説明

改装ドアの気密構造

【課題】 既設ドアを撤去した既設ドア枠に新設ドアを吊支持した改装ドアにおいて,気密材が室内側に露出するのを防止して可及的に高度な防火性を確保する。
【解決手段】 新設ドア2の室内側見付面の外周端部に配置した気密材受溝26に気密材3を設置し,気密材3を既設ドア枠1のドア戸当面12に対接して気密性を確保する一方,新設ドア2の室内側見付面の気密材受溝26の内側に囲繞状の突出リブ41を固定することによって,該突出リブ41と既設ドア枠の室内側見込面11の間に狭小の火炎遮断溝4を配置する。突出リブ41が,室内側の見付面の火炎が気密材3を有する火炎遮断溝4側に向かって進行するのを防止するとともに火炎遮断溝4が奥行方向先端を閉塞してあるから,火炎が突出部41を超えても,該火炎が火炎遮断溝4に入り込んで気密材3に接触するのを可及的に防止して,防火性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,公共住宅,マンション等玄関のドア改装に関し,特に既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に新設ドアを設置した改装ドアの気密構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種改装ドアとして,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアに形成した気密材受溝に気密材を装着し該気密材を既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するようにした下記特許文献記載のものが知られており,これによれば,新設ドアの中骨の室内側見付面に気密材受溝を形成するとともに中骨を覆うボックス状の室外側ドア表面材と平板状の室内側ドア表面材間に上記気密材受溝を室内側見付面に露出するように配置し,該気密材受溝に気密材の嵌合脚部を嵌合して該気密材を新設ドアの室内側見付面の外周に室内側に向けて囲繞状に設置し,該気密材の側方に延びるように配置した戸当面対接部を既設ドア枠のドア戸当面に対接することによって気密性を確保したものとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−83698号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合,既存ドアを撤去した既設ドア枠に可及的簡易に,例えば防音断熱ドアの如き新設ドアを納まりよく設置し得るとともに該新設ドアの設置によって自ずと気密性を確保し得るようにして現場作業を可及的に簡易化した既設ドア枠を利用したドア交換の改装ドアを提供することができる。
【0005】
しかし乍ら,この場合,気密材受溝を新設ドアの室内側見付面に設置するものとされるから,気密材が室内側に露出するものとなり易く,これによって気密材が火炎を直接に受けたときに新設ドアの防火性能が低下する可能性が残されている。
【0006】
即ち気密材は,例えば上記特許文献の図3に示すように新設ドアに見付面の縁部を残して凹陥した気密材受溝に嵌合脚部を嵌合し,該嵌合脚部から該見付面の縁部を覆うように縁部側に変位して突出した膨出部を備え,該膨出部先端片側の外周側を戸当面対接部位としてドア戸当面に断面L字状をなすように対接するものとされるため,膨出部先端片側の内周側が室内側に露出することになり,従って火災時に気密材が直接炎に曝されて気密材が溶解し,気密材位置が火炎通過の経路をなす結果となる可能性があり,従ってこの場合,必ずしも防火性に優れたものとなし得ないケースが生じる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,上記既存ドアを撤去した既設ドア枠に新設ドアを設置し,既設ドア枠のドア戸当面に気密材を対接してその気密性を確保するとともに該気密性の露出を防止して可及的高度な防火性を確保した,既設ドア枠を利用した改装ドアの気密構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に添って本発明は,新設ドアの室内側見付面の外周端部に気密材受溝を設置するとともに該気密材受溝に気密材を既設ドア枠のドア戸当面に対面するように設置して,その戸当面対接部をドア戸当面に対接することによって気密性を確保するとともにドア表面材の見付面外周端部と既設ドア枠のドア戸当面見付方向先端との間の空隙を1cm以下の間隔とし且つ気密材のドア戸当面に対する見付方向対接面積を該空隙より大とすることが,該気密材を室内側から見て,その室内側への露出を可及的に防止して防火性を可及的に確保する上で有効であることから,これを気密材露出防止措置として改装ドアに施すことによって該改装ドアにおける気密性と防火性の双方を並立的に確保するとともに気密材受溝を室内側見付面の外周端部に備えた新設ドアの構造を可及的簡易として,その生産効率を可及的に高度に確保するようにしたものであって,即ち請求項1に記載の発明を,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアに形成した気密材受溝に気密材を装着して該気密材を既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するとともに気密材露出防止措置を施すことによって新設ドアの室内側見付面における上記気密材の露出を可及的に防止して新設ドアの防火性を確保した改装ドアの気密構造であって,新設ドアにおける中骨の室内側見付面の外周端部囲繞状に見込面切欠き状の段部を配置するとともに室内側見付面の外周端部囲繞状に気密材受溝を配置したドア表面材を用い,該ドア表面材によって上記中骨を被覆し,該中骨の見込面切欠き状の段部に上記既設ドア枠のドア戸当面に対面する気密材受溝を形成する一方,上記気密材露出防止措置を,上記ドア表面材の見付面外周端部と既設ドア枠のドア戸当面見付方向先端との間の空隙を1cm以下の間隔とするとともに上記気密材のドア戸当面に対する見付方向対接面積を該空隙より大とすることによって施してなることを特徴とする改装ドアの気密構造としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,気密材受溝を室内側見付面の外周端部に備えた新設ドアの構造を,その簡易にして生産効率を同様に維持し得る他の形態のものとするように,これを,上記気密材受溝を配置したドア表面材に代えて,室内側見付面の外周端部囲繞状に上記中骨の見込面切欠き状の段部に重合する段部を配置したドア表面材を用いて,新設ドアに外周端部囲繞状の外周段部を配置するとともに該外周段部に断面コ字状乃至断面L字状の溝形成部材を設置し,該溝形成部材によって見付方向端部を区画して上記気密材受溝を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアの気密構造としたものである。
【0010】
請求項3及び4に記載の発明は,同じく上記に加えて,それぞれ上記気密材露出防止措置を,上記空隙を,既設ドア枠の室内側見込面との間で火炎遮断溝とすることによって,該気密材を,室内側から見て,該火炎遮断溝を介してその室外側に位置するようにして,室内側への露出防止と火炎の実質的な遮断によって可及的高度な防火性を確保し得るものとするように,請求項3に記載の発明を,上記気密材露出防止措置を,新設ドアの見付面外周端部又はその近傍に室内側に向けて溝形成用の突出部を配置することによって,既設ドア枠の室内側見込面との間で上記空隙を火炎遮断溝とすることによって施してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の改装ドアの気密構造とし,請求項4に記載の発明を,上記気密材露出防止措置を,新設ドアの室内側見付面を気密材より室内側に突出した見込厚部分を備えて形成し,該見込厚部分を既設ドア枠の室内側開口に部分的に嵌入して,既設ドア枠の室内側見込面との間で上記空隙を火炎遮断溝とすることによって施してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアの気密構造としたものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記気密材露出防止措置を,その上記空隙を該既設ドア枠の室内側見込面の延長線上又はこれよりドア戸当面側奥行方向に位置するように配置して,該空隙を可及的簡易な構造としつつ可及的に狭小化することによって火炎の遮断に適したものとするように,これを,上記気密材露出防止措置を,気密材のドア戸当面への対接を該ドア戸当面の見付面内において行うように幅狭とし,新設ドアの室内側見付面の端部を既設ドア枠の室内側見込面と面一乃至部分重合するように配置し,上記空隙を該既設ドア枠の室内側見込面の延長線上又はこれよりドア戸当面奥行方向に位置するように施してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の改装ドアの気密構造としたものである。
【0012】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として,上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1に記載の発明は,新設ドアの室内側見付面の外周端部に気密材受溝を設置するとともに該気密材受溝に気密材を既設ドア枠のドア戸当面に対面するように設置して,その戸当面対接部をドア戸当面に対接することによって気密性を確保するとともに該気密材を室内側から見て,その室内側への露出を可及的に防止するようにした気密材露出防止措置を施すによって新設ドアの気密性と防火性の双方を並立的に可能とするとともに気密材受溝を室内側見付面の外周端部に備えた新設ドアの構造を可及的簡易として,その生産効率を可及的に高度に確保するようにして,既存ドアを撤去した既設ドア枠に新設ドアを設置し,既設ドア枠のドア戸当面に気密材を対接してその気密性を確保するとともに該気密性の露出を防止して可及的高度な防火性を確保した,既設ドア枠を利用した改装ドアの気密構造を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は,上記に加えて,気密材受溝を室内側見付面の外周端部に備えた新設ドアの構造を,その簡易にして生産効率を同様に維持し得る他の形態のものとすることができる。
【0015】
請求項3及び4に記載の発明は,同じく上記に加えて,それぞれ上記気密材露出防止措置を,上記空隙を,既設ドア枠の室内側見込面との間で火炎遮断溝とすることによって,該気密材を,室内側から見て,該火炎遮断溝を介してその室外側に位置するようにして,室内側への露出防止と火炎の実質的な遮断によって可及的高度な防火性を確保したものとすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は,同じく上記に加えて,上記気密材露出防止措置を,その上記空隙を該既設ドア枠の室内側見込面の延長線上又はこれよりドア戸当面側奥行方向に位置するように配置して,該空隙を可及的簡易な構造としつつ可及的に狭小化することによって火炎の遮断に適したものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば,図1及び図2において,Aは改装ドアであり,該改装ドアAは,既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠1に対して新設ドア2を設置し該新設ドア2に形成した気密材受溝26に気密材3を装着して該気密材3を既設ドア枠1における室内側見込面11と室外側見込面13の間のドア戸当面12に対接することによって気密性を確保するとともに気密材露出防止措置を施すによって新設ドア2の室内側見付面11における上記気密材3の露出を可及的に防止して新設ドア2の防火性を確保したものとしてある。
【0018】
改装ドアAは,例えば昭和30年代から50年代頃に建築され,一般にKJドアと称せられるプレスドアの如き既設ドアとその吊支持用の既設ヒンジを既設ドア枠1から撤去し,該既設ドア枠1に新設ドア2用の新設ヒンジを設置して残存した既設ドア枠1を可及的にそのまま利用して,防音断熱性能を確保した鋼製の両面フラッシュドアの如き高機能の新設ドア2を交換的に設置したものとしてあり,これによって短時間に騒音や塵埃を発生することなく,居住者の居住状態でドアの改装作業を完了し得るようにしてある。
【0019】
該改装ドアAにおける上記新設ドア2の気密材受溝26は,該新設ドア2における中骨21の室内側見付面の外周端部囲繞状に見込面切欠き状の段部22を配置するとともに室内側見付面の外周端部囲繞状に気密材受溝26を配置したドア表面材23を用い,該ドア表面材23によって上記中骨21を被覆し,該中骨21の見込面切欠き状の段部22が上記既設ドア枠1のドア戸当面12に対面するように,これを形成したものとしてある。
【0020】
本例にあって上記鋼製の両面フラッシュドアとした新設ドア2は,中骨21と,該中骨21に張設した室内側及び室外側のドア表面板23,24と,中骨21の空間に充填した防音断熱材とを備えて形成してあり,中骨21は,外形を新設ドア2の外形に合せた矩形とし且つ内側を図示省略の格子状とするように,断面コ字状等適宜の断面形状とした枠材を長手方向端部を留め接合するとともに内側に格子材を配置したフレームとして形成してあり,このとき上記矩形の外枠部分をなす上下左右の枠材21aの室内側端部に見込面切欠き状の段部22を形成してある。
【0021】
このように形成した本例の中骨21は,上記見込面切欠き状の段部22によって見込幅を二分して室外側において面外方向に張出し状に突出した室外側の張出部を備えるとともにその室外側に同じく段部22の見込幅に応じた室内側の厚肉突出部を備えて断面T字状をなすものとしてあり,これによってその室外側の張出部を,既設ドア枠1の室外側の開口に,上記厚肉突出部を,室内側の開口にそれぞれ納め得るように,これらを相互に凹凸嵌合自在の関係を有するものとし,またその上記見込面切欠き状の段部22に,本例の如くに,室内側見付面の外周端部囲繞状に気密材受溝26を配置したドア表面材23を用いることによって,新設ドア2の外周端部に気密材3を装着する囲繞状の該気密材受溝26を配置するか,又はこれに代えて,中骨21の見込面切欠き状の段部22に重合する段部を配置した,図示省略のドア表面材を用いて新設ドア2の外周端部に外周段部を配置し,これに断面コ字状乃至断面L字状の溝形成部材を,例えばネジで固定することによって設置して,同じく気密材を装着する囲繞状の気密材受溝を配置するかによって,該気密材受溝26の設置を選択的になし得るようにしてある。
【0022】
本例における中骨21は,例えば1.6mm厚の鋼板に折曲加工を施して形成してあり,その上記上下左右の枠材21aは,例えば見込幅を3.5cm程度とし,該枠材21aに形成した上記見込面切欠き状の段部22は,例えば見込面及び室内側の見付面から1乃至2cm程度,本例にあってはそれぞれ1.2cm,1.0cm程度の奥行幅を有するように端部凹陥の断面L字状をなすものとしてある。
【0023】
一方中骨21を被覆する室内側のドア表面板23は,これを室内側の見付面と,その外周端部囲繞状に,該表面板23を断面L字状に折曲した見付方向両端のL字折曲部とを備えた浅いボックス状のものとし,室外側のドア表面板24は,室外側の見付面と,その外周を室内側に折曲した見込面と,該見込面を室内側のドア表面板23の室内側見付面まで延長し且つ先端をL字状に折返し状として,上記室内側のドア表面板23のL字折曲部と部分的に重合することによって見付面外周端部に室内側に開口したU字状の気密材受溝26を形成する室内側起立片25とを備えた,上記室内側の表面板23より深い同じくボックス状のものとしてあり,本例にあってこれらドア表面板23,24は,例えば肉厚を0.6又は0.8mm,本例にあっては0.6mmとし,室内側のドア表面板23においてその見込幅を1cm程度,室外側のドア表面板24においてその起立片25を含めた見込幅を3.5cm程度とし,また気密材受溝26は,その見込方向奥行幅及び見付方向内法幅をそれぞれ1cm程度,本例にあってはそれぞれ1.2cm,0.9cmとしてある。従って上記中骨21を被覆して,室内側及び室外側のドア表面板23,24を張設することによって形成した本例の新設ドア2は,そのドア厚さを,旧甲種防火戸として一般の3.5cm程度,例えば3.6cmとしてあり,このとき新設ドアAは,その高さを192cm,横幅を82cm程度として,ドア戸当面によって区画された室外側開口を193cm,室内側開口を190cmとする既設ドア枠1における上記室外側開口に数mmのスペース,上及び左右で3mm程度,下で6mm程度のスペースを置いて,その吊支持を行うものとしてある。
【0024】
気密材3は,硬質樹脂の嵌合脚部31と,該嵌合脚部31に,既設ドア枠1のドア戸当面12に向けて室内側見付面から数mm,本例にあっては3mm突出した軟質樹脂にして中空又は中実の突出気密部32を備えて一体成形したものとしてあり,その嵌合脚部31を,気密材受溝26に嵌合し,突出した突出気密部32の先端を既設ドア枠のドア戸当面12に面接するように対接して,改装ドアAにおける既設ドア枠1と新設ドア2間の気密性を確保したものとしてある。
【0025】
このとき改装ドアAにおける上記気密材3の露出を可及的に防止した気密材露出防止措置は,これを,上記室内側のドア表面材23の見付面外周端部と既設ドア枠1のドア戸当面12見付方向先端との間の空隙を1cm以下の間隔とするとともに上記気密材3のドア戸当面12に対する見付方向対接面積を該空隙より大とすることによって施してあり,本例にあって該気密材露出防止措置は,これを,新設ドア2の見付面外周端部又はその近傍に室内側に向けて溝形成用の突出部41を配置することによって,既設ドア枠1の室内側見込面との間で上記空隙を火炎遮断溝4とすることによって施したものとしてある。
【0026】
即ち本例の改装ドアAにおける新設ドア2のドア厚さは3.5cm程度,例えば3.6cmであり,既設ドア枠1,特にKJドアにおけるドア戸当面12の室外側見込面の奥行幅は42mmであるところ,例えば新設ドア2の室外側見付面を,既設ドア枠1の室外側見付面13より数mm程度,例えば3mm室内側とし且つ上記囲繞空隙を配置して新設ドア2を,既設ドア枠1に外観よく納めるように吊支持したとき,該新設ドア2の室内側見付面は,ドア戸当面12より同じく数mm,例えば3mm室外側に位置する結果,室内側のドア表面材23の見付面外周端部と既設ドア枠1のドア戸当面12見付方向先端との間の空隙は,これらの間の段差を考慮しても数mm,例えば4〜5mm程度である。一般に該空隙は,これを1cm以下とすれば,新設ドア2が火炎を受けても該火炎が該空隙を通過して気密材3を直接に溶解することをある程度防止し,溶解に至る迄の時間差を確保することができるが,本例にあっては該空隙を上記数mmの狭小な溝による火炎遮断溝4として,その防火性を向上するようにしてあり,また気密材3はその室外側への露出を可及的に避けるように,本例にあってドア戸当面12に対する突出気密部32の見付方向対接面積を,例えば1cm程度,火炎の影響を更に受ける可能性の少ない下枠側の下位では7mm程度としてあり,これによって火炎の回り込みによる上記溶解時間の遅延による防火性の確保を同時になし得るようにしてある。
【0027】
このとき本例にあっては更に該空隙を上記火炎遮断溝4としてその火炎の影響を可及的に減少し防火性を向上するようにしてあり,該火炎遮断溝4の形成は,溝形成用の突出部41,例えば室内側のドア表面板23に一体成型して室内側に突出する,例えば囲繞状又は下位を除く下向きコ字状に配置した図示省略の一体の突出リブ又は新設ドア2に後付けした別体のリブ部材による同様の突出リブによるものとし,本例においては新設ドア2の室内側見付面の外周を囲繞する,例えば装飾モールを兼用するものとしてある。本例にあって該突出部41は,これを別体のリブ部材を用いて形成してあり,該リブ部材による突出部41は,例えば新設ドア2の室内側見付面からの見込幅を1cm程度,見付幅を2cm程度とした鋼製,アルミ製等の金属製矩形断面のものとしてあり,その外周側見込面が既設ドア枠1の,上記ドア戸当面12の室内側見込面と部分的に重合することによって上記狭小の溝を形成することによって,これを火炎遮断溝4としてある。このとき該火炎遮断溝4は,例えばその溝幅を数mm,例えば4mmとし,長さを同じく数mm,例えば5mmとすることによって,その奥行方向先端を新設ドア2の室内側のドア表面材23と気密材3で閉塞した行止りの狭小幅のものとしてあり,これによって本例にあっては,上記突出部41が,新設ドア2の見付面と気密材3位置とを区分してその露出を防止するとともに該突出部41が,見付面に対する火炎が気密材を有する空隙,即ち火炎遮断溝4側に向かって進行するのを防止するように作用するとともに該火炎遮断溝4が奥行方向先端を閉塞したものであることによって火炎が突出部41を超えても,該火炎が火炎遮断溝4に入り込んで気密材3に接触するのを可及的に防止し得るものとなり,従って該火炎遮断溝4が火炎を実質的に遮断するようにしてその防火性を更に向上したものとしてある。
【0028】
図3及び図4は,他の例にかかる改装ドア2の気密材露出防止措置を示すもので,本例にあって該気密材露出防止措置は,これを,新設ドア2の室内側見付面を気密材3より室内側に突出した見込厚部分42を備えて形成し,該見込厚部分42を既設ドア枠1の室内側開口に部分的に嵌入して,既設ドア枠1の室内側見込面との間で上記空隙を火炎遮断溝4とすることによって施したものとしてある。
【0029】
即ち本例の新設ドア2は,例えば図1及び図2における3.6cmのドア厚さに対して,これを4.5cm程度,特に4.4cmとすることによって,上記例より1cm弱,例えば0.8cm厚く構成して,そのドア厚さによる見込厚部分42を既設ドア枠1の室内側見込面11間に,例えば5mm程度部分的に嵌入して,該嵌入した見込厚部分42と既設ドア枠1における室内側見込面11とによって上記と同様に火炎遮断溝4を形成したものとしてある。このとき本例の中骨21は,その見込面切欠き状の段部22を,例えば見込面及び室内側の見付面から1.5〜2cm程度,本例にあってはそれぞれ1.5cm,1.8cm程度の奥行幅を有するように,これを上記図1及び図2のものより大きめに形成してあり,このとき室内側のドア表面板23の見込幅を1.8cm程度とする一方,室外側のドア表面板24において起立片25を含めた見込幅を,上記4.5cm程度のドア厚さに対して3.5cm程度とすることによって,該気密材受溝26の見込方向奥行幅を1.8cm程度,見付方向内法幅を1.5cm程度とすることによって,該気密材受溝26を,新設ドア2のドア厚さより低く設定して,該気密材受溝26を段差状に形成したものとしてあり,このとき更に室内側及び室外側のドア表面板23の肉厚を0.8mmとした以外,その余の構成を上記図1及び図2のものと同様に形成したものとしてある。本例にあって上記火炎遮断溝4は,同じく溝幅及び長さを数mm,例えば溝幅を3mm,長さを5mmの狭小幅にして,同様にその奥行方向先端を新設ドア2の室内側のドア表面材23と気密材で閉塞した行止りのものとしてあり,従って本例にあっては火炎が室内側見付面から既設ドア枠1の室内側見込面11に及ぶも,同じく該火炎が火炎遮断溝4を通過して気密材3に至るのを可及的に防止して,その防火性を向上したものとしてある。
【0030】
図5及び図6は,更に他の例にかかる改装ドアAの気密材露出防止措置を示すもので,本例にあって該気密材露出防止措置は,これを,気密材3のドア戸当面12への対接を該ドア戸当面12の見付面内において行うように幅狭とし,新設ドア2の室内側見付面の端部を既設ドア枠1の室内側見込面11と面一乃至部分重合するように配置し,上記空隙を該既設ドア枠1の室内側見込面11の延長線上又はこれよりドア戸当面12奥行方向に位置するように施したものとしてある。
【0031】
即ち,本例にあって新設ドア2は,これを図1及び図2におけると同様に形成する一方,中骨21における上記断面L字状をなす見込面切欠き状の段部22を,室内側の見込面及び見付面からの奥行幅を1cm程度,本例にあってはそれぞれ0.9cm,0.8mm程度として,これに張設した室内側のドア表面材23における気密材受溝26の見込方向奥行幅及び見付方向内法幅をそれぞれ1cm程度以下,例えばそれぞれ0.9cm程度として,該気密材受溝26及び気密材3を,可及的に新設ドア2の面外方向,即ち既設ドア枠1のドア戸当面12の奥行方向に変位するように配置してあり,これによって該新設ドア2の室内側見付面の外周端部を,下枠にあって既設ドア枠1の室内側見込面と面一とし,またその余の上枠及び左右枠において,例えば中骨21の肉厚分,即ち1.5mm程度重合するようにして,上記空隙が該既設ドア枠1の室内側見込面11の延長線上よりドア戸当面12奥行方向に位置するように配置したものとしてある。従って本例にあって該空隙は,新設ドア2の見付面から面外方向に変位した気密材3の露出を防止するとともに新設ドア2の室内側見付面の外周端部と既設ドア枠1のドア戸当面12との間に横向きにして狭小,例えば3mm幅のものとなり,またその奥行方向を気密材3が閉塞するものとしてある。この場合も,気密材3の露出が防止され先端が閉塞したものとなることによって,同じく狭小の空隙が火炎を実質的に遮断し,新設ドア2の見付面に対する火炎が気密材3に至るのを可及的に防止して,同様にその防火性を確保し得るものとしてある。
【0032】
なお図3乃至図6のその余は上記図1及び図2のものと変らないので,同一符号を付してその重複する説明を省略する。
【0033】
このように形成した新設ドア2は,更に図示省略のドアスコープ,レバーハンドル乃至ドアノブ等その余の部品設置を含めて全てを工場生産して完成品出荷することによって改装現場に搬入し,改装現場の既設ドア枠1に,その既設ドアに交換的に代替してドア改装を行うものとしてある。
【0034】
即ちドア改装は,例えば,既設ドア枠1から既設ドアと,該既設ドアを吊支持している既設ヒンジを取り外して既設ドアを撤去した後,該既設ドア枠1に,必要に応じて塗装を施す等のドア枠補修を行うも,該既設ドア枠1を可及的にそのまま用いて,該既設ドア枠1に新設ヒンジを取り付けて,該新設ヒンジによって新設ドア2を吊支持し,その見込面囲繞状の気密材3の上記突出気密部32を,新設ドア2の閉鎖時に既設ドア枠1のドア戸当面12に対接するようにして,改装ドアAとしての気密性を確保して,その交換的な新設ドア2の設置を行うものとしてある。
【0035】
本例の各改装ドアAは,既設ドア枠1を建物躯体から斫り工事によって取外すことがなく,従ってドア改装に際して工事期間を必要とせず,塵埃,騒音等の発生もないし,また該既設ドア枠1を残すも,カバー工法によって新設ドア枠によって該既設ドア枠1を被覆することもないから,既設ドア枠1の開口をそのまま使用し,従ってドア改装に際して新設ドア枠設置による開口の狭まりもなく,簡易且つ確実にして居住者の居住状態での短時間の工事でそのドア改装を完了することができ,防音断熱性の付与,耐震機能の付与等,ドアの高機能化を図ることができる。
【0036】
図示した例は以上のとおりとしたが,本発明の実施に当って,新設ドア,気密材受溝,気密材,気密材露出防止措置,必要に応じて用いる溝形成部材,火炎遮断溝,突出部等の各具体的材質,形状,構造,これらの関係,これらに対する付加等は上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】改装ドアの縦断面図である。
【図2】改装ドアの横断面図である。
【図3】他の例に係る改装ドアの縦断面図である。
【図4】図3の改装ドアの横断面図である。
【図5】更に他の例に係る改装ドアの縦断面図である。
【図6】図5の改装ドアの横断面図である。
【符号の説明】
【0038】
A 改装ドア
1 既設ドア枠
11 室内側見込面
12 ドア戸当面
13 室外側見込面
2 新設ドア
21 中骨
21a 枠材
22 見込面切欠き状の段部
23 室内側のドア表面板
24 室外側のドア表面板
25 起立片
26 気密材受溝
3 気密材
31 嵌合脚部
32 突出気密部
4 火炎遮断溝
41 突出部
42 見込厚部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設ドアを撤去して残存した既設ドア枠に対して新設ドアを設置し該新設ドアに形成した気密材受溝に気密材を装着して該気密材を既設ドア枠における室内側見込面と室外側見込面の間のドア戸当面に対接することによって気密性を確保するとともに気密材露出防止措置を施すことによって新設ドアの室内側見付面における上記気密材の露出を可及的に防止して新設ドアの防火性を確保した改装ドアの気密構造であって,新設ドアにおける中骨の室内側見付面の外周端部囲繞状に見込面切欠き状の段部を配置するとともに室内側見付面の外周端部囲繞状に気密材受溝を配置したドア表面材を用い,該ドア表面材によって上記中骨を被覆し,該中骨の見込面切欠き状の段部に上記既設ドア枠のドア戸当面に対面する気密材受溝を形成する一方,上記気密材露出防止措置を,上記ドア表面材の見付面外周端部と既設ドア枠のドア戸当面見付方向先端との間の空隙を1cm以下の間隔とするとともに上記気密材のドア戸当面に対する見付方向対接面積を該空隙より大とすることによって施してなることを特徴とする改装ドアの気密構造。
【請求項2】
上記気密材受溝を配置したドア表面材に代えて,室内側見付面の外周端部囲繞状に上記中骨の見込面切欠き状の段部に重合する段部を配置したドア表面材を用いて,新設ドアに外周端部囲繞状の外周段部を配置するとともに該外周段部に断面コ字状乃至断面L字状の溝形成部材を設置し,該溝形成部材によって見付方向端部を区画して上記気密材受溝を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアの気密構造。
【請求項3】
上記気密材露出防止措置を,新設ドアの見付面外周端部又はその近傍に室内側に向けて溝形成用の突出部を配置することによって,既設ドア枠の室内側見込面との間で上記空隙を火炎遮断溝とすることによって施してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の改装ドアの気密構造。
【請求項4】
上記気密材露出防止措置を,新設ドアの室内側見付面を気密材より室内側に突出した見込厚部分を備えて形成し,該見込厚部分を既設ドア枠の室内側開口に部分的に嵌入して,既設ドア枠の室内側見込面との間で上記空隙を火炎遮断溝とすることによって施してなることを特徴とする請求項1に記載の改装ドアの気密構造。
【請求項5】
上記気密材露出防止措置を,気密材のドア戸当面への対接を該ドア戸当面の見付面内において行うように幅狭とし,新設ドアの室内側見付面の端部を既設ドア枠の室内側見込面と面一乃至部分重合するように配置し,上記空隙を該既設ドア枠の室内側見込面の延長線上又はこれよりドア戸当面奥行方向に位置するように施してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の改装ドアの気密構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−221756(P2009−221756A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67945(P2008−67945)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(596108977)株式会社アイ・エス (12)
【出願人】(598081045)フジメタル株式会社 (23)
【Fターム(参考)】