説明

接続材料、接続材料の製造方法及び半導体装置

【課題】Zn/Alクラッド材の接合温度を低下させることによって、使用温度域における残留熱応力を低減し、接合部の信頼性を向上させることができる接続材料を提供する。
【解決手段】Mgを含有するAl系合金層2と、Al系合金層2の両面に隣接するZn層3,4とからなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続材料の技術に係り、特に、この接続材料の構造及び製造方法、さらにこの接続材料を用いた半導体装置、パワー半導体装置、パワーモジュールなどに適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らが検討した技術として、接続材料を用いた半導体装置について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、従来の半導体装置の構造を示す図である。図4は、再溶融したはんだによるフラッシュを説明する図である。
【0003】
図3に示すように、半導体装置30は、半導体素子31がフレーム(ダイ)32上にはんだ33により接続され、ワイヤ34によりリード35のインナーリード36と半導体素子31の電極がワイヤボンディングされた後、封止用レジン37或いは不活性ガスにより封止されて製造される。
【0004】
この半導体装置30は、Sn−Ag−Cu系の中温の鉛フリーはんだによりプリント基板にリフローはんだ付けされる。Sn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだの融点は約220℃と高く、リフロー接続の際に接続部が最高260℃まで加熱されることが想定される。そのため、温度階層を目的として半導体装置30内部の半導体素子31のダイボンディングには、290℃以上の融点を有する高鉛はんだが使用される。高鉛はんだは、構成成分として85mass%以上の鉛を含有しており、2006年7月より施行されているRoHS指令で禁止されているSn−Pb共晶はんだに比べて環境への負荷が大きい。よって、高鉛はんだに替わる代替接続材料の開発が切望されている。
【0005】
現在、既に開発されているSn−Ag−Cu系等のはんだは融点が260℃以下であるため、半導体素子のダイボンディングに使用した場合、2次実装時(最高温度260℃)にはんだが溶融してしまう。接続部周りがレジンでモールド(樹脂封止)されている場合、内部のはんだが溶融すると、溶融時の体積膨張により、図4に示すように、フラッシュと言って封止用レジン37とフレーム32の界面からはんだ33が漏れ出すことがある。或いは、漏れ出さないまでも、漏れだそうと作用し、その結果、凝固後にはんだの中に大きなボイド38が形成されて不良品となる。代替材料の候補としては、融点の面からAu−Sn、Au−Si、Au−Ge等のAu系のはんだ、Zn、Zn−Al系のはんだ及びBi−Cu、Bi−Ag等のはんだが報告されており、世界中で検討が進められている。
【0006】
しかしながら、Au系のはんだは、構成成分としてAuを80mass%以上含有しており、コストの面で汎用性に難がある。Bi系のはんだは、熱伝導率が約9W/mKと現行の高鉛はんだより低く、高放熱性が要求されるパワー半導体装置及びパワーモジュール等への適用は難しいと推定できる。また、Zn及びZn−Al系のはんだは、約100W/mKと高い熱伝導率を有するが、濡れにくく(特にZn−Al系のはんだ)、はんだが硬く、接続後の冷却時に熱応力によって半導体素子が破壊しやすい等の問題がある。
【0007】
特許文献1や特許文献2では、Al:1〜7mass%、Mg:0.5〜6mass%、Ga:0.1〜20mass%、P:0.001〜0.5mass%、残部をZn、Ge:2〜9mass%、Al:2〜9mass%、P:0.001〜0.5mass%、残部をZn或いはGe:2〜9mass%、Al:2〜9mass%、Mg:0.01〜0.5mass%、P:0.001〜0.5mass%、残部をZnとすることにより、Zn系のはんだ合金のCuやNiに対する濡れ性の向上及び融点低下をさせている。しかしながら、AlやMgを成分とするため、接続時の加熱によりAl酸化物及びMg酸化物が溶融部表面に膜を生成する。これらの膜が濡れを阻害するため、スクラブ等により機械的に膜を破らない限り、十分に濡れが得られない虞がある。また、はんだの硬さに関して、改善がなされていないため、接続後の冷却時或いは温度サイクル時の熱応力による半導体素子の破壊に対する改善が期待できない。
【0008】
特許文献3では、Zn−Al系合金の最表面にIn、Ag、Au層を設けることにより、Zn−Al系合金表面の酸化を抑制し、濡れ性の向上を図っている。しかしながら、In、Ag及びAu層を設けるためには、Zn−Al系合金の表面にめっき及び蒸着等の処理が不可欠であり、材料製造のプロセス増加に繋がる。また、上述したように、Inを添加した場合に硬さを低下させることが可能であるが、接続後の冷却時の熱応力による半導体素子の破壊を抑制するほどの効果は期待できない。
【0009】
一方、特許文献4では、従来のZn−Al系のはんだの応力緩和性能を改善する、Zn/Al/Znクラッド構造のはんだ代替材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−358539号公報
【特許文献2】特開2004−358540号公報
【特許文献3】特開2002−261104号公報
【特許文献4】特開2008−126272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、Zn/Al/Znクラッド材は、合金化した際の融点(液相線温度)が382℃であり、Pb−Sn高温はんだ、Au−Sn系のはんだなどの他の高温はんだと比べて、著しく高温である。接合温度が高いと、凝固後、室温まで冷却した際の、接合部の熱収縮量がより大きくなるため、接合物と被接合物の熱膨張率差によって生じる熱応力が大きくなり、仮に接合部にクラックの起点が形成されたとき、その進展が促進される。クラックが進展すると、接合部の接合強度が低下し、接合部自体が破壊される虞がある。また、同時に熱抵抗も増大するため、隣接している被接合物の温度上昇を招き、システムが機能しなくなる虞がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、Zn/Alクラッド材の接合温度を低下させることによって、使用温度域における残留熱応力を低減し、接合部の信頼性を向上させた接続材料、接続材料の製造方法及び半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の両面に隣接するZn層とからなる接続材料である。
【0014】
請求項2の発明は、前記Al系合金層に含有されるMgが、2.0質量%以上5.6質量%以下である請求項1に記載の接続材料である。
【0015】
請求項3の発明は、第1のZn層の上にMgを含有するAl系合金層を重ね、前記Al系合金層の上に第2のZn層を重ねて、クラッド圧延により製造する接続材料の製造方法である。
【0016】
請求項4の発明は、第1のZn層の上にMgを含有するAl系合金層を重ね、前記Al系合金層の上に第2のZn層を重ねて、加圧成形により製造する接続材料の製造方法である。
【0017】
請求項5の発明は、半導体素子を接続材料を介してフレーム上に実装し、前記半導体素子の電極をインナーリードにワイヤボンディングで接続した後、これらをレジンで樹脂封止した半導体装置において、前記接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の両面に設けられたZn層とからなる半導体装置である。
【0018】
請求項6の発明は、半導体素子を基板上に実装し、前記半導体素子の電極をインナーリードにワイヤボンディングで接続した後、前記基板上にキャップ用接続材料を介して金属キャップを被せて気密封止した半導体装置において、前記キャップ用接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn層とからなる半導体装置である。
【0019】
請求項7の発明は、前記半導体素子は、素子用接続材料を介して前記基板上に実装され、前記素子用接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の両面に設けられたZn層とからなる請求項6に記載の半導体装置である。
【0020】
請求項8の発明は、半導体素子を接続材料を介して下面にバンプを有する基板上に実装した半導体装置において、前記接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn層とからなる半導体装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、Zn/Alクラッド材の接合温度を低下させることによって、使用温度域における残留熱応力を低減し、接合部の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る接続材料を示す断面図である。
【図2】図1の接続材料を用いた評価用接合体を示す断面図である。
【図3】従来の半導体装置を示す構造図である。
【図4】図3の半導体装置において、再溶融したはんだによるフラッシュを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明者らは、Al系合金層とZn層とで構成されるクラッド材について鋭意検討した結果、Mgを含有するAl系合金層を用いることで、従来のクラッド材より接合温度を低下させることができることを見出した。
【0024】
以下、この知見に基づいて完成した本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る接続材料を示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態に係る接続材料1は、フレーム又は基板上に半導体素子を実装、或いは半導体素子を気密封止する際に用いるものであり、Mgを含有するAl系合金層2と、Al系合金層2の両面に隣接するZn層3,4とからなる。
【0027】
接続材料1は、第1のZn層3の上にMgを含有するAl系合金層2を重ね、Al系合金層2の上に第2のZn層4を重ねて、クラッド圧延又は加圧成形により製造する。
【0028】
クラッド圧延又は加圧成形を行うと、Al系合金層2とZn層3,4とが接触すると同時に圧力によって大きな変形が生じ、Al系合金層2及びZn層3,4の表面に形成されていた酸化物膜が破れ、新生面により金属接合される。また、クラッド圧延又は加圧成形では、AlとZnの拡散が顕著になる温度まで熱負荷がかからない。よって、Alが表面のZn層3,4に拡散し最表面まで達することはなく、接続時に良好な濡れを得ることができる。
【0029】
この接続材料1の作用を従来のクラッド材の作用と共に述べる。
【0030】
従来の純Al系合金層とZn層とで構成されるクラッド材の場合、材料を加熱昇温する際、Zn−Al2元系合金の共晶温度である382℃で初めて液相となる部分が生じる。液相が生じると隣接する固相は液相に高速に溶融拡散し、ろう材層全体が溶融する。さらに残留するAl系合金層からの拡散が継続し、液相点が上昇する。Al系合金層が存在する限り、液相点が上昇し、液相が減少、固相となる。
【0031】
これに対して、本実施の形態に係る接続材料1の場合、Al系合金層2としてMgを含有した合金を用いるので、Al系合金層2とZn層3,4の界面での拡散反応では、Zn−Al−Mg3元系合金を形成する。Mgが、Zn及びAlと合金化することで、液相線温度が低下する。このとき、Mgの含有濃度によって低下温度域が上下する。
【0032】
Al系合金層2に含有されるMgは、2.0質量%以上5.6質量%以下であるとよい。これは、Mgの含有量が2.0質量%未満だと、接続材料1の融点低下が3℃以下となり、液相線温度の低下が十分でなく、5.6質量%を超えると、汎用Al合金展進材のうちもっともMg成分を含有するA5056(5.6質量%)を超えることになり、別途Al合金を特別に鋳造、作製する必要があるためである。クラッド材の構成材として特殊な合金を用いることは、コストアップに繋がり、製品への適用効果が著しく低下する。
【0033】
ここで、上述の条件を満たす汎用Al合金として、A5052(平均Mg含有率2.5質量%)、A5154(平均Mg含有率3.5質量%)、A5082(平均Mg含有率4.5質量%)、A5056(平均Mg含有率5.0質量%)などが挙げられる。
【0034】
本実施の形態に係る接続材料1は、Mgを含有するAl系合金層2と、Al系合金層2の両面に隣接するZn層3,4とからなるため、純Al系合金層とZn層とで構成された従来のクラッド材に比べて液相線温度を低く、すなわち接合温度を低くすることができる。そのため、接合部に生じる熱応力を低減させることが可能となる。
【0035】
また、接続材料1では、Al系合金層2に含有されるMgが、2.0質量%以上5.6質量%以下であるため、低コストで、液相線温度を十分に低下させることができる。
【0036】
以上要するに、本発明によれば、Zn/Alクラッド材の接合温度を低下させることによって、使用温度域における残留熱応力を低減し、接合部の信頼性を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、Al系合金層2の両面にZn層3,4を設けたが、Al系合金層2の最表面にZn層3を設けるようにしても良い。
【0038】
この接続材料1は、半導体装置、パワー半導体装置、パワーモジュール等の半導体装置のダイボンディングや、気密封止の封止材、フリップチップボンディングなどに有効に活用することができる。
【0039】
一例として、接続材料1の半導体装置への適用例について説明する。
【0040】
ここでは、半導体素子をフレーム上に実装する半導体装置(ダイボンディング構造)、金属キャップを基板上に被せる半導体装置(気密封止構造)、バンプにより接続する半導体装置(フリップチップ実装構造)を説明する。
【0041】
<適用例1>
半導体素子を接続材料を介してフレーム(ダイ)上に実装し、半導体素子の電極をインナーリードにワイヤボンディングで接続した後、これら半導体素子、フレーム、インナーリード、ワイヤをレジンで樹脂封止したダイボンディング構造の半導体装置において、半導体素子をフレーム上に実装する際に用いる接続材料として本発明の接続材料1を用いることができる。
【0042】
<適用例2>
半導体素子を基板(モジュール基板)上に実装し、半導体素子の電極をインナーリードにワイヤボンディングで接続した後、基板上にキャップ用接続材料を介して金属キャップを被せて半導体素子、インナーリード、ワイヤを気密封止した気密封止構造の半導体装置において、金属キャップを基板上に接続するキャップ用接続材料として、Al系合金層2の最表面にZn層3を設けた本発明の接続材料を用いることができる。さらに、半導体素子を基板上に実装する際に用いる接続材料として本発明の接続材料1を用いることもできる。
【0043】
<適用例3>
半導体素子を接続材料を介して下面にバンプを有する基板上に実装した半導体装置において、半導体素子を基板上に実装する際に用いる接続材料として、Al系合金層2の最表面にZn層3を設けた本発明の接続材料を用いることができる。
【0044】
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0045】
すなわち、前記説明では、本発明の適用について、半導体装置のダイボンディングを一例に挙げて説明したが、ダイボンディングさせる半導体装置であれば、多様な半導体装置に適用できる。これらには、例えば、オルタネータ用ダイオード、IGBTモジュール、RFモジュール等のフロントエンドモジュール、自動車用パワーモジュール等が挙げられる。
【0046】
また、前記説明では、半導体装置をモジュール基板にリフロー実装する場合を一例に挙げて説明したが、例えば、MCM(Multi Chip Module)構成に使用する場合にも当然に適用できるものである。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の数値的根拠を述べる。
【0048】
実施例1〜12及び比較例1〜6で用いる各接続材料は、Al系合金層の両面にZn層を重ねて得られた元板を、それぞれクラッド圧延(加工度80%)し、その後仕上圧延を数回行い、所定の製品厚さに加工して作製した。この作製した各接続材料の板厚構成を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1の各パターンにおける元板厚、クラッド圧延後の板厚、最終板厚は以下の通りである。
・パターン1
元板厚=Zn:0.2mm、Al:0.7mm、Zn:0.2mm
クラッド圧延後の板厚=Zn:0.04mm、Al:0.14mm、Zn:0.04mm最終板厚=Zn:0.02mm、Al:0.07mm、Zn:0.02mm
・パターン2
元板厚=Zn:0.2mm、Al:1.1mm、Zn:0.2mm
クラッド圧延後の板厚=Zn:0.04mm、Al:0.22mm、Zn:0.04mm最終板厚=Zn:0.02mm、Al:0.11mm、Zn:0.02mm
・パターン3
元板厚=Zn:0.45mm、Al:0.15mm、Zn:0.45mm
クラッド圧延後の板厚=Zn:0.09mm、Al:0.03mm、Zn:0.09mm最終板厚=Zn:0.045mm、Al:0.015mm、Zn:0.045mm
【0051】
実施例1〜12及び比較例1〜6では、図2に示すように、半導体装置を模擬した評価用接合体に、接合用クラッド材21を用いたものである。この評価用接合体は、半導体素子22と、この半導体素子22を実装するベース板23で構成され、半導体素子22とベース板23は接合用クラッド材21で接合されて構成される。
【0052】
この評価用接合体の作製においては、半導体素子22の接合面にはNi/Auめっきを施し、またベース板23の接合面にはNiめっきを施した。接合は半導体素子22とベース板23との間に、半導体素子22の接合面と同面積の接合用クラッド材21を介して配置し、窒素雰囲気中で熱処理を行い接合させた。半導体素子22の大きさは、板厚0.5mm×5mm角、ベース板23の大きさは、板厚3mm×30mm角とした。接合熱処理の際には、半導体素子22の上にステンレス製の重し50gを載せ、窒素雰囲気中で加熱した。
【0053】
実施例1〜12は、いずれも表1のパターン1,2,3において、心材であるAl系合金として、それぞれJIS規格のA5052、A5154、A5056、A5082を用いた例である。また、比較例1〜6は、心材であるAl系合金として、JIS規格のA1050及びA1100を用いた例である。
【0054】
これらについて、接合時の濡れ性について評価した結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
接合温度は、400℃及び380℃、接合時間はいずれも5分間であった。濡れ性については、半導体素子22の面積に対して80%以上の濡れが得られた場合に○、80%未満の場合を×とした。
【0057】
この評価の結果、接合温度400℃については、実施例1〜12及び比較例1〜6のいずれの評価材も80%以上の濡れを得られた。
【0058】
一方、接合温度を380℃とした場合、実施例1〜12いずれの評価材も80%以上の濡れを得られたが、Mgを含有しない純Al系の材料(A1050及びA1100)を使用した接合用クラッド材を用いた比較例1〜6の場合は、融点が382℃で変化がないため、いずれもベース板23に対して80%未満の濡れとなった。
【0059】
ここで、実施例1〜12のうち、接合温度を380℃としたものについて、接合部の断面調査を行った結果、接合部に発生するクラック長さは、いずれも断面長に対して1%未満であったのに対し、比較例1〜6のうち、400℃で接合したものについて断面調査を行った結果、接合部に発生するクラック長さは、断面長に対して5%以上であった。クラック長さの測定方法は、接合用クラッド材の側辺と同じ方向の切断面の組織を観察し、クラックの長さを測定するものであり、複数箇所に発生した場合にはその合計長さを測定した。これらのクラックの発生は、接合後の冷却時に半導体素子22とベース板23との線膨張率差によって生じる熱応力を緩和できずに生じたものだが、実施例1〜12は接合温度を低下させ、室温との温度差を縮小できるため、比較例1〜6と比べて、接合後の使用環境におけるクラックの進展を著しく低減でき、接合部の剥離及び半導体素子22の破壊などの可能性を低減できる。
【0060】
以上により、実施例1〜12によれば、Mgを2.0質量%以上5.6質量%以下含有する汎用Al合金を使用した接合用クラッド材を、半導体装置のダイボンディング接合に用いることにより、より低温の接合温度で良好の濡れを得ることができる。また、その結果、接合後の室温における接合部に残留する熱応力が低減されるため、高い接続信頼性を得ることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 接続材料
2 Al系合金層
3,4 Zn層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の両面に隣接するZn層とからなることを特徴とする接続材料。
【請求項2】
前記Al系合金層に含有されるMgが、2.0質量%以上5.6質量%以下である請求項1に記載の接続材料。
【請求項3】
第1のZn層の上にMgを含有するAl系合金層を重ね、前記Al系合金層の上に第2のZn層を重ねて、クラッド圧延により製造することを特徴とする接続材料の製造方法。
【請求項4】
第1のZn層の上にMgを含有するAl系合金層を重ね、前記Al系合金層の上に第2のZn層を重ねて、加圧成形により製造することを特徴とする接続材料の製造方法。
【請求項5】
半導体素子を接続材料を介してフレーム上に実装し、前記半導体素子の電極をインナーリードにワイヤボンディングで接続した後、これらをレジンで樹脂封止した半導体装置において、前記接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の両面に設けられたZn層とからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
半導体素子を基板上に実装し、前記半導体素子の電極をインナーリードにワイヤボンディングで接続した後、前記基板上にキャップ用接続材料を介して金属キャップを被せて気密封止した半導体装置において、前記キャップ用接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn層とからなることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記半導体素子は、素子用接続材料を介して前記基板上に実装され、前記素子用接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の両面に設けられたZn層とからなる請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体素子を接続材料を介して下面にバンプを有する基板上に実装した半導体装置において、前記接続材料は、Mgを含有するAl系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn層とからなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167713(P2011−167713A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32840(P2010−32840)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】