説明

撥水撥油剤水性分散液

(I)パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基およびアクリル酸基もしくはメタクリル酸基もしくはα−置換アクリル酸基を有する重合性化合物、含塩素重合性化合物、および場合により存在するそれらと共重合可能な他の重合性化合物との共重合体、ならびに(II)塩酸を捕捉する化合物を含んでなる撥水撥油剤水性分散液は、優れた保存安定性を有し、優れた撥水撥油性を基材に付与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油剤水性分散液に関し、より詳しくは、塩素を捕捉する化合物を含む撥水撥油剤水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基およびアクリル酸基もしくはメタクリル酸基を有する重合性化合物の重合体が繊維織物等の撥水撥油剤として有用であることは知られており、特に該重合体を界面活性剤により水性媒体中に分散せしめた水性分散液が工業的に広く使用されている。
また、上記の含フッ素重合性化合物に塩化ビニルや塩化ビニリデンやα−クロロアクリレートといった含塩素重合性化合物を共重合させる事により、優れた耐久性を付与できる事も一般に知られている。
【0003】
しかるにこれらの共重合物を長期間貯蔵しておくとエマルションが不安定な状態となり、ひいては処理時の性能低下が起こることも認められていた。
この問題を解決するために、特開平4−80218号公報では未反応塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニリデンモノマー濃度を10ppm以下とすることを、また特開平4−80219号公報では塩素イオン濃度を20mol%/l以下とすることを提案している。
しかしながら、常温での貯蔵安定性は充分ではなく、また高温下で貯蔵される場合においては貯蔵安定性は殆どなく、特にノニオン性界面活性剤を用いた場合には顕著であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた保存安定性を有し、優れた撥水撥油性を基材に付与できる撥水撥油剤分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(I)パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基およびアクリル酸基もしくはメタクリル酸基もしくはα−置換アクリル酸基を有する重合性化合物、含塩素重合性化合物、および場合により存在するそれらと共重合可能な他の重合性化合物との共重合体、ならびに
(II)塩酸を捕捉する化合物
を含んでなる撥水撥油剤水性分散液に関する。
【発明の効果】
【0006】
塩化ビニルや塩化ビニリデンやα−クロロアクリレートといった含塩素重合性化合物から経時的に発生する塩酸を(例えば、エポキシ化合物または弱塩基で)トラップすることで、長期間貯蔵しても安定性低下および性能低下が起こらない撥水撥油剤分散液が得られる。
更に、生地の黄変を抑制する効果があることも分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[重合体(I)]
重合体(I)は、パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基およびアクリル酸基もしくはメタクリル酸基もしくはα−置換アクリル酸基を有する重合性化合物(すなわち、含フッ素重合性化合物)、含塩素重合性化合物、および場合により存在する他の重合性化合物からなる共重合体である。
【0008】
含フッ素重合性化合物の例として、式:
【化1】

【0009】
[式中、Rfは炭素数1〜21のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基、
1 は水素または炭素数1〜10のアルキル基、
2 は炭素数1〜10のアルキレン基、
3 は、水素原子、メチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基、
Ar は置換基を有することもあるアリール基、
n は1〜10の整数を表わす。]
で示される(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0010】
上記式において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜21、特に2〜20、特別には4〜16、例えば6〜14である。あるいは、Rf基の炭素数は、1〜6、特に1〜4であってもよい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3)2、−C(CF)3、−(CF2)4CF3、−(CF2)2CF(CF3)2、−CF2C(CF3)3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3)2、−(CF2)4CF(CF3)2、−(CF2)7CF3、−(CF2)5CF(CF3)2、−(CF2)6CF(CF3)2、−(CF2)9CF3等である。
【0011】
アクリル酸基もしくはメタクリル酸基を有する含フッ素重合性化合物の具体例は、
CF3(CF2)7(CH2)OCOCH=CH2
CF3(CF2)6(CH2)OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
CF3(CF2)7(CH2)2OCOCH=CH2
CF3CF2(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)3 (CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(CH3)(CH2)2OCOCH=CH2
CF3(CF2)7SO2N(C25)(CH2)2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OCOCH3)CH2OCOC(CH3)=CH2
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOCH=CH2
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

を例示することができる。
【0014】
α−置換アクリル酸基において、α置換基の例は、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ハロゲン原子で水素原子を置換した(例えば、炭素数1〜21の)アルキル基(例えば、モノフルオロメチル基およびジフルオロメチル基)、シアノ基、芳香族基(例えば、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基)である。
【0015】
α−置換アクリル酸基を有する含フッ素重合性化合物の具体例は、次のとおりである。
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

[式中、Rfは炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルケニル基である。]
【0021】
含塩素重合性化合物は、塩素および炭素−炭素二重結合を有する化合物である。含塩素重合性化合物の例は、塩化ビニル、塩化ビニリデン、α−クロロアクリレート(例えば、アルキル(炭素数1〜30)エステル)および3−クロロー2−ヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0022】
他の共重合可能な重合性化合物には種々のものがあるが、例示すると、
(1)アクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらのメチル、エチル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、プロピル、2−エチルヘキシル、ヘキシル、デシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、β−ヒドロキシエチル、グリシジルエステル、フェニル、ベンジル、4−シアノフェニルエステル類、
(2)酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の脂肪酸のビニルエステル類、
(3)スチレン、α−メチルスチレン、 p−メチルスチレン等のスチレン系化合物、
(4)フッ化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニリデン等の(塩化物を除く)ハロゲン化ビニルまたはビニリデン化合物類、
(5)ヘプタン酸アリル、カプリル酸アリル、カプロン酸アリル等の脂肪族のアリルエステル類、
(6)ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン等のビニルアルキルケトン類、
(7)N−メチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類および
(8)2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン類などを例示できる。
【0023】
重合体(I)において、含フッ素重合性化合物の量は30〜90重量%、例えば50〜80重量%であり、含塩素重合性化合物の量は1〜50重量%、例えば5〜30重量%であり、他の重合性化合物の量は0〜50重量%、例えば5〜30重量%であってよい。
重合体(I)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(ポリスチレン換算)して、一般に、5,000〜2,000,000、特に10,000〜500,000であってよい。
【0024】
[塩酸捕捉化合物(II)]
塩酸捕捉化合物(II)の例は、エポシキ化合物および弱塩基化合物である。塩素捕捉化合物(II)としては、エポキシ化合物と弱塩基化合物の併用が好ましい。
エポキシ化合物の例は、エポキシ化植物油、エポキシ化脂肪酸エステルである。エポキシ化植物油の例は、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化綿実油、エポキシ化紅花油である。
【0025】
エポキシ化大豆油は、例えば、式:
【化10】

で示される化合物である。
【0026】
エポキシ化アマニ油は、例えば、式:
【化11】

で示される化合物である。
【0027】
弱塩基化合物は、弱塩基性を示す化合物である。弱塩基化合物の例は、例えば酸の金属塩である。酸の金属塩において、酸は無機酸または有機酸であってよく、金属はアルカリ金属またはアルカリ土類金属であってよい。弱塩基化合物の例は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、水酸化マグネシウム、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化鉄である。水性分散液を基体に適用する際の処理浴のpHは、一般に3〜8、特に4〜7である。
【0028】
塩素捕捉化合物(II)の量は、含フッ素重合体100重量部に対して、0.5〜50重量部、特に1〜20重量部であってよい。エポキシ化合物と弱塩基化合物とを併用する場合に、エポキシ化合物と弱塩基化合物の重量比は、9.9:0.1〜1:9、特に9.5:0.5〜5:5であってよい。
【0029】
[界面活性剤]
本発明においては、含フッ素重合体を水性分散液に良好に分散させるために、一般に、界面活性剤を使用する。界面活性剤は、ノニオン系またはイオン性(例えば、カチオン性、アニオン性、両性)であってよい。界面活性剤として、ノニオン性界面活性剤および/またはカチオン性界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤のみからなるか、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせであることが好ましい。
【0030】
ノニオン性界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:SH3746、SH3748、SH3749、SH3771(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製))、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物(商品名:ユニダインDS−401、DS−403(ダイキン工業(株)製)、フルオロアルキルエチレンオキシド付加物(商品名:ユニダインDS−406(ダイキン工業(株)製)、パーフルオロアルキルオリゴマー(商品名:ユニダインDS−451(ダイキン工業(株)製))などである。
【0031】
ノニオン性界面活性剤の市販品の例としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル(商品名:エマルゲン430、花王(株)製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:NIKKOL BL-21、日光ケミカルズ(株)製)がある。
【0032】
カチオン性界面活性剤の例には、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]オレアミド塩酸塩が包含される。
【0033】
本発明において、3種のノニオン性界面活性剤を使用することが特に好ましい。3種のノニオン性界面活性剤は、(a)HLBが12未満であるノニオン性界面活性剤、(b)HLBが12以上〜17未満であるノニオン性界面活性剤、(c)HLBが17以上であるノニオン性界面活性剤の3種の界面活性剤であることが好ましい。HLBは、HLB値はカタログ値のあるものはその値を、ないものは計算値(参考文献:W.G.Griffin, J. Soc. Cosmetic Chemists,1,311(1949)及びW.G.Griffin, J. Soc. Cosmetic Chemists,5,249(1954))を採用する。
界面活性剤(a)、(b)、(c)の例は、次のとおりである。
(a):日本油脂製 ノニオンPP-40R(HLB値:6.7)
(b):日本油脂製 ノニオンPT-221(HLB値:15.6)
(c):日本油脂製 ノニオンS-40(HLB値:18.2)
【0034】
界面活性剤の量は、含フッ素重合体(I)100重量部に対して、1〜30重量部、特に5〜20重量部であってよい。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を組み合わせて用いる場合、カチオン性界面活性剤の量は、ノニオン性界面活性剤100重量部に対して、100重量部以下、特に0.1〜50重量部であってよい。上記のHLBの異なる3種のノニオン性界面活性剤(a)〜(c)を用いる場合に、ノニオン性界面活性剤(a)とノニオン性界面活性剤(b)とノニオン性界面活性剤(c)の重量比は、10〜40:50〜80:5〜30、特に20〜40:50〜70:10〜20であってよい。
【0035】
[有機溶剤]
本発明の撥水撥油剤水性分散液は、有機溶剤を含有しても含有しなくてもよい。有機溶剤の例としては、既存の水溶性のものが使用可能である。有機溶剤の量は、重合体100重量部に対して、0〜200重量部、例えば0〜100重量部、特に1〜50重量部であってよい。
【0036】
本発明の分散液を製造するには、界面活性剤の存在下で重合性化合物を、必要により有機溶剤を加えた水中で乳化重合して、重合体の乳濁液を得る。必要に応じて、乳濁液に、水および/または界面活性剤を加えて、撥水撥油剤水性分散液を得る。撥水撥油剤水性分散液の重合体濃度は、例えば、0.1〜50重量%である。
【0037】
本発明の分散液を適用する適当な基体は、フィルム、繊維、糸、織布、カーペットならびに天然重合体物質や変性された天然重合体物質や合成重合体物質から得られたフィラメント、繊維あるいは糸で作られた製品である。基体は、繊維、糸または布の形態である繊維製品であることが好ましい。
【0038】
本発明の分散液を基体に適用するには、塗布、浸漬、吹きつけ、パッデイング、ロール被覆あるいはこれらの方法の組み合せによるのが望ましい。例えば、浴の固形分量を0.1〜10重量%にすることによってパッド浴として使用する。基体をこの浴でパッドし、次に普通絞りロールで過剰の液を除いて乾燥吸収(基体上の乾燥重合体の重量)が基体の約0.01〜1重量%となるようにする。次いで処理基体を100〜200℃に加熱するのがよい。
【実施例】
【0039】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を更に詳しく説明する。
実施例および比較例において、次のように評価を行った。
【0040】
撥水撥油性の洗濯耐久性
水性分散液を水道水で固形分濃度1.0重量%に希釈し、綿布を処理液に浸漬し、マングルで絞って、ウェットピックアップ60%とし、100℃で2分間乾燥し、160℃で1分間熱処理する。AATCC-135法による洗濯を3回繰り返して行い、その後の撥水撥油性を評価する(HL-3)。
撥水性 : AATCC-22法
撥油性 : AATCC-118法
【0041】
貯蔵安定性
水性分散液(固形分30重量%)の初期と50℃で1ヶ月保存後の平均粒子径(散乱強度)を、大塚電子製FPAR-1000にて測定し、以下の基準で評価した。
○: 変化率10%以内
△: 変化率10〜20%
×: 変化率20%以上
【0042】
生地の黄変
水性分散液を水道水で固形分濃度1.0重量%に希釈し、綿布を処理液に浸漬し、マングルで絞って、ウェットピックアップ60%とし、100℃で2分間乾燥し、160℃で1分間熱処理する。ミノルタ製CR-300色差計で未処理布とのb値の違いを測定し、以下の基準で評価した。
○ : Δb=0.1以内
△ : Δb=0.1〜0.5
× : Δb=0.5以上
【0043】
実施例1
1LオートクレーブにC2n+1CHCHOCOCH=CH (n=6,8,10,12,14(nの平均は8)の化合物の混合物)(FA)(含フッ素モノマー)150g、ステアリルアクリレート75g、N−メチロールアクリルアミド3g、純水300g、トリプロピレングリコール80g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル25g、エポキシ化大豆油10gを入れ、撹拌下に40℃で30分間、超音波で乳化分散させた。乳化後、n−ドデシルメルカプタン1gを添加し、次に、塩化ビニル(含塩素重合性化合物)40gを圧入充填した。アゾビスイソブチルアミジン−2塩酸塩0.8gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性エマルションを得た。重合体の組成は、塩化ビニルの反応率が約80%であり、他のモノマーの反応率が約100%である組成であった。この水性エマルションに炭酸水素ナトリウムを0.7g加えて、pHを7に調整した撥水撥油剤水性分散液を得た。
撥水撥油剤水性分散液について、初期および50℃で1ヶ月間貯蔵させた後の洗濯耐久性と初期の生地黄変を評価した。
結果を表1に示す。
【0044】
実施例2〜5
含塩素重合性化合物およびエポキシ化合物として、同重量の表1に示す化合物を使用する以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。実施例4においては、塩化ビニルおよびステアリルアクリレートに代えて、同重量(105g)のステアリルα−クロロアクリレートを使用した。
なお、pH設定値の変更における炭酸水素ナトリウムの添加量は以下の通りである。
実施例2: 0.7g
実施例3: 0.5g
実施例4: 0.4g
実施例5: 1.5g
結果を表1に示す。
【0045】
実施例6〜7
含塩素重合性化合物およびエポキシ化合物として、同重量の表1に示す化合物を使用し、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド(実施例6では3g、実施例7では2g)をポリオキシエチレンラウリルエーテル25gに追加する以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例8
FAに代えて同重量(150g)のC4F9CH2CH2OCOCH=CH2を使用し、炭酸水素ナトリウム0.7gに代えて炭酸ナトリウムを0.9g加えてpHを8に調整した以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例9
FAに代えて同重量(150g)のC4F9CH2CH2OCOCCl=CH2を使用し、塩化ビニルを使用せず、ステアリルアクリレートの量を100gに増やし、炭酸水素ナトリウム0.7gに代えて炭酸ナトリウムを0.6g加えてpHを8に調整した以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0048】
実施例10
FAに代えて同重量(150g)のC2F5CH2CH2OCOCCl=CH2を使用し、塩化ビニルを使用せず、ステアリルアクリレートの量を100gに増やし、炭酸水素ナトリウム0.7gに代えて炭酸ナトリウムを0.6g加えてpHを8に調整した以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例11
炭酸水素ナトリウムを使用しない以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0050】
実施例12
エポキシ化大豆油を使用しない以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
塩化ビニルおよびエポキシ化大豆油および炭酸水素ナトリウムを使用せず、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド5gをポリオキシエチレンラウリルエーテル25gに追加する以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
エポキシ化大豆油および炭酸水素ナトリウムを使用しない以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0053】
比較例3
エポキシ化大豆油を使用せず、炭酸水素ナトリウム0.7gに代えて水酸化ナトリウムを0.2g添加してpHを9に調整する以外は、実施例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)パーフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルケニル基およびアクリル酸基もしくはメタクリル酸基もしくはα−置換アクリル酸基を有する重合性化合物、含塩素重合性化合物、および場合により存在するそれらと共重合可能な他の重合性化合物との共重合体、ならびに
(II)塩酸を捕捉する化合物
を含んでなる撥水撥油剤水性分散液。
【請求項2】
塩酸を捕捉する化合物がエポキシ化合物もしくは弱塩基性化合物もしくはそれらの併用である請求項1に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項3】
エポキシ化合物がエポキシ化植物油である請求項2に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項4】
エポキシ化植物油がエポキシ化大豆油もしくはエポキシ化アマニ油である請求項3に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項5】
弱塩基化合物が、酸の金属塩である請求項2に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項6】
弱塩基化合物が炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸ナトリウムである請求項2に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項7】
含塩素重合性化合物が塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンもしくはα−クロロアクリレートもしくは3−クロロー2−ヒドロキシプロピルメタクリレートである請求項1に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項8】
水性分散液が界面活性剤をも含み、界面活性剤がノニオン性界面活性剤だけから成る請求項1〜7に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項9】
ノニオン性界面活性剤がHLBの異なる3種類である請求項8に記載の撥水撥油剤水性分散液。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の水性分散液を適用した繊維製品。
【請求項11】
請求項1〜9に記載の水性分散液を用いる繊維製品の加工法。

【国際公開番号】WO2005/047417
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515411(P2005−515411)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016319
【国際出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】