説明

揺動部材の車両室内導入部のカバー装置

【課題】車両のボディーパネルと該ボディーパネルの貫通部に通す複数の揺動部材との間の隙間を塞いで騒音や水、熱などが運転室内へ侵入することを防止する。
【解決手段】キャブ16のボディーパネル21外面に、該ボディーパネル21に設けた複数の揺動部材20を通す貫通部22を覆うブラケット23を取り付け、該ブラケット23に蛇腹部材24の一端部を嵌合させると共に該一端部をバンド25で締め付けて、蛇腹部材24をブラケット23に固定支持させる。ブラケット23と蛇腹部材24には、複数の揺動部材20を挿通させた吸音部材26を層状に収納する。又、蛇腹部材24の他端部に吸音部材26のキャップ27を嵌合させると共に該他端部をバンド28で締め付けて、キャップ27を蛇腹部材24に固定する。揺動部材20が揺動したときに蛇腹部材24も追従して移動するので、ボディーパネル21と揺動部材20との間の隙間を塞ぎ続けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボディーパネルを貫通させて運転室などの室内に導かれて揺動させられる複数本のホースの如き揺動部材の室内への貫通部に用いるカバー装置に関するもので、詳しくは、ボディーパネルに設けた貫通部と該貫通部に通して室内に導入する複数の揺動部材との間の隙間を塞ぐために用いられる揺動部材の車両室内導入部のカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に備えられるボディーパネルには、車外と車内を連通する貫通部を多数設けて、配管部材やステアリングシャフトなどを通すようにしてあり、該ステアリングシャフトなどと上記ボディーパネルに設けてある貫通部との間に生じる隙間は、一般的に、カバー装置により塞いで、車外から車内に、エンジン音や、雨水などが侵入するのを防ぐようにしてある。
【0003】
このようなカバー装置としては、図5に一例を示す如き、ステアリングとダッシュパネルとの間の隙間を塞ぐステアリングカバーがある。該ステアリングカバー1は、ステアリングシャフト2を覆うインナーカバー3と、該インナーカバー3の外周側に配置されるアウターカバー4とを備えてなる構成としてあり、上記インナーカバー3は、ステアリングシャフト2の外周側に配置される第1筒状部5と、該第1筒状部5の下端をダッシュパネルの貫通部6aに一致させて該貫通部6aの周辺部に当接させるようにする第1フランジ部7と、上記第1筒状部5の上端をステアリングシャフト2の外周面に密着させるようにする蛇腹状の第1上部壁8とを一体に備えてなる構成としてある。一方、上記アウターカバー4は、上記第1筒状部5の外側に間隙部9を形成するように設けられる第2筒状部10と、該第2筒状部10の下端に外側に延びるように設けられて上記第1フランジ部7に当接するようにしてある第2フランジ部11と、上記第2筒状部10の上端部を上記第1筒状部5の上端部に接続させた第2上部壁12とを一体に備えた構成としてある。なお、図5中13はエンジンルーム、14は車室、15はステアリングカバー1をダッシュパネル6に取り付けるためのブラケットである。
【0004】
かかる構成において、図示してないハンドルを操作する際に、ステアリングシャフト2の角度を変更すると、該角度変更に伴って蛇腹状の第1上部壁8が伸縮することになり、該第1上部壁8でステアリングシャフト2の角度変更を吸収することができる。これにより、該第1上部壁8のステアリングシャフト2への密着状態を維持して、エンジンルーム13からダッシュパネル6の貫通部6aを介して車室14に騒音、熱などが侵入してくるのを防止するようにしてある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−240511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載されたものを、建設機械におけるステアリング油圧配管の如き複数の揺動部材とボディーパネルとの間の隙間を塞ぐカバーとして用いる場合には、複数の揺動部材の移動に伴って上記カバーと上記複数の揺動部材との間に隙間が生じやすくなることから、外部から騒音や熱、水などが上記隙間を介して運転室内へ侵入するのを効果的に防ぐことができないという問題がある。又、複数の揺動部材とボディーパネルとの間を塞ぐ複雑な形状のカバーを、専用品として射出成形により製作しなければならず、イニシャルコストが高くなるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、車両のボディーパネルに設けた貫通部と該貫通部を通して室内に導入する複数の揺動部材との間の隙間を塞いで騒音や水、熱などが室内へ侵入するのを効果的に防げるようにする揺動部材の車両室内導入部のカバー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、車両のボディーパネルに複数の揺動部材を貫通させるように設けてある貫通部の周辺部に、該貫通部を覆うようにフレキシブルダクトの一端側を取り付けるようにし、該フレキシブルダクトの内側に、上記複数の揺動部材を挿通させた吸音部材を取り付けて複数の揺動部材をカバーするようにした構成とする。
【0009】
又、請求項2に対応して、上記構成における吸音部材を、揺動部材に沿う方向に層状に配置してフレキシブルダクトの内側に取り付けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の揺動部材の車両室内導入部のカバー装置によれば、以下の如き優れた効果を発揮する。
(1)車両のボディーパネルに複数の揺動部材を貫通させるように設けてある貫通部の周辺部に、該貫通部を覆うようにフレキシブルダクトの一端側を取り付けるようにし、該フレキシブルダクトの内側に、上記複数の揺動部材を挿通させた吸音部材を取り付けて複数の揺動部材をカバーするようにした構成としてあるので、揺動部材と吸音部材、及び、吸音部材とフレキシブルダクトの密着状態をそれぞれ維持しつつ、揺動部材の揺動に追従してフレキシブルダクトを屈曲させることができ、外部からボディーパネルに設けてある上記貫通部を通して車内に、騒音、熱、水などが侵入することを防止することができる。又、複数の揺動部材とボディーパネルとの間を塞ぐ複雑な形状のカバー装置を、射出成形により製作しないで済むため、大きなイニシャルコストを不要にできる。
(2)又、吸音部材を、揺動部材に沿う方向に層状に配置してフレキシブルダクトの内側に取り付けるようにした構成としてあるので、騒音の音質に対応させて吸音部材の構成を容易に変更することができ、ボディーパネルに設けてある複数の揺動部材を通す貫通部から車内へ騒音が侵入することをより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の揺動部材の車両室内導入部のカバー装置の実施の一形態を示す概略断面図である。
【図2】図1のX部拡大図である。
【図3】図2のA−A方向矢視図である。
【図4】図1の実施の形態における揺動部材の車両室内導入部のカバー装置の概略斜視図である。
【図5】従来のカバー装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1及至図4は本発明の揺動部材の車両室内導入部のカバー装置の実施の一形態を示すもので、キャブ16内の運転席17前方にチルト機構18を介して設置されたステアリングユニット19を操作することにより、該ステアリングユニット19に接続された油圧ホースとしての複数のステアリング油圧配管20を介して図示してない移動機構に操作力を加えて移動方向を制御するようにしてある建設機械における上記キャブ16のボディーパネル21外面に、該ボディーパネル21に設けた上記複数のステアリング油圧配管20をまとめて通すようにするための貫通部(貫通孔)22を覆うようにブラケット23を取り付ける。該ブラケット23の先端部には、外方へ突出させて蛇腹部材支持用筒状部23aを設けて、該蛇腹部材支持用筒状部23aに、フレキシブルダクトとしての蛇腹部材24の一端部を嵌合させると共に該蛇腹部材24の一端部をバンド25で締め付けて、該蛇腹部材24を上記ブラケット23に固定支持させるようにし、且つ該ブラケット23の蛇腹部材支持用筒状部23aと上記蛇腹部材24の内側に、上記複数のステアリング油圧配管20を挿通させた複数の吸音部材26を蛇腹部材24の長手方向に層状に収納する。更に、上記蛇腹部材24の他端部には、吸音部材26のキャップ27を嵌合させて、該蛇腹部材24の他端部の外側をバンド28で締め付け、上記キャップ27を上記蛇腹部材24の他端部に固定するようにした構成としてある。
【0014】
詳述すると、上記ブラケット23は、図2に詳細を示す如く、キャブ16を構成するボディーパネル21に複数のステアリング油圧配管20を通すために設けてある貫通部(貫通孔)22の外側を覆うように該貫通部22周辺部のボディーパネル21の外側面にボルト23bにて取り付けるようにしてあり、該ブラケット23の一端側(先端部)は、図2,4に示す如く、中央部分に上記複数のステアリング油圧配管20を通すための開口部を有し、且つ該一端側の外周縁部に、上記蛇腹部材24の一端部を外周側に嵌合させるようにする蛇腹部材支持用筒状部23aを突出させて設けた構成としてある。
【0015】
上記蛇腹部材24は、図2,4に示す如く、蛇腹部24aと該蛇腹部24aの両端部に所要の幅寸法の筒状部24bと24cとを有し、上記蛇腹部材支持用筒状部23aに筒状部24bを外嵌めしてその外周側をバンド25で締め付けることにより、筒状部24bを上記ブラケット23の上記筒状部23aに固定することができるようにしてある。上記蛇腹部材24の内周側と上記ブラケット23の蛇腹部材支持用筒状部23a内周側には、図示してないエンジンなどで発生する騒音の音質に対応させて発泡率の異なる吸音部材26を、上記ステアリング油圧配管20の長手方向に沿う方向に層状に収納するようにしてある。又、上記吸音部材26には、上記複数のステアリング油圧配管20をそれぞれ挿通させるようにしてあると共に、図3,4に示す如く、該ステアリング油圧配管20を外周面側から横方向に嵌入できるようにするため、外側に放射状に延びるスリット29を形成するようにしてある。更に、上記蛇腹部材24の反ブラケット23側の筒状部24cに内嵌めするリング状のキャップ27は、図2に示す如く、断面略L字状に形成してあり、該キャップ27を吸音部材26に押し付けて蛇腹部材24に内嵌めすることにより、上記吸音部材26のステアリング油圧配管20に沿う方向への移動を防止すると共に、上記吸音部材26をキャップ27やブラケット23に密着させるようにしてある。
【0016】
かかる構成において、チルト機構18を介してステアリングユニット19を、図2において実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に揺動させると、これに伴ってステアリングユニット19に接続させてある複数のステアリング油圧配管20も揺動することになる。このとき、蛇腹部材24の蛇腹部24aが屈曲することにより該蛇腹部材24が上記ステアリング油圧配管20に沿う方向に追従することになるので、ステアリング配管20と吸音部材26の密着状態や吸音部材26とキャップ27の密着状態、吸音部材26とブラケット23の密着状態がそれぞれ維持されることになる。
【0017】
このように、本発明の揺動部材の車両室内導入部のカバー装置によれば、建設機械におけるキャブ16のボディーパネル21の外面に、該ボディーパネル21に設けてある複数のステアリング油圧配管20を通す貫通部22を覆うようにブラケット23を取り付けて、該ブラケット23の先端部に突出させた蛇腹部材支持用筒状部23aに、蛇腹部材24の一端部の筒状部24bを嵌合させると共に該蛇腹部材24の筒状部24bをバンド25で締め付けて、該蛇腹部材24を上記ブラケット23に固定支持させ、且つ該ブラケット23の蛇腹部材支持用筒状部23aと上記蛇腹部材24に、上記複数のステアリング油圧配管20を挿通させた吸音部材26を層状に収納し、更に、上記蛇腹部材24の他端部の筒状部24cに上記吸音部材26のキャップ27を嵌合させると共に、上記蛇腹部材24の筒状部24cをバンド28で締め付けて、上記キャップ27を上記蛇腹部材24に固定するようにした構成としてあるので、ステアリング配管20と吸音部材26、吸音部材26とキャップ27、吸音部材26とブラケット23の密着状態を維持しつつ、ステアリング油圧配管20の揺動に追従して蛇腹部材24を屈曲させることができ、外部からボディーパネル21に設けてある上記貫通部22を通してキャブ16内に、騒音、熱、水などが侵入することを防止することができる。又、複数のステアリング油圧配管20とボディーパネル21との間を塞ぐ複雑な形状のカバー装置を、射出成形により製作しないで済むため、大きなイニシャルコストを不要できる。
【0018】
又、吸音部材26を、ステアリング油圧配管20に沿う方向に層状に配置してブラケット23の蛇腹部材支持用筒状部23a内側と蛇腹部材24内側に層状に設けるようにしてあることから、騒音の音質に対応させて吸音部材26の構成を容易に変更することができ、ボディーパネル21に設けてある複数のステアリング油圧配管20を通す貫通部22からキャブ16内へ騒音が侵入することを効果的に防止することができる。
【0019】
更に、吸音部材26のステアリング油圧配管20を挿通させた位置から外側に放射状にスリット29が設けてあるので、ステアリング油圧配管20を容易に吸音部材26に着脱させることができる。
【0020】
なお、上記実施の形態では、一例として、建設機械におけるキャブ16のボディーパネル21のステアリング油圧配管20連通部に適用した場合について説明したが、これに限られるものではなく、建設機械のステアリング油圧配管20の如き複数の揺動部材が車両のボディーパネルを連通する部分であれば、本発明の揺動部材の車両室内導入部のカバー装置を適用することができること、層状に設ける吸音部材26の一部を鉄板として、低周波音に対応できるようにしてもよいこと、蛇腹部材24の端部にフランジ部を設ける等して、蛇腹部材24をボディーパネル21に直接取り付けるようにしてもよいこと、ボディーパネル21とブラケット23の間、蛇腹部材支持用筒状部23aと蛇腹部材24の間、キャップ27と蛇腹部材24の間に、それぞれ吸音材を設けるようにしてもよいこと、バンド25,28を用いて、蛇腹部材24をブラケット23に固定支持させたり、キャップ27を蛇腹部材24に固定する場合について説明してあるが、これに限られるものではなく、たとえば、ねじ部材などを用いて、蛇腹部材24とブラケット23、キャップ27と蛇腹部材24をそれぞれ締結して固定するようにしてもよいこと、キャップ27により吸音部材26を固定するようにした場合について説明したが、これに限られるものではなく、蛇腹部材24に吸音部材26を直接取り付けて該吸音部材26を固定するようにしてもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0021】
20 ステアリング油圧配管(揺動部材)
21 ボディーパネル
22 貫通部(貫通孔)
24 蛇腹部材(フレキシブルダクト)
26 吸音部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディーパネルに複数の揺動部材を貫通させるように設けてある貫通部の周辺部に、該貫通部を覆うようにフレキシブルダクトの一端側を取り付けるようにし、該フレキシブルダクトの内側に、上記複数の揺動部材を挿通させた吸音部材を取り付けて複数の揺動部材をカバーするようにした構成を有することを特徴とする揺動部材の車両室内導入部のカバー装置。
【請求項2】
吸音部材を、揺動部材に沿う方向に層状に配置してフレキシブルダクトの内側に取り付けるようにした請求項1記載の揺動部材の車両室内導入部のカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−251658(P2011−251658A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128333(P2010−128333)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000198293)IHI建機株式会社 (96)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】