説明

放熱機能を有する配線基板

【課題】プリント配線基板に固定した立ち基板を、発熱を伴う電子部品の放熱に利用することを基本とし、立ち基板の放熱性能を高め、かつ、ビスを用いずに電子部品を立ち基板に固定するという対策を講じた配線基板を提供する。
【解決手段】プリント配線基板1に面状銅箔パターン52を有する立ち基板5を固定し、発熱を伴う電子部品3の主部31を、立ち基板5に重ね合わせてその立ち基板5を放熱板として用いる。立ち基板5の面状銅箔パターン52の全面に半田盛り層53を形成し、電子部品3の主部31から突き出した放熱片の突出部分33を半田盛り層53に半田付けすることによってその主部31を半田盛り層53に重ね合わせる。主部31と半田盛り層53との重なり部分に伝熱性を有するグリースを介在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、配線基板、特に、発熱を伴う電子部品の熱を放熱する機能を備えた配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの電子機器では、内蔵されているプリント配線基板に電界効果トランジスト(FET)などの発熱を伴う電子部品が実装されていて、この種の発熱を伴う電子部品の発熱を抑えるための対策として、従来より、その電子部品を鉄やアルミニウム製の放熱板にビス止めして重ね合わせておくという手段が講じられていた。
【0003】
しかし、鉄やアルミニウム製の放熱板はコストが高いために、近時では、そのような放熱板の代替え品として銅箔パターンを備えた安価な立ち基板を用い、その立ち基板の銅箔パターンの表面を放熱面として利用するものや(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)、放熱板としてセラミック板を用い、このセラミック板に形成した半田ランドに電子部品の放熱フィンを半田付けしたもの(特許文献4参照)などが提案されている。このうち、特許文献1によって提案されているものは、配線基板に半田付けすることによって起立姿勢に固定した放熱板に備わっている導体箔に発熱部品を重ね合わせてねじ止めするというものであって、放熱板には配線基板を切り出した原板の捨て板部を用いている。また、特許文献2によって提案されているものは、製品用プリント配線基板に接続された電子部品の本体に、スルーホールにより相互接続されたプリント配線基板をビスでなる止め具によって接合してある。特許文献3によって提案されているものも略同様の構成を備えている。
【特許文献1】実用新案登録第3085842号広報
【特許文献2】特開2001−28490号広報
【特許文献3】特開2001−111268号広報
【特許文献4】特開2002−171087号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上掲の特許文献1〜3によって提案されている技術は、立ち基板の銅箔パターンを電子部品の放熱に利用し、しかも、その銅箔パターンを放熱に利用するために電子部品をその銅箔パターンに重ね合わせてビス止めするという手段を採用している点で共通している。
【0005】
しかしながら、立ち基板の銅箔パターンはその肉厚が極薄であるために伝熱性能にそれほど優れているとは云えない点があることから、立ち基板によって十分な放熱性能を発揮させようとすると、それに見合う比較的大サイズの立ち基板が必要になってプリント配線基板上での立ち基板の設置スペースを確保することが、他の電子部品や回路パターンの実装密度を高めることの制約になりやすいという問題がある。
【0006】
また、上掲の特許文献4によって提案されているように、セラミック板を放熱板として用いるものは、セラミック板自体が高価であることに加え、そのセラミック板に半田ランドを形成するなどの余分な加工を行う必要があるので、その製作コストが電子機器の価格を引き上げることにつながるという問題がある。
【0007】
本発明は以上の状況の下でなされたものであり、プリント配線基板を切り出すための原板の捨て板部分を有効活用して製作することのできる立ち基板を、発熱を伴う電子部品の放熱に利用することを基本とし、立ち基板の放熱性能が高まり、しかも、ビスを用いずに電子部品を立ち基板に固定するという対策を講じた放熱機能を有する配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る放熱機能を有する配線基板は、プリント配線基板に、少なくとも片面の全面又は略全面に亘る面状銅箔パターンが形成された立ち基板が備わり、発熱を伴う電子部品のリードピンが接続された上記プリント配線基板から離間して配備された当該電子部品の主部が、上記立ち基板に重ね合わされてその立ち基板が放熱板として用いられている。そして、上記立ち基板の面状銅箔パターンの全面に上記電子部品の主部が重ね合わされた半田盛り層を形成してあることに加えて、その半田盛り層に上記主部を半田付け部分を介して固定してある。この構成であれば、立ち基板の面状銅箔パターンよりも厚肉の半田盛り層によって伝熱路が形成されるので、その半田盛り層に重ね合わされている電子部品の主部での発熱が効率よく半田盛り層に伝わって放熱され、従来の事例のように銅箔パターンによって放熱を促す場合よりも放熱効率が向上する。また、電子部品の主部を半田付け部分を介して半田盛り層に固定したので、ビス止めに用いるビスが不要になるだけでなく、その主部の発熱が半田盛り層に効率よく伝わるようになり、このことも放熱効率を向上させることに役立つ。
【0009】
本発明において、上記電子部品はその主部に放熱機能を有する放熱片を備え、上記半田付け部分が上記放熱片と上記半田盛り層との間にだけ跨がって形成されていることが望ましい。この構成であれば、ディッピングによって立ち基板の面状銅箔パターンに接合された半田盛り層に対し、電子部品の主部に備わっている放熱片を半田付けする工程を容易に行うことができるので、電子部品と立ち基板との固定に要する作業を容易に行うことができるようになって電子機器の量産性を高めることに役立つ。この作用は、上記放熱片が上記主部の外側に突き出ていて、その放熱片の主部からの突出部分と上記半田盛り層との間にだけ跨がって上記半田付け部分が形成されている、という構成を採用することによっていっそう顕著に発揮される。
【0010】
本発明では、上記主部と上記半田盛り層との重なり部分に伝熱性を有するグリースを介在して主部から半田盛り層に至る伝熱面積を増大させてあることが望ましい。これによれば、主部と上記半田盛り層との無半田の重なり部分に介在されたグリースによって十分に広い伝熱面積が確保されるようになるので、半田付けを行うことに困難を伴う主部と半田盛り層との重なり部分に半田付けを行う必要がなくなってそれだけ量産性を高めることができるにもかかわらず、十分な放熱性能が発揮されるようになる。
【0011】
本発明に係る放熱機能を有する配線基板は、プリント配線基板に、少なくとも片面の全面又は略全面に亘る面状銅箔パターンが形成された立ち基板が備わり、発熱を伴う電子部品のリードピンが接続された上記プリント配線基板から離間して配備された当該電子部品の主部が、上記立ち基板に重ね合わされてその立ち基板が放熱板として用いられている放熱機能を有する配線基板において、上記プリント配線基板と上記立ち基板とが共通の原板から切り出されて製作され、その立ち基板がプリント配線基板に半田付けによって固着されており、上記立ち基板の面状銅箔パターンの全面に半田盛り層が形成され、放熱機能を有する放熱片を備えた上記電子部品の主部から突き出した上記放熱片の突出部分だけを上記半田盛り層に半田付けすることによってその主部が上記半田盛り層に重ね合わされていると共に、その主部と上記半田盛り層との重なり部分に伝熱性を有するグリースを介在して主部から半田盛り層に至る伝熱面積を増大させてある、という構成を採用することによっていっそう具体化される。この発明によれば、特に、プリント配線基板と立ち基板とが共通の原板から切り出されて製作されているためにコスト高にならず、また、その立ち基板がプリント配線基板に半田付けによって固着されていることにより、立ち基板をプリント配線基板に固定する手段としてコスト高につながるビスを用いる必要がないという利点がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、立ち基板に面状銅箔パターンよりも厚肉の半田盛り層が形成され、そのような厚肉の半田盛り層に電子部品の主部の発熱が伝えられて放熱が促されるようになっているので、従来の事例のように銅箔パターンによって放熱を促す場合よりも高い放熱効率が得られる。このことを言い換えれば、立ち基板のサイズを従来の事例よりも小さくしてプリント配線基板上での立ち基板の設置スペースを縮小することができるという効果が得られということになり、そのために、他の電子部品の回路パターンの高密度実装が促進されてプリント基板のサイズの小形化、ひいては電子機器の小形化や軽量化を促進することが容易になるという効果が得られる。また、ユーザにとっては、立ち基板による優れた放熱性能により、誤動作が起こりにくく、しかも、耐用性に優れた安価で小型の電子機器を使用することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図1及び図2を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態による放熱機能を有する配線基板の部分斜視図、図2は図1のII矢視方向から見た縦断側面図である。
【0015】
図1及び図2に示した放熱機能を有する配線基板は、プリント配線基板1と、FETのような発熱を伴う電子部品3と、立ち基板5とを備えている。
【0016】
プリント配線基板1は片面又は両面に回路パターンを有していて、その原板から切り出される。また、プリント配線基板1を原板から切り出す際に発生する捨て板部分を有効活用して上記立ち基板5が矩形に切り出されている。この立ち基板5は、紙フェノール材でなる板状部51の片面又は両面の全面又は略全面に亘る面状銅箔パターン52を有し、その面状銅箔パターン52の全面に半田盛り層53が形成されていて、この半田盛り層53は、原板に半田ディッピングを行ってプリント配線基板1に搭載されている電気電子部品を半田付けする際に併せて面状銅箔パターンの上に形成される。
【0017】
そして、図2のように、プリント配線基板1に形成したスリット状の取付孔12に差し込まれた立ち基板5の下端をプリント配線基板1に半田付けすることによって立ち基板5をプリント配線基板1に起立姿勢に固定保持させてある。
【0018】
電子部品3は、主部31とその主部31から引き出されたリードピン32とを有し、リードピン32がプリント配線基板1に半田付けによって接続されているほか、主部31の背面側には主部31の発熱を自己放熱させるための放熱片が備わっていて、その放熱片の一部が主部31の上方へ突き出たフィン状の突出部分33を形成されている。そして、その突出部分33が立ち基板5の半田盛り層53の表面に重ね合わされ、その突出部分33と半田盛り層53との間に跨がって半田付けが行われている。こうして形成されている半田付け部分6だけによって主部31が立ち基板5に固定されていて、この固定状態では、主部31の背面が上記放熱片を介して半田盛り層53の表面に重ね合わされている。
【0019】
ところで、半田盛り層53は、板状部51の面状銅箔パターン52にディッピングによって形成されているので、その半田盛り層53の半田の表面張力やその他の要因によってその表面が平坦になっていることは少なく、そのために、半田盛り層53の表面に重ね合わされている主部31(具体的には放熱片)と半田盛り層53との間には伝熱性能を低下させる要因となる隙間が形成されることが多い。そこで、この実施形態では、主部31と半田盛り層53との重なり部分の全体に伝熱性を有するグリース7を介在させることによって、主部31から半田盛り層53に至る伝熱面積を増大させている。
【0020】
以上のように構成されている放熱機能を有する配線基板によれば、電子部品3の主部31が曲がりやすいリードピン32によりプリント配線基板1から離間してプリント配線基板1に実装されているとしても、立ち基板5がその電子部品3の自立性を補助する機能を発揮するために、電子部品3が倒れて不都合を生じるといった自体が起こらない。
【0021】
また、上記のように構成されているこの実施形態では、立ち基板5の面状銅箔パターン52よりも厚肉の半田盛り層53によって伝熱路が形成されているので、その半田盛り層53に重ね合わされている電子部品3の主部31での発熱が効率よく半田盛り層53に伝わって放熱される。そのため、冒頭で説明した従来の事例、すなわち銅箔パターンによって放熱を促す場合よりも高い放熱性能が得られる。また、電子部品の主部3は、その放熱片の突出部分33を半田盛り層53に半田付けして固定してあるだけであって、その固定にビスを用いていないので、主部3の発熱が直接に又はグリース7や放熱片の突出部分33、さらには半田付け部分6を経て半田盛り層53に効率よく伝わるようになり、このことも放熱効率を向上させることに役立っている。
【0022】
この実施形態では、発熱を伴う電子部品3の一例として、主部31に放熱片が備わっているFETを掲げたけれども、この点は、放熱片を具備していない発熱性の電子部品の主部を、立ち基板5の半田盛り層53に重ね合わせておいてもよい。また、主部に放熱片を備える電子部品において、その放熱片が主部から突き出ていない場合には、主部の背面でその放熱片を半田盛り層53に半田付けしたものであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による放熱機能を有する配線基板の部分斜視図である。
【図2】図1のII矢視方向から見た縦断側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 プリント配線基板
3 電子部品
5 立ち基板
6 半田付け部分
7 グリース
31 主部
32 リードピン
33 放熱片の突出部分
52 面状銅箔パターン
53 半田盛り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線基板に、少なくとも片面の全面又は略全面に亘る面状銅箔パターンが形成された立ち基板が備わり、発熱を伴う電子部品のリードピンが接続された上記プリント配線基板から離間して配備された当該電子部品の主部が、上記立ち基板に重ね合わされてその立ち基板が放熱板として用いられている放熱機能を有する配線基板において、
上記プリント配線基板と上記立ち基板とが共通の原板から切り出されて製作され、その立ち基板がプリント配線基板に半田付けによって固着されており、
上記立ち基板の面状銅箔パターンの全面に半田盛り層が形成され、放熱機能を有する放熱片を備えた上記電子部品の主部から突き出した上記放熱片の突出部分だけを上記半田盛り層に半田付けすることによってその主部が上記半田盛り層に重ね合わされていると共に、その主部と上記半田盛り層との重なり部分に伝熱性を有するグリースを介在して主部から半田盛り層に至る伝熱面積を増大させてあることを特徴とする放熱機能を有する配線基板。
【請求項2】
プリント配線基板に、少なくとも片面の全面又は略全面に亘る面状銅箔パターンが形成された立ち基板が備わり、発熱を伴う電子部品のリードピンが接続された上記プリント配線基板から離間して配備された当該電子部品の主部が、上記立ち基板に重ね合わされてその立ち基板が放熱板として用いられている放熱機能を有する配線基板において、
上記立ち基板の面状銅箔パターンの全面に上記電子部品の主部が重ね合わされた半田盛り層を形成してあることに加えて、その半田盛り層に上記主部を半田付け部分を介して固定してあることを特徴とする放熱機能を有する配線基板。
【請求項3】
上記電子部品はその主部に放熱機能を有する放熱片を備え、上記半田付け部分が上記放熱片と上記半田盛り層との間にだけ跨がって形成されている請求項2に記載した放熱機能を有する配線基板。
【請求項4】
上記放熱片が上記主部の外側に突き出ていて、その放熱片の主部からの突出部分と上記半田盛り層との間にだけ跨がって上記半田付け部分が形成されている請求項3に記載した放熱機能を有する配線基板。
【請求項5】
上記主部と上記半田盛り層との重なり部分に伝熱性を有するグリースを介在して主部から半田盛り層に至る伝熱面積を増大させてある請求項4に記載した放熱機能を有する配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−216652(P2006−216652A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26140(P2005−26140)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】