説明

搬送方法及び装置、並びに製造方法及び装置

【課題】フィルム状部材を目標とする経路に沿って正確に搬送するとともに、その表面に交差する方向に容易に移動する。
【解決手段】フィルム状のTFT基板TPを搬送する搬送方法において、TFT基板TPをこの表面に沿った移動方向B1に移動する工程と、TFT基板TPの表面に沿って移動方向B1に交差する方向に長手方向が配置され、移動方向B1に沿って配列される複数のロッド30でTFT基板TPの複数の表面部位を支持する工程と、TFT基板TPを支持している複数のロッド30を同期させて移動方向B1に移動する工程と、複数のロッド30をTFT基板TPの表面に交差するZ方向に移動する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状の部材を搬送する搬送技術、及びその搬送技術を用いて2つのフィルム状部材を貼り合わせる製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子又は液晶表示素子等を製造する際に使用される露光装置において、従来の一般的な露光対象は、フォトレジストが塗布された半導体ウエハ又はガラス基板等の剛性の高い平板状の物体であった。最近では、大面積のデバイスを効率的に製造するために、露光対象として、ロール状に巻いて保管可能な可撓性を有する長尺のフィルム状部材が使用されることがある。
【0003】
このような長尺のフィルム状部材に所定のパターンを露光するために、フィルム状部材を搬送する搬送装置が使用される。従来の搬送装置は、そのフィルム状部材が掛け渡される2個の静止したローラを備え、そのフィルム状部材の張力を一定に保った状態で、そのローラ間の露光領域に対してそのフィルム状部材を連続的又は間欠的に一定の方向に移動させていた(例えば、特許文献1又はこれに対応する米国特許出願公開第2006/0066715号明細書参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−098718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の搬送装置においては、フィルム状部材が掛け渡される2個のローラが静止しており、その上をフィルム状部材が摺動しながら移動するため、振動等によってフィルム状部材の位置精度(一連の時刻における目標位置に対する位置決め精度)が低下する恐れがあった。
さらに、露光装置以外の例えば2つのフィルム状部材を貼り合わせる装置を想定した場合、搬送中に少なくとも一方のフィルム状部材をその表面に交差する方向に移動する必要があるため、従来の搬送装置をそのまま適用することは困難である。
【0006】
本発明の形態は、斯かる点に鑑み、搬送中のフィルム状部材を目標とする経路に沿って正確に搬送するとともに、搬送中にそのフィルム状部材をその表面に交差する方向に容易に移動できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、フィルム状部材を搬送する搬送方法が提供される。この搬送方法は、そのフィルム状部材を該フィルム状部材の表面に沿った移動方向に移動する工程と、そのフィルム状部材の表面に沿ってその移動方向に交差する方向に長手方向が配置され、その移動方向に沿って配列される複数の棒状部材でそのフィルム状部材の複数の表面部位を支持する工程と、そのフィルム状部材を支持しているその複数の棒状部材を同期させてその移動方向に移動する工程と、その複数の棒状部材をそのフィルム状部材の表面に交差する方向に移動する工程と、を含むものである。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、第1のフィルム状部材と第2のフィルム状部材とを貼り合わせる製造方法が提供される。この製造方法は、その第1のフィルム状部材を本発明の第1の態様の搬送方法を用いて搬送し、その第2のフィルム状部材をその第1のフィルム状部材に対向させて搬送し、その第1及び第2のフィルム状部材に付設された位置合わせ用マークを検出し、その位置合わせ用マークの検出結果に基づいて、その第1及び第2のフィルム状部材の位置合わせを行い、その棒状部材で支持され、かつその移動方向に移動しているその第1のフィルム状部材とその第2のフィルム状部材とを貼り合わせるものである。
【0009】
また、本発明の第3の態様によれば、フィルム状部材を搬送する搬送装置が提供される。この搬送装置は、そのフィルム状部材を支持するために、そのフィルム状部材の表面に沿った移動方向に交差する方向に長手方向が配置され、その移動方向に沿って配列される複数の棒状部材と、その複数の棒状部材のうちでそのフィルム状部材を支持している複数のその棒状部材を同期させてその移動方向に移動する駆動装置と、その複数の棒状部材をそのフィルム状部材の表面に交差する方向に移動する移動機構と、を備えるものである。
【0010】
また、本発明の第4の態様によれば、第1のフィルム状部材と第2のフィルム状部材とを貼り合わせる製造装置が提供される。この製造装置は、その第1のフィルム状部材を搬送するための、本発明の第3の態様による第1の搬送装置と、その第2のフィルム状部材を、その第1のフィルム状部材に対向させて搬送するための第2の搬送装置と、その第1及び第2のフィルム状部材に付設された位置合わせ用マークを検出するマーク検出系と、を備え、その位置合わせ用マークの検出結果に基づいて、その第1及び第2のフィルム状部材の位置合わせを行い、その棒状部材で支持され、かつその移動方向に移動しているその第1のフィルム状部材とその第2のフィルム状部材とを貼り合わせるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、フィルム状部材を支持している複数の棒状部材を移動方向に同期して移動しているため、フィルム状部材を目標とする経路に沿って正確に搬送できる。さらに、複数の棒状部材をフィルム状部材の表面に交差する方向に移動することによって、フィルム状部材をその表面に交差する方向に容易に移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の一例に係る貼着装置10の構成を示す図である。
【図2】図1の無限軌道式移動装置28の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2の無限軌道32及びその駆動機構を示す正面図である。
【図4】(A)は図1の無限軌道式移動装置28の吸引機構の一部を示す断面図、(B)は図4(A)のベルト部材33と用力管40との連結状態を示す斜視図である。
【図5】(A)はTFT基板TP1を保持する一つのユニットのロッド30を降下させる様子を示す一部が切り欠かれた図、(B)はカラーフィルタ基板CFにTFT基板TP1を接着する様子を示す一部が切り欠かれた図である。
【図6】主に第1基板駆動装置側の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】主に第2基板駆動装置側の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】実施形態の第1変形例の無限軌道式移動装置の概略構成を示す図である。
【図9】(A)は図8中の第1ユニットの複数のロッドの連結状態を示す平面図、(B)は図9(A)の正面図である。
【図10】実施形態の第2変形例の無限軌道式移動装置の概略構成を示す図である。
【図11】電子デバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例につき図1〜図7を参照して説明する。本実施形態は、シート状(帯状)で可撓性を持つカラーフィルタ基板CFと、シート状で可撓性を持つTFT(Thin Film Transistor)の基板であるTFT基板TPとを貼り合わせる貼着装置10に本発明を適用したものである。カラーフィルタ基板CFとTFT基板TPとを貼り合わせて得られる部材を用いて、液晶表示素子(液晶パネル)が製造される。
【0014】
図1は、本実施形態の貼着装置10の概略構成を示す。図1において、貼着装置10は、カラーフィルタ基板CFを所定の経路に沿って移動する第1基板駆動装置DRAと、TFT基板TPを所定の経路に沿って移動する第2基板駆動装置DRBと、TFT基板TPを切断する切断装置56と、カラーフィルタ基板CFの上面に接着剤を塗布する接着剤塗布装置54と、貼着装置10の全体の動作を統括的に制御するコンピュータよりなる主制御系4とを備えている。さらに、貼着装置10は、それぞれ主制御系4の制御のもとで、基板駆動装置DRA及びDRBの動作を制御する第1制御系8及び第2制御系6を備えている。
【0015】
カラーフィルタ基板CF及びTFT基板TPはそれぞれロール状に巻いて保管することが可能な合成樹脂製の長尺のシート状の部材(帯状部材)である。カラーフィルタ基板CFには、それまでの製造工程において、長手方向に所定間隔で配列された多数のデバイス(素子)領域にそれぞれ赤R、緑G、青Bに対応した3つの微細なフィルタの多数の組がマトリックス状又はストライプ状に形成され、各デバイス領域にはそれぞれ複数のアライメントマーク(不図示)が付設されている。一方、TFT基板TPには、それまでの製造工程において、長手方向に所定間隔で配列された多数のデバイス領域にそれぞれ多数のTFT回路がマトリックス状に形成され、各デバイス領域にはそれぞれ複数のアライメントマーク(不図示)が付設されている。
【0016】
以下、図1中に設定したXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。このXYZ直交座標系は、互いに直交するX軸及びY軸がある水平面上に設定され、Z軸が鉛直方向に設定される。本実施形態では、カラーフィルタ基板CFにTFT基板TPから切り離されたTFT基板TP1等(一つのデバイス分の領域)を貼り合わせる際のカラーフィルタ基板CFの表面はXY平面に平行であり、その際のカラーフィルタ基板CF及びTFT基板TP1等の搬送方向(移動方向)は+X方向である。
【0017】
まず、第1基板駆動装置DRAは、シート状のカラーフィルタ基板CFをほぼ+X方向に巻き出す供給ローラ20Aと、カラーフィルタ基板CFの移動方向を+Z方向に変えるローラ22Aと、カラーフィルタ基板CFの移動方向を+X方向に変えるローラ22Bと、カラーフィルタ基板CFを巻き取る巻き取りローラ50と、ローラ22Bと巻き取りローラ50との間に配置されて、カラーフィルタ基板CFがその上を通過する平板状のテーブルPTBとを備えている。例えばローラ22Bに組み込まれたロータリーエンコーダ(不図示)によって検出されるカラーフィルタ基板CFのX方向の移動速度及び位置の情報が第1制御系8及び主制御系4に供給され、その情報及び主制御系4からの制御情報に基づいて第1制御系8は、巻き取りローラ50によるカラーフィルタ基板CFの巻き取り速度(移動速度)を制御する。さらに、ローラ22Aは、例えばカラーフィルタ基板CFの張力をほぼ一定に調整するために、不図示のフレームに対してZ方向の位置が調整可能に支持されている。
【0018】
また、接着剤塗布装置54は、一例としてカラーフィルタ基板CFがローラ22Bを通過した直後から、カラーフィルタ基板CFの上面に例えば熱硬化性の接着剤ADの塗布を行う。一例として、テーブルPTBと巻き取りローラ50との間に、接着剤ADを硬化させるための赤外線を照射する加熱装置(不図示)が配置されている。また、テーブルPTB内のX方向に離れて配置された2つの開口内に、例えば画像処理型のアライメント系52B,52Cが配置され、アライメント系52B,52Cの検出信号が主制御系4内のアライメント制御系に供給されている。そのアライメント制御系は、その検出信号を処理してカラーフィルタ基板CFのあるデバイス領域内の複数のアライメントマークと、TFT基板TP1等の対応する複数のアライメントマークとの位置ずれ量を求める。
【0019】
次に、第2基板駆動装置DRBは、シート状のTFT基板TPを+X方向に巻き出す供給ローラ20Bと、TFT基板TPを+X方向に駆動する駆動ローラ24と、巻き出したTFT基板TPの底面を支持する2つのローラ22Cと、TFT基板TP又はTFT基板TP1等を吸着保持して+X方向に連続的に移動させる無限軌道式移動装置28とを備えている。駆動ローラ24に組み込まれたロータリーエンコーダ(不図示)によって検出されるTFT基板TPのX方向の移動速度及び位置の情報が第2制御系6及び主制御系4に供給され、その情報及び主制御系4からの制御情報に基づいて第2制御系6は、駆動ローラ24によるTFT基板TPの巻き取り速度(移動速度)を制御する。さらに、第2制御系6は無限軌道式移動装置28の動作を制御する。
【0020】
また、駆動ローラ24とローラ22Cとの間に、TFT基板TPをY軸に平行な直線に沿って切断する切断装置56が配置され、切断装置56とローラ22Cとの間のTFT基板TPの底面に、TFT基板TPのアライメントマークの位置を検出する画像処理型のアライメント系52Aが配置されている。アライメント系52Aの検出信号が主制御系4内のアライメント制御系に供給されている。そのアライメント制御系は、その検出信号を処理してTFT基板TPの各デバイス領域内の所定のアライメントマークの位置を求める。アライメント系52Aの検出位置と切断装置56による切断位置とのX方向の間隔は既知であり、アライメント系52Aの検出結果に基づいて、主制御系4内の制御系は、TFT基板TPの隣接する2つのデバイス領域間の境界領域が切断されるように、切断装置56の動作を制御する。
【0021】
また、無限軌道式移動装置28は、XZ平面に平行な長円状の閉ループを形成する無限軌道32と、無限軌道32を反時計回りに回転するように駆動する駆動歯車37A,38A(図2参照)と、無限軌道32の表面に所定間隔で固定された複数の1対の支持機構34A,34Bと、支持機構34A,34BによってそれぞれY軸に沿って支持された複数の棒状のロッド30とを備えている。本実施形態では、ロッド30の個数は24個、対応する支持機構34A,34Bは24対であり、一連の複数個(本実施形態では4個)のロッド30及び対応する4対の支持機構34A,34Bからそれぞれ一つのユニットA1〜A6が構成されている。各ユニットA1〜A6の間隔は、各ユニットA1〜A6内のロッド30の間隔のほぼ1/2に設定されている。
【0022】
この場合、各ユニットA1〜A6は、それぞれTFT基板TPから切り離された一つのデバイス領域分のTFT基板TP1,TP2等を吸着保持して移動するために使用される。無限軌道32は、それぞれY方向に細長い金属製のベルト部材(履帯)33を短辺方向に連結して構成されている。ベルト部材33の個数はロッド30の個数のほぼ2倍程度であるが、ベルト部材33の個数が多いほど、無限軌道32の閉ループの角部が円弧に近くなる。なお、図1等においては、図示の便宜上、閉ループの角部において、ベルト部材33が円弧状に湾曲して描かれている。
【0023】
図2は、図1中の無限軌道式移動装置28の概略構成を示す。図2においては、説明の簡略化のため、ロッド30及び支持機構34A,34Bの個数は実際の構成よりも少なく表されている。図2において、無限軌道32を構成する多数のベルト部材33は、隣接する2つのベルト部材33がそれぞれ長手方向の両端部で連結部材33b,33cによって連結され(1対の連結部材33b,33cのみが図示され、他の連結部材は不図示)、各ベルト部材33の内面の長手方向の両端部に駆動用の複数の溝部33dが形成されている。
【0024】
また、支持機構34A,34Bは、それぞれベルト部材33の−Y方向及び+Y方向の端部に固定された連結部34Aa,34Baと、連結部34Aa,34Baに対して例えばリニアモータよりなる駆動部(不図示)によってベルト部材33の表面の法線方向に移動可能な昇降部34Ab,34Bbとから構成されている。昇降部34Ab,34Bbの先端部の間にロッド30が支持されている。
【0025】
また、ロッド30のTFT基板TP(又はTP1等)との接触部にはそれぞれY方向に一列に真空吸着用の複数の吸着孔31が形成されている。ロッド30の吸着孔31は、可撓性及び伸縮性を持つ配管44Aに連通し、配管44Aはベルト部材33の開口33aに差し込まれている。なお、複数の吸着孔31の代わりにY方向に細長い吸着溝を形成しておいてもよい。
【0026】
さらに、図1に示すように、無限軌道32の内面の中央に真空ポンプに連結された用力管40が配置され、用力管40の内部の負圧領域と、各ロッド30の吸着孔31に連通する図2の配管44Aとは、それぞれ可撓性及び伸縮性を持つ配管44を介して連結されている。無限軌道32の内部には、複数のロッド30と同じ本数の配管44があるが、図1ではその内の一部のみを図示している。各配管44にはそれぞれ各ロッド30によるTFT基板TPに対する真空吸着の開始及び解除を個別に制御する切り替えバルブ44Vが装着されている。
【0027】
また、図2において、無限軌道式移動装置28は、無限軌道32のベルト部材33の−Y方向及び+Y方向の溝部33dに係合する1対の駆動歯車37A,38Aと、駆動歯車37A,38Aを駆動する駆動モータ36A,36Bと、ベルト部材33の溝部33dに係合する−Y方向及び+Y方向の誘導歯車37B〜37C及び38B〜38Dとを備えている。駆動歯車37A,38Aは、無限軌道32の+X方向及び−Z方向の角部に配置され、駆動歯車37A,38Aによって、無限軌道32は下端部が+X方向に移動するように(反時計回りに)駆動される。駆動モータ36A,36Bに内蔵されたロータリーエンコーダ36AR,36BR(図4(B)参照)によって検出される駆動歯車37A,38Aの回転角及び回転速度の情報、ひいては無限軌道32の下端部の各ベルト部材33のX方向の位置及び移動速度(以下、単に無限軌道32のX方向の位置及び移動速度という)の情報は第2制御系6及び主制御系4に供給される。無限軌道32の下端部で複数のベルト部材33がXY平面に平行である領域では、無限軌道32のX方向の位置及び移動速度は、ベルト部材33に連結されたロッド30のX方向の位置及び移動速度とみなすことが可能である。そこで、無限軌道32のX方向の位置及び移動速度の情報、並びに主制御系4からの制御情報に基づいて、第2制御系6は駆動モータ36A,36Bを介して無限軌道32及び各ロッド30のX方向の位置及び移動速度を制御する。
【0028】
なお、図3に簡略化して示すように、無限軌道32の内面の歯車37A,37Dの間及び歯車37B,37Cの間にはそれぞれ無限軌道32の弛みを防止するための複数の小型の誘導歯車37G,37H及び37E,37Fが配置されている。同様に、図2の無限軌道32の内面の+Y方向側にも誘導歯車37E〜37Hに対向するように誘導歯車(不図示)が配置されている。駆動歯車37A,38A及び誘導歯車37B〜37H,38B〜38D等は、それぞれ不図示の回転軸受を介して、ベルト部材33を底面側から挟むように配置された断面形状がコの字型のコラム39A及び39Bに回転可能に支持されている。
【0029】
また、図4(A)は、図2のベルト部材33の開口33a内における配管44Aの端部と用力管40との連結状態を示す断面図、図4(B)は図4(A)の一つのベルト部材33の開口33aと用力管40との連結状態を示す斜視図である。図4(B)に示すように、用力管40は円柱状であるが、用力管40の−Y方向の端部の内部に通気孔40aが形成されている。通気孔40aが配管42を介して外部の真空ポンプ43に連結され、用力管40内の端部の通気孔40aの周囲はシール機構(不図示)で気密化されている。また、用力管40の−Y方向の端部の表面に、通気孔40aに連通する多数の小さい通気孔40bが形成されている。
【0030】
さらに、用力管40の多数の通気孔40bを覆うように、用力管40の外面に回転可能に第1回転部材41が配置され、第1回転部材41のY方向の両端部と用力管40の外面との間は例えば磁性流体軸受けで封止されている。第1回転部材41の用力管40の外面におけるY方向の位置は2つのEリング45によって固定されている。ベルト部材33の開口33a(図2のロッド30の吸着孔31に連通する配管44A)は、途中に切り替えバルブ44Vが設けられた配管44を介して第1回転部材41の外面の通気孔41aに連結され、通気孔41aは用力管40の通気孔40b,40a及び配管42を介して真空ポンプ43に連通している。切り替えバルブ44Vは、ベルト部材33の開口33a(ロッド30の吸着孔31)と用力管40の通気孔40bとを連結した第1状態と、開口33a(ロッド30の吸着孔31)を大気圧に解放した第2状態との間で切り替えを行う。
【0031】
図4(A)の他の配管44も同様に用力管40の通気孔40bに連通し、配管44に装着された切り替えバルブ44Vによって、第1状態と第2状態との間で切り替えが行われる。
また、図4(B)において、用力管40の+Y方向の端部の外面に正極の電極部46A及び負極の電極部46Bが形成され、電極部46A及び46Bはそれぞれ用力管40の内部のリード線を介して外部の電源47の正極及び負極に接続されている。電極部46A,46Bを覆うように用力管40の外面に回転可能に第2回転部材48が配置され、第2回転部材48の用力管40の外面におけるY方向の位置も2つのEリング45によって固定されている。第1回転部材41と第2回転部材48とは連結部材(不図示)によって連結され、用力管40の周囲を連動して回転する。
【0032】
さらに、第2回転部材48の中央部の半円筒状の切り欠き部に電極部46A及び46Bに常時摺動するように平板状の電極板49A及び49Bが固定され、第2回転部材48の外面に、受信部60が固定され、電極板49A及び49Bを介して受信部60に常時電力が供給されている。第2制御系6は、ロータリーエンコーダ36AR,36BRによって得られる無限軌道32の位置及び速度の情報に基づいて、発信部60Wに各ロッド30の吸着孔31による吸着の開始(第1状態)及び解除(第2状態)の切り替えのタイミングを指示する。これに応じて発信部60Wは、電波又は赤外線等を介してワイヤレスで、受信部60にその切り替えのタイミングを示す信号を送信する。その信号に応じて受信部60は、各ロッド30がそれぞれTFT基板TPを支持する直前に、対応する切り替えバルブ44Vを第1状態(吸着孔31で真空吸着を行う状態)に設定し、ロッド30がそれぞれTFT基板TP1等から離れる直前に、対応する切り替えバルブ44Vを第2状態(吸着孔31内が大気圧に開放される状態)に設定する。
【0033】
さらに、第2制御系6は、所定のサンプリングレートで無限軌道32の位置及び速度の情報を発信部60Wを介して受信部60に知らせる。その情報に基づいて受信部60は、無限軌道32の下端部にある各ロッド30のZ位置を制御するために、対応する支持機構34A,34Bの駆動部を介して昇降部34Ab,34BbのZ位置を制御する。
このように用力管40の外面に回転可能に第1回転部材41及び第2回転部材48を設けることによって、用力管40の周囲を常に一定の方向(ここでは反時計回り)に回転している無限軌道32に支持された複数のロッド30に対して真空ポンプ43による負圧を供給し、かつ受信部60に電力を供給できる。
【0034】
以下、本実施形態の図1の貼着装置10を用いて1ロール分のカラーフィルタ基板CFと1ロール分のTFT基板TPとを貼り合わせて、デバイス毎に分離する動作の一例につき図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。この露光動作は主制御系4によって制御される。また、図6は主にカラーフィルタ基板CFを搬送する第1基板駆動装置DRA側の動作を示し、図7は主にTFT基板TPを搬送する第2基板駆動装置DRB側の動作を示している。図6及び図7のフローチャートの動作は実質的に並行して実行される。
【0035】
まず、第1基板駆動装置DRA側の動作として、図6のステップ102において、カラーフィルタ基板CFを供給ローラ20Aから巻き取りローラ50に掛け渡す。その後、ステップ104において、巻き取りローラ50によるカラーフィルタ基板CFの+X方向への定速移動を行う。さらに、ステップ106において、接着剤塗布装置54によってカラーフィルタ基板CFの表面に接着剤ADを塗布する。その後、ステップ108において、主制御系4は、カラーフィルタ基板CFとTFT基板TPとの貼着動作を終了するかどうかを判定する。貼着動作は、例えばアライメント系52B又は52Cによってカラーフィルタ基板CFの終端マークを検出したときに終了する。貼着動作を継続する場合には、ステップ104に戻り、ステップ104及び106の動作が繰り返される。
【0036】
一方、第2基板駆動装置DRB側の動作として、図7のステップ122において、TFT基板TPを供給ローラ20Bから駆動ローラ24に掛け渡し、駆動ローラ24によってTFT基板TPの+X方向への移動を開始する。駆動ローラ24によるTFT基板TPの移動速度は、カラーフィルタ基板CFの移動速度に対して僅かに遅く設定されている。このとき、無限軌道式移動装置28の無限軌道32の回転角は、ユニットA1の先頭のロッド30がほぼ2つのローラ22Cの中間位置の上方に位置するように設定され、各ロッド30のZ位置は可動範囲内の上端にある。また、アライメント系52Aは、TFT基板TPの各デバイス領域に形成されている所定のアライメントマーク(不図示)の検出動作を行う。そして、ステップ124において、アライメント系52AでTFT基板TPのアライメントマークを検出したときには、動作はステップ126に移行する。
【0037】
これ以降、無限軌道式移動装置28は、矢印B1,B2で示すように、ほぼTFT基板TPの移動速度と同じ速度で下端部の無限軌道32及びロッド30を+X方向に移動する。さらに、各ロッド30が無限軌道32の下端の直線軌道の−X方向の端部に達したときに、そのロッド30によるTFT基板TPの真空吸着を開始し、各ロッド30がその直線軌道の+X方向の端部に達したときに真空吸着が解除される。
【0038】
ステップ126において、ユニットA1の先頭の2つのロッド30でTFT基板TPを順次吸着する。次のステップ128において、切断装置56によって、TFT基板TPの先端の1つのデバイス分の領域であるTFT基板TP1を切り離す。その後、ステップ130において、ユニットA1の4つのロッド30でTFT基板TP1を吸着し、無限軌道32を駆動して、ユニットA1の4つのロッド30でTFT基板TP1を+X方向に移動する。
【0039】
次のステップ132において、ユニットA1の支持機構34A,34Bの昇降部34Ab,34Bbを駆動して、図5(A)に矢印B3で示すように、ユニットA1の4つのロッド30のZ位置を次第に降下させる。これによって、TFT基板TP1をカラーフィルタ基板CFに近付ける。この際に実際には、図1に示すように、TFT基板TP1は、先端部から順にカラーフィルタ基板CFに近づいていく。その後、ステップ134において、アライメント系52B,52Cによって、TFT基板TP1のアライメントマークとカラーフィルタ基板CFのアライメントマークとの位置ずれ量を検出する。
【0040】
そして、ステップ136において、主制御系4は、ステップ134で検出された位置ずれ量を補正するように、第2制御系6を介して無限軌道式移動装置28によるTFT基板TP1の+X方向への移動速度を調整する。その後、ステップ138において、図5(B)に矢印B4で示すように、ユニットA1の4つのロッド30を先端側のロッド30から順にさらに降下させて、TFT基板TP1の全面をカラーフィルタ基板CFに押し付ける。これによってTFT基板TP1とカラーフィルタ基板CFとを接着剤ADを介して接着する。この後、不図示の加熱装置でTFT基板TP1を通して接着剤ADを加熱することで、接着剤ADが硬化する。
【0041】
次のステップ140において、ユニットA1のロッド30によるTFT基板TP1に対する吸着を順次解除し、さらにユニットA1の支持機構34A,34Bの昇降部34Ab,34Bbを順次+Z方向に駆動して、各ロッド30を順次上昇させる。この動作に対応する図5(A)のユニットA6の動作は、TFT基板TP6から離れた各ロッド30が矢印B5で示すように順次+Z方向に移動するものである。この後、TFT基板TP1が貼着されたカラーフィルタ基板CFの部分は巻き取りローラ50に巻き取られる。この際にも、無限軌道32は回転しているため、ユニットA1のロッド30は、図1のユニットA6の位置を通って無限軌道32の上端の軌道に移動する。
【0042】
次のステップ142において、主制御系4は、カラーフィルタ基板CFとTFT基板TPとの貼着動作を終了するかどうかを判定する。貼着動作は、例えばアライメント系52AによってTFT基板TPの終端マークを検出したときに終了する。貼着動作を継続する場合には、ステップ124に戻り、ステップ124〜140の動作が繰り返されて、次のユニットA2のロッド30を介してTFT基板TPから切り離された次のTFT基板TP2がカラーフィルタ基板CFの表面に貼着される。なお、実際には、ユニットA1のロッド30によってステップ132の動作が実行されるときに、ユニットA2のロッド30によってステップ126の動作が開始されるため、例えばステップ126〜130の動作とステップ132〜140の動作とは並行して実行される。以下、同様にして、無限軌道式移動装置28の他のユニットA3,A4等を介して、TFT基板TPから切り離されたTFT基板TP3,TP4(不図示)等が順にカラーフィルタ基板CFの表面に貼着される。
【0043】
また、ステップ142において、TFT基板TPが終端に達したときには、例えば供給ローラ20Bに別のロール状のTFT基板を装着して、動作はステップ122に戻る。
なお、図6のステップ108において、貼着動作が終了したときには、巻き取りローラ50の巻き取り動作及び無限軌道式移動装置28によるロッド30の移動が停止される。
その後、動作はステップ110に移行して、巻き取りローラ50から貼着後の1ロール分の基板(カラーフィルタ基板CF及びTFT基板TP1,TP2等)を取り外す。次のステップ112において、不図示の切断装置において、1ロール分の貼着された基板から順次1デバイス分の基板を切り離す。その後、切り離された複数の基板を用いて複数の液晶表示素子が製造される。
【0044】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の貼着装置10は、TFT基板TP,TP1(フィルム状部材)を搬送する無限軌道式移動装置28を含む第2基板駆動装置DRB(搬送装置)を備えている。そして、無限軌道式移動装置28は、TFT基板TP,TP1を支持するために、TFT基板TP,TP1の表面に沿った移動方向(X方向)に直交するY方向に長手方向が配置され、その移動方向に沿って配列される複数のロッド30(棒状部材)と、その複数のロッド30のうちでTFT基板TP,TP1を支持している複数のロッド30を同期させてその移動方向に移動するために駆動歯車37A,38Aで駆動される無限軌道32と、その複数のロッド30をTFT基板TP,TP1の表面に直交するZ方向に移動する支持機構34A,34B(移動機構)と、を備えている。
【0045】
また、第2基板駆動装置DRBを用いたTFT基板TP,TP1(フィルム状部材)の搬送方法は、駆動ローラ24によってTFT基板TPをこの表面に沿った移動方向(X方向)に移動するステップ122と、無限軌道式移動装置28の複数のロッド30でTFT基板TPの複数の表面部位を支持するステップ126と、TFT基板TPから切り離されたTFT基板TP1を支持している複数のロッド30を同期させてX方向に移動するステップ130と、TFT基板TP1を支持している複数のロッド30をZ方向に降下させる(移動する)ステップ132と、を含んでいる。
【0046】
本実施形態によれば、TFT基板TP1を支持している複数のロッド30を移動方向に同期して移動しており、TFT基板TP1がその支持機構に対して相対移動することがないため、TFT基板TP1を目標とする経路に沿って正確に搬送できる。さらに、複数のロッド30をTFT基板TP1の表面に直交する方向に降下させることによって、TFT基板TP1をその表面に直交する方向に容易に移動できる。従って、TFT基板TP1を容易にカラーフィルタ基板CFに貼り合わせることができる。
【0047】
(2)なお、複数のロッド30の長手方向はTFT基板TP,TP1の表面に沿った移動方向に交差する方向でもよい。また、ステップ132で複数のロッド30を降下させる方向は、TFT基板TP1の表面に交差する方向でもよい。
(3)なお、無限軌道式移動装置28が有するロッド30の個数は任意であり、例えば3本のロッドのみをループ状の軌跡に沿って移動させながら、そのうちの2本のロッドでTFT基板TP1,TP2等を支持して+X方向に搬送してもよい。
【0048】
(4)また、無限軌道式移動装置28は、各ロッド30がTFT基板TP等を支持している期間中にTFT基板TP等を真空吸着しているため、各ロッド30でTFT基板TP等を安定に支持できる。
なお、ロッド30に対して例えば静電吸着でTFT基板TP1を吸着してもよい。
(5)なお、無限軌道式移動装置28の各ユニットA1〜A6内の隣接する2つのロッド30間を伸縮可能なばね部材等で連結してもよい。また、隣接するユニットA1〜A6間の隣接するロッド30間を伸縮可能なばね部材又はピエゾ素子等で連結してもよい。
【0049】
(6)また、本実施形態の貼着装置10(製造装置)は、TFT基板TP,TP1(第1のフィルム状部材)とカラーフィルタ基板CF(第2のフィルム状部材)とを貼り合わせる装置である。貼着装置10は、TFT基板TP,TP1を搬送するための第2基板駆動装置DRB(第1の搬送装置)と、カラーフィルタ基板CFをTFT基板TP,TP1に対向させて搬送するための第1基板駆動装置DRA(第2の搬送装置)と、TFT基板TP,TP1及びカラーフィルタ基板CFに付設されたアライメントマークを検出するアライメント系52B,52C(マーク検出系)と、を備えている。そして、貼着装置10は、アライメント系52B,52Cの検出結果に基づいて、TFT基板TP1とカラーフィルタ基板CFとの位置合わせを行い、ロッド30で支持され、かつその移動方向に移動しているTFT基板TP1とカラーフィルタ基板CFとを貼り合わせている。
【0050】
また、貼着装置10を用いてTFT基板TP,TP1とカラーフィルタ基板CFとを貼り合わせる貼着方法(製造方法)は、TFT基板TP,TP1を本実施形態の搬送方法を用いて搬送するステップ122,126,130,132と、カラーフィルタ基板CFをTFT基板TP1に対向させて搬送するステップ104と、TFT基板TP1及びカラーフィルタ基板CFに付設されたアライメントマークの位置ずれ量を検出するステップ134と、その位置ずれ量の検出結果に基づいて、TFT基板TP1及びカラーフィルタ基板CFの位置合わせを行い、ロッド30で支持されてその移動方向に移動しているTFT基板TP1とカラーフィルタ基板CFとを貼り合わせるステップ136,138とを含んでいる。
【0051】
本実施形態によれば、無限軌道式移動装置28によってTFT基板TP1の搬送中に、TFT基板TP1をカラーフィルタ基板CFに次第に近づけることができるため、カラーフィルタ基板CFに対してTFT基板TP1を容易にかつ高精度に貼着できる。従って、液晶表示素子を効率的に高精度に製造できる。
(7)なお、TFT基板TPを第1基板駆動装置DRAで搬送し、カラーフィルタ基板CFを無限軌道式移動装置28を含む第2基板駆動装置DRBで搬送してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、TFT基板TPをデバイス領域を単位として切断しているが、TFT基板TPを切断することなく、ロール状のままでカラーフィルタ基板CFとTFT基板TPとを貼り合わせてもよい。
(8)また、図1のテーブルPTBに真空吸着機構及びY方向に対する微動機構を設け、カラーフィルタ基板CFとTFT基板TP1等とのY方向の位置ずれ量も補正するようにしてもよい。
【0053】
次に、上記の実施形態の無限軌道式移動装置28の変形例につき説明する。以下で参照する図8〜図10において、図1に対応する部分には同一又は類似の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図8は、第1変形例の無限軌道式移動装置28Aの概略構成を示す図である。図8において、反時計回りに駆動される無限軌道32を構成する複数のベルト部材33のうちの等間隔で配置された複数(本変形例では8個)のベルト部材33の外面に、それぞれ互いに同一構成のユニットAU1〜AU8が設置されている。各ユニットAU1〜AU8はそれぞれ配管44を介して、TFT基板TPから切り離れた1つのデバイス分のTFT基板TP1,TP2等を吸着保持して搬送する。各ユニットAU1〜AU8は、それぞれ対応するベルト部材33に固定された伸縮可能な支持機構34Cと、支持機構34Cの先端部に固定されたロッド30と、このロッド30にY軸に平行な軸の回りに回転可能に設けられた連結部材61A,61Bと、連結部材61A,61Bの先端部に支持された2つのロッド30と、これらのロッド30にY軸に平行な軸の回りに回転可能に設けられた連結部材61C,61Dと、連結部材61C,61Dの先端部に支持された2つのロッド30とを有する。
【0054】
ロッド30はそれぞれY方向を長手方向として、その表面にTFT基板TPを吸着する吸着孔(不図示)が形成されている。各ユニットAU1〜AU8の支持機構34Cが無限軌道32の下端のX軸に平行な軌道上にあり、かつ連結部材61A〜61DがX軸に平行な直線状になっている状態では、支持機構34Cに支持される5個のロッド30はX軸に沿って等間隔で支持される。
【0055】
また、図9(A)に示すように、ユニットAU1の連結部材61A,62Bは、中央のロッド30に対して駆動モータ62A,62Bによって回転駆動されるように連結され、連結部材61C,62Dは、中間位置の2つのロッド30に対して駆動モータ62C,62Dによって回転駆動されるように連結されている。図9(A)の正面図である図9(B)に示すように、連結部材61A,61Bに支持される中間のロッド30は、中央のロッド30に対して独立に時計回り又は反時計回りに回転駆動可能であり、連結部材61C,61Dに支持される両端部のロッド30は、中間のロッド30に対して独立に時計回り又は反時計回りに回転駆動可能である。これ以外の構成は、図1の実施形態と同様である。
【0056】
図8の第1変形例において、例えばユニットAU1を用いてカラーフィルタ基板CFにTFT基板TP1を貼着する場合には、まずユニットAU1の支持機構34Cが無限軌道32の−X方向で−Z方向の端部付近に達してから(この段階では、支持機構34Cの先端部は最も無限軌道32に近い位置にある)、連結部材61A〜61Dを駆動して先端部のロッド30から順にTFT基板TPを吸着する。その後、切断装置56でTFT基板TPから切り離されたTFT基板TP1をユニットAU1の全部のロッド30で吸着し、無限軌道32を駆動してユニットAU1を+X方向に移動する。
【0057】
その後、次第にユニットAU1の支持機構34Cの先端部を−Z方向に降下させるとともに、連結部材61A〜61Dを全体として時計回りに傾斜させて、先端部のロッド30から順にカラーフィルタ基板CFに近づける。そして、さらに支持機構34Cの先端部を降下させることで、カラーフィルタ基板CFに接着剤(不図示)を介してTFT基板TP1が貼着される。その後、ロッド30の吸着を解除して、支持機構34Cの先端部を上昇させるとともに、ロッド30がTFT基板TP1から離れるように連結部材61A〜61Dを駆動することで、TFT基板TP1の貼着が完了する。同様に他のユニットAU2〜AU8を用いて次のTFT基板TP2等がカラーフィルタ基板CFに貼着される。
この第1変形例によれば、ユニットAU1〜AU8毎に複数のロッド30をまとめて一つの支持機構34Cで支持しているため、支持機構34Cの制御が容易である。
【0058】
次に、図10は、第2変形例の無限軌道式移動装置28Bの概略構成を示す図である。図10において、図8に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。図10において、無限軌道32Aは、複数のベルト部材33を連結して構成されている点は図1の無限軌道32と同様であるが、無限軌道32Aの下端部の+X方向の軌道が−Z方向に降下している点が無限軌道32と異なっている。
【0059】
また、無限軌道32Aの外面に等間隔で互いに同一構成のユニットBU1〜BU8が設置されている。ユニットBU1〜BU8は、それぞれ対応するベルト部材33に固定された支持機構34Dと、支持機構34Dの先端部に回転可能に設けられた連結部材61A,61Bと、連結部材61A,61Bの先端部に支持された2つのロッド30と、これらのロッド30に回転可能に設けられた連結部材61C,61Dと、連結部材61C,61Dの先端部に支持された2つのロッド30とを有する。支持機構34Dは単にロッド30を支持するのみで伸縮機構は必要ない。これ以外の構成は、図1の実施形態と同様である。
【0060】
図10の第2変形例において、例えばユニットBU1を用いてカラーフィルタ基板CFにTFT基板TP1を貼着する場合には、まずユニットBU1の支持機構34Dが無限軌道32の−X方向で−Z方向の端部付近に達してから、連結部材61A〜61Dを駆動して先端部のロッド30から順にTFT基板TPを吸着する。その後、切断装置56でTFT基板TPから切り離されたTFT基板TP1をユニットBU1の全部のロッド30で吸着し、無限軌道32Aを駆動してユニットBU1を+X方向に移動する。
【0061】
その後、無限軌道32Aの軌道に沿ってユニットBU1の支持機構34Dの先端部が−Z方向に降下する。さらに、連結部材61A〜61Dを全体として時計回りに傾斜させて、先端部のロッド30から順にカラーフィルタ基板CFに近づける。そして、無限軌道32Aの軌道に沿ってさらに支持機構34Cの先端部が降下することで、カラーフィルタ基板CFに接着剤(不図示)を介してTFT基板TP1が貼着される。その後、ロッド30の吸着が解除され、無限軌道32Aの軌道に沿って支持機構34Cの先端部が上昇するとともに、ロッド30がTFT基板TP1から離れるように連結部材61A〜61Dを駆動することで、貼着が完了する。同様に他のユニットBU2〜BU8を用いて次のTFT基板TP2等がカラーフィルタ基板CFに貼着される。
【0062】
この第2変形例によれば、無限軌道32Aの軌道によって支持機構34DのZ方向への移動ができるため、ロッド30のZ方向への移動機構が簡素化できる。
また、図1の実施形態の無限軌道式移動装置28において、無限軌道32の代わりに、図10の無限軌道32Aを使用してもよい。この場合には、図1の支持機構34A,34Bには伸縮機構を設ける必要がない。
次に、上記の実施形態の貼着装置10(製造装置)又は貼着方法(製造方法)を用いて、電子デバイスとしての多数の液晶表示素子を製造する場合の全体の製造工程の一例につき、図11のフローチャートを参照して説明する。
【0063】
図11のステップS401(パターン形成工程)では、先ず、露光対象のフィルム状基板上にフォトレジストを塗布して感光基板を準備する塗布工程、所定の露光装置を用いて液晶表示素子用のマスクのパターンをその感光基板上の多数のパターン形成領域に転写露光する露光工程、及びその感光基板を現像する現像工程が実行される。この塗布工程、露光工程、及び現像工程を含むリソグラフィ工程によって、そのフィルム状基板上に所定のレジストパターンが形成される。このリソグラフィ工程に続いて、そのレジストパターンをマスクとしたエッチング工程、及びレジスト剥離工程等を経て、そのフィルム状基板上に多数の電極等を含む所定パターンが形成される。そのリソグラフィ工程等は、そのフィルム状基板上のレイヤ数に応じて複数回実行される。これによって、図1のTFT基板TPが製造される。この際に、TFT基板に対向して配置される基板(対向基板)も製造される。
【0064】
その次のステップS402(カラーフィルタ形成工程)では、赤R、緑G、青Bに対応した3つの微細なフィルタの組をマトリックス状に多数配列するか、又は赤R、緑G、青Bの3本のストライプ状の複数のフィルタの組を水平走査線方向に配列することによって図1のカラーフィルタ基板CFを形成する。その次のステップS403(セル組立工程)では、ステップS401にて得られたTFT基板TP(フィルム状基板)とステップS402にて得られたカラーフィルタ基板CFとを接着剤で貼着し、さらに貼着後の基板と上記の対向基板との間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0065】
その後のステップS404(モジュール組立工程)では、そのようにして組み立てられた多数の液晶パネル(液晶セル)に表示動作を行わせるための電気回路、及びバックライト等の部品を取り付けて、液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、上記の実施形態の貼着装置10又は貼着方法を用いて効率的に高精度にカラーフィルタ基板CFとTFT基板TPとを貼着できるため、液晶表示素子を高精度に効率的に製造できる。
【0066】
また、上述の実施形態では、搬送対象のフィルム状部材として可撓性を持つ長いシート状の部材が使用されているが、フィルム状部材としては、液晶表示素子等を製造するための比較的剛性の高い矩形の平板状のガラスプレート、薄膜磁気ヘッド製造用のセラミックス基板、又は半導体素子製造用の円形の半導体ウエハ等も使用できる。
このように、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0067】
CF…カラーフィルタ基板、TP…TFT基板、DRA…第1基板駆動装置、DRB…第2基板駆動装置、A1〜A6…ユニット、4…主制御系、6…第2制御系、8…第1制御系、10…貼着装置、20A,20B…供給ローラ、28…無限軌道式移動装置、30…ロッド、32…無限軌道、33…ベルト部材(履帯)、34A,34B…支持機構、50…巻き取りローラ、52A〜52C…アライメント系、54…接着剤塗布装置、56…切断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状部材を搬送する搬送方法であって、
前記フィルム状部材を該フィルム状部材の表面に沿った移動方向に移動する工程と、
前記フィルム状部材の表面に沿って前記移動方向に交差する方向に長手方向が配置され、前記移動方向に沿って配列される複数の棒状部材で前記フィルム状部材の複数の表面部位を支持する工程と、
前記フィルム状部材を支持している前記複数の棒状部材を同期させて前記移動方向に移動する工程と、
前記複数の棒状部材を前記フィルム状部材の表面に交差する方向に移動する工程と、
を含むことを特徴とする搬送方法。
【請求項2】
前記フィルム状部材のうち前記複数の棒状部材で支持されている部分を他の部分から切り離す工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の搬送方法。
【請求項3】
前記複数の棒状部材を前記切り離された部分から離す工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の搬送方法。
【請求項4】
前記フィルム状部材の前記複数の表面部位を支持する工程は、前記棒状部材が支持した前記表面部位を該棒状部材に吸着することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送方法。
【請求項5】
前記フィルム状部材は、帯状形状を有し、
前記フィルム状部材を移動する工程は、前記帯状形状の長尺方向に平行な前記移動方向に前記フィルム状部材を移動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送方法。
【請求項6】
第1のフィルム状部材と第2のフィルム状部材とを貼り合わせる製造方法において、
前記第1のフィルム状部材を請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送方法を用いて搬送し、
前記第2のフィルム状部材を前記第1のフィルム状部材に対向させて搬送し、
前記第1及び第2のフィルム状部材に付設された位置合わせ用マークを検出し、
前記位置合わせ用マークの検出結果に基づいて、前記第1及び第2のフィルム状部材の位置合わせを行い、前記棒状部材で支持され、かつ前記移動方向に移動している前記第1のフィルム状部材と前記第2のフィルム状部材とを貼り合わせる
ことを特徴とする製造方法。
【請求項7】
前記第1のフィルム状部材と前記第2のフィルム状部材との貼り合わせられた部分を切り離すことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
フィルム状部材を搬送する搬送装置であって、
前記フィルム状部材を支持するために、前記フィルム状部材の表面に沿った移動方向に交差する方向に長手方向が配置され、前記移動方向に沿って配列される複数の棒状部材と、
前記複数の棒状部材のうちで前記フィルム状部材を支持している複数の前記棒状部材を同期させて前記移動方向に移動する駆動装置と、
前記複数の棒状部材を前記フィルム状部材の表面に交差する方向に移動する移動機構と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項9】
前記移動機構は、少なくとも一つの前記棒状部材に連結されて伸縮可能な支持部材を備えることを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記駆動装置は、少なくとも一つの前記棒状部材に連結された支持部材が移動する案内面を規定する案内機構を備え、
前記案内面が前記フィルム状部材の表面に交差する方向に曲がることで、前記案内機構が前記移動機構を兼用することを特徴とする請求項8に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記複数の棒状部材は、それぞれ複数の棒状部材を含む複数の組毎に前記駆動装置に支持されることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記棒状部材が前記フィルム状部材を支持している期間中に、前記棒状部材に前記フィルム状部材を吸着する吸着機構を備えることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記フィルム状部材は、帯状形状を有し、
前記移動装置は、前記帯状形状の長尺方向に平行な前記移動方向に前記フィルム状部材を移動することを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項14】
第1のフィルム状部材と第2のフィルム状部材とを貼り合わせる製造装置において、
前記第1のフィルム状部材を搬送するための、請求項8〜13のいずれか一項に記載の第1の搬送装置と、
前記第2のフィルム状部材を、前記第1のフィルム状部材に対向させて搬送するための第2の搬送装置と、
前記第1及び第2のフィルム状部材に付設された位置合わせ用マークを検出するマーク検出系と、を備え、
前記位置合わせ用マークの検出結果に基づいて、前記第1及び第2のフィルム状部材の位置合わせを行い、前記棒状部材で支持され、かつ前記移動方向に移動している前記第1のフィルム状部材と前記第2のフィルム状部材とを貼り合わせることを特徴とする製造装置。
【請求項15】
前記貼り合わされる前記第1及び第2のフィルム状部材の部分を切り離す切断機構を備えることを特徴とする請求項14に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−165979(P2011−165979A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28215(P2010−28215)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】