説明

放電灯点灯装置および照明装置

【課題】放電灯の点灯中のフィラメント加熱電流を放電灯毎に適切にして、放電灯の早期黒化および電力損失の増大を防止できる放電灯点灯装置および照明装置を提供すること。
【解決手段】抵抗値検出手段(9、10)が放電灯4のフィラメントの予熱後の(温抵抗値/冷抵抗値)の値を監視し、予め設定された値になると、そのときのフィラメント予熱電流値(If1)を検知する。次に、放電灯を始動、点灯した時には、フィラメント加熱電流設定手段が、前記フィラメント予熱電流値(If1)に基いて、式(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)=a−b(IL/If1)を満足するように、フィラメントに流れるフィラメント加熱電流を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱陰極形の放電灯を高周波点灯する放電灯点灯装置およびこの放電灯点灯装置を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプ等の熱陰極形の放電灯は、始動前のフィラメント予熱電流の他、点灯時のフィラメント加熱電流もその寿命特性に影響することが知られている。特に、調光点灯時のフィラメント加熱電流が不足すると早期黒化の原因となる。一方、点灯中におけるフィラメント加熱電流を過多にすると、電力損失を増大(効率の低下)させてしまうものである。
【0003】
蛍光ランプの点灯中のフィラメント加熱電流に関する論文が、Conference Record of the IEEE Industry Applications Conference 2002 の673頁〜679頁に示されている(非特許文献1)。
【0004】
また、特許文献2には、調光点灯時のフィラメント加熱電流値を、加熱時の抵抗値(温抵抗値)が非加熱時のフィラメント抵抗値(冷抵抗値)の4.75倍未満となるように規制することが示されている。
【非特許文献1】Conference Record of the IEEE Industry Applications Conference 2002 の673頁〜679頁「Standardized data for dimming of fluorescent lamps」
【特許文献1】特開2002−373797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1は、予熱時のフィラメント抵抗値(温抵抗値)が非加熱時のフィラメント抵抗値(冷抵抗値)の所定倍(例えば4.75倍)であるときの予熱電流値をIf1であるとしたとき、調光点灯時のフィラメント加熱電流値を、式(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)=a−b(IL/If1)を満足するように設定すればよいことを示している。(但し、I1は一方のフィラメントに流れ込む電流値、I2は一方のフィラメントから流れ出る電流値、ILはランプ電流値、を示し、aおよびbは定数である。)
【0006】
しかしながら、実際の放電灯点灯装置の場合、前記予熱電流値If1を知ることが困難である。すなわち、この予熱電流値If1はランプの種別、メーカー別、さらに、同一メーカーの同一種別であっても個々に異なる可能性がある。したがって、実際の放電灯点灯装置においては、前記予熱電流値If1をいかに適切に検知するかが問題となる。しかし、非特許文献1は、このような課題については何ら言及していない。
【0007】
特許文献2は、フィラメントの温抵抗値と冷抵抗値との比を一律に4.75倍以下に規制しているから、加熱電流不足による早期黒化を防止ないしは低減できるものである。しかし、特許文献2のものは電力損失に対しては考慮されておらず、フィラメント加熱電流の下限については示していない。
【0008】
本発明は、放電灯の点灯中のフィラメント加熱電流を放電灯毎に適切にして、放電灯の早期黒化および電力損失の増大を防止できる放電灯点灯装置および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の放電灯点灯装置は、熱陰極形の放電灯を点灯する高周波発生装置と;放電灯のフィラメントの冷抵抗値および温抵抗値を検出して、温抵抗値/冷抵抗値が予め設定された所定値になるフィラメント予熱電流値(If1)を求める抵抗値検出手段と;フィラメント予熱電流値(If1)に基いて放電灯点灯時のフィラメント加熱電流値を次の式(1)(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)=a−b(IL/If1)…(1)(但し、I1は一方のフィラメントに流れ込む電流値、I2は一方のフィラメントから流れ出る電流値、ILはランプ電流値、を示し、aおよびbは定数である。)を満足するように設定するフィラメント加熱電流設定手段と;を具備していることを特徴とする。
【0010】
本発明および以下の発明において、用語の定義および技術的な意味は次のとおりである。熱陰極形の放電灯とは、予熱形のフィラメント電極を有するものであり、用途としては一般照明用、殺菌用、装飾用等どのようなものでもよく、形状的には直管形、円形、角形、いわゆるコンパクト形といわれるもの等どのようなものでもよい。
【0011】
高周波発生装置は、例えばインバータを用いて構成することができる。インバータを用いて構成している場合には、発振周波数を制御することにより出力を変化するようにしてもよい。すなわち、この発振周波数の制御により、インバータが含んでいる共振回路の出力を変化して、または、誘導性あるいは容量性のインピーダンス装置のインピーダンス値の変化を利用して出力を変化することができる。このような出力変化により、実際のランプ電流値ILにおよびフィラメント予熱電流値(If1)に応じて、フィラメントに流れ込む電流値I1、フィラメントから流れ出る電流値I2すなわち、フィラメント加熱電流を所望に制御することが可能である。
【0012】
抵抗値検出手段は、例えば電流検出手段および電圧検出手段の検出値を用いて演算により抵抗値求めるように構成することができる。この場合、電流検出手段および電圧検出手段の検出値をアナログ/デジタル変換して、例えば後述の作動制御装置で演算処理することができる。
【0013】
作動制御装置は、IC、マイコン、DSP(ディジタルシグナルプロセッサ)等にて構成するのが小形化、処理速度の点で有利である。また、作動制御装置は、フィラメントの冷抵抗値を測定、記憶しておき、同じフィラメントの予熱後の温抵抗値との比(温抵抗値/冷抵抗値)を求める。そして、この(温抵抗値/冷抵抗値)の値が予め設定した値になったときのフィラメント予熱電流値(If1)を記憶する。この場合、フィラメントの温抵抗値は、実質放電灯にランプ電流が流れていない状態での抵抗値とする。これは、ランプ電流による温抵抗値への影響を排除するためのものである。具体的には消灯〜定格点灯(100%)に対して30%まで減光点灯した状態のランプ電流値程度しか流さないようする。
【0014】
前記(温抵抗値/冷抵抗値)の値として予め設定される値は、例えば4.75であるが、この1点に限られるものではない。一般には4.00〜4.75の間から選定することができる。
【0015】
フィラメント加熱電流設定手段としては、前記作動制御装置によって構成されるのが好ましい。すなわち、記憶手段および演算手段を兼用すれば、それだけ小形化および低価格化に有利である。
【0016】
このような請求項1記載の放電灯点灯装置は、抵抗値検出手段が放電灯のフィラメントの予熱後の(温抵抗値/冷抵抗値)の値を監視し、予め設定された値になると、そのときのフィラメント予熱電流値(If1)を検知する。次に、放電灯を始動、点灯した時には、フィラメント加熱電流設定手段が、前記フィラメント予熱電流値(If1)に基いて、式(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)=a−b(IL/If1)を満足するように、フィラメントに流れるフィラメント加熱電流を制御する。
【0017】
請求項2に記載の放電灯点灯装置は、請求項1記載の発明において、前記抵抗値検出手段およびフィラメント加熱電流設定手段が、点灯される熱陰極形の放電灯が交換される度に作動してフィラメント加熱電流値を設定することを特徴とする。
【0018】
前記抵抗値検出手段およびフィラメント加熱電流設定手段は、放電灯が始動点灯される度にフィラメント予熱電流値(If1)を検知し、フィラメント加熱電流を設定するようにしてもよい。しかし、前述のように、実質ランプ電流を流さないか減少させた状態でフィラメント予熱電流値(If1)を求める必要があり、このような使用状態は極力少なくした方がよい。
【0019】
請求項2記載の発明は、放電灯を交換する度に作動させるようにしたから、実際に点灯する放電灯のフィラメント予熱電流値(If1)を検知して、フィラメント加熱電流を設定できながら、検知期間を極力少なくできる。
【0020】
請求項3記載の照明装置は、照明器具本体と;この器具本体に設けられた熱陰極形の放電灯と;この放電灯を点灯する請求項1ないし3のいずれか一記載の放電灯点灯装置と;を具備している。
【0021】
照明装置はとしては、屋内用、屋外用を問わないし、点灯装置が照明器具本体に内蔵されていても内蔵されていなくてもよいものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、放電灯の点灯中におけるフィラメント加熱電流値を適正にして、早期黒化を防止するとともに電力損失を軽減する放電灯点灯装置を提供できる。
【0023】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明に加えて、実際に点灯する放電灯に合わせてフィラメント加熱電流値を適正にできながら、フィラメント予熱電流値の検知期間を最小にして使用に与える影響が少ない放電灯点灯装置を提供できる。
【0024】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の効果を奏する照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の放電灯点灯装置の一実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。図1は点灯装置の一実施形態を示すブロック図、図2は同実施形態の作用を示す流れ図、図3はランプ電流とフィラメント電流との関係の一例を示す図である。
【0026】
図1において、1は商用交流電源、2は商用交流電源1の出力電圧を整流し必要に応じて平滑する整流装置である。高周波発生装置3は前記整流装置2の出力電圧を例えば可聴周波数以上の高周波電圧に変換して熱陰極形の放電灯4を点灯する。本実施形態の高周波発生装置3は、高周波発生手段を構成するスイッチング部5、直流カット用のコンデンサ6、共振用兼流用のインダクタ7および共振用兼始動用のコンデンサ8からなる直列回路部を有している。前記インダクタ7およびコンデンサ8は少なくとも放電灯4の点灯開始以前はスイッチング部5のスイッチング出力を供給されて直列共振回路を形成する。したがって、この直列共振回路の固有振動周波数に対するスイッチング部5の出力周波数の上昇または下降により共振出力は変化する。
【0027】
抵抗値検出手段は、フィラメント電流を検出する第1の電流検出手段9、フィラメント間電圧を検出する電圧検出手段10、これらの検出手段の検出値からフィラメント抵抗を演算する演算手段11を有している。なお、図示は省略したが、アナルグ/デジタル変換手段が前記演算手段11の前段に設けられるか、演算手段11に内蔵されている。
【0028】
また、第2の電流検出手段12が放電灯4の高周波発生装置3側に設けられている。この、第2の電流検出手段12はフィラメントに流れ込む電流I1を検出し、前記第1の電流検出手段9はフィラメントから流れ出る電流I2を検出する。
【0029】
また、整流装置2から放電灯4のフィラメントに直流電流を供給するようになっており、この直流電流の有無をランプ装着検出手段13で検出するようにしている。すなわち、放電灯4がソケット(図示しない。)から外されると、ランプ装着検出手段13は直流電流に基く電圧信号を検知しなくなるため、放電灯4が交換されたことを知る。
【0030】
14は前記高周波発生装置3の作動制御装置であり、演算手段11からの信号に応じて高周波発生装置3の作動を制御する。具体的には、スイッチング部5のスイッチング動作およびスイッチング周波数を制御する。本実施形態では、放電灯4の始動時の予め設定された期間は予め設定されたフィラメント電流が放電灯4のフィラメントに流れるようにスイッチング部5のスイッチング周波数を制御する。その後、始動用の高電圧を出力するように作動制御する。また、放電灯4が点灯すると、所定のランプ電流を放電灯4に印加できるように始動シーケンスが構成されている。
【0031】
次に本実施形態の作用を図2を参照して説明する。まず、ランプ装着検出手段13からの信号により、ランプ交換があったか否かを判定する(S1)。ランプ交換があった場合、フィラメント予熱開始と同時にまたは微少な予熱電流を供給し、第1の電流検出手段9および電圧検出手段10の検出信号から冷抵抗値を検出する(S2)。ついで、フィラメント予熱を開始し(S3)、温抵抗値を前記と同様第1の電流検出手段9および電圧検出手段10の検出信号から検出する(S4)。そして、温抵抗値/冷抵抗値が例えば4.75になったときのフィラメント予熱電流(If1)を求め(S5)、記憶する(S6)。
【0032】
以後は、放電灯4の始動に際しては、上述した始動シーケンスでフィラメント予熱(S7)、始動電圧印加(S8)を経て、放電灯4を点灯する。点灯中においては、ランプ電流が予め設定された(調光を含む)値になるように第2の電流検出手段12からの信号等に応じて負帰還制御する。また、第2の電流検出手段12および第1の電流検出手段9からの信号に応じて、次の式(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)=a−b(IL/If1)を満たすように、演算手段11は作動制御装置14を制御する(S9)。したがって、作動制御装置14は高周波発生装置3の出力が所望のものになるように、スイッチング部5のスイッチング周波数を制御する。
【0033】
ここで、(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)と(IL/If1)との関係の一例を図3に示す。図3においては、定数aを1.6、定数bを0.8とした場合を下限値とし、定数aを1.8、定数bを0.54した場合を最適値としている。なお、上限値は、例えば温抵抗値/冷抵抗値=4.75とすることができる。
【0034】
また、定数aおよびbは、ランプ電流やフィラメント電流がフィラメントを流れる際の温度上昇を考慮して、実験的に求めることができるものである。
【0035】
なお、本実施形態の放電灯点灯装置は放電灯4の寿命末期検出機能等を有していてもよく、この場合、電流検出手段9、12、電圧検出手段10、演算手段11をそれらの検出、判断部品として兼用することが可能である。
【0036】
次に、図4を参照して本発明の放電灯点灯装置の第2の実施形態を説明する。図4は放電灯点灯装置の第2の実施形態を示す回路図である。
【0037】
図4において、図1と同じあるいは対応する部分には同じ符号を付して説明を省略する。本実施形態において、スイッチング部5は、ハーフブリッジ形のインバータを構成する互いに直列接続された一対のFET51、52およびこれらFET51、52を交互にオンオフさせる駆動回路53を有している。
【0038】
また、演算手段11は、アナログ/デジタル変換手段111、CPU等の処理手段112、記憶手段113、タイマ手段114、および前記駆動回路53と信号送受するためのインターフェイス115を有している。
【0039】
本実施形態の作用は容易に理解されるので、説明を省略する。
【0040】
次に図5を参照して照明装置の実施形態を説明する。本実施形態の照明装置は、天井直付形の照明器具である。図5において51は照明器具本体、52は照明器具本体51に設けられたソケット、53は反射板、54はソケット72に装着された熱陰極形の放電灯、55照明器具本体51に内蔵された放電灯点灯装置である。
【0041】
このような構成の照明装置は、熱陰極形の放電灯55が点灯中において適正に加熱されるから、早期黒化を防止でき、電力損失も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】放電灯点灯装置の一実施形態を示すブロック図
【図2】同実施形態の作用を示す流れ図
【図3】ランプ電流とフィラメント電流との関係の一例を示す図
【図4】放電灯点灯装置の第2の実施形態を示す回路図
【図5】照明装置の一実施形態を示す斜視図
【符号の説明】
【0043】
3:高周波発生装置、4:放電灯、9:第1の電流検出手段、10:電圧検出手段、11:演算手段、12:第2の電流検出手段、13:ランプ装着検出手段、14:作動制御装置手段、51:照明器具本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱陰極形の放電灯を点灯する高周波発生装置と;
放電灯のフィラメントの冷抵抗値および温抵抗値を検出して、温抵抗値/冷抵抗値が予め設定された所定値になるフィラメント予熱電流値(If1)を求める抵抗値検出手段と;
フィラメント予熱電流値(If1)に基いて放電灯点灯時のフィラメント加熱電流値を次の式(1)(I1/If1)×(I1/If1)+(I2/If1)×(I2/If1)=a−b(IL/If1)…(1)
(但し、I1は一方のフィラメントに流れ込む電流値、I2は一方のフィラメントから流れ出る電流値、ILはランプ電流値、を示し、aおよびbは定数である。)
を満足するように設定するフィラメント加熱電流設定手段と;
を具備していることを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記抵抗値検出手段およびフィラメント加熱電流設定手段は、点灯される熱陰極形の放電灯が交換される度に作動してフィラメント加熱電流値を設定することを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の放電灯点灯装置と;
放電灯点灯装置により点灯される放電ランプと;
放電ランプが配設された器具本体と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−294282(P2007−294282A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121530(P2006−121530)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】