説明

接着フィルム及びそれを用いたフラットケーブル

【課題】塩素系有機溶媒を用いずにウェットコーティング法により接着剤を塗布することができ、耐熱性が良好な接着フィルム及びそれを用いたフラットケーブルを提供する。
【解決手段】フラットケーブル8は、絶縁フィルム1と、絶縁フィルム1の一方の面上に形成され、絶縁フィルム1と接着層3との接着性を高めるアンカーコート層2と、アンカーコート層2上に形成され、室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂で構成された接着層3とを有する一対の接着フィルム5により導体7を被覆して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム及びそれを用いたフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブルは、一般に、平行に配列した複数の平角導体を、2枚の接着層付きのフィルム(以下「接着フィルム」という。)で挟み被覆したケーブルであり、厚みが薄く、屈曲性に優れた特徴を持っている。このフラットケーブルは、そのような特徴を活かして、プリンタ、スキャナ等のOA機器、コンピュータ機器、薄型テレビ等のビデオ機器、音響機器、ロボット、超音波診断装置等、様々な電気電子機器の内部配線ケーブルとして、広く用いられている。さらに近年、自動車のエレクトロニクス化が進み、車載用途においてもフラットケーブルが普及してきている。
【0003】
特に電子機器の内部配線材として用いられる場合、UL規格を満足する必要があり、高い難燃性が求められる。これを解決する方法として、フラットケーブルの導体を被覆する接着フィルムを難燃化する方法がある。フラットケーブルの導体を被覆する接着フィルムは、多くの場合、基材としての絶縁フィルム上に、溶媒に溶かした接着剤をウェットコーティングして接着層を形成することにより作製されている。
【0004】
絶縁フィルムには、耐熱性と耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチック製のフィルムが用いられている。中でも、市場流通量が多く、価格や供給安定性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルムが用いられることが一般的である。なお、PETフィルムと接着剤の密着性を向上させるため、PETフィルムは接着剤を塗布する面にコロナ処理やUV処理を施して用いている。
【0005】
フラットケーブルに難燃性を付与する方法として、絶縁フィルム自体を燃えにくくする方法と、接着剤を難燃化する方法とがある。
【0006】
絶縁フィルム自体を難燃化する方法として、ポリイミド樹脂のように自己消炎性を有する樹脂で作成されたフィルムを用いる方法がある。しかし、上記のような自己消炎性を有する樹脂で作成されたフィルムは非常に高価であり、特殊な用途にしか用いられていない。従って、一般的に接着剤に難燃剤を添加する方法が採用されている。
【0007】
接着層を形成するベース樹脂には、ポリエチレンテレフタレート樹脂との接着性が特に良好な熱可塑性ポリエステル樹脂が広く用いられている。熱可塑性ポリエステル樹脂には、非晶性の樹脂と結晶性の樹脂があり、非晶性の樹脂は、汎用有機溶媒に良く溶けることから、塗料を作製し、ウェットコーティングにより、一般用途のフラットケーブルの接着層形成樹脂として広く用いられている。しかし、耐熱性は低く、耐熱用途に用いることができないという問題がある。
【0008】
そこで、非晶性の樹脂に耐熱性を付与する方法として、硬化剤を添加し、架橋構造を導入する方法がある。しかし、非晶性のポリエステル架橋構造を導入することにより耐熱性を向上させる方法は、結晶性樹脂の導入に比べて大きな効果が得にくい。また、架橋構造を導入しすぎると、フラットケーブルを製造するときに、接着層がホットメルトしにくくなり、十分な接着力を得られない懸念がある。
【0009】
一方、結晶性の樹脂は、耐熱性が良好であり、耐熱用途のフラットケーブルの接着層形成樹脂として用いることができる。しかし、結晶性のポリエステル樹脂は、その結晶性のために溶媒に溶けにくい傾向にあり、汎用有機溶媒にはほとんど溶けない。そこで、溶解性が特に高い塩化メチレン等の塩素系有機溶媒に溶かし塗料を作製し、ウェットコーティングにより接着層を形成する方法が考えられる。しかし、塩素系有機溶媒は、人体、環境への悪影響が懸念されており、使用を控える傾向にある。
【0010】
さらに、結晶性のポリエステル樹脂を用いるために、押出機により薄く押出すフラットケーブルの製造方法も考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−367458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載のフラットケーブルの製造方法は、大掛かりな設備が必要となり、ウェットコーティングと比べて製造コストが高くなる傾向にある。さらにベース樹脂に難燃剤を多く含む場合、溶融粘度が高くなり、薄く均一に押出すことが困難である。
【0013】
したがって、本発明の目的は、塩素系有機溶媒を用いずにウェットコーティング法により接着剤を塗布することができ、耐熱性及び難燃性に優れ、且つ、他層との接着性が良好な接着フィルム及びそれを用いたフラットケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決するため、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面上に形成され、室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂で構成される接着層と、前記絶縁フィルムの前記一方の面と前記接着層との間に形成され、前記絶縁フィルムと前記接着層との接着性を高めるアンカーコート層とを有する接着フィルムを提供する。
【0015】
前記接着層の前記溶媒は、沸点120℃以下でハロゲン元素を含まない2種類の溶媒の混合溶媒であることが好ましい。
【0016】
前記接着層の前記溶媒は、芳香族類の有機溶媒とアルコール類の混合溶媒であることが好ましい。
【0017】
前記接着層は、炭素数が20以上48以下の二量化脂肪酸を分子内に含有する共重合ポリアミド樹脂で構成されることが好ましい。
【0018】
前記接着層は、難燃剤として臭素化合物、リン化合物、窒素化合物又は金属化合物の少なくとも1種を樹脂100重量部に対して、70重量部以上200重量部以下含有することが好ましい。
【0019】
前記接着層は、難燃剤として臭素化合物、リン化合物、窒素化合物又は金属化合物の少なくとも1種を樹脂100重量部に対して、120重量部以上200重量部以下含有し、前記接着層の上に形成される金属製の導体が接着可能な導体接着層をさらに有することが
好ましい。
【0020】
前記導体接着層は、沸点が120℃以下のハロゲンを含まない溶媒に可溶である樹脂で構成されることが好ましい。
【0021】
前記絶縁フィルムは、厚さ9μm以上100μm以下のエンジニアリングプラスチック製フィルムで構成されたものが好ましい。より好ましくは、厚さ12μm以上50μm以下のポリエチレンテレフタレート製フィルムである。
【0022】
また、本発明は、上記課題を解決するため、導体と、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面上に形成された室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂で構成される接着層と、前記絶縁フィルムの前記一方の面と前記接着層との間に形成され、前記絶縁フィルムと前記接着層との接着性を高めるアンカーコート層とを有する一対の接着フィルムとを備え、前記一対の接着フィルムは、前記接着層を対向させて配置され、前記接着層間に前記導体を配置して前記接着層同士を接着することで前記導体を被覆したフラットケーブルを提供する。
【0023】
前記接着層を形成する工程は、前記接着層に難燃剤として臭素化合物、リン化合物、窒素化合物又は金属化合物の少なくとも1種を樹脂100重量部に対して、120重量部以上200重量部以下含有させ、前記接着層の上に金属製の導体が接着可能な導体接着層を形成する工程をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、塩素系有機溶媒を用いずにウェットコーティング法により接着剤を塗布することができ、耐熱性及び難燃性に優れ、且つ、他層との接着性が良好な接着フィルム、それを用いたフラットケーブル及び接着フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る接着フィルムの構造の一例を示す 断面図である。
【図2】図2は、本発明の第2の実施の形態に係る接着フィルムの構造の一例を示す 断面図である。
【図3】図3は、本発明の第3の実施の形態に係るフラットケーブルの構造の一例を 示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の第4の実施の形態に係るフラットケーブルの構造の一例を 示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態の要約]
本発明の実施の形態に係る接着フィルムは、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面上に形成される接着層とを備えた接着フィルムにおいて、前記絶縁フィルムの一方の面と前記接着層との間に形成され、前記絶縁フィルムと前記接着層との接着性を高めるアンカーコート層を備え、前記接着層は、室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂で構成されたものである。
【0027】
上記接着層を形成するベース樹脂に必要な特性は、融点が100℃以上150℃以下であること、塩素系有機溶媒以外の汎用有機溶媒に可溶であること、絶縁フィルム及び金属導体に対して十分な接着力を有することである。
【0028】
上記接着層を形成するベース樹脂の融点が100℃より低いと十分な耐熱性を得られない。また、上記接着層を形成するベース樹脂の融点が150℃を越えると、フラットケーブルを製造するときに、接着層がホットメルトしにくくなり、十分な接着力を得られない懸念がある。上記接着層に用いる共重合ポリアミド樹脂は、汎用の有機溶媒に可溶であるので、塩素系有機溶媒を用いなくても、ウェットコーティングにより絶縁フィルムにコーティングすることができる。
【0029】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記接着層を形成するベース樹脂として、ある種の結晶性共重合ポリアミド系樹脂が、トルエンとアルコール類との混合溶媒又は、メチルシクロヘキサンとn−プロピルアルコールとの混合溶媒に室温(25℃)において可溶であり、適度な耐熱性を有していることを見出し、これらの知見に基づき、本発明に至ったものである。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0031】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る接着フィルムの構造の一例を示す断面図である。この接着フィルム5は、図1に示すように、絶縁フィルム1と、絶縁フィルム1の一方の面上に形成されたアンカーコート層2と、アンカーコート層2上に形成された接着層3とを有する。
【0032】
絶縁フィルム1には、エンジニアリングプラスチックが好適に用いられ、例えばポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等を用いることが出来る。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルナフタレートポリアリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のうち、耐熱性と耐薬品性に優れ、市場流通量が多く、価格や供給安定性に優れたポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
絶縁フィルム1の厚さは、厚さ9μm以上100μm以下であることが好ましい。厚さが9μmよりも薄いと強度が不足し、100μmよりも厚いと柔軟性を欠くためである。また、絶縁フィルムは本発明の接着フィルムを用いたフラットケーブルの適用用途によって、上記範囲内で材料、層厚を適宜設定することができる。例えば、プリンタ、コピー機などの電子機器用途では、
フラットケーブルの繰返しの屈曲性が重視されることから、エンジニアリングプラスチックの中でもポリエチレンテレフタレート樹脂を用いると良い。また、層厚については、柔軟性を重要視され、また、要求される耐電圧も低いため、あまり絶縁フィルムを厚く形成せず、9μm以上35μm以下とすることが好ましい。さらに、電装部品などの車載機器用では、耐熱性、耐油性が要求されることから、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂等を好適に用いることができる。厚さについては、電子機器用途よりも高い耐熱性、信頼性が要求されるため、比較的厚く形成する必要があり、25μm以上100μm以下とすることが好ましい。
【0033】
アンカーコート層2は、絶縁フィルム1と接着層3の間に形成される厚さ10μm以下の薄い層であり、両者の接着信頼性を向上させるためのものである。アンカーコート層2を形成するベース樹脂として、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂等を用いることができる。絶縁フィルム1の材料として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、ポリエチレンテレフタレート樹脂と接着性の高いポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
また、アンカーコート層2は、必要に応じて各種難燃剤、酸化防止剤、着色剤、増粘剤、架橋剤、架橋助剤、銅害防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、加水分解防止剤を加えることが可能である。
【0035】
接着層3は、一対の接着フィルム5を互いに接着するための層であり、ベース樹脂として室温(25℃)において溶媒に可溶な結晶性樹脂である重合脂肪酸を含有する共重合ポリアミド樹脂を用いる。重合脂肪酸を含有する共重合ポリアミド樹脂は、芳香族類の有機溶媒とアルコール類の混合溶媒に可溶であることが好ましい。
【0036】
上記共重合ポリアミド樹脂は、融点が100℃以上150℃以下であることが好ましい。100℃より低いと耐熱性が問題となる。また、150℃より高いとフラットケーブルを製造する際のラミネート温度を融点より高い温度にする必要があるため、絶縁フィルム1が、ラミネート時の熱で変形するおそれがある。
【0037】
本発明の実施の形態において、融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂として、炭素数が20以上48以下の二量化脂肪酸を分子内に含有するものを用いてもよい。特に、脂肪酸を二量化した炭素数20以上48以下の二量化重合脂肪酸を分子構造内含有している共重合ポリアミド樹脂は、嵩高い構造をランダムに分子内に有するために、結晶化が抑制され、溶媒に対する溶解性が向上している。
【0038】
結晶性樹脂は、一般的に融点よりも低い温度範囲であれば、優れた耐熱性を有する。さらに結晶構造は、凝集力が非常に高いために、一般的に結晶性樹脂は、溶媒に対して溶解しにくい特徴を有する。例えば、結晶性のポリエチレン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、ポリエステル樹脂は、室温(25℃)において、ハロゲンを含まない溶媒にほとんど溶解しない。
【0039】
本実施の形態で用いる、融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂は、結晶性樹脂でありながら、沸点が120℃以下の特定の混合溶媒に溶解しやすい。さらに、混合溶媒にはハロゲンを含んでいないものが好ましい。例えば、本実施の形態で用いる共重合ポリアミド樹脂は、トルエンとメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコールなどのアルコール類の混合溶媒に溶解し、さらにメチルシクロヘキサンとn−プロピルアルコールの混合溶媒にも溶解する特長を有する。なお、単独のトルエン、メチルシクロヘキサン、アルコール類にはほとんど溶解しない。
【0040】
トルエンとアルコール類の混合割合は、「トルエン:アルコール類=90:10〜10:90」の範囲であることが好ましい。また、メチルシクロヘキサンとn−プロピルアルコールの混合割合は、「メチルシクロヘキサン:n−プロピルアルコール=60:40〜20:80」の範囲であることが好ましい。
【0041】
難燃剤の添加量は、樹脂100重量部に対して、50重量部以上250重量部以下である。50重量部よりも少ないと、十分な難燃性を得ることができない。また、250重量部を超えると、接着層が十分な接着力を保持できなくなる。そのため、難燃剤の添加量は、より好ましくは、樹脂100重量部に対して70重量部以上200重量部以下である。
【0042】
また、接着層3のベース樹脂に添加する難燃剤としては、臭素化合物、リン化合物、窒素化合物、金属化合物を用いることができる。これらの化合物は、単独で用いても、2種類以上の化合物を同時に用いてもよい。
【0043】
なお、臭素化合物として、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)を用いることができる。また、リン系化合物として、リン酸金属塩、リン酸塩、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物を用いることができる。また、窒素系難燃剤として、硫酸メラミン、グアニジン化合物、メラミン化合物、1,3,5−トリアジン誘導体を用いることができる。また、金属化合物として、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、硼酸カルシウム、硫化亜鉛、三酸化アンチモンを用いることができる。
【0044】
接着層3には、酸化防止剤、銅害防止剤、ブロッキング防止剤、着色剤、増粘剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、加水分解防止剤を加えることが可能である。近年、環境負荷低減が求められていることから、可能であれば、ハロゲン、アンチモンを含まない難燃剤を用いることが好ましい。
【0045】
[第2の実施の形態]
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る接着フィルムの一例を示す断面図である。この接着フィルム6は、図1に示す絶縁フィルム1、アンカーコート層2及び接着層3からなる接着フィルム5の接着層3上に、さらに金属導体が接着可能な導体接着層4を形成したものである。
【0046】
接着層3については、第1の実施の形態と同様の構成となるが、接着層3に添加する難燃剤の添加量については、接着層3上に導体接着層4を設ける場合は、樹脂100重量部に対して120重量部以上200重量部以下である。
【0047】
導体接着層4を構成するベース樹脂には、沸点が120℃以下のハロゲン元素を含まない溶媒に可溶な樹脂を用いることができる。溶媒の沸点が120℃よりも高いと、接着剤を塗布後の乾燥工程で、乾燥温度を沸点以上にする必要があり、かつ、乾燥時間も沸点が低い溶媒と比較して長くなり、下層の接着層3が熱で変形するおそれがあるためである。
【0048】
沸点が120℃以下の溶媒として、トルエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノールを用いることができる。これらの溶媒は、単独で用いてもよく、混合して用いても良い。
【0049】
これらの溶媒に可溶な樹脂として、熱可塑性ポリウレタン樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、共重合ポリアミド樹脂を用いることができる。これらの樹脂は、フラットケーブルの導体を構成する金属導体と良好な接着性を有する。特に溶媒可溶性に優れ、導体との接着性も良好な非晶性ポリエステル樹脂を特に好適に用いることができる。
【0050】
導体接着層4には、難燃剤、酸化防止剤、銅害防止剤、ブロッキング防止剤、着色剤、増粘剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、加水分解防止剤を加えることが可能である。
【0051】
[第3の実施の形態]
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るフラットケーブルの構造の一例を示す断面図である。このフラットケーブル8は、図1に示す接着フィルム5を用いて形成される。すなわち、フラットケーブル8は、2枚の接着フィルム5を接着層3が対向するように配置し、接着層3間に複数の金属導体7を平行に配置した後、ラミネーターで接着層3同士を接着して形成される。
【0052】
金属導体7は、例えば、銅又は銅合金からなる銅系材料、鉄又は鉄合金からなる鉄系材料、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム系材料等の導電性材料を用いることができる。銅系材料としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、リン青銅等が挙げられる。また、金属導体7は、Sn、Ni等の金属でメッキされてもよい。図3に示す金属導体7は、断面が例えば厚さ20μm以上60μm以下、幅0.25mm以上1.3mm以下の矩形状のいわゆる平角導体と呼ばれる芯材の表面にSnめっき膜を形成したものである。なお、Snめっき膜にP、Ge、Ga、Zn、Alから選択される少なくとも1種以上の元素を添加してもよい。また、金属導体7としては、平角導体に限られるものではなく、公知のフラットケーブル用の導体を用いることができる。
【0053】
第3の実施の形態に係るフラットケーブルによれば、接着層のベース樹脂として、室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂を用いているので、塩素系有機溶媒を用いずにウェットコーティング法により接着剤を塗布することができ、優れた耐熱性が得られる。
【0054】
[第4の実施の形態]
図4は、本発明の第4の実施の形態に係るフラットケーブルの構造の一例を示す断面図である。このフラットケーブル9は、図2に示す接着フィルム6を用いて形成される。すなわちフラットケーブル9は、2枚の接着フィルム6を導体接着層4が対向するように配置し、導体接着層4間に複数の金属導体7を平行に配置した後、ラミネーターで導体接着層4同士を接着して形成される。
【0055】
第4の実施の形態のフラットケーブルによれば、第3の実施の形態の効果に加え、金属導体との接着性に優れた導体接着層を用いているので、屈曲させても絶縁フィルムと金属導体との剥離を抑制することができる。
【0056】
以下に本発明の実施例について説明する。実施例1〜4、9、10は、図1、図3に示す実施の形態に対応するものである。実施例5〜8、11、12は、図2、図4に示す実施の形態に対応するものである。比較例1〜5は、図1、図3に対応するものである。
【実施例1】
【0057】
アンカーコート層2に用いる塗料の組成を表1に示す。接着層3に用いる接着剤塗料の組成を表2、3に示す。導体接着層4に用いる接着剤塗料の組成を表4に示す。実施例の構成と評価結果を表5〜表7に示し、比較例の構成と評価結果を表8、表9に示す。
【0058】
なお、表2、3、4における溶媒溶解性の評価は、接着層3を形成する樹脂が、トルエンとアルコール類(メタノール又はエタノール又はイソプロピルアルコール又はn−プロピルアルコール)又は、メチルシクロヘキサンとn−プロピルアルコールを任意の割合で混合した混合溶媒に対して、室温(25℃)において固形分濃度10wt%で溶解したものを良好、溶解しなかったものを不良とした。
【0059】
また、耐熱性の評価は、まず、平滑なアルミ板上に、接着層3に用いる接着剤を溶媒に溶解させた後、接着剤塗料として塗布・乾燥し、25μmの接着層3を形成させる。そして、その上から、先端部の長さ3mm、直径1mmの円柱状のアルミ棒を1MPaの圧力がかかるように荷重をかけ、そのまま85℃の恒温槽に24時間保持する。24時間後にアルミ板とアルミ棒間に導通しなければ合格とした。
【0060】
まず、絶縁フィルム1として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂製のフィルム(以下、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」という。)のコロナ処理表面に表1記載の組成Aの塗料をスロットダイコーターを用いたウェットコーティング法により、塗布・乾燥し、厚さ2μmのアンカーコート層2を形成した。
【0061】
次に、このアンカーコート層2の上に、表2記載の組成1の接着剤塗料をスロットダイコーターにより塗布・乾燥し、厚さ27μmの接着層3を形成し、接着フィルム5を作製した。組成1の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0062】
作製した接着フィルム5の間に、金属導体7として、幅0.3mm、厚さ35μmの錫めっき平角軟導体を0.5ピッチで50本平行に並べ、ラミネートしてフラットケーブル8を作製した。作製したフラットケーブル8について、接着性、難燃性を評価した。
【0063】
接着性の評価は、フラットケーブル端子部の導体を剥離速度50mm/分で180°剥離試験を行い、剥離強度が0.3kN/m以上のものを合格とした。なお、強度が0.3kN/m以上0.4kN/m未満のものを「△」、0.4kN/m以上0.6kN/m未満のものを「○」、0.6kN/m以上のものは「◎」とした。強度が0.3kN/m未満のものは、不合格「×」とした。
【0064】
難燃性の評価は、フラットケーブルの垂直燃焼試験(UL758 VW−1)で評価した。5本の試験片中5本とも合格した場合を「◎」、4本合格した場合を「○」、2〜3本合格した場合を「△」とし、合格とした。合格数が1本以下の場合を不合格「×」とした。接着性は、0.6kN/m(◎)であり、難燃性は、5本中5本とも合格(◎)であった。
【実施例2】
【0065】
実施例2は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが異なり、厚さ25μmのものを用いた。また、実施例2は、実施例1とは接着剤3の組成及び厚さが異なり、表2記載の組成2の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ36μmの接着層3を形成して接着フィルム5を作製した。組成2の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0066】
また、実施例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.4kN/m(○)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例3】
【0067】
実施例3は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは同じであるが、接着層3の組成が異なり、表2記載の組成3の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ27μmの接着層3を形成して接着フィルム5を作製した。組成3の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0068】
また、実施例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.6kN/m(◎)であり、難燃性は、接着層に添加した難燃剤が50重量部であったため、5本中3本が合格(△)と多少劣るものの合格である。
【実施例4】
【0069】
実施例4は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが異なり、厚さ25μmのものを用いた。また、実施例4は、実施例1とは接着層3の組成及び厚さが異なり、表2記載の組成4の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ36μmの接着層3を形成して接着フィルム5を作製した。組成4の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0070】
また、実施例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、接着層に難燃剤を250重量部含んでいるため、0.3kN/m(△)と多少低いが、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例5】
【0071】
まず、絶縁フィルム1として、実施例1と同様に、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理表面に表1記載の組成Aの塗料をスロットダイコーターによるウェットコーティング法により塗布・乾燥し、厚さ2μmのアンカーコート層2を形成した。
【0072】
次に、アンカーコート層2の上に、表2記載の組成5の接着剤塗料をスロットダイコーターによるウェットコーティング法により塗布・乾燥し、厚さ25μmの接着層3を形成した。
【0073】
さらにこの接着層3の上に、表4記載の組成Cの接着剤塗料をスロットダイコーターによるウェットコーティング法より塗布・乾燥し、厚さ4μmの導体接着層4を形成して接着フィルム6を作製した。組成5の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0074】
また、作製した接着フィルム6の間に、金属導体7として幅0.3mm、厚さ35μmの錫めっき平角軟導体を0.5ピッチで50本平行に並べ、ラミネートし作製してフラットケーブル9を作製した。
【0075】
作製したフラットケーブル9について、実施例1と同様の条件で接着性、難燃性を評価した。接着性は、1.0kN/m(◎)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例6】
【0076】
実施例6は、実施例5とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは同じであるが、接着層3の組成及び厚さが異なり、表2記載の組成6の接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ35μmの接着層3を形成した。
【0077】
また、実施例6は、実施例5とは導体接着層4の組成が異なり、表4記載の組成Dの接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ4μmの導体接着層4を形成して接着フィルム6を作製した。組成6の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0078】
また、実施例5と同様にしてフラットケーブル9を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、1.1kN/m(◎)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例7】
【0079】
実施例7は、実施例5とはアンカーコート層2の組成が異なり、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムのコロナ処理表面に表1記載の組成Bの塗料をスロットダイコーターにより、塗布・乾燥し、厚さ2μmのアンカーコート層2を形成した。
【0080】
また、実施例7は、実施例5とは接着層3の組成が異なり、表2記載の組成7の接着剤塗料を用い、厚さ25μmの接着層3を形成した。
【0081】
また、実施例7は、実施例5とは導体接着層4の組成が異なり、表4記載の組成Eの接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ4μmの導体接着層4を形成して接着フィルム6を作製した。組成7の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0082】
また、実施例5と同様にしてフラットケーブル9を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.8kN/m(◎)であり、難燃性は、5本中4本が合格(○)であった。
【実施例8】
【0083】
実施例8は、実施例5とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが異なり、厚さ25μmのものを用いた。また、実施例8は、実施例5とは接着層3の組成及び厚さが異なり、表2記載の組成8の接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ35μmの接着層3を形成した。
【0084】
また、実施例8は、実施例5とは導体接着層4の組成が異なり、表4記載の組成Fの接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ4μmの導体接着層4を形成して接着フィルム6を作製した。組成8の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0085】
また、実施例5と同様にしてフラットケーブル9を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.5kN/m(○)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例9】
【0086】
実施例9は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは同じであるが、接着層3の組成及び厚さが異なり、表2記載の組成9の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ27μmの接着層3を形成して接着フィルム5を作製した。組成9の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0087】
また、実施例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.5kN/m(○)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例10】
【0088】
実施例10は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが異なり、厚さ25μmのものを用いた。また、実施例10は、実施例1とは接着層3の組成及び厚さが異なり、表2記載の組成10の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ36μmの接着層3を形成して接着フィルム5を作製した。組成10の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0089】
また、実施例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.5kN/m(○)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例11】
【0090】
実施例11は、実施例5とは接着剤5の組成が異なり、表2記載の組成11の接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ25μmの接着層3を形成した。
【0091】
また、実施例11は、実施例5とは導体接着層4の組成が異なり、表4記載の組成Cの接着剤塗料を用い、厚さ4μmの導体接着層4を形成して接着フィルム6を作製した。組成11の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0092】
また、実施例5と同様にしてフラットケーブル9を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.9kN/m(◎)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【実施例12】
【0093】
実施例12は、実施例5とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが異なり、厚さ25μmのものを用いた。また、実施例12は、実施例5とは組成が異なり、表2記載の組成12の接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ25μmの接着層3を形成した。
【0094】
また、実施例12は、実施例5とは導体接着層4の組成が異なり、表4記載の組成Fの接着剤塗料を用い、実施例5と同様にして厚さ4μmの導体接着層4を形成して接着フィルム6を作製した。組成12の接着剤は、溶媒溶解性、耐熱性ともに良好であった。
【0095】
また、実施例5と同様にしてフラットケーブル9を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、1.0kN/m(◎)であり、難燃性は、5本中5本が合格(◎)であった。
【0096】
[比較例1]
比較例1は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが同じであるが、実施例1とは接着層3の材質が異なり、表3記載の組成13の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ27μmの接着層3を形成して接着フィルム5を作製した。組成13の接着剤は、溶媒溶解性は良好であった。しかし、接着剤に用いた結晶性共重合ポリアミド樹脂の融点が、100℃よりも低いため、耐熱性評価が不合格であった。
【0097】
また、作製した接着フィルム5の間に、金属導体7として、幅0.3mm、厚さ35μmの錫めっき平角軟導体を0.5ピッチで50本平行に並べ、ラミネートしてフラットケーブル8を作製した。
【0098】
また、作製したフラットケーブル8について、実施例1と同様の条件で接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.4kN/m(○)で合格したが、難燃剤を含まず、難燃性評価は、5本中5本とも不合格で(×)であった。
【0099】
[比較例2]
比較例2の接着層3の組成14の樹脂は、融点が153℃の結晶性の共重合ポリアミド樹脂であるが、溶媒に対して不溶であったため、溶媒溶解性不合格であった。接着剤塗料が作製できず、その他の評価は実施できなかった。
【0100】
[比較例3]
比較例1は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが同じ厚さ12μmのものを用いた。また、比較例1は、実施例1とは接着層3の組成が異なり、表3記載の組成15の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ27μmの接着層3を形成した。
【0101】
組成15の接着剤は、非晶性の共重合ポリアミド樹脂であり、溶媒溶解性は良好であった。しかし、非晶性樹脂のため、耐熱性評価が不合格であった。
【0102】
比較例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。難燃剤を300重量部含んでおり、十分な接着力を保持できず、接着性は、0.1kN/m(×)と不合格であり、難燃性評価は、5本中5本が合格(◎)であった。
【0103】
[比較例4]
比較例4の接着層3の組成16の樹脂は、結晶性のポリエステル樹脂であるが、溶媒に対して不溶であったため、溶媒溶解性不合格であった。そのため、接着剤塗料が作製できず、その他の評価は実施できなかった。
【0104】
[比較例5]
比較例5は、実施例1とはポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが同じであるが、接着層3の組成が異なり、表3記載の組成17の接着剤塗料を用い、実施例1と同様にして厚さ27μmの接着層3を形成した。
【0105】
組成17の接着剤は、溶媒溶解性は良好であった。しかし、非晶性樹脂のため、耐熱性評価が不合格であった。
【0106】
また、比較例1と同様にしてフラットケーブル8を作製し、接着性、難燃性を評価した。接着性は、0.1kN/m(×)と不合格であり、難燃性評価は、5本中4本が合格(○)であった。
【0107】
なお、本発明は、上記実施の形態及び上記実施例に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形実施が可能である。
【0108】
本発明の接着フィルムは、適用製品の使用環境等により、配合や積層構造を規定範囲内で適宜設定し、先に記載した電子機器用、車載機器用、オーディオ用等に使用されるフラットケーブルの接着フィルムとして、いずれの製品にも適用可能である。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【符号の説明】
【0109】
1 絶縁フィルム
2 アンカーコート層
3 接着層
4 導体接着層
5 接着フィルム
6 接着フィルム
7 金属導体
8 フラットケーブル
9 フラットケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルムの一方の面上に形成され、室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂で構成される接着層と、
前記絶縁フィルムの前記一方の面と前記接着層との間に形成され、前記絶縁フィルムと
前記接着層との接着性を高めるアンカーコート層とを有する接着フィルム。
【請求項2】
前記接着層の前記溶媒は、沸点120℃以下でハロゲン元素を含まない2種類の溶媒の混合溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記接着層の前記溶媒は、芳香族類の有機溶媒とアルコール類の混合溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記接着層は、炭素数が20以上48以下の二量化脂肪酸を分子内に含有する共重合ポリアミド樹脂で構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記接着層は、難燃剤として臭素化合物、リン化合物、窒素化合物又は金属化合物の少なくとも1種を樹脂100重量部に対して、70重量部以上200重量部以下含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項6】
前記接着層は、難燃剤として臭素化合物、リン化合物、窒素化合物又は金属化合物の少なくとも1種を樹脂100重量部に対して、120重量部以上200重量部以下含有し、
前記接着層の上に形成され、金属製の導体が接着可能な導体接着層をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項7】
前記導体接着層は、沸点が120℃以下のハロゲンを含まない溶媒に可溶である樹脂で構成されることを特徴とする請求項6に記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記絶縁フィルムは、厚さ9μm以上100μm以下のエンジニアリングプラスチック製フィルムで構成された請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項9】
導体と、
絶縁フィルムと、前記絶縁フィルムの一方の面上に形成され、室温(25℃)において溶媒に可溶で融点が100℃以上150℃以下である共重合ポリアミド樹脂で構成される接着層と、前記絶縁フィルムの前記一方の面と前記接着層との間に形成され、前記絶縁フィルムと前記接着層との接着性を高めるアンカーコート層とを有する一対の接着フィルムとを備え、
前記一対の接着フィルムは、前記接着層を対向させて配置され、前記接着層間に前記導体を配置して前記接着層同士を接着することで前記導体を被覆したフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227114(P2012−227114A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240476(P2011−240476)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】