始信号32が入力された排気再循環量制御器43は再循環量減少指令43aをEGRバルブ22に出力して排気再循環量を減少させる制御を行うので、図6に示す如く選択還元型触媒5内のNOx濃度Dは、増加量D’のように増加する。
【0059】
このように、パティキュレートフィルタ14の強制再生時に排気再循環量制御器43による制御によって図6に示すように排気ガス3中のNOx濃度Dが増加量D’のように増加されるので、強制再生時にアンモニア濃度Cが増加量C’のように増加しても、このアンモニアの増加量C’が、前記NOx濃度Dの増加量D’によって消費し尽されることになり、よって、選択還元型触媒5から高い濃度のアンモニアがスリップする問題は防止され、排気ガスによるアンモニア臭は発生しなくなる。
【0060】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、温度調節手段及びNOx量増加手段は図示例以外の方式によるものを用いてもよいこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1 ディーゼルエンジン(エンジン)
3 排気ガス
4 排気管
5 選択還元型触媒
12 尿素水添加装置
13 酸化触媒
14 パティキュレートフィルタ
23 排気再循環装置
28 燃料噴射制御器
28b ポスト噴射信号
29 温度計
29a 検出温度信号
30 温度調節手段
31 ポスト噴射制御器
31a ポスト噴射量指令
39 燃料添加装置
40 燃料添加制御器
40a 燃料添加指令
41 NOx量増加手段
42 噴射角度制御器
42a 遅角制御指令
43 排気再循環量制御器
43a 再循環量減少指令

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気管の途中に選択還元型触媒を装備し且つ該選択還元型触媒の上流側に還元剤として尿素水を添加してNOxを還元浄化するようにしたNOx浄化装置と、尿素水の添加位置より上流の排気管に、酸化触媒を前段に付帯装備して配置されたパティキュレートフィルタとを有し、該パティキュレートフィルタ入口の排気温度を高めてパティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼しパティキュレートフィルタの強制再生を行うようにした排気浄化装置であって、前記パティキュレートフィルタの強制再生時に、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持するための温度調節手段を備えて選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量をバランスさせるようにしたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
エンジンの排気管の途中に選択還元型触媒を装備し且つ該選択還元型触媒の上流側に還元剤として尿素水を添加してNOxを還元浄化するようにしたNOx浄化装置と、尿素水の添加位置より上流の排気管に、酸化触媒を前段に付帯装備して配置されたパティキュレートフィルタとを有し、該パティキュレートフィルタ入口の排気温度を高めてパティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼しパティキュレートフィルタの強制再生を行うようにした排気浄化装置であって、前記パティキュレートフィルタの強制再生時に、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニアが排気ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加するためのNOx量増加手段を備えて選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量をバランスさせるようにしたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
エンジンの排気管の途中に選択還元型触媒を装備し且つ該選択還元型触媒の上流側に還元剤として尿素水を添加してNOxを還元浄化するようにしたNOx浄化装置と、尿素水の添加位置より上流の排気管に、酸化触媒を前段に付帯装備して配置されたパティキュレートフィルタとを有し、該パティキュレートフィルタ入口の排気温度を高めてパティキュレートフィルタに捕集されたパティキュレートを燃焼しパティキュレートフィルタの強制再生を行うようにした排気浄化装置であって、前記パティキュレートフィルタの強制再生時に、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニア濃度が排気ガス中のNOxを還元浄化するのに適した濃度になるように選択還元型触媒の温度の上昇を設定勾配に保持するための温度調節手段と、選択還元型触媒内を流動する排気ガス中のアンモニアが排気ガス中のNOxによって消費され尽すようにエンジン排出ガス中のNOx量を増加するためのNOx量増加手段とを備えて選択還元型触媒内のNOx量とアンモニア量をバランスさせるようにしたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項4】
前記温度調節手段は、エンジンに対するメイン噴射とポスト噴射を制御する燃料噴射制御器に対して、ポスト噴射の噴射量を指令するようにしたポスト噴射制御器である請求項1又は3に記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記温度調節手段は、酸化触媒の上流に燃料を添加する燃料添加装置と、該燃料添加装置による燃料添加量を制御する燃料添加制御器である請求項1又は3に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記温度調節手段は、酸化触媒の上流に備えたバーナ装置と、該バーナ装置による燃料の添加量を制御するためのバーナ制御器である請求項1又は3に記載の排気浄化装置。
【請求項7】
前記NOx量増加手段は、エンジンに対するメイン噴射とポスト噴射を制御する燃料噴射制御器に対して、メイン噴射の遅角制御を指令して排気ガス中のNOx量を増加させる噴射角度制御器である請求項2又は3に記載の排気浄化装置。
【請求項8】
前記NOx量増加手段は、エンジンの排気ガスを吸気に再循環する排気再循環装置と、該排気再循環装置による排気再循環量の減少を指令して排気ガス中のNOx量を増加させる排気再循環量制御器である請求項2又は3に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−261331(P2010−261331A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110848(P2009−110848)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】