説明

接着シート、接着シートの製造方法、半導体装置の製造方法、及び半導体装置

【課題】積層体を剥離基材から剥離する工程において、剥離基材と支持層との界面に剥がれが生じることが抑制される接着シート及びその製造方法、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを課題とする。
【解決手段】剥離基材1と、剥離基材1の面30上に部分的に設けられた接着剤層2と、接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2が設けられた領域の周囲で剥離基材1に接するように設けられた粘着フィルム層3と、剥離基材1の面30のうち、粘着フィルム層3が設けられていない領域の少なくとも一部に、剥離基材1に接するように設けられた粘着フィルム層4と、を有し、剥離基材1の面30は、粘着フィルム層4が設けられた領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理が施された領域を有する、接着シート100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート、接着シートの製造方法、半導体装置の製造方法、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル関連機器の多機能化及び軽量小型化の要求が急速に高まりつつある。これに伴い、半導体素子の高密度実装に対するニーズは年々強まり、特に半導体素子を積層するスタックドマルチチップパッケージ(以下「スタックドMCP」という)の開発がその中心を担っている。スタックドMCPの技術開発は、パッケージの小型化と多段積載という、相反する目標の両立にある。そのため、特に半導体素子に使用されるシリコンウェハの厚さは薄膜化が急速に進み、ウェハ厚さ100μm以下のものが積極的に使用、検討されている。また多段積載は、パッケージ作製工程の複雑化を引き起こすため、パッケージ作製工程の簡素化及び、多段積載によるワイヤーボンディングの熱履歴回数の増加に対応した作製プロセス、材料の提案が求められている。
【0003】
このような状況の中、スタックドMCPの接着部材としては従来からペースト材料が用いられてきた。しかし、ペースト材料では、半導体素子の接着プロセスにおいて樹脂のはみ出しが生じるという問題や、膜厚精度が低いといった問題がある。これらの問題は、ワイヤーボンディング時の不具合発生やペースト剤のボイド発生等の原因となるため、ペースト材料を用いた場合では、上述の要求に対処しきれなくなってきている。
【0004】
こうした問題を改善するために、近年、ペースト材料に代えてフィルム状の接着剤が使用される傾向にある。フィルム状の接着剤はペースト材料と比較して、半導体素子の接着プロセスにおけるはみ出し量を少なく制御することが可能であり、且つ、フィルムの膜厚精度を高めて、膜厚のばらつきを小さくすることが可能であることから、特にスタックドMCPへの適用が積極的に検討されている。
【0005】
このフィルム状接着剤は、通常、接着剤層が剥離基材上に形成された構成を有しており、その代表的な使用方法の一つにウェハ裏面貼付け方式がある。ウェハ裏面貼り付け方式とは、半導体素子の作製に用いられるシリコンウェハの裏面にフィルム状接着剤を直接貼付ける方法である。この方法では、半導体ウェハに対するフィルム状接着剤の貼付けを行った後、剥離基材を除去し、接着剤層上にダイシングテープを貼り付ける。その後、ウェハリングに装着させて所望の半導体素子寸法にウェハを接着剤層ごと切削加工する。ダイシング後の半導体素子は裏面に同じ寸法に切り出された接着剤層を有する構造となっており、この接着剤層付きの半導体素子をピックアップして搭載されるべき基板に熱圧着等の方法で貼り付ける。
【0006】
この裏面貼付け方式に用いられるダイシングテープは、通常、粘着剤層が接着剤層上に形成された構成を有しており、感圧型ダイシングテープとUV型ダイシングテープとの2種類に大別される。ダイシングテープに要求される機能としては、ダイシング時には、ウェハ切断に伴う負荷によって半導体素子が飛散しない十分な粘着力が求められ、ダイシングした各半導体素子をピックアップする際には、各素子への粘着剤残りが無く、接着剤層付きの半導体素子がダイボンダー設備で容易にピックアップできることが求められる。
【0007】
また、パッケージ作製工程の短縮化の要望から、更にプロセス改善の要求が高まっている。従来のウェハ裏面貼付け方式ではウェハへフィルム状接着剤を貼付けた後、ダイシングテープを貼付けるという2つの工程が必要であったことから、このプロセスを簡略化するために、フィルム状接着剤とダイシングテープとの両方の機能を併せ持つ接着シート(ダイボンドダイシングシート)が開発されている。この接着シートとしては、フィルム状接着剤とダイシングテープとを貼り合わせた構造を持つ積層タイプ(例えば、特許文献1〜3参照)や、一つの樹脂層で粘着剤層と接着剤層との両方の機能を兼ね備えた単層タイプ(例えば、特許文献4参照)がある。
【0008】
また、このような接着シートを、半導体素子を構成するウェハの形状にあらかじめ加工しておく方法(いわゆるプリカット加工)が知られている(例えば特許文献5、6)。かかるプリカット加工は、使用されるウェハの形状に合わせて樹脂層を打ち抜き、ウェハを貼り付ける部分以外の樹脂層を剥離しておく方法である。
【0009】
かかるプリカット加工を施す場合、積層タイプの接着シートは一般的に、フィルム状接着剤において接着剤層をウェハ形状に合わせてプリカット加工し、それとダイシングテープとを貼り合わせた後、このダイシングテープに対してウェハリング形状に合わせたプリカット加工を施すか、又は、あらかじめウェハリング形状にプリカット加工したダイシングテープを、プリカット加工したフィルム状接着剤と貼り合わせることによって作製される。また、単層タイプの接着シートは一般的に、剥離基材上に接着剤層と粘着剤層の両方の機能を有する樹脂層(以下、「粘接着層」という)を形成し、この粘接着層に対してプリカット加工を行い、粘接着層の不要部分を除去した後に、粘接着層が除去された領域にさらに別の粘着剤層を貼り合わせる等の方法により作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3348923号公報
【特許文献2】特開平10−335271号公報
【特許文献3】特許第2678655号公報
【特許文献4】特公平7−15087号公報
【特許文献5】実公平6−18383号公報
【特許文献6】登録実用新案3021645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、接着シートとしては、剥離基材の表面において、ウェハ形状に合わせてプリカット加工された接着剤層及び粘着フィルム層(例えばダイシングテープ等の層)を含む積層体が形成された領域の周囲にも、粘着フィルム層が形成されたものが考えられる。このような接着シートにおいては、一般的には、容易に製造できるという観点から、例えば、同じ粘着フィルムを用いて、積層体の粘着フィルム層と、積層体が形成された領域の周囲に形成された他の粘着フィルム層と、が形成される。
【0012】
上記接着シートを用いて半導体装置を製造する場合、特に剥離基材と粘着フィルムの粘着剤層との粘着力が低いと、積層体を剥離基材から剥離してシリコンウェハへ貼り付ける工程において、前記他の粘着フィルム層と剥離基材との界面で剥がれが生じてしまう場合がある。
【0013】
なお、上記のような剥がれを回避するために、剥離基材と粘着剤層との密着力を上げることによって、前記他の粘着フィルム層の剥がれを抑制する方法も考えられる。
しかしながら、上記方法では、前記他の粘着フィルム層と積層体の粘着フィルム層とが同じ粘着フィルムを用いて形成されているため、前記他の粘着フィルム層だけでなく、積層体の粘着フィルム層も、剥離基材に対する密着力や接着剤層に対する密着力が上がることが考えられる。そして、積層体の粘着フィルム層における剥離基材及び接着剤層に対する密着性が上がると、剥離基材から積層体を剥離しにくくなるという問題や、積層体の粘着フィルムから接着剤層付き半導体素子をピックアップしにくくなるという問題が生じる場合がある。
【0014】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、積層体を剥離基材から剥離する工程において、剥離基材と支持層との界面に剥がれが生じることが抑制される接着シート及びその製造方法、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の通りである。
<1> 剥離基材と、前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層と、前記剥離基材の前記表面のうち、前記粘着フィルム層が設けられていない領域の少なくとも一部に、前記剥離基材に接するように設けられた支持層と、を有し、前記剥離基材の前記表面は、前記支持層が設けられた領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理が施された領域を有する、接着シートである。
【0016】
<2> 前記剥離基材の前記表面のうち、前記コロナ放電処理が施された領域における表面エネルギーは、50mJ/m以上である、<1>に記載の接着シートである。
<3> 前記コロナ放電処理が施された領域における前記剥離基材の前記表面に対する前記支持層の粘着力は、20.0N/m以上である、<1>又は<2>に記載の接着シートである。
<4> 前記接着剤層は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体と、を含む、<1>〜<3>のうちいずれか1つに記載の接着シートである。
<5> 前記重合体が、グリシジル基含有アクリル共重合体及びグリシジル基含有メタクリル共重合体の少なくとも一方を含み、かつ、前記接着剤層全体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が2質量%以上50質量%以下である、<4>に記載の接着シートである。
【0017】
<6> 剥離基材と前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層とを有する接着剤層付き剥離基材を準備する工程と、前記接着剤層付き剥離基材において、前記剥離基材の前記表面のうち、前記接着剤層が設けられていない領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理を施す工程と、前記接着剤層を覆い、かつ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲及び前記コロナ放電処理が施された領域で前記剥離基材に接するように、前記接着剤層付き剥離基材に粘着フィルムを積層する工程と、前記粘着フィルムにおける前記剥離基材と接していない面から前記剥離基材に達するまで切り込みを入れ、切り込まれた前記粘着フィルムの一部を除去する工程と、を含む、<1>〜<5>のうちのいずれか一項に記載の接着シートの製造方法である。
【0018】
<7> <1>〜<5>のうちいずれか1つに記載の接着シート又は<6>に記載の接着シートの製造方法により得られた接着シートにおいて、接着剤層及び粘着フィルム層を含んで構成された積層体を剥離基材から剥離し、前記積層体における前記接着剤層側の面を半導体ウェハに貼り付けて積層体付き半導体ウェハを得る工程と、前記積層体付き半導体ウェハを、前記半導体ウェハ側の面から前記接着剤層と前記粘着フィルム層との界面まで切断する工程と、切断された前記半導体ウェハ及び前記接着剤層を、前記粘着フィルム層から剥離し、接着剤層付き半導体素子を得る工程と、前記接着剤層付き半導体素子における前記半導体素子を、前記接着剤層を介して被着体に接着する工程と、を含む、半導体装置の製造方法である。
<8> 前記被着体が、半導体素子搭載用の支持部材、又は、他の半導体素子である<7>に記載の半導体装置の製造方法である。
<9> <7>又は<8>に記載の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、積層体を剥離基材から剥離する工程において、剥離基材と支持層との界面に剥がれが生じることが抑制される接着シート及びその製造方法、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の接着シートの第1実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート100を1B−1B線に沿って切断した場合の模式端面図であり、(c)は、(a)に示す接着シート100を1C−1C線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図2】コロナ放電処理が施された領域について説明するための図である。
【図3】(a)は、本発明の接着シートの第2実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート110を2B−2B線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図4】(a)は、本発明の接着シートの第3実施形態を示す平面図であり、(b)は、(a)に示す接着シート120を3B−3B線に沿って切断した場合の模式端面図である。
【図5】半導体ウェハ及びウェハリング上に積層体が貼り付けられた状態を模式的に示す端面図である。
【図6】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
また本明細書において「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0022】
(接着シート)
本発明の接着シートは、剥離基材と、前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層と、前記剥離基材の前記表面のうち、前記粘着フィルム層が設けられていない領域の少なくとも一部に、前記剥離基材に接するように設けられた支持層と、を有し、前記剥離基材の前記表面は、前記支持層が設けられた領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理が施された領域を有する。
【0023】
本発明の接着シートは、上記構成であることにより、積層体を剥離基材から剥離する工程において、剥離基材と支持層との界面に剥がれが生じることが抑制される。
具体的には、本発明の接着シートにおいては、上記の通り、支持層が、剥離基材の表面のうちコロナ放電処理が施された領域に直接接触して設けられている。ここで、コロナ放電処理は、コロナ放電によって部材の表面を改質させる処理である。そして、剥離基材の表面にコロナ放電処理を行うと、表面が荒面化することで、他の部材との接着性が良好になると考えられる。そのため、本発明の接着シートでは、従来のように表面にコロナ放電処理が施されていない剥離基材を用いた場合に比べて、積層体を剥離基材から剥離する工程においても、剥離基材から支持層が剥離しにくいと考えられる。そして、支持層が剥離基材から剥離しにくいため、例えば剥離した支持層が装置内のロール等に巻き込まれること等を抑制することができる。
【0024】
また、本発明においては、上記の通り、剥離基材の前記表面のうち、前記接着剤層及び粘着フィルム層で構成される積層体が設けられた領域には、コロナ放電処理が施されていない。そのため、積層体を剥離基材から剥離しやすいという特性を維持しつつ、支持層が剥離基材から剥離しにくいという特性も得ることができる。
【0025】
そして、本発明においては、上記の通り、剥離基材の前記表面のうち、粘着フィルム層が設けられていない領域の少なくとも一部に支持層が設けられている。そのため、支持層が設けられていない場合に比べて、例えば接着シートを巻き芯に巻きつけても、重ねられた接着シート同士を支持層が支持するため、巻き圧が接着剤層に集中せず支持層に分散すると考えられる。よって本発明では、接着シートを巻き芯に巻きつけた接着シートロールの状態で保管しても、巻き圧が接着剤層に集中することで生じる巻き跡の形成が抑制される。すなわち本発明では、上記巻き跡の形成が抑制されること、積層体を剥離基材から剥離しやすいこと、及び積層体を剥離する工程において支持層が剥離基材から剥離されにくいことが達成される。
【0026】
本発明においては、剥離基材の表面のうちコロナ放電処理が施された領域における表面エネルギーが、50mJ/mよりも大きいことが好ましい。また前記表面エネルギーは、10000mJ/m以下であることがより好ましい。
ここで、本発明における表面エネルギーは、接線法により、液滴の画像の輪郭形状を円の一部と仮定し、円の中心を求め、円の接線と直線でなす角度を接触角として10点測定して、ヤング式より算出した値を意味する。
上記方法で得られた表面エネルギーの値が上記範囲であることが好ましいが、さらに、支持層の剥離を抑制する観点からは、上記測定を任意の10点において測定し、算出して得られた表面エネルギーの値のすべてが上記範囲内であることがより好ましい。
上記コロナ放電処理が施された領域における前記表面エネルギーが上記範囲であることにより、接着シートの積層体を剥離基材から剥離してシリコンウェハ等の被着体に貼り付ける工程において、支持層が剥離基材から剥離することが、より抑制される。
【0027】
上記コロナ放電処理が施された領域における前記表面エネルギーを制御する方法としては、例えば、コロナ放電処理条件のうち、放電圧の値を調整する方法があげられる。放電圧の値の好ましい範囲としては、例えば、10W・min/m以上500W・min/m以下が挙げられ、10W・min/m以上300W・min/m以下の範囲がより好ましい。
【0028】
一方、コロナ放電処理が施されていない領域における前記表面エネルギーとしては、積層体を剥離基材から剥離しやすくする観点から、例えば5mJ/m以上30mJ/m以下の範囲が挙げられる。
【0029】
本発明においては、上記コロナ放電が施された領域における剥離基材の表面に対する支持層の粘着力は、150.0N/m以上であることが好ましい。上記コロナ放電が施された領域における剥離基材の表面に対する支持層の粘着力が上記範囲であることにより、接着シートの積層体を剥離基材から剥離する工程において、支持層が剥離基材から剥離することがさらに抑制される。
また、積層体を剥離基材から剥離しやすくする観点からは、コロナ放電処理が施されていない領域における剥離基材の表面に対する粘着フィルム層の粘着力が1.0N/m以上100.0N/m以下であることが好ましく、またコロナ放電処理が施されていない領域における剥離基材の表面に対する接着層の粘着力が0.5N/m以上10.0N/m以下であることが好ましい。
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
<第1実施形態>
図1(a)は、本発明の接着シートの第1実施形態を模式的に示す上面図であり、図1(b)は図1(a)の1B−1B線に沿って切断したときの模式的な端面図であり、図1(c)は図1(a)の1C−1C線に沿って切断した時の模式的な端面図である。
【0032】
図1に示す接着シート100は、例えば、長尺の剥離基材1と、剥離基材1の面30(表面)上に部分的に設けられた接着剤層2と、接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2が設けられた領域の周囲で剥離基材1に接するように設けられた粘着フィルム層3と、粘着フィルム層3が設けられていない領域における剥離基材1の面30に、粘着フィルム層3と離間して設けられた支持層である粘着フィルム層4と、を含んで構成されている。また接着剤層2と粘着フィルム層3とで積層体10を構成している。なお、図1に示す接着シート100では、粘着フィルム層3及び粘着フィルム層4に同じ粘着フィルムを用いている。
【0033】
接着剤層2は、図1に示すように、剥離基材1の長手方向に沿って複数設けられている。またそれぞれの接着剤層2は、円形であり、かつ、剥離基材1の短手方向における中央部に形成され、互いに離間して設けられている。
ここで「剥離基材1の長手方向」とは、剥離基材1の長辺に平行な方向である。また「剥離基材1の短手方向」は、前記剥離基材1の長手方向と垂直な方向である。以下、剥離基材1の長手方向及び剥離基材1の短手方向を、それぞれ、単に「長手方向」及び「短手方向」と称する場合がある。
【0034】
また個々の粘着フィルム層3は、接着剤層2よりも大きな円形であり、それぞれがひとつの接着剤層2を覆うように積層されるとともに、接着剤層2が形成された領域の周囲において剥離基材1と直接接触して設けられ、粘着フィルム層3同士は互いに離間して設けられている。
さらに粘着フィルム層4は、剥離基材1の短手方向両端部に沿って連続して設けられ、剥離基材1の面30に直接接触して設けられている。このように、剥離基材1の短手方向両端部に粘着フィルム層4が設けられていることによって、巻き芯に接着シート100を巻きつけたときに、重ねられた接着シート同士を粘着フィルム層4が支持するため、巻き圧を接着剤層2に集中させず、粘着フィルム層4に分散させることで、巻き跡の形成が抑制される。
【0035】
そして、剥離基材1の面30において、粘着フィルム層4が設けられた領域の一部が、コロナ放電処理が施された領域となっている。そのため、剥離基材の表面にコロナ放電処理がまったく施されていない場合に比べて、粘着フィルム層4が剥離基材1から剥離しにくいものとなっている。
上記コロナ放電処理が施された領域は、上記の通り、粘着フィルム層4が設けられた領域の少なくとも一部に存在していればよく、断続的であっても、連続的であってもよい。
【0036】
図2は、上記コロナ放電処理が施された領域について説明するための図である。図2(a)に示すように、上記コロナ放電処理が施された領域5は、具体的には、例えば、剥離基材1の面30のうち、剥離基材1の短手方向両端部に、剥離基材1の長手方向に連続的に存在していてもよい。また図2(b)に示すように、上記コロナ放電処理が施された領域5が、例えば、剥離基材1の面30において、積層体10が形成された領域の四方を囲むように、積層体10と積層体10との間における剥離基材の短手方向両端部に、断続的に存在していてもよい。
【0037】
粘着フィルム層4を剥離基材1からより剥離しにくくする観点からは、上記コロナ放電処理が施された領域5が、剥離基材1の長手方向にそって連続的に存在することが好ましい。そして、上記観点から、上記コロナ放電処理が施された領域5が、粘着フィルム層4が形成された領域のうち、できるだけ大きな領域に存在することがより好ましく、粘着フィルム層4が形成された領域の全体が、上記コロナ放電処理が施された領域5であることがさらに好ましい。
また、例えば剥離基材1の短手方向において、剥離基材1の幅に対する積層体10の幅の割合が大きく、積層体10の端部が剥離基材に近い位置にある場合は、図2(b)のように断続的に上記コロナ放電処理が施された領域5を形成することが、積層体10が形成された領域を避けてコロナ放電処理を行いやすいという観点から望ましい。
【0038】
また、コロナ放電処理が施された領域5は、粘着フィルム層4が形成された領域からはみ出し、粘着フィルム層4が形成されていない領域に達していてもよい。ただし、接着シート100の製造過程において、粘着フィルム層3及び粘着フィルム層4以外の粘着フィルムを除去しやすくする観点からは、コロナ放電処理が施された領域5が、粘着フィルム層4が形成された領域からはみ出していない方が望ましい。さらに、接着剤層2と粘着フィルム層3とが積層した積層体10を剥離基材1から剥離しやすくする観点からは、積層体10が設けられた領域においては、コロナ放電処理が施された領域5が存在しないほうが望ましい。
【0039】
図1に示す接着シート100においては、粘着フィルム層4が剥離基材1の長手方向に連蔵して設けられ、剥離基材1の短手方向における粘着フィルム層4の端部のうち、剥離基材1の短手方向中央部側にある粘着フィルム層4の端部が、粘着フィルム層3の外周に沿った形となっているが、これに限られない。
例えば、図2(c)に示すように、粘着フィルム層4が、例えば、剥離基材1の面30において、積層体10が形成された領域の四方を囲むように、積層体10と積層体10との間における剥離基材の短手方向両端部に、断続的に設けられてもよい。その場合は、図2に示すように、断続的に設けられた粘着フィルム層4のそれぞれにおいて、粘着フィルム層4が設けられた領域の少なくとも一部が、上記コロナ放電処理が施された領域5であることが望ましい。
上記のように、粘着フィルム層4は、剥離基材1の長手方向に沿って、断続的に設けられていてもよく、連続的に設けられていてもよいが、上記巻き跡の発生を抑止する観点からは、連続的に設けられているほうが望ましい。
【0040】
なお、剥離基材1の面30において、コロナ表面処理が施された領域5とコロナ表面処理が施されていない領域とを見分ける方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。具体的には、コロナ放電処理を行うと、コロナ放電によって酸素等の気体成分が活発なプラズマ状態となり、コロナ放電の中の加速電子が樹脂表面(剥離基材1の面30)に衝突し、樹脂表面の分子鎖切断含酸素官能基付加が起こる。その結果、樹脂表面に極性基(OH基・カルボニル基等)が発生し、これらの極性基が親水性であるため、濡れ特性が向上する。よって表面張力が既知である検査試薬を該剥離基材表面(剥離基材1の面30)に滴下し、濡れ特性を測定することにより見分ける方法が挙げられる。
【0041】
また図1に示す接着シート100においては、上記の通り、粘着フィルム層3と同じ粘着フィルムを用いて支持層である粘着フィルム層4を設けているが、これに限られず、粘着フィルム層3と異なる材料の支持層を設けてもよい。ただし、製造プロセスを簡略化する観点では、同じ粘着フィルムを用いて粘着フィルム層3及び粘着フィルム層4を形成することが好ましく、これにより粘着フィルム層3及び粘着フィルム層4を一度に形成することができる。
【0042】
図1に示す接着シート100においては、接着剤層2及び粘着フィルム層3形状が円形であるが、これに限られず、接着剤層2を貼り付ける被着体の形状に応じて適宜選択される。
具体的には、接着剤層2の形状としては、半導体ウェハ等の被着体の貼り付けが可能な形状であれば特に制限はなく、例えば、平面形状として、円形、ウェハ形状(円の外周の一部が直線である形状)、四角形、五角形、六角形、八角形などが挙げられる。
【0043】
なお、接着剤層2において、被着体を貼り付ける部分以外の部分は無駄になるため、被着体として円形の平面形状を有する一般的な半導体ウェハを用いる場合には、接着剤層2は、円形の平面形状又は半導体ウェハの平面形状に合致する平面形状(半導体ウェハ形状)であることが好ましい。半導体ウェハの平面形状に合致する平面形状を接着剤層2が有していることにより、半導体ウェハをダイシングする工程が容易となる傾向がある。
【0044】
ただし、接着剤層の平面形状は、半導体ウェハの平面形状に完全に一致している必要はなく、例えば、半導体ウェハの平面形状よりもやや大きい平面形状であってもよい。また、一般的に半導体ウェハは円の外周の一部が直線である平面形状を有しているため、接着シートの平面形状が円形形状である場合でも、一般的な半導体ウェハへの接着剤層の貼り付け、及び、半導体ウェハのダイシングを容易に行うことが可能となる傾向にある。また、接着剤層2の外周の一部が粘着フィルム層3の外周の一部の近傍にあるようにするために、接着剤層2の外周の一部に凸部を有していてもよい。
【0045】
粘着フィルム層3の形状としては、ウェハリングと密着させることが可能な形状であれば特に制限はなく、例えば、平面形状として、円形、四角形、五角形、六角形、八角形、菱形形状、星型などが挙げられる。なお、現在のウェハリングの形状及び半導体素子の形状を考慮すると、粘着フィルム層3の平面形状は、円形もしくは円形に順ずる形状であることが好ましい。更に、半導体素子との貼付けを考慮すると、接着剤層2の平面形状と似た平面形状であることが好ましい。
【0046】
−接着シート100の製造方法−
次に、上記第1実施形態における接着シート100の製造方法について説明する。
接着シート100の製造方法は、例えば、剥離基材1と剥離基材1の表面上に部分的に設けられた接着剤層2とを有する接着剤層付き剥離基材を準備する準備工程と、接着剤層付き剥離基材において、剥離基材1の面30のうち、接着剤層2が設けられていない領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理を施すコロナ放電処理工程と、接着剤層2を覆い、かつ、接着剤層2が設けられた領域の周囲及びコロナ放電処理が施された領域で剥離基材1に接するように、接着剤層付き剥離基材に粘着フィルムを積層する粘着フィルム積層工程と、粘着フィルムにおける剥離基材1と接していない面から剥離基材1に達するまで切り込みを入れ、切り込まれた粘着フィルムの一部を除去する粘着フィルム切断工程と、を含む。
【0047】
以下、各製造工程についてより詳細に説明する。
上記準備工程としては、例えば、剥離基材1の面30上に接着剤の層を積層する接着剤層積層工程と、前記接着剤の層の前記剥離基材1に接しない側の面から前記剥離基材1に達するまで切り込みをいれ、前記切込まれた接着剤の層のうち、接着剤層2以外の層を除去し、所定の平面形状の接着剤層2を部分的に形成する接着剤層切断工程と、を含むものが挙げられるが、これに限られない。
上記準備工程の他の方法としては、例えば、剥離基材1にマスクをし、このマスク部以外の部分に、接着剤の層を形成させる工程を含むものも挙げられる。
【0048】
上記接着剤層積層工程及びマスク以外の部分に接着剤の層を形成させる工程においては、例えば、まず、接着剤層2を構成する材料(接着剤)を溶剤に溶解又は分散して接着剤層形成用ワニスとし、これを剥離基材1の面30上に塗布後、加熱により溶剤を除去する。一方、粘着フィルム積層工程において用いる粘着フィルムは、まず、粘着剤層を構成する材料を溶剤に溶解又は分散して粘着剤層形成用ワニスとし、これを基材フィルム上に塗布後、加熱により溶剤を除去し粘着フィルムを得る。なお、粘着フィルムの粘着層を保護するため、粘着剤層が形成された面に別の基材フィルムを貼り合わせてもよい。
【0049】
ここで、両層形成用ワニス(すなわち、接着剤層形成用ワニス及び粘着剤層形成用ワニス)の調製に使用する上記溶剤としては、各構成材料を溶解又は分散することが可能なものであれば特に限定されないが、層形成時の揮発性等を考慮すると、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させる等の目的で、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較的高沸点の溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、ワニスを調製した後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0050】
接着剤層積層工程における接着剤層形成用ワニスの剥離基材1への塗布方法、また第2の積層工程における粘着剤層形成用ワニスの基材フィルムへの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法等を用いることができる。
なお、接着剤層2と粘着フィルムとの貼り合わせ(すなわち、接着剤層2が形成された剥離基材1に粘着フィルムを貼り合わせること)は、従来公知の方法によって行うことができ、例えば、ラミネーター等を用いて行うことができる。
【0051】
上記コロナ放電処理工程においては、例えば、装置としてコロナ放電表面処理装置(ウェッジ社製、型番:CTW−2034型)を用い、処理条件を、放電圧:80W・min/m、フィルム搬送速度:5m/min、オゾン処理量:0.03g/mとしてコロナ放電処理を行う。
また、コロナ放電処理は、剥離基材1の表面30における短手方向両端部に行うことが好ましく、剥離基材1の短手方向両端から1〜10mmの幅の領域に行うことがより好ましく、1.5〜8mmの幅の領域に行うことがさらに好ましく、2〜7mmの幅の領域に行うことが最も好ましい。コロナ放電処理を上記領域に行うことにより、剥離基材1と粘着フィルム層4との密着力が十分に得られ、かつ、粘着フィルムの不要部分の除去が容易になり、生産性が向上する。
【0052】
<第2実施形態>
図3(a)は、本発明の接着シートの第2実施形態を模式的に示す上面図であり、図3(b)は図3(a)の2B−2B線に沿って切断したときの模式的な端面図である。
【0053】
図3に示す接着シート110は、支持層として、接着剤層22と粘着フィルム層23とが積層し、粘着フィルム層23が剥離基材1に接触していない支持層20を用いている点で異なる以外は、上記第1実施形態と同様である。
図3に示す接着シート110においても、剥離基材1の面30において、支持層20が設けられた領域の少なくとも一部が、コロナ放電処理が施された領域となっているため、剥離基材の表面にコロナ放電処理がまったく施されていない場合に比べて、支持層20が剥離基材1から剥離しにくい。
【0054】
−接着シート110の製造方法−
接着シート110の製造方法は、例えば、剥離基材1に部分的にコロナ放電処理を施すコロナ放電処理工程と、コロナ放電処理を施された剥離基材1の面30上に接着剤の層を積層する第1の積層工程と、前記接着剤の層の前記剥離基材1に接する側と反対側の面から前記剥離基材1に達するまで切り込みをいれ、前記切込まれた接着剤の層のうち、前記接着剤層2及び接着剤層22以外の層を除去し、所定の平面形状の接着剤層2及び接着剤層22を部分的に形成する第1の切断工程と、接着剤層2が部分的に形成された剥離基材1の面30に対し、前記接着剤層2、接着剤層22、及び前記剥離基材1を覆うように、粘着フィルムを積層する第2の積層工程と、前記粘着フィルムの前記剥離基材1に接する側と反対側の面から前記剥離基材1に達するまで切り込みを入れ、粘着フィルム層3及び粘着フィルム層23以外の粘着フィルムを除去することで、剥離基材1の面30におけるコロナ放電処理が施されていない領域に形成された接着剤層2及び粘着フィルム層3からなる積層体10並びにコロナ放電処理が施された領域に形成された接着剤層22及び粘着フィルム層23からなる支持層20を形成する第2の切断工程と、を含む。
各工程の詳細については、上記第1実施形態と同様である。
【0055】
<第3実施形態>
図4(a)は、本発明の接着シートの第2実施形態を模式的に示す上面図であり、図4(b)は図4(a)の3B−3B線に沿って切断したときの模式的な端面図である。
【0056】
図4に示す接着シート120は、支持層として、接着剤層32と粘着フィルム層33とが積層した支持層31を用いている点で異なる以外は、上記第1実施形態と同様である。
支持層31においては、接着剤層32よりも粘着フィルム層33の面積が大きく、接着剤層32よりも剥離基材1の短手方向中央部側の領域においても、接着剤層32よりも剥離基材1の短手方向両端部側の領域においても、粘着フィルム層33が剥離基材1の面30に直接接触している。
【0057】
図4に示す接着シート120においても、剥離基材1の面30において、支持層31が設けられた領域の少なくとも一部が、コロナ放電処理が施された領域となっているため、剥離基材の表面にコロナ放電処理がまったく施されていない場合に比べて、支持層31が剥離基材1から剥離しにくい。
図4に示す接着シート120では、接着剤層32が剥離基材1と直接接触する領域の少なくとも一部だけでなく、粘着フィルム層33が剥離基材1と直接接触する領域の少なくとも一部においても、剥離基材1の面30にコロナ放電処理が施されていることが望ましい。それにより、例えば接着剤層32と粘着フィルム層33との間の粘着力が弱い場合でも、粘着フィルム層33が剥離基材1から剥離しにくいことにより、支持層31の剥離基材1からの剥離が抑制される。
【0058】
なお、図4に示す接着シート120では、接着剤層32よりも剥離基材1の短手方向中央部側の領域及び短手方向両端部側の領域の両方において、粘着フィルム層33が剥離基材1の面30に直接接触しているが、これに限られない。例えば、接着剤層32よりも剥離基材1の短手方向中央部側の領域及び短手方向両端部側の領域のいずれか一方のみにおいて、粘着フィルム層33が剥離基材1の面30に直接接触していてもよい。
【0059】
−接着シート120の製造方法−
接着シート120の製造方法は、例えば、剥離基材1の接着剤層32が形成される領域の少なくとも一部に部分的にコロナ放電処理を施す第1のコロナ放電処理工程と、コロナ放電処理を施された剥離基材1の面30上に接着剤の層を積層する第1の積層工程と、前記接着剤の層の前記剥離基材1に接する側と反対側の面から前記剥離基材1に達するまで切り込みをいれ、前記切込まれた接着剤の層のうち、前記接着剤層2及び接着剤層32以外の層を除去し、所定の平面形状の接着剤層2及び接着剤層32を部分的に形成する第1の切断工程と、接着剤層2が部分的に形成された剥離基材1の面30における接着剤層2及び接着剤層32が形成されていない領域のうち、粘着フィルム層33が剥離基材1に直接接触して形成される領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理を施す第2のコロナ放電処理工程と、コロナ放電処理を施された剥離基材1の面30に対し、前記接着剤層2、接着剤層32、及び前記剥離基材1を覆うように、粘着フィルムを積層する第2の積層工程と、前記粘着フィルムの前記剥離基材1に接する側と反対側の面から前記剥離基材1に達するまで切り込みを入れ、粘着フィルム層3及び粘着フィルム層33以外の粘着フィルムを除去することで、剥離基材1の面30におけるコロナ放電処理が施されていない領域に形成された接着剤層2及び粘着フィルム層3からなる積層体10並びにコロナ放電処理が施された領域に形成された接着剤層32及び粘着フィルム層33からなる支持層31を形成する第2の切断工程と、を含む。
各工程の詳細については、上記第1実施形態と同様である。
以上、本発明の接着シート及び接着シートの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0060】
以下、本発明の接着シートの各構成要素について詳細に説明する。
【0061】
<剥離基材>
剥離基材1は、接着シートの使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものであり、かかる剥離基材1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルムなどのポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等を使用することができる。また、紙、不織布、金属箔等も使用することができる。
この中でも特に、コロナ放電処理によって粘着フィルムとの粘着力が向上しやすいという観点で好ましい剥離基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0062】
また、剥離基材1の接着剤層2と接する側の面は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で表面処理されていてもよい。
【0063】
剥離基材1の厚さは、使用時の作業性を損なわない範囲で適宜選択することができるが、10〜500μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜50μmであることが特に好ましい。
<接着剤層>
本発明における接着剤層には、熱可塑性成分、熱重合性成分、又は高エネルギー線成分のいずれか、またはこれらを組み合わせて用いることができる。
本発明における接着剤層には、例えば、熱可塑性成分を用い、これに熱重合性成分、高エネルギー線重合性成分等を含有させることができる。このような成分を含有する組成とすることにより、接着剤層には、高エネルギー線(例えば、電子線、紫外線、放射線等)や熱で硬化する特性を持たせることができる。また、熱重合性成分や高エネルギー線重合性成分等の硬化性成分を主に用いる構成でもよい。
【0064】
接着剤層に用いられる熱可塑性成分としては、熱可塑性を有する樹脂、又は少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であれば特に制限はないが、例えば、熱可塑性樹脂(1)Tg(ガラス転移温度)が10〜100℃であり、且つ、重量平均分子量が5000〜200000であるもの、又は、熱可塑性樹脂(2)Tgが−50〜50℃であり、且つ、重量平均分子量が100000〜1000000であるものが好ましく用いられる。
【0065】
上記熱可塑性樹脂(1)としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、中でもポリイミド樹脂を使用することが好ましい。
【0066】
上記熱可塑性樹脂(1)のより好ましいものの一つとしてのポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させることによって得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
【0067】
また、上記熱可塑性樹脂(2)のうち好ましいものの一つとして、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重合体が挙げられる。かかる重合体における官能基としては、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、中でもグリジシル基が好ましい。より具体的には、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーを含有するグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体等が好ましく、さらにこれらは、接着剤層の構成原料として用いられる、硬化前のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と非相溶であることが好ましい。
【0068】
上記官能性モノマーに由来する構造単位を有する重合体であって、重量平均分子量が10万以上である重合体としては、例えば、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーを含有し、かつ重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体等が挙げられ、その中でも硬化前のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と非相溶であるものが好ましい。
【0069】
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、グリシジル基含有(メタ)アクリルエステル共重合体、グリシジル基含有アクリルゴム等を使用することができ、グリシジル基含有アクリルゴムがより好ましい。本発明でいうグリシジル基含有アクリルゴムとは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等からなるグリシジル基を含有する共重合体である。
【0070】
上記官能性モノマーとは、官能基を有するモノマーのことをいい、このようなモノマーとしては、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等を使用することが好ましい。重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体として具体的には、例えば、ナガセケムテックス株式会社製のHTR−860P−3(商品名)等が挙げられる。
【0071】
上記グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー(官能性モノマー)に由来する構造単位の量は、加熱により硬化して網目構造を効果的に形成するためには、モノマーに由来する構造単位全量を基準として0.5〜50質量%が好ましい。また、接着力を確保できるとともに、ゲル化を防止することができるという観点からは、0.5〜6.0質量%がより好ましく、0.8〜5.0質量%がさらに好ましく、1.0〜4.0質量%が特に好ましい。
【0072】
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー以外の官能性モノマーと共重合させることも可能であり、エポキシ基含有モノマー以外の上記官能性モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、エチル(メタ)アクリレートとは、エチルアクリレート又はエチルメタクリレートを示す。エポキシ基含有モノマー以外の官能性モノマーを組み合わせて使用する場合の混合比率は、グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して決定し、Tgが−10℃以上となるようにすることが好ましい。Tgが−10℃以上であると、未硬化状態での接着剤層のタック性が適当であり、取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。
【0073】
上記官能性モノマーを重合させて、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体を製造する場合、その重合方法としては特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合等の方法を使用することができる。官能性モノマーに由来する構造単位を有する重合体の重量平均分子量は、10万以上であるが、30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が適当であり、また、フロー性が適当であるため、配線の回路充填性が確保できる傾向にある。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0074】
また、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、10〜400質量部が好ましい。この範囲にあると、貯蔵弾性率及び成型時のフロー性抑制が確保でき、また高温での取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。また、前記重合体の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、15〜350質量部がより好ましく、20〜300質量部が特に好ましい。
【0075】
接着剤層に用いられる熱重合性成分としては、熱により重合するものであれば特に制限は無く、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ化合物が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、接着シートとしての耐熱性を考慮すると、熱によって硬化して接着作用を及ぼす熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
【0076】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられ、特に、耐熱性、作業性、信頼性に優れる接着シートが得られる点でエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0077】
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを使用することができる。
【0078】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコートシリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009)、ダウケミカル社製のDER−330、DER−301、DER−361、及び、東都化成株式会社製のYD8125、YDF8170等が挙げられる。
【0079】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN−201、ダウケミカル社製のDEN−438等が、またo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1025、EOCN−1027や、東都化成株式会社製、YDCN700−10等が挙げられる。
【0080】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等が挙げられる。
【0081】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート604、東都化成株式会社製のYH−434、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD−X及びTETRAD−C、住友化学株式会社製のELM−120等が挙げられる。
複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、ダイセル化学工業(株)製 エポリードシリーズ、セロキサイドシリーズ等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
エポキシ樹脂を使用する際は、エポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ジシアンジアミド、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。なお、本発明においてエポキシ樹脂硬化剤とは、エポキシ基に触媒的に作用し架橋を促進するような、いわゆる硬化促進剤と呼ばれるものも含む。
【0083】
上記エポキシ樹脂硬化剤としてのフェノール樹脂の中で好ましいものとしては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:フェノライトLF4871、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H−1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65及び三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVR等が挙げられる。
【0084】
熱重合性成分としてエポキシ樹脂を用いる場合、接着剤層全体に対するエポキシ樹脂の含有量は、接着剤層の弾性率を最適化する観点から2質量%以上50質量%以下が望ましく、4質量%以上40質量%以下がより望ましく、5.5質量%以上35質量%以下が更に望ましい。
また、エポキシ樹脂硬化剤を用いる場合、接着剤層全体に対するエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、接着剤層の弾性率を最適化する観点から2質量%以上45質量%以下が望ましく、3質量%以上40質量%以下がより望ましく、5質量%以上35質量%以下が更に望ましい。
【0085】
また、接着剤層には、光重合開始剤(例えば、放射線等の高エネルギー線の照射によって遊離ラジカルを生成するようなもの)を添加することもできる。かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
【0086】
また、接着剤層には、放射線照射等の高エネルギー線により塩基及びラジカルを発生する光開始剤を添加してもよい。これにより、ダイシング前又はダイシング後の高エネルギー線照射により、ラジカルが発生して高エネルギー線重合性成分が硬化するとともに、系内に熱硬化性樹脂の硬化剤である塩基が発生し、その後の熱履歴による接着剤層の熱硬化反応を効率的に行うことができるため、光反応と熱硬化反応のそれぞれの開始剤を添加する必要がなくなる。
【0087】
放射線照射により塩基及びラジカルを発生する光開始剤としては、例えば、2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製、イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製、イルガキュア369)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0088】
接着剤層には、高エネルギー線で遊離ラジカルを生成させる上記光重合開始剤と、高エネルギー線により塩基を発生させる下記の化合物を別に添加してもよい。
放射線照射によって塩基を発生する化合物は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であって、発生した塩基が、熱硬化性樹脂の硬化反応速度を上昇させるものであり、光塩基発生剤ともいう。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、さらに9以上の塩基がより好ましい。
【0089】
また、上記放射線照射によって塩基を発生する化合物は、波長150〜750nmの光照射によって塩基を発生する化合物を用いることが好ましく、一般的な光源を使用した際に効率良く塩基を発生させるためには250〜500nmの光照射によって塩基を発生する化合物がより好ましい。
【0090】
このような放射線照射によって塩基を発生する化合物の例としては、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0091】
また、放射線又は熱で硬化する接着剤層の貯蔵弾性率を大きくするために、例えば、エポキシ樹脂の使用量を増やしたり、グリシジル基濃度の高いエポキシ樹脂又は水酸基濃度の高いフェノール樹脂を使用する等してポリマー全体の架橋密度を上げたり、無機フィラーを添加するといった方法を用いることができる。
接着剤層の貯蔵弾性率を大きくするための無機フィラーは、後述する。
【0092】
更に、接着剤層には、可とう性や耐リフロークラック性を向上させる目的で、熱重合性成分と相溶性がある高分子量成分を添加することができる。このような高分子量樹脂としては、特に限定されないが、例えばフェノキシ樹脂、高分子量熱重合性成分、超高分子量熱重合性成分等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
また、接着剤層には、その取り扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性付与等を目的として、無機フィラーを添加することもできる。無機フィラーとしては、特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられ、フィラーの形状は特に制限されるものではない。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。 これらのなかでも、熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカなどが好ましい。
【0094】
また、無機フィラーの平均粒径は0.005μm〜1.0μmが好ましく、これより小さくても大きくても接着性が低下する可能性がある。
無機フィラーの配合量は、接着剤層100質量%に対して1〜20質量%であることが好ましい。前記配合量が1質量%未満では添加効果が得られない傾向があり、20質量%を超えると、接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす傾向がある。
【0095】
接着剤層の厚さは、半導体素子搭載用の支持部材等の被着体への接着性は十分に確保しつつ、半導体ウェハへの貼り付け作業及び貼り付け後のダイシング作業に影響を及ぼさない範囲であることが望ましい。かかる観点から、接着剤層の厚さは1〜300μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましく、10〜100μmであることが特に好ましい。厚さが1μm未満であると、十分なダイボンド接着力を確保することが困難となる傾向があり、300μmを超えると、貼り付け作業やダイシング作業への影響等の不具合が生じる傾向がある。
【0096】
<粘着フィルム>
以下、粘着フィルム層3、粘着フィルム層4、粘着フィルム層23、及び粘着フィルム層33に用いられる粘着フィルムについて説明する。
粘着フィルムとしては、基材フィルムに粘着剤層を設けたものが好ましい。この場合、粘着フィルム層3における接着剤層2と接する側の層、粘着フィルム層4における剥離基材1と接する側の層、粘着フィルム層23における接着剤層22と接する側の層、及び粘着フィルム層33における接着剤層32及び剥離基材1と接する側の層が上記粘着剤層となっている。
【0097】
粘着フィルムに使用する基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポイエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。
また、上記基材フィルムは異なる2種類以上のフィルムを積層したものであってもよい。
【0098】
粘着フィルムを構成する上記粘着剤層としては、高エネルギー線又は熱によって硬化する(すなわち、粘着力を制御できる)ものが好ましく、高エネルギー線によって硬化するもの(すなわち、高エネルギー線重合性成分を含むもの)がより好ましく、紫外線によって硬化するものが特に好ましい。
ここで、高エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、放射線等が挙げられる。
【0099】
粘着剤層が高エネルギー線重合性成分を含むことにより、半導体ウェハ等の被着体に接着剤層を貼り付けた後、ダイシングを行う前に放射線光照射してダイシング時の粘着力を向上させることや、逆にダイシングを行った後に放射線光照射して粘着力を低下させることでピックアップを容易にすることができる。
本発明において、このような高エネルギー線重合性成分としては、従来放射線重合性のダイシングシートに使用されていた化合物を特に制限なく使用することができる。また、熱硬化性成分を含有させることにより、半導体素子を、これを搭載すべき支持部材に搭載するときの熱や、半田リフローを通るときの熱等によって、接着剤層が硬化し、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0100】
粘着剤層に用いられる高エネルギー線重合性成分として、例えば、放射線重合性成分が挙げられる。放射線重合性成分としては、特に制限されないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート等を使用することができる。
【0101】
また、粘着剤層の厚さは、接着剤層との密着力を制御する観点から、1〜200μmであることが好ましく、2〜180μmであることがより好ましく、5〜150μmであることが特に好ましい。
また粘着フィルム全体の厚さは、容易にダイシング及びピックアップを可能にするという観点から、10μm以上500μm以下が好ましく、25μm以上300μm以下がより好ましい。
【0102】
以上説明したような構成の接着シートに放射線等の高エネルギー線を照射すると、照射後には接着剤層2と粘着フィルム層3との界面の粘着力が大きく低下し、半導体素子に接着剤層2を保持したまま粘着フィルム層3から容易にピックアップすることが可能となる。
【0103】
本発明の接着シートにおいて、接着剤層2と粘着フィルム層3との界面の粘着力を低下させる方法としては、放射線等の高エネルギー線の照射のみで粘着力を低下させる方法以外に、高エネルギー線の照射と同時に又は照射後に硬化反応を促進する目的で加熱を併用する方法が挙げられる。加熱を併用することにより、より低温短時間での粘着力の低下が可能となる。加熱温度は、接着剤層の分解点以下であれば特に制限は受けないが、50〜170℃の温度が好ましい。
【0104】
(半導体装置の製造方法)
本発明の接着シートを用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
本発明の接着シートは、剥離基材がキャリアフィルムの役割を果たしており、例えば、2つのロール及び楔状の部材とに支持されながら、その一端が円柱状の巻芯に接続された状態で巻回され第1のロールを形成し、他端が円柱状の巻芯に接続された状態で巻回され第2のロールを形成している。そして、第2のロールの巻芯には、当該巻芯を回転させるための巻芯駆動用モータが接続されており、接着シートにおける積層体が剥離された後の剥離基材が所定の速度で巻回されるようになっている。
【0105】
まず、巻芯駆動用モータが回転すると、第2のロールの巻芯が回転し、第1のロールの巻芯に巻回されている接着シートが第1のロールの外部に引き出される。そして、引き出された接着シートは、移動式のステージ上に配置された円板状の半導体ウェハ及びそれを囲むように配置されたウェハリング上に導かれる。
【0106】
次に、剥離基材から、接着剤層及び粘着フィルム層からなる積層体が剥離される。このとき、接着シートの剥離基材側から楔状の部材が当てられており、剥離基材は部材側へ鋭角に曲げられ、剥離基材と積層体との間に剥離起点が作り出されることとなる。更に、剥離起点がより効率的に作り出されるように、剥離基材と積層体との境界面にエアーが吹き付けられている。
【0107】
このようにして剥離基材と積層体との間に剥離起点が作り出された後、粘着フィルム層における接着剤層側の面がウェハリングと密着し、接着剤層が半導体ウェハと密着するように積層体の貼り付けが行われる。このとき、ロールによって積層体は半導体ウェハ及びウェハリングに圧着されることとなる。そして半導体ウェハ及びウェハリング上への積層体の貼り付けが完了する。
なお図5は、半導体ウェハ及びウェハリング上に積層体が貼り付けられた状態を模式的に示す端面図である。図5に示すように、基材フィルム3Aと粘着剤層3Bとからなる粘着フィルム層3のうち、粘着剤層3B側の面が、ウェハリング14と密着している。また接着剤層2における粘着フィルム層3と反対側の面が、半導体ウェハ12と密着している。以上のようにして、積層体10が半導体ウェハ12及びウェハリング14に貼り付けられている。
【0108】
以上のような手順により、半導体ウェハへの第2の積層体の貼り付けを、自動化された工程で連続して行うことができる。このような半導体ウェハへの積層体の貼り付け作業を行う装置としては、例えば、リンテック株式会社製のRAD−2500(商品名)等が挙げられる。
【0109】
そして、このような工程により積層体を半導体ウェハに貼り付ける場合、接着シートを用いることにより、剥離基材と積層体との間の剥離起点(剥離基材と粘着剤層との間の剥離起点)を容易に作り出すことができ、剥離不良の発生を十分に抑制することができる。
【0110】
次に、上記の工程により積層体が貼り付けられた半導体ウェハを、切削部材、例えばダイシング刃により必要な大きさにダイシングして、接着剤層が付着した半導体素子を得る。ここで更に、洗浄、乾燥等の工程を行ってもよい。このとき、接着剤層により半導体ウェハは粘着剤層に十分に粘着保持されているので、上記各工程中に半導体ウェハやダイシング後の半導体素子が脱落することが十分に抑制される。
【0111】
次に、放射線等の高エネルギー線を接着剤層に照射し、接着剤層の一部を重合硬化させる。この際、高エネルギー線照射と同時に又は照射後に、硬化反応を促進する目的で更に加熱を行ってもよい。接着剤層への高エネルギー線の照射は、粘着フィルム層の接着剤層が設けられていない側の面から行う。したがって、高エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着フィルム層は光透過性であることが必要である。なお、高エネルギー線として電子線を用いる場合には、粘着フィルム層は必ずしも光透過性である必要はない。
【0112】
高エネルギー線照射後、ピックアップすべき半導体素子を、例えば吸引コレットによりピックアップする。この際、ピックアップすべき半導体素子を粘着剤層の下面から、例えば針扞等により突き上げることもできる。接着剤層を硬化させることにより、半導体素子のピックアップ時において、接着剤層と粘着剤層との界面で剥離が生じやすくなり、接着剤層が半導体素子の下面に付着した状態でピックアップされることとなる。そして、接着剤層が付着した半導体素子を、接着剤層を介して半導体素子搭載用の支持部材に載置し、加熱を行う。加熱により接着剤層は接着力が発現し、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着が完了する。その後、必要に応じてワイヤボンド工程や封止工程等を経て、半導体装置が製造される。
【0113】
(半導体装置)
図6は、上述した半導体装置の製造方法により製造される本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【0114】
図6に示すように、半導体装置300は、半導体素子搭載用の支持部材となる有機基板70上に、接着剤層2及び半導体素子72からなる接着剤層付き半導体素子が2つ積層されている。また、有機基板70には、回路パターン74及び端子76が形成されており、この回路パターン74と2つの半導体素子72とが、ワイヤボンド78によってそれぞれ接続されている。そして、これらが封止材80により封止され、半導体装置300が形成されている。この半導体装置300は、上述した本発明の半導体装置の製造方法により、本発明の接着シート100を用いて製造されるものである。
以上、本発明の半導体装置の製造方法及び半導体装置の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
(接着剤層形成用ワニスの作製)
まず、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:YDCN−703、東都化成(株)製、エポキシ当量:220)60質量部、及び、エポキシ樹脂硬化剤として低吸水性フェノール樹脂(商品名:XLC−LL、三井化学(株)製、フェノールキシレングリコールジメチルエーテル縮合物)40質量部に、シクロヘキサノン1500質量部を加えて撹拌混合し、第1のワニスを調製した。
【0117】
次に、この第1のワニスに、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:NUC A−189、日本ユニカー(株)製)1.5質量部、及び、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(商品名:NCU A−1160、日本ユニカー(株)製)3質量部を加え、更に無機物フィラーとしてシリカフィラー(商品名:R972V、日本アエロジル(株)製)32質量部を加えて撹拌混合した後、ビーズミルにより分散処理を行うことで第2のワニスを調製した。
【0118】
次に、この第2のワニスに、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体として、エポキシ基含有アクリル系共重合体(商品名:HTR−860P−3、帝国化学産業(株)製、重量平均分子量:80万)200質量部、及び、硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(商品名:キュアゾール2PZ−CN、四国化成(株)製)0.5質量部を加えて撹拌混合し、接着剤層形成用ワニスを調整した。
【0119】
(実施例1)
上記接着剤層形成用ワニスを、剥離基材である膜厚50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:テイジンピューレックスA31、帝人デュポンフィルム(株)製)上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥を行い、膜厚10μmの未硬化状態の接着剤層を形成した(接着剤層積層工程)。
得られた接着剤層に対して、剥離基材への切り込み角度が90°となるように調整して、直径210mm(φ)の円形プリカット加工を行った(接着剤層切断工程)。
【0120】
粘着剤層は、放射線重合性成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬(株)製、商品名:カヤラッドDPHA)63質量部,光重合開始剤として2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製、商品名:イルガキュア907)5質量部、ワニス調整用溶媒として、シクロヘキサノン32質量部を加え、60分以上攪拌混合し、粘着剤層形成用ワニスを調製した。この粘着剤層形成用ワニスを膜厚38μmの基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンピューレックスA53)上に塗布(膜厚20μm)し、110℃で10分間加熱乾燥を行い、粘着フィルムを得た。得られた粘着フィルムにおける粘着層が形成された面にポリエチレン製フィルム(膜厚100um)と貼り合せ、基材フィルム付き粘着フィルムを得た。
【0121】
その後、接着剤層の不要部分を除去し、剥離基材の接着剤層が形成された面における短手方向両端から幅2.5mmまでの範囲を、剥離基材の長手方向に連続的に、表面エネルギーが100mJ/mとなるよう、コロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理が施された領域における剥離基材の表面に対する上記粘着層の粘着力は、257N/mであった。
コロナ放電処理は、具体的には、コロナ放電表面処理装置(ウェッジ社製、型番:CTW−2034型)を用い、放電圧:80W・min/m、フィルム搬送速度:5m/min、オゾン処理量:0.03g/mの条件で行った。
【0122】
さらに、基材フィルム付き粘着フィルムからポリエチレン製フィルムを剥離した粘着フィルムを、接着剤層と接するように、室温、線圧1kg/cm、速度0.5m/分の条件で貼付けた。(粘着フィルム積層工程)そして、粘着フィルムに対して、接着剤層と同心円状に直径290mm(φ)の円形プリカット加工を行い、粘着フィルムの不要部分を除去した(粘着フィルム切断工程)。これにより、図1に示す接着シート100を得た。
【0123】
(実施例2)
コロナ放電処理が施された領域の表面エネルギーを700mJ/mに調整(すなわち、コロナ放電処理の放電圧を80W・min/mから450W・min/mに変更)した以外は実施例1と同様にして、図1に示す接着シート100を得た。コロナ放電処理が施された領域における剥離基材の表面に対する上記粘着層の粘着力は、659N/mであった。
【0124】
(実施例3)
コロナ放電処理を施す領域の幅を8mmとした以外は実施例1と同様にして、図1に示す接着シート100を得た。
【0125】
(比較例1)
コロナ放電処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして接着シートを得た。剥離基材の表面における表面エネルギーは25mJ/mであり、剥離基材の表面に対する上記粘着層の粘着力は、65N/mであった。
【0126】
(評価試験)
上記の実施例1〜3及び比較例1で得た接着シートを、円形形状を有する積層体(剥離基材付き)の数が300枚になるように巻き取り、接着シートロールを作製した。得られた接着シートロールを2週間冷蔵庫内(5℃)で放置した。その後、接着シートロールを室温に戻してからロールを解き、積層体を剥離基材から剥離して接着剤層側から半導体ウェハに貼り付けたときに、接着シート端部の支持層が剥離基材から剥がれたかどうかを目視にて、以下の評価基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0127】
−評価基準−
○:あらゆる角度から観察しても粘着剤層の剥離基材からの剥がれを確認できない。
△:フィルム上面からは粘着剤層の剥離基材からの剥がれが確認できないが、フィルムの角度を変え観察することで剥がれが確認できる。
×:フィルム上面から観察し、剥離基材からの剥がれが確認できる。
【0128】
【表1】

【0129】
表1に示されるように、本発明の接着シート(実施例1〜3)によれば、比較例の接着シート(比較例1)と比較して、接着シート端部における支持層が剥離基材から剥がれることを十分に抑制することができることが明らかである。すなわち、本発明になる接着シート(実施例1〜3)は、接着剤層を半導体ウェハに貼り付ける際に接着シート端部の支持層剥がれを十分に抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0130】
1…剥離基材、2,22,32…接着剤層、3,4,23,33…粘着フィルム層、10…積層体、20,31…支持層、30…面、72…半導体素子、100,110,120…接着シート、300…半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離基材と、
前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、
前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層と、
前記剥離基材の前記表面のうち、前記粘着フィルム層が設けられていない領域の少なくとも一部に、前記剥離基材に接するように設けられた支持層と、を有し、
前記剥離基材の前記表面は、前記支持層が設けられた領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理が施された領域を有する、接着シート。
【請求項2】
前記剥離基材の前記表面のうち、前記コロナ放電処理が施された領域における表面エネルギーは、50mJ/m以上である、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記コロナ放電処理が施された領域における前記剥離基材の前記表面に対する前記支持層の粘着力は、20.0N/m以上である、請求項1又は請求項2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記接着剤層は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体と、を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の接着シート。
【請求項5】
前記重合体が、グリシジル基含有アクリル共重合体及びグリシジル基含有メタクリル共重合体の少なくとも一方を含み、かつ、前記接着剤層全体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が2質量%以上50質量%以下である、請求項4に記載の接着シート。
【請求項6】
剥離基材と前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層とを有する接着剤層付き剥離基材を準備する工程と、
前記接着剤層付き剥離基材において、前記剥離基材の前記表面のうち、前記接着剤層が設けられていない領域の少なくとも一部に、コロナ放電処理を施す工程と、
前記接着剤層を覆い、かつ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲及び前記コロナ放電処理が施された領域で前記剥離基材に接するように、前記接着剤層付き剥離基材に粘着フィルムを積層する工程と、
前記粘着フィルムにおける前記剥離基材と接していない面から前記剥離基材に達するまで切り込みを入れ、切り込まれた前記粘着フィルムの一部を除去する工程と、
を含む、請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の接着シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項に記載の接着シート又は請求項6に記載の接着シートの製造方法により得られた接着シートにおいて、接着剤層及び粘着フィルム層を含んで構成された積層体を剥離基材から剥離し、前記積層体における前記接着剤層側の面を半導体ウェハに貼り付けて積層体付き半導体ウェハを得る工程と、
前記積層体付き半導体ウェハを、前記半導体ウェハ側の面から前記接着剤層と前記粘着フィルム層との界面まで切断する工程と、
切断された前記半導体ウェハ及び前記接着剤層を、前記粘着フィルム層から剥離し、接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
前記接着剤層付き半導体素子における前記半導体素子を、前記接着剤層を介して被着体に接着する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記被着体が、半導体素子搭載用の支持部材、又は、他の半導体素子である請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−87225(P2012−87225A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235546(P2010−235546)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】