放電灯点灯装置及びそれを用いた前照灯並びに車両
【課題】ランプ点灯時の高周波ノイズを低減しつつ、ランプの長寿命化を図った放電灯点灯装置及びそれを用いた前照灯並びに車両を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置は、DC−DCコンバータ部1と、DC−DCコンバータ1の出力を矩形波の交流電圧に変換してメタルハライドランプLaに供給するインバータ部2と、DC−DCコンバータ部1及びインバータ部2の出力を制御する制御部6とを備える。制御部6は、メタルハライドランプLaの累積点灯時間を計測する累積点灯時間計測部63と、極性反転に同期してランプ電流を増加させることでインバータ部2の出力電力を増加させる電流目標上昇部65とを備え、電流目標上昇部65は、累積点灯時間の計測結果に応じて、点灯初期は出力電力の増加分を大きくするとともに、累積点灯時間の経過に応じて出力電力の増加分を減少させることで、ノイズ低減の効果を低下させている。
【解決手段】放電灯点灯装置は、DC−DCコンバータ部1と、DC−DCコンバータ1の出力を矩形波の交流電圧に変換してメタルハライドランプLaに供給するインバータ部2と、DC−DCコンバータ部1及びインバータ部2の出力を制御する制御部6とを備える。制御部6は、メタルハライドランプLaの累積点灯時間を計測する累積点灯時間計測部63と、極性反転に同期してランプ電流を増加させることでインバータ部2の出力電力を増加させる電流目標上昇部65とを備え、電流目標上昇部65は、累積点灯時間の計測結果に応じて、点灯初期は出力電力の増加分を大きくするとともに、累積点灯時間の経過に応じて出力電力の増加分を減少させることで、ノイズ低減の効果を低下させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びそれを用いた前照灯並びに車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の前照灯やプロジェクタの光源として、メタルハライドランプのような高輝度放電灯が用いられている。光源としてメタルハライドランプを用いる放電灯点灯装置では、音響共鳴現象の発生を防止するために矩形波点灯方式を採用しているが、矩形波点灯方式では極性反転時にランプ電流がゼロになる瞬間が生じるため、放電状態が不安定になり、メタルハライドランプのフリッカが発生したり、最悪の場合は立ち消えが発生することもある。また、立ち消えが生じない場合でも、メタルハライドランプが一旦消灯した後、再点弧されるため、極性反転時にメタルハライドランプから発生するノイズが増大するという問題があった。尚、矩形波出力の極性反転時にはランプ電流がゼロになることでメタルハライドランプが一旦消灯した後、反対側の極性の電圧が立ち上がるのであるが、このとき陰極となる電極に輝点が形成されるまでに時間を要し、その間は低い電流しか流れなくなる。その後、陰極に輝点が形成されると、ランプインピーダンスが低下して、電流が増加し、その電流によって輝点が安定に保たれるのであるが、輝点が消失した後、再び輝点が形成されるまでの間にランプ電圧に急峻な変動が発生するため、これによってノイズが発生すると考えられている。
【0003】
ここで、極性反転時においてメタルハライドランプが一旦消灯した後に輝点が形成されやすくすれば、極性反転時に発生するノイズを低減することができると考えられるので、図19(a)に示すようにランプ電流が反転する前にランプ電流を増大させたり、図19(b)〜(d)に示すようにランプ電流が反転する前後でランプ電流を増大させることにより、電極温度を上昇させて、輝点が形成されやすくし、それによって立ち消えやフリッカを防止した放電灯点灯装置が従来提案されていた(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特表平10−501919号公報
【特許文献2】特開2002−110392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の放電灯点灯装置では、ランプ電流の極性が反転する前にランプ電流を増大させることによって電極温度を上昇させているので、極性反転時の電極温度を高温状態に保つことができ、それによってランプ電流の極性反転時および反転直後の放電状態を安定させることが可能となった。また、極性反転時および反転直後の放電状態を安定させることで、極性反転時にメタルハライドランプが発生する高周波ノイズを低減させる効果も確認できたのであるが、上述のように電極温度を上げると、電極の蒸発や、溶融による変形を招いて、メタルハライドランプの寿命が短くなる虞があった。
【0005】
ところで、本発明者らは、ランプ電流の極性反転時にメタルハライドランプから発生する高周波ノイズが、累積点灯時間の増加につれて低下することを確認している。図20は、メタルハライドランプを用いた車両用の前照灯について、極性反転時にメタルハライドランプが発生する高周波ノイズに起因すると思われるノイズ(周波数が約400kHz)のピーク値と累積点灯時間の関係を測定した結果を示しており、何れのランプA〜Cの場合も累積点灯時間が経過するにつれて、ノイズレベルが減少するという結果が得られた。
【0006】
この現象は以下のような理由で発生すると考えられる。累積点灯時間の経過に伴って、ランプ内に封入されたメタルハライド(ハロゲン化金属)と、ランプ管を形成するガラスとが反応することでランプ内に遊離ヨウ素が発生し、ランプ内の遊離ヨウ素が増加することになり、この遊離ヨウ素によりアーク放電が影響を受けて、電極上に形成されるホットスポットが小さくなり、スポット温度が上昇すると考えられ、このスポット温度の上昇により放電が安定してノイズレベルが減少するものと推定される。
【0007】
このように累積点灯時間の経過に応じて、電極スポットの温度が上昇すると、メタルハライドランプの再点弧時に発生する高周波ノイズは減少するのであるが、ノイズ低減のために電極温度を高めるような動作を続けると、電極温度が過大に上昇して、電極の蒸発や溶融による変形を招いて、メタルハライドランプの寿命が短くなる虞があった。またメタルハライドランプからの高周波ノイズを低減するため、ノイズフィルターや電磁シールドを設けることも考えられるが、コスト高を招くという問題もあった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ランプ点灯時の高周波ノイズを低減しつつ、ランプの長寿命化を図った低コストの放電灯点灯装置及びそれを用いた前照灯並びに車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、入力電源をメタルハライドランプの点灯に必要な電圧値の直流電圧に変換する電力変換部と、電力変換部の出力を矩形波の交番電圧に変換してメタルハライドランプに供給するインバータ部と、インバータ部の出力を調整することによって、インバータ部の出力の極性反転時にメタルハライドランプから発生するノイズを低減させるノイズ低減部と、累積点灯期間が長くなるとノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させる制御部とを設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力の極性を反転させるのに要する極性反転時間を調整する時間調整手段を有し、制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、時間調整手段により極性反転時間を増加させることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力の極性反転に同期してインバータ部の出力電力を増加させる出力調整手段を有し、制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、出力調整手段による出力電力の増加分を減少させることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力波形を非対称形に変化させる波形調整手段を有し、累積点灯時間に応じて出力波形を変化させることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力電流を変化させる電流調整手段を有し、制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、電流調整手段により出力電流を低下させることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1つの発明において、制御部は、メタルハライドの電気的特性値から累積点灯時間を検出することを特微とする。
【0015】
請求項7の発明は前照灯であって、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を具備したことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は車両であって、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置、又は、請求項7記載の前照灯の何れかを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、メタルハライドランプから発生する高周波ノイズは累積点灯時間の増加とともに低減されることが判明しているが、請求項1の発明によれば、制御部が、累積点灯時間の経過に応じてノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させており、ランプの使用初期はノイズ低減部によるノイズの低減効果が相対的に大きくなっているので、ノイズ低減部のノイズ低減効果によりランプ点灯時の高周波ノイズを低減することができる。しかも制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、ノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させているので、例えば、ノイズ低減部がランプに流れる電流やランプに供給する電力を増加させることで高周波ノイズを低減する場合には、累積点灯時間の増加に伴って、メタルハライドランプから発生する高周波ノイズが低下するにつれ、ノイズ低減部によるノイズ低減効果を低下させることで、メタルハライドランプに加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。さらにノイズフィルターや電磁シールドが不要になるので、低コストの放電灯点灯装置を実現できるという効果もある。
【0018】
また、極性反転時間を短くすることで、メタルハライドランプが発生するノイズを低減することができるのであるが、請求項2の発明によれば、点灯初期はノイズ低減部が極性反転時間を短くしているので、ノイズ低減を図ることができ、且つ累積点灯時間が長くなるにつれて極性反転時間を増加させることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。
【0019】
また、極性反転に同期してインバータ部の出力電力を増加させることで、メタルハライドランプが発生するノイズを低減することができるのであるが、請求項3の発明によれば、点灯初期はノイズ低減部が出力電力の増加分を大きくしているので、ノイズ低減を図ることができ、且つ累積点灯時間が長くなるにつれて出力電力の増加分を小さくすることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、ノイズ低減部が、例えばランプ電流の加算値や極性反転時間を調整することで、出力波形を非対称形にしてノイズ低減を図っており、そのうえ累積点灯時間が長くなるにつれて出力波形を変化させることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減することもできる。
【0021】
また、インバータ部の出力電流を増加させることで、メタルハライドランプが発生するノイズを低減することができるのであるが、請求項5の発明によれば、点灯初期はノイズ低減部が出力電流の増加分を大きくしているので、ノイズ低減を図ることができ、且つ累積点灯時間が長くなるにつれて出力電流の増加分を小さくすることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、メタルハライドランプの累積点灯時間を計時するタイマや、タイマのカウント値をリセットするスイッチなどが不要になるので、コストダウンを図ることができ、またランプ交換時にリセット操作を行う手間が要らないので、利便性が向上するという効果もある。
【0023】
請求項7の発明によれば、メタルハライドランプから発生するノイズを低減しつつ、メタルハライドランプの長寿命化を図った低コストの前照灯を提供することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、メタルハライドランプから発生するノイズを低減しつつ、メタルハライドランプの長寿命化を図った低コストの放電灯点灯装置又は前照灯を搭載した車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図6に基づいて説明する。
【0027】
本実施形態の放電灯点灯装置は、高輝度放電ランプであるメタルハライドランプを点灯させるための点灯装置からなり、図1の回路図に示すように、直流電源Eからの直流電圧を、メタルハライドランプLaの点灯に必要な電圧値の直流電圧に変換(昇降圧)するDC−DCコンバータ部1(電力変換部)と、DC−DCコンバータ部1の出力を低周波の矩形波交番電圧に変換してメタルハライドランプLaに供給するインバータ部2と、メタルハライドランプLaを始動させる際に数10kVの電圧を発生してメタルハライドランプLaに印加するイグナイタ部3と、DC−DCコンバータ部1の出力電圧を検出する電圧検出部4と、DC−DCコンバータ部1の出力電流を検出する電流検出部5と、電圧検出部4及び電流検出部5の検出結果に基づいて出力電力が目標電力となるようにDC−DCコンバータ部1の動作を制御する機能と、インバータ部2の出力を周期的に反転(交番)させる機能を有する制御部6とを備える。尚、メタルハライドランプLaは、ガラスバルブの内部に、例えばヨウ化ナトリウム(NaI)などのハロゲン化金属(メタルハライド)を封入して構成される。
【0028】
この放電灯点灯装置では、DC−DCコンバータ部1が直流電源Eを電圧変換し、インバータ部2ではDC−DCコンバータ部1の出力電圧を矩形波交番電圧に変換する。さらに、インバータ部2の出力にはイグナイタ部3が接続され、イグナイタ部3からメタルハライドランプLaに始動用高電圧を印加することによってメタルハライドランプLaを始動する。尚、具体構成を図示していないが、電圧検出部4および電流検出部5は、抵抗などを用いて構成すれば良い。
【0029】
DC−DCコンバータ部1は、直流電源Eの両端間に接続される、トランスT1の1次巻線n1とMOSFETからなるスイッチング素子Q1との直列回路を備え、トランスT1の2次巻線n2にダイオードD1を介して平滑コンデンサC1を接続した構成を有する。ダイオードD1は、スイッチング素子Q1のオン時には平滑コンデンサC1に充電電流を流さず、スイッチング素子Q1のオフ時に巻線n1から平滑コンデンサC1に充電電流を流す極性に接続される。つまり、DC−DCコンバータ部1はフライバック形であって、スイッチング素子Q1のオン/オフの時間を制御することによって、直流電源Eの端子電圧に対して平滑コンデンサC1の両端電圧の昇圧と降圧とが可能になっている。
【0030】
インバータ部2は、それぞれMOSFETからなる4個のスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続したフルブリッジ回路であって、スイッチング素子Q2,Q4からなる直列回路と、スイッチング素子Q3,Q5からなる直列回路とが、DC−DCコンバータ部1の出力端に設けた平滑コンデンサC1にそれぞれ並列接続されている。そして、スイッチング素子Q2,Q4の接続点とスイッチング素子Q3,Q5の接続点との間にはイグナイタ部3に設けたトランスT2の2次巻線n2を介してメタルハライドランプLaが接続されている。つまり、インバータ部2の出力端間にトランスT2の2次巻線n2とメタルハライドランプLaとの直列回路が接続される。スイッチング素子Q2〜Q5は制御部6によりオン/オフが制御される。通常の制御では、メタルハライドランプLaに低周波の矩形波交番電圧が印加されるように、スイッチング素子Q2,Q5の組とスイッチング素子Q3,Q4の組とが交互にオン/オフを繰り返すように制御される。
【0031】
イグナイタ部3は、インバータ部2の出力端間に接続されたコンデンサC2と、1次巻線n1の一端がコンデンサC2の一端に接続されたトランスT2と、トランスT2の1次巻線n1の他端とコンデンサC2の他端との間に接続されたスパークギャップSGとで構成される。したがって、コンデンサC2の両端電圧がスパークギャップSGのブレークオーバ電圧に達するまでコンデンサC2を充電すると、スパークギャップSGのブレークダウンによってコンデンサC2からトランスT2の1次巻線n1に電流が流れ、トランスT2の2次巻線n2に高電圧が発生する。トランスT2の2次巻線n2はメタルハライドランプLaに接続されているから、2次巻線n2に発生した高電圧はメタルハライドランプLaに印加され、メタルハライドランプLaを始動することができる。
【0032】
制御部6は、電圧検出部4で検出されるDC−DCコンバータ部1の出力電圧(ランプ電圧に相当)と、電流検出部5で検出されるインバータ部2への供給電流(ランプ電流に相当)とを用いて、DC−DCコンバータ部1の出力電力が電力目標値になるように、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御する機能を有している。
【0033】
以下に制御部6についてさらに具体的に説明する。制御部6は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する)を主構成要素に用いたものであって、例えばROMからなり予め電力目標値Pdが設定された電力目標記憶部61と、電力目標記憶部61に記憶された電力目標値Pdと電圧検出部4で検出した検出電圧値Vsとを用いて目標電流値Id1を設定する電流目標演算部62と、インバータ部3の動作時間を計測し、その累積値をランプの累積点灯時間として求める累積点灯時間計測部63と、インバータ部2に出力の極性を反転させる反転命令を出力するとともに、反転前後のタイミングで反転同期信号SYを発生する反転判断部64と、反転判断部64からの反転同期信号SYの入力に同期して、累積点灯時間計測部63の計測結果に応じて決定される電流加算値を目標電流値Id1に加算して得た目標電流値Id2を出力するとともに、反転同期信号SYが無い場合は目標電流値Id1をそのまま目標電流値Id2として出力する電流目標上昇部65(ノイズ低減部、出力調整手段)と、電流検出部5で検出される出力電流検出値Isと目標電流値Id2とを比較し、両者の差が無くなるように制御信号S2をスイッチング素子Q1に出力する誤差アンプ66とを備える。尚、ランプ交換の際にリセットスイッチSWが操作されると、累積時間計測部63では累積点灯時間をクリアしてゼロに戻すようになっている。
【0034】
ここで、本点灯装置の動作について説明する。図示しない電源スイッチが投入されて、直流電源EからDC−DCコンバータ部1に電源が供給されると、DC−DCコンバータ部1ではスイッチング素子Q1のオン期間に、トランスT1の1次巻線n1とスイッチング素子Q1とを通して電流が流れる。ただし、この期間においてトランスT1の2次側に生じる誘起電圧はダイオードD1の逆方向になるから、平滑コンデンサC1に充電電流を流すことはできず、1次巻線n1に流れる電流のエネルギはトランスT1に蓄積される。その後、スイッチング素子Q1がオフになると、トランスT1に蓄積されていたエネルギによって、2次巻線n2−平滑コンデンサC1−ダイオードD1−2次巻線n2の経路で電流が流れ、トランスT1に蓄積されていたエネルギが平滑コンデンサC1に移される。
【0035】
メタルハライドランプLaの始動前にはメタルハライドランプLaが導通していないから、インバータ部2は無負荷状態に近く、DC−DCコンバータ部1は軽負荷になるから平滑コンデンサC1の電圧が上昇する。ここで、インバータ部2のスイッチング素子Q2,Q5をオンに保つとともに、スイッチング素子Q3,Q4をオフに保っておけば、平滑コンデンサC1の両端電圧がコンデンサC2の両端電圧にそのまま反映され、コンデンサC2の両端電圧が上昇する。その後、コンデンサC2の両端電圧がスパークギャップSGのブレークオーバ電圧に達すると、スパークギャップSGがブレークダウンし、上述したようにトランスT2の1次巻線n1に瞬時に電流が流れて、トランスT2の2次巻線n2に高電圧(数10kV程度)が誘起され、メタルハライドランプLaが始動される。このようにしてメタルハライドランプLaが始動されると、その瞬間にDC−DCコンバータ部1からメタルハライドランプLaに電流が流れ、メタルハライドランプLaはアーク放電に移行する。
【0036】
メタルハライドランプLaの始動後(点灯後)は、制御部6の反転判断部64が、インバータ部2のスイッチング素子Q2〜Q5を上述したようにオン/オフさせることによって、インバータ部2の出力を所定時間間隔で交番させて、メタルハライドランプLaに矩形波交番電圧を印加する。また制御部6の電流目標演算部62では、電流目標記憶部61から入力された電力目標値Pdを電圧検出部4の検出電圧値Vsで割ることによって、電流目標値Id1を求めている。反転判断部64では、反転信号を出力すると、反転前後のタイミングで反転同期信号SYを電流目標上昇部65に出力しており、出力調整手段としての電流目標上昇部65では、反転同期信号SYが入力されると、累積点灯時間計測部63により計測された累積点灯時間に応じて目標値の加算分を決定し、この加算分を電流目標演算部62から入力された電流目標値Id1に加算することで電流目標値Id2を求め、この電流目標値Id2を誤差アンプ66に出力する。なお電流目標上昇部65では、反転同期信号SYの入力がない場合は、電流目標演算部62から入力された電流目標値Id1をそのまま誤差アンプ66に出力する。そして、誤差アンプ66では、電流検出部5で検出される出力電流検出値Isと目標電流値Id2とを比較し、両者の差が無くなるように制御信号S2をスイッチング素子Q1に出力することで、DC−DCコンバータ部1の出力を制御し、それによってメタルハライドランプLaへの供給電力を調整する。以上のような動作を制御部6が行うことによって、矩形波出力の極性が反転するタイミングに同期してランプ電流を増加させ、それによってインバータ部2の出力電力を増加させることができ、極性反転時に電極温度が低下するのを抑制して、メタルハライドランプLaから発生するノイズを低減することができる。
【0037】
ここで、制御部6の動作について図2のフローチャートを参照して詳述する。電源投入時やリセットスイッチSWの操作時に、制御部6は、反転時間や反転回数の変数を初期化し(S1)、メタルハライドランプLaが点灯する前の無負荷時の制御を実行する(S2)。その後、制御部6は、メタルハライドランプLaが点灯したか否かを判断し(S3)、点灯していない場合はS2に戻って無負荷時の制御を継続する。一方、S3で点灯したと判断された場合、制御部6は以下の電力制御ループに移行する。
【0038】
電力制御ループでは、制御部6は、先ず電圧検出部4からの入力をA/D変換することでメタルハライドランプLaのランプ電圧Vsを読み込み(S4)、今回の検出値と図示しないメモリに記憶された過去の検出値とを用いてランプ電圧を平均化する(S5)。尚、平均化処理の手法としては移動平均などの手法を用いれば良く、過去の検出値を例えば3個記憶させておき、次に検出値を読み込んだ際に上記3値と足し合わせ、4で割ることによって平均値a(Vs)を求めれば良い。
【0039】
次に制御部6の電流目標演算部62は、電力目標記憶部61に保存しているテーブルから、その時点での電力目標値Pdを読み込み(S6)、電力目標値PdをS5で求めたランプ電圧平均値a(Vs)で除算することによって、電流目標値Id1(=Pd/a(Vs))を求める(S7)。制御部6の電流目標上昇部65は、後述のステップS17で反転制御部64から反転同期信号SYが入力されると同期フラグをセットしており、ステップS8ではこの同期フラグがセットされているか否かの判定を行う(S8)。
【0040】
ここで、同期フラグがセットされていれば、電流目標上昇部65は、S7で求めた目標電流値Id1に所定の電流加算値を加算し、加算して得た値を目標電流値Id2とする処理を行う(S9)。ここで、目標電流値Id1に加算する電流加算値はメタルハライドランプLaの累積点灯時間に応じて決定され、マイコン内のROMに保存されているテーブルから読み出される。例えば電流目標上昇部65では、定格電流値の0.1倍〜1倍程度の電流値を目標電流値Id1に加算することで、ノイズの低減効果やフリッカの防止効果を得ることができ、この加算分は累積点灯時間の経過に応じて減少するように設定されている。尚、定格電流値が0.4Aの車載用有水銀HIDランプの場合は0.04A〜0.4Aを目標電流値Id1に加算すれば良く、定格電流値が0.8Aの車載用有水銀HIDランプの場合は0.08A〜0.8Aを目標電流値Id1に加算すれば良い。またS8において同期フラグがセットされていない場合、電流目標上昇部65は、電流目標演算部62から入力された目標電流値Id1を、そのまま目標電流値Id2とする処理を行う。
【0041】
上述の処理を行って目標電流値Id2が求まると、制御部6は、電流検出部5からの入力をA/D変換することでメタルハライドランプLaのランプ電流Ipを読み込み(S10)、今回の検出値と図示しないメモリに記憶された過去の検出値とを用いて例えば移動平均をとることで、ランプ電流の平均値を求め(S11)、この平均値Isと目標電流値Id2との比較演算を誤差アンプ66が行うことによって(S12)、出力制御信号を決定してDC−DCコンバータ部1に出力する(S13)。
【0042】
次に、制御部6の反転判断部64は、インバータ部2の出力を前回反転させてから反転の周期(反転の周波数は数100Hz〜数kHzx)が経過したか否かを判断しており(S14)、反転の周期が経過した場合はインバータ部2に反転命令を出力して、インバータ部2の出力の極性を反転させる(S15)。また制御部6の反転判断部64では、極性反転に同期した出力電力の増加が必要か否かを判断しており(S16)、インバータ出力の増加が必要な場合は同期フラグをセットし(S17)、インバータ出力の増加が不要な場合は同期フラグをリセットする(S18)。本実施形態では反転制御部64は、反転周期の経過時の200μS前から反転周期の経過後50μSまでは、極性反転に同期している(すなわちインバータ出力の増加が必要)と判断しているが、極性反転に同期した期間(すなわちインバータ出力を増加させる期間)は上記の期間に限定されるものではなく、反転周期の半周期の2%〜30%程度の時間であれば問題なく上記の効果を得ることができる。
【0043】
その後、制御部6は、インバータ部2の出力の極性反転時からの経過時間を計時し(S19)、その他の制御動作を行った後(S20)、上述のS4の処理に戻って制御動作を繰り返すのである。
【0044】
而して、制御部6は、上記の電力制御ループを実行することによって、インバータ部2の出力が反転する前後で、インバータ部2の出力電力を増加させることができ、反転周期に同期した期間にインバータ部2の出力電力を増加させる制御と、それ以外の期間でインバータ部2の出力を所定電力に制御する制御とを実現することができる。ここで、各部の波形をタイムチャートに示すと図3のようになる。図3(a)はスイッチング素子Q2,Q5のオン/オフを、同図(b)はスイッチング素子Q3,Q4のオン/オフをそれぞれ示しており、各スイッチング素子Q2〜Q5のオン時に電流が流れるようになっている。また図3(c)は反転信号を示し、反転信号がオンの時にはスイッチング素子Q2〜Q5が全てオフになり(反転信号の時間幅は例えば数μS)、このオン時(極性反転期間)にランプ電流の極性が反転するようになっている。また図3(d)は電流目標上昇部65が、反転同期信号SYから求めた電流目標値を上昇させる期間を示す出力電流指令値増加信号であり、この信号のオン期間にメタルハライドランプLaに供給するランプ電流を増加させることで、ランプへの供給電力を増加させている。よって、図3(e)に示すようにメタルハライドランプLaに供給されるランプ電流Ipが、極性反転た直後の期間TI1と、極性が反転する直前の期間TI2の間でそれぞれ増加することになり、ランプの使用初期において極性反転に同期してランプ電流を増加させることでメタルハライドランプLaが発生する高周波ノイズを低減できる。尚、ランプ電流を増加させる期間TI1と期間TI2の和は、反転周期の半周期の時間よりも短く、且つ、両期間TI1,TI2はそれぞれ反転周期の1/4周期の時間以下となっており、例えば期間TI1,TI2はそれぞれ数100μSに設定されている。
【0045】
ここで、図4は本点灯装置によるランプ電流の波形図を示し、図4(a)の例ではランプ電流の増加分が矩形波状のパルス電流となっている。また極性反転後の電流増加期間TI1と、極性反転前の電流増加期間TI2の和は反転周期の半周期の時間よりも短く、且つ、期間TI1,TI2はそれぞれ反転周期の1/4周期の時間以下となっている。上述のように極性反転時にはランプ電流が略ゼロになる瞬間があるので、電極温度が低下して輝点が形成されにくくなるが、図示のように極性反転後の期間TI1にランプ電流(インバータ出力)を増加させることで、極性反転後から電極温度が定常の温度状態になるまで放電を安定させることができる。また極性反転前の期間TI2にもランプ電流(インバータ出力)を増加させているので、極性反転前に電極温度を上昇させることによって、極性反転時の電極温度の低下を少なくでき、極性反転の前後で放電状態を安定させることができる。したがって、極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減され、視覚に感じる光のちらつきであるフリッカが低減されるといった効果が得られる。
【0046】
なお図4(b)に示すように、極性反転前の電流増加期間TI2において、電流目標上昇部65がランプ電流を線形に増加させても良く、期間TI2における増加分が矩形波のパルス状である場合に比べて、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが低減され、電極温度を効率的に上昇させることができる。
【0047】
また図4(c)に示すように、極性反転後の電流増加期間TI1において、電流目標上昇部65がランプ電流を非線形に増加させても良く、期間TI1における増加分が矩形波のパルス状である場合に比べて、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが低減され、電極温度を効率的に上昇させることができる。
【0048】
また更に、図4(d)に示すように、極性反転前の電流増加期間TI2において電流目標上昇部65がランプ電流を線形に増加させるとともに、極性反転後の電流増加期間TI1において電流目標上昇部65がランプ電流を非線形に増加させても良く、各期間TI1,TI2における増加分が矩形波のパルス状である場合に比べて、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが低減され、電極温度を効率的に上昇させることができる。尚、定格電力が35WのメタルハライドランプLaについて、期間TI2においてランプ電流を線形に増加させるとともに、期間TI1においてランプ電流を非線形に増加させた場合のランプ電流の実測波形を図5に示す。
【0049】
ところで、図4及び図5に示す例では、極性反転後の電流増加期間TI1におけるランプ電流の増加分と、極性反転前の電流増加期間TI2におけるランプ電流の増加分が略等しくなっているが、電流目標上昇部65が、反転前の期間TI2における増加分を、反転後の期間TI1における増加分よりも高く設定すれば、極性反転時の電極温度の低下がより少なくなり、極性反転の前後で放電状態をより安定させることができる。その結果、極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減され、視覚に感じる光のちらつきであるフリッカが低減されるといった効果を向上させることが可能になる。また図4及び図5では、極性反転後の電流増加期間TI1と極性反転前の電流増加期間TI2の和は、反転周期の半周期の時間よりも短く、且つ、両期間TI1,TI2はそれぞれ反転周期の1/4周期の時間以下となっており、反転周期の1周期内で両期間TI1,TI2以外の時間はランプ電流が略一定に制御されている。而して、制御部6ではランプ電流を略一定に制御することで、ランプ出力の変化によって発生する光のちらつきを押さえることができる。なお制御部6では、上記の電流増加期間TI1,TI2の時間幅や両期間におけるランプ電流の増加量を、人が視認できない程度の値に設定している。
【0050】
また図6は、メタルハライドランプLaの累積点灯時間とランプ電流の加算値との関係を示しており、累積点灯時間が長くなるに従ってメタルハライドランプLaから発生するノイズが低下することを考慮し、電流目標上昇部65では、累積点灯時間が長くなるにつれて電流加算値を低下させている。尚、点灯初期から時間t1までの期間では電流加算値の減少割合が小さく、時間t1以降の期間では電流加算値の減少割合が大きくなっている。このように、本点灯装置では、累積点灯時間が長くなるにつれて電流加算値(すなわち出力電力の増加分)を減少させることで、ノイズ低減部によるノイズの低減効果を累積点灯時間の経過に応じて低下させており、メタルハライドランプLaから発生するノイズを低減しつつ、メタルハライドランプLaや点灯回路に加わるストレスを低減して、メタルハライドランプLaの長寿命化を図ることができる。尚、図6では電流目標上昇部65が累積点灯時間の経過に応じてランプ電流の加算分(すなわち出力電力の増加分)を連続的に低下させているが、使用初期に比べて加算分を低下させるのであれば、ランプ電流の加算分(出力電力の増加分)をステップ状に変化させても良い。
【0051】
また、本実施形態ではリセットスイッチSWが操作されると、累積点灯時間計測部63のカウント値がゼロにリセットされるのであるが、例えばメタルハライドランプLaの脱着を検出する適宜の脱着検出手段(図示せず)を備え、脱着検出手段によりメタルハライドランプLaの脱着が検出されると、累積点灯時間計測部63がカウント値をゼロにリセットするようにしても良い。
【0052】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図7及び図8に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
実施形態1ではノイズ低減部としての電流目標上昇部65が極性反転時に同期してインバータ部2の出力電力を増加させることでノイズ低減を図っているのに対して、本実施形態では、制御部6の反転判断部64(ノイズ低減部、時間調整手段)がインバータ部2の出力の極性を反転させるのに要する極性反転時間(スイッチング素子Q2〜Q5が全てオフとなる期間)を調整することでノイズ低減を図っている。
【0054】
図7(a)はスイッチングQ2,Q5のオン/オフを、同図(b)はスイッチングQ3,Q4のオン/オフを、同図(c)は反転判断部64からインバータ部2に出力される反転信号をそれぞれ示している。反転判断部64から反転信号が出力される間、スイッチング素子Q2〜Q5が全てオフになり、反転信号がオフになるとインバータ部2の出力の極性が反転するのであるが、反転判断部64では、この反転信号の時間幅Trを累積点灯時間に応じて変化させることで、極性反転に要する極性反転時間Trを変化させている。
【0055】
ここで、極性反転時間Trが短いほど、極性反転時にランプ電流がゼロになる時間が短くなるので、電極温度の低下が少なくなって極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減されることが分かっている。図8はメタルハライドランプLaの累積点灯時間と極性反転時間Trとの関係を示しており、反転制御部64では、メタルハライドランプLaからノイズが出やすい点灯初期(累積点灯時間が小さい期間)には極性反転時間Trを短くすることで、メタルハライドランプLaから発生するノイズを低減している。ただし、極性反転時間Trを短くすると、点灯回路の回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが大きくなるので、累積点灯時間が長くなるに従って、反転制御部64では極性反転時間Trを長くして、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスを低減している。ここで、メタルハライドランプLaの累積点灯時間が長くなると、メタルハライドランプLaから発生するノイズが低減する傾向があるので、累積点灯時間の経過に応じて極性反転時間Trを長くしても、メタルハライドランプLaから発生するノイズを小さくでき、ノイズ低減を図りつつ、メタルハライドランプLaの長寿命化を図ることができる。
【0056】
尚、図8の例では点灯初期から時間t2までの期間では極性反転時間の増加割合は小さく、時間t2以降の期間では電流加算値の増加割合が大きくなっている。また本実施形態では、反転制御部64が累積点灯時間の経過に応じて極性反転時間を連続的に増加させているが、使用初期に比べて極性反転時間を増加させるのであれば、極性反転時間をステップ状に変化させても良い。
【0057】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図9〜図11に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
実施形態1ではノイズ低減部としての電流目標上昇部65が極性反転時に同期してインバータ部2の出力電力を増加させることでノイズ低減を図っているのに対して、本実施形態では、制御部6の電流目標上昇部65(ノイズ低減部、波形調整手段)が極性反転時にランプ電流を上昇させるとともに、極性反転時間を変化させることでノイズ低減を図っている。
【0059】
図9はランプ電流波形を示し、電流目標上昇部65では、極性反転の直前に電流上昇期間TI2a,TI2b(期間TI2aはランプ電流の極性が正、期間TI2bはランプ電流の極性が負)を設け、期間TI2aにおいてランプ電流をIp1からIp2aへ増加させるとともに、期間TI2bにおいてランプ電流をIp2からIp2bへ増加させている。ここで、ランプ電流が大きいほど電極温度が上昇し、極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減するのであるが、電極温度が上昇しすぎると電極の蒸発などを加速し、ランプ寿命が短くなるという問題がある。
【0060】
そこで、本実施形態では電流目標上昇部65が、各期間TI2a,TI2bにおけるランプ電流の加算値及び電流加算時間を累積点灯時間に応じてそれぞれ変化させており、点灯初期はランプ電流の加算値を大きくすることでノイズ低減を図るとともに、累積点灯時間が長くなるにつれて、図10に示すようにランプ電流の加算値(すなわちランプ電流値Ip2a,Ip2b)を減少させるとともに、図11に示すように電流加算時間TI2a,TI2bを増加させることで、ノイズ低減を図りつつ回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスを低減して長寿命化を図っている。尚、図10中のAはランプ電流値Ip2aを、Bはランプ電流値Ip2bをそれぞれ示し、図11中のAは電流加算期間TI2aを、Bは電流加算期間TI2bをそれぞれ示している。
【0061】
また本実施形態では、ランプ電流の極性の正負で、ランプ電流加算値と電流加算期間の積、すなわちランプ電流値と電流加算期間の積(Ip2a×TI2a、Ip2b×TI2b)を同じ値に設定してあり、ランプ電流の波形にDC成分が発生するのを防止し、点灯中にメタルハライドが一方の電極近傍に偏るといった現象を回避することができる。
【0062】
また本実施形態では、電流目標上昇部65が、ランプ電流の極性の正負で、ランプ電流の加算値(すなわちランプ電流値Ip2a,Ip2b)および電流加算期間TI2a,TI2bをそれぞれ異なる値に設定している。一般に、メタルハライドランプLaの電極温度は、極性反転時間を決定する反転信号の継続時間Trと累積点灯時間とに応じて変化するのであるが、極性反転時間が長いほどメタルハライドランプLaから発生するノイズが抑制されることが判明しており、メタルハライドランプLaからのノイズが出やすい点灯初期(累積点灯時間が小さい期間)には、極性反転時間を短くしておくことで、過大なノイズを抑制することができる。但し、極性反転時間を短くすると、点灯回路の回路部品にかかるストレスが増加するため、メタルハライドランプLaの累積点灯時間が長くなるにつれて、極性反転時間を長くすることが好ましく、点灯回路の回路部品に加わるストレスを軽減することができる。
【0063】
このように本実施形態ではランプ電流の電流加算値及び極性反転時間を、極性の正負で異ならせることで、出力波形を非対称形状としており、累積点灯時間に応じて出力波形を変化させることで、ノイズ低減を図りつつ、ランプ寿命や回路部品の長寿命化を図っている。
【0064】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図12及び図13に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0065】
実施形態1ではノイズ低減部としての電流目標上昇部65が極性反転時に同期してインバータ部2の出力電力を増加させることでノイズ低減を図っているのに対して、本実施形態では、制御部6の電流目標上昇部65(ノイズ低減部、電流調整手段)がランプ電流の電流レベルIp1を変化させることでノイズ低減を図っている。
【0066】
ランプ電流と電極温度には相関があり、ランプ電流が大きいほど電極温度は高くなり、極性反転時に輝点が形成されやすくなる。よってメタルハライドランプLaから発生するノイズが大きい点灯初期には、電流目標上昇部65がランプ電流を増加させることで、ノイズ低減を図っている。一般に、累積点灯時間の増加に応じてランプ電圧が上昇する場合が多く、ランプ電力を一定に保つよう制御する場合は累積点灯時間の増加に応じてランプ電流が減少するのであるが、本実施形態では図13に示すようにランプ電力を一定値に保つ以上にランプ電流を低下させており、ランプ電力も、図13と同様、累積点灯時間の増加に応じて減少するようになっている。ここで、ランプ電流が過大になると、電極温度が高くなりすぎて、電極の蒸発や変形を招く虞があるが、本実施形態では累積点灯時間が増加するに従ってランプ電流を減少させているので、ランプ寿命に大きな影響を与えることなく、ノイズの低減を図ることができる。
【0067】
尚、図13の例では点灯初期から時間t3までの期間ではランプ電流Ip1の減少割合は小さく、時間t3以降の期間ではランプ電流Ip1の減少割合が大きくなっている。また本実施形態では、電流目標上昇部65が累積点灯時間の経過に応じてランプ電流を連続的に減少させているが、使用初期に比べてランプ電流を減少させるのであれば、極性反転時間をステップ状に変化させても良い。
【0068】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を図14に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と略同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0069】
上述の実施形態1では、累積点灯時間計測部63がインバータ部2の動作時間を計時することで累積点灯時間を求めているのに対して、本実施形態ではメタルハライドランプLaの電気的特性値を検出する検出手段67を設け、累積点灯時間計測部63では検出手段67の検出値から累積点灯時間を検出している。なお、検出手段67によって検出される電気的特性値は、メタルハライドランプLaの累積点灯時間と相関を有するものであれば、どのような電気的特性値でも良く、例えばランプ電圧値や再点弧電圧のピーク値などが例として挙げられる。
【0070】
また検出手段67が、メタルハライドランプLaの発生するノイズと直接相関を有する特性値を検出しても良く、例えば図15(a)(b)に示すようにランプ電圧の極性反転時においてゼロクロスの直後に発生するランプ電圧のピーク値Vpdや、図16(a)(b)に示すように極性反転時においてゼロクロスの直後に発生するランプ電流の低電流期間の長さTdなどを検出しても良い。これらの特性値とノイズレベルとの間には相関があり、これらの特性値が大きいほどノイズレベルが高くなるので、これらの特性値が所定の閾値よりも大きい場合にはノイズ低減部によるノイズの低減効果を大きくしている。
【0071】
本実施形態では、累積点灯時間をメタルハライドランプLaの電気的特性値から検出しているので、メタルハライドランプLaの点灯時間を計時する手段や、点灯時間の計測結果をリセットする手段や、ランプ脱着を検出して点灯時間の計測結果をリセットする手段が不要になるので、点灯回路のコストダウンや小型化を図ることができ、また累積点灯時間をリセットする操作も不要であるから利便性が向上する。
【0072】
また検出手段67によりメタルハライドランプLaが発生するノイズと直接相関のある特性値を検出する場合は、ランプ毎のばらつきに関係無く、適切にノイズレベルを抑制することが可能になる。
【0073】
尚、本実施形態の構成を実施形態2〜4に適用しても良いことは言うまでもなく、上述と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
(実施形態6)
本発明の実施形態6を図17に基づいて説明する。図17は、本実施形態の放電灯点灯装置の回路図を示し、商用電源ACを所定電圧値の直流電源に変換するAC−DCコンバータ部7と、DC−DCコンバータ部1と、インバータ部2と、イグナイタ部3と、電圧検出部4と、電流検出部5と、制御部6とを主要な構成として備えている。本実施形態では、商用電源ACをAC−DCコンバータ部7により変換した直流電圧を、DC−DCコンバータ部1の入力電圧としている点で実施形態1と異なっており、それ以外の構成は実施形態1と同様であるから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0075】
AC−DCコンバータ部7は、ノイズフィルタNFを介して入力される交流電源を全波整流する整流回路DBと、整流回路DBの整流出力を所望の電圧値に昇圧する昇圧チョッパ回路とで構成される。昇圧チョッパ回路は従来周知の回路構成を有しており、整流回路DBの直流出力端間に接続されるインダクタL1及びスイッチング素子Q6の直列回路と、スイッチング素子Q6の両端間に接続されたダイオードD2及びコンデンサC3の直列回路とで構成されている。尚、スイッチング素子Q6のオン/オフは制御部6によって制御される。
【0076】
また、DC−DCコンバータ部1は、上述の実施形態1で説明したフライバック方式のものから、降圧チョッパ方式のものに変更することで、メタルハライドランプLaの点灯に適したランプ電圧が得られるようになっている。なおDC−DCコンバータ部1は、コンデンサC3の両端間に接続されたスイッチング素子Q7及びダイオードD3の直列回路と、ダイオードD3の両端間に接続されたインダクタL2及びコンデンサC4の直列回路とで構成されている。ここに、本実施形態では、AC−DCコンバータ部7およびDC−DCコンバータ部1により電力変換部が構成されている。
【0077】
而して、本実施形態によれば、上述の各実施形態と同様にメタルハライドランプLaを矩形波点灯させ、且つ、極性反転に同期して出力を上昇させるなどしてメタルハライドランプLaが発生するノイズを低減することができる。
【0078】
また、上述したDC−DCコンバータ部1とインバータ部2を兼用した回路構成も周知となっているが、本回路構成を本実施形態のDC−DCコンバータ部1およびインバータ部2の代わりに用いても、上述と同様にメタルハライドランプLaに生じる高周波ノイズを低減することができる。なお本実施形態では、実施形態1と同様にインバータ部2の動作時間から累積点灯時間を検出しているが、実施形態5で説明したようにメタルハライドランプLaの電気特性値から累積点灯時間を検出するように構成してもよい。
【0079】
(実施形態7)
図18は上述した実施形態1〜6の何れかの実施形態において説明した放電灯点灯装置からなる前照灯点灯装置10を用いてメタルハライドランプLaを点灯させる前照灯8およびそれを用いた車両9を模式的に示した図であり、Lowビームスイッチ電源11から左右両側に配置された前照灯用の前照灯点灯装置10,10に電源が供給されると、各前照灯点灯装置10から対応する前照灯8に点灯電力が供給され、メタルハライドランプLaが点灯するようになっている。
【0080】
ここにおいて、車載用の放電灯点灯装置の場合には、安全性やノイズに対して非常に厳しい規制があるが、実施形態1〜6で説明した放電灯点灯装置の何れかを用いることによって、ランプに生じる高周波ノイズを低減させることができるから、安全性を向上させた前照灯8および車両9を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】同上の動作を説明するフローチャートである。
【図3】(a)〜(e)は同上の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】(a)〜(d)は同上のランプ電流を示す波形図である。
【図5】同上のランプ電流の実測波形図である。
【図6】同上の累積点灯時間とランプ電流加算値との関係を示す図である。
【図7】(a)〜(c)は実施形態2の放電灯点灯装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図8】同上の累積点灯時間と極性反転時間との関係を示す図である。
【図9】実施形態3の放電灯点灯装置のランプ電流を示す波形図である。
【図10】同上の累積点灯時間と出力電流値との関係を示す図である。
【図11】同上の累積点灯時間と出力電流加算期間との関係を示す図である。
【図12】実施形態4の放電灯点灯装置のランプ電流を示す波形図である。
【図13】同上の累積点灯時間と出力電流値との関係を示す図である。
【図14】実施形態5の放電灯点灯装置の回路図である。
【図15】(a)は同上のランプ電圧の波形図、(b)はゼロクロス時において時間軸を拡大して表示したランプ電圧の波形図である。
【図16】(a)は同上のランプ電流の波形図、(b)はゼロクロス時において時間軸を拡大して表示したランプ電流の波形図である。
【図17】実施形態6の放電灯点灯装置の回路図である。
【図18】実施形態7の車両を模式的に示した説明図である。
【図19】(a)〜(d)は従来の放電灯点灯装置のランプ電流を示す波形図である。
【図20】同上の累積点灯時間とノイズピーク値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 DC−DCコンバータ部(電力変換部)
2 インバータ部
6 制御部
63 累積点灯時間計測部
65 電流目標上昇部(ノイズ低減部、出力調整手段)
La メタルハライドランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯装置及びそれを用いた前照灯並びに車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の前照灯やプロジェクタの光源として、メタルハライドランプのような高輝度放電灯が用いられている。光源としてメタルハライドランプを用いる放電灯点灯装置では、音響共鳴現象の発生を防止するために矩形波点灯方式を採用しているが、矩形波点灯方式では極性反転時にランプ電流がゼロになる瞬間が生じるため、放電状態が不安定になり、メタルハライドランプのフリッカが発生したり、最悪の場合は立ち消えが発生することもある。また、立ち消えが生じない場合でも、メタルハライドランプが一旦消灯した後、再点弧されるため、極性反転時にメタルハライドランプから発生するノイズが増大するという問題があった。尚、矩形波出力の極性反転時にはランプ電流がゼロになることでメタルハライドランプが一旦消灯した後、反対側の極性の電圧が立ち上がるのであるが、このとき陰極となる電極に輝点が形成されるまでに時間を要し、その間は低い電流しか流れなくなる。その後、陰極に輝点が形成されると、ランプインピーダンスが低下して、電流が増加し、その電流によって輝点が安定に保たれるのであるが、輝点が消失した後、再び輝点が形成されるまでの間にランプ電圧に急峻な変動が発生するため、これによってノイズが発生すると考えられている。
【0003】
ここで、極性反転時においてメタルハライドランプが一旦消灯した後に輝点が形成されやすくすれば、極性反転時に発生するノイズを低減することができると考えられるので、図19(a)に示すようにランプ電流が反転する前にランプ電流を増大させたり、図19(b)〜(d)に示すようにランプ電流が反転する前後でランプ電流を増大させることにより、電極温度を上昇させて、輝点が形成されやすくし、それによって立ち消えやフリッカを防止した放電灯点灯装置が従来提案されていた(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特表平10−501919号公報
【特許文献2】特開2002−110392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の放電灯点灯装置では、ランプ電流の極性が反転する前にランプ電流を増大させることによって電極温度を上昇させているので、極性反転時の電極温度を高温状態に保つことができ、それによってランプ電流の極性反転時および反転直後の放電状態を安定させることが可能となった。また、極性反転時および反転直後の放電状態を安定させることで、極性反転時にメタルハライドランプが発生する高周波ノイズを低減させる効果も確認できたのであるが、上述のように電極温度を上げると、電極の蒸発や、溶融による変形を招いて、メタルハライドランプの寿命が短くなる虞があった。
【0005】
ところで、本発明者らは、ランプ電流の極性反転時にメタルハライドランプから発生する高周波ノイズが、累積点灯時間の増加につれて低下することを確認している。図20は、メタルハライドランプを用いた車両用の前照灯について、極性反転時にメタルハライドランプが発生する高周波ノイズに起因すると思われるノイズ(周波数が約400kHz)のピーク値と累積点灯時間の関係を測定した結果を示しており、何れのランプA〜Cの場合も累積点灯時間が経過するにつれて、ノイズレベルが減少するという結果が得られた。
【0006】
この現象は以下のような理由で発生すると考えられる。累積点灯時間の経過に伴って、ランプ内に封入されたメタルハライド(ハロゲン化金属)と、ランプ管を形成するガラスとが反応することでランプ内に遊離ヨウ素が発生し、ランプ内の遊離ヨウ素が増加することになり、この遊離ヨウ素によりアーク放電が影響を受けて、電極上に形成されるホットスポットが小さくなり、スポット温度が上昇すると考えられ、このスポット温度の上昇により放電が安定してノイズレベルが減少するものと推定される。
【0007】
このように累積点灯時間の経過に応じて、電極スポットの温度が上昇すると、メタルハライドランプの再点弧時に発生する高周波ノイズは減少するのであるが、ノイズ低減のために電極温度を高めるような動作を続けると、電極温度が過大に上昇して、電極の蒸発や溶融による変形を招いて、メタルハライドランプの寿命が短くなる虞があった。またメタルハライドランプからの高周波ノイズを低減するため、ノイズフィルターや電磁シールドを設けることも考えられるが、コスト高を招くという問題もあった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ランプ点灯時の高周波ノイズを低減しつつ、ランプの長寿命化を図った低コストの放電灯点灯装置及びそれを用いた前照灯並びに車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、入力電源をメタルハライドランプの点灯に必要な電圧値の直流電圧に変換する電力変換部と、電力変換部の出力を矩形波の交番電圧に変換してメタルハライドランプに供給するインバータ部と、インバータ部の出力を調整することによって、インバータ部の出力の極性反転時にメタルハライドランプから発生するノイズを低減させるノイズ低減部と、累積点灯期間が長くなるとノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させる制御部とを設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力の極性を反転させるのに要する極性反転時間を調整する時間調整手段を有し、制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、時間調整手段により極性反転時間を増加させることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力の極性反転に同期してインバータ部の出力電力を増加させる出力調整手段を有し、制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、出力調整手段による出力電力の増加分を減少させることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力波形を非対称形に変化させる波形調整手段を有し、累積点灯時間に応じて出力波形を変化させることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、ノイズ低減部は、インバータ部の出力電流を変化させる電流調整手段を有し、制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、電流調整手段により出力電流を低下させることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1つの発明において、制御部は、メタルハライドの電気的特性値から累積点灯時間を検出することを特微とする。
【0015】
請求項7の発明は前照灯であって、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を具備したことを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は車両であって、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置、又は、請求項7記載の前照灯の何れかを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、メタルハライドランプから発生する高周波ノイズは累積点灯時間の増加とともに低減されることが判明しているが、請求項1の発明によれば、制御部が、累積点灯時間の経過に応じてノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させており、ランプの使用初期はノイズ低減部によるノイズの低減効果が相対的に大きくなっているので、ノイズ低減部のノイズ低減効果によりランプ点灯時の高周波ノイズを低減することができる。しかも制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、ノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させているので、例えば、ノイズ低減部がランプに流れる電流やランプに供給する電力を増加させることで高周波ノイズを低減する場合には、累積点灯時間の増加に伴って、メタルハライドランプから発生する高周波ノイズが低下するにつれ、ノイズ低減部によるノイズ低減効果を低下させることで、メタルハライドランプに加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。さらにノイズフィルターや電磁シールドが不要になるので、低コストの放電灯点灯装置を実現できるという効果もある。
【0018】
また、極性反転時間を短くすることで、メタルハライドランプが発生するノイズを低減することができるのであるが、請求項2の発明によれば、点灯初期はノイズ低減部が極性反転時間を短くしているので、ノイズ低減を図ることができ、且つ累積点灯時間が長くなるにつれて極性反転時間を増加させることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。
【0019】
また、極性反転に同期してインバータ部の出力電力を増加させることで、メタルハライドランプが発生するノイズを低減することができるのであるが、請求項3の発明によれば、点灯初期はノイズ低減部が出力電力の増加分を大きくしているので、ノイズ低減を図ることができ、且つ累積点灯時間が長くなるにつれて出力電力の増加分を小さくすることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、ノイズ低減部が、例えばランプ電流の加算値や極性反転時間を調整することで、出力波形を非対称形にしてノイズ低減を図っており、そのうえ累積点灯時間が長くなるにつれて出力波形を変化させることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減することもできる。
【0021】
また、インバータ部の出力電流を増加させることで、メタルハライドランプが発生するノイズを低減することができるのであるが、請求項5の発明によれば、点灯初期はノイズ低減部が出力電流の増加分を大きくしているので、ノイズ低減を図ることができ、且つ累積点灯時間が長くなるにつれて出力電流の増加分を小さくすることで、メタルハライドランプや回路部品に加わるストレスを低減して、ランプの長寿命化を図ることができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、メタルハライドランプの累積点灯時間を計時するタイマや、タイマのカウント値をリセットするスイッチなどが不要になるので、コストダウンを図ることができ、またランプ交換時にリセット操作を行う手間が要らないので、利便性が向上するという効果もある。
【0023】
請求項7の発明によれば、メタルハライドランプから発生するノイズを低減しつつ、メタルハライドランプの長寿命化を図った低コストの前照灯を提供することができる。
【0024】
請求項8の発明によれば、メタルハライドランプから発生するノイズを低減しつつ、メタルハライドランプの長寿命化を図った低コストの放電灯点灯装置又は前照灯を搭載した車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図6に基づいて説明する。
【0027】
本実施形態の放電灯点灯装置は、高輝度放電ランプであるメタルハライドランプを点灯させるための点灯装置からなり、図1の回路図に示すように、直流電源Eからの直流電圧を、メタルハライドランプLaの点灯に必要な電圧値の直流電圧に変換(昇降圧)するDC−DCコンバータ部1(電力変換部)と、DC−DCコンバータ部1の出力を低周波の矩形波交番電圧に変換してメタルハライドランプLaに供給するインバータ部2と、メタルハライドランプLaを始動させる際に数10kVの電圧を発生してメタルハライドランプLaに印加するイグナイタ部3と、DC−DCコンバータ部1の出力電圧を検出する電圧検出部4と、DC−DCコンバータ部1の出力電流を検出する電流検出部5と、電圧検出部4及び電流検出部5の検出結果に基づいて出力電力が目標電力となるようにDC−DCコンバータ部1の動作を制御する機能と、インバータ部2の出力を周期的に反転(交番)させる機能を有する制御部6とを備える。尚、メタルハライドランプLaは、ガラスバルブの内部に、例えばヨウ化ナトリウム(NaI)などのハロゲン化金属(メタルハライド)を封入して構成される。
【0028】
この放電灯点灯装置では、DC−DCコンバータ部1が直流電源Eを電圧変換し、インバータ部2ではDC−DCコンバータ部1の出力電圧を矩形波交番電圧に変換する。さらに、インバータ部2の出力にはイグナイタ部3が接続され、イグナイタ部3からメタルハライドランプLaに始動用高電圧を印加することによってメタルハライドランプLaを始動する。尚、具体構成を図示していないが、電圧検出部4および電流検出部5は、抵抗などを用いて構成すれば良い。
【0029】
DC−DCコンバータ部1は、直流電源Eの両端間に接続される、トランスT1の1次巻線n1とMOSFETからなるスイッチング素子Q1との直列回路を備え、トランスT1の2次巻線n2にダイオードD1を介して平滑コンデンサC1を接続した構成を有する。ダイオードD1は、スイッチング素子Q1のオン時には平滑コンデンサC1に充電電流を流さず、スイッチング素子Q1のオフ時に巻線n1から平滑コンデンサC1に充電電流を流す極性に接続される。つまり、DC−DCコンバータ部1はフライバック形であって、スイッチング素子Q1のオン/オフの時間を制御することによって、直流電源Eの端子電圧に対して平滑コンデンサC1の両端電圧の昇圧と降圧とが可能になっている。
【0030】
インバータ部2は、それぞれMOSFETからなる4個のスイッチング素子Q2〜Q5をブリッジ接続したフルブリッジ回路であって、スイッチング素子Q2,Q4からなる直列回路と、スイッチング素子Q3,Q5からなる直列回路とが、DC−DCコンバータ部1の出力端に設けた平滑コンデンサC1にそれぞれ並列接続されている。そして、スイッチング素子Q2,Q4の接続点とスイッチング素子Q3,Q5の接続点との間にはイグナイタ部3に設けたトランスT2の2次巻線n2を介してメタルハライドランプLaが接続されている。つまり、インバータ部2の出力端間にトランスT2の2次巻線n2とメタルハライドランプLaとの直列回路が接続される。スイッチング素子Q2〜Q5は制御部6によりオン/オフが制御される。通常の制御では、メタルハライドランプLaに低周波の矩形波交番電圧が印加されるように、スイッチング素子Q2,Q5の組とスイッチング素子Q3,Q4の組とが交互にオン/オフを繰り返すように制御される。
【0031】
イグナイタ部3は、インバータ部2の出力端間に接続されたコンデンサC2と、1次巻線n1の一端がコンデンサC2の一端に接続されたトランスT2と、トランスT2の1次巻線n1の他端とコンデンサC2の他端との間に接続されたスパークギャップSGとで構成される。したがって、コンデンサC2の両端電圧がスパークギャップSGのブレークオーバ電圧に達するまでコンデンサC2を充電すると、スパークギャップSGのブレークダウンによってコンデンサC2からトランスT2の1次巻線n1に電流が流れ、トランスT2の2次巻線n2に高電圧が発生する。トランスT2の2次巻線n2はメタルハライドランプLaに接続されているから、2次巻線n2に発生した高電圧はメタルハライドランプLaに印加され、メタルハライドランプLaを始動することができる。
【0032】
制御部6は、電圧検出部4で検出されるDC−DCコンバータ部1の出力電圧(ランプ電圧に相当)と、電流検出部5で検出されるインバータ部2への供給電流(ランプ電流に相当)とを用いて、DC−DCコンバータ部1の出力電力が電力目標値になるように、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御する機能を有している。
【0033】
以下に制御部6についてさらに具体的に説明する。制御部6は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する)を主構成要素に用いたものであって、例えばROMからなり予め電力目標値Pdが設定された電力目標記憶部61と、電力目標記憶部61に記憶された電力目標値Pdと電圧検出部4で検出した検出電圧値Vsとを用いて目標電流値Id1を設定する電流目標演算部62と、インバータ部3の動作時間を計測し、その累積値をランプの累積点灯時間として求める累積点灯時間計測部63と、インバータ部2に出力の極性を反転させる反転命令を出力するとともに、反転前後のタイミングで反転同期信号SYを発生する反転判断部64と、反転判断部64からの反転同期信号SYの入力に同期して、累積点灯時間計測部63の計測結果に応じて決定される電流加算値を目標電流値Id1に加算して得た目標電流値Id2を出力するとともに、反転同期信号SYが無い場合は目標電流値Id1をそのまま目標電流値Id2として出力する電流目標上昇部65(ノイズ低減部、出力調整手段)と、電流検出部5で検出される出力電流検出値Isと目標電流値Id2とを比較し、両者の差が無くなるように制御信号S2をスイッチング素子Q1に出力する誤差アンプ66とを備える。尚、ランプ交換の際にリセットスイッチSWが操作されると、累積時間計測部63では累積点灯時間をクリアしてゼロに戻すようになっている。
【0034】
ここで、本点灯装置の動作について説明する。図示しない電源スイッチが投入されて、直流電源EからDC−DCコンバータ部1に電源が供給されると、DC−DCコンバータ部1ではスイッチング素子Q1のオン期間に、トランスT1の1次巻線n1とスイッチング素子Q1とを通して電流が流れる。ただし、この期間においてトランスT1の2次側に生じる誘起電圧はダイオードD1の逆方向になるから、平滑コンデンサC1に充電電流を流すことはできず、1次巻線n1に流れる電流のエネルギはトランスT1に蓄積される。その後、スイッチング素子Q1がオフになると、トランスT1に蓄積されていたエネルギによって、2次巻線n2−平滑コンデンサC1−ダイオードD1−2次巻線n2の経路で電流が流れ、トランスT1に蓄積されていたエネルギが平滑コンデンサC1に移される。
【0035】
メタルハライドランプLaの始動前にはメタルハライドランプLaが導通していないから、インバータ部2は無負荷状態に近く、DC−DCコンバータ部1は軽負荷になるから平滑コンデンサC1の電圧が上昇する。ここで、インバータ部2のスイッチング素子Q2,Q5をオンに保つとともに、スイッチング素子Q3,Q4をオフに保っておけば、平滑コンデンサC1の両端電圧がコンデンサC2の両端電圧にそのまま反映され、コンデンサC2の両端電圧が上昇する。その後、コンデンサC2の両端電圧がスパークギャップSGのブレークオーバ電圧に達すると、スパークギャップSGがブレークダウンし、上述したようにトランスT2の1次巻線n1に瞬時に電流が流れて、トランスT2の2次巻線n2に高電圧(数10kV程度)が誘起され、メタルハライドランプLaが始動される。このようにしてメタルハライドランプLaが始動されると、その瞬間にDC−DCコンバータ部1からメタルハライドランプLaに電流が流れ、メタルハライドランプLaはアーク放電に移行する。
【0036】
メタルハライドランプLaの始動後(点灯後)は、制御部6の反転判断部64が、インバータ部2のスイッチング素子Q2〜Q5を上述したようにオン/オフさせることによって、インバータ部2の出力を所定時間間隔で交番させて、メタルハライドランプLaに矩形波交番電圧を印加する。また制御部6の電流目標演算部62では、電流目標記憶部61から入力された電力目標値Pdを電圧検出部4の検出電圧値Vsで割ることによって、電流目標値Id1を求めている。反転判断部64では、反転信号を出力すると、反転前後のタイミングで反転同期信号SYを電流目標上昇部65に出力しており、出力調整手段としての電流目標上昇部65では、反転同期信号SYが入力されると、累積点灯時間計測部63により計測された累積点灯時間に応じて目標値の加算分を決定し、この加算分を電流目標演算部62から入力された電流目標値Id1に加算することで電流目標値Id2を求め、この電流目標値Id2を誤差アンプ66に出力する。なお電流目標上昇部65では、反転同期信号SYの入力がない場合は、電流目標演算部62から入力された電流目標値Id1をそのまま誤差アンプ66に出力する。そして、誤差アンプ66では、電流検出部5で検出される出力電流検出値Isと目標電流値Id2とを比較し、両者の差が無くなるように制御信号S2をスイッチング素子Q1に出力することで、DC−DCコンバータ部1の出力を制御し、それによってメタルハライドランプLaへの供給電力を調整する。以上のような動作を制御部6が行うことによって、矩形波出力の極性が反転するタイミングに同期してランプ電流を増加させ、それによってインバータ部2の出力電力を増加させることができ、極性反転時に電極温度が低下するのを抑制して、メタルハライドランプLaから発生するノイズを低減することができる。
【0037】
ここで、制御部6の動作について図2のフローチャートを参照して詳述する。電源投入時やリセットスイッチSWの操作時に、制御部6は、反転時間や反転回数の変数を初期化し(S1)、メタルハライドランプLaが点灯する前の無負荷時の制御を実行する(S2)。その後、制御部6は、メタルハライドランプLaが点灯したか否かを判断し(S3)、点灯していない場合はS2に戻って無負荷時の制御を継続する。一方、S3で点灯したと判断された場合、制御部6は以下の電力制御ループに移行する。
【0038】
電力制御ループでは、制御部6は、先ず電圧検出部4からの入力をA/D変換することでメタルハライドランプLaのランプ電圧Vsを読み込み(S4)、今回の検出値と図示しないメモリに記憶された過去の検出値とを用いてランプ電圧を平均化する(S5)。尚、平均化処理の手法としては移動平均などの手法を用いれば良く、過去の検出値を例えば3個記憶させておき、次に検出値を読み込んだ際に上記3値と足し合わせ、4で割ることによって平均値a(Vs)を求めれば良い。
【0039】
次に制御部6の電流目標演算部62は、電力目標記憶部61に保存しているテーブルから、その時点での電力目標値Pdを読み込み(S6)、電力目標値PdをS5で求めたランプ電圧平均値a(Vs)で除算することによって、電流目標値Id1(=Pd/a(Vs))を求める(S7)。制御部6の電流目標上昇部65は、後述のステップS17で反転制御部64から反転同期信号SYが入力されると同期フラグをセットしており、ステップS8ではこの同期フラグがセットされているか否かの判定を行う(S8)。
【0040】
ここで、同期フラグがセットされていれば、電流目標上昇部65は、S7で求めた目標電流値Id1に所定の電流加算値を加算し、加算して得た値を目標電流値Id2とする処理を行う(S9)。ここで、目標電流値Id1に加算する電流加算値はメタルハライドランプLaの累積点灯時間に応じて決定され、マイコン内のROMに保存されているテーブルから読み出される。例えば電流目標上昇部65では、定格電流値の0.1倍〜1倍程度の電流値を目標電流値Id1に加算することで、ノイズの低減効果やフリッカの防止効果を得ることができ、この加算分は累積点灯時間の経過に応じて減少するように設定されている。尚、定格電流値が0.4Aの車載用有水銀HIDランプの場合は0.04A〜0.4Aを目標電流値Id1に加算すれば良く、定格電流値が0.8Aの車載用有水銀HIDランプの場合は0.08A〜0.8Aを目標電流値Id1に加算すれば良い。またS8において同期フラグがセットされていない場合、電流目標上昇部65は、電流目標演算部62から入力された目標電流値Id1を、そのまま目標電流値Id2とする処理を行う。
【0041】
上述の処理を行って目標電流値Id2が求まると、制御部6は、電流検出部5からの入力をA/D変換することでメタルハライドランプLaのランプ電流Ipを読み込み(S10)、今回の検出値と図示しないメモリに記憶された過去の検出値とを用いて例えば移動平均をとることで、ランプ電流の平均値を求め(S11)、この平均値Isと目標電流値Id2との比較演算を誤差アンプ66が行うことによって(S12)、出力制御信号を決定してDC−DCコンバータ部1に出力する(S13)。
【0042】
次に、制御部6の反転判断部64は、インバータ部2の出力を前回反転させてから反転の周期(反転の周波数は数100Hz〜数kHzx)が経過したか否かを判断しており(S14)、反転の周期が経過した場合はインバータ部2に反転命令を出力して、インバータ部2の出力の極性を反転させる(S15)。また制御部6の反転判断部64では、極性反転に同期した出力電力の増加が必要か否かを判断しており(S16)、インバータ出力の増加が必要な場合は同期フラグをセットし(S17)、インバータ出力の増加が不要な場合は同期フラグをリセットする(S18)。本実施形態では反転制御部64は、反転周期の経過時の200μS前から反転周期の経過後50μSまでは、極性反転に同期している(すなわちインバータ出力の増加が必要)と判断しているが、極性反転に同期した期間(すなわちインバータ出力を増加させる期間)は上記の期間に限定されるものではなく、反転周期の半周期の2%〜30%程度の時間であれば問題なく上記の効果を得ることができる。
【0043】
その後、制御部6は、インバータ部2の出力の極性反転時からの経過時間を計時し(S19)、その他の制御動作を行った後(S20)、上述のS4の処理に戻って制御動作を繰り返すのである。
【0044】
而して、制御部6は、上記の電力制御ループを実行することによって、インバータ部2の出力が反転する前後で、インバータ部2の出力電力を増加させることができ、反転周期に同期した期間にインバータ部2の出力電力を増加させる制御と、それ以外の期間でインバータ部2の出力を所定電力に制御する制御とを実現することができる。ここで、各部の波形をタイムチャートに示すと図3のようになる。図3(a)はスイッチング素子Q2,Q5のオン/オフを、同図(b)はスイッチング素子Q3,Q4のオン/オフをそれぞれ示しており、各スイッチング素子Q2〜Q5のオン時に電流が流れるようになっている。また図3(c)は反転信号を示し、反転信号がオンの時にはスイッチング素子Q2〜Q5が全てオフになり(反転信号の時間幅は例えば数μS)、このオン時(極性反転期間)にランプ電流の極性が反転するようになっている。また図3(d)は電流目標上昇部65が、反転同期信号SYから求めた電流目標値を上昇させる期間を示す出力電流指令値増加信号であり、この信号のオン期間にメタルハライドランプLaに供給するランプ電流を増加させることで、ランプへの供給電力を増加させている。よって、図3(e)に示すようにメタルハライドランプLaに供給されるランプ電流Ipが、極性反転た直後の期間TI1と、極性が反転する直前の期間TI2の間でそれぞれ増加することになり、ランプの使用初期において極性反転に同期してランプ電流を増加させることでメタルハライドランプLaが発生する高周波ノイズを低減できる。尚、ランプ電流を増加させる期間TI1と期間TI2の和は、反転周期の半周期の時間よりも短く、且つ、両期間TI1,TI2はそれぞれ反転周期の1/4周期の時間以下となっており、例えば期間TI1,TI2はそれぞれ数100μSに設定されている。
【0045】
ここで、図4は本点灯装置によるランプ電流の波形図を示し、図4(a)の例ではランプ電流の増加分が矩形波状のパルス電流となっている。また極性反転後の電流増加期間TI1と、極性反転前の電流増加期間TI2の和は反転周期の半周期の時間よりも短く、且つ、期間TI1,TI2はそれぞれ反転周期の1/4周期の時間以下となっている。上述のように極性反転時にはランプ電流が略ゼロになる瞬間があるので、電極温度が低下して輝点が形成されにくくなるが、図示のように極性反転後の期間TI1にランプ電流(インバータ出力)を増加させることで、極性反転後から電極温度が定常の温度状態になるまで放電を安定させることができる。また極性反転前の期間TI2にもランプ電流(インバータ出力)を増加させているので、極性反転前に電極温度を上昇させることによって、極性反転時の電極温度の低下を少なくでき、極性反転の前後で放電状態を安定させることができる。したがって、極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減され、視覚に感じる光のちらつきであるフリッカが低減されるといった効果が得られる。
【0046】
なお図4(b)に示すように、極性反転前の電流増加期間TI2において、電流目標上昇部65がランプ電流を線形に増加させても良く、期間TI2における増加分が矩形波のパルス状である場合に比べて、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが低減され、電極温度を効率的に上昇させることができる。
【0047】
また図4(c)に示すように、極性反転後の電流増加期間TI1において、電流目標上昇部65がランプ電流を非線形に増加させても良く、期間TI1における増加分が矩形波のパルス状である場合に比べて、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが低減され、電極温度を効率的に上昇させることができる。
【0048】
また更に、図4(d)に示すように、極性反転前の電流増加期間TI2において電流目標上昇部65がランプ電流を線形に増加させるとともに、極性反転後の電流増加期間TI1において電流目標上昇部65がランプ電流を非線形に増加させても良く、各期間TI1,TI2における増加分が矩形波のパルス状である場合に比べて、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが低減され、電極温度を効率的に上昇させることができる。尚、定格電力が35WのメタルハライドランプLaについて、期間TI2においてランプ電流を線形に増加させるとともに、期間TI1においてランプ電流を非線形に増加させた場合のランプ電流の実測波形を図5に示す。
【0049】
ところで、図4及び図5に示す例では、極性反転後の電流増加期間TI1におけるランプ電流の増加分と、極性反転前の電流増加期間TI2におけるランプ電流の増加分が略等しくなっているが、電流目標上昇部65が、反転前の期間TI2における増加分を、反転後の期間TI1における増加分よりも高く設定すれば、極性反転時の電極温度の低下がより少なくなり、極性反転の前後で放電状態をより安定させることができる。その結果、極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減され、視覚に感じる光のちらつきであるフリッカが低減されるといった効果を向上させることが可能になる。また図4及び図5では、極性反転後の電流増加期間TI1と極性反転前の電流増加期間TI2の和は、反転周期の半周期の時間よりも短く、且つ、両期間TI1,TI2はそれぞれ反転周期の1/4周期の時間以下となっており、反転周期の1周期内で両期間TI1,TI2以外の時間はランプ電流が略一定に制御されている。而して、制御部6ではランプ電流を略一定に制御することで、ランプ出力の変化によって発生する光のちらつきを押さえることができる。なお制御部6では、上記の電流増加期間TI1,TI2の時間幅や両期間におけるランプ電流の増加量を、人が視認できない程度の値に設定している。
【0050】
また図6は、メタルハライドランプLaの累積点灯時間とランプ電流の加算値との関係を示しており、累積点灯時間が長くなるに従ってメタルハライドランプLaから発生するノイズが低下することを考慮し、電流目標上昇部65では、累積点灯時間が長くなるにつれて電流加算値を低下させている。尚、点灯初期から時間t1までの期間では電流加算値の減少割合が小さく、時間t1以降の期間では電流加算値の減少割合が大きくなっている。このように、本点灯装置では、累積点灯時間が長くなるにつれて電流加算値(すなわち出力電力の増加分)を減少させることで、ノイズ低減部によるノイズの低減効果を累積点灯時間の経過に応じて低下させており、メタルハライドランプLaから発生するノイズを低減しつつ、メタルハライドランプLaや点灯回路に加わるストレスを低減して、メタルハライドランプLaの長寿命化を図ることができる。尚、図6では電流目標上昇部65が累積点灯時間の経過に応じてランプ電流の加算分(すなわち出力電力の増加分)を連続的に低下させているが、使用初期に比べて加算分を低下させるのであれば、ランプ電流の加算分(出力電力の増加分)をステップ状に変化させても良い。
【0051】
また、本実施形態ではリセットスイッチSWが操作されると、累積点灯時間計測部63のカウント値がゼロにリセットされるのであるが、例えばメタルハライドランプLaの脱着を検出する適宜の脱着検出手段(図示せず)を備え、脱着検出手段によりメタルハライドランプLaの脱着が検出されると、累積点灯時間計測部63がカウント値をゼロにリセットするようにしても良い。
【0052】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図7及び図8に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
実施形態1ではノイズ低減部としての電流目標上昇部65が極性反転時に同期してインバータ部2の出力電力を増加させることでノイズ低減を図っているのに対して、本実施形態では、制御部6の反転判断部64(ノイズ低減部、時間調整手段)がインバータ部2の出力の極性を反転させるのに要する極性反転時間(スイッチング素子Q2〜Q5が全てオフとなる期間)を調整することでノイズ低減を図っている。
【0054】
図7(a)はスイッチングQ2,Q5のオン/オフを、同図(b)はスイッチングQ3,Q4のオン/オフを、同図(c)は反転判断部64からインバータ部2に出力される反転信号をそれぞれ示している。反転判断部64から反転信号が出力される間、スイッチング素子Q2〜Q5が全てオフになり、反転信号がオフになるとインバータ部2の出力の極性が反転するのであるが、反転判断部64では、この反転信号の時間幅Trを累積点灯時間に応じて変化させることで、極性反転に要する極性反転時間Trを変化させている。
【0055】
ここで、極性反転時間Trが短いほど、極性反転時にランプ電流がゼロになる時間が短くなるので、電極温度の低下が少なくなって極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減されることが分かっている。図8はメタルハライドランプLaの累積点灯時間と極性反転時間Trとの関係を示しており、反転制御部64では、メタルハライドランプLaからノイズが出やすい点灯初期(累積点灯時間が小さい期間)には極性反転時間Trを短くすることで、メタルハライドランプLaから発生するノイズを低減している。ただし、極性反転時間Trを短くすると、点灯回路の回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスが大きくなるので、累積点灯時間が長くなるに従って、反転制御部64では極性反転時間Trを長くして、回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスを低減している。ここで、メタルハライドランプLaの累積点灯時間が長くなると、メタルハライドランプLaから発生するノイズが低減する傾向があるので、累積点灯時間の経過に応じて極性反転時間Trを長くしても、メタルハライドランプLaから発生するノイズを小さくでき、ノイズ低減を図りつつ、メタルハライドランプLaの長寿命化を図ることができる。
【0056】
尚、図8の例では点灯初期から時間t2までの期間では極性反転時間の増加割合は小さく、時間t2以降の期間では電流加算値の増加割合が大きくなっている。また本実施形態では、反転制御部64が累積点灯時間の経過に応じて極性反転時間を連続的に増加させているが、使用初期に比べて極性反転時間を増加させるのであれば、極性反転時間をステップ状に変化させても良い。
【0057】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図9〜図11に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
実施形態1ではノイズ低減部としての電流目標上昇部65が極性反転時に同期してインバータ部2の出力電力を増加させることでノイズ低減を図っているのに対して、本実施形態では、制御部6の電流目標上昇部65(ノイズ低減部、波形調整手段)が極性反転時にランプ電流を上昇させるとともに、極性反転時間を変化させることでノイズ低減を図っている。
【0059】
図9はランプ電流波形を示し、電流目標上昇部65では、極性反転の直前に電流上昇期間TI2a,TI2b(期間TI2aはランプ電流の極性が正、期間TI2bはランプ電流の極性が負)を設け、期間TI2aにおいてランプ電流をIp1からIp2aへ増加させるとともに、期間TI2bにおいてランプ電流をIp2からIp2bへ増加させている。ここで、ランプ電流が大きいほど電極温度が上昇し、極性反転時にメタルハライドランプLaから発生するノイズが低減するのであるが、電極温度が上昇しすぎると電極の蒸発などを加速し、ランプ寿命が短くなるという問題がある。
【0060】
そこで、本実施形態では電流目標上昇部65が、各期間TI2a,TI2bにおけるランプ電流の加算値及び電流加算時間を累積点灯時間に応じてそれぞれ変化させており、点灯初期はランプ電流の加算値を大きくすることでノイズ低減を図るとともに、累積点灯時間が長くなるにつれて、図10に示すようにランプ電流の加算値(すなわちランプ電流値Ip2a,Ip2b)を減少させるとともに、図11に示すように電流加算時間TI2a,TI2bを増加させることで、ノイズ低減を図りつつ回路部品やメタルハライドランプLaに加わるストレスを低減して長寿命化を図っている。尚、図10中のAはランプ電流値Ip2aを、Bはランプ電流値Ip2bをそれぞれ示し、図11中のAは電流加算期間TI2aを、Bは電流加算期間TI2bをそれぞれ示している。
【0061】
また本実施形態では、ランプ電流の極性の正負で、ランプ電流加算値と電流加算期間の積、すなわちランプ電流値と電流加算期間の積(Ip2a×TI2a、Ip2b×TI2b)を同じ値に設定してあり、ランプ電流の波形にDC成分が発生するのを防止し、点灯中にメタルハライドが一方の電極近傍に偏るといった現象を回避することができる。
【0062】
また本実施形態では、電流目標上昇部65が、ランプ電流の極性の正負で、ランプ電流の加算値(すなわちランプ電流値Ip2a,Ip2b)および電流加算期間TI2a,TI2bをそれぞれ異なる値に設定している。一般に、メタルハライドランプLaの電極温度は、極性反転時間を決定する反転信号の継続時間Trと累積点灯時間とに応じて変化するのであるが、極性反転時間が長いほどメタルハライドランプLaから発生するノイズが抑制されることが判明しており、メタルハライドランプLaからのノイズが出やすい点灯初期(累積点灯時間が小さい期間)には、極性反転時間を短くしておくことで、過大なノイズを抑制することができる。但し、極性反転時間を短くすると、点灯回路の回路部品にかかるストレスが増加するため、メタルハライドランプLaの累積点灯時間が長くなるにつれて、極性反転時間を長くすることが好ましく、点灯回路の回路部品に加わるストレスを軽減することができる。
【0063】
このように本実施形態ではランプ電流の電流加算値及び極性反転時間を、極性の正負で異ならせることで、出力波形を非対称形状としており、累積点灯時間に応じて出力波形を変化させることで、ノイズ低減を図りつつ、ランプ寿命や回路部品の長寿命化を図っている。
【0064】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図12及び図13に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0065】
実施形態1ではノイズ低減部としての電流目標上昇部65が極性反転時に同期してインバータ部2の出力電力を増加させることでノイズ低減を図っているのに対して、本実施形態では、制御部6の電流目標上昇部65(ノイズ低減部、電流調整手段)がランプ電流の電流レベルIp1を変化させることでノイズ低減を図っている。
【0066】
ランプ電流と電極温度には相関があり、ランプ電流が大きいほど電極温度は高くなり、極性反転時に輝点が形成されやすくなる。よってメタルハライドランプLaから発生するノイズが大きい点灯初期には、電流目標上昇部65がランプ電流を増加させることで、ノイズ低減を図っている。一般に、累積点灯時間の増加に応じてランプ電圧が上昇する場合が多く、ランプ電力を一定に保つよう制御する場合は累積点灯時間の増加に応じてランプ電流が減少するのであるが、本実施形態では図13に示すようにランプ電力を一定値に保つ以上にランプ電流を低下させており、ランプ電力も、図13と同様、累積点灯時間の増加に応じて減少するようになっている。ここで、ランプ電流が過大になると、電極温度が高くなりすぎて、電極の蒸発や変形を招く虞があるが、本実施形態では累積点灯時間が増加するに従ってランプ電流を減少させているので、ランプ寿命に大きな影響を与えることなく、ノイズの低減を図ることができる。
【0067】
尚、図13の例では点灯初期から時間t3までの期間ではランプ電流Ip1の減少割合は小さく、時間t3以降の期間ではランプ電流Ip1の減少割合が大きくなっている。また本実施形態では、電流目標上昇部65が累積点灯時間の経過に応じてランプ電流を連続的に減少させているが、使用初期に比べてランプ電流を減少させるのであれば、極性反転時間をステップ状に変化させても良い。
【0068】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を図14に基づいて説明する。尚、放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1と略同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0069】
上述の実施形態1では、累積点灯時間計測部63がインバータ部2の動作時間を計時することで累積点灯時間を求めているのに対して、本実施形態ではメタルハライドランプLaの電気的特性値を検出する検出手段67を設け、累積点灯時間計測部63では検出手段67の検出値から累積点灯時間を検出している。なお、検出手段67によって検出される電気的特性値は、メタルハライドランプLaの累積点灯時間と相関を有するものであれば、どのような電気的特性値でも良く、例えばランプ電圧値や再点弧電圧のピーク値などが例として挙げられる。
【0070】
また検出手段67が、メタルハライドランプLaの発生するノイズと直接相関を有する特性値を検出しても良く、例えば図15(a)(b)に示すようにランプ電圧の極性反転時においてゼロクロスの直後に発生するランプ電圧のピーク値Vpdや、図16(a)(b)に示すように極性反転時においてゼロクロスの直後に発生するランプ電流の低電流期間の長さTdなどを検出しても良い。これらの特性値とノイズレベルとの間には相関があり、これらの特性値が大きいほどノイズレベルが高くなるので、これらの特性値が所定の閾値よりも大きい場合にはノイズ低減部によるノイズの低減効果を大きくしている。
【0071】
本実施形態では、累積点灯時間をメタルハライドランプLaの電気的特性値から検出しているので、メタルハライドランプLaの点灯時間を計時する手段や、点灯時間の計測結果をリセットする手段や、ランプ脱着を検出して点灯時間の計測結果をリセットする手段が不要になるので、点灯回路のコストダウンや小型化を図ることができ、また累積点灯時間をリセットする操作も不要であるから利便性が向上する。
【0072】
また検出手段67によりメタルハライドランプLaが発生するノイズと直接相関のある特性値を検出する場合は、ランプ毎のばらつきに関係無く、適切にノイズレベルを抑制することが可能になる。
【0073】
尚、本実施形態の構成を実施形態2〜4に適用しても良いことは言うまでもなく、上述と同様の作用効果を奏することができる。
【0074】
(実施形態6)
本発明の実施形態6を図17に基づいて説明する。図17は、本実施形態の放電灯点灯装置の回路図を示し、商用電源ACを所定電圧値の直流電源に変換するAC−DCコンバータ部7と、DC−DCコンバータ部1と、インバータ部2と、イグナイタ部3と、電圧検出部4と、電流検出部5と、制御部6とを主要な構成として備えている。本実施形態では、商用電源ACをAC−DCコンバータ部7により変換した直流電圧を、DC−DCコンバータ部1の入力電圧としている点で実施形態1と異なっており、それ以外の構成は実施形態1と同様であるから、同一の構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0075】
AC−DCコンバータ部7は、ノイズフィルタNFを介して入力される交流電源を全波整流する整流回路DBと、整流回路DBの整流出力を所望の電圧値に昇圧する昇圧チョッパ回路とで構成される。昇圧チョッパ回路は従来周知の回路構成を有しており、整流回路DBの直流出力端間に接続されるインダクタL1及びスイッチング素子Q6の直列回路と、スイッチング素子Q6の両端間に接続されたダイオードD2及びコンデンサC3の直列回路とで構成されている。尚、スイッチング素子Q6のオン/オフは制御部6によって制御される。
【0076】
また、DC−DCコンバータ部1は、上述の実施形態1で説明したフライバック方式のものから、降圧チョッパ方式のものに変更することで、メタルハライドランプLaの点灯に適したランプ電圧が得られるようになっている。なおDC−DCコンバータ部1は、コンデンサC3の両端間に接続されたスイッチング素子Q7及びダイオードD3の直列回路と、ダイオードD3の両端間に接続されたインダクタL2及びコンデンサC4の直列回路とで構成されている。ここに、本実施形態では、AC−DCコンバータ部7およびDC−DCコンバータ部1により電力変換部が構成されている。
【0077】
而して、本実施形態によれば、上述の各実施形態と同様にメタルハライドランプLaを矩形波点灯させ、且つ、極性反転に同期して出力を上昇させるなどしてメタルハライドランプLaが発生するノイズを低減することができる。
【0078】
また、上述したDC−DCコンバータ部1とインバータ部2を兼用した回路構成も周知となっているが、本回路構成を本実施形態のDC−DCコンバータ部1およびインバータ部2の代わりに用いても、上述と同様にメタルハライドランプLaに生じる高周波ノイズを低減することができる。なお本実施形態では、実施形態1と同様にインバータ部2の動作時間から累積点灯時間を検出しているが、実施形態5で説明したようにメタルハライドランプLaの電気特性値から累積点灯時間を検出するように構成してもよい。
【0079】
(実施形態7)
図18は上述した実施形態1〜6の何れかの実施形態において説明した放電灯点灯装置からなる前照灯点灯装置10を用いてメタルハライドランプLaを点灯させる前照灯8およびそれを用いた車両9を模式的に示した図であり、Lowビームスイッチ電源11から左右両側に配置された前照灯用の前照灯点灯装置10,10に電源が供給されると、各前照灯点灯装置10から対応する前照灯8に点灯電力が供給され、メタルハライドランプLaが点灯するようになっている。
【0080】
ここにおいて、車載用の放電灯点灯装置の場合には、安全性やノイズに対して非常に厳しい規制があるが、実施形態1〜6で説明した放電灯点灯装置の何れかを用いることによって、ランプに生じる高周波ノイズを低減させることができるから、安全性を向上させた前照灯8および車両9を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施形態1の放電灯点灯装置の回路図である。
【図2】同上の動作を説明するフローチャートである。
【図3】(a)〜(e)は同上の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】(a)〜(d)は同上のランプ電流を示す波形図である。
【図5】同上のランプ電流の実測波形図である。
【図6】同上の累積点灯時間とランプ電流加算値との関係を示す図である。
【図7】(a)〜(c)は実施形態2の放電灯点灯装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図8】同上の累積点灯時間と極性反転時間との関係を示す図である。
【図9】実施形態3の放電灯点灯装置のランプ電流を示す波形図である。
【図10】同上の累積点灯時間と出力電流値との関係を示す図である。
【図11】同上の累積点灯時間と出力電流加算期間との関係を示す図である。
【図12】実施形態4の放電灯点灯装置のランプ電流を示す波形図である。
【図13】同上の累積点灯時間と出力電流値との関係を示す図である。
【図14】実施形態5の放電灯点灯装置の回路図である。
【図15】(a)は同上のランプ電圧の波形図、(b)はゼロクロス時において時間軸を拡大して表示したランプ電圧の波形図である。
【図16】(a)は同上のランプ電流の波形図、(b)はゼロクロス時において時間軸を拡大して表示したランプ電流の波形図である。
【図17】実施形態6の放電灯点灯装置の回路図である。
【図18】実施形態7の車両を模式的に示した説明図である。
【図19】(a)〜(d)は従来の放電灯点灯装置のランプ電流を示す波形図である。
【図20】同上の累積点灯時間とノイズピーク値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 DC−DCコンバータ部(電力変換部)
2 インバータ部
6 制御部
63 累積点灯時間計測部
65 電流目標上昇部(ノイズ低減部、出力調整手段)
La メタルハライドランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源をメタルハライドランプの点灯に必要な電圧値の直流電圧に変換する電力変換部と、電力変換部の出力を矩形波の交番電圧に変換してメタルハライドランプに供給するインバータ部と、インバータ部の出力を調整することによって、インバータ部の出力の極性反転時にメタルハライドランプから発生するノイズを低減させるノイズ低減部と、累積点灯期間が長くなるとノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させる制御部とを設けたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力の極性を反転させるのに要する極性反転時間を調整する時間調整手段を有し、前記制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、前記時間調整手段により極性反転時間を増加させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力の極性反転に同期してインバータ部の出力電力を増加させる出力調整手段を有し、前記制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、出力調整手段による出力電力の増加分を減少させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力波形を非対称形に変化させる波形調整手段を有し、累積点灯時間に応じて出力波形を変化させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力電流を変化させる電流調整手段を有し、前記制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、電流調整手段により出力電流を低下させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記制御部は、メタルハライドの電気的特性値から累積点灯時間を検出することを特微とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を具備したことを特徴とする前照灯。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置、又は、請求項7記載の前照灯の何れかを具備したことを特徴とする車両。
【請求項1】
入力電源をメタルハライドランプの点灯に必要な電圧値の直流電圧に変換する電力変換部と、電力変換部の出力を矩形波の交番電圧に変換してメタルハライドランプに供給するインバータ部と、インバータ部の出力を調整することによって、インバータ部の出力の極性反転時にメタルハライドランプから発生するノイズを低減させるノイズ低減部と、累積点灯期間が長くなるとノイズ低減部によるノイズの低減効果を低下させる制御部とを設けたことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力の極性を反転させるのに要する極性反転時間を調整する時間調整手段を有し、前記制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、前記時間調整手段により極性反転時間を増加させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力の極性反転に同期してインバータ部の出力電力を増加させる出力調整手段を有し、前記制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、出力調整手段による出力電力の増加分を減少させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力波形を非対称形に変化させる波形調整手段を有し、累積点灯時間に応じて出力波形を変化させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記ノイズ低減部は、前記インバータ部の出力電流を変化させる電流調整手段を有し、前記制御部は、累積点灯時間の経過に応じて、電流調整手段により出力電流を低下させることを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記制御部は、メタルハライドの電気的特性値から累積点灯時間を検出することを特微とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置を具備したことを特徴とする前照灯。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の放電灯点灯装置、又は、請求項7記載の前照灯の何れかを具備したことを特徴とする車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−55828(P2010−55828A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217380(P2008−217380)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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