説明

操作忘れ防止システム

【課題】操作忘れの警告精度を高いものとすることができる操作忘れ防止システムを提供する。
【解決手段】車両1に操作忘れ(ドア施錠忘れ、窓閉め忘れ等)が発生している状況下で、電子キー2がリクエスト信号(キーID返信要求)の車外通信エリアから出た際、車両操作忘れの警告動作の実行要求が下りる。このとき、電子キー2は複数回に亘りUHFの位置確認信号Sknを発信する。車両1は、位置確認信号Sknを受信すると、これらの受信信号強度を算出し、受信信号強度の変化からユーザが車両1から離れて行っているか否かを推定する。そして、車両1は、その推定結果に基づく開始時刻に警告動作を開始し、例えばユーザが車両1から離れて行っている際には警告動作を早めに実行し、ユーザが車両1から離れて行っていない際には警告動作を遅めに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがその操作対象から離れる際に、例えばドア施錠等の操作をし忘れるなどして離れてしまうことを防止する操作忘れ防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のキーシステムとしては、例えばキーが持つ固有のIDコードを無線発信可能な電子キーを車両キーとして使用する電子キーシステムが広く使用されている。この電子キーシステムの一種には、例えば電子キーからIDコードを自動発信するキー操作フリーシステムがある。キー操作フリーシステムは、車両からリクエストを発信させ、電子キーがこのリクエストを受信すると、電子キーがIDコードを自動で発信してキー照合を実行させ、キー照合が成立すると、例えば車両ドアの施解錠やエンジンの始動等を許可又は実行するシステムである。
【0003】
ところで、例えば車両から慌てて降車するときなど、状況によっては車両ドアのドアロックを施錠し忘れたり或いは車両ドアの窓を閉め忘れたりしたまま車両から離れてしまう場合も想定される。このため、この種の車両操作忘れを防止する車両操作忘れ防止システムとして、例えばキー操作フリーシステムの通信機能を利用して車両操作忘れを防ぐ技術(特許文献1,2等参照)がある。この車両操作忘れ防止システムは、電子キーがリクエストの通信エリア内にいるか否かを監視し、電子キーがリクエストの通信エリアから出ると、一定時間後に車両のホーンやブザーを鳴らして、操作忘れをユーザに警告するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−213216号公報
【特許文献2】特開2008−95441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば車両の周辺近傍に置いてある物品を一時的に取りに降車するときなど、場合によってはリクエストの通信エリアから出る状態をとっても、これが一時的で車両から離れないこともある。この場合、背景技術で述べた技術の場合では、一時的に車両から離れるだけであるにも拘わらず、リクエストの通信エリアから出た後の一定時間後に車両のホーンやブザーが無条件で鳴ってしまうので、この警告が非常に煩わしく感じる問題があった。
【0006】
本発明の目的は、操作忘れの警告精度を高いものとすることができる操作忘れ防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信端末の操作対象から狭域無線通信により発信した応答要求信号に当該通信端末が応答するか否かを見ることで当該通信端末が前記応答要求信号の室外通信エリア内にいるか否かを監視し、前記操作対象で操作忘れがある場合に前記通信端末が前記室外通信エリアから出てしまうと、前記操作忘れをユーザに通知するために一定時間後に警告動作を実行する操作忘れ防止システムにおいて、前記通信端末が前記室外通信エリアから出た際に、位置確認に使用する位置確認信号を当該通信端末から数回に亘り発信させる発信制御手段と、複数の前記位置確認信号を受信した際、各々の当該位置確認信号においてその受信特性値を算出する受信特性値算出手段と、前記受信特性値の変化を基に、前記操作対象からの前記通信端末の離れ具合を推定し、その推定結果に応じた警告パラメータで前記警告動作を実行させる警告実行手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、通信端末が操作対象の室外通信エリアから抜け出た際、もし仮に操作対象で操作忘れが発生している場合には、その旨をユーザに通知すべく警告動作の実行要求が下りる。このとき、まずは通信端末から位置確認信号が数回に亘り発信され、操作対象がこの位置確認信号を受信すると、各々の位置確認信号においてその受信特性値が算出されるとともに、この受信特性値の変化によって操作対象からの通信端末の離れ具合、即ち操作対象からのユーザの離れ具合が推定される。そして、その推定結果に基づく警告パラメータに沿って警告動作が開始される。このため、ユーザの離れ具合に応じた最適な内容で警告動作を実行することが可能となる。
【0009】
本発明では、前記警告パラメータは、前記警告動作の開始時刻であることを要旨とする。
この構成によれば、操作対象からユーザが離れて行っている際には、警告動作が早めに実行され、操作対象からユーザがあまり離れて行っていない場合には、警告動作が遅めに実行される。よって、操作対象からのユーザの離れ具合に応じた好適なタイミングで警告動作が実行されるので、操作忘れの警告精度を高いものとすることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記警告パラメータは、前記警告動作時に発する警告音の大きさであることを要旨とする。
この構成によれば、操作対象からユーザが離れて行っている際には、警告動作が例えば大きな音で実行され、操作対象からユーザがあまり離れて行っていない場合には、警告動作が例えば小さな音で実行される。このため、操作対象とユーザとの間の距離に適した好適な音量で警告を実行することが可能となる。
【0011】
本発明では、前記操作対象及び前記通信端末の間で実行される前記狭域無線通信は、前記通信端末が前記応答要求信号に応答してキーコードを前記操作対象に発信することにより、当該キーコードを前記操作対象のものと照らし合わせるキー通信であることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、警告動作の開始時刻を推定する際に用いる無線通信として、無線式のキー照合で使用する無線通信を共通に使用する。このため、各々の機能ごとに専用の通信部品を用意せずに済むので、部品点数や部品コストの抑制を図ることが可能となる。
【0013】
本発明では、前記通信端末を電子キーとし、前記操作対象を車両とすることにより、当該システムが車両に採用されていることを要旨とする。
この構成によれば、車両操作忘れの警告動作を、より精度よく実行することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記警告実行手段は、前記通信端末が前記操作対象から離れて行っている際、前記警告動作を早めの開始時刻で実行し、前記ユーザが離れて行っていない際、前記警告動作を遅めの開始時刻で実行することを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、ユーザが操作対象から大きく遠く離れてしまう前に操作忘れの警告をユーザに通知することが可能となるので、より確実に操作忘れをユーザに通知することが可能となる。
【0016】
本発明では、前記警告動作の実行要求が下りて前記警告動作の実行を待つ際、当該実行要求を解除する解除条件が揃ったか否かを監視する監視手段と、前記解除条件が揃った際に、前記警告動作の実行を解除する解除手段とを備えたことを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、警告動作の実行要求が下りた際、この警告動作の開始を待つ間に、例えば通信端末が室外通信エリア内に再度進入するなどして、警告動作の実行要求を解除する解除条件が揃えば、警告動作の実行が解除される。ところで、通信端末が室外通信エリアに再度進入する可能性のある場合には、ユーザはその場から大きく移動する動作をとらないので、位置確認信号の受信特性値は小さい変化をとる。よって、通信端末が室外通信エリアに再進入する可能性がある場合、本構成を採用すれば、ユーザが操作対象の元に戻るにも拘わらず警告動作が実行されてしまう状況にならずに済む。よって、警告動作をより精度よく実行することが可能となり、システムとして機能性が高いものとなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両操作忘れの警告の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態における電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】車両操作忘れ防止システムの概略構成を示すブロック図。
【図3】車両からユーザが離れて行っている際のシステム状態を示す説明図。
【図4】車両からユーザが離れて行っていない際のシステム状態を示す説明図。
【図5】別例における車両操作忘れ防止システムの動作概要を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した操作忘れ防止システムの一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両キーとして電子キー2を使用する電子キーシステム3が設けられている。電子キー2は、自身が持つIDコード(キーコード)を無線信号によって車両1に発信することにより、車両1との間でキー照合を実行する車両キーの一種である。電子キーシステム3は、電子キー2から発信されたIDコードを車両1のものと照らし合わせてキー照合を行い、このキー照合が成立すれば、例えば車両ドアのドアロック施解錠やエンジン始動等を許可又は実行する。本例の電子キーシステム3は、車両1から発信されるID返信要求(リクエスト)を電子キー2が受信した際、これに応答する形で電子キー2がIDコードを自動で返信してキー照合を実行するキー操作フリーシステムが採用されている。なお、車両1が操作対象に相当し、電子キー2が通信端末に相当する。
【0021】
キー操作フリーシステムには、ドアロック施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムが設けられている。この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合(ID照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4が設けられている。照合ECU4には、車外にLF(Low frequency)帯(約130KHz)の信号を発信する車外LF発信機5と、車内に同じLF帯の信号を発信する車内LF発信機6と、RF(Radio Frequency)帯(約312MHz)の信号を受信可能なRF受信機7とが接続されている。また、照合ECU4には、ドアロック施解錠を制御するボディECU8が車内LAN(Local Area Network)9を介して接続されている。このボディECU8には、ドアロック施解錠時の駆動源としてドアロックモータ10が接続されている。
【0022】
一方、電子キー2には、電子キー2の各種動作を統括制御する通信制御部11が設けられている。この通信制御部11は、CPU12やメモリ13等の各種デバイスを持ち、電子キー2が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ13に登録されている。通信制御部11には、LF帯の無線信号を受信可能なLF受信機14と、RF帯の無線信号を発信可能なRF発信機15とが接続されている。通信制御部11は、LF受信機14でどの種の無線信号を受け付けたか否かを逐次監視するとともに、RF発信機15からの信号発信の動作を管理する。
【0023】
車両1が駐車状態の際、照合ECU4は、車外LF発信機5からキーコード返信要求としてLF帯のリクエスト信号Srqを断続的に発信させ、車両周辺にリクエスト信号Srqの車外通信エリア(室外通信エリア)を形成して、狭域無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立を試みる。電子キー2がこの通信エリアに入り込んでリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ13に登録されたIDコードを乗せたID信号SidをRF帯の信号で返信する。照合ECU4は、RF受信機7でID信号Sidを受信してスマート通信(車外通信)が確立すると、自身のメモリ16に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車外照合)を行う。照合ECU4は、この車外照合が成立したことを確認すると、ボディECU8によるドアロック施解錠動作を許可又は実行する。なお、リクエスト信号Srqが応答要求信号に相当する。
【0024】
また、キー操作フリーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン17の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。この場合、車内には、ワンプッシュエンジンスタートシステムの操作系としてエンジンスイッチ18が設けられている。このエンジンスイッチ18は、例えばプッシュモーメンタリ式をとるとともに、エンジン始動停止機能の他に、例えば電源遷移機能も割り当てられている。また、車両1には、エンジン17を統括制御するエンジンECU19と、各種車載電装品を制御する電源ECU20とが接続されている。これらECU19,20は、車内LAN9を介して照合ECU等の他のECUに接続されている。また、電源ECU20は、車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー21と、走行系の各種電装品に繋がる第1IG(Ignition)リレー22と、エンジンECU19やスタータリレーに繋がる第2IGリレー23に接続されている。
【0025】
そして、運転者の車内への乗車が例えばカーテシスイッチ24により確認されると、照合ECU4はそれまでの車外LF発信機5からではなく、今度は車内LF発信機6からリクエスト信号Srqを発信して、車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU4は、電子キー2がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたID信号SidをRF受信機7で受信してスマート通信(車内通信)が確立すると、自身に登録されたIDコードと電子キー2のIDコードとを照らし合わせてID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。照合ECU4は、この車内照合が成立したことを確認すると、エンジンスイッチ18によるエンジン始動操作及び電源遷移操作を許可する。
【0026】
これにより、例えばエンジン17が停止状態の際、ブレーキペダルが踏み込まれた状態でエンジンスイッチ18がプッシュ操作されると、それまで停止状態をとっていたエンジン17が起動状態に切り換わる。また、エンジン17が可動状態の際、セレクトレバーのレンジ位置が駐車位置(Pレンジ)の状態でエンジンスイッチ18がプッシュ操作されると、今度はエンジン17が停止状態に切り換わる。さらに、エンジン17が停止状態の際、ブレーキペダルは踏み込み操作されずにエンジンスイッチ18のみがプッシュ操作されると、このプッシュ操作の度に電源状態が電源オフ→ACCオン→IGオンの順に繰り返し切り換わる。
【0027】
図1及び図2に示すように、車両1及び電子キー2には、例えばドアロックの施錠忘れやドア窓の閉め忘れ等の車両操作忘れをユーザに通知する車両操作忘れ防止システム25が設けられている。本例の車両操作忘れ防止システム25は、車両1と電子キー2との間のスマート通信が確立するか否かを見ることにより電子キー2がリクエスト信号Srqの車外通信エリア内に存在するか否かを監視し、車両操作忘れが存在する状態で電子キー2がリクエスト信号Srqの車外通信エリアから出たことを確認すると、一定時間後に警告を発することにより、車両操作忘れをユーザに通知するシステムである。なお、車両操作忘れ防止システム25が操作忘れ防止システムに相当する。
【0028】
ボディECU8には、ドアロックが施錠及び解錠のうちどちらにあるのか検出するドアロックセンサ26が接続されている。ボディECU8は、照合ECU4からドアロック施解錠の実行要求を受け付けた際、ドアロックモータ10を駆動して施解錠動作を実行し、この施解錠実行時、ドアロックセンサ26から取得するセンサ出力を基に、施錠動作又は解錠動作の完了を確認する。また、ドアロックの施錠忘れは、ドアロックセンサ26からのセンサ出力を基に検出される。
【0029】
ボディECU8には、車両ドアの電動式のドア窓を開閉するときに操作するパワーウインドウスイッチ27が接続されている。ボディECU8は、パワーウインドウスイッチ27のスイッチ信号に基づきレギュレータ28を駆動することにより、ドア窓の開閉位置を切り換える。更に、ボディECU8には、ドア窓の開閉位置を検出する窓位置センサ29が接続されている。ボディECU8は、ドア窓を開閉する際、窓位置センサ29のセンサ出力を基にドア窓の開閉位置を確認する。また、ドア窓の閉め忘れは、窓位置センサ29からのセンサ出力を基に検出される。
【0030】
また、照合ECU4には、車両1の各種警告動作を管理するアラームECU30が車内LAN9を介して接続されている。アラームECU30は、照合ECU4からの動作指令を基に動作し、例えば照合ECU4から起動指令を入力すると、警報機器31を動作させて警告動作を実行する。また、警報機器31には、例えばホーン、ブザー、ヘッドライト、ハザード等がある。
【0031】
図2に示すように、電子キー2の通信制御部11には、電子キー2がリクエスト信号Srqの車外通信エリアから抜け出た際に、電子キー2を所持するユーザの位置を推定するのに必要となる位置確認信号SknをRF発信機15から発信させる位置確認信号発信部32が設けられている。位置確認信号発信部32は、LF受信機14でリクエスト信号Srqを受信できなくなると、電子キー2が車外通信エリア外に出たと認識し、位置確認信号Sknを車両1に向けてRF帯(UHF:Ultra High Frequency)の信号で発信する。この位置確認信号Sknは、同じ時間間隔をおいて複数回(本例は3回)繰り返し発信され、リクエスト信号Srqの車外通信エリアよりも広い範囲にまで飛ぶように発信される。また、位置確認信号Sknは、電子キー2のIDコードと、自身が位置確認信号Sknである旨を通知する機能コードとからなる信号である。なお、位置確認信号発信部32が発信制御手段に相当する。
【0032】
また、照合ECU4には、車両1が位置確認信号SknをRF受信機7で受信した際において、位置確認信号Sknの受信信号強度RSSI(Receive Signal Strength Indication)を算出する受信強度算出部33が設けられている。受信強度算出部33は、位置確認信号Sknを受信する度に、それぞれの信号の受信信号強度RSSIを算出する。照合ECU4は、位置確認信号SknをRF受信機7で受信すると、警告動作の実行要求が下りたと認識する。なお、受信信号強度RSSIが受信特性値に相当する。なお、受信強度算出部33が受信特性値算出手段に相当する。
【0033】
更に、照合ECU4には、受信強度算出部33が算出した受信信号強度RSSIを基に、リクエスト信号Srqの車外通信エリアを出たユーザ(運転者)の位置を推定するユーザ位置推定部34が設けられている。ユーザ位置推定部34は、電子キー2から複数受信する位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの変化から、ユーザが車両1から離れて行っているか否かを推定する。例えば、受信信号強度RSSIの低下が大きければ、ユーザが車両1から離れて行っていると判定され、受信信号強度RSSIの低下が小さければ、ユーザが車両1からあまり離れて行っていないと判定される。
【0034】
また、照合ECU4には、警報機器31による警告動作の開始時刻(実行時刻)Tを設定する警告時刻設定部35が設けられている。この警告時刻設定部35は、ユーザ位置推定部34が割り出した判定結果を基に、ユーザがリクエスト信号Srqの車外通信エリアから抜け出たときに実行する警告動作の開始時刻Tを設定する。例えば、位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの低下が大きく、ユーザが車両1から大きく離れて行っている場合には、警告動作の開始時刻Tを早めに設定し、位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの低下が小さく、ユーザが車両1からあまり離れて行っていない場合には、警告動作の開始時刻Tを遅めに設定する。なお、ユーザ位置推定部34及び警告時刻設定部35が警告実行手段を構成し、警告動作の開始時刻が警告パラメータに相当する。
【0035】
更に、照合ECU4には、一旦設定状態にした警告動作の解除条件が揃った際に、警告動作の実行を解除する警告動作解除部36が設けられている。この警告解除動作は、リクエスト信号Srqの車外通信エリアから一旦抜け出た電子キー2が、警告動作を開始する前にこの車外通信エリアに再度戻って、車外通信が再度確立(成立)するか否かを監視する。そして、警告動作解除部36は、車外通信が再確立したことを確認すると、実行設定状態にある警告動作を解除し、警告動作を実行しないようにする。なお、警告動作解除部36が監視手段及び解除手段を構成する。
【0036】
次に、本例の車両操作忘れ防止システム25の動作を図3及び図4に従って説明する。
電子キー2を所持したユーザ(運転者)が車両1から降車した際、降車動作時に開けられた車両ドアが閉じられたことをカーテシスイッチ24で検出すると、照合ECU4は車外LF発信機5からリクエスト信号Srqの発信を開始して、車外通信の確立を試みる。このとき、電子キー2がリクエスト信号Srqの車外通信エリア内に位置していれば、電子キー2がこのリクエスト信号Srqに応答して返信してきたID信号SidをRF受信機7で受信することになり、ID信号Sidの受信を以て、車外通信エリア内に電子キー2が位置していることを認識する。
【0037】
ここで、電子キー2を所持したユーザが、車両1に対して離れる方向に移動して、リクエスト信号Srqの車外通信エリアから抜け出たとする。このとき、電子キー2の位置確認信号発信部32は、電子キー2のLF受信機14でリクエスト信号Srqを受信しなくなり、この動作をとることを以て、自身がリクエスト信号Srqの車外通信エリア外に抜け出たことを認識する。そして、位置確認信号発信部32は、電子キー2が車外通信エリアから抜け出たことを確認すると、位置確認信号Sknを複数回発信する。本例の位置確認信号Sknは、等間隔の間をおいて例えば3回発信される。
【0038】
車両1がこの位置確認信号SknをRF受信機7で受信すると、照合ECU4の受信強度算出部33は、位置確認信号SknをRF受信機7で受信する度に、それぞれの位置確認信号Sknについてその受信信号強度RSSIを各々算出する。受信強度算出部33は、各位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIを算出すると、その算出値をユーザ位置推定部34に出力する。
【0039】
ユーザ位置推定部34は、受信強度算出部33から入力する受信信号強度RSSIの算出値を基に、ユーザが車両1から離れて行っているかを推定する。例えば、図3に示すように、ユーザが車両1から継続して離れる場合には、受信信号強度RSSIの値が連続して大きく低下する変化をとる。よって、ユーザ位置推定部34は、位置確認信号Sknを受信した際、このときに受信した位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIと、その1つ前に受信した位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIとの差分Rxを算出しつつ、1つ前に受信した位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの所定割合の値を閾値Rkとして、受信信号強度RSSIの差分Rxを閾値Rkと比較し、この算出形式による差分比較を、位置確認信号Sknを受信する度に実行する。そして、ユーザ位置推定部34は、差分Rxが閾値Rkを超える算出結果を、位置確認信号Sknを受信する度に連続して得ることを確認すると、ユーザが車両1から離れて行っていると推定する。ユーザ位置推定部34は、このときの推定結果として、ユーザが車両1から大きく離れて行っている旨の通知を警告時刻設定部35に出力する。
【0040】
警告時刻設定部35は、ユーザが車両1から大きく離れて行っている旨の通知をユーザ位置推定部34から入力すると、警告動作の開始時刻Tを早め(例えば4秒後など)に設定する。これにより、ユーザが車両1から大きく離れてしまう前に、車両操作忘れの警告を実行することが可能となるので、ユーザが警告を聞き逃す状況が少なくなり、警告動作を精度がよいものとすることが可能となる。
【0041】
一方、電子キー2がリクエスト信号Srqの車外通信エリアから抜け出た際、図4に示すように、ユーザが車両1から大きく離れない場合には、受信信号強度RSSIの値は大きく変化しなかったり、或いは受信信号強度RSSIの値が1つ前の受信信号よりも大きくなったりするなどして、受信信号強度RSSIの変化が小さい状態をとる。よって、ユーザ位置推定部34は、ユーザ位置推定の算出の際、差分Rxが閾値Rkを超える算出結果を、位置確認信号Sknを受信する度に連続して得ることができなければ、ユーザは車両1から離れて行っていないと推定する。ユーザ位置推定部34は、このときの推定結果として、ユーザが車両1から離れて行っていない旨の通知を警告時刻設定部35に出力する。
【0042】
警告時刻設定部35は、ユーザが車両1から離れて行っていない旨の通知をユーザ位置推定部34から入力すると、警告動作の開始時刻Tを遅め(例えば10秒後)に設定する。よって、前述した例のようにユーザが車両1から大きく離れて行っている場合には、警告動作が直ぐに開始されるものの、ユーザが車両1から離れて行っていない場合には、ある程度の時間を経た後に警告動作が実行される。
【0043】
ここで、例えばこのときのユーザの降車が一時的な用事であって、リクエスト信号Srqの車外通信エリアから出た後、直ぐに車両1に戻って来る場合も想定される。警告動作解除部36は、警告動作の開始待ちの際、RF受信機7でID信号Sidを再度受信すると、車外通信エリアに電子キー2が再進入してきたと認識し、警告動作は必要ないと判断する。そして、警告動作解除部36は、開始待ちにある警告動作を解除し、警告動作を実行しないようにする。このため、ユーザが車両1から離れて行っていない際に、警告動作の開始時刻Tを遅めに設定すれば、車外通信エリアに電子キー2が再進入する猶予時間を与えることが可能となるので、ユーザが一時的にリクエスト信号Srqの車外通信エリアから出る場合に、警告動作を実行させずに済む。よって、警告動作を精度よく実行することが可能となる。
【0044】
さて、本例においては、リクエスト信号Srqの車外通信エリアから電子キー2が出た際、電子キー2から位置確認信号Sknを複数回発信させ、車両1は受信した位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIから、ユーザが車両1から離れて行っているか否かを推定する。そして、車両ドアの施錠忘れやドア窓の閉め忘れ等の警告動作の開始時刻Tを、その推定結果に応じた時刻に設定する。このため、ユーザが一時的に車外通信エリアから出る際において、警告動作を解除する猶予時間を与えることが可能となるので、警告動作を精度よく実行することが可能となる。
【0045】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両1に操作忘れ(ドア施錠忘れ、窓閉め忘れ等)が発生している状況下で、電子キー2がリクエスト信号Srqの車外通信エリアから出た際、電子キー2から複数回に亘りUHFの位置確認信号Sknを発信させ、この位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの変化からユーザが車両1から離れて行っているか否かを推定し、その推定結果に基づく開始時刻Tに警告動作を開始する。このため、車両1からのユーザの離れ具合に応じた好適なタイミングで警告動作が実行されるので、車両操作忘れの警告精度を高いものすることができる。
【0046】
(2)車両操作忘れ防止システム25で使用する無線通信に電子キーシステム3の無線通信を利用したので、これら両機能の間で、1つの通信システムが共用される。このため、各々の機能毎に専用の通信部品を用意せずに済むので、部品点数や部品コストの抑制を図ることができる。
【0047】
(3)本例の操作忘れ防止システム25を車両1に搭載したので、車両操作忘れの警告動作を、より精度よく実行することができる。
(4)ユーザが車両1から大きく離れて行っている際には警告動作が早めに設定され、ユーザが車両1からあまり離れて行っていない際には警告動作が遅めに設定されるので、ユーザが車両1から遠く離れる可能性が高い際は、前もって早い段階で警告動作が実行される。このため、ユーザが車両1から大きく離れてしまう前に操作忘れの警告をユーザに通知することが可能となるので、より確実に操作忘れをユーザに通知することができる。
【0048】
(5)電子キー2が車外通信エリアから出て警告動作の実行要求が下りた際、この警告動作の開始時刻Tを待つ間に、電子キー2が車外通信エリアに再度進入したことを確認すると、警告動作の実行が解除される。ところ、電子キー2が車外通信エリアに再度進入する可能性がある場合には、ユーザはその場から大きく移動する動作をとらないので、位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIは小さい変化をとる。よって、位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの変化が小さいという電子キー2が車外通信エリアに再進入する可能性のある場合には、警告動作の開始時刻Tが遅めに設定されて、警告動作の開始までに長い猶予時間が与えられる。よって、本例の場合には、ユーザが車両1の元に再び戻る可能性が高いにも拘わらず、警告動作を実行してしまう状況が発生し難くなるので、警告動作の実行精度をより高いものとすることができる。
【0049】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 警告動作の設定対象である警告パラメータは、必ずしも警告動作の開始時刻に限定されない。例えば図5に示すように、警告パラメータは、警告動作の音量の大きさでもよい。この場合、受信信号強度RSSIの変化が大きい値をとる場合、即ちユーザが車両1から離れていっている場合には、警告動作を大きな音で行い、受信信号強度RSSIの変化が小さい値をとる場合、即ちユーザが車両1から離れて行っていない場合には、警告動作を普通の音で行う。これにより、大きく離れたユーザにも警告音が届くようになるので、車両1からの離れ具合に応じた好適な音で警告動作の通知を実行することができる。なお、この思想は第1実施形態と組み合わせてもよい。
【0050】
・ ユーザの位置推定の算出方式は、実施形態に述べた方式に限定されず、様々な方式が採用可能である。例えば、この一例としては、例えば単に連続して受信信号強度RSSIの値が低下することを以て、ユーザが車両1から離れていていると処理するものでもよい。
【0051】
・ ユーザの位置推定の際に使用する閾値Rkは、必ずしも可変値に限らず、値が予め決められた固定値でもよい。
・ 警告動作は、必ずしもホーンやライト等を用いて行うことに限定されず、これ以外の車載機器を使用してもよい。
【0052】
・ ユーザ降車時における車外LF発信機5からのリクエスト信号Srqの発信は、車両ドアが閉じられたことに限定されない。例えば、エンジン17が停止操作されたことや、車両ドアが開操作されたことなどを信号発信の条件としてもよい。
【0053】
・ 警告動作の解除条件は、必ずしも電子キー2が車外通信エリアに再進入することによる車外通信(車外照合)の再確立に限定されない。例えば、車両1にワイヤレスキーシステムが備え付けられている場合には、このシステムでドアロック操作が実行されたことを解除条件としてもよい。
【0054】
・ 警告動作の開始時刻Tの設定は、必ずしも2段階に限定されず、3段階以上としてもよい。また、警告動作の開始時刻Tは、位置確認信号Sknの受信信号強度RSSIの変化値に応じた値に設定されるものでもよい。
【0055】
・ 車両操作忘れ防止システム25で使用する各種無線信号の周波数は、種々の帯域のものが採用可能である。
・ 電子キーシステム3の無線通信を車両操作忘れ防止システム25でも利用することに限らず、これら両機能で各々独立したシステム構成をとるものでもよい。
【0056】
・ 受信特性値は、必ずしも受信信号強度RSSIに限定されず、これ以外のパラメータを採用してもよい。
・ 警告動作は、必ずしも車両1側で実行されることに限らず、電子キー2側で行われるものでもよい。
【0057】
・ 電子キーシステム3は、必ずしもキー操作フリーシステムに限らず、要は車両1と電子キー2とが相互通信するものであれば、その種類は特に限定されない。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0058】
(1)通信端末の操作対象から狭域通信により発信した応答要求信号に当該通信端末が応答するか否かを見ることで当該通信端末が前記応答要求信号の室外通信エリア内にいるか否かを監視し、前記操作対象で操作忘れがある場合に前記通信端末が前記室外通信エリアから出てしまうと、前記操作忘れをユーザに通知するために一定時間後に警告動作を実行する操作忘れ防止方法において、前記通信端末が前記室外通信エリアから出た際に、位置確認に使用する位置確認信号を当該通信端末から数回に亘り発信させ、複数の前記位置確認信号を前記操作対象が受信した際、各々の当該位置確認信号においてその受信特性値を算出し、前記受信特性値の変化を基に、前記操作対象からの前記通信端末の離れ具合を推定し、その推定結果に応じて決まる警告パラメータにより前記警告動作を実行することを特徴とする操作忘れ防止方法。
【符号の説明】
【0059】
1…操作対象としての車両、2…通信端末としての電子キー、25…操作忘れ防止システムとしての車両操作忘れ防止システム、32…発信制御手段としての位置確認信号発信部、33…受信特性値算出手段としての受信強度算出部、34…警告実行手段を構成するユーザ位置推定部、35…警告実行手段を構成する警告時刻設定部、36…監視手段及び解除手段を構成する警告動作解除部、Srq…応答要求信号としてのリクエスト信号、Skn…位置確認信号、T…開始時刻。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末の操作対象から狭域無線通信により発信した応答要求信号に当該通信端末が応答するか否かを見ることで当該通信端末が前記応答要求信号の室外通信エリア内にいるか否かを監視し、前記操作対象で操作忘れがある場合に前記通信端末が前記室外通信エリアから出てしまうと、前記操作忘れをユーザに通知するために一定時間後に警告動作を実行する操作忘れ防止システムにおいて、
前記通信端末が前記室外通信エリアから出た際に、位置確認に使用する位置確認信号を当該通信端末から数回に亘り発信させる発信制御手段と、
複数の前記位置確認信号を受信した際、各々の当該位置確認信号においてその受信特性値を算出する受信特性値算出手段と、
前記受信特性値の変化を基に、前記操作対象からの前記通信端末の離れ具合を推定し、その推定結果に応じた警告パラメータで前記警告動作を実行させる警告実行手段と
を備えたことを特徴とする操作忘れ防止システム。
【請求項2】
前記警告パラメータは、前記警告動作の開始時刻であることを特徴とする請求項1に記載の操作忘れ防止システム。
【請求項3】
前記警告パラメータは、前記警告動作時に発する警告音の大きさであることを特徴とする請求項1に記載の操作忘れ防止システム。
【請求項4】
前記操作対象及び前記通信端末の間で実行される前記狭域無線通信は、前記通信端末が前記応答要求信号に応答してキーコードを前記操作対象に発信することにより、当該キーコードを前記操作対象のものと照らし合わせるキー通信であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の操作忘れ防止システム。
【請求項5】
前記通信端末を電子キーとし、前記操作対象を車両とすることにより、当該システムが車両に採用されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の操作忘れ防止システム。
【請求項6】
前記警告実行手段は、前記通信端末が前記操作対象から離れて行っている際、前記警告動作を早めの開始時刻で実行し、前記ユーザが離れて行っていない際、前記警告動作を遅めの開始時刻で実行することを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか一項に記載の操作忘れ防止システム。
【請求項7】
前記警告動作の実行要求が下りて前記警告動作の実行を待つ際、当該実行要求を解除する解除条件が揃ったか否かを監視する監視手段と、
前記解除条件が揃った際に、前記警告動作の実行を解除する解除手段と
を備えたことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の操作忘れ防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−159615(P2010−159615A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27719(P2009−27719)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】