説明

携帯型端末装置、サーバ装置及びルート案内プログラム

【課題】道に迷いやすい利用者を、進行方向がわかりやすいような態様で目的地まで的確に案内することが可能な歩行者向けのルート案内手法を提供する。
【解決手段】携帯型端末装置又はサーバ装置は、GPSなどにより取得した現在位置から目的地までの案内ルートを検索し、案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う。このルート案内方法は、第1目標物と第2目標物とを一組にして利用者に提示する。第1目標物は、利用者の視認可能距離以内にあって、道路における利用者の現在位置とは対岸側に設定されるので、利用者は第1目標物を容易に見つけることができ、進行すべき方向を容易に知ることができる。第2目標物は、道路における利用者の現在位置側であって第1目標物よりも進行方向よりに設定されるので、利用者は第1目標物を目印として進むことにより、自分のいる側の第2目標物を容易に見つけることができる。こうして、道に迷いやすい利用者に対しても的確にルート案内が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者向けのルート案内手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS機能を搭載した携帯型端末装置を利用した歩行者向けのルート案内方法が提案されている。例えば、特許文献1及び2には、案内ルートに沿ってランドマークを提示することにより、歩行者を目的地へ案内する手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−165693号公報
【特許文献2】特開2001−215130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献のように、歩行者向けのルート案内は、例えば役所、警察署、消防署、駅などのランドマークを提示して行うものが一般的である。しかし、ルート案内で提示されるランドマークが利用者の現在位置からある程度離れた場所にある場合には、利用者がそれを視認できるとは限らない。また、例えばコンビニエンスストアのように類似したランドマークが近接して複数存在する場合には、利用者が誤認するおそれがある。さらに、方向感覚があまり優れていない利用者などの場合、ランドマークが提示されても、そもそも現在位置からの進行方向を正しく判断できないことも多い。
【0005】
本発明の解決しようとする課題には、上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、道に迷いやすい利用者を、進行方向がわかりやすいような態様で目的地まで的確に案内することが可能な歩行者向けのルート案内手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、携帯型端末装置であって、現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段と、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う案内手段と、を備え、前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示することを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明は、コンピュータを備える携帯型端末装置において実行されるルート案内プログラムであって、現在位置を取得する現在位置取得手段、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う案内手段、として前記コンピュータを機能させ、前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示することを特徴とする。
【0008】
請求項6に記載の発明は、携帯型端末装置と通信可能なサーバ装置であって、前記携帯型端末装置から、当該携帯型端末装置の現在位置を受信する現在位置取得手段と、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段と、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う指示を前記携帯型端末装置に送信する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示するように前記携帯型端末装置に指示することを特徴とする。
【0009】
請求項7に記載の発明は、携帯型端末装置と通信可能であり、コンピュータを備えるサーバ装置において実行されるルート案内プログラムであって、前記携帯型端末装置から、当該携帯型端末装置の現在位置を受信する現在位置取得手段、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う指示を前記携帯型端末装置に送信する制御手段、として前記コンピュータを機能させ、前記制御手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示するように前記携帯型端末装置に指示することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例に係る携帯型端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】道路を直進する場合におけるルート案内例を示す。
【図3】交差点を左折する場合におけるルート案内例を示す。
【図4】目標物の設定方法を説明する図である。
【図5】第1実施例に係るルート案内処理のフローチャートである。
【図6】第1実施例に係るルート案内処理のフローチャートである。
【図7】従来のルート案内手法を説明する図である。
【図8】第1実施例によるルート案内手法の利点を説明する図である。
【図9】第1実施例によるルート案内手法の利点を説明する図である。
【図10】第2実施例に係るサーバ装置及び携帯型端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】第2実施形態に係るルート案内処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態では、携帯型端末装置は、現在位置を取得する現在位置取得手段と、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段と、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う案内手段と、を備え、前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示する。
【0012】
上記の携帯型端末装置は、GPSなどの現在位置取得手段により現在位置を取得して目的地までの案内ルートを検索し、案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う。ここで、案内手段は、第1目標物と第2目標物とを一組にして利用者に提示する。ここで、「一組にして提示する」とは、同時に提示する場合の他、1つずつ提示し、最終的に一組となるように提示する場合も含む。第1目標物は、利用者の視認可能距離以内にあって、道路における利用者の現在位置とは対岸側に設定されるので、利用者は第1目標物を容易に見つけることができ、進行すべき方向を容易に知ることができる。第2目標物は、道路における利用者の現在位置側であって第1目標物よりも進行方向よりに設定されるので、利用者は第1目標物を目印として進むことにより、自分のいる側の第2目標物を容易に見つけることができる。こうして、道に迷いやすい利用者に対しても的確にルート案内が可能となる。
【0013】
上記の携帯型端末装置の一態様では、前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置が前記第2目標物の位置に到着したときに、当該第2目標物の位置を基準として新たに前記第1目標物及び第2目標物を決定して提示する。このように、第1及び第2目標物の提示を繰り返すことにより、案内ルートにおける道路を直進する部分において正しくルート案内を提供することができる。
【0014】
上記の携帯型端末装置の他の一態様では、前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合に目標物の再提示を求める再提示要求が入力されたときには、前記再提示要求が入力された時点における現在位置を基準として新たに前記第1目標物及び第2目標物を決定して提示する。この態様では、利用者は再提示要求を入力すれば、その時の現在位置から新たな第1及び第2目標物の提示を受けることができるので、案内中に迷ったり不安を覚えたときには再提示要求により進行方向などを容易に確認することができる。
【0015】
上記の携帯型端末装置の他の一態様では、前記案内手段は、前記案内ルートが交差点を曲がるルートである場合、まず当該交差点に近接する第2目標物を提示し、前記現在位置が当該第2目標物の位置に到着したときに、当該交差点において当該第2目標物と対角の位置にある第3目標物と、前記第3目標物に隣接し、かつ、前記案内ルートの進行方向側にある第4目標物とを一組にして提示する。交差点を曲がるルートの場合には、現在位置を基準として交差点の対角位置に第3目標物が提示され、さらに第3目標物に隣接し、進行方向側の位置に第4目標物が提示される。よって、利用者は、2つの目標物により、交差点を正しい道へと進むことができる。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備える携帯型端末装置において実行されるルート案内プログラムは、現在位置を取得する現在位置取得手段、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う案内手段、として前記コンピュータを機能させ、前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示する。上記のプログラムを携帯型端末装置上で実行することにより、上記の携帯型端末装置を実現することができる。
【0017】
本発明の他の好適な実施形態では、携帯型端末装置と通信可能なサーバ装置は、前記携帯型端末装置から、当該携帯型端末装置の現在位置を受信する現在位置取得手段と、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段と、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う指示を前記携帯型端末装置に送信する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示するように前記携帯型端末装置に指示する。
【0018】
上記のサーバ装置は、携帯型端末装置と通信することにより、携帯型端末装置の利用者に対してルート案内を提供する。サーバ装置は、携帯型端末装置の現在位置と目的地を携帯型端末装置から受信し、これらに基づいて案内ルートを検索する。そして、案内ルートに沿って目標物を提示するように携帯型端末装置に指示することにより、携帯型端末装置の利用者にルート案内を行う。ここで、制御手段は第1目標物と第2目標物とを一組にして利用者に提示するように携帯型端末装置に指示する。第1目標物は、利用者の視認可能距離以内にあって、道路における利用者の現在位置とは対岸側に設定されるので、利用者は第1目標物を容易に見つけることができ、進行すべき方向を容易に知ることができる。第2目標物は、道路における利用者の現在位置側であって第1目標物よりも進行方向よりに設定されるので、利用者は第1目標物を目印として進むことにより、自分のいる側の第2目標物を容易に見つけることができる。こうして、道に迷いやすい利用者に対しても的確にルート案内が可能となる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態では、携帯型端末装置と通信可能であり、コンピュータを備えるサーバ装置において実行されるルート案内プログラムは、前記携帯型端末装置から、当該携帯型端末装置の現在位置を受信する現在位置取得手段、前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段、文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う指示を前記携帯型端末装置に送信する制御手段、として前記コンピュータを機能させ、前記制御手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示するように前記携帯型端末装置に指示する。このルート案内プログラムをサーバ装置上で実行することにより、上記のサーバ装置を実現することができる。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0021】
[第1実施例]
(装置構成)
第1実施例は、携帯型端末装置によりルート案内を行う例である。図1は第1実施例に係る携帯型端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【0022】
図示のように、携帯型端末装置(以下、単に「端末装置」と呼ぶ。)10は、GPSユニット11、地図データ記憶部12、履歴記憶部13、通信部14、表示部15、スピーカ16、入力部17、及び、制御部18を備える。
【0023】
GPSユニット11は、複数のGPS衛星から測位用データを含む電波を受信し、測位用データに基づいて端末装置10の現在位置を算出する。
【0024】
地図データ記憶部12は、書き換え可能な小型メモリなどにより構成され、地図データを記憶する。地図データ記憶部12の記憶容量には限りがあるので、通常は利用者が頻繁に行動するエリアの地図データが地図データ記憶部12に記憶されている。利用者は、必要に応じて、地図データを提供しているサーバ装置などにアクセスして所望のエリアの地図データをダウンロードし、地図データ記憶部12に記憶することができる。地図データには、各エリアにおいて代表的なランドマークを示すランドマークデータが含まれている。また、利用者は、自分がよく知っている、又は、よく利用する建物、店舗などをランドマークとして登録しておくことができる。利用者が自ら登録したランドマークは、地図データに含まれているものに比べて、その利用者にとって特に識別力が高いものであるので、目標物として有効に使用することができる。本実施例では、地図データに予め含まれているランドマークと、利用者が自ら登録したランドマークなどとをまとめて以下「POI(Point Of Interest)と呼ぶ。後述のように、端末装置10は、これらPOIから目標物を選択してルート案内を実行する。
【0025】
履歴記憶部13は、利用者が使用する端末装置10の現在位置の移動履歴を記憶する。現在位置を所定時間毎に記憶することにより、利用者の移動を記録しておくことができる。
【0026】
通信部14は、前述の地図データを提供しているサーバ装置などとの間でデータの送受信を行う。
【0027】
表示部15は、例えば小型の液晶ディスプレイなどにより構成され、利用者に対して文字、画像などを表示する。本実施例では、表示部15を利用して、地図表示、及び、利用者に対する文字メッセージによるルート案内が行われる。
【0028】
スピーカ16は、携帯型の端末装置に搭載可能な小型スピーカであり、利用者に対する音声出力を行う。本実施例では、スピーカ16を利用して、利用者に対する音声メッセージによるルート案内が行われる。
【0029】
入力部17は、端末装置10の筐体に設けられた操作ボタン、タッチパネル式入力装置などにより構成することができ、利用者による各種の選択、指示が入力される。
【0030】
制御部18は、CPUなどを備えて構成され、端末装置10の全体を制御する。本実施例では、制御部18は、予め用意されたプログラムを実行することにより、後述のルート案内処理を実行する。
【0031】
上記の構成において、GPSユニット11は本発明における現在位置取得手段に相当し、制御部18はルート検索手段及び案内手段に相当する。
【0032】
(ルート案内方法)
次に、本実施例によるルート案内方法について説明する。本実施例では、利用者に目標物を提示してルート案内を実行するが、特に2つの目標物を一組にして利用者に提示することを特徴とする。ここで、「一組にして提示する」とは、同時に提示する場合の他、1つずつ提示し、最終的に一組となるように提示する場合も含む。なお、ルート案内の実行時には、現在位置から、利用者が設定した目的地までの案内ルートが既に決定されているものとする。
【0033】
まず、利用者が道路に沿って直進する場合におけるルート案内方法について説明する。利用者が案内ルートに含まれる道路に沿って直進する場合、端末装置10の制御部18は、以下の条件に従って第1目標物及び第2目標物を決定し、利用者に提示する。
【0034】
(1)第1目標物:
利用者の現在位置を基準とし、当該現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、利用者の現在位置が属する道路の現在位置と対岸側にある目標物
(2)第2目標物:
利用者の現在位置を基準とし、当該現在位置が属する道路の現在位置側にあり、かつ、第1目標物よりも案内ルートにおける進行方向よりにある目標物
以下、図2を参照して具体的に説明する。
【0035】
図2に、利用者が道路に沿って直進する場合のルート案内方法を模式的に示す。図2(a)〜(c)は道路の上空から見た目標物の位置を示す図であり、図2(d)〜(f)は表示部15に表示される案内メッセージの例である。なお、図中の「●」はルート案内において使用される目標物を示し、「★」は利用者、つまり端末装置10の現在位置を示す。
【0036】
いま、図2(a)に示すように、利用者は目標物Aの前にいるものとする。この場合、端末装置10の制御部18は、進行中の道路において現在位置の対岸側(道路の反対側)にある目標物Bを第1目標物として提示する。
【0037】
一般的に、歩行者が道路に沿って進んでいる場合、その道路の現在位置側、即ち自分がいる側に建っている建物などは比較的見にくいものである。特に、高い建物が立ち並ぶ都市部の道路、歩道に沿って街路樹が配置されている道路などでは、現在位置側の建物は認識しにくい傾向がある。これに比べ、道路の対岸側に立ち並ぶ建物は、道路の幅の分だけ離れた位置から見ることになるため比較的認識しやすい。そこで、本実施例では、第1目標物を、道路の対岸側にある目標物としている。これに加え、目標物として正しく機能させるためには、利用者が現在位置から肉眼で視認できることが必要である。そこで、第1目標物は、予め設定された視認可能距離以内に存在する目標物とされる。このように第1目標物を設定することにより、利用者は第1目標物を容易に見つけることができ、それにより自分が進むべき方向を確実に知ることができる。
【0038】
このように、第1目標物として目標物Bを設定すると、端末装置10は、図2(d)に示す案内メッセージを表示部15に表示する。利用者は、案内メッセージに従って目標物Bを探し、目標物Bを視認すると、入力部17を操作して「はい」と応答する。
【0039】
こうして利用者が第1目標物を認識したことを確認すると、次に端末装置10の制御部18は、図2(b)に示すように、進行中の道路において利用者の現在位置側にある目標物Cを第2目標物として提示する。第2目標物は利用者が進行中の道路の現在位置側にあり、かつ、第1目標物よりも進行方向の目的地よりにあるので、利用者は第1目標物を目印として、自分の現在位置側の道路を進み、第1目標物を通り過ぎた辺りで第2目標物を見つけることができる。このように、第2目標物は、ルート案内における次のチェックポイントとして機能し、第1目標物は、利用者が第2目標物を見つけるために補助的に機能する目印として機能する。
【0040】
具体的に、第2目標物を設定すると、制御部18は図2(e)に示す案内メッセージを表示部15に表示する。利用者は、案内メッセージの内容を理解すると、入力部17を操作して「はい」と応答する。
【0041】
利用者の応答を得ると、制御部18は図2(f)に示す案内メッセージを表示部15に表示する。利用者はこれに「はい」と応答し、第1目標物である目標物Bを左手に見ながら、道路の現在位置側を第2目標物である目標物Cに向かって進む。
【0042】
利用者が第2目標物である目標物Cの位置に到着すると、制御部18はそこを現在位置として、新たに第1目標物及び第2目標物を設定し、上記と同様に利用者を新たな第2目標物まで案内する。案内ルートに従って道路を直進している間は、制御部18はこの処理を繰り返すことにより、利用者を目的地方向へ案内する。
【0043】
図2(b)に示されるように、利用者の現在位置、第1目標物及び第2目標物は常に三角形の頂点に対応する位置関係となるので、利用者は第1目標物及び第2目標物の大体の位置をイメージしやすい。このように、上記の条件に従って決定される第1目標物と第2目標物を一組にして利用者に提示することにより、道に迷いやすい利用者を容易に正しい方向へ誘導することが可能となる。
【0044】
なお、道路の現在位置側と対岸側の判定は以下のように行うことができる。都市部の幅員の広い道路(例えば片側2車線の道路など)について、地図データに道路の両側をそれぞれ示すデータが含まれている場合には、GPSユニット11が検出した現在位置(緯度・経度)をそれと比較することにより、利用者の現在位置が道路のどちら側にあるかを判定することができる。また、地図データに車線を示す情報が含まれている場合には、現在位置を各車線の位置と比較することにより、現在位置が道路のどちら側にあるかを判定することができる。また、道路の両側を示すデータや車線を示すデータが地図データに含まれていない場合であっても、通常道路を示すデータはその道路の中央位置を示しているので、利用者の現在位置と道路の中央位置とを比較することにより、利用者が道路のどちら側にいるのかを判定することができる。
【0045】
次に、利用者が交差点を曲がる場合におけるルート案内方法について説明する。利用者が案内ルートに従って交差点を曲がる場合、端末装置10の制御部18は、まず、第2目標物を交差点の近傍に設定し、先に説明した直進の場合のルート案内方法により、利用者を交差点近傍の第2目標物まで案内する。そして、利用者が交差点近傍の第2目標物の位置に到着すると、制御部18は以下の条件に従って第3目標物及び第4目標物を決定し、一組にして利用者に提示する。
【0046】
(3)第3目標物:
対象となる交差点において、当該交差点近傍の第2目標物と対角の位置にある目標物
(4)第4目標物:
第3目標物と隣接し、かつ、第3目標物を基準として案内ルートにおける進行方向側にある目標物
以下、図3を参照して具体的に説明する。
【0047】
図3に、利用者が交差点を曲がる場合のルート案内方法を模式的に示す。図3(a)は道路の上空から見た目標物の位置を示す図であり、図3(b)〜(g)は表示部15に表示される案内メッセージの例である。図2と同様に、図中の「●」はルート案内において使用される目標物を示し、「★」は利用者の現在位置を示す。
【0048】
いま、図3(a)に示すように、利用者は交差点近傍の目標物Aの前におり、道路85から道路86へ左折するものとする。この交差点には4つの角地70〜73がある。この場合、制御部18は、当該交差点において目標物Aが位置する角地70と対角に位置する角地72にある目標物Bを第3目標物に設定する。また、制御部18は、同じ角地72にあり、かつ、第3目標物より実線矢印81で示す進行方向側にある目標物Cを第4目標物に設定する。
【0049】
交差点におけるルート案内では、まず利用者がいる角地70と対角にある角地72に第3目標物を設定することにより、利用者に対してその交差点を横断することを知らせることができる。しかし、図3(a)の例において、第3目標物である目標物Bのみを提示した場合、利用者はその後に実線矢印81の方向へ進むべきか、破線矢印82の方向へ進むべきか迷ってしまう。そこで、本実施例では、第3目標物に加えて、第3目標物である目標物Bよりも進行方向側にある目標物Cを第4目標物として設定し、利用者に提示する。これにより、利用者は、第3目標物である目標物Bがある交差点の角地72へ渡った後、第4目標物である目標物Cの方向へ進むべきであることを容易に理解することができる。なお、利用者が第4目標物の前へ到着した後は、利用者は案内ルートに沿って道路を直進することになるので、制御部18は先に説明した直進の場合の案内方法により、第1目標物として目標物D、第2目標物として目標物Eを提示してルート案内を継続する。
【0050】
具体的には、図3を参照すると、制御部18は、GPSユニット11が検出した現在位置を監視し、利用者が目標物Aの前に到着したときに、図3(b)に示す案内メッセージを表示し、利用者に第3目標物として目標物Bを提示する。これに対し、利用者が「はい」と応答すると、制御部18は図3(c)に示す案内メッセージを表示し、利用者に第4目標物として目標物Cを提示する。これに対し、利用者が「はい」と応答すると、制御部18は図3(d)に示す案内メッセージを表示し、第4目標物である目標物Cの位置まで移動するように利用者に指示する。これに対し、利用者が「はい」と応答すると、制御部18はGPSユニット11から出力される端末装置10の現在位置を監視し、利用者が目標物Cの前に到着したときに、図3(e)に示す案内メッセージを表示する。利用者が目標物Cの前に到着した時点で、その後のルート案内は道路を直進する場合のルート案内となる。よって、制御部18は先に図2を参照して説明したのと同様に、図3(e)の案内メッセージにより第1目標物として目標物Dを提示し、図3(f)の案内メッセージにより第2目標物として目標物Eを提示し、利用者を第2目標物である目標物Eまで移動させる。こうして、制御部18は目的地までのルート案内を継続する。
【0051】
なお、図3に示す例において、目的地が左折後の道路86における目標物D側に存在する場合もあるが、その場合でも交差点を曲がる際のルート案内は上記と同様に行えばよい。その場合、最終的には、制御部18は利用者が道路86の目標物C側から目標物D側へ横断するように案内する必要があるが、利用者を道路85から道路86へ確実に左折させるためには上記のように第3目標物及び第4目標物を利用して案内することが好ましい。
【0052】
上記の説明では、便宜上、案内メッセージの文字によりルート案内を行う例を示したが、案内メッセージの表示に加えて、又は、その代わりに、同内容の音声メッセージを出力することとしてもよい。
【0053】
次に、具体的な目標物の設定方法について説明する。図4は、本実施例による目標物の設定方法を示す。
【0054】
まず、端末装置10を所持する利用者が位置P1にいる状態で、制御部18は、道路88の位置P1から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、位置P1とは対岸側にある目標物Aを第1目標物に設定する。具体的には、位置P1を中心とし、半径が基本視認可能距離Rである円(以下、「視認可能円」と呼ぶ。)91と、道路88の道路端88aとが交わった点(以下、「視認可能円と道路端との交点」と呼ぶ。)の近傍に存在する目標物Aを第1目標物とする。なお、道路端の代わりに、歩道の位置などを使用することもできる。
【0055】
ここで、「視認可能距離」は、利用者が肉眼で視認できる最大距離をいう。実際には、視認可能距離は各利用者の視力などに依存するが、携帯端末装置10は平均的な視力を有する利用者の視認可能距離をデフォルト値としての基本視認可能距離Rとして予め保持しておけばよい。そして、利用者は自分の視力などに応じて、基本視認可能距離Rを任意に変更し設定できるようにすることが好ましい。通常の視力を有する利用者にとっても、繁華街などの建物が密集したエリアでは基本視認可能距離を短く設定すれば、目標物までの距離が短くなるとともに、案内の回数が増えるので、確実な案内が可能となるという利点がある。
【0056】
なお、視認可能円と道路端との交点の近傍に適当な目標物が存在しない場合、制御部18は、その交点を中心とし、半径が予め決められた補正距離rを有する円92の範囲内で適当な目標物を探し、第1目標物とする。よって、本発明における「視認可能距離」は、
視認可能距離 = 基本視認可能距離R+補正距離r
で与えられることになる。
【0057】
第2目標物を設定する作業も基本的に同様である。制御部18は、第1目標物である目標物Aの位置を中心とし、半径が基本視認可能距離Rである視認可能円93と、道路88の道路端88bとの交点を求め、その近傍、もしくはその交点を中心として半径rを有する円94の範囲内で第2目標物を決定すればよい。
【0058】
道路を直進する場合には、制御部18は上記の処理を繰り返すが、曲がるべき交差点が近づいた場合には、制御部18はその交差点の手前に第2目標物を設定する。図4の例では、制御部18は交差点90の手前の角に第2目標物として目標物Dを設定している。このように、曲がるべき交差点に近づいた場合には、第2目標物は交差点近傍(手前)に設定されるため、第1目標物と第2目標物との距離は基本視認可能距離Rよりも短くなることがある。図4の例において、第1目標物である目標物Cと、交差点近傍に設定された第2目標物である目標物Dとの距離R1は基本視認可能距離Rより短くなっている。また、交差点を曲がる場合には、交差点近傍に設定された第2目標物である目標物Dと、第3目標物である目標物Eとの距離R2は、基本的に交差点の大きさに依存するものであり、基本視認可能距離Rとは一致しない。但し、通常、基本視認可能距離Rは交差点の対角距離よりも大きいので、利用者が第3目標物を視認できないということはない。
【0059】
図4の例では、こうして順に第1乃至第4目標物が設定され、ルート案内が実行される。その結果、利用者は位置P1から、P2、P3、P4と進行することになる。
【0060】
なお、本実施例では、利用者が第1目標物を視認できなければならないので、先に述べた第1目標物の条件に規定されるように、現在位置から第1目標物までの距離は視認可能距離以内でなければならない。これに対し、第1目標物から第2目標物までの距離は、視認可能距離と一致させても良いが、必ずしも視認可能距離と一致しなくても構わない。
【0061】
図4の例においては第1目標物から第2目標物までの距離も基本的に視認可能距離としている。この場合、利用者は、位置P1から歩いて第1目標物のほぼ対岸あたりまで到着したときに、位置P1から第2目標物までの距離とほぼ同じぐらいの距離だけさらに進んだ辺りに第2目標物があると想定して第2目標物を探すことができるという利点がある。
【0062】
但し、第1目標物から第2目標物までの距離はこの例に限定されない。理論的には、第1目標物を第2目標物の目印として機能させるために、第2目標物は第1目標物より進行方向よりに設定する必要がある。一方で、第2目標物が第1目標物に近いほど利用者は第2目標物を見つけ易くなるので、究極的には、第2目標物を第1目標物のほぼ対岸の位置に設定してもよい。但し、この場合には、現在位置から第2目標物までの距離、即ち1回の案内により進む距離が視認可能距離程度となるので、案内回数が増加することになる。逆に、第1目標物と第2目標物との距離を視認可能距離よりも長くすると、案内回数は減少するが、第1目標物を第2目標物の目印として使用する効果が薄れ、利用者が第2目標物を見つけにくくなる。以上より、第2目標物は、第1目標物の対岸付近の位置と、第1目標物から視認可能距離程度の位置との範囲内に設定することが好ましい。
【0063】
(ルート案内処理)
次に、端末装置10により行われるルート案内処理について説明する。図5及び6は、第1実施例に係るルート案内処理のフローチャートである。この処理は、端末装置10の制御部18が、予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。
【0064】
まず、利用者が入力部17を操作してルート案内モードを選択すると、制御部18はGPSユニット11の出力に基づいて利用者の現在位置を取得する(ステップS11)。次に、制御部18は、現在位置に基づいてその周辺の地図データを地図データ記憶部12から取得し、表示部15に現在位置周辺の地図を表示する(ステップS12)。
【0065】
次に、利用者が目的地を入力すると、制御部18は現在位置から目的地までのルートを検索して案内ルートを決定し(ステップS13)、表示部15に表示された地図上に案内ルートを表示する(ステップS14)。
【0066】
次に、制御部18は、現在位置を基準として前述の第1目標物の条件を満たすPOIを第1目標物として選択し(ステップS15)、現在位置を基準として前述の第2目標物の条件を満たすPOIを第2目標物として選択する(ステップS16)。そして、制御部18は、図2(d)に例示するように第1目標物の名称を利用者に提示し(ステップS17)、さらに図2(e)に例示するように第2目標物の名称を利用者に提示して利用者に移動を促す(ステップS18)。
【0067】
その後、制御部18は、GPSユニット11が検出している現在位置を取得し、履歴記憶部13に記憶する(ステップS19)。そして、制御部18は、利用者の現在位置が案内ルートの目的地に到達したか否かを判定する(ステップS20)。現在位置が案内ルートの目的地に到達した場合(ステップS20;Yes)、制御部18は処理を終了する。一方、現在位置が案内ルートの目的地に到達していない場合(ステップS20;No)、制御部18は、現在設定している第2目標物の位置を基準として、第1目標物の条件を満たすPOIを次の第1目標物として選択する(ステップS21)。
【0068】
次に、制御部18は、案内ルートに基づいて、次の案内が交差点で曲がる案内になるか否かを判定する(ステップS22)。この判断は、交差点までの残りの距離と、設定されている視認可能距離又は1回の案内による進行距離との関係に基づいて行われる。交差点で曲がる案内ではない場合(ステップS22;No)、制御部18は、ステップS21で決定した次の第1目標物を基準として、第2目標物の条件を満たすPOIを次の第2目標物として選択する(ステップS33)。
【0069】
次に、制御部18は、履歴記憶部13に記憶されている現在位置に基づいて、利用者が第2目標物に到着したか否かを判定する(ステップS34)。利用者が第2目標物に到着すると(ステップS34;Yes)、制御部18は、ステップS21で決定した次の第1目標物の名称を利用者に提示し(ステップS35)、図5に示すステップS18へ戻る。そして、制御部18は、ステップS18〜20を実行する。こうして、交差点で曲がる案内が発生しない間は、制御部18は、第1目標物と第2目標物を一組にして提示する案内を繰り返すことにより、案内ルートに沿って利用者を正しく案内する。
【0070】
一方、交差点で曲がる案内が発生すると(ステップS22;Yes)、制御部18は、ステップS21で決定された次の第1目標物を基準として、第2目標物の条件を満たし、かつ、曲がる予定の交差点の手前の位置にあるPOIを次の第2目標物として選択する(ステップS23)。次に、制御部18は、ステップS23で決定した次の第2目標物を基準として、第3目標物の条件を満たすPOIを第3目標物として選択し(ステップS24)、さらに第4目標物の条件を満たすPOIを第4目標物として選択する(ステップS25)。
【0071】
次に、制御部18は、履歴記憶部13に記憶されている現在位置に基づいて、利用者が第2目標物に到着したか否かを判定する(ステップS26)。利用者が第2目標物に到着すると(ステップS26;Yes)、制御部18はステップS21で決定した次の第1目標物の名称を利用者に提示し(ステップS27)、続いてステップS23で決定した次の第2目標物の名称を利用者に提示して、利用者に移動を促す(ステップS28)。利用者がステップS23で決定した次の第2目標物、即ち交差点の手前に位置する第2目標物に到着すると(ステップS29;Yes)、制御部18はステップS24で決定した第3目標物及びステップS25で決定した第4目標物の名称を利用者に提示して移動を促す(ステップS30)。その後、制御部18は、第4目標物を基準として第1目標物の条件を満たすPOIを次の第1目標物として選択し、第2目標物の条件を満たすPOIを次の第2目標物として選択する(ステップS31)。
【0072】
次に、制御部18は、履歴記憶部13に記憶されている現在位置に基づいて、利用者が第4目標物に到着したか否かを判定する(ステップS32)。利用者が第4目標物に到着すると(ステップS32;Yes)、制御部18は、ステップS19へ戻る。こうして、交差点で曲がる案内を行う場合には、制御部18は第3目標物及び第4目標物を一組にして提示することにより、案内ルートに沿って利用者を正しく案内する。
【0073】
(従来手法との比較)
まず、ルート案内中に利用者がリルートを指示した場合における本実施例のルート案内方法の利点について説明する。ここで、「リルート」とは、現在提示されているルート案内情報を更新して新たな案内情報を再提示することをいう。
【0074】
図7に従来のルート案内手法におけるリルート時のルート案内例を示す。従来のルート案内手法では、最初の案内ルートの決定時に全ての目標物が決定されるので、図7(a)及び(b)に示すように、利用者が進行中の道路が正しいか否かを不安に感じて案内途中にリルートを指示した場合でも、同じ目標物が提示されてしまう。
【0075】
これに対し、本実施例のルート案内手法では、図8に示すように、利用者がリルートを指示すると、端末装置10はその時点における利用者の現在位置を基準として新たに第1目標物及び第2目標物を決定して提示する。よって、利用者は、現在進行している道及び方向に不安を感じたときには、リルートを指示することにより、新たな目標物の提示を受けることができ、正しい方向に進んでいるか否かを容易に確認することができる。
【0076】
次に、目標物の近傍に類似する目標物がある場合における本実施例のルート案内方法の利点について説明する。図9(a)は、交差点の近くに複数の似たようなランドマークがある場合におけるルート案内例を示す。従来のルート案内手法では、「コンビニを右折」との案内がなされた場合に、複数のコンビニA及びBが近接していると、どちらの道を曲がればよいかがわからなくなる。これに対し、本実施例のルート案内手法では、交差点を曲がる場合には、交差点の対角位置に、第3目標物としてコンビニが提示され、第4目標物としてコーヒーショップが提示されるので、正しい道を曲がることが可能となる。
【0077】
次に、地下鉄から地上に出た際の本実施例のルート案内方法の利点について説明する。図9(b)は、利用者が地下鉄から地上に出た場合におけるルート案内例を示す。地下鉄から地上に出たときには、進行すべき方向がわからなくなる場合が多い。従来のルート案内手法により次の目標物として「Bショップ」が提示されていたとしても、Bショップは利用者の現在位置側にあるため発見しにくい。この点、実施例のルート案内手法では、現在位置と対岸側に第1目標物としてA銀行が提示されるので、進むべき方向を容易に確認することができる。
【0078】
本実施例のルート案内手法は基本的に2つの目標物を目標として移動を繰り返すものであるので、地図を見るのが苦手な人や、東西南北などの方向感や300m先などの距離感があまり鋭くない人を正しく案内することができる。
【0079】
[第2実施例]
(システム構成)
次に、本発明の第2実施例について説明する。第2実施例はシステム構成が第1実施例と異なり、端末装置はサーバ装置と通信しつつルート案内を行う。但し、利用者に対しては第2実施例においても第1実施例と同様の方法でルート案内が行われる。即ち、案内ルートの決定、第1乃至第4目標物の決定などの処理は、サーバ装置側で実行される。
【0080】
図10は第2実施例によるサーバ装置と端末装置の概略構成を示す。サーバ装置50と端末装置20は無線ネットワークなどにより通信可能に構成されている。サーバ装置50は、ルート検索、目標物の決定など、ルート案内の実体的な処理を行い、ルート案内の指示を端末装置20に送信する。端末装置20は、サーバ装置50からの指示に従い、必要な情報を利用者に提示してルート案内を実行する。
【0081】
具体的に、サーバ装置50は、地図データベース(DB)51と、POIデータベース52と、履歴データベース53と、通信部54と、制御部55とを備える。
【0082】
地図データベース51には、地図データが記憶されている。POIデータベース52には、目標物として選択可能なPOIが記憶されている。なお、前述のように、このPOIには、地図データに予め含まれているランドマークと、利用者が登録したランドマークなどが含まれている。
【0083】
履歴データベース53には、利用者の端末装置20の現在位置が所定時間毎に端末装置20から送信され、記憶される。通信部54は、端末装置20との通信を行う。制御部55は、予め用意されたプログラムを実行することにより、サーバ装置50の他の構成要素を制御し、ルート案内処理を実行する。
【0084】
一方、端末装置20は、GPSユニット21と、通信部24と、表示部25と、スピーカ26と、制御部28とを備える。GPSユニット21、通信部24、表示部25及びスピーカ26の機能は、基本的に、それぞれ図1に示すGPSユニット11、通信部14、表示部15及びスピーカ16と同様である。制御部28は、予め用意されたプログラムを実行することにより、端末装置20の他の構成要素を制御し、ルート案内処理を実行する。但し、第2実施例では、案内ルートの決定や第1乃至第4目標物の決定などはサーバ装置50の制御部55により実行されるため、端末装置20の制御部28はもっぱらサーバ装置50との間の必要なデータの通信や、表示部25及び/又はスピーカ26を利用した案内メッセージの提示などを行うことになる。
【0085】
(ルート案内処理)
次に、第2実施例におけるルート案内処理について説明する。図11は、第2実施例によるルート案内処理のフローチャートである。
【0086】
まず、端末装置20は、GPSユニット21により現在位置を取得するとともに、利用者による目的地の入力を受け付ける(ステップS51)。そして、端末装置20は、現在位置と目的地を指定してサーバ装置50へルート案内依頼を行う(ステップS52)。
【0087】
サーバ装置50は、端末装置20から受信した現在位置及び目的地に基づいて、地図データベース51に記憶されている地図データを利用してルート検索を実行し(ステップS53)、検索により得られた案内ルートを端末装置20へ送信する(ステップS54)。端末装置20は、サーバ装置50から案内ルートを受信し、表示部25に表示する(ステップS55)。
【0088】
また、サーバ装置50は、第1実施例で説明したのと同様の手法により、利用者が道路を直進している場合には第1及び第2目標物を、交差点を曲がる場合には第3及び第4目標物を決定し(ステップS56)、端末装置20へ目標物を指示する(ステップS57)。端末装置20は、サーバ装置50から目標物の指示を受信し、表示部25による文字メッセージとスピーカ25による音声メッセージの少なくともいずれかにより利用者に目標物を提示する(ステップS58)。また、端末装置20は、GPSユニット21により現在位置を検出し(ステップS59)、サーバ装置50へ報告する(ステップS60)。サーバ装置50は、端末装置20から受信した現在位置を履歴データベース53に記憶する(ステップS61)。
【0089】
次に、サーバ装置50は、履歴データベース53に記憶されている現在位置に基づいて、利用者がルート案内の目的地に到着したか否かを判定する(ステップS62)。目的地に到着した場合(ステップS62;Yes)、サーバ装置50はルート案内の終了を端末装置20へ告知する(ステップS63)。一方、目的地に到着していない場合(ステップS62;No)、サーバ装置50は利用者が次の目標物に到着したか否かを判定する(ステップS64)。利用者が次の目標物に到着すると(ステップS64;Yes)、サーバ装置50はステップS56へ戻り、次の目標物を決定し(ステップS56)、端末装置20へ指示する(ステップS57)。こうして、利用者が目的地に到着するまで、端末装置20により利用者に目標物が提示され、ルート案内が継続される。
【0090】
以上のように、第2実施例では、サーバ装置50が主体となってルート案内を実行する。ルート案内の方法自体は第1実施例と同様であるので、利用者が道路を直進する場合には第1及び第2目標物を一組にして提示し、交差点を曲がる場合には第3及び第4目標物を一組にして提示することにより、利用者を容易に正しい進路へ誘導することができる。
【0091】
(変形例)
上記の実施例では、ルート案内処理において、利用者の現在位置周辺の地図及び案内ルートを端末装置10、20に表示しているが、端末装置10、20における地図の表示を省略してもよい。地図を見るのが苦手な人、高齢者などで細かい地図表示を見ることが難しい人などにとっては、地図表示はあまり意味をなさない。よって、文字又は音声の案内メッセージのみを提示することとしてもよい。上記の実施例の記載から理解されるように、本実施例のルート案内手法は地図表示が無くても正しく案内を行うことが可能である。
【0092】
利用者が現在の道路において対岸側に横断した場合には、第1実施例における端末装置10又は第2実施例におけるサーバ装置50は、利用者の現在位置の移動に基づいてこの横断を検出し、自動的にリルートを行うこととしてもよい。これにより、目的地への移動中に店舗に立ち寄るためなどの理由で利用者が道路の反対側に移動した場合には、その場所から適切な目標物を提示することができる。車の通行が禁止されている商店街などでは、利用者は道路の両側を頻繁に渡り歩くジグザグ歩きをすることにより、2つの目標物を視認しつつより確実に進むことも可能となる。
【符号の説明】
【0093】
10、20 端末装置
11、21 GPSユニット
12 地図データ記憶部
13 履歴記憶部
14、24、54 通信部
15、25 表示部
16、26 スピーカ
17 入力部
18、28、55 制御部
50 サーバ装置
51 地図データベース
52 POIデータベース
53 履歴データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を取得する現在位置取得手段と、
前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段と、
文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う案内手段と、を備え、
前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示することを特徴とする携帯型端末装置。
【請求項2】
前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置が前記第2目標物の位置に到着したときに、当該第2目標物の位置を基準として新たに前記第1目標物及び第2目標物を決定して提示することを特徴とする請求項1に記載の携帯型端末装置。
【請求項3】
前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合に目標物の再提示を求める再提示要求が入力されたときには、前記再提示要求が入力された時点における現在位置を基準として新たに前記第1目標物及び第2目標物を決定して提示することを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯型端末装置。
【請求項4】
前記案内手段は、前記案内ルートが交差点を曲がるルートである場合、まず当該交差点に近接する第2目標物を提示し、前記現在位置が当該第2目標物の位置に到着したときに、当該交差点において当該第2目標物と対角の位置にある第3目標物と、前記第3目標物に隣接し、かつ、前記案内ルートの進行方向側にある第4目標物とを一組にして提示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯型端末装置。
【請求項5】
コンピュータを備える携帯型端末装置において実行されるルート案内プログラムであって、
現在位置を取得する現在位置取得手段、
前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段、
文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う案内手段、として前記コンピュータを機能させ、
前記案内手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示することを特徴とするルート案内プログラム。
【請求項6】
携帯型端末装置と通信可能なサーバ装置であって、
前記携帯型端末装置から、当該携帯型端末装置の現在位置を受信する現在位置取得手段と、
前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段と、
文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う指示を前記携帯型端末装置に送信する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示するように前記携帯型端末装置に指示することを特徴とするサーバ装置。
【請求項7】
携帯型端末装置と通信可能であり、コンピュータを備えるサーバ装置において実行されるルート案内プログラムであって、
前記携帯型端末装置から、当該携帯型端末装置の現在位置を受信する現在位置取得手段、
前記現在位置から目的地までの案内ルートを検索するルート検索手段、
文字表示及び音声出力の少なくとも一方により、前記案内ルートに沿って目標物を提示することによりルート案内を行う指示を前記携帯型端末装置に送信する制御手段、として前記コンピュータを機能させ、
前記制御手段は、前記案内ルートが道路を直進するルートである場合、前記現在位置から予め設定された視認可能距離以内に存在し、かつ、前記現在位置が属する道路の前記現在位置と対岸側にある第1目標物と、前記現在位置が属する道路の前記現在位置側にあり、かつ、前記第1目標物より前記案内ルートにおける進行方向よりに位置する第2目標物とを一組にして提示するように前記携帯型端末装置に指示することを特徴とするルート案内プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−237212(P2011−237212A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107201(P2010−107201)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(595105515)インクリメント・ピー株式会社 (197)
【Fターム(参考)】