撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法
【課題】ゴーストやフレアをより低減させ、優れた光学性能を有する撮影レンズ、光学機器、撮影レンズの製造方法を提供する。
【解決手段】最も物体側に配置され負の屈折力を有する前群と、前群より像側に配置され負の屈折力を有し、少なくとも一部が光軸と略垂直方向の成分を持つように移動する後群とで構成し、後群は物体側から順に第1負レンズ成分と第2負レンズ成分と正レンズ成分とで構成し、第1負レンズ成分の第2負レンズ成分側のレンズ面は当該第2負レンズに対して凹面を向けるよう形成され、第2負レンズ成分は第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、後群のうち少なくとも1面に非球面を有し、前群における光学面のうち少なくとも1面に、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む反射防止膜が設けられていることを特徴とする撮影レンズ。
【解決手段】最も物体側に配置され負の屈折力を有する前群と、前群より像側に配置され負の屈折力を有し、少なくとも一部が光軸と略垂直方向の成分を持つように移動する後群とで構成し、後群は物体側から順に第1負レンズ成分と第2負レンズ成分と正レンズ成分とで構成し、第1負レンズ成分の第2負レンズ成分側のレンズ面は当該第2負レンズに対して凹面を向けるよう形成され、第2負レンズ成分は第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、後群のうち少なくとも1面に非球面を有し、前群における光学面のうち少なくとも1面に、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む反射防止膜が設けられていることを特徴とする撮影レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1レンズ群が負のレンズ群であり広角撮影に適したズームレンズであって、防振機能を有したズームレンズが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このズームレンズは、負の屈折力を有する第3レンズ群を防振レンズ群とすることで、良好な防振性能を得ている。また近年、このようなズームレンズに対しては、収差性能だけではなく、光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増しており、そのためレンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−152002号公報
【特許文献2】特開2000−356704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のズームレンズよりも、より高い光学性能で、広角撮影が可能な撮影レンズが求められている。特に、大口径の広角ズームレンズにおいて、より高い光学性能が求められている。それと同時に、このようなズームレンズにおける光学面からは、ゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという課題もあった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ゴーストやフレアをより低減させ、高い光学性能が得られる撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、最も物体側に配置され、負の屈折力を有する前群と、
前記前群より像側に配置され、負の屈折力を有し、少なくとも一部が光軸と略垂直方向の成分を持つように移動する後群とを有し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に配置され、
前記第1負レンズ成分の前記第2負レンズ成分側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分に対して凹面を向けるように形成され、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、物体の像を所定の像面上に結像させる前記撮影レンズを備えることを特徴とする光学機器を提供する。
【0008】
また、本発明は、負の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群と、を有する撮影レンズの製造方法であって、
最も物体側に前記前群を配置し、
前記前群より像側に前記後群を配置し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する負メニスカス形状の第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、前記第2負レンズ成分が前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に位置し、かつ、前記第1負レンズ成分と前記第2負レンズ成分との間の空気レンズの形状が両凸形状となるように配置し、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記後群の少なくとも一部を、光軸と略垂直方向の成分を持つように移動するように配置し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ゴーストやフレアをより低減させ、高い光学性能が得られる撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図2】第1実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図3】第1実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図4】第1実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図5】第1実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図であって、入射した光線が第1番目のゴースト発生面と第2番目のゴースト発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【図6】第2実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図7】第2実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図8】第2実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図9】第2実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図10】第3実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図11】第3実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図12】第3実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図13】第3実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図14】第4実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図15】第4実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図16】第4実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図17】第4実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図18】本実施形態にかかる撮影レンズを搭載する一眼レフカメラの断面図を示す。
【図19】本実施形態にかかる撮影レンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図20】反射防止膜の膜構造の一例を示す説明図である。
【図21】反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図22】変形例にかかる反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図23】変形例にかかる反射防止膜の分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
【図24】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図25】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性の入射角依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の撮影レンズは、物体側から順に、前群として負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、後群として負の屈折力を有する第3レンズ群、及び、正の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前群の光学面の少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む構成であり、この撮影レンズは、広角端状態(焦点距離が最も短い状態)から望遠端状態(焦点距離が最も長い状態)まで変倍する際に、各レンズ群は一体となって光軸方向に移動し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が減少し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が増大し、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が減少するよう、各レンズ群の間隔が変化する。このような構成とすることにより、本撮影レンズは、ゴーストやフレアをより低減させ、高画角と高い防振性能を両立することができ、優れた光学性能を得ることが可能となる。
【0012】
また、撮影レンズは、後群の少なくとも一部又は全部を、光軸と略垂直方法の成分を持つように移動する防振レンズ群としている。一般的に、前群が負レンズである負先行のズームレンズにおいては、前群が最も大型のレンズ群であり、合焦時に物体側に繰り出されることもある。このため、前群を防振レンズ群とすることは、保持機能および、駆動機能の大型化・複雑化を招き好ましくない。また、前群と後群以外のレンズ群で、変倍時に光軸方向の移動量が大きいレンズ群を防振レンズ群とすることは、保持機能および、駆動機構の大型化・複雑化を招き好ましくない。特に、前群と後群との間に配置される正の屈折力を有するレンズ群は、偏芯収差が発生しやすい群であり、そのレンズ群の一部又は全部を防振レンズ群にした場合、高い防振性能を実現することは困難であるため好ましくない。後群は、レンズ径を比較的小さくすることが可能であり、変倍時における後群の光軸方向移動量を他のレンズ群の光軸方向移動量より少なくすることも、更には、変倍中固定にすることも可能である。また、後群は、レンズ群中最も群の偏芯収差の発生が少なく、防振レンズ群に適している。
【0013】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜は多層膜であり、ウェットプロセスで形成された層は、多層膜を構成する層のうち最も表面の層であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0014】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率をndとしたとき、屈折率ndが1.30以下であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0015】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた光学面は、凹形状のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凹形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このようにすれば、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0016】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた、凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凹形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0017】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた、凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凹形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0018】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた光学面は、凸形状のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、前群における光学面のうち凸形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0019】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた凸形状のレンズ面は、前群の最も物体側のレンズの、物体側レンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凸形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0020】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた凸形状のレンズ面は、前群の最も物体側のレンズから像面側に4番目のレンズのレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凸形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0021】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、ドライプロセス等により形成しても良い。この際、反射防止膜は屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることが好ましい。反射防止膜が、屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることで、反射防止膜をドライプロセス等で形成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なおこの時、屈折率が1.30以下になる層は、多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0022】
また、本撮影レンズは、上記構成に加えて、防振レンズ群である後群内の構成を以下のように構成することで、大口径かつ超高画角でも優れた防振性能を実現している。すなわち、撮影レンズは、後群の近傍に開口絞りを有することが望ましく、後群内の構成は、開口絞り側から順に、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する第2負レンズと、正の屈折力を有する正レンズ成分とから構成されるのが望ましい。更に、第1負レンズ成分の第2負レンズ成分側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分に対して凹面を向けるように形成され、第2負レンズ成分は、第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であることが望ましい。また、第1負レンズ成分、第2負レンズ成分、正レンズ成分を構成するレンズ面のうち、少なくとも1面に非球面を有することが望ましい。このような構成により、後群の像側に配置されるレンズ群が大型化することを防止することができる。また、第1負レンズ成分、第2負レンズ成分、及び、正レンズ成分を防振レンズ群とすると、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に動いた時に発生する、偏芯コマ収差とメリジオナル像面・サジタル像面の片ボケ(不対称)収差とを最小とすることができる。なお、防振レンズ群を、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とから構成しても良く、正レンズ成分は防振時に光軸と略垂直方向の位置を固定とすることとしても良い。
【0023】
上記構成に加え、本撮影レンズは防振レンズ群である第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分を構成するレンズ面のうち、少なくとも1面に非球面を有することにより、大口径化(特にF2.8程度より明るくすること)により発生する球面収差と、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に動いた時に発生する、偏芯コマ収差とメリジオナル像面・サジタル像面の片ボケ(不対称)収差とを最小とすることができる。
【0024】
また、正レンズ成分は、正の屈折力を有することによって、後群の像側に配置されたレンズ群の外径を小さくする効果を持つ。また、正レンズ成分は、両凸形状の単レンズであることが望ましく、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に動いた時に発生する偏芯コマ収差とメリジオナル像面・サジタル像面の片ボケ収差とを最小とすることができる。
【0025】
また、本撮影レンズは第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分を全て単レンズで構成すると、望遠端状態において、色の像面湾曲収差が発生しやすくなる。レンズの媒質として低分散の硝子材を選べば色の像面湾曲収差をある程度抑えることは可能ではあるが、硝子材の屈折率が下がり、偏芯コマ収差とトレードオフの関係となってしまう。
【0026】
そのため、本撮影レンズにおいて、第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分の少なくとも1つは、負レンズと正レンズとを接合した接合レンズであることが望ましく、望遠端状態における色の像面湾曲収差を良好に補正することができる。なお、これらのレンズ成分の2つ以上を接合レンズとしてもよいが、軽量化のため接合レンズ以外の2つのレンズ成分は単レンズとするのが好ましい。
【0027】
更に、本撮影レンズはこのように1つのレンズ成分を接合レンズとする場合、接合レンズの接合面は開口絞り対して凹面を向けていることが望ましく、防振による色の像面湾曲収差発生を良好に抑えることができる。
【0028】
また、撮影レンズでは、後群は第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分から構成されているが、第1負レンズ成分または正レンズ成分の外側に隣接させて他のレンズ成分を付加することも可能である。
【0029】
また、本撮影レンズは、第1負レンズ成分における第2負レンズ成分側の面の曲率半径をr1とし、第2負レンズ成分における第1負レンズ成分側の面の曲率半径をr2としたとき、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
【0030】
│r1│ > │r2│ (1)
【0031】
条件式(1)は、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とによって成形される空気レンズを規定するための条件式である。すなわち、従来の望遠系の防振レンズ群は、絞り側のほうが曲率半径の絶対値が小さい構成であったが、条件式(1)を満足するような撮影レンズでは、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とによって形成される空気レンズは、絞り側のr1のほうが、曲率半径の絶対値が大きい。この条件式(1)を満足することにより、防振レンズ群を広画角な撮影レンズに適した構成とすることができる。
【0032】
また、本撮影レンズは、第1負レンズ成分における第2負レンズ成分側の面の曲率半径をr1とし、第2負レンズ成分における第1負レンズ成分側の面の曲率半径をr2としたとき、以下の条件式(2)を満足するのが望ましい。
【0033】
0.0 < Fa < 0.5 (2)
但し、Faは次式で定義される変数を表す。
Fa = (r1+r2)/max(│r1│,│r2│)
但し、max()は複数の数値のうちで最大値を返す関数である。
【0034】
条件式(2)は、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とによって形成される空気レンズの曲率半径r1とr2との適切な関係を規定するための条件式である。この条件式(2)を満足することにより、防振レンズ群を広画角な撮影レンズに適した構成とすることができる。また、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、像面の傾きを最も少なくすることができる。
【0035】
また、本撮影レンズは、防振レンズ群を含む後群の焦点距離をFgとし、正レンズ成分の焦点距離をFgcとしたとき、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
【0036】
0.5 < Fb < 2.0 (3)
但し、Fbは次式で定義される変数を表す。
Fb = Fgc/│Fg│
【0037】
条件式(3)は、防振レンズ群を含む後群の焦点距離に対する正レンズ成分の焦点距離の比を規定するための条件式である。この条件式(3)を満足することにより、防振レンズ群が高い防振性能を持ちながら、その像側に配置されるレンズ群が大型化することを防止できる。条件式(3)の下限値を下回ると、後群の像側に配置されるレンズ群の外径が小さくなるが、第1負レンズ成分及び第2負レンズ成分の焦点距離も相対的に短くなり、防振性能や基本的な光学性能が悪化するため好ましくない。反対に、条件式(3)の上限値を上回ると、後群の像側に配置されるレンズ群の外径が大きくなり、防振レンズ群が広画角の撮影レンズには適さなくなるため好ましくない。
【0038】
図18は、本実施形態に係る撮影レンズを搭載した光学装置(一眼レフカメラ)の概略構成図である。
図18において、不図示の被写体からの光は、本撮影レンズ11(SL)で集光され、クイックリターンミラー12で反射されて焦点板13に結像される。焦点板13に結像された被写体像は、ペンタプリズム14で複数回反射されて接眼レンズ15を介して撮影者に正立像として観察可能に構成されている。
撮影者は、不図示のレリーズ釦を半押ししながら接眼レンズ15を介して被写体像を観察して撮影構図を決めた後、レリーズ釦を全押しする。レリーズ釦を全押しした時、クイックリターンミラー12が上方に跳ね上げられ被写体からの光は撮像素子16で受光され撮影画像が取得され、不図示のメモリに記録される。
レリーズ釦を全押しした時、撮影レンズ11に内蔵されているセンサー17(例えば、角度センサーなど)で撮影レンズ11の傾きが検出されてCPU18に伝達され、CPU18で回転ぶれ量が検出されて手ぶれ補正用レンズ群(防振レンズ群)を光軸に略垂直な成分を有する方向に駆動するレンズ駆動手段19が駆動され、手ぶれ発生時の撮像素子16上における像ぶれが補正される。このようにして、本実施形態に係る撮影レンズ11を具備する光学装置であるカメラ10が構成されている。なお、図18に記載のカメラ10は、撮影レンズ11を着脱可能に保持するものでも良く、撮影レンズ11と一体に成形されるものでも良い。また、カメラ10は、いわゆる一眼レフカメラでも良く、クイックリターンミラー等を有さないミラーレスカメラでも良い。
【0039】
なお、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0040】
本実施形態では、レンズ系が4つの可動群から構成されているが、各レンズ群の間に他のレンズ群を付加したり、あるいはレンズ系の像側または物体側に隣接させて他のレンズ群を付加することも可能である。
【0041】
なお、本実施形態では、4群構成の撮影レンズを示したが、以上の構成条件等は、5群、6群等の他の像構成にも適用可能である。また、最も物体側にレンズまたはレンズ群を追加した構成や、最も像側にレンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。また、レンズ群とは、変倍時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。また、レンズ成分とは、単レンズ、または、複数枚のレンズが張り合わされた接合レンズを示す。
【0042】
また、本実施形態の撮影レンズは、物体側から順に、前群として負の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、後群として負の屈折力を有する第4レンズ群、及び、正の屈折力を有する第5レンズ群から構成すること等としても良い。
【0043】
また、本実施形態の撮影レンズは、開放Fナンバーが2.8程度、変倍比が2〜2.5程度であるが、焦点距離が変化しない単焦点レンズとしても良い。また、画角は広角端状態で100°以上、望遠端状態で50°程度とするのが好ましい。
【0044】
なお、本願を分かり易く説明するために実施形態の構成要件を付して説明したが、本願がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0045】
以下、本実施形態の撮影レンズの製造方法の概略を、図19を参照して説明する。なお、以下では図1に示す後述する第1実施例に係る撮影レンズSL1のレンズ系を具体例として符号を付して説明するが、その他の実施例において防振レンズ群を含む後群の位置が変わっている場合にはそれに対応して符号を読み替えるものとする。
【0046】
まず、各レンズを配置してレンズ群をそれぞれ準備する(ステップS100)。その際、最も物体側に、前群として負の屈折力を有する第1レンズ群G1を配置し、この前群より像側に防振レンズ群を含む後群として負の屈折力を有する第3レンズ群G3を配置し、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間に、正の屈折力を有する第2レンズ群G2を配置する。
【0047】
ここで、第3レンズ群G3は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分G3aと、負の屈折力を有する負メニスカス形状の第2負レンズ成分G3bと、正の屈折力を有する正レンズ成分G3cとを、第2負レンズ成分G3bが第1負レンズ成分G3aと正レンズ成分G3cとの間に位置し、かつ、第1負レンズ成分G3aと第2負レンズ成分G3bとの間の空気レンズの形状が両凸形状となるよう配置し、かつ、第1負レンズ成分G3a、第2負レンズ成分G3b、正レンズ成分G3cのうちの少なくとも1面に非球面を有する。
【0048】
具体的に、図1に示すように、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14を配置して第1レンズ群G1とし、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21、及び、両凸形状の正レンズL23を配置して第2レンズ群G2とし、開口絞りS、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズ(正レンズ)L31と両凹形状の負レンズ(負レンズ)L32との貼り合わせによる接合レンズCL31からなる第1負レンズ成分G3a、この第1負レンズ成分G3a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL33からなる第2負レンズ成分G3b、及び両凸形状の正レンズL34からなる正レンズ成分G3cを配置して第3レンズ群G3とし、両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との2枚接合レンズCL41、両凸形状の正レンズL43、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL44と両凸形状の正レンズL45との像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL46との3枚接合レンズCL42を配置して第4レンズ群G4とする。このようにして準備した各レンズ群を配置して撮影レンズSLを製造する。
【0049】
また、本実施形態の撮影レンズは、前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む構成である。具体的には、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面と、両凹形状の負レンズL12の物体側レンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0050】
この際、後群としての第3レンズ群G3の少なくとも一部を、光軸と略垂直方向の成分を持つように移動するようにして配置する(ステップS200)。
【実施例】
【0051】
以下、本願の撮影レンズに係る各実施例を、添付図面に基づいて説明する。なお、図1、図6、図10、及び、図14は、各実施例にかかる撮影レンズSL(SL1〜SL4)の構成及び屈折力配分及び望遠端への変倍時における各レンズ群の移動の様子を示す断面図であり、望遠端への変倍時には図中矢印で示すズーム軌道に沿って各レンズ群が光軸上を移動する。
【0052】
図1に示すように、第1実施例にかかる撮影レンズSL1は4群構成であり、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1(前群)と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、後群である負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0053】
また、第3レンズ群G3は、物体側から順に、開口絞りSと負の屈折力を有する第1負レンズ成分G3aと、負の屈折力を有する第2負レンズ成分G3bと、正の屈折力を有する正レンズ成分G3cとから構成されている。
【0054】
そして、広角端状態から望遠端状態への変倍(すなわちズーミング)に際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が減少し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が増大し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が減少するように、各レンズ群の間隔が変化する。
【0055】
また、後述するように第3レンズ群G3を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより手振れ補正(防振)を行うように構成されている。なお、防振時には、第3レンズ群G3の開口絞りSは光軸と略垂直方向に移動しないように構成するのが好ましい。
【0056】
また、図6、図10及び図14に示すように、第2〜第4実施例にかかる撮影レンズSL2〜SL4は5群構成であり、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1(前群)と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、後群である負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成されている。
【0057】
また、第4レンズ群G4は、物体側から順に、開口絞りSと、負の屈折力を有する第1負レンズ成分G4aと、負の屈折力を有する第2負レンズ成分G4bと、正の屈折力を有する正レンズ成分G4cとから構成されている。
【0058】
そして、広角端状態から望遠端状態への変倍(すなわちズーミング)に際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が減少し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が変化し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が減少するように、各レンズ群の間隔が変化する。
【0059】
また、後述するように第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより手振れ補正(防振)を行うように構成されている。なお、防振時には、第4レンズ群G4の開口絞りSは光軸と略垂直方向に移動しないように構成するのが好ましい。
【0060】
以下の各実施例において、非球面は光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数をκとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で表される。なお、以降の実施例において、「E−n」は「×10-n」を示す。
【0061】
S(y)=(y2/r)/{1+(1−κ×y2/r2)1/2}
+A3×│y│3+A4×│y│4+A5×│y│5+A6×│y│6+A7×│y│7
+A8×│y│8+A9×│y│9+A10×│y│10+A11×│y│11+A12×│y│12
(a)
【0062】
なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0である。また、各実施例の表中において、非球面には面番号の左側に*印を付して示す。
【0063】
[第1実施例]
図1は、本願の第1実施例にかかる撮影レンズSL1のレンズ構成を示す図である。この図1の撮影レンズSL1において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0064】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21、及び、両凸形状の正レンズL23から構成され、この第2レンズ群G2の接合レンズCL21を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0065】
第3レンズ群G3の第1負レンズ成分G3aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL31と両凹形状の負レンズL32との貼り合わせによる接合レンズCL31から構成され、第2負レンズ成分G3bは、第1負レンズ成分G3a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL33から構成され、正レンズ成分G3cは、両凸形状の正レンズL34から構成されている。
【0066】
本撮影レンズSL1は、この第3レンズ群G3を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL1の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0067】
また、この第3レンズ群G3に含まれる、第1負レンズ成分G3aの第2負レンズ成分G3b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G3bに対して凹面を向けるように成形された非球面であり、さらに第2負レンズ成分G3bは、第1負レンズ成分G3aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状となるように構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0068】
さらに、第1負レンズ成分G3aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL31とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。さらに、防振レンズ群である第3レンズ群G3において、第4レンズ群G4側に正の屈折力を有する正レンズ成分G3cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第4レンズ群G4の外径の増大を防いでいる。
【0069】
第4レンズ群G4は、物体側から順に両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との2枚接合レンズCL41、両凸形状の正レンズL43、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL44と両凸形状の正レンズL45と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL46との3枚接合レンズCL42から構成されている。
【0070】
本第1実施例にかかる撮影レンズSL1は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面(面番号2)と、両凹形状の負レンズL12の物体側レンズ面(面番号3)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0071】
以下の表1に、第1実施例にかかる撮影レンズSL1の諸元の値を掲げる。この表1において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角、Bfはバックフォーカスをそれぞれ表している。また、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、面間隔は各光学面から次の光学面までの光軸上の間隔を、屈折率及びアッベ数はそれぞれd線(λ=587.6nm)に対する値を示している。全長は、無限遠合焦時のレンズ面の第1面から像面Iまでの光軸上の距離を表している。ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離、曲率半径、面間隔、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。なお、曲率半径「∞」は平面を示し、空気の屈折率1.00000は省略してある。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は以降の実施例においても同様である。
【0072】
(表1)第1実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=170.00 〜 164.15 〜 161.56
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 55.700 3.00 1.76690 46.85
*2 14.895 12.67
3 -116.242 1.55 1.88300 40.76
4 156.108 2.36
5 -98.828 1.50 1.60172 53.82
6 74.978 0.20 1.55389 38.09
*7 69.232 1.00
8 61.822 5.25 1.70021 28.28
9 -86.463 (d9)
10 52.267 1.05 1.84666 23.78
11 25.362 5.29 1.61469 43.67
12 -106.021 5.34
13 45.989 4.66 1.54698 54.26
14 -95.889 (d14)
15 ∞ 1.54 開口絞り
16 -134.732 2.16 1.83241 24.09
17 -42.936 1.00 1.87807 37.28
*18 46.466 4.55
19 -27.688 0.80 1.88300 40.76
20 -86.930 0.15
21 138.182 4.21 1.84666 23.78
22 -48.202 (d22)
23 33.276 8.09 1.49782 82.51
24 -34.972 1.10 1.85364 41.50
25 1185.909 0.05
26 52.640 5.97 1.49782 82.51
27 -53.870 0.15
28 47.612 1.10 1.88300 40.76
29 20.728 11.77 1.49782 82.51
30 -42.553 1.60 1.88300 40.76
*31 -100.578 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.51
G2 10 35.50
G3 15 -46.90
G4 23 46.20
【0073】
この第1実施例において、第1面、第2面、第7面、第18面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表2に、非球面のデータ、すなわち円錐定数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第1実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0074】
(表2)
第1面 第2面 第7面 第18面 第31面
κ 1.000 0.203 -27.993 4.319 7.218
A4 -3.191E-06 6.823E-06 1.022E-05 -3.261E-06 1.031E-05
A6 3.912E-09 -5.387E-09 -3.084E-08 8.254E-10 8.099E-09
A8 -2.338E-12 1.031E-10 3.470E-11 -5.135E-11 -7.692E-12
A10 -3.890E-15 0.000E+00 0.000E+00 1.568E-13 1.022E-13
A12 4.026E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0075】
この第1実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d14、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表3に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0076】
(表3)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 27.04 11.16 1.80
d14 3.17 7.34 10.71
d22 12.50 5.84 0.23
Bf 38.48 48.50 63.23
【0077】
次の表4に、この第1実施例における条件式対応値を示す。なおこの表4において、r1は第1負レンズ成分G3aにおける第2負レンズ成分G3b側の面の曲率半径を、r2は第2負レンズ成分G3bにおける第1負レンズ成分G3a側の面の曲率半径を、Faは前述の条件式(2)で示した変数を、Fbは前述の条件式(3)で示した変数をそれぞれ表している。
【0078】
(表4)
Fg =-46.900
Fgc= 42.650
(1)r1=46.466 r2=-27.688
(2)Fa=0.40
(3)Fb=0.91
【0079】
図2は、第1実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図3は、第1実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図4は、第1実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0080】
また、各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、Aは各像高に対する半画角を、dはd線(λ=587.6nm)を、gはg線(λ=435.8nm)を、それぞれ示している。また、非点収差を示す収差図において実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。また、球面収差を示す収差図において、実線は球面収差を示し、破線はサインコンディション(正弦条件)を示している。なお、この収差図の説明は以降の実施例においても、同様である。
【0081】
各収差図から明らかなように、第1実施例の撮影レンズSL1は、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL1を得ることができる。
【0082】
図5は、第1実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図であって、入射した光線が第1番目のゴースト発生面と第2番目のゴースト発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【0083】
図5において、物体側からの光線BMが図示のように撮影レンズSL1に入射すると、両凹形状の負レンズL12における物体側のレンズ面(第1番目のゴースト発生面でありその面番号は3)で反射し、その反射光は負メニスカスレンズL11における像側のレンズ面(第2番目のゴースト発生面でありその面番号は2)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストを発生させてしまう。なお、第1番目のゴースト発生面3は、凹形状のレンズ面、第2番目のゴースト発生面2は凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストを効果的に低減することができる。
【0084】
[第2実施例]
図6は、本願の第2実施例にかかる撮影レンズSL2のレンズ構成を示す図である。この図6の撮影レンズSL2において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0085】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21から構成され、この第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0086】
また、第3レンズ群G3は両凸形状の正レンズL31から構成されている。
【0087】
第4レンズ群G4の第1負レンズ成分G4aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と両凹形状の負レンズL42との貼り合わせによる接合レンズCL41から構成され、第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43から構成され、正レンズ成分G4cは、両凸形状の正レンズL44から構成されている。本撮影レンズSL2は、この第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL2の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0088】
また、この第4レンズ群G4に含まれる、第1負レンズ成分G4aの第2負レンズ成分G4b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G4bに対して凹面を向けるように成形された非球面であり、さらに第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状となるように構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0089】
さらに、第1負レンズ成分G4aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL41とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。さらに、防振レンズ群である第4レンズ群G4において、第5レンズ群G5側に正の屈折力を有する正レンズ成分G4cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第5レンズ群G5の外径の増大を防いでいる。
【0090】
第5レンズ群G5は、物体側から順に両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52の2枚接合レンズCL51、両凸形状の正レンズL53、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL54と両凸形状の正レンズL55と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL56との3枚接合レンズCL52から構成されている。
【0091】
本第2実施例にかかる撮影レンズSL2は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面(面番号2)と、両凹形状の負レンズL12の像面側レンズ面(面番号4)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0092】
以下の表5に、第2実施例にかかる撮影レンズSL2の諸元の値を掲げる。
【0093】
(表5)第2実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=169.32 〜 161.04 〜 164.28
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 50.943 3.00 1.76690 46.85
*2 14.571 12.74
3 -116.435 1.55 1.88300 40.76
4 155.379 2.28
5 -103.837 1.50 1.60972 53.12
6 71.864 0.20 1.55389 38.09
*7 64.903 1.00
8 61.824 5.28 1.69694 28.43
9 -82.700 (d9)
10 57.224 1.05 1.84666 23.78
11 25.769 5.16 1.61699 43.08
12 -104.954 (d12)
13 45.674 4.89 1.55319 49.96
14 -82.700 (d14)
15 ∞ 1.54 開口絞り
16 -137.172 2.14 1.84666 23.78
17 -44.700 1.00 1.87656 36.33
*18 46.002 4.67
19 -27.961 0.80 1.88300 40.76
20 -90.721 0.15
21 124.583 4.30 1.84666 23.78
22 -50.211 (d22)
23 31.982 8.14 1.49782 82.51
24 -36.308 1.10 1.85275 41.53
25 459.166 0.05
26 52.795 5.92 1.49782 82.51
27 -53.353 0.15
28 48.593 1.10 1.88300 40.76
29 20.995 11.59 1.49782 82.51
30 -41.053 1.60 1.88300 40.76
*31 -97.910 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.54
G2 10 85.65
G3 13 53.92
G4 15 -46.90
G5 23 46.71
【0094】
この第2実施例において、第1面、第2面、第7面、第18面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表6に、非球面のデータ、すなわち円錐定数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第2実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0095】
(表6)
第1面 第2面 第7面 第18面 第31面
κ 1.000 0.205 -23.978 4.325 4.972
A4 -4.296E-06 7.276E-06 9.573E-06 -3.108E-06 1.066E-05
A6 3.898E-09 -6.558E-09 -2.997E-08 -3.879E-09 9.920E-09
A8 -2.279E-12 9.770E-11 3.432E-11 -1.171E-11 -5.022E-12
A10 -3.793E-15 0.000E+00 0.000E+00 3.651E-14 1.113E-13
A12 4.018E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0096】
この第2実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d12、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d14、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表7に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0097】
(表7)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 27.37 11.19 1.59
d12 4.87 5.37 5.72
d14 3.17 6.90 9.74
d22 12.50 5.81 0.30
Bf 38.50 48.85 64.01
【0098】
次の表8に、この第2実施例における条件式対応値を示す。なおこの表8において、r1は第1負レンズ成分G4aにおける第2負レンズ成分G4b側の面の曲率半径を、r2は第2負レンズ成分G4bにおける第1負レンズ成分G4a側の面の曲率半径を、Faは前述の条件式(2)で示した変数を、Fbは前述の条件式(3)で示した変数をそれぞれ表している。
【0099】
(表8)
Fg =-46.900
Fgc= 42.751
(1)r1=46.002 r2=-27.961
(2)Fa=0.39
(3)Fb=0.91
【0100】
図7は、第2実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図8は、第2実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図9は、第2実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0101】
各収差図から明らかなように、第2実施例の撮影レンズSL2では、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL2を得ることができる。
【0102】
[第3実施例]
図10は、本願の第3実施例にかかる撮影レンズSL3のレンズ構成を示す図である。この図10の撮影レンズSL3において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0103】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21から構成され、この第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0104】
また、第3レンズ群G3は両凸形状の正レンズL31から構成されている。
【0105】
第4レンズ群G4の第1負レンズ成分G4aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と両凹形状の負レンズL42との貼り合わせによる接合レンズCL41から構成され、第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43から構成され、正レンズ成分G4cは、両凸形状の正レンズL44から構成されている。本撮影レンズSL3は、この第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL3の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0106】
また、この第4レンズ群G4に含まれる、第1負レンズ成分G4aの第2負レンズ成分G4b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G4bに対して凹面を向けるように成形され、さらに第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、正レンズ成分G4c側の面が非球面で、構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0107】
さらに、第1負レンズ成分G4aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL41とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。また、防振レンズ群である第4レンズ群G4において、第5レンズ群G5側に正の屈折力を有する正レンズ成分G4cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第5レンズ群G5の外径の増大を防いでいる。
【0108】
第5レンズ群G5は、物体側から順に両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52の2枚接合レンズCL51、両凸形状の正レンズL53、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL54と両凸形状の正レンズL55と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL56との3枚接合レンズCL52から構成されている。
【0109】
本第3実施例にかかる撮影レンズSL3は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面(面番号2)と、両凹形状の負レンズL13の物体側レンズ面(面番号5)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0110】
以下の表9に、第3実施例にかかる撮影レンズSL3の諸元の値を掲げる。
【0111】
(表9)第3実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=169.28 〜 161.17 〜 164.58
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 52.973 3.00 1.76690 46.85
*2 14.850 12.60
3 -119.014 1.55 1.88300 40.76
4 136.109 2.48
5 -97.824 1.50 1.57965 55.96
6 79.989 0.20 1.55389 38.09
*7 72.446 1.00
8 64.497 5.09 1.69974 28.30
9 -87.132 (d9)
10 58.371 1.05 1.84666 23.78
11 26.261 5.08 1.61508 43.13
12 -102.896 (d12)
13 45.706 4.82 1.55450 50.90
14 -86.359 (d14)
15 ∞ 1.71 開口絞り
16 -104.348 2.45 1.83374 24.06
17 -35.279 1.00 1.87668 36.40
18 49.535 4.55
19 -28.181 0.80 1.88300 40.76
*20 -73.586 0.15
21 142.004 4.14 1.84666 23.78
22 -52.132 (d22)
23 32.791 8.24 1.49782 82.51
24 -35.532 1.10 1.84809 41.65
25 1291.165 0.05
26 50.902 6.05 1.49782 82.51
27 -55.654 0.15
28 48.297 1.10 1.88300 40.76
29 20.801 11.80 1.49782 82.51
30 -41.073 1.60 1.88300 40.76
*31 -102.841 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.58
G2 10 86.36
G3 13 54.61
G4 15 -46.90
G5 23 46.12
【0112】
この第3実施例において、第1面、第2面、第7面、第20面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表10に、非球面のデータ、すなわち円錐状数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第3実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0113】
(表10)
第1面 第2面 第7面 第20面 第31面
κ 1.000 0.212 -31.468 0.586 5.145
A4 -3.243E-06 7.194E-06 9.425E-06 1.313E-07 1.073E-05
A6 3.427E-09 -2.832E-09 -3.037E-08 9.955E-10 8.287E-09
A8 -2.701E-12 9.233E-11 3.487E-11 -9.031E-14 -3.717E-12
A10 -3.037E-15 0.000E+00 0.000E+00 7.838E-15 1.076E-13
A12 3.682E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0114】
この第3実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d12、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d14、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表11に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0115】
(表11)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 26.94 11.02 1.61
d12 4.95 5.40 5.76
d14 3.17 6.96 10.01
d22 12.50 5.73 0.15
Bf 38.46 48.80 63.78
【0116】
次の表12に、この第3実施例における条件式対応値を示す。
【0117】
(表12)
Fg =-46.900
Fgc= 45.484
(1)r1=49.53 r2=-28.18
(2)Fa=0.43
(3)Fb=0.97
【0118】
図11は、第3実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図12は、第3実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図13は、第3実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0119】
各収差図から明らかなように、第3実施例の撮影レンズSL3では、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL3を得ることができる。
【0120】
[第4実施例]
図14は、本願の第4実施例にかかる撮影レンズSL4のレンズ構成を示す図である。この図14の撮影レンズSL4において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0121】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21から構成され、この第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0122】
また、第3レンズ群G3は両凸形状の正レンズL31から構成されている。
【0123】
第4レンズ群G4の第1負レンズ成分G4aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と両凹形状の負レンズL42との貼り合わせによる接合レンズCL41から構成され、第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43から構成され、正レンズ成分G4cは、第5レンズ群G5側の面が非球面である両凸形状の正レンズL44から構成されている。本撮影レンズSL4は、この第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL4の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0124】
また、この第4レンズ群G4に含まれる、第1負レンズ成分G4aの第2負レンズ成分G4b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G4bに対して凹面を向けるように成形され、さらに第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状で構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0125】
さらに、第1負レンズ成分G4aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL41とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。また、防振レンズ群である第4レンズ群G4において、第5レンズ群G5側に正の屈折力を有する正レンズ成分G4cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第5レンズ群G5の外径の増大を防いでいる。
【0126】
第5レンズ群G5は、物体側から順に両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52の2枚接合レンズCL51、両凸形状の正レンズL53、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL54と両凸形状の正レンズL55と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL56との3枚接合レンズCL52から構成されている。
【0127】
本第4実施例にかかる撮影レンズSL4は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の物体側レンズ面(面番号1)と、両凸形状の正レンズL14の物体側レンズ面(面番号8)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0128】
以下の表13に、第4実施例にかかる撮影レンズSL4の諸元の値を揚げる。
【0129】
(表13)第4実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=169.35 〜 160.85 〜 164.01
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 54.854 3.00 1.76690 46.85
*2 14.895 12.52
3 -119.197 1.55 1.88300 40.76
4 153.800 2.37
5 -99.957 1.50 1.58117 55.80
6 70.459 0.20 1.55389 38.09
*7 70.337 1.00
8 58.073 5.12 1.69870 28.35
9 -102.834 (d9)
10 60.699 1.05 1.84666 23.78
11 26.752 5.02 1.61593 42.00
12 -96.705 (d12)
13 44.671 4.86 1.55420 52.03
14 -85.562 (d14)
15 ∞ 1.69 開口絞り
16 -107.454 2.32 1.83400 24.05
17 -45.271 1.00 1.87834 37.97
18 48.988 4.58
19 -27.883 0.80 1.88105 40.81
20 -84.274 0.15
21 137.079 4.27 1.84666 23.78
*22 -48.636 (d22)
23 32.159 8.01 1.49782 82.51
24 -36.284 1.10 1.85199 41.55
25 486.061 0.05
26 51.543 6.05 1.49782 82.51
27 -53.717 0.15
28 50.562 1.10 1.88300 40.76
29 21.393 11.71 1.49782 82.51
30 -39.794 1.60 1.88300 40.76
*31 -91.946 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.56
G2 10 86.18
G3 13 53.67
G4 15 -46.90
G5 23 46.64
【0130】
この第4実施例において、第1面、第2面、第7面、第22面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表14に、非球面のデータ、すなわち円錐状数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第4実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0131】
(表14)
第1面 第2面 第7面 第22面 第31面
κ 1.000 0.180 -28.387 0.716 4.852
A4 -3.651E-06 5.946E-06 1.150E-05 3.171E-07 1.066E-05
A6 3.597E-09 -6.965E-09 -2.848E-08 4.652E-10 9.341E-09
A8 -1.035E-12 8.384E-11 3.562E-11 -1.605E-12 -1.234E-13
A10 -4.251E-15 0.000E+00 0.000E+00 1.111E-14 9.226E-14
A12 3.834E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0132】
この第4実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d12、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d14、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表15に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0133】
(表15)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 27.36 11.18 1.63
d12 5.02 5.40 5.73
d14 3.17 6.73 9.47
d22 12.50 5.72 0.15
Bf 38.53 49.04 64.26
【0134】
次の表16に、この第4実施例における条件式対応値を示す。
【0135】
(表16)
Fg =-46.900
Fgc= 42.852
(1)r1=48.99 r2=-27.88
(2)Fa=0.43
(3)Fb=0.91
【0136】
図15は、第4実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図16は、第4実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図17は、第4実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0137】
各収差図から明らかなように、第4実施例の撮影レンズSL4では、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL4を得ることができる。
【0138】
ここで、本願の撮影レンズに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。図20は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0139】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成されて本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0140】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである真空蒸着法(例えば、電子ビーム蒸着)により形成され、最上層である第7層101gは、フッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより以下の手順で形成されている。まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(b)に示す。
【0141】
2HF+Mg(CH3COO)2→MgF2+2CH3COOH (b)
【0142】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。この光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積することにより第7層101gが形成される。
【0143】
このようにして形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について図21に示す分光特性を用いて説明する。
【0144】
本実施形態にかかる反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表17に示す条件で形成されている。ここで表17は、基準波長をλとし、基板の屈折率(光学部材)が1.62、1.74及び1.85について反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表17では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムとシリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0145】
(表17)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85
【0146】
図21は、表17において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0147】
図21から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが判る。また、表17において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図21に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0148】
次に、本反射防止膜の変形例について説明する。この反射防止膜は5層からなり、表17と同様、以下の表18で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0149】
(表18)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52
【0150】
図22は、表18において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示している。図22から本変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることがわかる。なお、表18において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図22に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0151】
図23は、図22に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、図22、図23には表18に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0152】
また比較のため、図24に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。図24は、表18と同じ基板の屈折率1.52に以下の表19で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、図25は、図24に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0153】
(表19)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52
【0154】
図21〜図23で示される本実施形態にかかる反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、図24および図25で示される従来例の分光特性と比較すると、本反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかも低い反射率をより広い帯域で有することが良くわかる。
【0155】
次に、本願の第1実施例から第4実施例に、上記表17および表18に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0156】
本第1実施例の撮影レンズSL1において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表1に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凹形状の負レンズL12の屈折率は、nd=1.88300であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凹形状の負レンズL12の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0157】
本第2実施例の撮影レンズSL2において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表5に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凹形状の負レンズL12の屈折率は、nd=1.88300であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凹形状の負レンズL12の像面側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0158】
本第3実施例の撮影レンズSL3において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表9に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凹形状の負レンズL13の屈折率は、nd=1.57965であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凹形状の負レンズL13の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0159】
本第4実施例の撮影レンズSL4において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表13に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凸形状の正レンズL14の屈折率は、nd=1.69870であるため、負メニスカスレンズL11における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凸形状の正レンズL14の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0160】
以上の実施例にかかる撮影レンズでは、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、優れた光学性能を有する撮影レンズを得ることができる。
【符号の説明】
【0161】
SL(SL1〜SL4) 撮影レンズ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G3a,G4a 第1負レンズ成分
G3b,G4b 第2負レンズ成分
G3c,G4c 正レンズ成分
S 開口絞り
1 一眼レフカメラ(光学機器)
101 反射防止膜
101a 第1層
101b 第2層
101c 第3層
101d 第4層
101e 第5層
101f 第6層
101g 第7層
102 光学部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1レンズ群が負のレンズ群であり広角撮影に適したズームレンズであって、防振機能を有したズームレンズが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このズームレンズは、負の屈折力を有する第3レンズ群を防振レンズ群とすることで、良好な防振性能を得ている。また近年、このようなズームレンズに対しては、収差性能だけではなく、光学性能を損なう要因の一つであるゴーストやフレアに関する要求も厳しさを増しており、そのためレンズ面に施される反射防止膜にもより高い性能が要求され、要求に応えるべく多層膜設計技術や多層膜成膜技術も進歩を続けている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−152002号公報
【特許文献2】特開2000−356704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のズームレンズよりも、より高い光学性能で、広角撮影が可能な撮影レンズが求められている。特に、大口径の広角ズームレンズにおいて、より高い光学性能が求められている。それと同時に、このようなズームレンズにおける光学面からは、ゴーストやフレアとなる反射光が発生しやすいという課題もあった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ゴーストやフレアをより低減させ、高い光学性能が得られる撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、最も物体側に配置され、負の屈折力を有する前群と、
前記前群より像側に配置され、負の屈折力を有し、少なくとも一部が光軸と略垂直方向の成分を持つように移動する後群とを有し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に配置され、
前記第1負レンズ成分の前記第2負レンズ成分側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分に対して凹面を向けるように形成され、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、物体の像を所定の像面上に結像させる前記撮影レンズを備えることを特徴とする光学機器を提供する。
【0008】
また、本発明は、負の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群と、を有する撮影レンズの製造方法であって、
最も物体側に前記前群を配置し、
前記前群より像側に前記後群を配置し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する負メニスカス形状の第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、前記第2負レンズ成分が前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に位置し、かつ、前記第1負レンズ成分と前記第2負レンズ成分との間の空気レンズの形状が両凸形状となるように配置し、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記後群の少なくとも一部を、光軸と略垂直方向の成分を持つように移動するように配置し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ゴーストやフレアをより低減させ、高い光学性能が得られる撮影レンズ、この撮影レンズを備えた光学機器、及び、撮影レンズの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図2】第1実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図3】第1実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図4】第1実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図5】第1実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図であって、入射した光線が第1番目のゴースト発生面と第2番目のゴースト発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【図6】第2実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図7】第2実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図8】第2実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図9】第2実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図10】第3実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図11】第3実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図12】第3実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図13】第3実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図14】第4実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図である。
【図15】第4実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図16】第4実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図17】第4実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。
【図18】本実施形態にかかる撮影レンズを搭載する一眼レフカメラの断面図を示す。
【図19】本実施形態にかかる撮影レンズの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図20】反射防止膜の膜構造の一例を示す説明図である。
【図21】反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図22】変形例にかかる反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図23】変形例にかかる反射防止膜の分光特性の入射角度依存性を示すグラフである。
【図24】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性を示すグラフである。
【図25】従来技術で作成した反射防止膜の分光特性の入射角依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の撮影レンズは、物体側から順に、前群として負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、後群として負の屈折力を有する第3レンズ群、及び、正の屈折力を有する第4レンズ群とを有し、前群の光学面の少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む構成であり、この撮影レンズは、広角端状態(焦点距離が最も短い状態)から望遠端状態(焦点距離が最も長い状態)まで変倍する際に、各レンズ群は一体となって光軸方向に移動し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔が減少し、第2レンズ群と第3レンズ群との間隔が増大し、第3レンズ群と第4レンズ群との間隔が減少するよう、各レンズ群の間隔が変化する。このような構成とすることにより、本撮影レンズは、ゴーストやフレアをより低減させ、高画角と高い防振性能を両立することができ、優れた光学性能を得ることが可能となる。
【0012】
また、撮影レンズは、後群の少なくとも一部又は全部を、光軸と略垂直方法の成分を持つように移動する防振レンズ群としている。一般的に、前群が負レンズである負先行のズームレンズにおいては、前群が最も大型のレンズ群であり、合焦時に物体側に繰り出されることもある。このため、前群を防振レンズ群とすることは、保持機能および、駆動機能の大型化・複雑化を招き好ましくない。また、前群と後群以外のレンズ群で、変倍時に光軸方向の移動量が大きいレンズ群を防振レンズ群とすることは、保持機能および、駆動機構の大型化・複雑化を招き好ましくない。特に、前群と後群との間に配置される正の屈折力を有するレンズ群は、偏芯収差が発生しやすい群であり、そのレンズ群の一部又は全部を防振レンズ群にした場合、高い防振性能を実現することは困難であるため好ましくない。後群は、レンズ径を比較的小さくすることが可能であり、変倍時における後群の光軸方向移動量を他のレンズ群の光軸方向移動量より少なくすることも、更には、変倍中固定にすることも可能である。また、後群は、レンズ群中最も群の偏芯収差の発生が少なく、防振レンズ群に適している。
【0013】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜は多層膜であり、ウェットプロセスで形成された層は、多層膜を構成する層のうち最も表面の層であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0014】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率をndとしたとき、屈折率ndが1.30以下であることが好ましい。このようにすれば、空気との屈折率差を小さくすることができるため、光の反射をより小さくすることが可能になり、ゴーストやフレアをさらに低減させることができる。
【0015】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた光学面は、凹形状のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凹形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このようにすれば、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0016】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた、凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凹形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0017】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた、凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凹形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0018】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた光学面は、凸形状のレンズ面であることが好ましい。このようにすれば、前群における光学面のうち凸形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、ゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0019】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた凸形状のレンズ面は、前群の最も物体側のレンズの、物体側レンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凸形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0020】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜が設けられた凸形状のレンズ面は、前群の最も物体側のレンズから像面側に4番目のレンズのレンズ面であることが好ましい。前群における光学面のうち凸形状のレンズ面にゴースト光が発生し易いため、このような光学面に反射防止膜を形成することでゴーストやフレアを効果的に低減させることができる。
【0021】
また、本実施形態にかかる撮影レンズでは、反射防止膜は、ウェットプロセスに限らず、ドライプロセス等により形成しても良い。この際、反射防止膜は屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることが好ましい。反射防止膜が、屈折率が1.30以下となる層を少なくとも1層含むようにすることで、反射防止膜をドライプロセス等で形成しても、ウェットプロセスを用いた場合と同様の効果を得ることができる。なおこの時、屈折率が1.30以下になる層は、多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることが好ましい。
【0022】
また、本撮影レンズは、上記構成に加えて、防振レンズ群である後群内の構成を以下のように構成することで、大口径かつ超高画角でも優れた防振性能を実現している。すなわち、撮影レンズは、後群の近傍に開口絞りを有することが望ましく、後群内の構成は、開口絞り側から順に、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する第2負レンズと、正の屈折力を有する正レンズ成分とから構成されるのが望ましい。更に、第1負レンズ成分の第2負レンズ成分側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分に対して凹面を向けるように形成され、第2負レンズ成分は、第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であることが望ましい。また、第1負レンズ成分、第2負レンズ成分、正レンズ成分を構成するレンズ面のうち、少なくとも1面に非球面を有することが望ましい。このような構成により、後群の像側に配置されるレンズ群が大型化することを防止することができる。また、第1負レンズ成分、第2負レンズ成分、及び、正レンズ成分を防振レンズ群とすると、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に動いた時に発生する、偏芯コマ収差とメリジオナル像面・サジタル像面の片ボケ(不対称)収差とを最小とすることができる。なお、防振レンズ群を、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とから構成しても良く、正レンズ成分は防振時に光軸と略垂直方向の位置を固定とすることとしても良い。
【0023】
上記構成に加え、本撮影レンズは防振レンズ群である第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分を構成するレンズ面のうち、少なくとも1面に非球面を有することにより、大口径化(特にF2.8程度より明るくすること)により発生する球面収差と、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に動いた時に発生する、偏芯コマ収差とメリジオナル像面・サジタル像面の片ボケ(不対称)収差とを最小とすることができる。
【0024】
また、正レンズ成分は、正の屈折力を有することによって、後群の像側に配置されたレンズ群の外径を小さくする効果を持つ。また、正レンズ成分は、両凸形状の単レンズであることが望ましく、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に動いた時に発生する偏芯コマ収差とメリジオナル像面・サジタル像面の片ボケ収差とを最小とすることができる。
【0025】
また、本撮影レンズは第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分を全て単レンズで構成すると、望遠端状態において、色の像面湾曲収差が発生しやすくなる。レンズの媒質として低分散の硝子材を選べば色の像面湾曲収差をある程度抑えることは可能ではあるが、硝子材の屈折率が下がり、偏芯コマ収差とトレードオフの関係となってしまう。
【0026】
そのため、本撮影レンズにおいて、第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分の少なくとも1つは、負レンズと正レンズとを接合した接合レンズであることが望ましく、望遠端状態における色の像面湾曲収差を良好に補正することができる。なお、これらのレンズ成分の2つ以上を接合レンズとしてもよいが、軽量化のため接合レンズ以外の2つのレンズ成分は単レンズとするのが好ましい。
【0027】
更に、本撮影レンズはこのように1つのレンズ成分を接合レンズとする場合、接合レンズの接合面は開口絞り対して凹面を向けていることが望ましく、防振による色の像面湾曲収差発生を良好に抑えることができる。
【0028】
また、撮影レンズでは、後群は第1負レンズ成分、第2負レンズ成分及び正レンズ成分から構成されているが、第1負レンズ成分または正レンズ成分の外側に隣接させて他のレンズ成分を付加することも可能である。
【0029】
また、本撮影レンズは、第1負レンズ成分における第2負レンズ成分側の面の曲率半径をr1とし、第2負レンズ成分における第1負レンズ成分側の面の曲率半径をr2としたとき、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
【0030】
│r1│ > │r2│ (1)
【0031】
条件式(1)は、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とによって成形される空気レンズを規定するための条件式である。すなわち、従来の望遠系の防振レンズ群は、絞り側のほうが曲率半径の絶対値が小さい構成であったが、条件式(1)を満足するような撮影レンズでは、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とによって形成される空気レンズは、絞り側のr1のほうが、曲率半径の絶対値が大きい。この条件式(1)を満足することにより、防振レンズ群を広画角な撮影レンズに適した構成とすることができる。
【0032】
また、本撮影レンズは、第1負レンズ成分における第2負レンズ成分側の面の曲率半径をr1とし、第2負レンズ成分における第1負レンズ成分側の面の曲率半径をr2としたとき、以下の条件式(2)を満足するのが望ましい。
【0033】
0.0 < Fa < 0.5 (2)
但し、Faは次式で定義される変数を表す。
Fa = (r1+r2)/max(│r1│,│r2│)
但し、max()は複数の数値のうちで最大値を返す関数である。
【0034】
条件式(2)は、第1負レンズ成分と第2負レンズ成分とによって形成される空気レンズの曲率半径r1とr2との適切な関係を規定するための条件式である。この条件式(2)を満足することにより、防振レンズ群を広画角な撮影レンズに適した構成とすることができる。また、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、像面の傾きを最も少なくすることができる。
【0035】
また、本撮影レンズは、防振レンズ群を含む後群の焦点距離をFgとし、正レンズ成分の焦点距離をFgcとしたとき、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
【0036】
0.5 < Fb < 2.0 (3)
但し、Fbは次式で定義される変数を表す。
Fb = Fgc/│Fg│
【0037】
条件式(3)は、防振レンズ群を含む後群の焦点距離に対する正レンズ成分の焦点距離の比を規定するための条件式である。この条件式(3)を満足することにより、防振レンズ群が高い防振性能を持ちながら、その像側に配置されるレンズ群が大型化することを防止できる。条件式(3)の下限値を下回ると、後群の像側に配置されるレンズ群の外径が小さくなるが、第1負レンズ成分及び第2負レンズ成分の焦点距離も相対的に短くなり、防振性能や基本的な光学性能が悪化するため好ましくない。反対に、条件式(3)の上限値を上回ると、後群の像側に配置されるレンズ群の外径が大きくなり、防振レンズ群が広画角の撮影レンズには適さなくなるため好ましくない。
【0038】
図18は、本実施形態に係る撮影レンズを搭載した光学装置(一眼レフカメラ)の概略構成図である。
図18において、不図示の被写体からの光は、本撮影レンズ11(SL)で集光され、クイックリターンミラー12で反射されて焦点板13に結像される。焦点板13に結像された被写体像は、ペンタプリズム14で複数回反射されて接眼レンズ15を介して撮影者に正立像として観察可能に構成されている。
撮影者は、不図示のレリーズ釦を半押ししながら接眼レンズ15を介して被写体像を観察して撮影構図を決めた後、レリーズ釦を全押しする。レリーズ釦を全押しした時、クイックリターンミラー12が上方に跳ね上げられ被写体からの光は撮像素子16で受光され撮影画像が取得され、不図示のメモリに記録される。
レリーズ釦を全押しした時、撮影レンズ11に内蔵されているセンサー17(例えば、角度センサーなど)で撮影レンズ11の傾きが検出されてCPU18に伝達され、CPU18で回転ぶれ量が検出されて手ぶれ補正用レンズ群(防振レンズ群)を光軸に略垂直な成分を有する方向に駆動するレンズ駆動手段19が駆動され、手ぶれ発生時の撮像素子16上における像ぶれが補正される。このようにして、本実施形態に係る撮影レンズ11を具備する光学装置であるカメラ10が構成されている。なお、図18に記載のカメラ10は、撮影レンズ11を着脱可能に保持するものでも良く、撮影レンズ11と一体に成形されるものでも良い。また、カメラ10は、いわゆる一眼レフカメラでも良く、クイックリターンミラー等を有さないミラーレスカメラでも良い。
【0039】
なお、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0040】
本実施形態では、レンズ系が4つの可動群から構成されているが、各レンズ群の間に他のレンズ群を付加したり、あるいはレンズ系の像側または物体側に隣接させて他のレンズ群を付加することも可能である。
【0041】
なお、本実施形態では、4群構成の撮影レンズを示したが、以上の構成条件等は、5群、6群等の他の像構成にも適用可能である。また、最も物体側にレンズまたはレンズ群を追加した構成や、最も像側にレンズまたはレンズ群を追加した構成でも構わない。また、レンズ群とは、変倍時に変化する空気間隔で分離された、少なくとも1枚のレンズを有する部分を示す。また、レンズ成分とは、単レンズ、または、複数枚のレンズが張り合わされた接合レンズを示す。
【0042】
また、本実施形態の撮影レンズは、物体側から順に、前群として負の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、後群として負の屈折力を有する第4レンズ群、及び、正の屈折力を有する第5レンズ群から構成すること等としても良い。
【0043】
また、本実施形態の撮影レンズは、開放Fナンバーが2.8程度、変倍比が2〜2.5程度であるが、焦点距離が変化しない単焦点レンズとしても良い。また、画角は広角端状態で100°以上、望遠端状態で50°程度とするのが好ましい。
【0044】
なお、本願を分かり易く説明するために実施形態の構成要件を付して説明したが、本願がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0045】
以下、本実施形態の撮影レンズの製造方法の概略を、図19を参照して説明する。なお、以下では図1に示す後述する第1実施例に係る撮影レンズSL1のレンズ系を具体例として符号を付して説明するが、その他の実施例において防振レンズ群を含む後群の位置が変わっている場合にはそれに対応して符号を読み替えるものとする。
【0046】
まず、各レンズを配置してレンズ群をそれぞれ準備する(ステップS100)。その際、最も物体側に、前群として負の屈折力を有する第1レンズ群G1を配置し、この前群より像側に防振レンズ群を含む後群として負の屈折力を有する第3レンズ群G3を配置し、第1レンズ群G1と第3レンズ群G3との間に、正の屈折力を有する第2レンズ群G2を配置する。
【0047】
ここで、第3レンズ群G3は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分G3aと、負の屈折力を有する負メニスカス形状の第2負レンズ成分G3bと、正の屈折力を有する正レンズ成分G3cとを、第2負レンズ成分G3bが第1負レンズ成分G3aと正レンズ成分G3cとの間に位置し、かつ、第1負レンズ成分G3aと第2負レンズ成分G3bとの間の空気レンズの形状が両凸形状となるよう配置し、かつ、第1負レンズ成分G3a、第2負レンズ成分G3b、正レンズ成分G3cのうちの少なくとも1面に非球面を有する。
【0048】
具体的に、図1に示すように、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14を配置して第1レンズ群G1とし、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21、及び、両凸形状の正レンズL23を配置して第2レンズ群G2とし、開口絞りS、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズ(正レンズ)L31と両凹形状の負レンズ(負レンズ)L32との貼り合わせによる接合レンズCL31からなる第1負レンズ成分G3a、この第1負レンズ成分G3a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL33からなる第2負レンズ成分G3b、及び両凸形状の正レンズL34からなる正レンズ成分G3cを配置して第3レンズ群G3とし、両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との2枚接合レンズCL41、両凸形状の正レンズL43、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL44と両凸形状の正レンズL45との像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL46との3枚接合レンズCL42を配置して第4レンズ群G4とする。このようにして準備した各レンズ群を配置して撮影レンズSLを製造する。
【0049】
また、本実施形態の撮影レンズは、前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜はウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含む構成である。具体的には、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面と、両凹形状の負レンズL12の物体側レンズ面に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0050】
この際、後群としての第3レンズ群G3の少なくとも一部を、光軸と略垂直方向の成分を持つように移動するようにして配置する(ステップS200)。
【実施例】
【0051】
以下、本願の撮影レンズに係る各実施例を、添付図面に基づいて説明する。なお、図1、図6、図10、及び、図14は、各実施例にかかる撮影レンズSL(SL1〜SL4)の構成及び屈折力配分及び望遠端への変倍時における各レンズ群の移動の様子を示す断面図であり、望遠端への変倍時には図中矢印で示すズーム軌道に沿って各レンズ群が光軸上を移動する。
【0052】
図1に示すように、第1実施例にかかる撮影レンズSL1は4群構成であり、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1(前群)と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、後群である負の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4とから構成されている。
【0053】
また、第3レンズ群G3は、物体側から順に、開口絞りSと負の屈折力を有する第1負レンズ成分G3aと、負の屈折力を有する第2負レンズ成分G3bと、正の屈折力を有する正レンズ成分G3cとから構成されている。
【0054】
そして、広角端状態から望遠端状態への変倍(すなわちズーミング)に際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が減少し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が増大し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が減少するように、各レンズ群の間隔が変化する。
【0055】
また、後述するように第3レンズ群G3を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより手振れ補正(防振)を行うように構成されている。なお、防振時には、第3レンズ群G3の開口絞りSは光軸と略垂直方向に移動しないように構成するのが好ましい。
【0056】
また、図6、図10及び図14に示すように、第2〜第4実施例にかかる撮影レンズSL2〜SL4は5群構成であり、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1(前群)と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、後群である負の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とから構成されている。
【0057】
また、第4レンズ群G4は、物体側から順に、開口絞りSと、負の屈折力を有する第1負レンズ成分G4aと、負の屈折力を有する第2負レンズ成分G4bと、正の屈折力を有する正レンズ成分G4cとから構成されている。
【0058】
そして、広角端状態から望遠端状態への変倍(すなわちズーミング)に際して、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔が減少し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔が変化し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔が増大し、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔が減少するように、各レンズ群の間隔が変化する。
【0059】
また、後述するように第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより手振れ補正(防振)を行うように構成されている。なお、防振時には、第4レンズ群G4の開口絞りSは光軸と略垂直方向に移動しないように構成するのが好ましい。
【0060】
以下の各実施例において、非球面は光軸に垂直な方向の高さをyとし、高さyにおける各非球面の頂点の接平面から各非球面までの光軸に沿った距離(サグ量)をS(y)とし、基準球面の曲率半径(近軸曲率半径)をrとし、円錐定数をκとし、n次の非球面係数をAnとしたとき、以下の式(a)で表される。なお、以降の実施例において、「E−n」は「×10-n」を示す。
【0061】
S(y)=(y2/r)/{1+(1−κ×y2/r2)1/2}
+A3×│y│3+A4×│y│4+A5×│y│5+A6×│y│6+A7×│y│7
+A8×│y│8+A9×│y│9+A10×│y│10+A11×│y│11+A12×│y│12
(a)
【0062】
なお、各実施例において、2次の非球面係数A2は0である。また、各実施例の表中において、非球面には面番号の左側に*印を付して示す。
【0063】
[第1実施例]
図1は、本願の第1実施例にかかる撮影レンズSL1のレンズ構成を示す図である。この図1の撮影レンズSL1において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0064】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21、及び、両凸形状の正レンズL23から構成され、この第2レンズ群G2の接合レンズCL21を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0065】
第3レンズ群G3の第1負レンズ成分G3aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL31と両凹形状の負レンズL32との貼り合わせによる接合レンズCL31から構成され、第2負レンズ成分G3bは、第1負レンズ成分G3a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL33から構成され、正レンズ成分G3cは、両凸形状の正レンズL34から構成されている。
【0066】
本撮影レンズSL1は、この第3レンズ群G3を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL1の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0067】
また、この第3レンズ群G3に含まれる、第1負レンズ成分G3aの第2負レンズ成分G3b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G3bに対して凹面を向けるように成形された非球面であり、さらに第2負レンズ成分G3bは、第1負レンズ成分G3aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状となるように構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0068】
さらに、第1負レンズ成分G3aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL31とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。さらに、防振レンズ群である第3レンズ群G3において、第4レンズ群G4側に正の屈折力を有する正レンズ成分G3cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第4レンズ群G4の外径の増大を防いでいる。
【0069】
第4レンズ群G4は、物体側から順に両凸形状の正レンズL41と両凹形状の負レンズL42との2枚接合レンズCL41、両凸形状の正レンズL43、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL44と両凸形状の正レンズL45と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL46との3枚接合レンズCL42から構成されている。
【0070】
本第1実施例にかかる撮影レンズSL1は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面(面番号2)と、両凹形状の負レンズL12の物体側レンズ面(面番号3)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0071】
以下の表1に、第1実施例にかかる撮影レンズSL1の諸元の値を掲げる。この表1において、fは焦点距離、FNOはFナンバー、2ωは画角、Bfはバックフォーカスをそれぞれ表している。また、面番号は光線の進行する方向に沿った物体側からのレンズ面の順序を、面間隔は各光学面から次の光学面までの光軸上の間隔を、屈折率及びアッベ数はそれぞれd線(λ=587.6nm)に対する値を示している。全長は、無限遠合焦時のレンズ面の第1面から像面Iまでの光軸上の距離を表している。ここで、以下の全ての諸元値において掲載されている焦点距離、曲率半径、面間隔、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。なお、曲率半径「∞」は平面を示し、空気の屈折率1.00000は省略してある。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は以降の実施例においても同様である。
【0072】
(表1)第1実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=170.00 〜 164.15 〜 161.56
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 55.700 3.00 1.76690 46.85
*2 14.895 12.67
3 -116.242 1.55 1.88300 40.76
4 156.108 2.36
5 -98.828 1.50 1.60172 53.82
6 74.978 0.20 1.55389 38.09
*7 69.232 1.00
8 61.822 5.25 1.70021 28.28
9 -86.463 (d9)
10 52.267 1.05 1.84666 23.78
11 25.362 5.29 1.61469 43.67
12 -106.021 5.34
13 45.989 4.66 1.54698 54.26
14 -95.889 (d14)
15 ∞ 1.54 開口絞り
16 -134.732 2.16 1.83241 24.09
17 -42.936 1.00 1.87807 37.28
*18 46.466 4.55
19 -27.688 0.80 1.88300 40.76
20 -86.930 0.15
21 138.182 4.21 1.84666 23.78
22 -48.202 (d22)
23 33.276 8.09 1.49782 82.51
24 -34.972 1.10 1.85364 41.50
25 1185.909 0.05
26 52.640 5.97 1.49782 82.51
27 -53.870 0.15
28 47.612 1.10 1.88300 40.76
29 20.728 11.77 1.49782 82.51
30 -42.553 1.60 1.88300 40.76
*31 -100.578 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.51
G2 10 35.50
G3 15 -46.90
G4 23 46.20
【0073】
この第1実施例において、第1面、第2面、第7面、第18面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表2に、非球面のデータ、すなわち円錐定数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第1実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0074】
(表2)
第1面 第2面 第7面 第18面 第31面
κ 1.000 0.203 -27.993 4.319 7.218
A4 -3.191E-06 6.823E-06 1.022E-05 -3.261E-06 1.031E-05
A6 3.912E-09 -5.387E-09 -3.084E-08 8.254E-10 8.099E-09
A8 -2.338E-12 1.031E-10 3.470E-11 -5.135E-11 -7.692E-12
A10 -3.890E-15 0.000E+00 0.000E+00 1.568E-13 1.022E-13
A12 4.026E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0075】
この第1実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d14、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表3に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0076】
(表3)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 27.04 11.16 1.80
d14 3.17 7.34 10.71
d22 12.50 5.84 0.23
Bf 38.48 48.50 63.23
【0077】
次の表4に、この第1実施例における条件式対応値を示す。なおこの表4において、r1は第1負レンズ成分G3aにおける第2負レンズ成分G3b側の面の曲率半径を、r2は第2負レンズ成分G3bにおける第1負レンズ成分G3a側の面の曲率半径を、Faは前述の条件式(2)で示した変数を、Fbは前述の条件式(3)で示した変数をそれぞれ表している。
【0078】
(表4)
Fg =-46.900
Fgc= 42.650
(1)r1=46.466 r2=-27.688
(2)Fa=0.40
(3)Fb=0.91
【0079】
図2は、第1実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図3は、第1実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図4は、第1実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0080】
また、各収差図において、FNOはFナンバーを、Yは像高を、Aは各像高に対する半画角を、dはd線(λ=587.6nm)を、gはg線(λ=435.8nm)を、それぞれ示している。また、非点収差を示す収差図において実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。また、球面収差を示す収差図において、実線は球面収差を示し、破線はサインコンディション(正弦条件)を示している。なお、この収差図の説明は以降の実施例においても、同様である。
【0081】
各収差図から明らかなように、第1実施例の撮影レンズSL1は、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL1を得ることができる。
【0082】
図5は、第1実施例にかかる撮影レンズの構成を示すレンズ断面図であって、入射した光線が第1番目のゴースト発生面と第2番目のゴースト発生面で反射する様子の一例を説明する図である。
【0083】
図5において、物体側からの光線BMが図示のように撮影レンズSL1に入射すると、両凹形状の負レンズL12における物体側のレンズ面(第1番目のゴースト発生面でありその面番号は3)で反射し、その反射光は負メニスカスレンズL11における像側のレンズ面(第2番目のゴースト発生面でありその面番号は2)で再度反射して像面Iに到達し、ゴーストを発生させてしまう。なお、第1番目のゴースト発生面3は、凹形状のレンズ面、第2番目のゴースト発生面2は凹形状のレンズ面である。このような面に、より広い波長範囲で広入射角に対応した反射防止膜を形成することで、ゴーストを効果的に低減することができる。
【0084】
[第2実施例]
図6は、本願の第2実施例にかかる撮影レンズSL2のレンズ構成を示す図である。この図6の撮影レンズSL2において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0085】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21から構成され、この第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0086】
また、第3レンズ群G3は両凸形状の正レンズL31から構成されている。
【0087】
第4レンズ群G4の第1負レンズ成分G4aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と両凹形状の負レンズL42との貼り合わせによる接合レンズCL41から構成され、第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43から構成され、正レンズ成分G4cは、両凸形状の正レンズL44から構成されている。本撮影レンズSL2は、この第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL2の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0088】
また、この第4レンズ群G4に含まれる、第1負レンズ成分G4aの第2負レンズ成分G4b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G4bに対して凹面を向けるように成形された非球面であり、さらに第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状となるように構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0089】
さらに、第1負レンズ成分G4aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL41とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。さらに、防振レンズ群である第4レンズ群G4において、第5レンズ群G5側に正の屈折力を有する正レンズ成分G4cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第5レンズ群G5の外径の増大を防いでいる。
【0090】
第5レンズ群G5は、物体側から順に両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52の2枚接合レンズCL51、両凸形状の正レンズL53、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL54と両凸形状の正レンズL55と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL56との3枚接合レンズCL52から構成されている。
【0091】
本第2実施例にかかる撮影レンズSL2は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面(面番号2)と、両凹形状の負レンズL12の像面側レンズ面(面番号4)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0092】
以下の表5に、第2実施例にかかる撮影レンズSL2の諸元の値を掲げる。
【0093】
(表5)第2実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=169.32 〜 161.04 〜 164.28
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 50.943 3.00 1.76690 46.85
*2 14.571 12.74
3 -116.435 1.55 1.88300 40.76
4 155.379 2.28
5 -103.837 1.50 1.60972 53.12
6 71.864 0.20 1.55389 38.09
*7 64.903 1.00
8 61.824 5.28 1.69694 28.43
9 -82.700 (d9)
10 57.224 1.05 1.84666 23.78
11 25.769 5.16 1.61699 43.08
12 -104.954 (d12)
13 45.674 4.89 1.55319 49.96
14 -82.700 (d14)
15 ∞ 1.54 開口絞り
16 -137.172 2.14 1.84666 23.78
17 -44.700 1.00 1.87656 36.33
*18 46.002 4.67
19 -27.961 0.80 1.88300 40.76
20 -90.721 0.15
21 124.583 4.30 1.84666 23.78
22 -50.211 (d22)
23 31.982 8.14 1.49782 82.51
24 -36.308 1.10 1.85275 41.53
25 459.166 0.05
26 52.795 5.92 1.49782 82.51
27 -53.353 0.15
28 48.593 1.10 1.88300 40.76
29 20.995 11.59 1.49782 82.51
30 -41.053 1.60 1.88300 40.76
*31 -97.910 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.54
G2 10 85.65
G3 13 53.92
G4 15 -46.90
G5 23 46.71
【0094】
この第2実施例において、第1面、第2面、第7面、第18面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表6に、非球面のデータ、すなわち円錐定数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第2実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0095】
(表6)
第1面 第2面 第7面 第18面 第31面
κ 1.000 0.205 -23.978 4.325 4.972
A4 -4.296E-06 7.276E-06 9.573E-06 -3.108E-06 1.066E-05
A6 3.898E-09 -6.558E-09 -2.997E-08 -3.879E-09 9.920E-09
A8 -2.279E-12 9.770E-11 3.432E-11 -1.171E-11 -5.022E-12
A10 -3.793E-15 0.000E+00 0.000E+00 3.651E-14 1.113E-13
A12 4.018E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0096】
この第2実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d12、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d14、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表7に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0097】
(表7)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 27.37 11.19 1.59
d12 4.87 5.37 5.72
d14 3.17 6.90 9.74
d22 12.50 5.81 0.30
Bf 38.50 48.85 64.01
【0098】
次の表8に、この第2実施例における条件式対応値を示す。なおこの表8において、r1は第1負レンズ成分G4aにおける第2負レンズ成分G4b側の面の曲率半径を、r2は第2負レンズ成分G4bにおける第1負レンズ成分G4a側の面の曲率半径を、Faは前述の条件式(2)で示した変数を、Fbは前述の条件式(3)で示した変数をそれぞれ表している。
【0099】
(表8)
Fg =-46.900
Fgc= 42.751
(1)r1=46.002 r2=-27.961
(2)Fa=0.39
(3)Fb=0.91
【0100】
図7は、第2実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図8は、第2実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図9は、第2実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0101】
各収差図から明らかなように、第2実施例の撮影レンズSL2では、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL2を得ることができる。
【0102】
[第3実施例]
図10は、本願の第3実施例にかかる撮影レンズSL3のレンズ構成を示す図である。この図10の撮影レンズSL3において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0103】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21から構成され、この第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0104】
また、第3レンズ群G3は両凸形状の正レンズL31から構成されている。
【0105】
第4レンズ群G4の第1負レンズ成分G4aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と両凹形状の負レンズL42との貼り合わせによる接合レンズCL41から構成され、第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43から構成され、正レンズ成分G4cは、両凸形状の正レンズL44から構成されている。本撮影レンズSL3は、この第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL3の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0106】
また、この第4レンズ群G4に含まれる、第1負レンズ成分G4aの第2負レンズ成分G4b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G4bに対して凹面を向けるように成形され、さらに第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、正レンズ成分G4c側の面が非球面で、構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0107】
さらに、第1負レンズ成分G4aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL41とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。また、防振レンズ群である第4レンズ群G4において、第5レンズ群G5側に正の屈折力を有する正レンズ成分G4cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第5レンズ群G5の外径の増大を防いでいる。
【0108】
第5レンズ群G5は、物体側から順に両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52の2枚接合レンズCL51、両凸形状の正レンズL53、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL54と両凸形状の正レンズL55と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL56との3枚接合レンズCL52から構成されている。
【0109】
本第3実施例にかかる撮影レンズSL3は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の像面側レンズ面(面番号2)と、両凹形状の負レンズL13の物体側レンズ面(面番号5)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0110】
以下の表9に、第3実施例にかかる撮影レンズSL3の諸元の値を掲げる。
【0111】
(表9)第3実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=169.28 〜 161.17 〜 164.58
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 52.973 3.00 1.76690 46.85
*2 14.850 12.60
3 -119.014 1.55 1.88300 40.76
4 136.109 2.48
5 -97.824 1.50 1.57965 55.96
6 79.989 0.20 1.55389 38.09
*7 72.446 1.00
8 64.497 5.09 1.69974 28.30
9 -87.132 (d9)
10 58.371 1.05 1.84666 23.78
11 26.261 5.08 1.61508 43.13
12 -102.896 (d12)
13 45.706 4.82 1.55450 50.90
14 -86.359 (d14)
15 ∞ 1.71 開口絞り
16 -104.348 2.45 1.83374 24.06
17 -35.279 1.00 1.87668 36.40
18 49.535 4.55
19 -28.181 0.80 1.88300 40.76
*20 -73.586 0.15
21 142.004 4.14 1.84666 23.78
22 -52.132 (d22)
23 32.791 8.24 1.49782 82.51
24 -35.532 1.10 1.84809 41.65
25 1291.165 0.05
26 50.902 6.05 1.49782 82.51
27 -55.654 0.15
28 48.297 1.10 1.88300 40.76
29 20.801 11.80 1.49782 82.51
30 -41.073 1.60 1.88300 40.76
*31 -102.841 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.58
G2 10 86.36
G3 13 54.61
G4 15 -46.90
G5 23 46.12
【0112】
この第3実施例において、第1面、第2面、第7面、第20面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表10に、非球面のデータ、すなわち円錐状数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第3実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0113】
(表10)
第1面 第2面 第7面 第20面 第31面
κ 1.000 0.212 -31.468 0.586 5.145
A4 -3.243E-06 7.194E-06 9.425E-06 1.313E-07 1.073E-05
A6 3.427E-09 -2.832E-09 -3.037E-08 9.955E-10 8.287E-09
A8 -2.701E-12 9.233E-11 3.487E-11 -9.031E-14 -3.717E-12
A10 -3.037E-15 0.000E+00 0.000E+00 7.838E-15 1.076E-13
A12 3.682E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0114】
この第3実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d12、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d14、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表11に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0115】
(表11)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 26.94 11.02 1.61
d12 4.95 5.40 5.76
d14 3.17 6.96 10.01
d22 12.50 5.73 0.15
Bf 38.46 48.80 63.78
【0116】
次の表12に、この第3実施例における条件式対応値を示す。
【0117】
(表12)
Fg =-46.900
Fgc= 45.484
(1)r1=49.53 r2=-28.18
(2)Fa=0.43
(3)Fb=0.97
【0118】
図11は、第3実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図12は、第3実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図13は、第3実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0119】
各収差図から明らかなように、第3実施例の撮影レンズSL3では、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL3を得ることができる。
【0120】
[第4実施例]
図14は、本願の第4実施例にかかる撮影レンズSL4のレンズ構成を示す図である。この図14の撮影レンズSL4において、第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた両面非球面の負メニスカスレンズL11、両凹形状の負レンズL12、像側のレンズ面が樹脂成形による非球面である両凹形状の負レンズL13、及び、両凸形状の正レンズL14から構成されている。
【0121】
また、第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と両凸形状の正レンズL22との貼り合わせによる接合レンズCL21から構成され、この第2レンズ群G2を光軸に沿って移動させることにより、無限遠物体から至近距離物点への合焦を行っている。このようにインナーフォーカスとすることで、オートフォーカスの際、フォーカスモーターにかかる負荷を小さくし、迅速な駆動と省電力とを可能としている。
【0122】
また、第3レンズ群G3は両凸形状の正レンズL31から構成されている。
【0123】
第4レンズ群G4の第1負レンズ成分G4aは、物体側から順に、物体側に凹面を向けた正メニスカスレンズL41と両凹形状の負レンズL42との貼り合わせによる接合レンズCL41から構成され、第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4a側に凹面を向けた負メニスカスレンズL43から構成され、正レンズ成分G4cは、第5レンズ群G5側の面が非球面である両凸形状の正レンズL44から構成されている。本撮影レンズSL4は、この第4レンズ群G4を防振レンズ群として光軸と略垂直方向に移動させることにより、撮影レンズSL4の振動に起因する像振れ補正(防振)を行うように構成されている。
【0124】
また、この第4レンズ群G4に含まれる、第1負レンズ成分G4aの第2負レンズ成分G4b側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分G4bに対して凹面を向けるように成形され、さらに第2負レンズ成分G4bは、第1負レンズ成分G4aに対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状で構成されている。このような構成とすることで、防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差を良好に補正している。特に、Fナンバーが2.8という大口径で、基本となる球面収差と防振レンズ群が光軸と略垂直方向に移動した時に発生する、偏芯コマ収差、像面の傾き収差との両立を、防振レンズ群に非球面を入れることで実現している。
【0125】
さらに、第1負レンズ成分G4aを、貼り合わせ面が開口絞りSに対して凹面を向けた接合レンズCL41とすることによって、色の像面湾曲収差、特に望遠側における色の像面湾曲収差の補正を行っている。また、防振レンズ群である第4レンズ群G4において、第5レンズ群G5側に正の屈折力を有する正レンズ成分G4cを配置することによって、防振性能を劣化させることなく、超広角ズームレンズで問題となる第5レンズ群G5の外径の増大を防いでいる。
【0126】
第5レンズ群G5は、物体側から順に両凸形状の正レンズL51と両凹形状の負レンズL52の2枚接合レンズCL51、両凸形状の正レンズL53、及び、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL54と両凸形状の正レンズL55と像側のレンズ面が非球面で物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズL56との3枚接合レンズCL52から構成されている。
【0127】
本第4実施例にかかる撮影レンズSL4は、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の物体側レンズ面(面番号1)と、両凸形状の正レンズL14の物体側レンズ面(面番号8)に、後述する反射防止膜が形成されている。
【0128】
以下の表13に、第4実施例にかかる撮影レンズSL4の諸元の値を揚げる。
【0129】
(表13)第4実施例
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f = 16.48 〜 24.00 〜 33.95
F.NO = 2.884 〜 2.884 〜 2.884
2ω =108° 〜 84° 〜 63°
像高 = 21.64 〜 21.64 〜 21.64
光学全長=169.35 〜 160.85 〜 164.01
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
物面 ∞ ∞
*1 54.854 3.00 1.76690 46.85
*2 14.895 12.52
3 -119.197 1.55 1.88300 40.76
4 153.800 2.37
5 -99.957 1.50 1.58117 55.80
6 70.459 0.20 1.55389 38.09
*7 70.337 1.00
8 58.073 5.12 1.69870 28.35
9 -102.834 (d9)
10 60.699 1.05 1.84666 23.78
11 26.752 5.02 1.61593 42.00
12 -96.705 (d12)
13 44.671 4.86 1.55420 52.03
14 -85.562 (d14)
15 ∞ 1.69 開口絞り
16 -107.454 2.32 1.83400 24.05
17 -45.271 1.00 1.87834 37.97
18 48.988 4.58
19 -27.883 0.80 1.88105 40.81
20 -84.274 0.15
21 137.079 4.27 1.84666 23.78
*22 -48.636 (d22)
23 32.159 8.01 1.49782 82.51
24 -36.284 1.10 1.85199 41.55
25 486.061 0.05
26 51.543 6.05 1.49782 82.51
27 -53.717 0.15
28 50.562 1.10 1.88300 40.76
29 21.393 11.71 1.49782 82.51
30 -39.794 1.60 1.88300 40.76
*31 -91.946 (Bf)
像面 ∞
[各レンズ群の焦点距離]
レンズ群 始面 焦点距離
G1 1 -22.56
G2 10 86.18
G3 13 53.67
G4 15 -46.90
G5 23 46.64
【0130】
この第4実施例において、第1面、第2面、第7面、第22面、及び、第31面の各レンズ面は非球面形状に形成されている。次の表14に、非球面のデータ、すなわち円錐状数κ、及び、各非球面定数A4、A6、A8、A10及びA12の値を示す。なお、第4実施例においては、非球面定数A3、A5、A7、A9及びA11の値は、0である。
【0131】
(表14)
第1面 第2面 第7面 第22面 第31面
κ 1.000 0.180 -28.387 0.716 4.852
A4 -3.651E-06 5.946E-06 1.150E-05 3.171E-07 1.066E-05
A6 3.597E-09 -6.965E-09 -2.848E-08 4.652E-10 9.341E-09
A8 -1.035E-12 8.384E-11 3.562E-11 -1.605E-12 -1.234E-13
A10 -4.251E-15 0.000E+00 0.000E+00 1.111E-14 9.226E-14
A12 3.834E-18 0.000E+00 0.000E+00 0.000E+00 4.038E-18
【0132】
この第4実施例において、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との軸上空気間隔d9、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との軸上空気間隔d12、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との軸上空気間隔d14、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との軸上空気間隔d22、及び、バックフォーカスBfは、変倍に際して変化する。次の表15に、広角端状態、中間焦点距離状態、及び、望遠端状態の各焦点距離における可変間隔を示す。
【0133】
(表15)
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
f 16.48 24.00 33.95
d9 27.36 11.18 1.63
d12 5.02 5.40 5.73
d14 3.17 6.73 9.47
d22 12.50 5.72 0.15
Bf 38.53 49.04 64.26
【0134】
次の表16に、この第4実施例における条件式対応値を示す。
【0135】
(表16)
Fg =-46.900
Fgc= 42.852
(1)r1=48.99 r2=-27.88
(2)Fa=0.43
(3)Fb=0.91
【0136】
図15は、第4実施例にかかる撮影レンズの広角端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図16は、第4実施例にかかる撮影レンズの中間焦点距離状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。図17は、第4実施例にかかる撮影レンズの望遠端状態での無限遠合焦状態における諸収差図を示し、(a)は防振補正前の諸収差図であり、(b)は防振補正後の横収差図である。なお、この防振補正後の横収差は、防振群G3を光軸と略垂直方向に0.2(mm)移動させた場合の収差を示している。
【0137】
各収差図から明らかなように、第4実施例の撮影レンズSL4では、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、ゴースト光を低減し優れた光学性能を有する撮影レンズSL4を得ることができる。
【0138】
ここで、本願の撮影レンズに用いられる反射防止膜(多層広帯域反射防止膜とも言う)について説明する。図20は、反射防止膜の膜構成の一例を示す図である。この反射防止膜101は7層からなり、レンズ等の光学部材102の光学面に形成される。第1層101aは真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムで形成されている。また、この第1層101aの上に更に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第2層101bが形成される。さらに、この第2層101bの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第3層101cが形成され、この第3層101cの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第4層101dが形成される。またさらに、この第4層101dの上に真空蒸着法で蒸着された酸化アルミニウムからなる第5層101eが形成され、この第5層101eの上に真空蒸着法で蒸着された酸化チタンと酸化ジルコニウムの混合物からなる第6層101fが形成される。
【0139】
そして、このようにして形成された第6層101fの上に、ウェットプロセスによりフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる第7層101gが形成されて本実施形態の反射防止膜101が形成される。第7層101gの形成には、ウェットプロセスの一種であるゾル−ゲル法を用いている。ゾル−ゲル法とは、原料を混合することにより得られたゾルを、加水分解・重縮合反応などにより流動性のないゲルとし、このゲルを加熱・分解して生成物を得る方法であり、光学薄膜の作製においては、光学部材の光学面上に光学薄膜材料ゾルを塗布し、乾燥固化によりゲル膜とすることで膜を生成することができる。なお、ウェットプロセスとして、ゾル−ゲル法に限らず、ゲル状態を経ないで固体膜を得る方法を用いるようにしてもよい。
【0140】
このように、この反射防止膜101の第1層101a〜第6層101fまではドライプロセスである真空蒸着法(例えば、電子ビーム蒸着)により形成され、最上層である第7層101gは、フッ酸/酢酸マグネシウム法で調製したゾル液を用いるウェットプロセスにより以下の手順で形成されている。まず、予めレンズ成膜面(上述の光学部材102の光学面)に真空蒸着装置を用いて第1層101aとなる酸化アルミニウム層、第2層101bとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第3層101cとなる酸化アルミニウム層、第4層101dとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層、第5層101eとなる酸化アルミニウム層、第6層101fとなる酸化チタン−酸化ジルコニウム混合層を順に形成する。そして、蒸着装置より光学部材102を取り出した後、フッ酸/酢酸マグネシウム法により調製したゾル液にシリコンアルコキシドを加えたものをスピンコート法により塗布することにより、第7層101gとなるフッ化マグネシウムとシリカの混合物からなる層を形成する。フッ酸/酢酸マグネシウム法によって調製される際の反応式を以下の式(b)に示す。
【0141】
2HF+Mg(CH3COO)2→MgF2+2CH3COOH (b)
【0142】
この成膜に用いたゾル液は、原料混合後、オートクレーブで140℃、24時間高温加圧熟成処理を施した後、成膜に用いられる。この光学部材102は、第7層101gの成膜終了後、大気中で160℃、1時間加熱処理して完成される。このようなゾル−ゲル法を用いることにより、大きさが数nmから数十nmの粒子が空隙を残して堆積することにより第7層101gが形成される。
【0143】
このようにして形成された反射防止膜101を有する光学部材の光学的性能について図21に示す分光特性を用いて説明する。
【0144】
本実施形態にかかる反射防止膜を有する光学部材(レンズ)は、以下の表17に示す条件で形成されている。ここで表17は、基準波長をλとし、基板の屈折率(光学部材)が1.62、1.74及び1.85について反射防止膜101の各層101a(第1層)〜101g(第7層)の光学膜厚をそれぞれ求めたものである。なお、表17では、酸化アルミニウムをAl2O3、酸化チタンと酸化ジルコニウム混合物をZrO2+TiO2、フッ化マグネシウムとシリカの混合物をMgF2+SiO2とそれぞれ表している。
【0145】
(表17)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2+SiO2 1.26 0.268λ 0.271λ 0.269λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ 0.054λ 0.059λ
第5層 Al2O3 1.65 0.171λ 0.178λ 0.162λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.127λ 0.13λ 0.158λ
第3層 Al2O3 1.65 0.122λ 0.107λ 0.08λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.059λ 0.075λ 0.105λ
第1層 Al2O3 1.65 0.257λ 0.03λ 0.03λ
基板の屈折率 1.62 1.74 1.85
【0146】
図21は、表17において基準波長λを550nmとして反射防止膜101の各層の光学膜厚を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を表している。
【0147】
図21から、基準波長λを550nmで設計した反射防止膜101を有する光学部材は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率を0.2%以下に抑えられることが判る。また、表17において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜101を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図21に示す基準波長λが550nmの場合とほぼ同等の分光特性を有する。
【0148】
次に、本反射防止膜の変形例について説明する。この反射防止膜は5層からなり、表17と同様、以下の表18で示される条件で基準波長λに対する各層の光学膜厚が設計される。本変形例では、第5層の形成に前述のゾル−ゲル法を用いている。
【0149】
(表18)
物質 屈折率 光学膜厚 光学膜厚
媒質 空気 1
第5層 MgF2+SiO2 1.26 0.275λ 0.269λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.045λ 0.043λ
第3層 Al2O3 1.65 0.212λ 0.217λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.077λ 0.066λ
第1層 Al2O3 1.65 0.288λ 0.290λ
基板の屈折率 1.46 1.52
【0150】
図22は、表18において、基板の屈折率が1.52及び基準波長λを550nmとして各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示している。図22から本変形例の反射防止膜は、光線の波長が420nm〜720nmの全域で反射率が0.2%以下に抑えられることがわかる。なお、表18において基準波長λをd線(波長587.6nm)として各光学膜厚を設計した反射防止膜を有する光学部材でも、その分光特性にはほとんど影響せず、図22に示す分光特性とほぼ同等の特性を有する。
【0151】
図23は、図22に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。なお、図22、図23には表18に示す基板の屈折率が1.46の反射防止膜を有する光学部材の分光特性が図示されていないが、基板の屈折率が1.52とほぼ同等の分光特性を有していることは言うまでもない。
【0152】
また比較のため、図24に、従来の真空蒸着法などのドライプロセスのみで成膜した反射防止膜の一例を示す。図24は、表18と同じ基板の屈折率1.52に以下の表19で示される条件で構成される反射防止膜を設計した光学部材に光線が垂直入射する時の分光特性を示す。また、図25は、図24に示す分光特性を有する光学部材への光線の入射角が30度、45度、60度の場合の分光特性をそれぞれ示す。
【0153】
(表19)
物質 屈折率 光学膜厚
媒質 空気 1
第7層 MgF2 1.39 0.243λ
第6層 ZrO2+TiO2 2.12 0.119λ
第5層 Al2O3 1.65 0.057λ
第4層 ZrO2+TiO2 2.12 0.220λ
第3層 Al2O3 1.65 0.064λ
第2層 ZrO2+TiO2 2.12 0.057λ
第1層 Al2O3 1.65 0.193λ
基板の屈折率 1.52
【0154】
図21〜図23で示される本実施形態にかかる反射防止膜を有する光学部材の分光特性を、図24および図25で示される従来例の分光特性と比較すると、本反射防止膜はいずれの入射角においてもより低い反射率を有し、しかも低い反射率をより広い帯域で有することが良くわかる。
【0155】
次に、本願の第1実施例から第4実施例に、上記表17および表18に示す反射防止膜を適用した例について説明する。
【0156】
本第1実施例の撮影レンズSL1において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表1に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凹形状の負レンズL12の屈折率は、nd=1.88300であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凹形状の負レンズL12の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0157】
本第2実施例の撮影レンズSL2において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表5に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凹形状の負レンズL12の屈折率は、nd=1.88300であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凹形状の負レンズL12の像面側のレンズ面に、基板の屈折率が1.85に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0158】
本第3実施例の撮影レンズSL3において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表9に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凹形状の負レンズL13の屈折率は、nd=1.57965であるため、負メニスカスレンズL11における像面側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凹形状の負レンズL13の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.62に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0159】
本第4実施例の撮影レンズSL4において、第1レンズ群G1の負メニスカスレンズL11の屈折率は、表13に示すように、nd=1.76690であり、第1レンズ群G1の両凸形状の正レンズL14の屈折率は、nd=1.69870であるため、負メニスカスレンズL11における物体側のレンズ面に基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜101(表17参照)を用い、両凸形状の正レンズL14の物体側のレンズ面に、基板の屈折率が1.74に対応する反射防止膜(表17参照)を用いることで各レンズ面からの反射光を少なくでき、ゴーストやフレアを低減することができる。
【0160】
以上の実施例にかかる撮影レンズでは、広角端状態から望遠端状態までの各焦点距離状態において、Fナンバーが2.88と大口径でありながら、防振時も含めて諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有することがわかる。また、画角が100°以上の超広角から50°程度の標準画角まで変倍する超広角高倍率ズームであり、防振時の収差が良好に補正可能な高い防振性能を有し、優れた光学性能を有する撮影レンズを得ることができる。
【符号の説明】
【0161】
SL(SL1〜SL4) 撮影レンズ
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G3a,G4a 第1負レンズ成分
G3b,G4b 第2負レンズ成分
G3c,G4c 正レンズ成分
S 開口絞り
1 一眼レフカメラ(光学機器)
101 反射防止膜
101a 第1層
101b 第2層
101c 第3層
101d 第4層
101e 第5層
101f 第6層
101g 第7層
102 光学部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最も物体側に配置され、負の屈折力を有する前群と、
前記前群より像側に配置され、負の屈折力を有し、少なくとも一部が光軸と略垂直方向の成分を持つように移動する後群とを有し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に配置され、
前記第1負レンズ成分の前記第2負レンズ成分側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分に対して凹面を向けるように形成され、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズ。
【請求項2】
前記反射防止膜は多層膜であり、
前記ウェットプロセスを用いて形成された層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることを特徴とする請求項1に記載の撮影レンズ。
【請求項3】
前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率は1.30以下であることを特徴とする請求項1から2に記載の撮影レンズ。
【請求項4】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3に記載の撮影レンズ。
【請求項5】
前記凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の撮影レンズ。
【請求項6】
前記凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の撮影レンズ。
【請求項7】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、凸形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項8】
前記凸形状のレンズ面は、前記前群の最も物体側のレンズの、物体側レンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の撮影レンズ。
【請求項9】
前記凸形状のレンズ面は、前記前群の最も物体側のレンズから像面側に4番目のレンズのレンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の撮影レンズ。
【請求項10】
前記後群の近傍に開口絞りを有し、
前記後群は、前記開口絞り側から順に、前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分の順で配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項11】
前記正レンズ成分は、両凸形状であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項12】
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分の少なくとも1つは、負レンズと正レンズとを接合した接合レンズであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項13】
前記接合レンズの接合面は、前記開口絞りに対して凹面を向けていることを特徴とする請求項12に記載の撮影レンズ。
【請求項14】
前記前群である第1レンズ群と前記後群である第3レンズ群との間に配置され、正の屈折力を有する第2レンズ群と、
前記第3レンズ群の像側に配置され、正の屈折力を有する第4レンズ群と、を有し、
広角端状態から望遠端状態まで変倍する際に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が変化し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が変化し、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔が変化することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項15】
広角端状態から望遠端状態まで変倍する際に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が減少し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が増大し、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔が減少することを特徴とする請求項14に記載の撮影レンズ。
【請求項16】
物体の像を所定の像面上に結像させる、請求項1から15のいずれか1項に記載の撮影レンズを備えることをことを特徴とする特徴とする光学機器。
【請求項17】
負の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群と、を有する撮影レンズの製造方法であって、
最も物体側に前記前群を配置し、
前記前群より像側に前記後群を配置し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する負メニスカス形状の第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、前記第2負レンズ成分が前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に位置し、かつ、前記第1負レンズ成分と前記第2負レンズ成分との間の空気レンズの形状が両凸形状となるように配置し、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記後群の少なくとも一部を、光軸と略垂直方向の成分を持つように移動するように配置し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズの製造方法。
【請求項1】
最も物体側に配置され、負の屈折力を有する前群と、
前記前群より像側に配置され、負の屈折力を有し、少なくとも一部が光軸と略垂直方向の成分を持つように移動する後群とを有し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に配置され、
前記第1負レンズ成分の前記第2負レンズ成分側のレンズ面は、当該第2負レンズ成分に対して凹面を向けるように形成され、
前記第2負レンズ成分は、前記第1負レンズ成分に対して凹面を向けた負メニスカスレンズ形状であり、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズ。
【請求項2】
前記反射防止膜は多層膜であり、
前記ウェットプロセスを用いて形成された層は、前記多層膜を構成する層のうち最も表面側の層であることを特徴とする請求項1に記載の撮影レンズ。
【請求項3】
前記ウェットプロセスを用いて形成された層の屈折率は1.30以下であることを特徴とする請求項1から2に記載の撮影レンズ。
【請求項4】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、凹形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3に記載の撮影レンズ。
【請求項5】
前記凹形状のレンズ面は、像面側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の撮影レンズ。
【請求項6】
前記凹形状のレンズ面は、物体側のレンズ面であることを特徴とする請求項4に記載の撮影レンズ。
【請求項7】
前記反射防止膜が設けられた前記光学面は、凸形状のレンズ面であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項8】
前記凸形状のレンズ面は、前記前群の最も物体側のレンズの、物体側レンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の撮影レンズ。
【請求項9】
前記凸形状のレンズ面は、前記前群の最も物体側のレンズから像面側に4番目のレンズのレンズ面であることを特徴とする請求項7に記載の撮影レンズ。
【請求項10】
前記後群の近傍に開口絞りを有し、
前記後群は、前記開口絞り側から順に、前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分の順で配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項11】
前記正レンズ成分は、両凸形状であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項12】
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分の少なくとも1つは、負レンズと正レンズとを接合した接合レンズであることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項13】
前記接合レンズの接合面は、前記開口絞りに対して凹面を向けていることを特徴とする請求項12に記載の撮影レンズ。
【請求項14】
前記前群である第1レンズ群と前記後群である第3レンズ群との間に配置され、正の屈折力を有する第2レンズ群と、
前記第3レンズ群の像側に配置され、正の屈折力を有する第4レンズ群と、を有し、
広角端状態から望遠端状態まで変倍する際に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が変化し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が変化し、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔が変化することを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の撮影レンズ。
【請求項15】
広角端状態から望遠端状態まで変倍する際に、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群との間隔が減少し、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群との間隔が増大し、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群との間隔が減少することを特徴とする請求項14に記載の撮影レンズ。
【請求項16】
物体の像を所定の像面上に結像させる、請求項1から15のいずれか1項に記載の撮影レンズを備えることをことを特徴とする特徴とする光学機器。
【請求項17】
負の屈折力を有する前群と、負の屈折力を有する後群と、を有する撮影レンズの製造方法であって、
最も物体側に前記前群を配置し、
前記前群より像側に前記後群を配置し、
前記後群は、負の屈折力を有する第1負レンズ成分と、負の屈折力を有する負メニスカス形状の第2負レンズ成分と、正の屈折力を有する正レンズ成分とを有し、前記第2負レンズ成分が前記第1負レンズ成分と前記正レンズ成分との間に位置し、かつ、前記第1負レンズ成分と前記第2負レンズ成分との間の空気レンズの形状が両凸形状となるように配置し、
前記第1負レンズ成分、前記第2負レンズ成分及び前記正レンズ成分のうち少なくとも1面に非球面を有し、
前記後群の少なくとも一部を、光軸と略垂直方向の成分を持つように移動するように配置し、
前記前群における光学面のうち少なくとも1面に反射防止膜が設けられ、前記反射防止膜は、ウェットプロセスを用いて形成された層を少なくとも1層含むことを特徴とする撮影レンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−247687(P2012−247687A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120468(P2011−120468)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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