説明

接着剤注入装置および接着剤注入方法

【課題】注入された接着剤に、基板内部に残留するガスによるボイドが形成されることを防止する。
【解決手段】基板Wの周側面には、接着剤注入口101aと排気口101bを有するシール材101が形成されている。シール材101の接着剤注入口101aを接着剤102中に浸漬し、排気口101bを排気用ノズル110で覆う。真空ポンプP1に接続されたポンプ側継手122が嵌合されたノズル用継手121を、排気用ノズル110に接続する。真空ポンプP1により、排気口101bを介して基板W内部の空隙に残留するガスを吸気し、接着剤102を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、基板の空隙部に接着剤を注入する場合に用いられる、接着剤注入装置および接着剤注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板には、3次元半導体装置のように、集積回路が形成された半導体装置を複数個積層して形成するものがある。このような半導体装置の製造方法として、それぞれが、多数の集積回路部を有する複数個の半導体ウエハを絶縁層を介在して積層し、積層状態のまま一体化した後、ダイシングにより個々の半導体装置に分離する方法がある。この方法では、積層された半導体ウェハの隙間には、半導体ウェハの接合性や放熱の促進および半導体ウェハの熱応力緩和などの目的で接着剤が注入される。接着剤注入装置として、接着剤の注入口を除く半導体ウェハの周側面全周をシール材で覆い、これを真空チャンバ内に収納し、真空チャンバ内を大気圧にして接着剤を注入する、いわゆる、真空差圧法による方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−253110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の真空差圧法による場合には、基板の隙間に残留するガスによって接着剤にボイドが発生する。これは、(1)基板の加熱により発生するガス、(2)基板の加熱後に基板から放出されるガス、(3)真空差圧法により注入する工程中に接着剤から基板内部に放出されるガス、を要因とするものであることが確認された。基板内部に、このようなボイドが形成されると、半導体装置の電気的特性、耐環境性、放熱性等の性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の接着剤注入装置は、接着剤注入口と排気口とを有するシール材により覆われた基板内部の空隙に接着剤を注入する装置であって、基板を加熱して、基板中に含有されているガスを放出させる加熱手段と、シール材の接着剤注入口に接着剤が接触および離間するように、接着剤収容容器を移動する移動手段と、シール材の排気口に連通する連通路を有するヘッド部を有し、ヘッド部の連通路を減圧して基板内部の空隙に前記接着剤を注入する吸気手段と、を具備することを特徴とする。
本発明の接着剤注入方法は、接着剤注入口と排気口とを有するシール材により覆われた基板内部の空隙に接着剤を注入する方法であって、基板を加熱して前記基板中に含有されているガスを放出させる加熱工程と、シール材の接着剤注入口に接着剤を接触させ、シール材の排気口にヘッド部の連通路を連通した状態で、真空ポンプにより吸引して、基板内部の空隙に前記接着剤を注入する吸引注入工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、基板の空隙に残留するガスを吸気手段により強制的に排気し、接着剤を注入するので、接着剤にボイドが発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る接着剤注入装置の実施形態1の概略構成を示す図。
【図2】図1に図示された基板の拡大平面図。
【図3】本発明に係る接着剤注入方法の一例を説明するための図。
【図4】本発明に係る接着剤注入方法の一例を示す処理フロー図。
【図5】本発明に係る接着剤注入装置の実施形態2の概略構成を示す図。
【図6】本発明に係る接着剤注入方法の他の例を示す処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明の接着剤注入装置に係る実施形態1の概略構成を示す図である。
接着剤注入装置100は、インライン配置の複数の真空チャンバを有しており、前処理室10、加熱室20、第1注入室30、第2注入室40、接着剤脱泡室50、接着剤準備室60、接着剤硬化室70を備えている。
各室の間および前処理室10の入口側、接着剤硬化室70の出口側には、仕切弁Sが設けられている。前処理室10、加熱室20、第1注入室30、接着剤脱泡室50には、室(チャンバ)内を真空にする真空ポンプPが、排気バルブVを介して装備されている。
【0009】
前処理室10、加熱室20、第1注入室30、第2注入室40および接着剤硬化室70には、図示はしないが、複数のローラと、ローラを回動可能に保持するフレームと、各ローラを回転駆動するモータとを具備する搬送機構が装備されている。モータにより各ローラを回転させ、ローラ上に基板Wを直接、カセットあるいはトレイを介して載置し、一方のチャンバから他方のチャンバに搬送する。
【0010】
前処理室10には、基板Wがロードされる。インライン方式の基板接着剤注入装置100は、基板Wが矢印X方向に搬送されながら処理が行われる。基板Wは、前処理室100の入口側の仕切弁Sを開いて、図示しないスタッカから、グリップ、吸着具等の把持部を有する移送機構(図示せず)を用いて前処理室10内に収納される。基板Wを加熱室20に搬送するときは、真空ポンプPによりチャンバ内を真空にして、出口側の仕切弁Sを開いて搬送機構により搬送する。
【0011】
図2は、前処理室10に搬入される基板Wの平面図である。基板Wは、それぞれが、多数の集積回路部を有する複数の半導体ウエハを、相互の間に絶縁層及び接合電極を介在して積層して形成されている。各半導体ウエハの集積回路形成面は、凸凹な上面となっており、この集積回路形成面を、上側に配置された半導体ウエハの裏面に接触した状態で積層されている。従って、基板Wは、内部に空隙を有している。基板Wの周側面にはシール材101が形成されている。シール材101は、接着剤注入口101aと、この接着剤注入口101aに対し、ほぼ180°位置が異なる、対向部側に位置する排気口101bを有する。基板Wの周側面は、接着剤注入口101aおよび排気口101bを除き、全体がシール材101により覆われている。
【0012】
加熱室20内には、ランプヒータ21が配置されている。加熱室20では、ランプヒータ21から放射される熱線により基板Wを加熱し、基板W中に含有されているガスを加熱室20のチャンバ内に放出させる。基板Wを加熱して内部のガスを放出した後、排気バルブVを開いて、真空ポンプPによりチャンバ内を真空引きする。このとき、基板Wから放出されたガスが、加熱室20の外部に排気される。加熱室20の真空引きが終了したら、仕切弁Sを開いて基板Wを第1注入室30に搬送する。
【0013】
接着剤準備室60には昇降機構61が装備されており、接着剤102が収容された接着剤収容容器105を、昇降機構61により上昇・下降して、第2注入室40から接着剤準備室60内に搬入する。接着剤準備室60では、接着剤102の液量をセンサ(図示せず)により監視し、接着剤102の液量が不足している場合には、装置外部に配置された接着剤槽(図示せず)に収容された接着剤102を、ポンプ等(図示せず)により、接着剤収容容器105内に補充する。接着剤102の液量に限らず、接着剤102の粘度を監視し、溶媒を補充するようにしてもよい。
接着剤102が収容された接着剤収容容器105は、接着剤準備室60から接着剤脱泡室50に搬送される。
【0014】
接着剤脱泡室50では、接着剤準備室60から搬入された接着剤収容容器105に収容された接着剤102の脱泡を行う。真空ポンプPにより、排気バルブVを介してチャンバ内を真空にして、接着剤102内に含有されているガスを脱泡する。ガスを脱泡した後、真空ポンプPによりチャンバ内を真空にする。このとき、チャンバ内に放出されたガスが排気される。接着剤脱泡室50には昇降機構51が装備されており、この後、仕切弁Sを開いて、昇降機構51を上昇して、昇降機構51の上部に搭載された接着剤収容容器105を第1注入室30内に搬送する。
【0015】
第1注入室30は、真空差圧法により、基板Wの内部の空隙に接着剤を注入するためのチャンバである。
第1注入室30においては、排気用ノズル(ヘッド部)110の下面を、加熱室20から搬入された基板Wのシール材101に押し付けて、シール材101の排気口101bを外部から密封する。そして、基板Wの接着剤注入口101aを、接着剤脱泡室50から昇降機構51により上昇された接着剤収容容器105内に収容された接着剤102中に浸漬する。
【0016】
図3は、シール材101の排気口101b側に排気用ノズル110を押し付けた状態で基板Wの周側面に形成されたシール材101の接着剤注入口101aを接着剤102中に浸漬した状態を示す断面図である。
排気用ノズル110は、下部にゴム等の弾性部材からなる押圧部111を有する。押圧部111は、シール材101の排気口101bの長さよりも十分に大きい開口部112を有している。排気用ノズル110の上部には、配管部113が設けられており、配管部113の内部には、開口部112に連通する連通路114が形成されている。
【0017】
第1注入室30内には、排気用ノズル110の上部側にノズル側継手121が配置されている。ノズル側継手121は、その下面を排気用ノズル110の配管部113の上端に圧接して、排気用ノズル110に連通される。ノズル側継手121は、後述するポンプ側継手122が嵌合され継手120を構成する。ノズル側継手121の上部側には、通常は閉塞状態とされポンプ側継手122が嵌合することにより開放する開閉弁が設けられている。排気用ノズル110とノズル側継手121とは、それぞれ、図示しない移送機構により、上下動が可能であり、それぞれ、第1注入室30と第2注入室40間の往復動が可能に設けられている。
【0018】
第1注入室30内が真空ポンプPにより真空にされた状態で、周側面にシール材101が形成された基板Wが、加熱室20から第1注入室30内に搬入される。この状態では、シール材101の接着剤注入口101aおよび排気口101bに連通する基板W内部の空隙は、チャンバ内と同じ真空圧力となる。基板Wが、第1注入室30内に搬入されると、排気用ノズル110が、押圧部111の開口部112内にシール材101の接着剤注入口101bが位置するように下降する。排気用ノズル110は、押圧部111の開口部112側の側端縁をシール材101に押し付けた状態で停止する。この状態が、図3に図示されている。図3に図示された状態では、排気用ノズル110の押圧部111とシール材101との当接面はガスの流通を遮断する。この状態で、ノズル側継手121が下降し、排気用ノズル110の配管部113の上端に接続される。ノズル側継手121は、上述した如く、排気用ノズル110の連通路114に連通するように接続されるが、この状態では、開閉弁(図示せず)は閉塞されている。このため、シール材101の排気口101bは外部から密封される。
【0019】
次に、接着剤102が収容された接着剤収容容器105が、上昇機構51により上昇され、接着剤脱泡室50から加熱室20内の基板Wの下側に収容される。上昇機構51は、基板Wに形成されたシール材101の接着剤注入口が接着剤102に浸漬された位置で停止する。
【0020】
この後、ガス導入系の制御弁V1を開いて、N2等の不活性ガスを第1注入室30内に導入し、チャンバ内を大気圧とする。このため、接着剤収容容器105内に収容された接着剤102が、大気圧と基板W内の気圧差により押し上げられて、基板W内部の空隙に注入され、いわゆる、真空差圧法による注入が行われる。
この後、この注入状態のまま、シール材101が形成された基板W、排気用ノズル110およびノズル側継手121が第2注入室40に搬送される。
【0021】
第2注入室40では、第2注入室40内に設けられた排気用ノズル110、ノズル継手121及び真空ポンプP1により基板W内部に残留するガスを吸気し、基板W内部の空隙に接着剤102を注入する(強制注入)を行う。
第2注入室40内には、ノズル側継手121の上方にポンプ側継手122が配置されている。ポンプ側継手122は、図示しない移送機構により上下動可能とされており、ノズル側継手121に嵌合して、内部の通路が外部から密封した状態で連通される継手120を構成する。ポンプ側継手122には、排気バルブV2および真空ポンプP1が接続されている。
第1注入室30において、真空差圧法により、基板Wの空隙に接着剤102を注入した場合、基板W内部の空隙にガスが残留する。基板W内部に残留するガスとしては、(1)基板の加熱により発生するガス、(2)基板の加熱後に基板から放出されるガス、(3)真空差圧法により注入する工程中に接着剤から基板内部に放出されるガス、があると考えられる。
【0022】
真空差圧法により基板W内部の空隙に接着剤102を注入した状態のまま、第2注入室40に搬入されたノズル側継手121に、ポンプ側継手122を下方に移動して嵌合する。そして、排気バルブV2を開いて、真空ポンプP1により、基板W内部の空隙に残留するガスを吸引する。この残留ガスの吸引に伴って、基板W内部の空隙に接着剤102が注入される。この真空ポンプP1による強制注入により、基板W内部の空隙に残留するガスは完全に接着剤102に置き換えられ、ボイドが発生することはない。強制注入を終了した基板Wは、仕切弁Sを開いて、接着硬化室70に搬送される。
【0023】
接着剤硬化室70は、基板W内部の空隙に注入された接着剤102を硬化する室であり、チャンバ内にランプヒータ71を備えている。接着剤硬化室70のチャンバ内で、基板W内部に注入された接着剤102を加熱硬化した後は、仕切弁Sを開いて、基板Wを装置外部のスタッカ(図示せず)に搬出する。
図4は、本発明の接着剤注入装置100により、基板W内部の空隙に接着剤102を注入する方法の一例を示す処理フロー図であり、以下、図4と共に、本発明の接着剤注入方法の一実施形態を説明する。
【0024】
先ず、ステップS1において、前処理室10内に、周側面にシール材101が形成された基板Wを搬入する。シール材101には、接着剤注入口101aおよび排気口101bが形成されている。
次に、ステップS2において、前処理室10内を真空ポンプPにより真空引きする。このとき、加熱室20を真空ポンプPにより真空にしておく。
【0025】
前処理室10の真空引きが完了したら、ステップS3において、仕切弁Sを開いて、シール材101が形成された基板Wを加熱室20に搬入する。そして、ステップS4に進み、ランプヒータ21をオンして、基板Wを加熱する。この加熱により、基板W中に含有されているガスが加熱室20のチャンバ内に放出される。チャンバ内に放出されたガスは、排気バルブVを介して加熱室20の外部に排気される。つまり、基板Wを加熱して内部のガスを放出した後、排気バルブVを開いて、真空ポンプPにより加熱室20のチャンバ内を真空引きする。このとき、基板Wから放出されたガスが、加熱室20から排気される。また、加熱室20のチャンバ内の真空引きと同時に、第1真空室30および接着剤脱泡室50も真空ポンプPにより真空引きする。
【0026】
加熱室20の真空引きが終了したら、ステップS5に進み、仕切弁Sを開いて基板Wを第1注入室30内に搬送する。加熱室20内は真空にされており、接着剤注入口101aおよび排気口101bを介して基板W内部と連通された基板W内部の空隙は、加熱室20内と同じ圧力となる。
【0027】
次に、ステップS6に進み、基板Wに排気用ノズル110を装着する。排気用ノズル110は、図3に図示されるように、シール材101の排気口101bが、排気用ノズル110の下部に設けられた押圧部111の開口部112内に位置するよう下降される。そして排気用ノズル110の下部に設けられた押圧部111の開口部112側の側端縁をシール材101に押し付ける。
【0028】
引き続いて、ステップS7において、排気用ノズル110にノズル用継手121を接合する。ノズル側継手121は、真空ポンプには接続されておらず、従って、シール材101の排気口101bが外部から密封される。
【0029】
次に、ステップS8に進み、接着剤102中に含有されたガスが脱泡された接着剤102が、接着剤収容容器105内に収容された状態で、昇降機構51により上昇されて、接着剤脱泡室50から、第1注入室30内に搬入される。そして、シール材101の接着剤注入口101aが接着剤102中に浸漬された位置で、昇降機構51による上昇が停止される。
【0030】
そして、ステップS9に進み、制御弁V1より不活性ガスを導入し、第1注入室30内を大気圧にする。これにより、ステップS10において、接着剤102が、シール材101の接着剤注入口101aから基板W内部の空隙に注入される。この工程における接着剤102の注入は、基板Wの外部と内部の圧力差によるものであり、真空差圧によるものである。この真空差圧による注入では、基板W内部にガスが残留し、この残留ガスによる圧力が作用する領域には接着剤102は注入されない。
【0031】
真空差圧による接着剤の注入が完了したら、ステップS11に進み、基板Wを真空差圧による注入を行っている状態のまま、第1注入室30から第2注入室40へ搬送する。つまり、基板Wと共に、接着剤102が収容された接着剤収容容器105、排気用ノズル110、ノズル側継手121が図示しない移送機構により第2注入室40に搬入される。この際、次に第1注入室において基板Wに接着剤102を注入する作業を行うために、第2注入室40内に移動していた排気用ノズル110とノズル継手121が、第2注入室40から図示しない移送機構により第1注入室30内に移動される。このように、第1注入室30において接着剤102の注入を終えた基板W、排気用ノズル110およびノズル側継手121を第2注入室40に搬送する際に、同時に、第2注入室40から、後述する、第2注入室40内での接着剤102の注入作業を完了した排気用ノズル110とノズル継手121を第1注入室30に移送することで、作業の効率を高めている。
【0032】
次に、ステップS12に進み、第2注入室40内において、真空ポンプP1が接続されたポンプ側継手122をノズル側継手121の上部に嵌合する。この嵌合により、ノズル側継手121内部に設けられた開閉弁(図示せず)が開き、真空ポンプP1が排気バルブV2、ポンプ側継手122、ノズル側継手121、排気用ノズル110の連通路114を介して、シール材101の排気口101bに連通される。
次に、ステップS13に進み、排気バルブV2を開き、強制注入を行う。つまり、真空ポンプP1を駆動して、基板W内部の空隙に残存しているガスを吸引し、これと共に、接着剤102を基板W内部の空隙に注入する。
【0033】
ステップS14では、ステップS13の強制注入が所定時間経過したか否かが判断される。所定時間経過していなければ、ステップS13に戻り、強制注入を継続する。所定時間経過していればステップS15に進み、強制注入が完了する。
【0034】
次に、ステップS16において、排気バルブV2および図示はしないが大気開放用バルブを停止し、排気系内を大気圧に戻した後、ポンプ側継手122を上昇する。引き続いて、ノズル側継手121および排気用ノズル110を上昇して基板Wから離間する。
次に、ステップS17において、接着剤102が収容された接着剤収容容器105を昇降機構61により下降し、接着剤準備室60内に搬送する。
【0035】
次に、ステップS18に進み、接着剤102が注入された基板Wを接着剤硬化室70に搬送する。
そして、ステップS19に進み、接着剤硬化室70において、ランプヒータ71から赤外線を放射して、基板W内部に注入された接着剤102を硬化する。接着剤102の硬化が完了すれば、接着剤の注入処理が完了する。
【0036】
本発明の実施形態1によれば、真空差圧法により基板W内部の空隙に接着剤を注入した後、真空ポンプP1により基板W内部の空隙に残留しているガスを強制的に吸引し、基板W内部の空隙に接着剤を注入する。従って、(1)基板の加熱により発生するガス、(2)基板の加熱後に基板から放出されるガス、(3)真空差圧法により注入する工程中に接着剤から基板内部に放出されるガス、により接着剤にボイドが形成されるのを防止することができる。このため、ボイドの形成に伴って、半導体装置の電気的特性、耐環境性、放熱性等の性能が低下することを防止することができる、という効果を奏する。
【0037】
また、第1注入室30内において、真空差圧法により接着剤102の注入を行う際、第2注入室40内において強制注入を行う際に使用する排気用ノズル110およびノズル側継手121により、接着剤排気口101bを密封するようにしている。このため、第1注入室30内において、排気用ノズル110およびノズル側継手121以外の密封用部材により接着剤排気口101bを密封する方法に比して、その分、作業の能率を高めることができる。
【0038】
(実施形態2)
実施形態1では、真空差圧法による注入と、強制注入とを組み合わせた方法であったが、強制注入のみによる接着剤の注入装置および接着剤の注入方法とすることができる。実施形態2はこのような装置および方法に関するものであり、図5は、その一例を示す装置の概略構成を示す図である。
図5に示された接着剤注入装置200も、図1に図示された接着剤注入装置100と同様、前処理室10、加熱室20、第1注入室30、第2注入室40、接着剤脱泡室50、接着剤段取室60、接着剤硬化室70を備えている。
【0039】
図5に示された接着剤注入装置200が、図1に図示された接着剤注入装置100と相違する点は下記の2点である。
(1)前処理室10、加熱室20、第1注入室30、接着剤脱泡室50には、各チャンバ内を真空に排気する真空ポンプPおよび排気バルブVが装備されていない。すなわち、接着剤注入装置200は、全てのチャンバに、チャンバ内を真空にするための装置が備えられていない。
(2)ノズル側継手121(121’)、ポンプ側継手122(122’)は、第1注入室30および第2注入室40の各チャンバ内に装備されており、チャンバ間で搬送されることはない。第1注入室30内のポンプ側継手122は、排気バルブV2を介して真空ポンプP2に接続され、第2注入室40内のポンプ側継手122’は、排気バルブV2’を介して真空ポンプP2’に接続されている。
【0040】
従って、実施形態2の接着剤注入装置200では、第1注入室30においても、第2注入室40においても、基板W内部の空隙に接着剤を強制注入する。この場合、第1注入室30と第2注入室40とでは、それぞれ、注入工程時間全体の半分程度の工程時間となるように割り振られている。図5に図示された他の構成部材は、図1に図示された構成部材と同一であり、対応する構成部材に同一の参照番号を付してその説明を省略する。
【0041】
図6は、図5に図示された接着剤注入装置200による接着剤注入方法の一実施形態を示す処理フロー図であり、以下、図6を参照して、本発明の接着剤注入方法の実施形態2を説明する。
【0042】
ステップS21〜25は、図4に図示されたステップS1〜S5と同一である。すなわち、接着剤注入口101aおよび排気口101bを有するシール材101が周側面に形成された基板Wが加熱室20において加熱された後、第1注入室30内に搬入され、基板Wに排気用ノズル110が装着される。
【0043】
次に、ステップS26において、ポンプ側継手122とノズル側継手121が嵌合された継手120が排気用ノズル110に接続される。ポンプ側継手122は、真空ポンプP2に接続されているので、この状態で、接着剤注入口101bは真空ポンプP2に連通する。
【0044】
次に、昇降機構51により、接着剤102が収容された接着剤収容容器105が接着剤脱泡室50から上昇されて、第1注入室30内に搬入され、シール材101の接着剤注入口101aが接着剤102中に浸漬された位置で停止する。
【0045】
そして、ステップS28に進み、排気バルブV2を開き、真空ポンプP2による基板W内部の空隙への接着剤102の強制注入(1)が行われる。この強制注入(1)は、ステップS29において、所定時間経過したと判断されるまで継続される。ここにおける所定時間は、注入工程時間全体の半分程度の工程時間となるように設定されている。
【0046】
強制注入(1)が所定時間経過したと判断されると、ステップS30に進み、ポンプ側継手122が嵌合された状態でノズル側継手121が排気用ノズル110から離間する。そして、強制注入(1)が完了した基板Wが、排気用ノズル110、接着剤102が収容された接着剤収容容器105と共に第2注入室40に搬送される。
【0047】
次に、ステップS31に進み、排気用ノズル110に、ポンプ側継手122’とノズル側継手121’が嵌合された継手120’が排気用ノズル110に接続される。ポンプ側継手122’は、真空ポンプP2’に接続されているので、この状態で、接着剤注入口101bは真空ポンプP2’に連通する。
【0048】
そして、ステップS32に進み、排気バルブV2’を開き、真空ポンプP2’による基板W内部の空隙への接着剤の強制注入(2)が行われる。この強制注入(2)はステップS33において、所定時間経過したと判断されるまで継続される。強制注入(2)は、ステップS28の強制注入(1)で充填しきれなかった残りの分の充填を行うものである。このように、この実施形態では、接着剤の注入を2回の工程に分けて行っているので、タクトタイムを低減することができる。
【0049】
ステップ33において所定時間が経過したと判断されると、強制注入が完了する。ステップS34〜38は、実施形態1におけるステップS15〜19と同一である。但し、ステップS35において、ポンプ側継手122’が嵌合された状態でノズル側継手121’を排気用ノズル110から離間した後、次の基板Wに作業を行うために第2注入室40内に待機する。
【0050】
本発明の実施形態2によれば、真空ポンプP1により基板W内部の空隙に残留しているガスを強制的に吸引し、基板W内部の空隙に接着剤を注入するので、実施形態1と同様、接着剤にボイドが形成されるのを防止することができる。
接着剤102の強制注入は、2回の工程に振り分けて行うので、タクトタイムを低減する。
実施形態1の場合と異なり、いずれのチャンバにも、チャンバ内を真空にするための装置が備えられていないので、接着剤注入装置を安価なものにすることができる。
【0051】
上記実施形態では、接着剤102の注入を2つのチャンバに分けて行っている。しかし、接着剤の注入は、1つのチャンバで行うようにしてもよいし、3つ以上のチャンバで行うようにしてもよい。
【0052】
なお、上記各実施形態においては、シール材101は、基板Wの周側面に、直接、形成する例で示したが、シール材101を他の方法で形成しても良い。例えば、内面側にシール材を形成したカセットに、基板Wを、その周側面がシール材により外部から密封されるように収納するようにしてもよい。この場合、シール材およびカセットには、接着剤注入口および排気口を形成しておく。
【0053】
接着剤注入口101aおよび排気口101bは、180度対向する位置に設ける必要はなく、また、それぞれ、1つでなく、一方または両方を複数箇所に設けてもよい。
【0054】
接着剤102の注入を、基板Wを接着剤注入装置100、200の上下方向に向けて配置した状態で接着剤102を注入したが、基板Wを接着剤注入装置100、200の水平方向に向けた状態で接着剤102を注入するようにしてもよい。
接着剤102を一度に注入処理する基板Wは、1つではなく、複数の基板Wを同時に行うようにしてもよい。
【0055】
基板Wを、それぞれ、多数の集積回路部が形成された複数の半導体ウエハを積層して形成した場合を例としたが、フェノール樹脂基板、ガラス板、セラミック板等の絶縁性基板上に、回路素子や配線が形成された多層回路基板を積層して形成したものとすることができる。
その他、排気用ノズル110と、ノズル側継手121およびポンプ側継手122からなる継手120とを一体化した吸気具を用いる等、本発明の接着剤注入装置は、発明の趣旨の範囲内で、種々、変形して適用することが可能であり、要は、接着剤注入口と排気口とを有するシール材により覆われた基板内部の空隙に接着剤を注入する装置であって、基板を加熱して、基板中に含有されているガスを放出させる加熱手段と、シール材の接着剤注入口に接着剤が接触および離間するように、接着剤収容容器を移動する移動手段と、シール材の排気口に連通する連通路を有するヘッド部を有し、ヘッド部の連通路を減圧して基板内部の空隙に前記接着剤を注入する吸気手段と、を具備するものであればよい。
【0056】
また、本発明の接着剤注入装置は、接着剤注入口と排気口とを有するシール材により覆われた基板内部の空隙に接着剤を注入する方法であって、基板を加熱して基板中に含有されているガスを放出させる加熱工程と、シール材の接着剤注入口に接着剤を接触させ、シール材の排気口にヘッド部の連通路を連通した状態で、真空ポンプにより吸引して、基板内部の空隙に前記接着剤を注入する吸引注入工程と、を含むものであればよい。
【符号の説明】
【0057】
10:前処理室、20:加熱室、21:ランプヒータ、30:第1注入室、40:第2注入室、50:接着剤脱泡室、60:接着剤準備室、70:接着剤硬化室、71:ランプヒータ、100:接着剤注入装置、101:シール材、101a:接着剤注入口、101b:接着剤排気口、102:接着剤、110:排気用ノズル(ヘッド部)、111:押圧部、112:開口部、120、120’:継手、121、121’:ノズル側継手、122、122’:ポンプ側継手、200:接着剤注入装置、W:基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤注入口と排気口とを有するシール材により覆われた基板内部の空隙に接着剤を注入する装置であって、
前記基板を加熱して、前記基板中に含有されているガスを放出させる加熱手段と、
前記シール材の接着剤注入口に接着剤が接触および離間するように、接着剤収容容器を移動する移動手段と、
前記シール材の前記排気口に連通する連通路を有するヘッド部を有し、前記ヘッド部の連通路を減圧して前記基板内部の空隙に前記接着剤を注入する吸気手段と、
を具備することを特徴とする接着剤注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の接着剤注入装置において、前記吸気手段は、前記ヘッド部に接続および離間可能な継手および前記基板内部から放出されたガスを吸引する真空ポンプを含むことを特徴とする接着剤注入装置。
【請求項3】
請求項2に記載の接着剤注入装置において、前記継手は、前記ヘッド部に接続および離間可能なヘッド側継手および前記ヘッド側継手に接続および離間可能とされ、かつ、前記真空ポンプに接続されたポンプ側継手を含むことを特徴とする接着剤注入装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接着剤注入装置において、前記加熱手段が装備された加熱室と、前記移動手段および前記吸気手段が装備された注入室とを備えることを特徴とする接着剤注入装置。
【請求項5】
請求項4に記載の接着剤注入装置において、前記注入室は、前記シール材の接着剤注入口に前記接着剤を接触し、前記シール材の排気口を前記継手のヘッド側継手で覆った状態で、基板外部圧力を基板内部圧力よりも大きい雰囲気とする差圧法により前記基板内部の空隙に前記接着剤を注入する第1注入室と、前記シール材の接着剤注入口に前記接着剤を接触し、前記シール材の排気口に前記継手が接続された状態で、前記吸気手段により前記基板内部の空隙に前記接着剤を注入する第2注入室とを備えることを特徴とする接着剤注入装置。
【請求項6】
請求項4に記載の接着剤注入装置において、前記注入室は、前記シール材の接着剤注入口に前記接着剤を接触し、前記シール材の排気口に前記継手を接続した状態で、前記吸気手段により前記基板内部の空隙に接着剤を注入する第1注入室と、前記第1注入室から搬入された前記基板の前記シール材の接着剤注入口に前記接着剤を接触し、前記シール材の排気口に前記継手を接続した状態で、前記吸気手段により前記基板内部の空隙に接着剤を注入する第2注入室とを備えることを特徴とする接着剤注入装置。
【請求項7】
接着剤注入口と排気口とを有するシール材により覆われた基板内部の空隙に接着剤を注入する方法であって、
前記基板を加熱して前記基板中に含有されているガスを放出させる加熱工程と、
前記シール材の接着剤注入口に接着剤を接触させ、前記シール材の排気口にヘッド部の連通路を連通した状態で、真空ポンプにより吸引して、前記基板内部の空隙に前記接着剤を注入する吸引注入工程と、
を含むことを特徴とする接着剤注入方法。
【請求項8】
請求項7に記載の接着剤注入方法において、前記吸引注入工程の前に、基板外部圧力を基板内部圧力よりも大きい雰囲気とする差圧法により前記基板内部の空隙に前記接着剤を注入する差圧注入工程を備えることを特徴とする接着剤注入方法。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかに記載の接着剤注入方法において、前記吸引注入工程は、前記シール材の接着剤注入口にヘッド部を接続し、前記ヘッド部に継手を接続する接続工程を含むことを特徴とする接着剤注入方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43980(P2012−43980A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183958(P2010−183958)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】