説明

放熱基板及び電子部品

【課題】本発明に係る放熱基板及び電子部品は、高熱伝導性及び高熱放射性を有し、これにより熱に起因する部品の誤作動、性能の低下や劣化、さらには信頼性低下が生じ難くなった。
【解決手段】本発明に係る放熱基板は、金属板としての金属シート3、硬化層2と、接着層1の順で積層された放熱基板である。硬化層2がCステージ状で放熱性を有する。硬化層2の接着層側の表面が表面粗さ0.1μm以上20μm以下である。接着層1がBステージ状である。硬化層及び接着層が、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機フィラーからなり、硬化層の示差走査型熱量計から計算した硬化率が90%以上であり、接着層の硬化率が10%以上75%以下であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品と半導体素子の外周を封止した熱硬化性樹脂を有する放熱基板及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド樹脂で成形された電子部品としては、特許文献1や特許文献2がある。これら電子部品は、近年の電子部品のハイパワー化に対応するための絶縁性の向上、放熱性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−150595公報
【特許文献2】特開2004−165281公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、接着層と硬化層の界面の破壊を低減させしたことにより接着層と硬化層の絶縁性を高めることができた放熱基板及び電子部品である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、金属板と、硬化層と、接着層との順で積層され、硬化層がCステージ状で放熱性を有し、硬化層の接着層側の表面が表面粗さ0.1μm以上20μm以下であり、接着層がBステージ状である放熱基板である。
【0006】
放熱基板の硬化層及び接着層は、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機フィラーからなり、硬化層の示差走査型熱量計から計算した硬化率が90%以上であり、接着層の硬化率が10%以上75%以下であるのが好ましい。
【0007】
放熱基板の硬化層が同一の素材で多層化されたものであるのが好ましい。
【0008】
硬化層及び接着層が熱硬化型であるのが好ましい。
【0009】
無機フィラーが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化珪素の1種以上からなり、無機フィラーの充填率が45体積%以上85体積%以下であることが好ましい。
【0010】
他の観点からの発明は、上述の放熱基板と、放熱基板の絶縁層上に搭載されたリードフレームを有する電子部品である。
【0011】
他の観点からの発明は、前記電子部品と、リードフレームに電気的に接続された半導体素子と、電子部品と半導体素子の外周を封止した熱硬化性樹脂を有する電子部品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る放熱基板及び電子部品は、高熱伝導性及び高熱放射性を有し、これにより熱に起因する部品の誤作動、性能の低下や劣化、さらには信頼性低下が生じ難くなった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る放熱基板を模式的に示した説明図
【符号の説明】
【0014】
1 接着層
2 硬化層
3 金属シート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明は、金属板と、硬化層と、接着層との順で積層され、硬化層がCステージ状で放熱性を有し、硬化層の接着層側の表面が表面粗さ0.1μm以上20μm以下であり、接着層がBステージ状である放熱基板である。
【0017】
電子部品に用いる放熱基板とモールド樹脂は、双方を固着させる際、高温・高圧の環境下に置かれる。その際、モールド樹脂の硬化収縮や放熱基板の金属板、リードフレーム及びモールド樹脂の線膨張係数が異なることにより、接着層と硬化層の界面で剥離が発生し、放熱基板の絶縁性低下すなわち電子部品の絶縁性を低下させる課題があった。
【0018】
本発明は、放熱基板の硬化層表面を粗面にして、接着層と硬化層間の接着性を向上させ、の接着層側の表面が表面粗さ0.1μm以上20μm以下であり、接着層がBステージ状である放熱基板であるため、界面の破壊を無くしたことにより接着層と硬化層の絶縁性を高めることができた。
【0019】
放熱基板の用いる金属板としては、金属又はその合金が良く、熱伝導性の良好な銅や銅合金、軽量なアルミニウムやアルミニウム合金、線膨張係数が少ない鉄及び鉄合金、アルミ・珪素・炭素合金、アルミ・炭素合金、銅・炭素合金があり、表面上にアルマイト処理、粗化処理、カップリング剤、めっき処理等の各種表面処理を施すことが好ましい。
【0020】
硬化層の接着層側の表面が表面粗さは、あまりにその値が小さいと電子部品を作製した際に硬化層と接着層間で剥離が発生する可能性があり、あまりにその値が大きいと粗面にするのに必要以上の時間がかかるので0.1μm以上20μm以下であり、好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
【0021】
硬化層の接着層側の表面を粗面にする方法としては、電解銅箔粗化処理面の凹凸や凹凸のあるポリエチレンテレフタレート製のフィルムを転写させる方法、サンドブラスト法、アルカリ過マンガン酸塩を用いたデスミア処理、プラズマやコロナ放電といった電気的表面処理及びウオータージェットなどによる切削処理、無機フィラーを高充填させて表面に露出させる方法がある。
【0022】
硬化層及び接着層に用いるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂があり、具体的には、ナフタレン型、フェニルメタン型、テトラキスフェノールメタン型、ビフェニル型、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物型のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型の水素添加エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ポリテトラメチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂があり、これらを複数組み合わせて用いることもできる。
【0023】
硬化剤としては、芳香族アミン系樹脂、酸無水物系樹脂、フェノール系樹脂及びジシアンアミドからなる群から選ばれる硬化剤の単体又は混合体がある。硬化反応を制御するために、硬化剤や触媒を添加するのが好ましい。
【0024】
触媒としては、イミダゾール化合物、有機リン酸化合物、第三級アミン、第四級アンモニウムの単体又は混合体がある。配合する際の配合比は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0025】
無機フィラーとしては、電気絶縁性と熱伝導性に優れたものが好ましく、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化珪素の単体又は混合体がある。
【0026】
無機フィラーの配合比は、硬化層及び接着層を構成する組成物の合計量に対して45体積%以上85体積%以下が好ましい。無機フィラーの配合比があまりに少ないと放熱性が不十分になり、あまりに多いと硬化層及び接着層の成形が難しくなる傾向にある。
【0027】
これらフィラーには、カップリング剤、分散剤等の添加剤、溶剤等の粘度調整助剤、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの各種助剤を添加することが好ましい。
【0028】
エポキシ樹脂、硬化材、無機フィラーには不純物が少ないことが好ましい。特に塩素イオン、ナトリウムイオン、硫酸イオンは、高温高湿下で電気を印加した際にイオンマイグレーションを起こすため、不純物の少ない材料を選択することが好ましい。
【0029】
硬化層の示差走査型熱量計から計算した硬化率が90%以上であり、接着層の硬化率が10%以上75%以下であることが好ましい。
【0030】
硬化層は、同一素材で、単層又は複数層で形成され、複数層で形成するのが好ましい。複数層にするのが好ましい理由は、仮に一層にボイド等の形成時の不具合があったても他の硬化層によって絶縁信頼性向上させることができるためである。
【0031】
硬化層及び接着層にあっては、光硬化型では樹脂モールドしてしまうと光を受けられないため、熱硬化型が好ましい。
【0032】
モールド樹脂の素材は、電子部品の安定化のために絶縁シートと熱収縮率の近いものか同一のものが好ましい。モールド樹脂には、無機フィラーを充填したもの、フィラー材料の熱伝導化した放熱性を向上させたモールド樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
本発明では、硬化層を粗化することによって、樹脂モールド後も剥離が発生せず、絶縁性の良好な電子部品を得ることができた。
【実施例】
【0034】
本発明に係る実施例を、比較例と対比して、詳細に説明する。
【0035】
本発明の実施例1に係る放熱基板は、金属板としての金属シート3、硬化層2と、接着層1の順で積層され、硬化層2がCステージ状で放熱性を有し、硬化層2の接着層側の表面が表面粗さ1.0μmとし、接着層1がBステージ状である放熱基板である。
【0036】
<放熱基板の製造方法>
硬化層2は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学社製JER−828)対し、硬化剤としてフェノールノボラック(明和化成社製H−8)を加え、微粒子の酸化アルミニウム(住友化学社製AA05)と粗粒子の酸化アルミニウム(昭和電工社製AS50)を合わせて絶縁層中45体積%(球状粗粒子と球状微粒子は質量比が8:2)となるように配合した液を、厚さ0.5mmのタフピッチ銅上に、絶縁層の厚みが100μmに塗布した。そして、130℃で加熱硬化し、硬化率を90%にして硬化層2を作製した。
このとき、硬化率測定は、示差走査型熱量計を用い、発熱ピークから硬化率を計算した。
【0037】
前記硬化層2に、アルカリ過マンガン酸塩水溶液をスプレーし、硬化層2の表面粗さを1.0μmに調整した。
【0038】
前記硬化層2と同様に配合した液を、厚み100μmで塗布し、110℃で加熱硬化し、硬化率を65%に調整し、接着層3を得た。このときの硬化層2の硬化率は100%であった。
【0039】
製造された放熱基板に対し、予め半導体チップを実装したリードフレームに加熱、接合した後、硬化させ、接合体にトランスファーモールド成型し、樹脂モールド成型した後、160℃で5時間追加硬化し、電子部品を得た。このときの接着層1の硬化率は100%であった。
【0040】
接着層1と硬化層2の密着性は、超音波探査装置(日立ファインテック社製FS300II)にて評価した。評価方法は、この装置での接着層1と硬化層2の間の密着性が悪い場合、すなわち剥離がある場合、観察画像が白くなるので、白い部分の有無で判断した。実施例1での剥離は観察されなかった。
【0041】
絶縁性の評価は、半導体チップと接合しているリードフレームとアルミニウムの耐電圧をJIS C 2110に規定された段階昇圧法で、前記電子部品を絶縁オイル中に入れ評価した。実施例1での耐電圧は、6.0kVと良好であった。
【0042】
(実施例2)
厚さ0.5mmのタフピッチ銅上に、硬化層2の厚みが100μmに塗布後、金属層1としての粗さ19μmの電解銅箔を貼り合わせ、加熱により硬化率を90%にし、前記電解銅箔を化学薬品によるエッチングし硬化層2に凹凸を作製した以外は、実施例1と同様のものである。
【0043】
実施例2の電子部品でも剥離がなく、耐電圧5.5kVと良好な絶縁性を有していた。
【0044】
(比較例)
厚さ0.5mmのタフピッチ銅上に、硬化層2の厚みが100μmに塗布後、金属層1としての表面粗さ0.07μmのSUS製の鏡面板を貼り合わせ、加熱により硬化率を90%にした。前記鏡面板を化学薬品によるエッチングし、硬化層に凹凸を作製した以外は、実施例1と同様のものである。
【0045】
比較例の電子部品では絶縁層間で剥離が観察され、耐電圧4.0kVであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、硬化層と、接着層との順で積層され、硬化層がCステージ状で放熱性を有し、硬化層の接着層側の表面が表面粗さ0.1μm以上20μm以下であり、接着層がBステージ状である放熱基板。
【請求項2】
硬化層及び接着層が、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機フィラーからなり、硬化層の示差走査型熱量計から計算した硬化率が90%以上であり、接着層の硬化率が10%以上75%以下である請求項1記載の放熱基板。
【請求項3】
硬化層が、同一の素材で多層化されて形成された請求項1又は2記載の放熱基板。
【請求項4】
硬化層及び接着層が熱硬化型である請求項1乃至3のいずれか一項記載の放熱基板。
【請求項5】
無機フィラーが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化硼素、窒化珪素の1種以上からなり、無機フィラーの充填率が45体積%以上85体積%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の放熱基板。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の放熱基板と、放熱基板の絶縁層上に搭載されたリードフレーム有する電子部品。
【請求項7】
請求項6記載の電子部品と、リードフレームに電気的に接続された半導体素子と、電子部品と半導体素子の外周を封止した熱硬化性樹脂を有する電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−114314(P2012−114314A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263214(P2010−263214)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】