説明

撮影画像合成装置

【課題】単一の撮影レンズの仕様よりも広い画角の合成画像を得ること。
【解決手段】撮影方向を調節するために傾斜可能な撮像ユニット1,2には、撮影レンズ1a,2a及び撮像面が長方形形状の撮像素子1b,2bが配設されている。撮像ユニット1,2の各々の撮影範囲を合致させて撮影を行い、撮像素子1b,2bの各出力画像から1つのステレオ画像を合成する。そして、撮像素子1b,2bをそれぞれ撮像素子回転用モータ1d,2dにより90°回転させると共に、撮像ユニット1,2の各々の撮影範囲が一部分重複するように撮像ユニット1,2をそれぞれ外側(+y方向)に傾斜させて撮影を行い、撮像素子1b,2bの各出力画像から画角が広く高精細の画像を合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮像系を有し、各撮像系の撮影画像を1つに合成する撮影画像合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの撮像部を用いて撮影し、2枚の撮影画面のオーバーラップエリアのみを合成して1つの立体視用のステレオ画像を得るステレオカメラが知られている。このようなステレオカメラでは、その画像合成機能を利用して、1つのパノラマ画像を生成することもできる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−121229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1の装置は、2つの撮像部からの2枚の撮影画像を合成してステレオ画像もパノラマ画像も生成する機能があるが、このようなパノラマ画像は、2枚の撮影画像を横方向に継ぎ足したものに限られるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明による撮影画像合成装置は、第1の撮影光学系と第1の撮像素子とを有し、撮影方向を調節するために傾斜可能に支持された第1の撮像ユニットと、第2の撮影光学系と第2の撮像素子とを有し、撮影方向を調節するために傾斜可能に支持され、第1の撮像ユニットと同一の長方形状の撮影範囲を有する第2の撮像ユニットと、第1および第2の撮像ユニットの隣接する撮影範囲が互いに少なくとも一部重複するように、第1および第2の撮像ユニットの各々の傾斜量を変更する傾斜量変更手段と、第1および第2の撮像素子を入射光軸廻りに回転させる撮像素子回転手段と、第1および第2の撮像素子の各出力画像から1つの合成画像を生成する合成手段と、を備え、第1および第2の撮像ユニットの各々の撮影範囲を合致させて撮影を行う第1の撮影モードと、撮像素子回転手段により第1および第2の撮像素子を第1の撮影モードの状態から90°回転させ、傾斜量変更手段により第1および第2の撮像ユニットの撮影範囲が一部重複するように第1および第2の撮像ユニットの傾斜量を変更して撮影を行う第2の撮影モードと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の撮影画像合成装置によれば、第2の撮影モードで、第1および第2の撮像素子を第1の撮影モードの状態から90°回転させて撮影した画像を合成することができるので、画像の縦横で多様な画角の合成画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る撮影画像合成装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、撮像ユニットを第1の撮影モードに設定した場合の撮影画像合成装置の斜視図であり、図2(b)は、合成画像を説明する図である。
【図3】図3(a)は、撮像ユニットを第2の撮影モードに設定した場合の撮影画像合成装置の斜視図であり、図3(b)は、合成画像を説明する図である。
【図4】図4(a)は、撮像ユニットを第1の撮影モードにしたときの望遠端の撮影範囲を示し、図4(b)は、広角端の撮影範囲を示す図である。
【図5】第1の撮影モードで、撮影レンズが望遠端に位置するときの撮影範囲を示す図である。
【図6】第1の撮影モードで、撮影レンズが広角端に位置するときの撮影範囲を示す図である。
【図7】第1の撮影モードで、撮影レンズの焦点距離を広角端から望遠側へ変化させたときの撮影範囲を示す図である。
【図8】第1の撮影モードから第2の撮影モードへ移行したときの撮影範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態による撮影画像合成装置を説明する。
図1において、第1の実施の形態による撮影画像合成装置100は、撮像ユニット1,2と、カメラ制御部10と、画像処理部11と、システムメモリ12と、外部メモリ13と、表示装置14と、操作部材15とを備える。また、撮影画像合成装置100は、駆動モータ21と、モータギア22と、回転ギア23と、回転ロッド24と、スライダ25とを備える。
【0009】
撮像ユニット1は、撮影レンズ1a、撮像素子1b、AF・ズーム(Zoom)用モータ1cおよび撮像素子回転用モータ1dを有する。
撮影レンズ1aは、被写体像を撮像素子1bの撮像面上に結像させる。撮像素子1bは、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサなどによって構成され、被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。撮像素子1bの受光面は横長の長方形形状を呈している。
【0010】
AF・ズーム用モータ1cは、AFモータとズームモータとを含む。AFモータは、焦点調節機構を機能させるために回転動作により撮影レンズ1aを構成するフォーカスレンズを光軸方向に進退移動させるための駆動源である。ズームモータは、ズーム機構を機能させるために回転動作により撮影レンズ1aを構成するズームレンズを光軸方向に進退移動させための駆動源である。AFモータおよびズームモータの回転制御は、カメラ制御部10によって行われる。なお、AFモータおよびズームモータの回転位置検出は、不図示のAF・ズーム用エンコーダによって行われ、検出信号はカメラ制御部10へ送出される。
【0011】
撮像素子回転用モータ1dは、撮像素子1bを入射光軸廻りに回転させるための駆動源である。撮像素子1bの回転は、90°単位で行われる。撮像素子1bの長方形形状の長辺が撮像ユニット1と撮像ユニット2とが並ぶ方向に平行となっているときが撮像素子の基準位置である。
【0012】
撮像ユニット2は、それぞれ撮影レンズ2a、撮像素子2b、AF・ズーム用モータ2cおよび撮像素子回転用モータ2dを有する。撮影レンズ2aは撮影レンズ1aと同一であり、撮像素子2bは撮像素子1bと同一であり、AF・ズーム用モータ2cはAF・ズーム用モータ1cと同一であり、撮像素子回転用モータ2dは撮像素子回転用モータ1dと同一である。このように、撮像ユニット1と2は互いに全く同一の構成であるので、以下、撮像ユニットに関する説明は、代表として撮像ユニット1について説明するにとどめる。
【0013】
カメラ制御部10は、画像処理部11、システムメモリ12、外部メモリ13、表示装置14および操作部材15と接続され、システムメモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、撮影画像合成装置100の動作を制御する。カメラ制御部10は、接続されている各ブロックから出力される信号を入力して所定の演算を行い、演算結果に基づく制御信号を各ブロックへ出力する。また、カメラ制御部10は、撮像素子1b,2b、AF・ズーム用モータ1c,2c、撮像素子回転用モータ1d,2dおよび駆動モータ21と接続され、各構成部品の動作を制御する。
【0014】
カメラ制御部10は、フォーカス調節処理も行う。カメラ制御部10は、撮像ユニット1,2で取得された2枚の画像の撮影範囲が重複している場合は、これら2つの画像データを用いて各画像間の位置ズレ量を求め、該位置ズレ量と、対応する撮像ユニット間の光学距離とに基づいて、三角測量により被写体距離を算出する。算出した被写体距離に対応するレンズ位置へ撮像ユニット1,2のフォーカスレンズを進退移動させることにより、各撮像ユニット1,2においてピント合わせが行われる。
また、カメラ制御部10は、撮像ユニット1,2で取得された2枚の画像の撮影範囲がほとんど重複していない場合は、撮像素子1bまたは2bの撮像面上でのコントラスト検出方式により撮影レンズ1aまたは2aの合焦位置を算出する。
【0015】
画像処理部11には、撮像ユニット1,2からのアナログ画像信号がそれぞれ入力される。画像処理部11は、各アナログ画像信号に対してゲイン調整などのアナログ処理を施し、アナログ処理後の画像信号をA/D変換してデジタル画像データにする。そして、デジタル画像データに対して所定の画像処理(色温度調整など)を施す。画像処理前後の画像データは、内蔵するバッファメモリ(不図示)に一時的に記憶される。画像処理部11はさらに、撮像ユニット1,2で取得された2つの出力画像データを合成して合成画像データを生成する。
【0016】
外部メモリ13は、例えば、半導体メモリを内蔵したメモリカードで構成され、撮影画像合成装置100に対して着脱自在に構成される。カメラ制御部10は、装着された外部メモリ13に対する合成画像データの書き込みや、外部メモリ13からの画像データの読み込みを行う。これらの画像データが外部メモリ13から読み出されると、その画像データに基づく再生画像は、表示装置14に表示される。
【0017】
操作部材15は、図2に示すレリーズボタン15a、ズーム(画角設定)スイッチ15b、モード切換えスイッチ15cなどの各種スイッチを含み、それぞれの操作に対応する操作信号をカメラ制御部10へ送出する。ズームスイッチ15bは、ズームアップ釦15b1とズームダウン釦15b2とを有し、出力画像の撮影画角を設定する。なお、モード切換えスイッチ15cは、後に詳述する第1の撮影モードと第2の撮影モードとを切り換えるスイッチである。
【0018】
駆動モータ21は、撮像ユニット1,2を傾斜させ、撮像ユニット1、2の撮影方向(撮影レンズ1a,2aの光軸方向)を変更するための駆動力を発生する駆動源である。図1では、撮像ユニット1,2の傾斜量は零であり、このとき撮像ユニット1,2は基準方向を向いており、両者の光軸は平行である。
【0019】
撮像ユニット1および2は同一構成で同様に駆動されるので、撮像ユニット1の傾斜機構についてのみ説明する。
図1に示されるように、駆動モータ21のモータギア22と回転ギア23とが噛合しており、回転ギア23と回転ロッド24とは一体に固設されており、回転ロッド24のねじ部24aとスライダ25とは螺合している。スライダ25にはピン25aが突設されており、ピン25aが撮像ユニット1の長穴1eに係合している。
【0020】
駆動モータ21による駆動力は、モータギア22、回転ギア23を介して回転ロッド24へ伝達される。回転ロッド24が軸周りに回転すると、その回転方向に応じてねじ部24aに螺合するスライダ25がx方向(図中で左右方向)に移動する。
【0021】
スライダ25が+x方向(図中、右方向)に移動すると、ピン25aと長穴1eとの係合により、撮像ユニット1は、不図示の回転軸廻りに回転し、+y方向(図中、反時計廻り方向)に傾斜する。撮像ユニット1の傾斜量は、例えば、回転ギア23の回転量(回転角度)に比例するので、回転ギア23の回転量を検出することにより撮像ユニット1の傾斜量を算出することができる。撮像ユニット2も撮像ユニット1に同期して同量だけ傾斜する。但し、撮像ユニット1と2は左右対称の動きをする。
なお、図1では、スライダ25が+x方向に移動した時に、撮像ユニット1は+y方向に傾斜したが、スライダ25を−x方向(図中、左方向)に移動させれば、撮像ユニット1は−y方向(図中、時計廻り方向)に傾斜する。
【0022】
<固定焦点で使用した場合>
先ず、撮影レンズ1a,2aがズーム機構を使用せず、所定の焦点距離に固定された状態での撮像動作を説明する。
図2は、撮像ユニット1の撮影範囲と撮像ユニット2の撮影範囲とを合致させて撮影を行う第1の撮影モードを示したもので、この第1の撮影モードでは、撮像素子1bおよび2bの各出力画像から1つのステレオ合成画像を生成することができる。
【0023】
モード切換えスイッチ15cの操作により第1の撮影モードが選択されると、カメラ制御部10は、駆動モータ21を駆動制御して撮像ユニット1,2の撮影方向、すなわち、撮像ユニット1,2の撮影レンズ1a,2aの光軸をそれぞれ基準方向から内側(図1の−y方向)を向くように傾斜量を制御する。
具体的には、カメラ制御部10は、無限遠の被写体に対しては、撮影レンズ1a,2aの光軸が互いに平行になるように撮像ユニット1,2を基準方向に向け、有限距離の被写体に対しては、その被写体距離に応じた所定の傾斜量だけ撮像ユニット1,2を傾斜させる。
【0024】
撮影範囲1S,2Sは、それぞれ撮像ユニット1,2による横長の長方形状の撮影領域を示し、図2(a)に示されるように、第1撮影モードでは撮影範囲1Sと2Sとが合致している。
第1の撮影モードにおいて、レリーズボタン15aが操作されると、撮像ユニット1,2が所定の視差をもって同一の被写体を撮像する。画像処理部11は、撮像ユニット1,2の出力画像を立体視可能なステレオ画像に合成し、この合成画像は外部メモリ13に記録される。なお、レリーズボタン15aの操作前には、上記の合成画像データ又は撮像ユニット1又は2の出力画像データに基づき、被写体像のスルー画像が表示装置14に表示されている。
【0025】
図2(b)は、撮像ユニット1,2の合致した撮影範囲1S,2Sと、ステレオ合成画像に対応する撮影範囲3Sとの関係を示したもので、これらの撮影範囲1S,2S,3Sは互いに同一である。なお、この第1の撮影モードにおける撮影範囲1S,2Sは、それぞれ撮影レンズ1a,2aの焦点距離と撮像素子1b,2bのサイズとによって実質的に決定され、換言すると、撮像ユニット1,2の画角によって決定される。従って、合成画像の撮影範囲3Sも撮像ユニット1,2の画角によって決定される。
【0026】
図3は、撮像素子1bと撮像素子2bとを第1の撮影モードの位置(基準位置)から90°回転させると共に、撮像ユニット1の撮影範囲と撮像ユニット2の撮影範囲とが一部僅かに重複するように撮像ユニット1,2の傾斜量を変更して撮影を行う第2の撮影モードを説明する図である。この第2の撮影モードでは、撮像素子1bと撮像素子2bとの出力画像から1つの合成画像を生成することができる。
【0027】
モード切換えスイッチ15cの操作により第2の撮影モードが選択されると、カメラ制御部10は、撮像素子回転用モータ1d,2dを駆動制御して撮像素子1bと撮像素子2bとを第1の撮影モードの状態から90°回転させると同時に、駆動モータ21を駆動制御して撮像ユニット1,2の撮影方向、すなわち、撮影レンズ1a,2aの光軸がそれぞれ基準方向に対して外側(図1の+y方向)を向くように傾斜量を制御する。
これにより、図3(a)に示したように、撮像ユニット1,2の撮影範囲11S,12Sはそれぞれ、横長の長方形状から縦長の長方形状に変化し、この縦長の撮影範囲11S,12Sは、それぞれの隣接する長辺において僅かな重複領域1Tを有する。
【0028】
第2の撮影モードにおいて、レリーズボタン15aが操作されると、撮像ユニット1,2がそれぞれ撮影範囲11S,12Sの被写体像を撮像する。画像処理部11は、撮像ユニット1,2の出力画像を合成し、この合成画像は外部メモリ13に記録される。なお、レリーズボタン15aの操作前には、上記の合成画像データに基づき、被写体像のスルー画像が表示装置14に表示されている。
【0029】
図3(b)は、撮像ユニット1,2の重複領域1Tで重複している撮影範囲11S、12Sと、合成画像の撮影範囲13Sとの関係を示したもので、合成画像の撮影範囲13Sの横方向の長さは、撮像ユニット1,2の撮影範囲11S,12Sの各々の縦方向長さ(短辺)のほぼ2倍になっている。換言すれば、この第2の撮影モードにおける合成画像の撮影範囲13Sの画角は、撮像ユニット1,2の各々の撮影範囲の画角のほぼ1.4倍になっている。
画角13Sの合成画像は、2個の撮像素子1bと2bからの出力画像を用いるため、画素数がほぼ2倍となり、高画質化を図ることができる。
【0030】
以上説明した実施形態による撮影画像合成装置100によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)第1の撮影モードを選択すると、撮像ユニット1と2の視差を利用した立体視可能な合成画像が得られ、第2の撮影モードを選択すると、撮像ユニット1または2の単独の出力画像よりも画像の上下左右共に広い画角で且つ高精細の合成画像を得ることができる。
【0031】
<可変焦点で使用した場合>
次に、撮影レンズ1a,2aの焦点距離をズーム機構により変更調整する場合の撮像動作を説明する。
本実施の形態の撮影画像合成装置にあっては、その撮影範囲、即ち画角は、第1及び第2の撮影モードともに、撮影レンズ1a,2aの焦点距離の変更調節によって変化すると共に、第2の撮影モードにおいては合成画像の作成によっても変化する。以下にこれを詳述する。
【0032】
第1の撮影モードにおいて、ズームスイッチ15bのズームアップ釦15b1又はズームダウン釦15b2を操作すると、AF・ズーム用モータ1c、2cのズームモータがズーム機構を駆動して、撮影レンズ1a,2aの焦点距離を望遠端(最長焦点距離)と広角端(最短焦点距離)との間で変化させることができる。これによって、各撮像ユニット1,2の撮影範囲は、図4(a)の望遠端の最小撮影範囲101、102と図4(b)の広角端の最大撮影範囲201,202との間で変化する。なお、図4(a)、(b)では、撮像ユニット1,2の撮影範囲101,102、201,202は、その大きさがその時の撮影レンズ1a,2aの画角を表すように描かれている。撮影者は、表示装置14に表示されるスルー画像を見て、画像中の被写体の大きさの変化、即ち画角の変化を視認することができる。
【0033】
他方、撮影モード切換スイッチ15cの操作によって第2の撮影モードに切り換えると、図3に示したように、撮像ユニット1,2の撮影範囲11S,12Sが一部重複した状態で、撮影範囲11S,12Sに対応する合成画像の画角は拡大される。
この状態で、ズームスイッチ15bを操作して撮影レンズ1a,2aの焦点距離を変更調節すると、それに応じて撮影範囲11S,12Sが縮小又は拡大する、即ち、画角が増減する。この焦点距離の調節と同時に、カメラ制御部10は、駆動モータ21を駆動して撮像ユニット1,2の傾斜量を調節して撮影範囲11S,12Sの重複量1Tを調節する。撮影者は、表示装置14に表示されるスルー画像を見て、画像中の被写体の大きさの変化、即ち画角の変化を視認することができる。
【0034】
このように、第2の撮影モードにあっては、画角は、第2の撮影モードに切り換った時にパノラマ合成画像の画角に変化すると共に、その後の撮影レンズ1a,2aの焦点距離調節に伴って変化する。この第2の撮影モードの場合も、撮影者は、表示装置14に表示されるスルー画像を見て、被写体の大きさの変化、即ち画角の変化を視認することができる。
【0035】
以上説明したように、第1の撮影モードでは、画角は、撮影レンズ1a,2aの焦点距離の調節に伴って変化し、第2の撮影モードでは、画角は、第2の撮影モードへの切換え、即ち、撮像素子1b,2bの90°回転に伴って変化すると共に、撮影レンズ1a,2aの焦点距離の調節に伴って変化する。そして、第1の撮影モード時の画角の変化範囲、即ち調節範囲と第2の撮影モード時の画角の変化範囲、即ち調節範囲とは、一部オーバーラップしている。
そこで、この画角のオーバーラップを利用して、第1の撮影モードの画角調節範囲と第2の撮影モードの画角調節範囲とを滑らかに接続して第1の撮影モードの最小画角から第2の撮影モードの最大画角まで連続的に画角を変化させることができる。
【0036】
以下にこの連続画角調節の動作を説明する。
撮像素子1b,2bは、その長辺と短辺とのアスペクト比が√2:1のものが使用される。第1の撮影モードにおいて、撮影レンズ1a,2aが最長焦点距離端、即ち望遠端に位置している状態で、ズームスイッチ15bのズームダウンボタン15b2を操作し続けると、撮影レンズ1a,2aは焦点距離が連続的に小さくなり、従って画角は逆に連続的に大きく変化し、ついに最短焦点距離端、即ち広角端に達する。
【0037】
図5は、撮影レンズ1a,2aが望遠端に位置するときの撮影範囲301,302を示したもので、この撮影範囲は、長辺が√2×a、短辺がaである。
図6は、撮影レンズ1a,2aが広角端に位置するときの撮影範囲401,402を示したもので、この撮影範囲は、長辺が√2×b、短辺がbである。
【0038】
更に、引き続きズームダウンボタン15b2を操作し続けていると、図示無きセンサーが撮影レンズ1a,2aの広角端への到達を検出し、カメラ制御部10は、このセンサーの検出信号に応じて、AF・ズーム用モータ1c,2cのズームモータを所定量逆回転させて撮影レンズ1a,2aをその最短焦点距離端から所定量だけ長い所定の焦点距離まで戻すと同時に、撮像素子回転用モータ1d,2dを起動して撮像素子1b,2bを90°回転させ、且つ駆動モータ21を起動して撮像ユニット1,2をそれぞれ+y方向に所定量傾斜させる。
【0039】
図7は、撮影レンズ1a,2aが上記の所定の焦点距離に戻された時の第1の撮影モードにおける撮影範囲501,502を示したものである。この撮影範囲は長辺がb、短辺がb/√2である。
【0040】
図8は、撮影レンズ1a,2aが上記の所定の焦点距離に調節された状態での第2の撮影モードにおける撮影範囲501,50を示したものである。これらの合成の撮影範囲501,502は、長辺が√2×b、短辺がbとなり、図6に示した第1の撮影モードにおける撮影レンズ1a,2aが広角端に位置している時の撮影範囲401,402とほぼ同一である。したがって、第1の撮影モードの合成画像と第2の撮影モードの合成画像では、それぞれの画角の縦横とも同じ比率になるので、2つの合成画像が見やすくなる。
【0041】
その後に、更にズームダウンボタン15b2を操作し続けると、撮影レンズ1a,2aの焦点距離が短くなり、それに応じて撮像ユニット1,2の傾斜量が変化して、図8の撮影範囲の一部重複を維持しながら合成の撮影範囲が徐々に大きくなり、ついに撮影レンズ1a,2aが最短焦点距離端、即ち広角端に達する。
上述のように、第1の撮影モードから第2の撮影モードに切り替わる時に、図6に示した第1の撮影モードの撮影範囲401,402と図8に示した第2の撮影モードの合成の撮影範囲501,502とがほぼ同一になるので、表示装置14に表示されるスルー画像の被写体画像がスムーズに切り換る。
【0042】
なお、第2の撮影モードにおいてズームアップボタン15b1を操作し続けた場合には、上述と逆の経路を辿り、撮影レンズ1a,2aの焦点距離が連続的に長くなり、途中で自動的に第1の撮影モードに切り替わり、再び撮影レンズ1a,2aの焦点距離が連続的に長くなり、ついに最長焦点距離端に達する。この時も第2の撮影モードから第1の撮影モードに切り換わる際の第2の撮影モード時の撮影範囲と第1の撮影モード時の撮影範囲とがほぼ同一であるので、スルー画像はスムーズに切り換る。
【0043】
以上のように、第1の撮影モードにおいてズームダウンボタン15b2を操作し続けると、自動的に、即ち、撮影モード切換スイッチ15cを操作すること無しに、第1の撮影モードから第2の撮影モードに移行する。
逆に、第2の撮影モードにおいて、ズームアップボタン15b1を操作し続けると、自動的に、即ち、撮影モード切換スイッチ15cを操作すること無しに、第2の撮影モードから第1の撮影モードに移行する。
こうして、撮影画像合成装置100は、第1の撮影モードと第2の撮影モードとを組み合わせることによって、各撮影レンズ1a,2aの焦点距離の調節範囲、即ち画角の調節範囲よりももっと大きな画角の調節範囲を得ることができる。
【0044】
上記の実施の形態では、カメラ制御部10が撮像ユニット1,2の焦点調節を行う。第1の撮影モードのように撮像ユニット1,2の撮影範囲が合致、即ち大部分が重複している場合は、これら2つのスルー画像データを用いて各画像間の位置ズレ量を求め、該位置ズレ量と、対応する撮像ユニット間の光学距離とに基づいてAFを行う。また、第2の撮影モードのように撮像ユニット1,2で取得された2枚の画像の撮影範囲がほとんど重複していない場合は、カメラ制御部10は、撮像素子1bまたは2bの撮像面上でのスルー画像データを用いてコントラスト検出方式によりAFを行う。
【0045】
第1の撮影モードと第2の撮影モードとの切換えの時には、撮像素子1b,2bの回転動作や撮像ユニット1,2の傾斜動作が行われるので、表示装置14に表示されるスルー画像が大きく乱れる恐れがある。そこで、このスルー画像の乱れを防止する為に、第1の撮影モードと第2の撮影モードとの切換時に切換え直前のスルー画像を一時的にバッファメモリなどに記憶させて、撮像素子1b,2bの回転動作や撮像ユニット1,2の傾斜動作の間は、その記憶したスルー画像を表示装置14に表示し、第1又は第2の撮影モードへの切換えが完了した後に、切換え後の撮影モードでのスルー画像を表示装置14に表示する。これにより、僅かなタイムラグはあるものの、画角の異なる画像の表示切換えがスムーズとなる。
本発明は、その特徴を損なわない限り、以上説明した実施の形態に何ら限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1,2:撮像ユニット 1a,2a:撮影レンズ
1b,2b:撮像素子 1c,2c:AF・ズーム用モータ
1d,2d:撮像素子回転用モータ 10:カメラ制御部
11:画像処理部 15:操作部材
15c:モード切換えスイッチ 21:駆動モータ
100:撮影画像合成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮影光学系と第1の撮像素子とを有し、撮影方向を調節するために傾斜可能に支持された第1の撮像ユニットと、
第2の撮影光学系と第2の撮像素子とを有し、撮影方向を調節するために傾斜可能に支持され、前記第1の撮像ユニットと同一の長方形状の撮影範囲を有する第2の撮像ユニットと、
前記第1および第2の撮像ユニットの隣接する撮影範囲が互いに少なくとも一部重複するように、前記第1および第2の撮像ユニットの各々の傾斜量を変更する傾斜量変更手段と、
前記第1および第2の撮像素子を入射光軸廻りに回転させる撮像素子回転手段と、
前記第1および第2の撮像素子の各出力画像から1つの合成画像を生成する合成手段と、を備え、
前記第1および第2の撮像ユニットの各々の撮影範囲を合致させて撮影を行う第1の撮影モードと、
前記撮像素子回転手段により前記第1および第2の撮像素子を前記第1の撮影モードの状態から90°回転させ、前記傾斜量変更手段により前記第1および第2の撮像ユニットの撮影範囲が一部重複するように前記第1および第2の撮像ユニットの傾斜量を変更して撮影を行う第2の撮影モードと、を有することを特徴とする撮影画像合成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮影画像合成装置において、
前記第1の撮影モードの合成画像および前記第2の撮影モードの合成画像とが相似となるように、前記第1および第2の撮像ユニットの各々の撮影範囲の縦横比を設定することを特徴とする撮影画像合成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撮影画像合成装置において、
外部操作によって前記合成画像の撮影画角を設定する画角設定手段と、
前記画角設定手段の操作に応じて前記撮影画角を制御する画角制御手段と、を更に備え、
前記第1及び第2の撮影光学系の各々は、第1の画角とこれよりも大きな第2の画角との間で画角を調整可能なズーム光学系であり、
前記画角設定手段が前記撮影画角を前記第1の画角と前記第2の画角との間の所定の画角に設定した場合には、前記画角制御手段は、前記第1の撮影モードにおいて前記第1及び第2の撮影光学系の各々を前記所定の画角に調整し、
前記画角設定手段が前記撮影画角を前記第2の画角よりも大きな第3の画角に設定した場合には、前記画角制御手段は、前記第2の撮影モードにおいて前記第1及び第2の撮像ユニットの撮影範囲を一部重複させることによって前記第3の画角を得ることを特徴とする撮影画像合成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮影画像合成装置において、
前記画角設定手段が前記合成画像の撮影画角を前記所定の画角から前記第3の画角まで連続的に設定した場合に、前記画角制御手段は、前記第1の撮影モードで前記第1及び第2の撮影光学系の各々を前記所定の画角から前記第2の画角まで調整した後に、前記第1及び第2の撮影光学系の各々を前記第2の画角からそれより小さな画角に戻すと共に、前記撮像素子回転手段によって第1及び第2の撮像素子の各々を90°回転させ、かつ前記傾斜量変更手段によって前記第1及び第2の撮像ユニットの撮影範囲を一部重複させ、その後に前記第1及び第2の撮影光学系の画角を大きく調整することによって前記第3の画角を得ることを特徴とする撮影画像合成装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮影画像合成装置において、
前記第1および第2の撮像ユニットは、第1および第2の撮影光学系の焦点を調節するための第1および第2の焦点調節機構をそれぞれ有し、
前記焦点調節機構は、前記第1の撮影モードでは、前記第1および第2の撮像素子の出力画像の位相差に基づいて焦点調節を行い、前記第2の撮影モードでは、前記第1および第2の撮像素子のいずれかの出力画像のコントラストに基づいて焦点調節を行うことを特徴とする撮影画像合成装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の撮影画像合成装置において、
前記第1の撮影モードの合成画像および前記第2の撮影モードの合成画像を表示する表示装置を更に備え、
前記表示装置は、前記第1の撮影モードと第2の撮影モードとの間で移行する場合、移行後の合成画像を表示するまでは移行前の合成画像を表示することを特徴とする撮影画像合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−48283(P2011−48283A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198645(P2009−198645)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】