説明

排気蓄圧装置

【課題】低過給状態からの加速時に加速レスポンスを確保し且つNOx排出量の一時的な増加も極力抑制する。
【解決手段】ターボチャージャ2を備えたエンジン1に適用するための排気蓄圧装置に関し、排気ガス8を蓄圧するガス収集タンク14と、該ガス収集タンク14に排気マニホールド9から排気ガス8の一部を取り込むガス導入管15と、ガス収集タンク14からターボチャージャ2のタービン2b入口に排気ガス8を放出するガス排出管16と、ガス収集タンク14から吸気マニホールド6に排気ガス8を放出するガス排出管17とを備え、排気マニホールド9の圧力が高い運転領域でガス導入管15を介しガス収集タンク14に排気ガス8を取り込んで蓄圧すると共に、加速時にガス収集タンク14内の温度に応じガス排出管16,17の何れかを選択してガス収集タンク14から排気ガス8を放出するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給システムを備えたエンジンに適用するための排気蓄圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの燃費を改善する手法として、ダウンサイジングと高Pme化(高平均有効圧力化)が知られており、このようにすれば、エンジンを過給することによって、より小さい排気量、より少ない気筒数のエンジンで自然吸気エンジン及び低過給大排気量エンジンと同等の出力、トルクのエンジンに置き換えることができる。
【0003】
ただし、過給圧が低い状態では、吸入できる空気量がエンジン排気量相当のみとなり、十分な空気量を確保できないため、大排気量エンジン相当のトルクを得ることが困難である。例えば、アイドリング等の低過給状態からの加速は、空気量が確保できるまでトルクを出せないことから、大排気量エンジンに対して加速レスポンスが劣るという課題があった。
【0004】
この対策として、従来においては、低過給状態からの加速時にEGRバルブを閉じて排気ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)を一時的に中止し、これにより空気量を確保して加速レスポンスの向上を図るようにしている。
【0005】
即ち、低過給状態からの加速時にアクセルが深く踏み込まれると、これに即応して燃料噴射量が増加して排気ガスが増加するが、EGRバルブが開いたままの状態にあると、タービンの通過が抵抗となって排気ガスの多くがEGRガスとして吸気側へ再循環し、タービンを効率良く駆動することができなくなって吸気量が燃料噴射量の増加に追いつかなくなるため、必要な吸気量を確保するためにEGRバルブを一時的に閉じて排気ガスの全量をタービンに導き、該タービンを効率良く駆動して吸気量の早期の増加を促すようにしている。
【0006】
尚、本発明に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−92122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように加速時にEGRバルブを閉じて排気ガス再循環を一時的に中止してしまうと、排気ガスの再循環が遮断されることによりNOx排出量が一時的に増加してしまうという問題があった。
【0009】
尚、小サイズのターボチャージャを採用して速やかな過給を得ることも考えられるが、そのような小サイズのターボチャージャを採用してしまうと、ターボチャージャの過回転防止やチョークのために流量に制限がかかり、高速域での高トルク化を図ることができなくなってしまう。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、低過給状態からの加速時に加速レスポンスを確保し且つNOx排出量の一時的な増加も極力抑制し得るようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、適宜な段数のターボチャージャから成る過給システムを備えたエンジンに適用するための排気蓄圧装置であって、排気ガスを蓄圧するガス収集タンクと、該ガス収集タンクに排気マニホールドから排気ガスの一部を取り込む第一ガス導入管と、前記ガス収集タンクから少なくとも一段のターボチャージャのタービン入口に排気ガスを放出する第一ガス排出管と、前記ガス収集タンクから吸気マニホールドに排気ガスを放出する第二ガス排出管とを備え、排気マニホールドの圧力が高い運転領域で第一ガス導入管を介しガス収集タンクに排気ガスを取り込んで蓄圧すると共に、加速時にガス収集タンク内の温度に応じ第一ガス排出管及び第二ガス排出管の何れかを選択してガス収集タンクから排気ガスを放出するように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
而して、排気マニホールドの圧力が高い運転領域で第一ガス導入管を介しガス収集タンクに排気ガスを取り込んで蓄圧しておき、加速時に第一ガス排出管を選択してガス収集タンクから排気ガスを少なくとも一段のターボチャージャのタービン入口に放出すると、該タービンの羽根車に排気ガスが当たることで回転が促され、これによりタービンの回転が助勢されて速やかな過給圧の上昇が図られるので、加速レスポンスが向上されると共に、必要な吸気量を確保するためにEGRバルブを一時的に閉じなければならない時間が短縮されてNOx排出量の一時的な増加が抑制されることになる。
【0013】
また、加速時に第二ガス排出管を選択してガス収集タンクから排気ガスを吸気マニホールドに放出すると、該吸気マニホールドの吸気に排気ガスが混合されて各気筒に導かれ、該各気筒内での燃料の燃焼が抑制されて燃焼温度が下がることによりNOxの発生が低減されることになり、EGRバルブを閉じて排気ガス再循環を一時的に中止してもガス収集タンクからの排気ガスの導入によりNOxが抑制され続けてNOx排出量の一時的な増加が回避されることになる。
【0014】
ここで、加速時に第一ガス排出管及び第二ガス排出管の何れを選択すべきかについては、ガス収集タンク内の温度に応じて決めれば良く、第一ガス排出管を選択してタービンの回転を助勢するにあたっては、ガス収集タンク内の排気ガスが高温高圧であるほどエネルギーを多く持っていてタービンの羽根車を回す力が大きいので、ガス収集タンク内の温度が所定温度より高い場合に第一ガス排出管を選択すれば良い。
【0015】
一方、第二ガス排出管を選択して吸気マニホールドに排気ガスを導入するにあたっては、ガス収集タンク内の排気ガスが低温であるほど密度が高まってNOxの発生を低減する効果が大きくなり、しかも、温度降下してエネルギーが少なくなった排気ガスを無理に第一ガス排出管を介しタービン入口に送り込んでも回転を助勢する効果が少ないため、ガス収集タンク内の温度が所定温度以下の場合に第二ガス排出管を選択することが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、第一ガス導入管に設けられた第一ガス導入バルブと、第一ガス排出管に設けられた第一ガス排出バルブと、第二ガス排出管に設けられた第二ガス排出バルブと、ガス収集タンク内の温度を検出する温度センサと、ガス収集タンク内の圧力を検出する第一圧力センサと、排気マニホールド内の圧力を検出する第二圧力センサと、吸気系のインタークーラより下流で過給圧を検出する第三圧力センサと、これら温度センサ及び第一圧力センサ,第二圧力センサ,第三圧力センサからの検出信号に基づき第一ガス導入バルブ,第一ガス排出バルブ,第二ガス排出バルブを制御してガス収集タンクに対する排気ガスの蓄圧及び放出を制御する制御装置とを備えることが好ましい。
【0017】
更に、本発明においては、ガス収集タンクに排気ガス再循環系のEGRクーラより下流から排気ガスの一部を取り込む第二ガス導入管と、該第二ガス導入管に設けられた第二ガス導入バルブとを備え、ガス収集タンク内の温度が許容温度より高い時に第一ガス導入管に替えて第二ガス導入管から排気ガスを取り込むように制御装置を構成することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
上記した本発明の排気蓄圧装置によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0019】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、加速時にガス収集タンク内の温度が高ければ、エネルギーの多い排気ガスをターボチャージャのタービン入口に放出して該タービンの回転を助勢することにより速やかな過給圧の上昇を図って加速レスポンスを向上することができ、しかも、この加速レスポンスの向上により必要な吸気量を確保するためにEGRバルブを一時的に閉じなければならない時間を短縮してNOx排出量の一時的な増加を抑制することもできる。また、加速時にガス収集タンク内の温度が低ければ、密度が高い排気ガスを吸気マニホールドに放出して吸気に排気ガスを混合することにより各気筒内での燃料の燃焼を抑制してNOxの発生を低減することができ、しかも、このようにガス収集タンクに蓄圧した排気ガスを吸気に混合してNOxの発生を低減できることで加速時にEGRバルブを閉じて排気ガス再循環を一時的に中止してもNOx排出量の一時的な増加を回避することができ、加速時に排気ガスの全量をタービンに導くことで該タービンを効率良く駆動して吸気量の早期の増加を促すことができる。これによって、低過給状態からの加速時に小サイズのターボチャージャを採用することなく加速レスポンスを確保し且つNOx排出量の一時的な増加も極力抑制することができる。
【0020】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、温度センサ及び第一圧力センサ,第二圧力センサ,第三圧力センサからの検出信号に基づき第一ガス導入バルブ,第一ガス排出バルブ,第二ガス排出バルブを制御してガス収集タンクに対する排気ガスの蓄圧及び放出を制御装置により精密に制御することができる。
【0021】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、ガス収集タンク内の温度が過剰に上昇して許容温度より高くなってしまった場合に、排気ガス再循環系のEGRクーラを経て温度降下した排気ガスを第二ガス導入管から取り込むことでガス収集タンク内の温度を許容値以下に制御して該ガス収集タンクを過剰な熱から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一形態例を示す概略図である。
【図2】本発明の第二形態例を示す概略図である。
【図3】本発明の第三形態例を示す概略図である。
【図4】本発明の第四形態例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は本発明の第一形態例を示すもので、図1中における1はディーゼル機関であるエンジンを示し、該エンジン1は、過給システムを構成する単段のターボチャージャ2を備えており、図示しないエアクリーナから導いた吸気3を吸気管4を通し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへ送り、該コンプレッサ2aで加圧された吸気3をインタークーラ5へと送って冷却し、該インタークーラ5から更に吸気マニホールド6へと吸気3を導いてエンジン1の各気筒7に分配するようにしてある。
【0025】
また、このエンジン1の各気筒7から排出された排気ガス8を排気マニホールド9を介し前記ターボチャージャ2のタービン2bへ送り、該タービン2bを駆動した排気ガス8を排気管10を介し車外へ排出するようにしてある。
【0026】
そして、排気マニホールド9における各気筒7の並び方向の一端部と、吸気マニホールド6に接続されている吸気管4の一端部との間がEGRパイプ11により接続されており、排気マニホールド9から排気ガス8の一部を抜き出してEGRガスとして吸気管4に導き得るようにしてある。
【0027】
ここで、前記EGRパイプ11には、該EGRパイプ11を適宜に開閉するEGRバルブ12と、EGRパイプ11を流れる排気ガス8を冷却するためのEGRクーラ13とが装備されており、該EGRクーラ13では、図示しない冷却水と排気ガス8とを熱交換させることにより該排気ガス8の温度を低下し得るようになっている。
【0028】
即ち、排気ガス8をEGRパイプ11の途中で冷却すると、排気ガス8の温度が下がり且つその容積が小さくなることにより密度が高まり、各気筒7への排気ガス8の充填効率が上がるので、エンジン1の出力をあまり低下させずに燃焼温度を低下して効果的にNOxの発生を低減させることが可能となる。
【0029】
そして、このように構成されたエンジン1に適用される排気蓄圧装置は、排気ガス8を蓄圧するガス収集タンク14と、該ガス収集タンク14に排気マニホールド9から排気ガス8の一部を取り込むガス導入管15(第一ガス導入管)と、前記ガス収集タンク14からターボチャージャ2のタービン2b入口に排気ガス8を放出するガス排出管16(第一ガス排出管)と、前記ガス収集タンク14から吸気マニホールド6に排気ガス8を放出するガス排出管17(第二ガス排出管)とを備えており、排気マニホールド9の圧力が高い運転領域でガス導入管15を介しガス収集タンク14に排気ガス8を取り込んで蓄圧すると共に、加速時にガス収集タンク14内の温度に応じガス排出管16及びガス排出管17の何れかを選択してガス収集タンク14から排気ガス8を放出するようになっている。
【0030】
ここに図示している例では、ガス収集タンク14がEGRパイプ11の近傍に配置されているため、EGRパイプ11のEGRクーラ13より上流の部分を介して排気マニホールド9から排気ガス8の一部を取り込むようにしてあるが、排気マニホールド9から排気ガス8の一部を直接導くようにしても良いことは勿論である。
【0031】
更に、本形態例においては、EGRパイプ11のEGRクーラ13より下流からもガス導入管18(第二ガス導入管)を介して排気ガス8の一部を取り込むことができるようになっているが、これはガス収集タンク14内の温度が過剰に上昇して許容温度より高くなってしまった場合の対策として設けられているもので、その具体的な使い方については後で詳細に述べることとする。
【0032】
また、ガス導入管15,ガス排出管16,ガス排出管17,ガス導入管18の夫々に、ガス導入バルブ19(第一ガス導入バルブ),ガス排出バルブ20(第一ガス排出バルブ),ガス排出バルブ21(第二ガス排出バルブ),ガス導入バルブ22(第二ガス導入バルブ)が夫々装備され、ガス収集タンク14には、その内部の温度を検出する温度センサ23と、その内部の圧力を検出する圧力センサ24(第一圧力センサ)とが装備されている一方、排気マニホールド9に、その内部の圧力を検出する圧力センサ25(第二圧力センサ)が装備され、インタークーラ5より下流の吸気管4には、過給圧を検出する圧力センサ26(第三圧力センサ)が装備されており、これら温度センサ23及び圧力センサ24,25,26からの検出信号23s,24s,25s,26sに基づき、ガス導入バルブ19,ガス排出バルブ20,ガス排出バルブ21,ガス導入バルブ22が、制御装置27により制御信号19s,20s,21s,22sを介して制御され、ガス収集タンク14に対する排気ガス8の蓄圧及び放出が制御されるようになっている。
【0033】
より具体的には、アクセル開度をエンジン1の負荷として検出するアクセルセンサ28からの検出信号28sと、エンジン1の回転数を検出する回転センサ29からの検出信号29sも前記制御装置27に入力されていて、これらの検出信号28s,29sに基づき現在の運転状態が把握されるようになっているので、高速高負荷等の排気マニホールド9内の圧力が高い運転領域において、圧力センサ24により検出されるガス収集タンク14内の圧力よりも、圧力センサ25により検出される排気マニホールド9内の圧力の方が相対的に高いことを確認した上でガス導入バルブ19を開け、ガス収集タンク14内に排気ガス8を取り込むようにしている。
【0034】
この際、ガス収集タンク14の圧力センサ24の検出値が増加している間は、ガス導入バルブ19をそのまま開状態に保持し、前記圧力センサ24の検出値が減少に転じたら前記ガス導入バルブ19を閉じて排気ガス8をガス収集タンク14内に封止すれば良い。
【0035】
或いは、ガス収集タンク14内の圧力よりも排気マニホールド9内の圧力の方が相対的に高い場合にガス導入バルブ19を常に開け、これ以外の圧力条件でガス導入バルブ19を常に閉じるようにして該ガス導入バルブ19を逆止弁のように使う制御を採用することも可能である。
【0036】
ただし、温度センサ23の検出値に基づきガス収集タンク14内の温度が過剰に上昇して許容温度(ガス収集タンク14の耐熱温度等)より高くなってしまったことが制御装置27で把握された場合には、ガス導入バルブ19を閉じ且つガス導入バルブ22を開け、EGRパイプ11のEGRクーラ13を経て温度降下した排気ガス8をガス導入管18から取り込むことでガス収集タンク14内の温度を許容値以下に制御するようにしても良い。
【0037】
そして、アクセルセンサ28及び回転センサ29からの検出信号28s,29sに基づき加速状態が判定された時に、圧力センサ24により検出されるガス収集タンク14内の圧力よりも、圧力センサ26により検出される過給圧の方が相対的に低い条件において、ガス排出管16及びガス排出管17の何れかが選択されてガス収集タンク14から排気ガス8が放出されるようになっている。
【0038】
ここで、加速時にガス排出管16及びガス排出管17の何れを選択すべきかについては、ガス収集タンク14内の温度に応じて決めれば良く、ガス排出管16を選択してタービン2bの回転を助勢するにあたっては、ガス収集タンク14内の排気ガス8が高温高圧であるほどエネルギーを多く持っていてタービン2bの羽根車を回す力が大きいので、温度センサ23により検出されるガス収集タンク14内の温度が所定温度より高い場合に、制御装置27によりガス排出バルブ20を開けてガス排出管16を選択すれば良い。
【0039】
一方、ガス排出管17を選択して吸気マニホールド6に排気ガス8を導入するにあたっては、ガス収集タンク14内の排気ガス8が低温であるほど密度が高まってNOxの発生を低減する効果が大きくなり、しかも、温度降下してエネルギーが少なくなった排気ガス8を無理にガス排出管16を介しタービン2b入口に送り込んでも回転を助勢する効果が少ないため、ガス収集タンク14内の温度が所定温度以下の場合には、制御装置27によりガス排出バルブ21を開けてガス排出管17を選択すれば良い。
【0040】
尚、制御装置27で加速状態が判定されている状況下で過給圧がガス収集タンク14内の圧力以上に上がっていたとしても、該ガス収集タンク14内の圧力が排気マニホールド9内の圧力より高ければ、ガス排出管16を選択してタービン2b入口に排気ガス8を放出させても良い。
【0041】
而して、排気マニホールド9の圧力が高い運転領域でガス導入管15を介しガス収集タンク14に排気ガス8を取り込んで蓄圧しておき、加速時にガス排出管16を選択してガス収集タンク14から排気ガス8をターボチャージャ2のタービン2b入口に放出すると、該タービン2bの羽根車に排気ガス8が当たることで回転が促され、これによりタービン2bの回転が助勢されて速やかな過給圧の上昇が図られるので、加速レスポンスが向上されると共に、必要な吸気量を確保するためにEGRバルブ12を一時的に閉じなければならない時間が短縮されてNOx排出量の一時的な増加が抑制されることになる。
【0042】
また、加速時にガス排出管17を選択してガス収集タンク14から排気ガス8を吸気マニホールド6に放出すると、該吸気マニホールド6の吸気3に排気ガス8が混合されて各気筒7に導かれ、該各気筒7内での燃料の燃焼が抑制されて燃焼温度が下がることによりNOxの発生が低減されることになり、EGRバルブ12を閉じて排気ガス再循環を一時的に中止してもガス収集タンク14からの排気ガス8の導入によりNOxが抑制され続けてNOx排出量の一時的な増加が回避されることになる。
【0043】
従って、上記形態例によれば、加速時にガス収集タンク14内の温度が高ければ、エネルギーの多い排気ガス8をターボチャージャ2のタービン2b入口に放出して該タービン2bの回転を助勢することにより速やかな過給圧の上昇を図って加速レスポンスを向上することができ、しかも、この加速レスポンスの向上により必要な吸気量を確保するためにEGRバルブ12を一時的に閉じなければならない時間を短縮してNOx排出量の一時的な増加を抑制することもできる。また、加速時にガス収集タンク14内の温度が低ければ、密度が高い排気ガス8を吸気マニホールド6に放出して吸気3に排気ガス8を混合することにより各気筒7内での燃料の燃焼を抑制してNOxの発生を低減することができ、しかも、このようにガス収集タンク14に蓄圧した排気ガス8を吸気3に混合してNOxの発生を低減できることで加速時にEGRバルブ12を閉じて排気ガス再循環を一時的に中止してもNOx排出量の一時的な増加を回避することができ、加速時に排気ガス8の全量をタービン2bに導くことで該タービン2bを効率良く駆動して吸気量の早期の増加を促すことができる。これによって、低過給状態からの加速時に小サイズのターボチャージャ2を採用することなく加速レスポンスを確保し且つNOx排出量の一時的な増加も極力抑制することができる。
【0044】
更に、温度センサ23及び圧力センサ24,圧力センサ25,圧力センサ26からの検出信号23s,24s,25s,26sに基づきガス導入バルブ19,ガス排出バルブ20,ガス排出バルブ21を制御してガス収集タンク14に対する排気ガス8の蓄圧及び放出を制御装置により精密に制御することができる。ただし、アクセルセンサ28及び回転センサ29からの検出信号28s,29sに基づいて把握される現在の運転状況に応じて制御マップによる制御を行うことも不可能ではない。
【0045】
また、ガス収集タンク14内の温度が過剰に上昇して許容温度より高くなってしまった場合に、排気ガス再循環系のEGRクーラ13を経て温度降下した排気ガス8をガス導入管18から取り込むことでガス収集タンク14内の温度を許容値以下に制御して該ガス収集タンク14を過剰な熱から保護することができる。
【0046】
図2は本発明の第二形態例を示すもので、この第二形態例においては、前述した図1の第一形態例で単段のターボチャージャ2により構成されていた過給システムを、エンジン1から送出される排気ガス8によって高圧段タービン30bを作動させ且つ高圧段コンプレッサ30aで圧縮した吸気3をエンジン1へ送給する高圧段ターボチャージャ30と、該高圧段ターボチャージャ30の高圧段タービン30bから送出される排気ガス8によって低圧段タービン31bを作動させ且つ低圧段コンプレッサ31aで圧縮した吸気3を前記高圧段コンプレッサ30aへ送給する低圧段ターボチャージャ31とにより二段式の過給システムとしており、ガス収集タンク14から排気ガス8を導くガス排出管16を高圧段タービン30bの入口に接続するようにしている。
【0047】
このような二段式の過給システムを備えたエンジン1に適用した場合にも、前述した第一形態例の場合と同様の作用効果を得ることができ、更には、図3に本発明の第三形態例を示すように、先の第二形態例でガス排出管16を高圧段タービン30bの入口に接続していたことに替えて、ガス排出管16を低圧段タービン31bの入口に接続するようにしても良い。
【0048】
また、図4は本発明の第四形態例を示すもので、この第四形態例においては、ガス排出管16を途中から二股状に分岐して高圧段タービン30bの入口と低圧段タービン31bの入口の両方に接続し、その二股状に分岐したガス排出管16の夫々にガス排出バルブ20を設けて高圧段タービン30bの入口と低圧段タービン31bの入口の何れかに選択的に排気ガス8を放出し得るようにしてあり、このようにすれば、エンジン1の運転状態に応じて、より効率の良い方を選んで排気ガス8を放出することができる。
【0049】
尚、本発明の排気蓄圧装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、三段以上のターボチャージャにより構成された過給システムを備えたエンジンに適用しても良いこと、また、そのような多段式の過給システムにおける各段のターボチャージャのタービン相互間に必要に応じて冷却器を介装しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1 エンジン
2 ターボチャージャ
2a コンプレッサ
2b タービン
3 吸気
4 吸気管
5 インタークーラ
6 吸気マニホールド
7 気筒
8 排気ガス
9 排気マニホールド
10 排気管
11 EGRパイプ
12 EGRバルブ
13 EGRクーラ
14 ガス収集タンク
15 ガス導入管(第一ガス導入管)
16 ガス排出管(第一ガス排出管)
17 ガス排出管(第二ガス排出管)
18 ガス導入管(第二ガス導入管)
19 ガス導入バルブ(第一ガス導入バルブ)
19s 制御信号
20 ガス排出バルブ(第一ガス排出バルブ)
20s 制御信号
21 ガス排出バルブ(第二ガス排出バルブ)
21s 制御信号
22 ガス導入バルブ(第二ガス導入バルブ)
22s 制御信号
23 温度センサ
23s 検出信号
24 圧力センサ(第一圧力センサ)
24s 検出信号
25 圧力センサ(第二圧力センサ)
25s 検出信号
26 圧力センサ(第三圧力センサ)
26s 検出信号
27 制御装置
28 アクセルセンサ
28s 検出信号
29 回転センサ
29s 検出信号
30 高圧段ターボチャージャ
30a 高圧段コンプレッサ
30b 高圧段タービン
31 低圧段ターボチャージャ
31a 低圧段コンプレッサ
31b 低圧段タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な段数のターボチャージャから成る過給システムを備えたエンジンに適用するための排気蓄圧装置であって、排気ガスを蓄圧するガス収集タンクと、該ガス収集タンクに排気マニホールドから排気ガスの一部を取り込む第一ガス導入管と、前記ガス収集タンクから少なくとも一段のターボチャージャのタービン入口に排気ガスを放出する第一ガス排出管と、前記ガス収集タンクから吸気マニホールドに排気ガスを放出する第二ガス排出管とを備え、排気マニホールドの圧力が高い運転領域で第一ガス導入管を介しガス収集タンクに排気ガスを取り込んで蓄圧すると共に、加速時にガス収集タンク内の温度に応じ第一ガス排出管及び第二ガス排出管の何れかを選択してガス収集タンクから排気ガスを放出するように構成したことを特徴とする排気蓄圧装置。
【請求項2】
第一ガス導入管に設けられた第一ガス導入バルブと、第一ガス排出管に設けられた第一ガス排出バルブと、第二ガス排出管に設けられた第二ガス排出バルブと、ガス収集タンク内の温度を検出する温度センサと、ガス収集タンク内の圧力を検出する第一圧力センサと、排気マニホールド内の圧力を検出する第二圧力センサと、吸気系のインタークーラより下流で過給圧を検出する第三圧力センサと、これら温度センサ及び第一圧力センサ,第二圧力センサ,第三圧力センサからの検出信号に基づき第一ガス導入バルブ,第一ガス排出バルブ,第二ガス排出バルブを制御してガス収集タンクに対する排気ガスの蓄圧及び放出を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の排気蓄圧装置。
【請求項3】
ガス収集タンクに排気ガス再循環系のEGRクーラより下流から排気ガスの一部を取り込む第二ガス導入管と、該第二ガス導入管に設けられた第二ガス導入バルブとを備え、ガス収集タンク内の温度が許容温度より高い時に第一ガス導入管に替えて第二ガス導入管から排気ガスを取り込むように制御装置を構成したことを特徴とする請求項2に記載の排気蓄圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−2407(P2013−2407A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136061(P2011−136061)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】