説明

排熱発電装置

【課題】連携している上位の商用電力系統の停電時で、該商用電力系統から補機類を駆動する電力が得られない場合でも電動蒸気止め弁を迅速に完全に閉止できる安価な電動蒸気止め弁閉止手段を備えた排熱発電装置を提供すること。
【解決手段】蒸気発生器11、電動蒸気止め弁16、タービン発電機10、凝縮器14、媒体循環ポンプ15を備え、上位電力系統に連携する排熱発電装置において、電動蒸気止め弁16をバイパスする電動蒸気止め弁バイパス経路L4を設けると共に、該電動蒸気止め弁バイパス経路L4にバイパス弁20を設け、上位電力系統に停電が発生した場合に、バイパス弁20を通して作動媒体蒸気101をタービン発電機のタービン13に導きその発電機18を駆動し、該発電機18で発電された電力で電動蒸気止め弁16の閉止動作を行い、該閉動作完了後にバイパス弁20を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低温の排熱を回収し、この熱エネルギーを電力に変換する商用電力系統と連携する排熱発電装置に関し、特に商用電力系統が停電で補機類を駆動する電力が商用電力系統から得られない場合でもタービン発電機のタービンや発電機を迅速完全に停止できる排熱発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度が200〜400℃程度の排ガス或いは温度が60〜100℃の排温水等比較的低温度の廃熱を有効に発電電力として回収することが試みられている。このような低温度の排熱回収は、所謂ランキンサイクル等を利用したクローズドシステムの発電装置として実現可能である。
【0003】
図1はこの種の排熱を熱源とする排熱発電装置の基本構成例を示す図である。排熱発電装置は、蒸気発生器11、気液分離器12、タービン発電機10、凝縮器14、媒体循環ポンプ15を備えている。排温水や排ガスなどの比較的低温の排熱媒体100を熱源として蒸気発生器11に導入し、凝縮器14から作動媒体液主経路L2を通って媒体循環ポンプ15により蒸気発生器11に導いた作動媒体液102を加熱して蒸発させ、発生した作動媒体蒸気101を作動媒体蒸気主経路L1を通して気液分離器12に導き、該気液分離器12で作動媒体蒸気101に同伴して流入した作動媒体液滴を分離除去する。また、気液分離器12で分離除去された作動媒体液102は作動媒体液戻り経路L3を通って凝縮器14に戻る。
【0004】
気液分離器12で作動媒体液滴が除去された作動媒体蒸気101は、作動媒体蒸気主経路L1に設けられた電動の電動蒸気止め弁16及び蒸気加減弁17を経由して、タービン13に送られる。タービン13に送られた作動媒体は、該タービン13を回転・駆動すると共に、減圧・膨張して、該タービン13から作動媒体蒸気主経路L1へ流出する。このタービン13の回転により、発電機18を回転・駆動して、発電を行う。タービン13から流出した低圧の作動媒体蒸気101は、凝縮器(或いは復水器)14に導入された、冷却媒体110と熱交換して、冷却・凝縮して作動媒体液102となる。凝縮器14で凝縮した作動媒体液102は、作動媒体液主経路L2を通って媒体循環ポンプ15に流入し昇圧されて、高圧の作動媒体液102となり、作動媒体液主経路L2を通って再び蒸気発生器11に供給される。
【0005】
上記構成の排熱発電装置の作動媒体蒸気主経路L1及び作動媒体液主経路L2を循環する作動媒体としては、フロン、水、アンモニア、炭化水素類、炭酸ガス、アルコール類などの種々の媒体を使用することができる。凝縮器14で使用する冷却媒体110としては、冷却塔等で冷却されて冷却水ポンプで循環使用される冷却水や、河川水や海水や井水等一度だけ使用する冷却水、或いは送風機により送られる冷却風、LNGその他の排冷熱等がある。上記排熱発電装置で発電された電力は、系統連携装置を経由して電圧、周波数、波形を合わせて商用電力系統(図示せず)に供給される。
【特許文献1】特開2000−110514号公報
【特許文献2】特表2001−525512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の排熱発電装置において、上位の商用電力系統が停電した場合、排熱発電装置に過負荷や、逆にタービン13の過回転等が発生することになるため、即座に排熱発電装置を商用電力系統から解列し、タービン発電機10を停止させる必要がある。タービン発電機10の運転を停止させるためには、電動蒸気止め弁16を閉止させるなどの補機類を駆動するための動力源が必要である。通常の運転時においては、商用電力系統及び該商用電力系統と連携している発電装置の電力を使用して電動蒸気止め弁16等の補機類を駆動している。しかし、上位の商用電力系統が停電している場合、排熱発電装置を該商用電力系統から解列しているため、該商用電力系統を動力源として使用することができない。
【0007】
一方、この種の排熱発電装置は作動媒体や加熱用の排熱媒体(温水等)100は停電発生においても残存予熱によって作動媒体蒸気を発生する能力を有しているため、排熱発電装置のタービン発電機は商用電力系統に停電が発生し、解列した直後に補機類に駆動動力を供給することが可能である。しかしながら、このタービン発電機で発電された電力を動力源として電動蒸気止め弁16の閉止動作をおこなった場合、閉止動作が進むに従って、つまり弁開度が小さくなるに伴って、タービン13に供給される作動媒体蒸気101の流量が減少し、発電機18の発電電力量が減少し、やがて電動蒸気止め弁16に閉止するために必要な電力を供給できなくなり、電動蒸気止め弁16は全閉となる前に閉動作が停止してしまう。
【0008】
このため、わずかに開いた電動蒸気止め弁16から継続的に作動媒体蒸気101がタービン13に供給され、タービン13が停止することなく、電力の供給が止まっているため、軸受25の潤滑も行われず、制御もかからない。そして発電機18は軸受25の損傷や回転体の破損の可能性の高い危険な状態で回転し続けることになる。
【0009】
このような状態に陥らないように、一般的には、電動蒸気止め弁16にバッテリーやコンデンサー等によるバックアップ電源を設け、商用電力系統の停電時にはバックアップ電源の電力を利用して電動蒸気止め弁16の閉止動作を行ったり、電動蒸気止め弁16にスプリングリターン等の機械的動力による自力閉止機構を設け、停電時に自力閉止させるように構成していた。
【0010】
しかしながら、バックアップ電源を設けたり、スプリングリターン等の機械的動力による自力閉止機構は大きなコストアップの要因となる。特に、小容量の排熱発電装置においては、そのコストアップの影響が排熱発電装置本体コストに占める割合が大きくなり、排熱発電装置の経済的効果を大きく損ねることになる。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、連携している上位の商用電力系統の停電時で、該商用電力系統から補機類を駆動する電力が得られない場合でも電動蒸気止め弁を迅速に完全に閉止できる安価な電動蒸気止め弁閉止手段を備えた排熱発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、蒸気発生器、電動蒸気止め弁、タービン発電機、凝縮器、媒体循環ポンプを備え、熱源として排熱を前記蒸気発生器に導入し、前記凝縮器から前記媒体循環ポンプにより該蒸気発生器に導いた作動媒体を加熱して蒸発させ、発生した作動媒体蒸気を前記電動蒸気止め弁を通してタービン発電機のタービンに導きその発電機を駆動し、該タービンから排出される作動媒体蒸気を前記凝縮器に戻すように構成した上位電力系統に連携する排熱発電装置において、前記電動蒸気止め弁をバイパスする電動蒸気止め弁バイパス経路を設けると共に、該電動蒸気止め弁バイパス経路にバイパス弁を設け、前記上位電力系統に停電が発生した場合に、前記バイパス弁を通して作動媒体蒸気を前記タービン発電機のタービンに導きその発電機を駆動し、該発電機で発電された電力で前記電動蒸気止め弁の閉止動作を行い、該閉動作完了後に前記バイパス弁を閉じることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排熱発電装置において、前記バイパス弁は電源投入で開き、電源遮断で閉じる電磁弁であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の排熱発電装置において、前記電動蒸気止め弁バイパス経路の配管口径及びバイパス弁の容量は、前記電動蒸気止め弁を閉止する動力に前記タービン発電機に潤滑油を送る潤滑油ポンプを駆動する動力を加算した動力を賄える電力を前記タービン発電機が発電するのに必要な前記作動媒体蒸気流量を該タービン発電機のタービンに供給できる口径及び容量であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の排熱発電装置において、前記電動蒸気止め弁バイパス経路の配管口径及びバイパス弁の容量は、前記電動蒸気止め弁を閉止する動力に、前記バイパス弁の開動作を維持する動力、及び前記タービン発電機に潤滑油を送る潤滑油ポンプを駆動する動力を加算した動力を賄える電力を前記タービン発電機が発電するのに必要な前記作動媒体蒸気流量を該タービン発電機のタービンに供給できる口径及び容量であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、電動蒸気止め弁をバイパスする電動蒸気止め弁バイパス経路を設けると共に、該電動蒸気止め弁バイパス経路にバイパス弁を設け、上位電力系統に停電が発生した場合に、バイパス弁を通して作動媒体蒸気をタービン発電機のタービンに導きその発電機を駆動し、該発電機で発電された電力で電動蒸気止め弁の閉止動作を行い、該閉止動作完了後にバイパス弁を閉じるので、電動蒸気止め弁バイパス経路とバイパス弁を設けるだけの簡単、且つ安価な構成で、上位電力系統の停電時に排熱発電装置を解列した場合、速やかに電動蒸気止め弁を完全に閉止してタービン発電機を停止することが可能な排熱発電装置を提供できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、バイパス弁は電源投入で開き、電源遮断で閉じる電磁弁であるので、上位電力系統の停電時に装置を解列しても、タービン発電機は発電しているから、その電量でバイパス弁の開動作は維持され、タービン発電機のタービンに作動媒体蒸気を継続して供給し続け、該発電機で発電した電力で電動蒸気止め弁を速やかに完全に閉止できる。閉止後電磁弁からなるバイパス弁の電源を遮断するとバイパス弁は閉じ、タービンへの作動媒体蒸気の供給は停止する。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、電動蒸気止め弁バイパス経路の配管口径及びバイパス弁の容量は、電動蒸気止め弁を閉止する動力にタービン発電機に潤滑油を送る潤滑油ポンプを駆動する動力を加算した動力を賄える電力をタービン発電機が発電するのに必要な作動媒体蒸気流量をタービン発電機のタービンに供給できる口径及び容量であるので、上位電力系統の停電時に装置を解列した場合に、タービン発電機の発電機で発電する電力で電動蒸気止め弁の完全閉止までの動力及び潤滑油ポンプの駆動動力を賄うことができ、タービン発電機を速やかに停止できると共に、停止までの軸受への潤滑油の供給も確保できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、電動蒸気止め弁バイパス経路の配管口径及びバイパス弁の容量は、前記電動蒸気止め弁を閉止する動力に、バイパス弁の開動作を維持する動力、及び前記タービン発電機に潤滑油を送る潤滑油ポンプを駆動する動力を加算した動力を賄える電力を前記タービン発電機が発電するのに必要な前記作動媒体蒸気流量を該タービン発電機のタービンに供給できる口径及び容量であるので、上位電力系統の停電時に装置を解列した場合に、タービン発電機の発電機で発電する電力で電動蒸気止め弁の完全閉止するまでの動力、バイパス弁の開動作を維持する動力、及び潤滑油ポンプの駆動動力を賄うことができ、タービン発電機を速やかに停止できると共に、停止までの軸受への潤滑油の供給も確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図2は本発明に係る排熱発電装置の構成例を示す図である。図2において、図1と同一符号を付した部分は同一または相当部分を示す。本排熱発電装置は、蒸気発生器11、気液分離器12、タービン発電機10、凝縮器14、媒体循環ポンプ15を備え、蒸気発生器11で発生した作動媒体蒸気101を作動媒体蒸気主経路L1を通して気液分離器12に導き、該気液分離器12で同伴する作動媒体液滴を分離除去し、作動媒体蒸気主経路L1に設けられた電動蒸気止め弁16及び蒸気加減弁17を通して、タービン13に送り、該タービン13を回転・駆動することにより、発電機18が回転・駆動して、発電を行う点は、図1の排熱発電装置と同一である。
【0021】
また、タービン13から作動媒体蒸気主経路L1に流出した低圧の作動媒体蒸気101は、凝縮器(或いは復水器)14に導入され、冷却媒体110と熱交換して、冷却・凝縮して作動媒体液102となり、該作動媒体液102は作動媒体液主経路L2を通って媒体循環ポンプ15に流入し昇圧されて、高圧の作動媒体液102となり、作動媒体液主経路L2を通って再び蒸気発生器11に供給される点も図1の排熱発電装置と同一である。即ち、本排熱発電装置は図1と同じクローズドシステムを採用している。
【0022】
本排熱発電装置では、電動蒸気止め弁16及び蒸気加減弁17をバイパスする電動蒸気止め弁バイパス経路L4を設け、該電動蒸気止め弁バイパス経路L4にバイパス弁20を設けている。また、起動時に、安定したタービン発電機10の運転を可能にするため、蒸気発生器11と気液分離器12を接続する作動媒体蒸気主経路L1から分岐してタービン13と凝縮器14を接続する作動媒体蒸気主経路L1に合流するタービンバイパス作動媒体蒸気経路L5を設け、該タービンバイパス作動媒体蒸気経路L5にタービンバイパス弁21を設けている。
【0023】
また、媒体循環ポンプ15と蒸気発生器11を接続する作動媒体液主経路L2に熱回収器22と予熱器23を設けている。熱回収器22の加熱側には気液分離器12から作動媒体液戻り経路L3を通って凝縮器14に戻る作動媒体液102を通して、凝縮器14から蒸気発生器11に送られる作動媒体液102を加熱して回収を行っている。なお、作動媒体液戻り経路L3には開閉弁24が設けられている。また、予熱器23の加熱側では排熱媒体100を通して、蒸気発生器11に送られる作動媒体液102を予熱している。
【0024】
また、タービン発電機10の発電機18の軸受25を潤滑した潤滑油120は潤滑油戻り経路L10を通って油/媒体分離器26に回収され、該油/媒体分離器26に導入される排熱媒体100で加熱され、潤滑油120中に溶解する作動媒体は気化して分離される。作動媒体が気化し分離した作動媒体蒸気101は作動媒体蒸気経路L6を通って凝縮器14に導かれる。油/媒体分離器26内の作動媒体が分離除去された潤滑油120は潤滑油ポンプ27により、油冷却器28に送られる。冷却器28で冷却された潤滑油120は潤滑油供給経路L11を通って、発電機18の軸受25に供給される。油冷却器28には冷却媒体として、媒体循環ポンプ15で加圧された作動媒体液102が通る作動媒体液経路L7から開閉弁29を経由し作動媒体液102が供給され、潤滑油120を冷却している。これにより、潤滑油120は所定の温度で所定の粘度を有した潤滑油として軸受25に供給される。また、作動媒体液経路L7を通る作動媒体液102は発電機18に冷却媒体として供給され、発電機18を冷却している。
【0025】
電動蒸気止め弁バイパス経路L4に設けたバイパス弁20は電源の遮断時に自力で閉となるような自動弁である。本排熱発電装置が連携する上位の商用電力系統(図示せず)に停電が発生し、本排熱発電装置を該商用電力系統から解列し、タービン13を電動蒸気止め弁16の閉止動作によって停止させる場合に、バイパス弁20を開として電動蒸気止め弁バイパス経路L4を経由してタービン13に作動媒体蒸気101を供給してタービン13を回転・駆動し続けることにより、発電機18を回転・駆動させ、発電を継続し、その電力を利用して電動蒸気止め弁16を全閉できるようになっている。なお、バイパス弁20は、停電発生時に開としても、平常運転時から開としておいても差し支えない。バイパス弁20としては電源投入により開となり、電源遮断により自力で閉となる電磁弁を用いることが開閉時間が短く、安価であるから好適である。
【0026】
電動の電動蒸気止め弁16が全閉になった時点で、バイパス弁20の電源を遮断(電力供給を停止)することで、バイパス弁20は自力閉止し、タービン13への作動媒体蒸気の供給を停止して、タービン13を安全に停止することが可能となる。
【0027】
電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径及びバイパス弁20の容量(Cv値)は、タービン発電機10の発電機18が電動蒸気止め弁16を完全に閉止するまでの動力にバイパス弁20の開動作を維持する動力を加算した動力を賄うことができる電力を発電するのに必要な流量の作動媒体蒸気101をタービン13に供給できるように設定すればよい。電動蒸気止め弁16を完全に閉止するまでの動力及びバイパス弁20の開動作を維持する動力(本例では0.2kW)は、発電機18の発電容量(本例では20kW)に対して微小であるため、電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径及びバイパス弁20の容量は、作動媒体蒸気主経路L1の配管口径や電動蒸気止め弁16の容量に比し、それぞれ極めて小さくて(流量比で1%、配管口径比で10%)で済む。従って、商用電力系統の停電時の対策設備コストを大幅に節減できることになる。
【0028】
また、電動蒸気止め弁16を閉止する動力及びバイパス弁20の開動作を維持する動力(バイパス弁の制御電源を含む)に加えて潤滑油ポンプ27を駆動する動力を加算した動力をもとに、電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径及びバイパス弁の容量(Cv値)を決定することによって、タービン13の停止に際しての安全性の向上を図ることも可能である。更に、タービン13を急速に停止させるために、発電機18に電気ヒータ等の電気負荷を掛けて制動する際に、電動蒸気止め弁16を閉止する動力及びバイパス弁20の開動作を維持する動力に加え電気負荷の制御電源も考慮して電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径及びバイパス弁20の容量を決定することによって、タービン停止時間の短縮を図ることも可能である。
【0029】
バイパス弁20を閉じる時期、即ち電動蒸気止め弁16が全閉となった時点の判断には、電動蒸気止め弁16の全閉をリミットスイッチで確認する方法や、電動蒸気止め弁16が全開状態から閉止動作を開始し全閉になるまでに必要な時間(余裕時間を加味してもよい)をタイマーにセットしておき、電動蒸気止め弁16の閉止動作開始から該セットした時間が経過した時点で電動蒸気止め弁16が全閉と判断するなどがある。例えば電動蒸気止め弁16の全閉で接点が開となるリミットスイッチを、バイパス弁20の電源供給回路に直列に挿入して接続すると、電動蒸気止め弁16が全閉になると同時にバイパス弁20の電源が遮断されバイパス弁20が閉じる。また、リミットスイッチによる方法とタイマーによる方法のAND回路やOR回路による併用も可能である。
【0030】
上記排熱発電装置では、電動蒸気止め弁16は蒸気加減弁17より作動媒体蒸気主経路L1の上流側に設けているが、下流側に設けてもよい。また、電動蒸気止め弁16と蒸気加減弁17は兼用されて、電動蒸気止め弁兼蒸気加減弁としてもよい。この場合には、電動蒸気止め弁バイパス経路L4は該電動蒸気止め弁兼蒸気加減弁をバイパスするように設ける。電動蒸気止め弁16とタービン13の両者をバイパスするバイパス経路を設け、このバイパス経路に小容量の副タービン発電機を設けて発電を行い、商用電力系統の停電時の対策を行う方法も考えられるが、タービン及び発電機などが2重化されるためコストが高くなる。
【0031】
バイパス弁20として電磁弁の替わりに、小型のスプリングターン機能付きの電動弁をバイパス弁20として使用することも可能だが、一般に電磁弁よりも高価である。しかし、必要なバルブ容量(Cv値)が大きい場合は、電磁弁よりも有利な場合がある。また、小型のスプリングターン機能付きの電動弁を用いる場合でも電動蒸気止め弁16に比べれば格段に小径、小容量でよく、コストメリットがある。(但し、電磁弁も内部にバネを有しており一種のスプリングターンとも言える。)
【0032】
バイパス弁20として電磁弁の替わりに、小型のバックアップ電源若しくは小型のバックアップ電源付の電動弁をバイパス弁20として使用することも可能であるが、一般に電磁弁より高価である。しかし、必要なバルブ容量が大きい場合は、電磁弁よりも有利な場合がある。また、小型のバックアップ電源付きの電動弁を用いる場合でも、電動蒸気止め弁16に比べれば格段に小径、小容量でよく、コスト的に利点がある。但し、一般的なバックアップ電源である充電池は寿命があるため、信頼性とメンテナンスの面で不利である。
【0033】
タービン発電機10の発電機18で発電された電力は交流のまま停電対策に使用してもよいし、図3に示すように、交流/直流変換器(コンバータ)30を使用して直流に変換してから使用してもよい。更に直流/交流変換器(インバータ)31を使用して所定周波数・電圧の交流に変換してから制御装置(AC200V)32に供給し、制御装置32で電動蒸気止め弁16や潤滑油ポンプ27等の補機を駆動制御するようにしてもよい。ここで、補機の駆動に必要な電圧は常時400V(AC)、最低375V(AC)である。なお、33は本排熱発電装置を商用電力系統40に連携・解列するための開閉器である。
【0034】
また、図4に示すように、制御系統を直流の低電圧(例えばDC24V)の仕様とし、タービン発電機10の発電機18で発電した電力を交流/直流変換器30を使用して直流に変換し、直流電圧変換器(所謂DC−DCコンバータ)35でさらに低い直流電圧(DC24V)の電力に変換すると共に、直流/交流変換器(インバータ)31を使用して所定周波数・電圧の交流に変換し電力を交流/直流変換器34でさらに低い直流電圧(DC24V)の電力に変換して制御装置(DC24V)に供給するようにしてもよい。そして制御装置36で電動蒸気止め弁16や潤滑油ポンプ27等の補機を直流の低電圧で駆動制御するようにしてもよい。このように電動蒸気止め弁16や潤滑油ポンプ27等の補機類の駆動電源を低くすることにより、発電機18の回転数が低下して電圧が低下しても、直流電圧変換器34により低電圧の直流電力に変換し制御装置36に供給できる。例えば停電時に必要な補機だけを低電圧仕様としてもい。
【0035】
また、図4の直流電圧変換器34に代え昇圧回路を用いることにより、発電機18の回転数が低下して電圧が低下しても、昇圧回路で昇圧して制御装置(AC200V)に供給するようにしてもよい。
【0036】
電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径及びバイパス弁20の容量(Cv値)を大きくしていくことで、停電時に使用できる排熱発電装置の補機類を増やすことができ、より安全に停電時対策を行うことができるようになる。しかし、使用する補機類を増やすために電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径及びバイパス弁20の容量(Cv値)を大きくすると、コストの利点が減少する。
【0037】
実際には、電動蒸気止め弁バイパス経路L4の配管口径やバイパス弁20の容量(Cv値)は任意に選定できるものではなく、市販されているものから選定することになるため、選定した配管口径や容量に余裕があれば、停電時に使用する補機を増やすことができる。
【0038】
作動媒体の残存予熱を利用して、蒸気発生器11等に熱交換素子を利用して発電を行い、その電力を使用して停電対策を行う方法も考えられるが、電動蒸気止め弁バイパス経路L4による方式がコスト的に有利であると考えられる。
【0039】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書、図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、排熱発電装置の具体的な構成は、上記実施形態に示すものには限定されず、本発明の範囲内であれば、適宜他の構成を採用することが可能である。また、上記実施形態例では蒸気発生器の加熱源として温水を用いる例を示したが、加熱源は温水に限定されるものではなく、他の排熱媒体でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】排熱発電装置の基本構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る排熱発電装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る排熱発電装置で補機類を交流電力で駆動する場合を説明する図である。
【図4】本発明に係る排熱発電装置で補機類を交流電力で駆動する場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
10 タービン発電機
11 蒸気発生器
12 気液分離器
13 タービン
14 凝縮器
15 媒体循環ポンプ
16 電動蒸気止め弁
17 蒸気加減弁
18 発電機
20 バイパス弁
21 タービンバイパス弁
22 熱回収器
23 予熱器
24 開閉弁
25 軸受
26 油/媒体分離器
27 潤滑油ポンプ
28 油冷却器
29 開閉弁
30 交流/直流変換器(コンバータ)
31 直流/交流変換器(インバータ)
32 制御装置(AC200V)
33 開閉器
34 直流電圧変換器(DC−DCコンバータ)
35 交流/直流変換器(コンバータ)
36 制御装置(DC24V)
L1 作動媒体蒸気主経路
L2 作動媒体液主経路
L3 作動媒体液戻り経路
L4 電動蒸気止め弁バイパス経路
L5 タービンバイパス作動媒体蒸気経路
L6 作動媒体蒸気経路
L7 作動媒体液経路
L10 潤滑油戻り経路
L11 潤滑油供給経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器、電動蒸気止め弁、タービン発電機、凝縮器、媒体循環ポンプを備え、熱源として排熱を前記蒸気発生器に導入し、前記凝縮器から前記媒体循環ポンプにより該蒸気発生器に導いた作動媒体を加熱して蒸発させ、発生した作動媒体蒸気を前記電動蒸気止め弁を通してタービン発電機のタービンに導きその発電機を駆動し、該タービンから排出される作動媒体蒸気を前記凝縮器に戻すように構成した上位電力系統に連携する排熱発電装置において、
前記電動蒸気止め弁をバイパスする電動蒸気止め弁バイパス経路を設けると共に、該電動蒸気止め弁バイパス経路にバイパス弁を設け、
前記上位電力系統に停電が発生した場合に、前記バイパス弁を通して作動媒体蒸気を前記タービン発電機のタービンに導きその発電機を駆動し、該発電機で発電された電力で前記電動蒸気止め弁の閉止動作を行い、該閉止動作完了後に前記バイパス弁を閉じることを特徴とする排熱発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排熱発電装置において、
前記バイパス弁は電源投入で開き、電源遮断で閉じる電磁弁であることを特徴とする排熱発電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排熱発電装置において、
前記電動蒸気止め弁バイパス経路の配管口径及びバイパス弁の容量は、前記電動蒸気止め弁を閉止する動力に前記タービン発電機に潤滑油を送る潤滑油ポンプを駆動する動力を加算した動力を賄える電力を前記タービン発電機が発電するのに必要な前記作動媒体蒸気流量を該タービン発電機のタービンに供給できる口径及び容量であることを特徴とする排熱発電装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の排熱発電装置において、
前記電動蒸気止め弁バイパス経路の配管口径及びバイパス弁の容量は、前記電動蒸気止め弁を閉止する動力に、前記バイパス弁の開動作を維持する動力、及び前記タービン発電機に潤滑油を送る潤滑油ポンプを駆動する動力を加算した動力を賄える電力を前記タービン発電機が発電するのに必要な前記作動媒体蒸気流量を該タービン発電機のタービンに供給できる口径及び容量であることを特徴とする排熱発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−332807(P2007−332807A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162801(P2006−162801)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】