説明

接着フィルム及びその製造方法

【課題】 本発明は、電子部品、他発熱部品の熱伝導性を必要とされる分野において、熱ラミネート、熱プレス等により、低温低圧で熱圧着でき、ポリイミド等のフィルム材料、金属、シリコン、エポキシ、セラミック等の被着材への接着性に優れ、高熱伝導率を有し、かつ被着材の反りやクラックが生じない接着フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤層を有し、前記接着剤層の中央部と外表面部における無機充填材の含有密度が異なる接着フィルム。および前記接着剤層を離型性フィルムに形成し、前記接着剤層どうしを貼り合わせてなる接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品や半導体デバイスの組立工程に用いられる接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、半導体機器内部の基板上の部品実装密度の増加が進み、半導体素子も高集積化して単位面積あたりの発熱量が大きくなったため、熱拡散をよくすることが望まれるようになっている。それに伴い、熱対策が重要になっているが、この熱対策として放熱部材を熱伝導率の高い接着剤で貼り付けるという方法が用いられている。通常、接着剤には熱伝導率を高くするために無機充填材を添加したものが用いられ、異種材料との接着に使用することから高い接着性、および熱膨張率の違いにより発生するそりやクラックを生じないことが要求されている。
【0003】
上記要求を満足する方法として、無機充填材を含む樹脂層の両面に、無機充填材を含まない接着剤層を貼り合わせた3層構成の接着フィルムを作製する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この方法では高熱伝導層の両側に低熱伝導層があるため、高熱伝導率を得るためには、両側の接着剤層を薄くする必要があるが、接着剤層を薄くすると充分な接着性が得られないため、この方法では熱伝導率を高くできないという問題を有していた。また、このような接着フィルムは、熱膨張率の違いにより発生するそりやクラックを生じないことが好ましく、そのためには接着剤が低弾性率であり、熱応力を緩和することが望まれる。しかしながら、無機充填材を多量に配合していながら低温低圧で高い接着性を得るためには接着剤成分中に濡れ性のよい低分子化合物成分を多くする必要があるが、前記方法の接着フィルムでは、樹脂成分中の熱硬化成分の割合が大きいため、応力緩和できず、被着材のそりやクラックが問題となっていた。逆に、被着材のそりやクラックを回避するために熱可塑性成分を多く配合した場合には、プレスを用い、高温、高圧で樹脂を熱で溶融させて被着体に接着させることが必要となるため、従来の接着フィルムでは、低温貼り付け性および応力緩和性の双方を満足させることは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−12834号公報
【特許文献2】特開2000−290613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたもので、電子部品、他発熱部品の熱伝導性を必要とされる分野において、熱ラミネート、熱プレス等により、低温低圧で熱圧着でき、ポリイミド等のフィルム材料、金属、シリコン、エポキシ、セラミック等の被着材への接着性に優れ、高熱伝導率を有し、かつ被着材の反りやクラックが生じない接着フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的は、熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤層を有し、前記接着剤層の中央部と外表面部における無機充填材の含有密度が異なることを特徴とする接着フィルムにて達成される。また、熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤層を離型性フィルムに形成し、前記接着剤層どうしを貼り合わせてなることを特徴とする接着フィルムにて達成される。
また、上記本発明の接着フルムを得るための製造方法は、熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤を離型性フィルムに塗布、乾燥して接着剤層を形成した後、前記接着剤層どうしを貼り合わせてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の発明者らは、無機充填材入り接着剤を離型性フィルムに塗布し、接着フィルムを作製した場合、離型性フィルム側は無機充填材が少なく、接着剤表面側は無機充填材が多くなることを知見した。そこで、本発明においては、接着剤表面同士を貼り合わせることにより、無機充填材の少ない離型性フィルム側を被着材の接着に両面使用できるため、樹脂成分中の熱硬化成分の割合を大きくしなくても高い接着性が得られ、さらに熱可塑性成分の割合をより大きくできることから、応力緩和でき、被着材のそりやクラックを抑制する効果が得られる。
本発明によれば、熱伝導性および低温接着性に優れ、異種材料の被着材を接着した際にも、そりやクラックが発生しない接着フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の接着フィルムの一例である実施形態について図1に基づいて説明する。
本発明の接着フィルムは、図1に示すように、離型性フィルム1の間に接着剤層2を有し、該接着剤層2における中央部aと離型性フィルム1近傍の外表面部bにおける無機充填材3の含有密度が異なる。中央部aには無機充填材3が密の状態で含有され、外表面部bには無機充填材3が疎の状態で含有されている。したがって、電子部品、他発熱部品の熱伝導性を必要とされる分野において、熱ラミネートや熱プレス等により、金属、シリコン、エポキシ、セラミック等の被着材への接着性に優れ、低温低圧で熱圧着することができる。
また、本発明の接着フィルムは、離型性フィルム1が無い接着剤層2のみのものでもよい。
【0009】
本発明における離型性フィルム1としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリエテレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等やこれらの樹脂からなるフィルムに離型処理を施したものなどが挙げられるが、特にポリエチレンテレフタレートフィルムに離型処理を施したものが好ましい。
【0010】
本発明の接着フィルムに用いる無機充填材としては、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルからなる群から選ばれる金属又はその合金、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ほう酸アルミウイスカ、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、炭化ケイ素、黒鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化けい素、ダイヤモンド、グラファイト、あるいはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。特に熱伝導率を良好にするためには、熱伝導率が20W/m・K以上のものが好ましい。無機充填材の形状は、球状、扁平粒状、樹枝状、棒状、針状など、特に制限はないが、球状、扁平粒状が好ましい。また、導電性を付与する場合には導電性を有する無機充填材を含有してもよく、難燃性を付与する場合には難燃性を有する無機充填材を含有してもよい。無機充填材の含有量としては、図1の密度分布を有するために樹脂成分100体積部に対し、無機充填材が80体積部以上含有していなければならない。無機充填材が80体積部未満では、図1の密度分布にはなりにくく、良好な熱伝導性を得ることができない。無機充填材の含有量の上限値としては200体積部以下が好ましい。
樹脂成分及び無機充填材の体積は、それらの量と比重によって計算して求めることができる。
【0011】
本発明の接着フィルムの接着剤層は、熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分であり、該熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有することが必要である。熱可塑性成分が40重量%未満の場合は、異種材料の被着材を接着した際に応力緩和性が得られないため、被着材にそりやクラックが生じる。熱可塑成分の樹脂成分中における上限値は100重量%以下が好ましい。
熱可塑性成分の材料としては、公知の熱可塑性樹脂であれば何れも使用できるが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはアクリルゴムは接着性が高く特に好ましい。熱可塑性樹脂には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基等の官能基が含有されていても良い。
【0012】
本発明における熱硬化成分の材料としては、公知の熱硬化樹脂は何れも使用できるが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド化合物は、耐熱性および接着性に優れ好適である。これらは単独で用いる他、適宜混合したり、酸無水物、アミン化合物、イミダゾール類等の硬化剤を併用したり、有機過酸化物等の反応促進剤を添加しても良い。エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を呈するものであれば何れのものを用いてもよいが、好ましくは分子量が3000未満のエポキシ樹脂が適し、特にビスフェノールA型、ビスフェノールF型のような液状樹脂は流動性を向上させることができるため好適である。フェノ−ル樹脂としては、具体的にはアルキルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA型等のノボラックフェノール樹脂およびレゾールフェノール樹脂が挙げられる。イミド化合物としては、ビスマレイミドが好ましく使用される。
【0013】
本発明においては、前記熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤層を離型性フィルムに形成し、前記接着剤層どうしを貼り合わせてなる接着フィルムでもよい。
このような接着フィルムの製造方法は、熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤を離型性フィルムに塗布、乾燥して接着剤層を形成した後、前記接着剤層どうしを貼り合わせて得ることができる。
すなわち、本発明の接着フィルムを作製するには、まず最初に無機充填材および樹脂成分を溶媒中で混合して接着剤塗料を調整し、これを離型性フィルムの片面に塗布し、乾燥する。このように製造することによって、図2に示すような無機充填材の密度分布が異なる積層体を得ることができる。
【0014】
その後、離型性フィルムに塗布された接着剤同士を貼り合わせる事により作製できる。離型性フィルムに接着剤を塗布する際、塗布厚さは5〜100μm、とりわけ10〜50μmの範囲にあることが好ましい。接着剤塗料を調製する際に用いる溶媒としては、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エーテル類などの有機溶剤、水などが挙げられる。これらは単独もしくは混合して使用する。貼り合わせ方法としては、熱プレス、熱ラミネーターなど何れの方法を用いてもよいが、特に図3に示すような熱ラミネーターが生産性を高くできるために好ましい。図3においては、熱ロール4の間に図2の積層体の接着剤層面を接触させながら貼り合わせて作製する。貼り合わせに用いる接着剤層の厚さは同じでも異なっていても良く、接着剤層の組成は無機充填材を含有していれば同じもの同士を貼り合わせても良いし、異なるもの同士を貼り合わせても良い。好ましくは、貼り合わせ界面の密着性を向上するため、同一の樹脂成分が望ましい。
【0015】
また、離型性フィルムがない本発明の接着フィルムを耐熱性フィルムの少なくとも一面に貼り合わせることにより、無機充填材が含有していながら、高い耐熱性を有する接着フィルムを提供することができる。また、上記耐熱性フィルムの代わりに金属板であっても良い。
耐熱性フィルムとしてはポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性プラスチックフィルム、エポキシ樹脂−ガラスクロス等の複合耐熱フィルム等何れも使用できる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例によって説明する。
[実施例1]
(接着フィルムの作製)
厚さ38μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名:ビューレックス43XA)の片面に、下記接着剤塗料を、乾燥後の接着剤層の厚さが約22μmとなるように塗布し、150℃に設定した熱風循環型オーブン中で2分間乾燥した。その後、熱ラミネーターにより接着剤層どうしを、貼り合わせ温度100℃、貼り合わせ速度0.2m/分、ロール圧1kg/cmで貼り合わせ、接着剤層の厚さが約40μmの本発明の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(重量平均分子量250,000、アクリロニトリル含有率27%)100重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)70重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)28重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)600重量部、テトラヒドロフラン600重量部
【0017】
[実施例2]
接着剤塗料を下記組成に代えた以外は、実施例1と同様にして本発明の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(重量平均分子量250,000、アクリロニトリル含有率27%)180重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)13重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)6重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)400重量部、窒化ホウ素(水島合金鉄社製、商品名:HP-1)100重量部、テトラヒドロフラン600重量部
【0018】
[実施例3]
接着剤塗料を下記組成に代えた以外は、実施例1と同様にして本発明の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリルゴム(日本ゼオン社製、商品名:AR51)140重量部、エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN−1020−65)40重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)18重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール2重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)500重量部、テトラヒドロフラン600重量部
【0019】
[実施例4]
接着剤塗料を下記組成に代えた以外は、実施例1と同様にして本発明の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリルゴム(デュポン社製、商品名:VAMAC G)120重量部、ビスフェノールAジフェニルエーテル36重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM1636)40重量部、4,4‘−ジアミノジフェニルメタン4重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)1200重量部、テトラヒドロフラン800重量部
【0020】
[実施例5]
接着剤塗料を下記組成に代えた以外は、実施例1と同様にして本発明の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(重量平均分子量250,000、アクリロニトリル含有率27%)80重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)80重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)37重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)800重量部、テトラヒドロフラン700重量部
【0021】
[実施例6]
厚さ38μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名:ビューレックス43XA)の片面に、実施例1の接着剤塗料を、乾燥後の接着剤層の厚さが約12μmとなるように塗布し、150℃に設定した熱風循環型オーブン中で2分間乾燥し、接着剤フィルムAを得た。さらに、同様に実施例5の接着剤塗料を用いて、乾燥後の接着剤層の厚さが約42μmとなるように塗布し、150℃に設定した熱風循環型オーブン中で2分間乾燥し、接着剤フィルムBを得た。その後、熱ラミネーターにより接着剤フィルムAおよび接着剤フィルムBの接着剤層どうしを、貼り合わせ温度100℃、貼り合わせ速度0.2m/分、ロール圧1kg/cmで貼り合わせ、接着剤層の厚さが約50μmの本発明の接着フィルムを得た。
【0022】
[比較例1]
(熱硬化性接着フィルムの作製)
厚さ38μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製、商品名:ビューレックス43XA)の片面に、下記接着剤塗料を、乾燥後の接着剤層の厚さが約40μmとなるように塗布後、150℃に設定した熱風循環型オーブン中で2分間乾燥し、比較用の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(重量平均分子量250,000、アクリロニトリル含有率27%)60重量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート828)100重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)37重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール3重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)600重量部、テトラヒドロフラン600重量部
【0023】
[比較例2]
接着剤塗料を下記組成に代えた以外は、比較例1と同様にして比較用の接着フィルムを得た。
(接着剤塗料の組成)
アクリルゴム(日本ゼオン社製、商品名:AR51)360重量部、エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名:EOCN−1020−65)155重量部、p−t−ブチル型フェノール樹脂(昭和高分子社製、商品名:CKM2432)80重量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール5重量部、アルミナ(昭和電工社製、商品名:AL-43-M)600重量部、テトラヒドロフラン3000重量部
【0024】
[比較例3]
接着剤塗料を比較例1の組成に代えた以外は、実施例1と同様にして比較用の接着フィルムを得た。
【0025】
[比較例4]
接着剤塗料を比較例2の組成に代えた以外は、実施例1と同様にして比較用の接着フィルムを得た。
【0026】
[比較例5]
接着剤塗料を実施例1の組成に代えた以外は、比較例1と同様にして比較用の接着フィルムを得た。
【0027】
[比較例6]
接着剤塗料を実施例2の組成に代えた以外は、比較例1と同様にして比較用の接着フィルムを得た。
【0028】
[比較例7]
接着剤塗料を実施例4の組成に代えた以外は、比較例1と同様にして比較用の接着フィルムを得た。
【0029】
[接着フィルムの評価]
(1)接着性評価
実施例1〜6及び比較例3、4で作製した接着剤層の両面に離型性フィルムを有する接着フィルムの一方の離型性フィルムを剥離した後、熱ラミネータを用いて露出した接着剤層面に15μmの厚さのアルミ箔を、貼り合わせ温度120℃、貼り合わせ速度0.5m/分、ロール圧1kgf/cmにて貼り合わせた。そして、他方の離型性フィルムを剥離した後、露出した接着剤層面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン200EN)を貼り合わせ、180℃、1時間で熱処理を行った。
また、比較例1、2及び比較例5〜7で作製した接着フィルムの露出した接着剤層面に熱ラミネータを用いて15μmの厚さのアルミ箔を、貼り合わせ温度120℃、貼り合わせ速度0.5m/分、ロール圧1kgf/cmにて貼り合わせた。そして、アルミ箔が貼りあわされていないもう一方の面における離型性フィルムを剥離した後、露出した接着剤層面にポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名:カプトン200EN)を貼り合わせ、180℃、1時間で熱処理を行った。
その後、上記各積層体について、万能引っ張り試験機を用い、引っ張り速度50mm/分で180度の方向にアルミ箔側から接着剤層を剥離させ、接着力の測定を行った。
【0030】
(2)熱伝導率
実施例1〜6および比較例1〜7で作製した接着フィルムを用いて10mm×10mm×1mmの試験片を得た。この試験片の熱拡散率をレーザーフラッシュ法で測定し、さらに熱拡散率と示差走査熱量測定装置で得られた比熱容量とアルキメデス法で得られた比重の積により熱伝導率を算出した。
【0031】
(3)反り
実施例1〜6及び比較例3、4で作製した接着剤層の両面に離型性フィルムを有する接着フィルムの一方の離型性フィルムを剥離した後、熱ラミネータを用いて露出した接着剤層面に15μmの厚さのアルミ箔を、貼り合わせ温度120℃、貼り合わせ速度0.5m/分、ロール圧1kgf/cmにて貼り合わせた。そして、他方の離型性フィルムを剥離した後、30mm×30mm、厚さ約0.12mmのガラス板(MATSUNAMI製、カバーグラス)に貼り合わせて、180℃、1時間で熱処理を行った。
また、比較例1、2及び比較例5〜7で作製した接着フィルムの露出した接着剤層面に熱ラミネータを用いて15μmの厚さのアルミ箔を、貼り合わせ温度120℃、貼り合わせ速度0.5m/分、ロール圧1kgf/cmにて貼り合わせた。そして、他方の離型性フィルムを剥離した後、30mm×30mm、厚さ約0.12mmのガラス板(MATSUNAMI製、カバーグラス)に貼り合わせて、180℃、1時間で熱処理を行った。
その後、上記各試料片の端を水平板に固定し、試料片の反り量を測定した。反り量は、試料片が反って該試料片の固定されていない他方の端がもちあがった際の水平板から試料片までの高さをいう。そり量が2mm超のものを不良とし、反り量が2mm以下のものは良好、1.5mm以下のものは極良とした。
【0032】
上記評価について、表1及び表2に記した。
なお、実施例1〜6及び比較例1〜7においては、樹脂成分の比重を1.30g/m、アルミナの比重を3.98g/m、窒化ホウ素の比重を2.28g/mとし、樹脂成分および無機充填材の体積を求めた。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
上記表1及び表2から明らかなように、実施例1〜6のいずれも樹脂成分100体積部に対して無機充填材を80体積部以上含有し、かつ樹脂成分中の熱可塑成分が40重量%以上含む接着剤である。これらは接着性、熱伝導率に優れ、反りのいずれの特性も良好であった。これに対して、比較例1については樹脂成分中の熱可塑成分が少なく、低分子化合物が多いため接着性が良好であるが、反りが不良であった。比較例2については無機充填材量が少ないため接着性が良好であるが、熱伝導率が悪かった。比較例3は、比較例1と同様に接着性が良好であるが、そりが不良であった。比較例4は、比較例2と同様に接着性が良好であるが、熱伝導率が悪かった。比較例5〜7は、実施例と比較して接着剤層どうしの貼り合わせを行っていないため、接着性が悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の接着フィルムの断面を示した一実施形態の図である。
【図2】本発明の接着フィルムを作製する過程で得られる積層体の一実施形態の断面図である。
【図3】本発明の接着フィルムを作製するための熱ラミネーターの一実施形態の図である。
【符号の説明】
【0037】
1 離型性フィルム
2 接着剤層
3 無機充填材3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤層を有し、前記接着剤層の中央部と外表面部における無機充填材の含有密度が異なることを特徴とする接着フィルム。
【請求項2】
熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤層を離型性フィルムに形成し、前記接着剤層どうしを貼り合わせてなることを特徴とする接着フィルム。
【請求項3】
前記無機充填材が熱伝導率20W/m・K以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記熱硬化成分がフェノール樹脂、イミド化合物、エポキシ樹脂、アミン化合物のいずれかを少なくとも1種以上含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記熱可塑成分がアクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはアクリルゴムである請求項1又は請求項2に記載の接着フィルム。
【請求項6】
耐熱性フィルムの少なくとも片面に前記接着剤層が積層されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項7】
金属板の少なくとも片面に前記接着剤層が積層されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の接着フィルム。
【請求項8】
熱硬化成分と熱可塑成分からなる樹脂成分100体積部に対して無機充填材が80体積部以上含有し、かつ前記熱可塑成分が樹脂成分中に40重量%以上含有する接着剤を離型性フィルムに塗布、乾燥して接着剤層を形成した後、前記接着剤層どうしを貼り合わせてなることを特徴とする接着フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−144010(P2009−144010A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321331(P2007−321331)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】