説明

撮影装置

【課題】 人物撮影時に、簡易な露出制御を行って撮影画像の画質の劣化を防止することが可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】 ROM65には、人物撮影モード以外の撮影モードにて画像データの階調変換処理にて使用される通常γ変換テーブル65bと、人物撮影モードにて使用され、通常γ変換テーブル65cよりも階調変換処理後の画像データのダイナミックレンジを広くする広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cとが記憶されている。CPU40は、撮影モードダイヤル28によってポートレートモードが選択された場合、AE検出部64によって算出された適正な露出値よりも、露出値をアンダーに設定して被写体を撮像させる。その後、CPU40は、画像処理部61を制御して、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cによって、画像データに対してγ変換処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物撮影時に、撮影画像の画質が劣化することを防止した撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影装置として、被写体像を光電変換によって撮像する撮像手段(例えば、CCDイメージセンサ)を備えたデジタルカメラが一般に普及している。しかしながら、このようなデジタルカメラでは、銀塩カメラと比べてダイナミックレンジが狭く、撮影画像は、暗く、階調の乏しい画像となる。このため、低輝度の被写体を撮像する場合、撮像手段から出力される撮像信号を一定の倍率で増幅(ゲインアップ)して、明るく、階調豊かな撮影画像を得ている。しかし、高輝度の被写体を撮像した場合、再現可能な階調幅以上に撮像信号が増幅されてしまい、いわゆる「白飛び」が撮影画像に発生するので、被写体に輝度が高い部分と低い部分とがある場合には適さない。
【0003】
このような問題を解決するために、異なる露光時間で複数回の撮影を実行し、これらの複数の撮影画像を合成することにより、撮像信号のダイナミックレンジを見かけ上拡大する撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、撮像手段により取得された撮影画像の輝度の階調値に応じてγ変換テーブルを決定した後、このγ変換テーブルに基づいて、主要被写体に相当する低輝度域は、階調値の出入力特性の傾きが大きくなるように階調値を変換し、高輝度域は出入力特性の傾きが小さくなるように階調値を変換する撮影装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−7336号公報
【特許文献2】特開2004−363726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の撮影装置は、露出を変更した同一シーンを連続して撮影した後、これらの画像を合成するため、人物等の動きのある被写体に対しては向いていない。また、上記特許文献2に記載の撮影装置は、高輝度情報から判断してγ変換テーブルを変更するが、何処を適正露出にするかを判断する必要があり、露出制御が複雑となって処理速度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、人物撮影時に簡易な露出制御によって撮影画像の画質の劣化を防止することが可能な撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の撮影装置は、人物撮影モードを含む複数の撮影モードを有し、被写体を撮像する撮像手段によって撮像された画像データを記録する撮影装置であり、前記複数の撮影モードから撮影モードを選択するモード選択手段と、前記人物撮影モード以外の撮影モードにおける前記画像データの階調変換処理にて使用される第1γ変換テーブルと、前記人物撮影モードにて使用され、前記第1γ変換テーブルよりも階調変換処理後の前記画像データのダイナミックレンジを広くする第2γ変換テーブルとが記憶された記憶手段と、前記第1γ変換テーブルまたは前記第2γ変換テーブルによって前記画像データに対して階調変換処理を施す画像処理手段と、前記画像データの輝度値に基づいて測光を行って、最適な露出値を算出するAE検出手段と、前記モード選択手段によって前記人物撮影モードが選択された時に、前記画像処理手段を制御して、前記AE検出手段によって算出された前記最適な露出値よりも露出値をアンダーに設定して撮像された画像データに対して、前記第2γ変換テーブルを使用して階調変換処理を施す制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記人物撮影モードが選択された場合、前記第2γ変換テーブルを用いて前記画像データに対して階調変換処理を施すことにより、被写体中心付近における輝度が不足する部分の輝度値が補正されることを特徴とするものである。
【0008】
さらに、画像を表示する表示手段を備え、前記人物撮影モードが選択された場合、シャッタボタンが半押しされていない時には、前記制御手段は、前記最適な露出値によって前記被写体を撮像した画像データに対して、前記第1γ変換テーブルによって階調変換処理を施したスルー画を前記表示手段に表示させ、前記シャッタボタンが半押しされた時に、前記最適な露出値よりも露出値をアンダーに設定して前記被写体を撮像した画像データに対して、前記第2γ変換テーブルによって階調変換処理を施したスルー画を前記表示手段に表示させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撮影装置によれば、人物撮影モードが選択された時に、最適な露出値よりも露出値をアンダーに設定して撮像された画像データに対して、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブルを使用して階調変換処理を施すため、人物を撮影した時に、被写体中心である顔付近の階調が滑らかになり、「白飛び」を防止することができる。また、簡易な露出制御によって「白飛び」を防止することができるため、従来のように複雑な露出制御を行う場合と比べて、露出制御に必要な処理速度を短縮することができる。
【0010】
また、人物撮影モードが選択された場合、シャッタボタンが半押しにされていない時には、最適な露出値によって被写体を撮像した画像データに対して、第1γ変換テーブルによって階調変換処理を施したスルー画を表示手段に表示させ、シャッタボタンが半押しされた時に、最適な露出値よりも露出値をアンダーに設定して被写体を撮像した画像データに対して、第2γ変換テーブルによって階調変換処理を施したスルー画を表示手段に表示させるので、撮影モードを変更する操作を行った時には、露出値が変更されない。このため、表示手段に表示されたスルー画に露出のちらつきが発生することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示すデジタルカメラ10は、カメラ本体11の前面に、スライド操作可能なレンズバリア12を備えている。このレンズバリア12を開放位置(図1に示す位置)にスライドさせることによって、撮影レンズ13、ストロボ発光部14が前面に露呈される。また、カメラ本体11の前面には、光学ファインダを構成するファインダ対物窓15が設けられている。
【0012】
前述のレンズバリア12は、電源操作部材を兼用しており、前述の開放位置にスライド操作された時に、カメラ本体11の電源がONとなり、撮影レンズ13及びストロボ発光部14が遮蔽される遮蔽位置にスライド操作された時に、カメラ本体11の電源がOFFとなる。
【0013】
また、図2に示すように、カメラ本体11の背面には、LCD16、光学ファインダを構成するファインダ接眼窓17、複数の操作部材で構成される操作部18が設けられている。LCD16は、スルー画、再生画像、及び各種設定画面等を表示する。
【0014】
操作部18は、切替スイッチ21、戻しボタン22、送りボタン23、ズームボタン24、メニューボタン25、キャンセルボタン26、表示ボタン27、及び撮影モードダイヤル28で構成されている。
【0015】
切替スイッチ21は、撮影モードと再生モードとの間でモードを切り替える際に、スライド操作される。また、送りボタン23及び戻しボタン22は、再生モードにおいて、再生画像を順送り及び逆送りする際に、押圧操作される。ズームボタン24は、光学撮影倍率を変更する際に、上下方向に押圧操作される。
【0016】
メニューボタン25は、メニュー画面をLCD16に表示させる際に押圧操作される。また、キャンセルボタン26は、メニュー画面内での各種設定操作を途中でやめる場合や、前画面に戻す場合に押圧操作される。表示ボタン27は、LCD16のON,OFFを切り替える際に押圧操作される。
【0017】
また、デジタルカメラ10は、撮影モードとして、例えば、手ぶれ軽減モード、ポートレートモード(人物撮影モード)、風景撮影モード、夜景撮影モード、及びナチュラルフォトモード(高感度撮影モード)が設けられている。撮影モードダイヤル28は、撮影モードを選択するモード選択手段であり、これらの撮影モードのうち、所望の撮影モードを選択する際に回転操作される。
【0018】
前述のポートレートモードとは、人物を撮影する際に選択される撮影モードであり、後述するように、露出値をアンダー(例えば、0.6EV分アンダー)にして、さらに、γ変換テーブルを変更して、画像データに対してγ変換処理を施すことによって、その他の撮影モードよりも広いダイナミックレンジで撮影することが可能である。
【0019】
また、カメラ本体11の上面には、シャッタボタン29が設けられている。このシャッタボタン29は、半押しと、この半押しからさらに押し込んだ全押しとの2段階で押圧操作可能となっている。シャッタボタン29が半押しにされると、露光調節や焦点調節等の各種撮影準備処理が実行され、シャッタボタン29が全押しにされると、撮影処理が実行される。
【0020】
カメラ本体11の側面には、メモリカードスロット30が設けられている。このメモリカードスロット30には、画像データが記録される記録媒体であるメモリカード31が着脱自在に装填される。
【0021】
次に、デジタルカメラ10の電気的構成について説明する。図3に示すように、デジタルカメラ10は、カメラ全体の制御を行うCPU40を備えており、このCPU40には、前述の操作部18及びスイッチ部41が接続されている。CPU40は、操作部18を構成する各操作ボタン21〜28が操作された時に、各操作ボタン21〜28から操作信号を取得して、各操作信号に対応する処理を実行する。
【0022】
スイッチ部41は、シャッタボタン29の押圧操作に連動してON/OFFされるシャッタスイッチS1,S2からなる。シャッタスイッチS1は、シャッタボタン29が半押しされた時にONとなり、シャッタスイッチS2は、シャッタボタン29が半押し状態からさらに押し込まれて全押しされた時にONとなる。これらのシャッタスイッチS1,S2がONになった時に、ON信号がCPU40に送信される。CPU40は、シャッタスイッチS1がONにされた時に、各種撮影準備処理を実行し、シャッタスイッチS2がONにされた時に、撮影処理を実行する。
【0023】
撮影レンズ13は、ズームレンズ42、絞り43、フォーカスレンズ44、及びメカニカルシャッタ装置45を備え、さらに、ズームレンズ42を駆動するモータ46と、絞り43を駆動するモータ47と、フォーカスレンズ44を駆動するモータ48とが組み込まれている。
【0024】
モータ46は、ドライバ49を介してCPU40に接続されている。CPU40は、操作部18のズーム操作に応じて、ドライバ49を制御してモータ46を駆動させる。これにより、ズームレンズ42が光軸方向に移動して、光学撮影倍率が変更される。
【0025】
また、モータ47は、ドライバ50を介してCPU40に接続されている。CPU40は、ドライバ50を制御してモータ47を駆動させる。これにより、絞り43の開口径が変更されて、撮影レンズ13の背後に配置されたCCDイメージセンサ53に入射する被写体光の光量を調節される。この絞り43は、シャッタボタン29の押圧を解除しているときのスルー画撮影時では、被写体輝度の変化に応じて絞りの開口径が調節される。また、シャッタボタン29を半押しとした時点で、その半押しに応答して行われるAE処理で決定された絞り値(Fナンバー)に対応する開口径に設定される。
【0026】
モータ48は、ドライバ51を介してCPU40に接続されている。CPU40は、ドライバ51を制御してモータ48を駆動させる。これにより、フォーカスレンズ44が光軸方向に移動され、焦点調節が行われる。このフォーカスレンズ50によるピント合せは、撮影モードにおいて、シャッタボタン29が押圧されていない場合、被写体距離の変化に追従するように常に行われ、シャッタボタン29が半押しされると、その半押し時点の被写体にピントが合致した位置で固定される。
【0027】
また、メカニカルシャッタ装置45は、ドライバ52を介してタイミングジェネレータ54に接続されている。このタイミングジェネレータ54は、CPU40に接続されており、CPU40は、タイミングジェネレータ54を制御して、ドライバ52からメカニカルシャッタ駆動信号を出力させる。メカニカルシャッタ装置45は、このメカニカルシャッタ駆動信号によって動作する。メカニカルシャッタ装置45は、通常はシャッタ羽根を開いた状態とされており、CCDイメージセンサ53の露光完了時にシャッタ羽根を閉じて、CCDイメージセンサ53への被写体光の入射を阻止してスミアの発生を防止する。なお、本実施形態において、メカニカルシャッタ装置45を用いているが、メカニカルシャッタ装置45を省略しても良い。
【0028】
前述したように、撮影レンズ13の背後には、CCDイメージセンサ53が配されており、撮影レンズ13を透過した被写体光がCCDイメージセンサ53の受光面に入射する。CCDイメージセンサ53は、タイミングジェネレータ54からの各種駆動信号により駆動され、撮影した被写体像をアナログの撮影信号として出力する。
【0029】
このCCDイメージセンサ53は、タイミングジェネレータ54からの電子シャッタパルスが入力されることにより、それまでに蓄積した電荷を掃き出して消去することで、実質的な電荷蓄積時間を調節する電子シャッタ機能を有しており、電子シャッタパルスの入力期間を調節することで電子シャッタのシャッタ速度(以下、電子シャッタ速度という)が調節される。撮影モードにおいて、シャッタボタン29が全押しされると、CCDイメージセンサ53は、露光によって蓄積された電荷を読み出して撮影信号として出力する。
【0030】
CCDイメージセンサ53は、アナログ信号処理部55に接続されており、CCDイメージセンサ53からの撮影信号は、アナログ信号処理部55に送られる。アナログ信号処理部55は、相関二重サンプリング回路(CDS)56,AMP57,A/D変換器58から構成されており、タイミングジェネレータ54からの同期パルスが入力されることで、CCDイメージセンサ53の電荷読み出し動作と同期して作動する。
【0031】
CDS56は、相関二重サンプリングを行うことによって撮影信号からノイズの除去を行う。AMP57は、CPU40によって設定される撮影感度に応じたゲインで撮影信号を増幅する。A/D変換器58は、AMP57からの撮影信号をデジタル変換して画像データとして出力する。
【0032】
A/D変換器58から出力された画像データは、画像入力コントローラ59に送られる。画像入力コントローラ59は、バス60への画像データの入力を制御する。バス60には、CPU40,画像入力コントローラ59、画像処理部61、圧縮伸長処理部62、AF検出部63、AE検出部64、ROM65、RAM66、メディアコントローラ67、及びLCDドライバ68が接続されている。CPU40は、バス60を介してこれらを制御するとともに、相互間でデータの授受が可能である。
【0033】
画像処理部61は、画像データに対して、γ変換処理(階調変換処理)やYC変換処理等の各種画像処理を施す。圧縮伸長処理部62は、画像データに対して圧縮処理を施す。また、この圧縮伸長処理部62は、再生モードにおいて、メモリカード31から読み出した圧縮された画像データに対して伸長処理を施す。
【0034】
AF検出部63は、撮影レンズ13のピント合せのために、画像入力コントローラ59から出力される画像データを用いて撮影中の画像のコントラストを検出し、そのコントラスト情報をCPU40に送る。CPU40は、コントラスト情報を参照し、撮影中の画像のコントラストが最大となるように、ドライバ51を制御してモータ48を駆動する。
【0035】
AE検出部64は、画像入力コントローラ59からの画像データに基づいて、中央重点測光を行う。つまり、画像の中央部の重み付けが大きくなるように、各画素の輝度の階調値に重み付け係数をかけてAE積算値を求めることによって測光を行う。なお、測光方式は、中央重点測光に限るものではなく、スポット測光等で行っても良い。その後、AE検出部64は、現在の露出値に基づいて、このAE積算値の平均と目標輝度値との差から適正露出値を演算し、この適正露出値をCPU40に出力する。
【0036】
CPU40は、AE検出部64から適正露出値を取得する。ポートレートモード以外の撮影モードに設定されている場合、この適正露出値に基づいて、後述するプログラム線図から絞り値(Fナンバー)及び電子シャッタ速度を決定する。また、撮影モードがポートレートモードに設定されている場合、露出値を前述の適正露出値から0.6EV分アンダーに設定する。
【0037】
ROM65は、例えば、データの書き換えが可能なフラッシュメモリ(FROM)が用いられている。このROM65には、図4に示すように、CPU40が各部を制御するための制御用プログラムと、電子シャッタ速度と絞り値との組み合せを決定するための複数のプログラム線図に対応する露出制御用プログラムとからなるプログラム65aが記憶されている。さらに、このROM65は、通常γ変換テーブル(第1γ変換テーブル)65bと、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル(第2γ変換テーブル)65cとが記憶された記憶手段である。
【0038】
通常γ変換テーブル65bは、ポートレートモード以外の撮影モード、すなわち、手ぶれ軽減モード、風景撮影モード、夜景撮影モード、及びナチュラルフォトモードで用いられるγ変換テーブルである。広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cは、撮影モードがポートレートモードに設定されている時に用いられるγ変換テーブルである。
【0039】
RAM66は、例えば、高速な読み出しと書き込みが可能なSDRAMが用いられている。このRAM66には、プログラム65aと、通常γ変換テーブル65bと、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cと、LCD16に表示するための表示用画像データ、及びメモリカード31に記録するための記録用画像データ等の画像データとが一時的に記憶される。
【0040】
CPU40は、図4に示すように、プログラム65aと、通常γ変換テーブル65bと、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cとを一時的にRAM66に記憶させる。CPU40は、撮影モードダイヤル28から取得した操作信号に対応する撮影モードに設定する。撮影モードがポートレートモード以外の撮影モードに設定されている場合、CPU40は、γ変換テーブルとして通常γ変換テーブル65bを設定し、この通常γ変換テーブル65bに基づいて画像処理部61を制御し、画像データに対してγ変換処理を施す。
【0041】
また、撮影モードがポートレートモードに設定されている場合、γ変換テーブルとして広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cを設定し、このγ変換テーブル65cに基づいて画像処理部61を制御し、画像データに対してγ変換処理を施す。
【0042】
図5は、通常γ変換テーブル65bを示しており、図6は、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cを示している。図5及び図6において、横軸は、入力輝度値、すなわち、AD変換後の輝度の階調値(14bit)であり、縦軸は、出力輝度値、すなわち、γ変換後の輝度の階調値(8bit)である。つまり、AD変換が施された画像データは、γ変換処理によって、輝度の階調が14bitの画像データから8bitの画像データに変換される。
【0043】
ポートレートモードでは、前述したように、露出値が適正露出よりも0.6EV分アンダーとなるように設定される。例えば、ポートレートモード以外の撮影モードにて用いられる適正露出が6EVである場合、ポートレートモードでは、露出値が6.6EVに設定され、図7に示すプログラム線図に基づいて、絞り値(Fナンバー)及び電子シャッタ速度を設定する。その後、撮像された画像データに対して、図6に示すγ変換テーブル65cによってγ変換処理を施す。
【0044】
図6において、前述の目標輝度値をPとし、ポートレートモードにおいて露出値を補正した後の目標輝度値Pに対応する輝度値をP2とする。この時、入力輝度値0から目標輝度値P1までの階調幅をA1、目標輝度値P1から入力輝度値16383までの階調幅をB1とし、入力輝度値0から輝度値P2までの階調幅をA2、輝度値P2から入力輝度値16383までの階調幅をB2とすると、(B1/A1):(B2/A2)=100:150にされており、ポートレートモード以外の撮影モードでのダイナミックレンジを100%とすると、ポートレートモードでは、ダイナミックレンジが150%となる。
【0045】
前述したように、ポートレートモードにおいて、露出値を適正露出値よりも0.6EV分アンダーとなるように設定する。さらに、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cは、通常γ変換テーブルよりも、輝度値P2付近での入出力特性の傾きが大きくされている。このため、輝度値P2の近傍で輝度の足りない部分の階調が、このγ変換テーブル65cによって持ち上げられるので、輝度値P2の近傍における階調値の変化がなだらかになる。これにより、従来は、人物撮影時に、顔の額部分で「白飛び」が発生することが多かったが、このようなポートレートモードで人物を撮影した場合、額部分の階調がなだらかになり、「白飛び」の発生を防止することができる。
【0046】
メディアコントローラ67は、メモリカード31のデータの書き込み及び読み出しを制御する。画像データは、画像処理部61、圧縮伸長処理部62によって画像処理及び圧縮処理が施されてから、メディアコントローラ67に送られて、メモリカード31に書き込まれる。また、再生時には、メディアコントローラ67によってメモリカード31に記録されている画像データが読み出された後、圧縮伸長処理部62に送られて、画像データに対して伸長処理が施された後、RAM66に一時的に記憶される。
【0047】
LCDドライバ68は、RAM66から画像データを読み出し、その画像データに基づいてLCD16を駆動する。これにより、LCD16には、CCDイメージセンサ53で撮影中の被写体画像やメモリカード31から読み出された画像が表示される。
【0048】
次に、上記構成のデジタルカメラの撮影処理について、図8及び図9を用いて説明する。デジタルカメラ10の電源がONにされ、撮影モードに設定されると、CPU40は、LCDドライバを制御して、通常のスルー画をLCD16に表示させる。この通常のスルー画とは、通常のγ変換テーブル65bを用いてγ変換処理を施した画像であり、通常ダイナミックレンジ(100%)の画像である。このスルー画は、所定の間隔で撮像された画像であり、これらの画像が連続してLCD16に表示される。
【0049】
その後、CPU40は、スイッチS1がONにされたか否かを判定する。スイッチS1が、ONにされていないと判定された場合、通常のスルー画を表示する処理に戻る。また、スイッチS1がONにされたと判定された場合、AE処理及びAF処理を行う。このAE処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
最初に、CPU40が、AE検出部64を制御することによって、中央重点方式で測光させる。AE検出部64は、現在の露出値に基づいて、AE積算値の平均と目標輝度値との差から、これらが一致する露出値を演算する。その後、この露出値を適正露出値として、CPU40に出力する。
【0051】
その後、CPU40は、ポートレートモードに設定されているか否かを判定する。ポートレートモードに設定されていないと判定された場合、CPU40は、各撮影モードに対応するプログラム線図を用いて、前述の適正露出値に対応する絞り値及び電子シャッタ速度を決定する。
【0052】
また、ポートレートモードに設定されていると判定された場合、前述の適正露出値をアンダーに補正し、図7に示すプログラム線図に基づいて、補正後の露出値(例えば、0.6EV分アンダーに修正した露出値)に対応する絞り値及び電子シャッタ速度を決定する。
【0053】
その後、CPU40は、決定された絞り値及び電子シャッタ速度に基づいて、絞り及びCCDイメージセンサを制御する。これにより、AE処理が終了する。
【0054】
また、前述のAE処理と並行して、AF処理が行われる。CPU40は、AF処理部63から画像のコントラスト情報を取得し、このコントラスト情報に基づいて、画像のコントラストが最大となるように、ドライバ51を制御してモータ48を駆動して、フォーカスレンズ44を合焦位置に移動させる。
【0055】
AE処理及びAF処理が行われた後、スイッチS1がONにされた状態(AE及びAFロック状態)において、CPU40は、撮影モードがポートレートモードに設定されているか否かを判定する。撮影モードがポートレートモードに設定されていない、つまり、他の撮影モードに設定されていると判定された場合、γ変換テーブルとして、通常γ変換テーブル65bを設定する。また、撮影モードがポートレートモードに設定されていると判定された場合、γ変換テーブルとして、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cを設定する。
【0056】
その後、CPU40は、画像処理部61を制御して、各γ変換テーブル65b,65cに基づいて、画像データに対してγ変換処理を施し、さらに、YC変換処理を施して、AE及びAFロック状態のLCD16に表示する。このAE及びAFロック状態のスルー画は、AE及びAFがロックされた状態で、所定の間隔で撮像された画像であり、スイッチS1がOFF、またはスイッチS2がONにされるまで、LCD16に連続して表示される。
【0057】
その後、CPU40は、スイッチS1がOFFにされたか否かを判定する。スイッチS1がOFFにされたと判定された場合、AE及びAFロックが解除される。その後、γ変換テーブルとして、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cが設定されている場合には、通常γ変換テーブル65bに変更して、通常のスルー画を表示する処理に戻る。
【0058】
スイッチS1がOFFにされていないと判定された場合、CPU40は、スイッチS2がONにされたか否かの判定を行う。スイッチS2がONにされていないと判定された場合、スイッチS1がOFFにされたか否かを判定する処理に戻る。また、スイッチS2がONにされたと判定された場合、前述のAE処理にて設定された絞り値及び電子シャッタ速度に基づいて、絞り43及びCCDイメージセンサ53を制御して、被写体像を撮像させる。
【0059】
CPU40は、アナログ処理部55を制御して、アナログ信号である撮像信号をデジタル信号の画像データとして出力させる。その後、CPU40は、撮影モードがポートレートモードに設定されているか否かを判定する。撮影モードがポートレートモードに設定されていない、すなわち、別の撮影モードに設定されていると判定された場合、γ変換テーブルとして、通常γ変換テーブル65bを設定する。また、撮影モードがポートレートモードに設定されていると判定された場合、γ変換テーブルとして、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65bを設定する。
【0060】
その後、CPU40は、画像処理部61を制御して、各γ変換テーブル65b,65cを用いて、画像データに対してγ変換処理を施す。さらに、画像処理部61は、画像データに対してYC変換処理を施す。CPU40は、LCDドライバ68を制御して、記録前の画像をLCD16にポストビュー表示させる。
【0061】
また、CPU40は、圧縮伸長処理部62を制御して、画像データに対して圧縮処理を施し、さらに、メディアコントローラ67を制御して、圧縮処理された画像データをメモリカード31に記録する。これにより、撮影処理が終了する。
【0062】
前述したように、シャッタボタン29が半押しされていない状態では、適正露出で撮像された画像データに対して、通常γ変換テーブル65bを使用してγ変換処理を施したスルー画をLCD16に表示させる。また、シャッタボタン29が半押しされた時に、露出を適正露出よりもアンダーに設定して撮像された画像データに対して、広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブル65cを使用してγ変換処理を施したスルー画をLCD16に表示させる。このため、撮影モードダイヤル28によって、撮影モードを変更する操作を行っても、露出値が変更されない。このため、LCD16に表示されたスルー画に露出のちらつきが発生することを防止できる。
【0063】
なお、上記実施形態において、モード選択手段として、撮影モードダイヤル28をカメラ本体11に設けた場合について説明したが、これに限るものではなく、LCD16に表示されたメニュー画面にて撮影モードを選択可能にしても良い。
【0064】
また、上記実施形態において、撮像手段として、CCDイメージセンサ53を用いた場合を例に説明したが、これに限るものではなく、例えば、CMOSイメージセンサを用いても良い。
【0065】
さらに、上記実施形態において、本発明をデジタルカメラに適用した場合を例に説明したが、これに限るものではなく、例えば、カメラ付き携帯電話等に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】デジタルカメラの前面側の構成を示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラの背面側の構成を示す斜視図である。
【図3】デジタルカメラの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】γ変換テーブルの設定の流れを示す説明図である。
【図5】通常γ変換テーブルを示す説明図である。
【図6】広ダイナミックレンジ用のγ変換テーブルを示す説明図である。
【図7】ポートレートモード用のプログラム線図を示す説明図である。
【図8】デジタルカメラの撮影処理を説明するフローチャートである。
【図9】デジタルカメラの撮影処理を説明するフローチャートである。
【図10】AE処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 デジタルカメラ
16 LCD
28 撮影モードダイヤル
29 シャッタボタン
16 LCD
40 CPU
53 CCDイメージセンサ
61 画像処理部
64 AE検出部
65 ROM
65a プログラム
65b 通常γ変換テーブル
65c 広ダイナミック用のγ変換テーブル
66 RAM
S1,S2 スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物撮影モードを含む複数の撮影モードを有し、被写体を撮像する撮像手段によって撮像された画像データを記録する撮影装置において、
前記複数の撮影モードから撮影モードを選択するモード選択手段と、
前記人物撮影モード以外の撮影モードにおける前記画像データの階調変換処理にて使用される第1γ変換テーブルと、前記人物撮影モードにて使用され、前記第1γ変換テーブルよりも階調変換処理後の前記画像データのダイナミックレンジを広くする第2γ変換テーブルとが記憶された記憶手段と、
前記第1γ変換テーブルまたは前記第2γ変換テーブルによって前記画像データに対して階調変換処理を施す画像処理手段と、
前記画像データの輝度値に基づいて測光を行って、最適な露出値を算出するAE検出手段と、
前記モード選択手段によって前記人物撮影モードが選択された時に、前記画像処理手段を制御して、前記AE検出手段によって算出された前記最適な露出値よりも露出値をアンダーに設定して撮像された画像データに対して、前記第2γ変換テーブルを使用して階調変換処理を施す制御手段とを備えていることを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
前記人物撮影モードが選択された場合、前記第2γ変換テーブルを用いて前記画像データに対して階調変換処理を施すことにより、被写体中心付近における輝度が不足する部分の輝度値が補正されることを特徴とする請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
画像を表示する表示手段を備え、前記人物撮影モードが選択された場合、シャッタボタンが半押しされていない時には、前記制御手段は、前記最適な露出値によって前記被写体を撮像した画像データに対して、前記第1γ変換テーブルによって階調変換処理を施したスルー画を前記表示手段に表示させ、前記シャッタボタンが半押しされた時に、前記最適な露出値よりも露出値をアンダーに設定して前記被写体を撮像した画像データに対して、前記第2γ変換テーブルによって階調変換処理を施したスルー画を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1または2記載の撮影装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−27967(P2007−27967A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204411(P2005−204411)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】