説明

接合装置および接合方法

【課題】生産性を向上させることが可能な接合装置、および接合方法を提供する。
【解決手段】接合装置100は、ACF10を加熱するためのレーザ光をACF10に向けて照射するレーザ光照射部を備える。レーザ光照射部は、複数のレーザ光源32と、レーザ光源32から発せられるレーザ光が、ACF10に向かう向きに進行するように、レーザ光を伝達する光ファイバ33,41と、光ファイバから出たレーザ光を平行光に変換する複数のレンズ42を有する複数のフィクスチャ45とを含む。複数のレーザ光源が各々出射するレーザ光の強度は、互いに独立に、時間に対して一定または時間的に変化させるように制御される。接合対象物の表面に対して、複数のレーザ光源の各々から出射されたレーザ光を異なる位置に照射することによって、接合対象物の輪郭により定まる領域の全域がレーザ光により照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに代表される表示パネルと駆動回路基板との接合、表示パネルとそれに接合される電子部品との接合、表示パネルと、電子部品が接続されたテープ、パッケージ等のキャリア部材との接合に適した接合装置および、その接合装置を用いた接合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、その他各種モニタ用の画像表示装置として、液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0003】
この種の液晶表示装置では、一般に、照明用の面状光源であるバックライトが液晶表示パネルの背面に配設される。そのバックライトが所定の広がりを有する液晶面の全体を均一な明るさに照明することによって、液晶面に形成された画像が可視像化される。多くの場合、液晶表示装置は、液晶材料を2枚のガラス基板の間に封入して構成した液晶表示パネルと、液晶表示パネル上に実装された液晶材料を駆動するためのプリント回路基板と、液晶表示パネルの背面に液晶表示パネル保持フレームを介して配置されるバックライト・ユニットと、これらを覆う外枠フレームとを備えている。
【0004】
液晶表示装置の1つとして、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)液晶表示装置がある。TFT液晶表示装置の場合、液晶表示パネルを構成する2枚のガラス基板のうちの一方はアレイ基板を構成し、他方はカラーフィルタ基板を構成する。
【0005】
アレイ基板とは、液晶材料の駆動素子であるTFT、表示電極、信号線の他にプリント回路基板と電気的に接続するための引出電極などが、その表面に形成されたガラス基板である。TFTがガラス基板の表面に規則的に配列されているため、このガラス基板は一般的にアレイ基板と呼ばれている。
【0006】
一方、カラーフィルタ基板は、その表面にカラーフィルタ(代表的には赤フィルタ、緑フィルタおよび青フィルタ)が形成されたガラス基板である。なおカラーフィルタ基板の表面(ガラス基板の表面)には、カラーフィルタの他にコモン電極、ブラックマトリックス、配向膜なども形成される。
【0007】
多くの場合、液晶表示装置に設けられるプリント回路基板は、アレイ基板に形成された引出電極と、TAB(Tape Automated Bonding)テープキャリア(以下、単にTABとも称する)を介して接続される。あるいはTAB技術により、テープフィルムにLSIチップを接続したパッケージ(代表的にはTCP(Tape Carrier Package))を介してプリント回路基板を液晶表示パネルに実装することも行なわれている。
【0008】
また、TAB技術と同様のパッケージ技術として、COF(Chip on film/FPC)やSOF(System on Film)が挙げられる。
【0009】
TABの入力リード導体はプリント回路基板の対応する導体に接続される。一方、TABの出力リード導体はアレイ基板の対応する引出電極に接続される。TABのリード導体とプリント回路基板の対応する導体との接続の際には、たとえば、はんだ、あるいは接着剤としての樹脂の中に導電材料からなる粒子を分散させた接合材料(代表的にはACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)およびACP(Anisotropic Conductive Paste:異方性導電ペースト))が用いられている。また、導電性粒子を含まない異方性導電性材料も接合材料として用いられている。なお、導電性粒子を含まない樹脂接着剤(たとえばNCP(Non Conductive Particle/Paste))も接合材料として用いられている。
【0010】
TABの出力リード導体とアレイ基板の対応する引出電極との接続の際にも同様にACFあるいはACP、NCP等が用いられている。さらに、これらの接続のみならずTCP上のLSIチップとフィルムとの接続にもACF、あるいはACP、NCP等が用いられている。
【0011】
また、TABを用いた実装技術の他に、COG(Chip On Glass)と呼ばれる実装技術がある。このCOGは、アレイ基板上に、主としてシリコンからなるIC(Integrated Circuit)チップ(以下、シリコンチップあるいはベアチップとも称する)等の電子部品をACFあるいはACP、NCP等の材料により接合する技術である。具体的には、電子部品上に形成されたバンプ電極と、アレイ基板上の引出電極とが、ACF等の接合材料によって電気的に接続される。
【0012】
ACFには、熱可塑性樹脂を接着剤とする熱可塑型ACFと熱硬化型樹脂を接着剤とする熱硬化型ACFの2種類が存在する。熱可塑型ACFおよび熱硬化型ACFによる接合の手法は、加熱および加圧を伴う熱加圧を行なう点で一致している。
【0013】
上述した電極の接合は、従来では以下に説明する手順により実行される。まず、液晶パネル基板が搬入される。次に、実装部のクリーニングおよびACFの基板ガラスへの貼付けが行なわれる。続いて、ベアチップやフィルム等(以下、実装部品とも呼ぶ)の精密な位置決めを伴う低温での仮圧着が行なわれる。続いて高温でACFを硬化させるとともにパネル基板の電極と実装部品の電極とを接続する本圧着が行なわれる。なお、本圧着の後には、検査および搬出作業が行なわれる。
【0014】
各工程のうち、最も時間を要するのが本圧着である。従来、この工程では、高温に保持されたヒータツールバーを実装部品に押し当てることによりACFの加熱および加圧が行なわれている。従来、本圧着では、たとえば約10秒程度の加熱加圧時間が必要である。ただし、加熱加圧時間はACFの材料特性によっても左右される。
【0015】
ヒータツールによる加熱手法は高い信頼性が得られる。しかしながら、この加熱手法では、仮圧着工程と本圧着工程の2工程を要する上に、圧着自体が、ヒータツールバーから接合部品への熱伝導を経て、ACFを加熱して硬化させることで行なわれるので、接合に時間を要し、タクトを律速する要因ともなっている。
【0016】
この問題を回避するため、レーザ光をACFに照射してACFを加熱することにより、高速に接合するとともに、従来は必要であった仮圧着工程を無くし、本圧着のみで接合するタクト改善方法が提案されている。
【0017】
たとえば、特開2006−253665号公報(特許文献1)には、ACFをガラス基板と電極部材との間に圧力を加えて挟み込むステップと、そのACFにレーザ光を吸収させることによりACFを発熱させるステップとを備える接合方法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−253665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特開2006−253665号公報にはACFにレーザ光を照射するための方式としてワブリング方式および塗りつぶし方式が例示されている。上記文献によれば、ワブリング方式とは、照射スポットの中心が旋回しながら進むようにレーザ光の照射軌跡を描く方式であり、塗りつぶし方式とは、多数の平行線によって照射領域を埋め尽くす方式である。
【0019】
しかしながら、発明者らの鋭意研究の結果、複数の電極を有する電子部品を接合するにあたって、各電極にレーザ光を順次照射してACFを硬化させることは、機械的、電気的信頼性確保のためには望ましくないことがわかった。すなわち、この圧着工程では、ACFに含まれる導電性粒子を電子部品の電極とパネル基板の電極とで押し挟みこんだ状態でACFに含まれる熱反応性接着剤を硬化させる必要があるところ、複数の電極対に対して順にレーザ光を照射してACFを局所的に硬化させてしまうと、既に硬化したACFが他の電極対を押し挟む際の妨げになり、後からレーザ光を照射して接着した電極対については導電性粒子の押し挟みが不十分な状態でACFが硬化されてしまう場合がある。
【0020】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、異方性導電性材料を介した電極の接合において、生産性を向上させることが可能な接合装置、および接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は要約すれば、被接合物としてガラス基板上に配列された複数の第1の電極からなる引出電極と、引出電極の接合対象物に含まれ、かつ複数の第1の電極と配置を対応させて配列された複数の第2の電極とを、熱反応性樹脂による接着剤を介在させてそれぞれ電気的に接合する接合装置である。接合装置は、熱反応性樹脂を加熱するためのレーザ光を接着剤に向けて照射するレーザ光照射部を備える。レーザ光照射部は、複数のレーザ光源と、複数のレーザ光源が各々出射するレーザ光の強度を、互いに独立に、時間に対して一定または時間的に変化させるように制御するレーザ制御部とを含む。接合装置は、複数の第2の電極が形成された接合対象物の表面に対して、複数のレーザ光源の各々から出射されたレーザ光を異なる位置に照射することによって、接合対象物の輪郭により定まる領域の全域をレーザ光により照射する。
【0022】
好ましくは、レーザ光照射部は、複数のレーザ光源により接着剤に照射されるレーザ光のビーム形状を整形するためのビーム整形部をさらに含む。
【0023】
好ましくは、接合対象物は、複数の第2の電極として接合対象物の表面に形成された複数の電極を含む。接着剤においてレーザ光が照射される領域は、複数の電極が形成された接合対象物の表面と実質的に同じ大きさである。
【0024】
好ましくは、レーザ光照射部およびビーム整形部は、接着剤においてレーザ光が照射される領域である照射領域でのレーザ光のパワーが、レーザ光照射部から発せられたレーザ光のパワーの90%以上となるように、レーザ光を照射領域に集中させる。
【0025】
好ましくは、レーザ光照射部は、各複数のレーザ光源から発せられるレーザ光が、接着剤に向かう向きに進行するように、レーザ光を伝達する複数の光ファイバと、各々が、光ファイバから出たレーザ光を平行光に変換する複数のレンズを有する複数のレンズ保持部材とをさらに含む。各レンズ保持部材において、複数のレンズは、平行光が重なり合うように定められたピッチで一方向に配置される。
【0026】
好ましくは、複数のレンズ保持部材は、1つのレンズ保持部材に設けられた複数のレンズの各々から発せられる平行光と、1つのレンズ保持部材と異なる他のレンズ保持部材に設けられた複数のレンズの各々から発せられる平行光とが、ビーム整形部において集まるように配置される。
【0027】
好ましくは、接合装置は、透明な材質により形成され、かつガラス基板を支持する支持部材と、複数のレンズ保持部材と支持部材との間に配置され、ガラス基板上の複数の第1の電極に対する接合対象物の複数の第2の電極の位置合わせのために、支持部材およびガラス基板を介して複数の第1の電極および複数の第2の電極を撮影するカメラと、位置合わせが行なわれるときにカメラを所定の位置に移動させ、複数のレンズの各々から平行光が出射されるときには、カメラを平行光の光路上の位置から退避させるカメラ移動機構をさらに備える。
【0028】
好ましくは、接合装置は、接着剤におけるレーザ光の照射領域の複数の箇所の温度を検出する温度検出部と、温度検出部が検出した複数の箇所の温度に基づいて、照射領域の温度分布を生成する温度分布生成部とをさらに備える。レーザ制御部は、温度分布生成部が生成した温度分布に基づいて、複数のレーザ光源の各々を制御する。
【0029】
好ましくは、接合装置は、透明な材質により形成され、かつガラス基板を支持する支持部材と、複数のレーザ光源により接着剤に照射されるレーザ光のビーム形状を整形するためのビーム整形部とをさらに備える。ビーム整形部は、複数のレンズ保持部材と支持部材との間に配置され、ガラス基板の表面に沿った第1の方向にビーム形状を整形するためのスリットを含む。支持部材は、ガラス基板に対向する表面に交差し、かつ、対向する表面の垂直方向に対して傾いた斜面を有する。
【0030】
好ましくは、斜面の垂線と平行光とのなす角度は、斜面における平行光の全反射角よりも大きい。
【0031】
好ましくは、接合装置は、斜面に沿って設けられ、かつレーザ光を吸収可能な吸収体をさらに備える。
【0032】
好ましくは、斜面は、粗面である。
好ましくは、接合装置は、支持部材の周辺、かつ、斜面において反射するレーザ光の反射方向に設けられ、レーザ光を吸収可能な吸収体をさらに備える。
【0033】
好ましくは、支持部材の表面のうち、斜面において反射したレーザ光が支持部材の内部から出射される表面は、粗面である。
【0034】
好ましくは、接合装置は、複数のレンズ保持部材を第1の方向に垂直な第2の方向に沿って移動させる移動機構をさらに備える。
【0035】
好ましくは、接合装置は、接着剤に対して反対側から接合対象物に圧力を加えるための加圧装置をさらに備える。レーザ光照射部は、加圧装置により接合対象物に圧力が加えられた状態で、レーザ光を接着剤に向けて照射する。
【0036】
好ましくは、加圧装置は、接合対象物を押さえるための押さえ部材を含む。押さえ部材には少なくとも1つの貫通孔が形成される。接合装置は、少なくとも1つの貫通孔を介して接合対象物を押さえ部材に真空吸着させるための真空吸着部をさらに備える。
【0037】
好ましくは、加圧装置は、接合対象物を押さえるための押さえ部分を含む。押さえ部材の材質は、セラミック、石英、およびガラスの中から選択される材質である。
【0038】
好ましくは、レーザ光照射部は、対応するレーザ光源からのレーザ光を導光することでレーザ光の強度を均一化し、かつ、均一化されたレーザ光による面状照射が可能なように集合的に配置される複数の導光路と、複数の導光路から出たレーザ光のビーム形状を整形するためのマスクとをさらに含む。
【0039】
好ましくは、上記接着剤は、熱反応性樹脂に導電性粒子が分散された接着剤である。
本発明の他の局面に従うと、被接合物としてガラス基板上に配列された複数の第1の電極からなる引出電極と、引出電極の接合対象物に含まれ、かつ複数の第1の電極と配置を対応させて配列された複数の第2の電極とを、熱反応性樹脂による接着剤を介在させてそれぞれ電気的に接合する接合装置による接合方法である。接合方法は、接合対象物を加圧するステップと、接合対象物が加圧された状態において、熱反応性樹脂を加熱するためのレーザ光を接着剤に向けて照射するステップとを備える。レーザ光を照射するステップは、複数のレーザ光源が各々出射するレーザ光の強度を、互いに独立に、時間に対して一定または時間的に変化させるように制御するステップと、複数の第1の電極が形成された接合対象物の表面に対して、複数のレーザ光源の各々から出射されたレーザ光を異なる位置に照射することによって、接合対象物の輪郭により定まる領域の全域をレーザ光により照射するステップとを含む。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、ガラス基板上に形成された複数の電極と、接合対象物(代表的にはTCP、ベアチップ等)の複数の電極とを、熱反応性接着剤による接着剤を介して接合する場合において、接合対象物の輪郭により定まる領域に対して、強度分布を持たせたレーザ光の照射が可能となるので、高速かつ確実な接合を実現でき、生産性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
【0042】
図1は、本発明の実施の形態に従う接合装置の処理対象である液晶表示装置の概略ブロック図である。
【0043】
図1を参照して、液晶表示装置は、液晶表示パネル(図中「LCD」と示す)1と、TCP(Tape Carrier Package)2と、プリント回路基板3と、インターフェイス部4と、フレキシブル基板(図中、「FPC」と示す)6とを備える。
【0044】
TCP2は、液晶表示パネル1とプリント回路基板3との間に配置される。TCP2は、液晶表示パネルの構成素子を駆動するためのドライバIC5を含む。
【0045】
プリント回路基板3は、液晶表示パネル1上に実装された液晶材料を駆動するための回路が形成された基板である。インターフェイス部4は、液晶表示パネル1の周辺に配設された周辺回路に接続される配線を含む。フレキシブル基板6は、プリント回路基板3とインターフェイス部4とを電気的に接続するためのものである。
【0046】
液晶表示パネル1とプリント回路基板3とはTCP2によって接合される。より詳細に説明すると、液晶表示パネル1の電極(引出電極)とTCP2の電極とは、ACFによって、電気的に接合されるとともに、一体の形状となる。同様に、TCP2の電極とプリント回路基板3の電極とは、ACFによって、電気的に接合され、かつ一体の形状となる。
【0047】
なお、COG(Chip On Glass)方式も液晶表示パネルの製造に用いられる。図1には、TCP2の実装だけでなく、ベアチップの状態のドライバIC5の実装も示す(液晶表示パネル1の左側)。ベアチップ(ドライバIC5)の表面には図示しないバンプ電極が設けられている。このバンプ電極はACFによって液晶表示パネル1の電極(引出電極)と電気的に接合される。
【0048】
なお、図1は、説明の便宜の点からTCP2およびベアチップがともに液晶表示パネルに実装された状態を示したものである。したがって、たとえばベアチップが液晶表示パネル1に実装されておらず、TCPのみが液晶表示パネル1に実装されていてもよい。ただし本実施の形態に係る接合装置(図4参照)は、TCP2の実装およびベアチップの実装の両方に用いることができる。
【0049】
図2は、図1に示すTCP2の一構成例を説明する図である。
図2を参照して、TCP2は、キャリアテープ2aと、複数のリード導体2bと、ドライバIC5とを含む。キャリアテープ2aの表面には複数のリード導体2bが形成されるとともに、ドライバIC5が搭載される。複数のリード導体2bの各々はドライバIC5の表面に形成されたバンプ電極(図示せず)に電気的に接続される。
【0050】
図3は、ACFを説明する図である。
図3(a)は、ACFの構造の一例を説明する図である。図3(a)を参照して、ACF10は、無数のミクロパーティクル(導電性粒子)11がエポキシ系またはアクリル系の接着剤であるバインダ中に含まれた構成を有する。バインダは熱反応性樹脂である。なお、バインダは熱硬化型樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂でもよい。
【0051】
図3(b)は、ACF10に熱および圧力が加わるときのACF10の状態を説明する図である。図3(b)を参照して、ACF10は電極15,16に挟まれる。ACF10に熱および圧力が加わると、ACF10の全体のうち電極15,16に接触した部分に圧力がかかる。なお図3(b)は、ACF10の全体のうち電極15,16に接触した部分のみを示している。
【0052】
ミクロパーティクル11は、樹脂コア13と、樹脂コア13の表面に形成されたニッケル(Ni)メッキ層12と、ニッケルメッキ層12の外側に形成された金メッキ層14とを含む。ACF10に熱および圧力が加わると、ACF10の内部に分散しているミクロパーティクル11同士が接触することにより、メッキ層同士が接触する。さらに、樹脂コア13が弾性体であるため、樹脂コア13に反発力が生じる。この反発力によって、メッキ層が電極16と電極15とに物理的に接触する。これにより電極15と電極16との間に導電経路が形成される。
【0053】
図3(c)は、ACFの構造の他の例として2層構造のACFを示した図である。図3(c)に示されるように、2層構造のACFでは、バインダとミクロパーティクルとは、別々の領域すなわちバインダ領域10aおよびミクロパーティクル領域11aとにそれぞれ分離して形成されている。当該構成においても、上述した構成と同様に、加熱および加圧によりACFを挟む電極の間に導電経路を形成することが可能となる。なお、2層構造のACFを用いることにより、加熱および加圧による2つの電極の相対的な位置のずれを抑制することが可能となる。
【0054】
[接合装置の構成]
図4は、本発明の実施の形態に従う接合装置100の構成図である。なお、以下の説明では、主として接合装置100がACF10を介してドライバIC5(ベアチップ)を液晶表示パネル1に接合する場合を説明する。また、以下の説明では互いに垂直なX方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」と呼ぶ場合もある。
【0055】
図4を参照して、接合装置100は、シリンダ20と、チップトレイ21と、シリンダ移動機構22と、加圧ヘッド25とを備える。
【0056】
ドライバIC5およびACF10はシリンダ20(加圧ヘッド25)と液晶表示パネル1との間に挿入される。
【0057】
加圧ヘッド25は、シリンダ20の先端部に取り付けられる。シリンダ20が下がると加圧ヘッド25がドライバIC5(ベアチップ)に接する。シリンダ20は、ドライバIC5と液晶表示パネル1との接合の際に加圧ヘッド25の高さを調整することにより、ドライバIC5(およびACF10)に加えられる圧力を制御するものである。
【0058】
シリンダ移動機構22は、シリンダ20を左右方向(X方向)に移動させるためのものである。シリンダ移動機構22の構成は特に限定されるものではないが、たとえばシリンダ移動機構22は、ボールねじ、およびリニアモータを含む。
【0059】
チップトレイ21には、液晶表示パネル1との接合のために用いられるドライバIC5(ドライバIC5b)が予め並べられている。たとえばロボットアーム(図示せず、以下同じ)によりチップトレイ21からドライバIC5bが取り上げられる。シリンダ20は、シリンダ移動機構22によりチップトレイ21の位置まで移動し、ロボットアームからドライバIC5bを受ける。後述するようにシリンダ20の内部には、TCP2を真空吸着するための真空吸着部が設けられ、加圧ヘッド25には真空吸着孔が形成される。これによりシリンダ20はドライバIC5bを真空チャックする。そして、シリンダ20は、液晶表示パネル1の位置に戻る。
【0060】
なお、上述したロボットアームがドライバIC5bを液晶表示パネル1の位置まで直接運んでもよい。このようにドライバIC5(ベアチップ)をチップトレイ21から液晶表示パネル1まで運ぶための方法および手段は特に限定されない。
【0061】
接合装置100は、さらに、ドライバIC5およびACF10を加熱するためのレーザ光を発するレーザ装置31を備える。レーザ装置31はその内部に複数のレーザ光源32を含む。レーザ光源32から発せられるレーザ光のパワー、およびレーザ光源32の個数は、たとえばACF10の加熱および硬化に求められる条件に基づいて適切に定められる。
【0062】
接合装置100は、さらに、複数の光ファイバ33と、レーザ冷却装置34と、レーザ制御部35と、電源装置36と、ファイバ中継器40と、複数の光ファイバ41とを備える。複数の光ファイバ33は、複数のレーザ光源32に対応してそれぞれ設けられる。各光ファイバ33は対応するレーザ光源32から発せられたレーザ光を伝達する。
【0063】
レーザ冷却装置34は、レーザ装置31を冷却することによってレーザ装置31の温度を一定に保つ機能を実現する。これによりレーザ装置31から出力されるレーザ光のパワーを安定させることが可能になる。なお、冷却方式は特に限定されず、たとえばファンによる空冷でもよいし、水冷でもよい。
【0064】
レーザ制御部35は、レーザ冷却装置34を制御するとともに、複数のレーザ光源32の出力を制御する。たとえばレーザ制御部35は、レーザ光源32の温度が予め定められた制限温度以下であれば、レーザ光源32に対してレーザ光の出力を継続させ、レーザ光源32の温度がその制限温度を超えた場合には、レーザ光源32に対してレーザ光の出力を停止させる。
【0065】
本実施の形態では、レーザ光源32は半導体レーザである。電源装置36は、半導体レーザに電流を供給することにより半導体レーザからレーザ光を出力させる。また、電源装置36は、接合装置100の他の装置に対しても電源電圧を供給する。
【0066】
ファイバ中継器40は、複数の光ファイバ33からの光を複数の光ファイバ41に伝達するために設けられる。なお、光ファイバ33の本数と光ファイバ41の本数とは同じでもよいし異なっていてもよい。たとえば2本の光ファイバ33の各々からの光を光結合器により1本の光ファイバ41に結合することによって、その光ファイバ41を伝播する光のパワーを高めることができる。
【0067】
また、レーザ光を伝送する光伝送路(すなわち光ファイバ)の途中にファイバ中継器40を設けることにより、たとえば複数の光ファイバ33のいずれかを交換する必要が生じた場合にも、交換作業を容易にすることができる。すなわちファイバ中継器40によって、接合装置100の保守作業を容易にすることが可能になる。
【0068】
接合装置100は、さらに、レーザ光保護カバー38と、複数のレンズ42と、複数のレンズホルダ43と、フィクスチャ45とを備える。
【0069】
レーザ光保護カバー38は、接合装置100の周囲にレーザ光が漏れるのを防ぐために設けられる。
【0070】
複数のレンズ42は、複数の光ファイバ41に対応してそれぞれ設けられる。複数のレンズ42の各々はコリメートレンズである。レンズ42によって、そのレンズに対応する光ファイバ41の一端から出力されたレーザ光は平行光となる。
【0071】
複数のレンズホルダ43は複数のレンズ42にそれぞれ対応して設けられる。各レンズホルダ43は、対応するレンズ42および対応する光ファイバ41の一端を固定する。これにより、レンズ42と、光ファイバ41とを予め定められた配置に従って設置することが可能になる。レンズ42と光ファイバ41とは平行光が出射されるように配置される。
【0072】
フィクスチャ45は、所定単位数(たとえば8つ)のレンズホルダ43を一列に並べて固定するためのものである。したがって各フィクスチャ45に設けられた複数のレンズ42(各レンズ42はレンズホルダ43により固定される)から、一列に並んだ平行光の列が出射される。
【0073】
接合装置100は、さらに、複数のフィクスチャ45を支持するための支持部材51と、支持部材51を前後方向(Y方向)に移動させるためのスライドレール52と、スライドレール52が敷設され、かつ、移動可能な支持部材51の外側に配置された固定部53と、固定部53の上面に設置されたバックアップ基板55と、X方向に移動可能に固定部53に取り付けられたX方向可動遮光部材56と、バックアップ基板55に接した状態で設置されたY方向遮光部材57とを備える。なお、バックアップ基板55は、固定部53の上面に動かないように固定されている。
【0074】
接合装置100は、さらに、カメラ60と、カメラ60を動かすためのアーム62を備える。カメラ60は、液晶表示パネル1(パネル基板)の引出電極と、対応するドライバICのバンプ電極とが対向した状態において、バックアップ基板55および液晶表示パネル1を介して、引出電極およびバンプ電極を撮影する。カメラ60によって撮影された画像は引出電極に対するバンプ電極の位置合わせを行なうために用いられる。
【0075】
ACF10の加熱のためにレンズ42からレーザ光が出射するときには、アーム62によって、カメラ60はレーザ光の光路上の位置から退避させられる。したがってカメラ60によってレーザ光が遮られるのを防ぐことができる。なおアーム62の移動方向は特定されず、たとえばX方向に沿って動いてもよいし、XY平面内で回転してもよい。
【0076】
接合装置100は、さらに、制御装置70と、モータドライバ75と、表示装置80とを備える。制御装置70は、接合装置100全体を制御する。モータドライバ75は、制御装置70の指令に応じて、シリンダ移動機構22に設けられたモータ(上述の例ではリニアモータ)および、アーム62を動かすためのモータ(図示せず)を駆動する。
【0077】
表示装置80は、たとえばカメラ60が写した画像、ユーザの入力する指示、接合装置100の現在の稼動状況等の各種情報を表示する。なお、表示装置80は、タッチパネルディスプレイのように入力装置を兼ねてもよい。あるいは、マウスやキーボード等の入力装置が接合装置100に接続され、ユーザがその入力装置を操作した結果が表示装置80に表示されてもよい。
【0078】
図5は、本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第1の図である。
【0079】
図6は、本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第2の図である。
【0080】
図5および図6を参照して、レーザ光照射部は、複数のレーザ光源32を備える。本実施の形態では、エネルギー効率、および実装領域(すなわちACF10におけるレーザ光の照射領域)の大きさを考慮して半導体レーザがレーザ光源32に用いられる。
【0081】
本実施の形態では、レーザ光の波長は、600nm〜1100nmの範囲内から選択される。後に詳細に説明するが、この範囲の波長の光は、バックアップ基板55と液晶表示パネル1とACF10の主材料である樹脂(たとえばエポキシ樹脂)とを透過しやすく、かつ、TCP2に搭載される半導体チップ(あるいはベアチップ)の主材料である単結晶シリコンやTCP2のキャリアテープの主材料であるポリイミドにより吸収されやすく、かつ、配線パターンの主材料であるアルミニウムにより吸収されにくい。これによりACF10のみならずシリコンチップ(またはキャリアテープ)もレーザ光によって加熱される。したがって、ACF10の自身の発熱だけでなくシリコンチップ(またはキャリアテープによる加熱によってACF10を加熱できるので、レーザ光をACFの加熱に有効的に活用できる。なお、波長スペクトルの幅は狭いほど好ましい。
【0082】
レーザ光源32からの光は光ファイバ33を伝播する。光ファイバ33と光ファイバ41とはファイバ中継器40により光学的に結合される。
【0083】
ファイバ中継器40は、光ファイバ33と光ファイバ41とを接続するための入力コネクタ47および出力コネクタ48を含む。光ファイバ33の端部は入力コネクタ47に挿入され、光ファイバ41の端部は出力コネクタ48に挿入される。入力コネクタ47と出力コネクタ48とが接続されることにより、光ファイバ33と光ファイバ41とが光学的に結合される。
【0084】
光ファイバ33、41は、レーザ光源から出たレーザ光がACF10に向かう向きに進行するように、そのレーザ光を導くためのものである。レーザ光源32から出たレーザ光は光ファイバ33,41を伝播し、レンズホルダ43に固定されたレンズ42により平行な光線に調整される。なお、1つのフィクスチャ45に設けられた複数のレンズ42の各々によりコリメートされたレーザ光は、互いに平行、かつ重なりあう光ビームとなる。
【0085】
フィクスチャ45はレンズホルダ43の傾きを調整できるよう構成される。たとえば図5に示すように、フィクスチャ45は、支持部材51とフィクスチャ45との間に設けられた棒状の回転軸54を中心にフィクスチャ45を回転させることにより、その傾きを調整できる。各フィクスチャ45の傾きは、各フィクスチャ45に設けられたレンズからのレーザビームLBがACF10において集まるように設定される。X方向可動遮光部材56により、複数のレンズ42から出射されたレーザビームLBの一部は遮られる。
【0086】
なお回転軸54等はフィクスチャ45の傾きの調整を実現するための構成の一例として図5に示したものである。したがってフィクスチャ45の傾きを調整するための構成は図5に示したものに限定されない。
【0087】
温度検出部64はACF10の温度を測定するためのものである。ここで、物体は加熱の有無に関わらず、それ自身が温度に応じた波長を有する電磁波を輻射している。したがって、その物体から輻射される電磁波を検出することによって物体の温度を非接触で計測できる。本実施の形態では温度検出部64として、物体から輻射される電磁波の強度または波長を検出できるものが使用できる。具体例を挙げると、たとえば温度検出部64には、サーモパイル、熱線カメラ、フォトダイオードなどを用いることができる。
【0088】
バックアップ基板55は、液晶表示パネル1を支持するためのものである。従来のヒータツール方式(加熱されたヘッドによりACFを加圧する方式)では、バックアップ基板は圧着する際に変形がほとんど生じないような剛性を有する材料で構成されていればよい。したがって従来のバックアップ基板は不透明な物体でもよい。しかしながら本実施の形態では、カメラ60(図4参照)がバックアップ基板55を通して液晶表示パネルの電極およびドライバIC5の電極を撮影するとともに、その撮影された画像に基づいて、ドライバIC5の位置決めが行なわれる。さらに、バックアップ基板55は、レーザ光(レーザビームLB)を透過させなければならない。また、ACF10を介したドライバIC5と液晶表示パネル1の接合の際には、加圧ヘッド25(図4参照)によってドライバIC5に圧力が加わるので、バックアップ基板55は剛性を有さなければならない。したがってバックアップ基板55は剛性が高く透明な材質で形成される。このような要件を満たすためのバックアップ基板55の材料としては、石英ガラスが好ましい。
【0089】
なお、バックアップ基板55の表面55c(レーザビームLBの入射面)には、減反射コーティングが行なわれていることが好ましい。これにより、バックアップ基板55を透過するレーザ光の光量を増やすことができるので、ACF10に照射される光のパワーを高めることができる。したがって、ACF10の温度を短時間で目的の温度まで上昇させることが可能になる。
【0090】
ただし、減反射コーティングされたバックアップ基板55を透過する光の波長は、減反射コーティングされていないバックアップ基板55を透過する光の波長に対して赤方シフトする可能性がある。したがってバックアップ基板55の表面55cに減反射コーティングが行なわれている場合、カメラ60としては赤外線側での解像度が高いものを用いることが好ましい。これによりバックアップ基板55の表面に減反射コーティングがなされていても、液晶表示パネル1の電極およびドライバIC5の電極をカメラで撮影できるので互いの電極の位置合わせを精度良く行なうことが可能になる。
【0091】
電源装置36は、レーザ制御部35の指令に応じてレーザ光源32(半導体レーザ)に印加する電流値を制御する。図示しないが、電源装置36はたとえばトランジスタに代表される、制御信号に応じた電流を流す電流制御素子が設けられている。
【0092】
温度検出部64は、検出したACF10の温度を示す信号を信号線65、信号コネクタ66,67を介して温度算出部68に出力する。温度算出部68は、温度検出部64からの信号に基づいて、ACF10の温度を算出する。そして温度算出部68は、その算出結果、すなわちACF10の温度の情報を温度制御部69に出力する。
【0093】
温度制御部69は、温度算出部68が送信したACF10の温度の情報に基づいて、レーザ制御部35に指示を送る。この指示は、レーザビームのパワーを上げるための指示、レーザビームのパワーを下げるための指示を含むものである。なお温度制御部69は、接合装置100の全体の動作を制御する制御装置70によって制御される。
【0094】
図7は、フィクスチャ45および温度検出部64の配置を説明する、X方向から見た図である。
【0095】
図7を参照して、複数のフィクスチャ45は、各フィクスチャ45に設けられた複数のコリメートレンズがX方向に一列に並べられており(図4等に示すレンズ42、図7には示さないが紙面に垂直方向に並んでいる)、各々出射されるレーザビームの列が光がバックアップ基板55上、好ましくは、バックアップ基板55上に置かれた液晶表示パネル1の上面で集まるように配置される。これによって、各フィクスチャ45に設けられた複数のレンズから発せられる平行光列(レーザビーム列)をACF10に集中させることができる。よって、高パワーの光をACF10に吸収させることにより、高速にACF10を加熱することができる。
【0096】
具体的には、複数のフィクスチャ45は、バックアップ基板55における平行光の集光位置(すなわちバックアップ基板55の上面での所定の位置)を中心としてX方向に垂直な断面において扇状に配置される。
【0097】
なお、各フィクスチャ45に配置された複数のレンズ(たとえば8個のレンズ)は、X方向(紙面垂直方向)に等間隔で配置される。これによりバックアップ基板55ではその複数のレンズからそれぞれ出射した複数のレーザビームが均一のピッチで整列する。
【0098】
図8は、バックアップ基板55上でのレーザ光の照射領域を説明する図である。図8を参照して、コリメートされたレーザビームはバックアップ基板55の上において、互いに重なり合う円形のスポット(破線で示す)を形成する。複数のスポットは均一のピッチで並んでいる。スポットが重なりあうことによりACFに照射される光のパワーを高くすることができる。なお、スポットが重ねられた領域の両端の部分は、中央部分に比べて光のパワーが小さい(なぜなら重なりあうスポットの数が少ない)。この部分はACFの加熱には用いられないため、X方向可動遮光部材56によって予めカットされる。
【0099】
レーザ光の照射領域ARのX方向の長さは、X方向可動遮光部材56をX方向に移動させることにより調整される。
【0100】
また、図8を参照して、Y方向遮光部材57(厳密には、後述する図9、図10等に示されるバックアップ基板55の傾斜面55a)によって照射領域ARのY方向の長さが調整される。後述するように、Y方向遮光部材57自体は移動しないものの、レンズが設けられたフィクスチャを一体にしてY方向に移動させることによって、相対的にY方向遮光部材57が移動する。したがって、照射領域ARのY方向の長さを変えることができる。
【0101】
X方向可動遮光部材56およびY方向遮光部材57によって定められる照射領域ARの最大サイズが、パネル基板に実装可能なドライバICの最大サイズとなる。
【0102】
なお、ドライバICの形状は長方形であることが多い。その長方形の長軸方向がX方向に対応し、短軸方向がY方向に対応する。
【0103】
Y方向遮光部材57は、XY平面に対して傾斜した傾斜面57aを有する。すなわちY方向遮光部材57におけるACF10側の平面57bと傾斜面57aとによって形成される稜部はナイフエッジ状である。
【0104】
なお、バックアップ基板55も、この傾斜面57aに接する(XY平面に対する傾斜角度が傾斜面57aの傾斜角度と同一である)傾斜面を有する。なお、この傾斜角度は、図中において、いずれのフィクスチャからのレーザビームの一部もしくは全部がその傾斜面にあたった場合に、全反射するように、もしくは、傾斜面を透過した後にその上に配置されるACF等に入射しないような屈折を考慮した角度に定められる。さらにこの傾斜面の傾斜角度は、扇状に配置されたフィクスチャのうち最もY方向負側に位置するフィクスチャ(符号45aにて示す)から出射されるレーザビームがバックアップ基板55へ向かう方向と比べて、よりY方向に沿うような角度に定められる。これにより、バックアップ基板55上の傾斜面57によって遮られる部分を除く位置へ向けて出射されるレーザビームについては、いずれのフィクスチャからのレーザビームも同様に傾斜面57aにけられることなくバックアップ基板55上へ到達可能となり、Y方向の位置が負によったフィクスチャがより多くレーザビームを、けられるような事態を回避できる。
【0105】
なお、傾斜面は粗面としてもよい。この場合は、レーザビームの一部もしくは全部がその傾斜面にあたった場合、拡散されて弱まるため、前述のように、全反射角度、もしくは、傾斜面を透過した後にその上に配置されるACF等に入射しないような屈折角度を考慮する必要性はなくなる。
【0106】
傾斜面57aにより切り欠かれた位置に勘合するように、Y方向遮光部材として機能するためのセラミック部材による遮光用ナイフエッジがバックアップ基板55と上面を等しくして配置される。
【0107】
温度検出部64はACF10の斜め下方に設けられる。また、ACF10におけるレーザ光の照射領域の複数の箇所の温度を検出するため、温度検出部64は複数設けられる。なお図示しないが、温度検出部64には上述したサーモパイル(熱線カメラ、あるいはフォトダイオードでもよい)が設けられる。
【0108】
温度検出部64の前面、すなわちACF10から輻射される電磁波が入射する面にはフィルタ64fが設けられる。このフィルタ64fは散乱した(あるいは反射した)レーザ光を透過させず、かつACF10から輻射される電磁波のみを透過させるために設けられる。たとえばフィルタ64fは、1.2μm〜1.5μmの波長帯の電磁波を透過するよう構成されたフィルタである。
【0109】
フィルタ64fの前方には筒64bが取り付けられる。筒64bによって、ACF10から輻射される電磁波の指向性を制御できる。
【0110】
なお、散乱した(あるいは反射した)レーザ光等の外乱の影響がない場合、温度検出部64をバックアップ基板55の下部に設けることも可能である。ただしこの場合にはバックアップ基板55の材質として、通常の石英に比較して水酸基が少ない無水石英が特に好ましい。ACF10の加熱時にACF10の温度は、たとえば250℃程度に達する。この場合、ACF10からは、波長が2μmより長い電磁波が輻射される。バックアップ基板55の材質を無水石英とすることによって、水酸基の吸収帯に相当する2.5μm付近の波長帯での光の吸収を抑えることができるので、精度のよい温度検出が可能になる。
【0111】
図9は、本実施の形態に従う接合装置100に含まれるビーム整形部の構成を説明するための図である。
【0112】
図9(a)は、X方向可動遮光部材を説明する図である。
図9(b)は、Y方向遮光部材を説明する図である。
【0113】
図9(a),図9(b)を参照して、レーザビームLBのX方向の整形はX方向可動遮光部材56によって実現される。つまりACF10におけるレーザ光(レーザビームLB)の照射領域のX方向の長さは、X方向可動遮光部材56によって調整される。
【0114】
一方、レーザビームLBのY方向の整形は、Y方向遮光部材57として、バックアップ基板55側の傾斜面(Y方向遮光部材57の傾斜面57aに接する傾斜面55a)と傾斜面57aにより切り欠かれた位置に勘合するセラミック部材による遮光用ナイフエッジとのいずれか、あるいは両方によって実現される。すなわちバックアップ基板55は、液晶表示パネル1の指示部材として機能するのみならず、レーザビームLBのY方向の整形を行なうためのシャッターとしても機能する。なお、図7、図9を参照すれば分かるように、傾斜面55aは、バックアップ基板55においてZ方向(液晶表示パネル1に対向する上面と反対側に位置する下面から、その上面に向かう向き)に対し、Y方向に傾いた斜面である。
【0115】
図7に示すように、フィクスチャ45はX方向の軸を中心にZ軸方向に傾けられる。仮にバックアップ基板55の下方でレーザビームのY方向の整形が行なわれた場合、ACF10におけるレーザビームの照射領域のY方向の精度が確保できない可能性が高くなる。このため、ACF10に極めて近い位置、すなわち、バックアップ基板55の上面においてレーザビームのY方向の整形を行なうことにより、照射領域のY方向の精度を確保できる。
【0116】
傾斜面55aは、たとえばサンドブラストあるいはエッチング等の加工によって粗面(砂面、あるいは梨地とも言い換えることができる)となっている。傾斜面55aに達したレーザ光が、たとえば傾斜面55aからバックアップ基板55の外側に出射される場合、そのレーザ光は傾斜面55aにおいて散乱(拡散)する。さらにバックアップ基板55の外側に散乱した光は、Y方向遮光部材57により多重散乱したり、Y方向遮光部材57に吸収されたりする。液晶表示パネル1には偏光板7等の熱に弱い部品が設けられている。Y方向遮光部材57によって、このような熱に弱い部品に高パワーのレーザ光が照射されるのを回避できる。
【0117】
なお、Y方向遮光部材57のエッジの位置Pe(すなわちナイフエッジの先端の位置)は、シリコンチップ(ドライバIC5)のエッジと同じ位置か、またはシリコンチップ側に入り込んだ位置である。また、バックアップ基板55の上面はY方向遮光部材57の上面(平面57b)と同じ高さ、あるいはY方向遮光部材57の上面よりも高い位置である。
【0118】
X方向可動遮光部材56およびY方向遮光部材57はたとえばセラミックにより形成される。
【0119】
図10は、バックアップ基板55によるレーザビームのY方向の整形を説明するための模式図である。なお図10では、説明の便宜上、傾斜面55aを平面として表す。
【0120】
図10を参照して、光ファイバ41を伝達したレーザ光はレンズホルダ43に設けられたレンズ42から出射され、空気とバックアップ基板55との界面で屈折する。そのレーザ光は、バックアップ基板55の内部を進み、傾斜面55aに達する。傾斜面55aの垂線に対するレーザ光の入射角θは全反射角よりも大きいため、レーザ光は傾斜面55aで全反射する。
【0121】
図11は、レーザ光源32として用いられる半導体レーザを説明するための図である。図11を参照して、半導体レーザには、マルチエミッタ型の半導体レーザ、シングルエミッタ型の半導体レーザの2種類がある。図11(a)は、マルチエミッタ型の半導体レーザを示す図である。図11(a)を参照して、半導体レーザ32aはレーザ光を出力するための複数のエミッタEMを有する半導体チップである。したがって1つの半導体チップから出力される光のパワーを大きくすることができる。
【0122】
図11(b)は、マルチエミッタ型の半導体レーザに生じると考えられる問題点を説明する図である。図11(b)を参照して、複数のエミッタEMの1つ(あるいはその周辺の領域)にダメージ(たとえば結晶欠陥が考えられる)などが生じた場合に、そのダメージが他のエミッタに伝達することが考えられる。
【0123】
図11(c)は、シングルエミッタ型の半導体レーザを示す図である。図11(c)を参照して、半導体レーザ32bは、1つのエミッタEMを有する。たとえば多くの半導体レーザチップでは、結晶のへき開面からレーザ光を出力するよう構成されている。このような半導体レーザチップでは、対向する2面が、へき開面である。したがって、その2面の両方からレーザ光が出力される。ただし、出力光として取り出されるのは、その2面の一方から出た光である。したがって、本実施の形態では、結晶のへき開面からレーザ光を出力する半導体レーザをシングルエミッタ型の半導体レーザに含むものとする。
【0124】
シングルエミッタ型の半導体レーザの場合、個々の半導体レーザから出力される光のパワーは、マルチエミッタ型の半導体レーザから出力される光のパワーよりも小さい。したがって、シングルエミッタ型の半導体レーザの場合、マルチエミッタ型の半導体レーザに比較して、ACFを加熱するに必要なパワーを得るために必要な個数は多くなると考えられる。ただし、シングルエミッタ型の半導体レーザの場合、複数のレーザ光源32のいずれか1つが故障しても対象のレーザ光源のみ交換すればよいため保守性に優れる。また、複数のレーザ光源32の間で出力光のパワーがばらついたとしても、複数のレーザ光源32を個別に制御する(レーザ光源32ごとに駆動電流を制御する)ことが可能である。つまり、エミッタ単位で光出力を制御できる。これにより、均一かつ接合に十分なパワーのビームを生成することが可能になる。したがって本実施の形態ではレーザ光源としてシングルエミッタ型半導体レーザを用いる。
【0125】
図12は、図4に示す加圧ヘッド25を説明するための図である。
図12(a)は、加圧ヘッド25およびその周辺の構成を示す模式図である。図12(a)を参照して、加圧ヘッド25は、シリンダ20の先端に設けられた押さえ部材25a,25bを含む。押さえ部材25a,25bは、ドライバIC5の主材料であるシリコンよりも熱伝導度の低い材料が用いられる。シリコンよりも熱伝導度の低い材料を押さえ部材25a,25bに用いることによって、ドライバIC5の熱がシリンダ20に逃げるのを抑制できる。これによりドライバIC5の温度低下を防ぐことができるので、ドライバIC5(シリコンチップ)の下に設けられたACF10の温度低下も防ぐことができる。
【0126】
また、ドライバIC5に圧力を加えるため、押さえ部材25a,25bは適度な硬度を有する材料により形成されることも必要である。以上の点から、押さえ部材25a,25bの材料は、セラミック、石英、ガラスを含む材料の中から選ばれる。
【0127】
複数の吸着孔23は、押さえ部材25a,25bを貫通するように形成される。真空吸着部77は、複数の吸着孔23を介して対象物であるドライバIC5を真空吸着する。したがってドライバIC5の表面(バンプ電極が形成された面と反対側の面)は押さえ部材25aに密着する。ドライバIC5を押さえ部材25aに密着させることによって、ドライバIC5に加えられる圧力を、押さえ部材25aに接触するドライバIC5の接触面内で均一にすることができる。
【0128】
ドライバIC5の表面に圧力を均等に加えることによって、液晶表示パネル側の電極の位置に対してドライバIC側の電極の位置がずれるという問題を防ぐことが可能になる。これにより高精度に接合を行なうことができる。
【0129】
なお、真空吸着部77は図示しない制御装置70によって制御される。また、真空吸着部77は、真空吸着の終了時には、たとえば吸着孔23に圧縮空気を供給することにより、吸着孔23の圧力を大気圧に戻す。
【0130】
複数の吸着孔23の各々にはバルブ24が設けられる。真空吸着部77は、ドライバICのサイズ(チップサイズ)に対応して使用する吸着孔23を決定する。使用される吸着孔23に設けられたバルブ24は開状態となり、使用されない吸着孔23に設けられたバルブ24は閉状態となる。真空吸着部77は、ドライバICのサイズに対応して、開状態のバルブと、閉状態のバルブとを決定する。
【0131】
図12(b)に示されるように、押さえ部材25aの底面はドライバICの表面よりも大きい。したがってドライバICのサイズに応じて、開状態のバルブと、閉状態のバルブとを決定できる。
【0132】
なお押さえ部材25aの底面とドライバICの表面とが同じ大きさであってもよい。図12(c)は、押さえ部材25aおよびドライバIC5のX方向の長さを説明するための図であり、図12(d)は、押さえ部材25aおよびドライバIC5のY方向の長さを説明するための図である。図12(c)および図12(d)に示されるように、押さえ部材25aの底面とドライバICの表面とは同じ大きさである。ただし、押さえ部材25aの底面がドライバICの表面とずれた場合に、ドライバIC5の表面に圧力が均等に加わらないことが考えられる。したがって、図12(b)に示すように、押さえ部材25aの底面がドライバICの表面より大きいほうが好ましい。
【0133】
図13は、本実施の形態に従う接合装置100の制御系を説明するためのブロック図である。
【0134】
図13を参照して、レーザ制御部35、温度算出部68および温度制御部69は制御装置70の直接的または間接的な指示に応じて動作する。
【0135】
レーザ制御部35は、温度検出回路35aと、制御回路35bと、メモリ35cと、インターフェイス(図13ではI/Fと示す)回路35dとを含む。温度検出回路35aは、複数のレーザ光源32の各々の温度または全体の温度(たとえば雰囲気温度)を検出して、その検出した温度を制御回路35bに出力する。メモリ35cは、レーザ光源32を動作させるための情報を記憶する。この情報は、たとえば、複数のレーザ光源32の各々の動作温度、または全体の温度の上限値の情報、レーザ光源の動作電流値と光出力との関係を示す情報などを含む。
【0136】
制御回路35bは、メモリ35cから動作温度の上限値の情報を読み出すとともに、温度検出回路35aの検出結果(現在の動作温度)を受ける。制御回路35bは、現在の動作温度が上限値を超える場合には、電源装置36を制御することにより、たとえば複数のレーザ光源32の全部または一部による光出力を停止するなど、各レーザ光源を駆動する条件を独立に制御する。なお、レーザ光源32の動作温度が上限値を超えないようにレーザ光源32はレーザ冷却装置34により冷却される。
【0137】
また、制御回路35bは、インターフェイス回路35dから、ACF10のある部分または全体に照射されるレーザ光のパワーを上げるための指示(またはレーザ光のパワーを下げるための指示)を受ける。制御回路35bは、その指示に応じて、電源装置36を制御することにより、複数のレーザ光源32の一部または全部に供給される電流を増やしたり減らしたりするなど、各レーザ光源を駆動する条件を独立に制御する。この制御は、各レーザ光源32が出射するレーザ光の強度を、時間に対して一定にする制御、あるいは時間的に変化させる制御を含む。
【0138】
この構成によれば、おのおの独立した駆動条件で制御可能なレーザ光源からの光を、ファイバ、レンズ等の光学系を介して、図8に示すような、バックアップ基板55上の一定の領域に対して、異なる位置に照射される複数のレーザビームの集まりとして照射するので、この領域に照射されるレーザビームの強度分布および時間的な強度の変化を制御することが可能となる。
【0139】
温度算出部68は、温度検出部64に設けられた複数の温度センサ64a(たとえば図13に示すように3個の温度センサ64a)の各々から出力される信号を受ける。温度算出部68は、A/D(アナログ−デジタル)変換回路68aと、演算回路68bと、メモリ68cと、インターフェイス回路68dとを含む。A/D変換回路68aは、温度センサ64aから受けた信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。メモリ68cは、温度と、デジタル信号が示す数値との対応関係を示す情報を記憶する。演算回路68bは、メモリ68cから、温度とデジタル信号が示す数値との対応関係の情報を読み出すとともに、A/D変換回路68aからのデジタル信号を受ける。そして演算回路68bは、現在のACF10の温度を算出し、その算出結果をインターフェイス回路68dに出力する。インターフェイス回路68dはその温度の情報を温度制御部69に出力する。なお、演算回路68bからインターフェイス回路68dに出力される温度の情報は、複数の温度センサ64aの各々が検出した温度の情報である。
【0140】
温度制御部69は、演算回路69aと、インターフェイス回路69b,69cとを含む。インターフェイス回路69bは、インターフェイス回路68dから出力された、ACF10の温度の情報を受けるとともに、その情報を演算回路69aに出力する。
【0141】
演算回路69aは、インターフェイス回路69bから受けた情報に基づいて、ACF10の温度分布に関する情報を生成する。そして演算回路69aはその温度分布情報に基づいて、ACF10の面内において、その温度を高くする(あるいは低くする)必要がある部分を特定する。なお、たとえばACF10の温度が全体的に低い場合には、演算回路69aはACF10の面内のすべての部分において温度を高くする必要があると判定する。そして演算回路69aは、その演算結果をインターフェイス回路69cに出力する。
【0142】
インターフェイス回路69cは、演算回路69aの演算結果をレーザ制御部35に出力する。インターフェイス回路69cから出力された情報は、インターフェイス回路35dによって受信され、インターフェイス回路35dから制御回路35bに送られる。
【0143】
制御装置70は、温度制御部69(演算回路69a)からACF10の温度分布に関する情報を受けるとともに、温度制御部69に対して動作/停止を指示する。たとえば制御装置70は、ACF10の温度分布に関する情報を表示装置80に出力して、表示装置80にその情報を表示させる。
【0144】
さらに、制御装置70は、カメラ60(図4参照)が取り付けられたアーム62を移動させるためのアーム移動装置62aを制御する。アーム移動装置62aはたとえばモータ、ギヤ、図4に示すモータドライバ75等から構成される。すなわち図13に示すアーム62およびアーム移動装置62aは、カメラ60を移動させるためのカメラ移動機構を構成する。
【0145】
さらに、制御装置70は、フィクスチャ45が取り付けられた支持部材51(図4参照)をY方向に移動させるための光学系移動装置51aを制御するとともに、X方向可動遮光部材56をX方向に動かすためのX方向可動遮光部材駆動部56aを制御する。これにより、レーザビームがACF10において所定の形状に整形される。さらに、制御装置70は、真空吸着部77の動作を制御する。
【0146】
記憶装置82(たとえばハードディスク)は、制御装置70が実行するプログラム、制御装置70の処理結果等を不揮発的に記憶する。
【0147】
[接合処理]
図14は、液晶表示パネル1と実装部品とをACF10を介して接合する接合処理の全体を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明では「実装部品」としてICドライバ5(ベアチップ)を例示するが、「実装部品」がTCP、その他接合可能な電子部品である場合にも同様の処理が実行される。
【0148】
図14を参照して、処理が開始されると、まずステップS1において、液晶表示パネル1が搬入される。次にステップS2において、液晶表示パネル1のガラス基板に設けられた引出電極(以下ではパネル電極とも呼ぶ)のクリーニング処理が行なわれる。続いてステップS3において、接続材料であるACFの位置決めが行なわれ、ACFがその決められた位置に貼付けられる。
【0149】
ステップS4において、液晶表示パネル1への実装部品すなわちICドライバ5がシリンダ20等によってチップトレイ21からピックアップされる(図4参照)。
【0150】
ステップS5において、カメラ60が取り付けられたアーム62がバックアック基板55の下部にスライドインする。図13に示されるように、制御装置70がアーム移動装置62aを制御することによって、アーム62が移動する。これによりカメラ60がバックアック基板55の下部の所定の位置まで移動する。
【0151】
ステップS6において、カメラ60は、バックアップ基板55および液晶表示パネル1のガラス基板を介してパネル電極およびドライバIC5のバンプ電極とを撮影する。カメラ60が撮影した画像に基づいて、パネル電極に対する実装部品(より特定的にはバンプ電極)の位置決めが行なわれ、パネル電極とバンプ電極とで対応する電極同士の位置合わせが行なわれる。
【0152】
ステップS7において、シリンダ20が降下することにより加圧ヘッド25が降下する。これによりドライバIC5(およびACF10)が加圧され、ACF10が、液晶表示パネル1とドライバIC5との間に挟みこまれる。
【0153】
ステップS8において、レーザ光がACF10に照射される。これによりACF10が加熱され、ACF10の温度がある温度に達すると、ACF10中の熱反応性樹脂が流動化する。さらにACF10は加圧されているので、ACF10の内部ではミクロパーティクル同士が接触する。これによりドライバIC5の電極とパネル電極とがミクロパーティクルを介して電気的に接続される。さらに、ACF10の加熱を続けることにより熱反応性樹脂が硬化する。なお、このステップS8においてドライバIC5に加えられる圧力は一定でも良いし、適宜変化しても良い。
【0154】
ステップS9において、シリンダ20(加圧ヘッド25)が上昇する。これにより、ドライバIC5(ACF10)の圧力が開放される。
【0155】
ステップS10において、実装部の検査が行なわれる。この検査は、たとえば電気的な接続の検査、外観検査等である。
【0156】
ステップS11において、次工程(たとえば組立て工程)での処理のために液晶表示パネル1が搬出される。ステップS11の処理が終わると全体の処理が終了する。
【0157】
次に、ステップS8の処理の一部であるレーザ光照射処理についてさらに詳しく説明する。図15は、レーザ光照射処理を説明するためのフローチャートである。
【0158】
図15を参照して、レーザ光照射処理は、実際にレーザ光がACF10に照射される前の段階の処理(ステップS20の処理)と、レーザ光がACF10に照射されるときの処理(ステップS21〜S27の処理)とに大別される。
【0159】
ステップS20の処理についてまず説明する。ステップS20は、サブステップであるステップS20A〜S20Eを含む。ステップS20Aにおいて、ACF10の表面における目標の温度分布と、加熱時間とが設定される。たとえばユーザが入力装置に、これらの情報を入力する。制御装置70は、入力装置から情報を取得する。これにより温度分布および加熱時間が設定される。なお、これらの情報は、制御装置70から温度制御部69(図13参照)に送られてもよい。
【0160】
図15および図13を参照して、ステップS20Bにおいて、温度保持フィードバック係数の設定が行なわれる。レーザ光がACF10に照射されている間、制御装置70、温度制御部69、およびレーザ制御部35によって、ACF10の温度を設定温度に保持するためにレーザ光のパワーが調整される。この処理はACF10の温度と設定温度とのずれに基づいて、レーザ光のパワーを制御するフィードバック制御である。この制御においては、レーザ光のパワーの補正量は、ACF10の温度と設定温度とのずれにある係数を乗じた値に基づいて算出される。温度制御部69は、ステップS20Bにおいて、その係数を設定する。なお制御装置70がフィードバック係数を設定してもよい。
【0161】
ステップS20Cにおいて、レーザ制御部35は、設定されたフィードバック係数に基づいて、レーザ光の初期の出力値を設定する。ステップS20Dにおいて、レーザ制御部35は、その設定された出力値に基づいて、複数のレーザ光源32のうち、動作対象のレーザ光源を設定する。
【0162】
ステップS20Eにおいて、制御装置70は、X方向可動遮光部材駆動部56aを制御することにより、X方向可動遮光部材56を移動させる。さらに制御装置70は、光学系移動装置51aを制御することにより、Y方向遮光部材57を、フィクスチャ45が固定された固定部53(図4参照)に対して相対的に移動させる。
【0163】
次に、ステップS21において、レーザ制御部35は電源装置36を制御することにより動作対象のレーザ光源32から、設定された出力値(レーザ初期出力値)のレーザ光を出力させる。さらに、温度検出部64に設けられた複数の温度センサ64aは、ACF10の温度を検出する。
【0164】
ステップS22において、温度算出部68は、複数の温度センサ64aの各々の出力を取得する。温度算出部68は、温度センサ64aの出力に基づいてACF10の温度を算出し、その算出結果(ACF10の温度の情報)を温度制御部69に出力する。
【0165】
ステップS23において、温度制御部69は、温度算出部68によって算出されたACF10の温度の情報を受ける。これにより温度制御部69は、ACF10の温度分布の情報を取得する。
【0166】
ステップS24において、温度制御部69は、ステップS20Aで設定された目標の温度分布と、ステップS23において取得した温度分布とを比較する。そして温度制御部69は、これらの温度分布の比較結果をレーザ制御部35に出力する。レーザ制御部35は、その比較結果(温度分布の違い)に基づいて、レーザ光源の出力のフィードバック量を算出する。たとえばレーザ制御部35は、ACF10のある部分において、目標の温度と実際の温度とに差が生じている場合には、その温度差に応じたフィードバック量を算出する。
【0167】
ステップS25において、レーザ制御部35は、算出したフィードバック量に基づいてレーザ光源からの出力を補正する。上述の例の場合には、レーザ制御部35は、目標の温度と実際の温度とに差が生じているACF10の部分にレーザ光を照射するレーザ光源を特定する。そして、レーザ制御部35は、その特定されたレーザ光源の出力をフィードバック量だけ増加させるように、電源装置36を制御する。電源装置36は、そのレーザ光源に供給する電流を増やすことによってレーザ光源の出力を増加させる。
【0168】
ステップS26において、レーザ制御部35は、ACF10の加熱時間(言い換えればレーザ光がACF10に照射される時間)が予め定められた経過時間を上回るか否かを判定する。ACF10の加熱時間が所定の経過時間以下の場合(ステップS26においてNO)、処理はステップS22に戻る。一方、ACF10の加熱時間が所定の経過時間を上回る場合(ステップS26においてYES)、ステップS27において、レーザ制御部35は、レーザ光源32によるレーザ光の照射を完了させる。ステップS27の処理が終了すると全体の処理が終了する。
【0169】
図16は、ベアチップ(ドライバIC5)を液晶表示パネル1に実装する場合におけるレーザ光の照射領域ARを示す図である。なお、以下において「照射範囲」とは、この照射領域ARの1次元方向(X方向でもY方向でもよい)の範囲を意味する。
【0170】
図16(a)は、ベアチップ(ドライバIC5)側から見たレーザ光の照射領域ARを示す図である。
【0171】
図16(b)は、ベアチップ(ドライバIC5)および液晶表示パネル1の側面側から見たレーザ光のX方向の照射範囲を示す図である。
【0172】
図16を参照して、ドライバIC5のバンプ電極5aが液晶表示パネル1のパネル電極1aと重なるようにドライバIC5の位置が決定される。ACF10は、ドライバIC5のバンプ電極5aと、液晶表示パネル1のパネル電極1aとに挟まれる。
【0173】
レーザ光の照射領域ARは、ドライバIC5の輪郭により定まる領域と実質的に同じ領域である。言い換えると、レーザ光はドライバIC5とほぼ一致するような領域に照射される。このようなレーザ光の照射は、図8に示したように、レーザビーム(光スポット)を均一のピッチで重ね合わせることと、X方向およびY方向の遮光部材との組み合わせにより実現される。
【0174】
図17は、ACF中の熱反応性樹脂の状態がその樹脂の温度により変化することを説明するための図である。
【0175】
図17を参照して、グラフの横軸はACFの加熱開始からの経過時間を示し、グラフの縦軸は温度を示す。ここで説明する熱反応性樹脂は、熱硬化性樹脂であり、その流動化は、熱反応性樹脂の温度が反応開始温度に達するときに始まるものとする。実際には熱反応性樹脂の反応(流動化および硬化)は、この反応開始温度より少し低い温度から少しずつ進行するが、説明の便宜上、ここでは、樹脂の温度が反応開始温度に達したときに流動化が始まるものとする。なお、熱硬化性樹脂の熱反応については時間的な制約も考慮する必要がある。ただし図17は、温度による熱硬化性樹脂の状態変化の理解を容易にするために用いた模式図であり、そのような時間的制約について考慮されたものではない。
【0176】
熱反応性樹脂の温度が、反応開始温度に達していない場合、その樹脂が流動化しない。また、熱反応性樹脂の温度が急速に上昇して樹脂の耐熱温度に達した場合、樹脂の硬化が急速に進行する。これらの場合には、ACFを加圧しても、ACFが薄くなりにくいためにパネル電極1aとバンプ電極5aとの間の導電経路を形成することが困難と考えられる。したがって、樹脂を一旦流動化させるとともに、樹脂が流動化した状態をある程度の時間保ちながらACFを加圧することが必要と考えられる。図16に示した照射領域ARに照射されるレーザ光の強度は、このような加熱時間に対する温度の変化を考慮して定められる。
【0177】
なお、ドライバIC5の輪郭により定まる領域とレーザ光の照射領域ARとは厳密に一致する必要はない。たとえば、ドライバIC5の輪郭により定まる領域の中央部と周囲部とで略同時にACF10に含まれる樹脂の熱反応が進行するのであれば、図16に示したようにレーザ光の照射領域ARはドライバIC5の輪郭により定まる領域よりも小さくても良い。ただし、レーザ光の照射領域ARが適切な大きさでなければ、レーザ光によるACFの加熱において様々な問題が生じ得る。
【0178】
図18は、レーザ光の照射領域ARが適切でない場合に生じ得る問題点を説明するための図である。
【0179】
図18(a)は、複数のバンプ電極5aの一部がレーザ光の照射領域ARに含まれていない場合に生じうる問題点を説明する図である。図18(a)を参照して、レーザ光が照射された範囲は、比較的短時間で高温となるので、ACF10中の熱反応性樹脂の流動化、ACF10の加圧によるバンプ電極5aとパネル電極1aとの電気的接続、および熱反応性樹脂の硬化がスムーズに行なわれる。しかし、ACF10においてレーザ光の照射領域の外側の部分の温度は、レーザ光が直接照射された部分の温度より低いため、熱反応性樹脂の流動化が不十分になる可能性が高い。したがって、ドライバIC5の上方からドライバIC5に圧力を加えても、この部分の厚みがほとんど変化しないためにバンプ電極5aとパネル電極1aとの電気的接続が不十分となる可能性がある。
【0180】
図18(b)は、レーザ光の照射領域ARがドライバIC5の輪郭により定まる領域よりも大きい場合に生じうる問題点を考察する図である。この場合実験結果によれば、ドライバIC5の輪郭周辺のACFが焦げ付く現象が見られた。図18(b)を参照して、ACF10においてバンプ電極5aに接した部分(あるいはバンプ電極5aの付近)では、レーザ光の照射によりACF10に含まれる導電性粒子がその光を吸収して発熱することになるが、その熱は、ACF10の内部だけでなくバンプ電極5aにも伝達されると考えられる。しかしながら、レーザ光の照射領域ARの中に、ACF10のみが照射される部分が存在する場合、その部分では、導電性粒子を熱源として生じた熱によりACF10が異常加熱され、その温度が急速に上昇する。これにより、その部分では、たとえばACF10中の熱反応性樹脂が急速に硬化したり焦げが生じたと考えることができる。また、その部分においてアウトガスが発生することも考えられる。この場合にも、ドライバIC5の輪郭にACFの固まりが生成されるため、ドライバIC5の上方からドライバIC5に圧力を加えても、この部分の厚みがほとんど変化しないためにバンプ電極5aとパネル電極1aとの電気的接続が不十分となる可能性がある。
【0181】
したがって本実施の形態では、図16に示すように、レーザ光の照射領域ARはドライバICの輪郭により定まる領域と実質的に等しい領域に設定される。これにより、ACF10によるドライバICのバンプ電極と液晶表示パネル1のパネル電極との電気的接続の信頼性を高めることができる。また、この部分にレーザ光を集中させることによって、ACFにおいてすべての電極に対応する部分が同時に流動化する。したがって、ドライバICおよびACFを加圧することにより短時間で接合を行なうことができる。
【0182】
なお、レーザ光の照射領域ARがドライバICの輪郭により定まる領域より大きくても、ドライバICの輪郭より外側のレーザ光の強度がドライバICの輪郭内のレーザ光の強度に比べて低ければ上記の急速な硬化や焦げ付きの問題は発生しないと考えられる。従って、ここで言うレーザ光の照射領域ARは、接合時におけるACFの流動化および硬化に実質的に影響を与える程度の強度を持つレーザ光の照射領域をさす。
【0183】
X方向可動遮光部材によりY方向遮光部材によりレーザビームが整形されていても、レーザビームの空間的な広がりによって、レーザ光の照射領域ARの外側の領域にもわずかにレーザ光が照射されていると考えられる。
【0184】
図19は、レーザ光のパワーの空間的な分布を模式的に示す図である。図19において「+X方向」、および「−X方向」とは、図8に示すX方向に相当する。本実施の形態では、図5等に示したレーザ光照射部から発せられたレーザ光のトータルのパワーに対してある割合以上のパワーが得られる範囲を、レーザ光の照射領域とする。本実施の形態では、この割合は、90%である。
【0185】
なお、図19に示した曲線の頂上の平坦な部分については、レーザ光のパワーが完全に一定であると限定されるものではなく、ACFによる表示パネルの電極と接合対象物の電極との接合を可能にするパワーが得られるのであれば、この頂上部分にノイズが重畳していてもよい。
【0186】
続いて、レーザ光の波長を600nm〜1100nmの範囲に設定する理由について説明する。
【0187】
図20は、アルミニウムおよびシリコンへの光の侵入深さと、その光の波長との関係を説明する図である。
【0188】
図20に示したグラフにおける光の波長範囲は200nm〜1400nmの範囲である。この範囲では、光の波長が長いほど、その光のシリコンへの侵入深さが大きくなる。
【0189】
一方、アルミニウムへの光の侵入深さは、波長が800nm付近である場合に最も大きくなる。ここでは、物体の侵入深さとは、その物体の表面を基準とした、その物体に侵入したレーザ光のパワーが1/e(eは自然対数)まで減衰する距離を意味する。
【0190】
本実施の形態では、レーザ光の波長は600nmから1100nmまでの範囲内から選択される。この理由は以下のとおりである。多くの場合、パネル電極はアルミを主成分とする薄膜により形成される。レーザ光の一部は、バックアップ基板55、液晶表示パネル1を透過してパネル電極に達する。ACF10をレーザ光により加熱し、かつ、パネル電極へのダメージをできるだけ小さくするためには、パネル電極に達したレーザ光がその電極を透過することが好ましい。したがって、レーザ光の波長は、パネル電極の厚みによるものの、その侵入深さがパネル電極の厚みよりも大きいことが好ましい。このため、レーザ光の波長としてはアルミへの光の侵入深さができるだけ大きい波長が選択される。このような条件を満たすことが可能な波長として600nm以上の波長が選択される。
【0191】
次に、600nm〜1100nmの波長範囲ではACFの光の吸収率が比較的小さい(たとえば5%)ため、本実施の形態ではドライバICの主材料であるシリコンをレーザ光により加熱する。これにより、ACFがレーザ光を吸収して発熱するのみならず、ACFを透過したレーザ光により熱せられたシリコンによってACFが加熱される。したがってACFの温度を短時間で上昇させることが可能になる。このためにはレーザ光がシリコンを透過しないようにレーザ光の波長を選択する必要がある。図20に示すようにシリコンチップの厚みの幅は、0.5〜1mm(1×10(nm))程度である。したがって、このような条件を満たすことが可能な波長として1100nm以下の波長が選択される。
【0192】
また、発熱源をできるだけシリコンチップの下部(ACFとシリコンチップとの境界)に集中させることで、ACFを短時間で硬化させることができる。しかし熱がその部分に集中しすぎると、シリコンチップにダメージを与えることになる。また、波長の短い光は、フォトンのエネルギーが高いため、半導体レーザ素子自身の耐久性に問題がある。このような理由から、できるだけ長波長側の光を用いることが好ましい。
【0193】
以上の理由により、レーザ光の波長としては600nm以上かつ1100nm以下の波長が選択される。
【0194】
なお、以上の説明では、ベアチップ(ドライバIC)をACFを介して液晶表示パネル1に接合する場合を例示した。しかしながら本実施の形態の接合装置および方法はTCPをACFを介して液晶表示パネル1に接合する場合にも適用可能である。
【0195】
図21は、TCP2に設けられたリード導体2bをACFを介して液晶表示パネル1上の電極に接続する場合におけるレーザ光の照射領域ARを示す図である。
【0196】
図21(a)は、TCP2側から見たレーザ光の照射領域ARを示す図である。
図21(b)は、TCP2および液晶表示パネル1の側面側から見たレーザ光のX方向の照射範囲を示す図である。なお、図示の便宜上、図21(a)には液晶表示パネル1は示していない。
【0197】
図21を参照して、照射領域ARは、TCP2のキャリアテープ2aの輪郭により定まる領域と実質的に等しくなるように照射領域ARが設定される。具体的には照射領域ARは、リード導体2bを含み、かつ、TCP2のキャリアテープ2aとACF10との重なり範囲をはみ出ないように設定される。つまり、TCPを用いた実装の場合にも、照射領域ARはベアチップの実装の場合と同様に定められる。また、照射領域ARの定義は、図19に示されるようにレーザ光照射部から発せられたレーザ光のトータルのパワーに対してある割合(たとえば90%)以上のパワーが得られる範囲である。なお、複数のリード導体2bの配置方向が図15に示したX方向に対応する。
【0198】
TCP2に含まれるキャリアテープの主成分であるポリイミドは、図20に示した範囲(600nm〜1100nm)の波長を有する光を吸収しやすい。したがってベアチップの場合と同様に、ACF10がレーザ光によって発熱するのみならず、ACF10を透過したレーザ光によってTCPのキャリアテープも加熱される。これによりACFの温度を短時間で上昇させることが可能になる。
【0199】
なお、キャリアテープ2aと、ACF10との境界の領域(あるいはその境界の外側の領域)にレーザ光が照射された場合には、ACF10中の樹脂へのダメージが生じる。したがって、図21に示すように照射領域ARを決定することにより、液晶表示パネル1へのTCP2の実装における信頼性を高くすることができる。
【0200】
このように本実施の形態によれば、接合装置100は、ACF10を加熱するためのレーザ光をACF10に向けて照射するレーザ光照射部を備える。レーザ光照射部は、複数のレーザ光源32と、その複数のレーザ光源32が各々出射するレーザ光の強度を、互いに独立に、時間に対して一定、または時間的に変化させるよう制御するレーザ制御部35とを含む。そして、接合装置100は、複数の電極が形成された接合対象物の表面に対して、複数のレーザ光源の各々から出射されたレーザ光を異なる位置に照射することによって、接合対象物の輪郭により定まる領域の全域をレーザ光により照射する。
【0201】
上記したレーザ光の照射領域では、ACF10を均一に加熱することが可能になる。これにより、短時間でACFを加熱できるとともに、その照射領域の全体を均一に流動化させることが可能になる。これにより仮圧着および本圧着を含む一度の加圧処理によって、接合対象物の複数の電極を液晶表示パネル上の複数の電極に接合できるので、高速での接合が可能になる。
【0202】
また、照射領域の全体を均一に流動化させることにより、接合対象物(ベアチップあるいはTCP)を加圧した場合に、その接合対象物の複数の電極を液晶表示パネル上の複数の電極にそれぞれ電気的に接続させることができるだけでなく、その電気的接続を確実に行なうことができる。これにより、たとえば液晶表示パネルの歩留を向上させることが可能になる。
【0203】
したがって本実施の形態によれば表示装置の生産性を向上できる。
(変形例)
図22は、バックアップ基板55の変形例を示す図である。図22および図9を参照して、この変形例に従う構成は、バックアップ基板55の周辺にレーザ光吸収体58がさらに設けられる点で図9に示す構成と異なる。レーザ光吸収体58は、バックアップ基板55の傾斜面55aにおいて反射するレーザ光(レーザビームLB)の反射方向に設けられる。レーザ光吸収体58は、この傾斜面55aにおいて反射し、かつバックアップ基板55から出たレーザ光を吸収可能な吸収体である。たとえばレーザ光吸収体58はセラミックにより形成される。
【0204】
図22に示すようにレーザ光吸収体58を配置することによって、バックアップ基板55により散乱されたレーザ光が周囲に与える影響を低減できる。この変形例によればレーザ光吸収体58により、その散乱されたレーザ光を吸収できるので、バックアップ基板55の周囲へのレーザ光による影響を回避できる。
【0205】
レーザ光吸収体58に対向するバックアップ基板55の表面55bは、傾斜面55aと同様に粗面(砂面あるいは梨地と言い換えることができる)に加工された面である。これにより、レーザ光を表面55bにおいて拡散させることができるので、レーザ光吸収体58にエネルギー密度の高い光が入射するのを防ぐことができる。したがってレーザ光吸収体58の損傷等の問題を回避できる。
【0206】
図23は、図12に示した加圧ヘッド25の変形例を示す図である。
図23を参照して、押さえ部材25aの底面(すなわちドライバIC5と接する面)には、熱伝導性の高い熱伝導性材料25cが設けられる。
【0207】
たとえば、Z方向におけるドライバIC5の熱勾配を考えた場合、ACF10の加熱時には、ドライバIC5のACF10側の面のほうがドライバIC5の加圧ヘッド25側の面よりも熱くなる。また、X方向におけるドライバIC5の熱勾配を考えた場合、ドライバIC5の端部からは熱が空気中に逃げやすいのに対し、ドライバIC5の中央部の熱は周囲に逃げにくい。したがってドライバIC5の中央部の温度がドライバIC5の周辺部の温度より高くなりやすい。
【0208】
図23に示されるように、押さえ部材25aの底面に熱伝導性材料25cを設けることによって、このような熱勾配を小さくすることが可能になる。これによりドライバIC(ベアチップ)への熱ストレスを緩和する効果、およびACFの加熱時におけるACFの温度分布を小さくする効果が期待できる。なお、押さえ部材25aの底面に設けられる熱伝導性材料は特に限定されるものではないが、一例として、DCL(Diamond Like Carbon;ダイヤモンドに類似した炭素薄膜材料)を挙げることができる。
【0209】
図24は、本実施の形態に適用可能な光学系の一例を示す図である。
図24を参照して、この光学系は、コンデンサレンズ101,102をさらに備える点、および、X方向可動遮光部材56とY方向遮光部材57とに代わるシャッター103を備える点で図4等に示す光学系と異なる。なお、この光学系の残りの部分の構成は上述した光学系の構成と同様である。
【0210】
この光学系は、ケーラー照明方式を採用した光学系である。ケーラー照明の場合、光源に輝度ムラがあっても照射面を均一に照明することができる。照射領域ARは、バックアップ基板55および液晶表示パネル1を透過してACF10に入射したレーザ光の照射領域を示す。この領域において光の強度を均一にすることによって、この領域内の温度も均一とすることができる。なお、この光学系においても、照射領域ARはドライブIC5の輪郭により定まる領域と実質的に等しくなるように設定される。
【0211】
図25は、本実施の形態に適用可能な光学系の他の例を示す図である。
図25を参照して、この光学系は、結像レンズ104および対物レンズ105をさらに備える点、および、X方向可動遮光部材56とY方向遮光部材57とに代わるシャッター103を備える点で図4等に示す光学系と異なる。なお、この光学系の残りの部分の構成は上述した光学系の構成と同様である。
【0212】
結像レンズ104および対物レンズ105は、シリンドリカルレンズである。これによりレーザ光(レーザビームLB)は1軸方向のみ集光される。さらに、レーザ光の拡散的な空間プロファイルによりレーザビームは均一化される。シャッター103により、レーザ光が絞られると、空間的に均一な強度分布を有するレーザ光が結像レンズ104に入射する。
【0213】
図26は、本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
図26を参照して、この光学系は、fθレンズ106、ガルバノミラー107、およびガルバノミラー107を回転させる回転駆動部108をさらに備える点、および、X方向可動遮光部材56とY方向遮光部材57とに代わるシャッター103を備える点で図4等に示す光学系と異なる。なお、この光学系の残りの部分の構成は上述した光学系の構成と同様である。
【0214】
fθレンズ106はテレセントリックタイプのものを選択する。さらに、fθレンズ106は、レーザ照射面に対して光軸が垂直になるように配置する。
【0215】
また、この光学系によれば、ガルバノミラー107を回転駆動部108により回転させることで、レーザビームLBを2つのバックアップ基板55の両方に交互に(あるいは順番に)導くことができる。したがって、たとえば一方のバックアップ基板55上で、ACFを介したTCPと液晶表示パネルとの接合を行ない、他方のバックアップ基板55上でACFを介したベアチップと液晶表示パネルとの接合を行なうことができる。なお、この構成の場合には、上述した光学系の構成よりも、レーザビームの強度を大きくする必要がある。
【0216】
図27は、本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
図27を参照して、この光学系では、光ファイバ41から出たレーザ光(レーザビーム)を整形するための非球面レンズ42aおよびコリメートレンズ42bが、各光ファイバ41に対応して設けられる。非球面レンズ42aおよびコリメートレンズ42bを通ったレーザ光をACF10で重ね合わせることにより、照射領域ARにおいて、ACFの加熱に十分、かつ均一な強度のレーザ光を照射できる。
【0217】
図28は、本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
図28(a)を参照して、この光学系では、光ファイバ41から出た光(レーザビームLB)が発散光としてACF10および電子部品(図28ではドライバIC5)に照射される。ホルダ43aはファイバホルダである。なお、照射面(液晶表示パネル1とACF10との接触面とする)において適切な大きさのスポットが形成されるように、光ファイバ41から出射したレーザ光を発散させるためのレンズがホルダ43aに取り付けられてもよい。以下では、レンズがホルダ43aに取り付けられていないものとして説明する。
【0218】
この光学系では、光ファイバ41の出射端の位置を液晶表示パネル1にできるだけ近づけることが好ましい。このため、バックアップ基板55には、その上下方向(厚み方向)に貫通する孔55dが形成される。ホルダ43aは、この孔に沿って上下に移動可能である。このようにホルダ43aを移動させることで、光ファイバ41から出射されるレーザ光のビームサイズを調整することが可能になる。
【0219】
また、液晶表示パネル1上の引出電極と、対応するドライバIC5のバンプ電極との位置合わせの場合には、対応する位置にカメラを移動させることが必要になる。図28(b)に示すように、カメラ60は、孔55dの内部を水平方向に沿って移動する。一方、カメラ60との干渉を避けるため、カメラ60の移動時には、ホルダ43a(および光ファイバ41)は下方に退避させられる。
【0220】
図29は、図28に示したホルダ43aの構成を説明する図である。
図29(a)は、ホルダ43aの上面図である。図29(b)は、ホルダ43aの側面図である。図29(a)および(b)を参照して複数のホルダ43aは、フィクスチャ45によって固定される。このフィクスチャ45はガラス等の透明な材質により形成される。フィクスチャ45の下部には、たとえば面発光LEDやランプ等によって構成されたガイド照明46が取り付けられる。
【0221】
ガイド照明46からのガイド光は、導光路であるフィクスチャ45を通り、フィクスチャ45から出た際に発散光となる。図29(b)ではガイド光を実線で示し、レーザビームLBを破線で示す。ガイド照明46のNA(開口数)は光ファイバ41のNAと一致するよう設計される。これによって、光ファイバ41から出射したレーザビームLBによる照射エリアを、ガイド照明46からのガイド光によって示すことができる。
【0222】
なお、この構成例においては、バックアップ基板は、ガラスや石英でもよいし、金属であってもよい。また、バックアップ基板がガラスや石英である場合、孔55dは必ずしも上下方向に貫通していなくてもよい。一方、バックアップ基板が金属である場合には、光ファイバからの光をACF10に到達させるために孔55dを上下方向に貫通させる必要がある。また、バックアップ基板55は、接合対象となる電子部品の品種変更に応じて交換されてもよい。
【0223】
図30は、本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
図30(a)は、レーザ光の進行方向に沿った光学系の断面構造図である。図30(a)を参照して、この光学系は、光ファイバ41と、光ファイバ41の出射端側がその内部に挿入されるフェルール44と、複数のフェルール44を固定するフィクスチャ45と、光ファイバ41から出射されたレーザ光を通すための複数のインテグレータ91と、複数のインテグレータ91を所定の位置に設置するためのインテグレータガイド92と、インテグレータ91の入射端で反射したレーザ光を導光する光ファイバ93と、その光ファイバ93から出射された光を受光する受光素子94とを備える。
【0224】
光ファイバ41から出た光をインテグレータ91に通すことで、インテグレータ91から、均一な強度分布を有する光を出力することができる。なお、インテグレータ91の光出射位置から液晶表示パネル1までの距離に応じて光の広がり方が変化する。
【0225】
この光学系では、インテグレータ91はアレイ状に配列される。図30(b)は、アレイ状に配列された複数のインテグレータ91からの光が照射面(液晶表示パネル1とACF10との接触面とする)での照射領域において重なり合う状態を示している。インテグレータ91からの光は領域95およびその周囲の領域(破線の枠により示す)に広がる。これにより、照射面では、メッシュ状に重なり合って配置された矩形の光スポットが複数形成されるので、連続的な照射領域を形成することができるとともに、その照射領域内における強度分布をほぼ均一とすることができる。
【0226】
図30(a)に示されるように、バックアップ基板55の内部には、インテグレータ91からの光を遮光するマスク59が設けられている。このマスク59によって、図30(b)に示されるように、照射面における所望の領域、すなわち照射領域AR(実線にて示す)のみにレーザ光を照射することができる。
【0227】
受光素子94は、インテグレータ91の入射端で反射したレーザ光を受光し、その受光強度を示す信号を出力する。この信号は、各光ファイバ41から出射されたレーザ光の強度を反映している。したがって図30に示す光学系を用いることで、各受光素子94からの信号に基づいて照射領域ARにおけるレーザ光の強度分布を任意に制御できる。たとえば照射領域AR全体で均一な強度としたり、特定の領域の強度を他の領域より強くする、あるいは弱くすることが可能になる。
【0228】
図31を参照して、(a),(b),(c)の順に、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きくなる。なお斜線の領域は、図30(b)に示す領域95に対応する。ここで、光の広がりとマスク59の厚みとの関係は以下の通りである。マスク59が薄いほど、各インテグレータ91から出射された光の広がりが小さくなる。一方、マスク59が厚いほど、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きくなる。
【0229】
各インテグレータ91から出射された光の広がりが小さいほど、光が重なり合う部分が大きくなるため、パワー密度が高くなる。また強度の均一性が良好となる。また、メッシュのピッチが短くなる。これに対し、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きいほど、照射面において光が重なり合う部分が小さくなるため、パワー密度が低くなる。また、照射面での強度の均一性も悪くなる。また、メッシュのピッチが長くなる。
【0230】
なお、図31は、インテグレータ91から出射された光の広がりを変化させることが可能なパラメータを説明したものであって、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きくなるほど望ましくないということを示すものではない。インテグレータ91から出射された光の広がりの程度は、必要とされるパワー密度や、照射領域の大きさ等によって適切に定められるものである。
【0231】
なお、以上の説明では、熱反応性樹脂による接着剤である異方性導電性材料の一例としてACFを示したが、ただし異方性導電材料はACFに限定されず、たとえばACP(Anisotropic Conductive Paste)でもよい。
【0232】
また、以上の説明では表示装置として液晶表示装置を示した。しかし、本実施の形態に従う接合装置および接合方法は、異方性導電材料を介して被接合物(表示パネル)の電極と接合対象物(たとえばTCP、ベアチップ、その他の電子部品等)の電極とが接合される表示装置に対して広く適用が可能である。したがって、本実施の形態に従う接合装置および接合方法による処理が可能な表示装置は液晶表示装置に限定されず、たとえば、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイなどでもよい。
【0233】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】本発明の実施の形態に従う接合装置の処理対象である液晶表示装置の概略ブロック図である。
【図2】図1に示すTCP2の一構成例を説明する図である。
【図3】ACFを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態に従う接合装置100の構成図である。
【図5】本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第1の図である。
【図6】本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第2の図である。
【図7】フィクスチャ45および温度検出部64の配置を説明する、X方向から見た図である。
【図8】バックアップ基板55上でのレーザ光の照射領域を説明する図である。
【図9】本実施の形態に従う接合装置100に含まれるビーム整形部の構成を説明するための図である。
【図10】バックアップ基板55によるレーザビームのY方向の整形を説明するための模式図である。
【図11】レーザ光源32として用いられる半導体レーザを説明するための図である。
【図12】図4に示す加圧ヘッド25を説明するための図である。
【図13】本実施の形態に従う接合装置100の制御系を説明するためのブロック図である。
【図14】液晶表示パネル1と実装部品とをACF10を介して接合する接合処理の全体を説明するためのフローチャートである。
【図15】レーザ光照射処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】ベアチップ(ドライバIC5)を液晶表示パネル1に実装する場合におけるレーザ光の照射領域ARを示す図である。
【図17】ACF中の熱反応性樹脂の状態がその樹脂の温度により変化することを説明するための図である。
【図18】レーザ光の照射領域ARが適切でない場合に生じ得る問題点を説明するための図である。
【図19】レーザ光のパワーの空間的な分布を模式的に示す図である。
【図20】アルミおよびシリコンへの光の侵入深さと、その光の波長との関係を説明する図である。
【図21】TCP2に設けられたリード導体2bをACFを介して液晶表示パネル1上の電極に接続する場合におけるレーザ光の照射領域ARを示す図である。
【図22】バックアップ基板55の変形例を示す図である。
【図23】図12に示した加圧ヘッド25の変形例を示す図である。
【図24】本実施の形態に適用可能な光学系の一例を示す図である。
【図25】本実施の形態に適用可能な光学系の他の例を示す図である。
【図26】本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
【図27】本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
【図28】本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
【図29】図28に示したホルダ43aの構成を説明する図である。
【図30】本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
【図31】複数のインテグレータ91の各々から出射された光の重なりの例を説明する図である。
【符号の説明】
【0235】
1 液晶表示パネル、1a パネル電極、2 TCP、2a キャリアテープ、2b リード導体、3 プリント回路基板、4 インターフェイス部、5 ドライバIC、5a バンプ電極、6 フレキシブル基板、7 偏光板、10a バインダ領域、11 ミクロパーティクル、11a ミクロパーティクル領域、12 ニッケルメッキ層、13 樹脂コア、14 金メッキ層、15,16 電極、20 シリンダ、21 チップトレイ、22 シリンダ移動機構、23 吸着孔、24 バルブ、25 加圧ヘッド、25a,25b 押さえ部材、25c 熱伝導性材料、31 レーザ装置、32 レーザ光源、32a,32b 半導体レーザ、33,41,93 光ファイバ、34 レーザ冷却装置、35 レーザ制御部、35a 温度検出回路、35b 制御回路、35c,68c メモリ、35d,68d,69b,69c インターフェイス回路、36 電源装置、38 レーザ光保護カバー、40 ファイバ中継器、42 レンズ、42a 非球面レンズ、42b コリメートレンズ、43 レンズホルダ、43a ホルダ、44 フェルール、45 フィクスチャ、46 ガイド照明、47 入力コネクタ、48 出力コネクタ、51 支持部材、51a 光学系移動装置、52 スライドレール、53 固定部、55 バックアップ基板、55b,55c 表面、55a,57a 傾斜面、55d 孔、56 X方向可動遮光部材、56a X方向可動遮光部材駆動部、57 Y方向遮光部材、57b 平面、58 レーザ光吸収体、60 カメラ、62 アーム、62a アーム移動装置、64 温度検出部、64f フィルタ、64a 温度センサ、64b 筒、65 信号線、66,67 信号コネクタ、68 温度算出部、68a A/D変換回路、68b,69a 演算回路、69 温度制御部、70 制御装置、75 モータドライバ、77 真空吸着部、80 表示装置、82 記憶装置、91 インテグレータ、92 インテグレータガイド、94 受光素子、100 接合装置、101,102 コンデンサレンズ、103 シャッター、104 結像レンズ、105 対物レンズ、106 レンズ、107 ガルバノミラー、108 回転駆動部、AR 照射領域、EM エミッタ、LB レーザビーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物としてガラス基板上に配列された複数の第1の電極からなる引出電極と、前記引出電極の接合対象物に含まれ、かつ前記複数の第1の電極と配置を対応させて配列された複数の第2の電極とを、熱反応性樹脂による接着剤を介在させてそれぞれ電気的に接合する接合装置であって、
前記熱反応性樹脂を加熱するためのレーザ光を前記接着剤に向けて照射するレーザ光照射部を備え、
前記レーザ光照射部は、
複数のレーザ光源と、
前記複数のレーザ光源が各々出射するレーザ光の強度を、互いに独立に、時間に対して一定または時間的に変化させるように制御するレーザ制御部とを含み、
前記複数の第2の電極が形成された前記接合対象物の表面に対して、前記複数のレーザ光源の各々から出射された前記レーザ光を異なる位置に照射することによって、前記接合対象物の輪郭により定まる領域の全域を前記レーザ光により照射する、接合装置。
【請求項2】
前記レーザ光照射部は、
前記複数のレーザ光源により前記接着剤に照射される前記レーザ光のビーム形状を整形するためのビーム整形部をさらに含む、請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記接合対象物は、
前記複数の第2の電極として前記接合対象物の表面に形成された複数の電極を含み、
前記接着剤において前記レーザ光が照射される前記領域は、前記複数の電極が形成された前記接合対象物の表面と実質的に同じ大きさである、請求項1に記載の接合装置。
【請求項4】
前記レーザ光照射部および前記ビーム整形部は、前記接着剤において前記レーザ光が照射される前記領域である照射領域での前記レーザ光のパワーが、前記レーザ光照射部から発せられた前記レーザ光のパワーの90%以上となるように、前記レーザ光を前記照射領域に集中させる、請求項2または3に記載の接合装置。
【請求項5】
前記レーザ光照射部は、
各前記複数のレーザ光源から発せられる前記レーザ光が、前記接着剤に向かう向きに進行するように、前記レーザ光を伝達する複数の光ファイバと、
各々が、前記光ファイバから出た前記レーザ光を平行光に変換する複数のレンズを有する複数のレンズ保持部材とをさらに含み、
各前記レンズ保持部材において、前記複数のレンズは、前記平行光が重なり合うように定められたピッチで一方向に配置される、請求項1に記載の接合装置。
【請求項6】
前記複数のレンズ保持部材は、1つのレンズ保持部材に設けられた前記複数のレンズの各々から発せられる前記平行光と、前記1つのレンズ保持部材と異なる他のレンズ保持部材に設けられた前記複数のレンズの各々から発せられる前記平行光とが、前記ビーム整形部において集まるように配置される、請求項5に記載の接合装置。
【請求項7】
前記接合装置は、
透明な材質により形成され、かつ前記ガラス基板を支持する支持部材と、
前記複数のレンズ保持部材と前記支持部材との間に配置され、前記ガラス基板上の前記複数の第1の電極に対する前記接合対象物の前記複数の第2の電極の位置合わせのために、前記支持部材および前記ガラス基板を介して前記複数の第1の電極および前記複数の第2の電極を撮影するカメラと、
前記位置合わせが行なわれるときに前記カメラを所定の位置に移動させ、前記複数のレンズの各々から前記平行光が出射されるときには、前記カメラを前記平行光の光路上の位置から退避させるカメラ移動機構をさらに備える、請求項5に記載の接合装置。
【請求項8】
前記接合装置は、
前記接着剤における前記レーザ光の照射領域の複数の箇所の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部が検出した前記複数の箇所の温度に基づいて、前記照射領域の温度分布を生成する温度分布生成部とをさらに備え、
前記レーザ制御部は、前記温度分布生成部が生成した前記温度分布に基づいて、前記複数のレーザ光源の各々を制御する、請求項5に記載の接合装置。
【請求項9】
前記接合装置は、
透明な材質により形成され、かつ前記ガラス基板を支持する支持部材と、
前記複数のレーザ光源により前記接着剤に照射される前記レーザ光のビーム形状を整形するためのビーム整形部とをさらに備え、
前記ビーム整形部は、
前記複数のレンズ保持部材と前記支持部材との間に配置され、前記ガラス基板の表面に沿った第1の方向に前記ビーム形状を整形するためのスリットを含み、
前記支持部材は、
前記ガラス基板に対向する表面に交差し、かつ、前記対向する表面の垂直方向に対して傾いた斜面を有する、請求項5に記載の接合装置。
【請求項10】
前記斜面の垂線と前記平行光とのなす角度は、前記斜面における前記平行光の全反射角よりも大きい、請求項9に記載の接合装置。
【請求項11】
前記接合装置は、
前記斜面に沿って設けられ、かつ前記レーザ光を吸収可能な吸収体をさらに備える、請求項9に記載の接合装置。
【請求項12】
前記斜面は、粗面である、請求項11に記載の接合装置。
【請求項13】
前記接合装置は、
前記支持部材の周辺、かつ、前記斜面において反射する前記レーザ光の反射方向に設けられ、前記レーザ光を吸収可能な吸収体をさらに備える、請求項9に記載の接合装置。
【請求項14】
前記支持部材の表面のうち、前記斜面において反射した前記レーザ光が前記支持部材の内部から出射される表面は、粗面である、請求項13に記載の接合装置。
【請求項15】
前記接合装置は、
前記複数のレンズ保持部材を前記第1の方向に垂直な前記第2の方向に沿って移動させる移動機構をさらに備える、請求項9から14のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項16】
前記接合装置は、
前記接着剤に対して反対側から前記接合対象物に圧力を加えるための加圧装置をさらに備え、
前記レーザ光照射部は、前記加圧装置により前記接合対象物に圧力が加えられた状態で、前記レーザ光を前記接着剤に向けて照射する、請求項1に記載の接合装置。
【請求項17】
前記加圧装置は、
前記接合対象物を押さえるための押さえ部材を含み、
前記押さえ部材には少なくとも1つの貫通孔が形成され、
前記接合装置は、前記少なくとも1つの貫通孔を介して前記接合対象物を前記押さえ部材に真空吸着させるための真空吸着部をさらに備える、請求項16に記載の接合装置。
【請求項18】
前記加圧装置は、
前記接合対象物を押さえるための押さえ部分を含み、
前記押さえ部材の材質は、セラミック、石英、およびガラスの中から選択される材質である、請求項16に記載の接合装置。
【請求項19】
前記レーザ光照射部は、
対応するレーザ光源からの前記レーザ光を導光することで前記レーザ光の強度を均一化し、かつ、均一化された前記レーザ光による面状照射が可能なように集合的に配置される複数の導光路と、
前記複数の導光路から出た前記レーザ光のビーム形状を整形するためのマスクとをさらに含む、請求項1に記載の接合装置。
【請求項20】
前記接着剤は、前記接着剤は、前記熱反応性樹脂に導電性粒子が分散された接着剤である、請求項1から19のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項21】
被接合物としてガラス基板上に配列された複数の第1の電極からなる引出電極と、前記引出電極の接合対象物に含まれ、かつ前記複数の第1の電極と配置を対応させて配列された複数の第2の電極とを、熱反応性樹脂による接着剤を介在させてそれぞれ電気的に接合する接合方法であって、
前記接合対象物を加圧するステップと、
前記接合対象物が加圧された状態において、前記熱反応性樹脂を加熱するためのレーザ光を前記接着剤に向けて照射するステップとを備え、
前記レーザ光を照射するステップは、
複数のレーザ光源が各々出射するレーザ光の強度を、互いに独立に、時間に対して一定または時間的に変化させるように制御するステップと、
前記複数の第1の電極が形成された前記接合対象物の表面に対して、前記複数のレーザ光源の各々から出射された前記レーザ光を異なる位置に照射することによって、前記接合対象物の輪郭により定まる領域の全域を前記レーザ光により照射するステップとを含む、接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2009−224394(P2009−224394A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64587(P2008−64587)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】