説明

断熱シートとその製造方法および被覆材とその製造方法ならびに被覆材の施工方法

【課題】単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とを向上させて薄肉化を図り、複雑な立体形状の施工対象にも変形に対する追従性を高めて密着性を向上させ、施工効率の向上を図る。
【解決手段】伸張性布材4、5に熱融着性素材を含ませて構成し、伸張性布材4の一面に、断熱体6が配合され熱融着性を有する弾性樹脂7の液を塗布して乾燥させ、伸張性布材4に弾性樹脂7の層を形成し、伸張性布材4の弾性樹脂7側の面に他方の伸張性布材5を重ねて融着し、伸張性布材4、5により構成される両外層間に弾性樹脂の中間層3が形成された断熱シート2を製造する。この断熱シート2を加熱して所望の形状にプレス加工し、その後打ち抜き加工により最終製品の被覆材30を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備の断熱および防音に用いられる断熱シートとその製造方法および被覆材とその製造方法ならびに被覆材の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、機械設備で曲面形状を有する高温の筺体(例えば、内燃機関やその排気部)や、機械設備に使用される管材(例えば、異径継手などの立体形状の配管で水道管、蒸気管、ガス管等)の断熱や防音を図るには、グラスウール、ロックウール等の無機短繊維断熱材やウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等の有機樹脂の発泡体からなる断熱材をシート状に成型し、シート状断熱材をこれら筐体や管材に巻き付けたり、発泡体からなる断熱材を、曲面形状の筐体の外面に合致させて成型したり、配管の外径に合致させて半割円筒形状に成型したりして、成型されたカバーで被覆することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明のようなガラスウール、ロックウール、ポリエチレンフォーム等の断熱材では、熱伝導率は0.035W/m・K〜0.040W/m・K以上と高く、断熱性の高い被覆が求められる場合、被覆材を厚くする必要があり、狭い空間では設置しにくいという問題がある。また、熱伝導率はガラスウール、ロックウール断熱材と同等レベルであるが、折り曲げ被覆性を改善するため、難溶性無機質原料を30〜70質量%、セラミック繊維および/または鉱物繊維20〜60質量%、パルプ3〜10質量%、アルミナ1〜10質量%およびラテックス1〜10質量%の混合物よりなる水性スラリーを抄造し、シート状断熱材を製造することが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−221076号公報(第3、4頁、図1−4)
【特許文献2】特開2002−81146号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の断熱材では、配管の太さがほぼ一定で直線状の部分には効率良く被覆施工できるものの、異径管継手やエルボ管等を含む配管や、曲面を有する複雑な形状の筐体の被覆については、形状に合わせて成型したり製作したりする必要があり、コストアップを招いたり施工性が悪く施工効率が低下してしまうという問題がある。また、上記特許文献2に記載された従来のシート状断熱材では、ガラスウール、ロックウール断熱材と同等レベルで(熱伝導率は0.040W/m・K以上)、金属板間に挟み込んで使用しなければならず、複雑な曲面形状や立体形状を有する筐体や配管に適用すると前記の断熱材と同様にコストアップや施工効率の低下を招くという問題があった。
【0005】
本発明のうち第1の発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で厚さが薄くても高い断熱防音性能を備え、加工が容易で、複雑な立体形状に対する成型性能を向上させるとともに、弾性と伸張性を増大させて変形に対する追従性を高めて断熱対象に対する密着性を向上させ、施工効率の向上と長寿命化を図ることができる断熱シートとその製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明のうち第2の発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡素な構成で厚さが薄くても高い断熱防音性能を備え、加工が容易で、複雑な立体形状に対する成型性能を向上させるとともに、弾性を増大させて変形に対する追従性を高めて被覆対象に対する密着性を向上させ、施工効率の向上と長寿命化を図ることができる被覆材とその製造方法および被覆材の施工方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る断熱シートは、一対の伸張性布材により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され断熱体を含む弾性樹脂の中間層との3層構造を有するようにしたものである。
【0007】
本発明の請求項1に係る断熱シートでは、一対の伸張性布材により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され断熱体を含む弾性樹脂の中間層との3層構造を有するようにしたことにより、断熱シートは、薄肉であっても単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とが向上する。断熱シートの外側の外層は伸張性を、内側の中間層は弾性をそれぞれ有しているので、変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に布材が積層されることにより強度が向上する。
【0008】
本発明の請求項2に係る断熱シートは、伸張性布材により構成される第1の外層と、伸張性を有し熱融着性素材を含む不織布により構成される第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有するようにしたものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る断熱シートでは、伸張性布材により構成される第1の外層と、伸張性を有し熱融着性素材を含む不織布により構成される第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有するようにしたことにより、断熱シートは、薄肉であっても単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とが向上する。断熱シートの外側の外層は伸張性を、内側の中間層は弾性をそれぞれ有しているので、外観ソフトで変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に布材と不織布が積層されることにより強度が向上する。さらに、外観がソフトに形成されることにより、外観上柔らかい感じを与えるとともに、柔らかい肌触りともなる。厚手であったり起毛してある不織布を用いた場合は、生地中に空気を含むことになり、断熱性能が向上する。
【0010】
本発明の請求項3に係る断熱シートは、伸張性を有し熱融着性素材を含む一対の不織布により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有するようにしたものである。
【0011】
本発明の請求項3に係る断熱シートでは、伸張性を有し熱融着性素材を含む一対の不織布により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有するようにしたことにより、断熱シートは、薄肉であっても単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とが向上する。断熱シートの外側の外層は伸張性を、内側の中間層は弾性をそれぞれ有しているので、外観ソフトで変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に不織布が積層されることにより強度が向上する。さらに、外観がソフトに形成されることにより、外観上柔らかい感じを与えるとともに、柔らかい肌触りともなる。しかも、厚手であったり起毛してある不織布を用いた場合は、生地中に空気を含むことになり、断熱性能が向上する。
【0012】
本発明の請求項4に係る断熱シートは、外層が、一方向または異なる二方向に伸張するようにしたものである。
【0013】
本発明の請求項4に係る断熱シートでは、外層は、一方向または異なる二方向に伸張するようにしたことにより、断熱シートを用いる対象に応じて、断熱シートの変形に対する追従性を変えることができ、より複雑な形状の対象に対しては、変形に対する追従性が比較上高く深しぼりできる二方向に伸張する伸張性布材を、より単純な形状の対象に対しては、変形に対する追従性が比較上低い一方向に伸張する伸張性布材をそれぞれ用いて断熱シートを製造することができる。
【0014】
断熱シートは、伸張性布材が、ポリエステル樹脂、エステル型ウレタン樹脂またはエーテル型ウレタン樹脂のうちいずれかの樹脂による伸度40%以上の弾性繊維糸を用いて織られた厚み0.05ないし2.0mmで伸度10%以上の織布により構成されることが好ましい。係る構成とすることにより、伸張性能が向上し、変形に対する追従性がより高まる。
【0015】
断熱シートは、不織布が、融点摂氏80〜160度のポリアミド樹脂またはポリオレフィン樹脂のうち少なくともいずれか一方を含む熱融着性繊維を含有する、厚み0.05ないし3.0mmのポリエステル不織布であることが好ましい。係る構成とすることにより、加熱による融着時、摂氏80ないし160度で熱融着されるので、比較的低い温度でも融着性能が向上する。このため、製造コストが低減される。
【0016】
断熱シートは、断熱体を中空ビーズから構成し、中空ビーズを配合した樹脂は、中空ビーズと樹脂との固形重量成分比が20:80ないし50:50の範囲であるようにすることが好ましい。係る構成とすることにより、より高い断熱性能を確保しつつ、軽量化される。
【0017】
断熱シートは、中空ビーズが、フェノール樹脂、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン・アクリル共重合体、アクリル系共重合体または塩化ビニル系共重合体のうちいずれか1からなる微粒子体の内部に、熱によりガス化する低沸点炭化水素または発泡剤を含ませた発泡性中空ビーズにより構成されることが好ましい。係る構成とすることにより、製造工程中に発泡に必要な加熱が行われると、弾性樹脂に配合された素材の微粒子体が発泡して発泡性中空ビーズとなり、弾性樹脂の中間層内に断熱体が形成される。
【0018】
断熱シートは、中空ビーズが、有機質系バルーンまたは無機質系バルーンからなる微粒子中空体により構成される独立気泡性中空ビーズであって、有機質系バルーンが、フェノール樹脂バルーンであり、無機質系バルーンがガラスバルーン、アルミナバルーン、シリカアルミナバルーン、シリカバルーン、シラスバルーンまたはカーボンバルーンのうちいずれか1であることが好ましい。係る構成とすることにより、断熱性に加えて耐熱、防火性が向上する。
【0019】
断熱シートは、中空ビーズを配合した弾性樹脂が、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、オレフィン系エラストマー樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、ウレタン系エラストマー樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂、ポリアミド系またはアラミド系エラストマー樹脂のうちいずれか1またはこれらのうち1以上を含む混合分散液が固化または硬化される樹脂であることが好ましい。係る構成とすることにより、弾性が向上するとともに、より高い断熱性能と防音性能を発揮する。
【0020】
本発明の請求項5に係る断熱シートの製造方法は、伸張性布材の一面に、断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ弾性樹脂の層を形成する第1の工程と、この伸張性布材の弾性樹脂層側の面に別の伸張性布材を重ねて融着させ、これら一対の伸張性布材により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に断熱体を含む弾性樹脂の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有するようにしたものである。
【0021】
本発明の請求項5に係る断熱シートの製造方法では、伸張性布材の一面に、断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ弾性樹脂の層を形成する第1の工程と、この伸張性布材の弾性樹脂層側の面に別の伸張性布材を重ねて融着させ、これら一対の伸張性布材により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に断熱体を含む弾性樹脂の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有するようにしたことにより、伸張性布材を重ねて接着剤を用いることなく加熱して融着させるだけで、断熱体を含む弾性樹脂の中間層が形成されるので、断熱シートの製造が簡素化される。また、こうして製造された断熱シートは、薄肉であっても単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とが向上する。断熱シートの外側には、伸張性布材により伸縮層が形成されているので、変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に布材が積層されることにより強度が向上する。
【0022】
本発明の請求項6に係る断熱シートの製造方法は、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の一面に伸張性布材を、他面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布をそれぞれ重ねて融着させ、伸張性布材により第1の外層を、別の不織布により第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程を有するようにしたものである。
【0023】
本発明の請求項6に係る断熱シートの製造方法では、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の一面に伸張性布材を、他面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布をそれぞれ重ねて融着させ、伸張性布材により第1の外層を、別の不織布により第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程を有するようにしたことにより、伸張性布材を重ねて接着剤を用いることなく加熱して融着させるだけで、断熱体を含む弾性樹脂の中間層が形成されるので、断熱シートの製造が簡素化される。また、こうして製造された断熱シートは、薄肉であっても単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とが向上する。断熱シートの外側には、伸張性布材により伸縮層が形成されているので、変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に布材と不織布が積層されることにより強度が向上する。
【0024】
本発明の請求項7に係る断熱シートの製造方法は、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の両面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布を重ねて融着させ、これら別の不織布により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有するようにしたものである。
【0025】
本発明の請求項7に係る断熱シートの製造方法では、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の両面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布を重ねて融着させ、これら別の不織布により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有するようにしたことにより、伸張性布材を重ねて接着剤を用いることなく加熱して融着させるだけで、断熱体を含む弾性樹脂の中間層が形成されるので、断熱シートの製造が簡素化される。また、こうして製造された断熱シートは、薄肉であっても単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とが向上する。断熱シートの外側には、ソフトで伸張性布材により伸縮層が形成されているので、変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に不織布が積層されることにより強度が向上する。さらに、外観がソフトに形成されることにより、外観上柔らかい感じを与えるとともに、柔らかい肌触りともなる。しかも、厚手であったり起毛してある不織布を用いた場合は、生地中に空気を含むことになり、断熱性能が向上する。
【0026】
本発明の請求項8に係る断熱シートの製造方法は、第1の外層に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ、積層時、この第1の外層の弾性樹脂の層側の面を含浸された不織布に重ねるようにしたものである。
【0027】
本発明の請求項8に係る断熱シートの製造方法では、第1の外層に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ、積層時、この第1の外層の弾性樹脂の層側の面を含浸された不織布に重ねるようにしたことにより、中間層が積層されやすくなる。
【0028】
断熱シートの製造方法は、不織布を、融点摂氏80〜160度のポリアミド樹脂またはポリオレフィン樹脂のうち少なくともいずれか一方を含む熱融着性繊維を含有する、厚み0.05ないし3.0mmのポリエステル不織布により構成し、第2の工程で、加圧して熱により熱融着させることが好ましい。係る構成とすることにより、比較的低い温度でも融着性能が向上する。このため、製造コストが低減される。
【0029】
断熱シートの製造方法は、断熱体を、内部に熱によりガス化する昇華材または発泡剤を含み、熱を受けて樹脂の外皮が膨張して内部に発生するガスを閉じ込めて密封する微粒子体により構成し、加熱時、内部にガスを閉じ込めた中空ビーズを形成することが好ましい。係る構成とすることにより、製造工程中にガス化に必要な加熱が行われると、弾性樹脂に配合された微粒子体の内部の昇華材または発泡剤がガス化して弾性樹脂の中間層内にガスを閉じ込めた中空ビーズが形成される。このため、積層工程時にガス化も同時に行うことができ、中空ビーズを予め製造する作業が不要となり、製造時間が短縮される。
【0030】
本発明の請求項9に係る被覆材は、請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の断熱シートを、被覆対象の形状に応じて成型したものである。
【0031】
本発明の請求項9に係る被覆材では、請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の断熱シートを、被覆対象の形状に応じて成型したことにより、被覆材の外側には、伸張性を有する外層が積層されて、成型性能が向上し、弾性と伸張性とが増大され、変形に対する追従性が高くなっているので、成型された被覆材は被覆する施工対象に完全に合致しなくとも、大凡の形状が確保されてさえいれば、被覆材の両端を引っ張って被覆対象に対して確実に密着させることができる。このため、施工効率が向上する。また、成型された被覆材が被覆する施工対象の形状に完全に合致していなくても用いることができるので、多種の形状に成型する必要がなく、無駄を省くことができる。
【0032】
本発明の請求項10に係る被覆材は、断熱シートを曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状の被覆材片に形成し、これら被覆片を組み合わせて被覆材を構成したものである。
【0033】
本発明の請求項10に係る被覆材では、断熱シートを曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状の被覆材片に形成し、これら被覆片を組み合わせて被覆材を構成したことにより、複雑な施工対象でも対応させ易くなる。
【0034】
本発明の請求項11に係る被覆材は、成型された半割状被覆材片の表面に、表面の少なくとも一部の形状に応じて型取りされた紙型を貼着するようにしたものである。
【0035】
本発明の請求項11に係る被覆材では、成型された半割状被覆材片の表面に、表面の少なくとも一部の形状に応じて型取りされた紙型を貼着するようにしたことにより、強度を増大させることができる。
【0036】
本発明の請求項12に係る被覆材は、半割状被覆材片には、他の半割状被覆材片ともに被覆対象に被せて互いに接合される接合面が形成され、この接合面には、粘着部を形成したものである。
【0037】
本発明の請求項12に係る被覆材では、半割状被覆材片には、他の半割状被覆材片ともに被覆対象に被せて互いに接合される接合面が形成され、この接合面には、粘着部を形成したことにより、半割形状被覆材片の接合面を合わせるだけで、被覆対象を被覆材で覆うことができ、作業が効率化される。
【0038】
本発明の請求項13に係る被覆材の製造方法は、請求項5ないし8のうちいずれか1に記載の方法により製造される断熱シートを、被覆対象の形状に応じて加熱してプレス加工し、プレス加工された半製品を打ち抜き加工して成型するようにしたものである。
【0039】
本発明の請求項13に係る被覆材の製造方法では、請求項5ないし8のうちいずれか1に記載の方法により製造される断熱シートを、被覆対象の形状に応じて加熱してプレス加工し、プレス加工された半製品を打ち抜き加工して成型するようにしたことにより、簡素な工程で所望の形状に成型された被覆材を得ることができ、製造時間が短縮化される。製造された被覆材の外側には、伸張性布材が積層されて、成型性能が向上し、弾性と伸張性とが増大され、変形に対する追従性が高くなっているので、成型された被覆材は被覆する施工対象に完全に合致しなくとも、大凡の形状が確保されてさえいれば、被覆材の両端を引っ張って被覆対象に対して確実に密着させることができる。このため、施工効率が向上する。また、成型された被覆材が被覆する施工対象の形状に完全に合致していなくても用いることができるので、多種の形状に成型する必要がなく、無駄を省くことができる。
【0040】
本発明の請求項14に係る被覆材の製造方法は、断熱シートを、成型面が曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状に形成された金型に挿入してプレス加工し半割状被覆材片を形成するとともに、これら被覆片を組み合わせて被覆材を構成したものである。
【0041】
本発明の請求項14に係る被覆材の製造方法では断熱シートを、成型面が曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状に形成された金型に挿入してプレス加工し半割状被覆材片を形成するとともに、これら被覆片を組み合わせて被覆材を構成したことにより、成型加工し易くなり、製造時間が短縮化される。
【0042】
本発明の請求項15に係る被覆材の製造方法は、断熱シートを、プレス加工前またはプレス加工時に加熱するようにしたものである。
【0043】
本発明の請求項15に係る被覆材の製造方法では、断熱シートを、プレス加工前またはプレス加工時に加熱するようにしたことにより、加工し易くなる。
【0044】
本発明の請求項16に係る被覆材の製造方法は、断熱シートを、室温または摂氏80度以上に加熱した後、成型面が曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状に形成された金型に挿入し常温以上の温度でプレス加工するようにしたものである。
【0045】
本発明の請求項16に係る被覆材の製造方法では、断熱シートを、室温または摂氏80度以上に加熱した後、成型面が曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状に形成された金型に挿入し常温以上の温度でプレス加工するようにしたことにより、加工後、最終製品の冷却が早まるので作業効率が向上する。
【0046】
本発明の請求項17に係る被覆材の施工方法は、請求項9ないし12のうちいずれか1に記載の被覆材を、施工対象に添え当てて保持する第1の工程と、施工対象に添え当てられて保持された被覆材の外面に防水性および防湿性を有する熱収縮性保持材を被せる第2の工程と、被覆材に被せられた熱収縮性保持材に熱風を吹き付け保持材を収縮させて被覆材を施工対象に取り付ける第3の工程とを有するようにしたものである。
【0047】
本発明の請求項17に係る被覆材の施工方法では、請求項9ないし12のうちいずれか1に記載の被覆材を、施工対象に添え当てて保持する第1の工程と、施工対象に添え当てられて保持された被覆材の外面に防水性および防湿性を有する熱収縮性保持材を被せる第2の工程と、被覆材に被せられた熱収縮性保持材に熱風を吹き付け保持材を収縮させて被覆材を施工対象に取り付ける第3の工程とを有するようにしたことにより、作業効率が向上するとともに、被覆材は防水性および防湿性を備えた熱収縮性保持材により保護されるので、水回りの被覆対象であっても被覆材の長寿命化が図られる。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る断熱シートは、一対の伸張性布材により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され断熱体を含む弾性樹脂の中間層との3層構造を有しているので、断熱性が向上し断熱シートの厚みを薄くしてコストダウンと狭隘な作業空間での施工性の向上を図ることができる。また、弾性変形と伸張性とが増大し複雑な形状の被覆対象にも密着させて確実に接合させることができる。さらに、吸音性が向上し防音材としても用いることができ、用途を拡大することができる。
【0049】
また、本発明に係る断熱シートは、伸張性布材により構成される第1の外層と、伸張性を有し熱融着性素材を含む不織布により構成される第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有しているので、断熱性が向上し断熱シートの厚みを薄くしてコストダウンと狭隘な作業空間での施工性の向上を図ることができる。また、弾性変形と伸張性とが増大し複雑な形状の被覆対象にも密着させて確実に接合させることができる。さらに、吸音性が向上し防音材としても用いることができ、用途を拡大することができる。
【0050】
さらに、本発明に係る断熱シートは、伸張性を有し熱融着性素材を含む一対の不織布により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有しているので、断熱性が向上し断熱シートの厚みを薄くしてコストダウンと狭隘な作業空間での施工性の向上を図ることができる。また、弾性変形と伸張性とが増大し複雑な形状の被覆対象にも密着させて確実に接合させることができる。さらに、吸音性が向上し防音材としても用いることができ、用途を拡大することができる。
【0051】
本発明に係る断熱シートの製造方法は、伸張性布材の一面に、断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ弾性樹脂の層を形成する第1の工程と、この伸張性布材の弾性樹脂層側の面に別の伸張性布材を重ねて融着させ、これら一対の伸張性布材により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に断熱体を含む弾性樹脂の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有するようにしているので、高い断熱防音性能と成型性能とを備えるとともに、変形に対する追従性の高い断熱シートを簡素な工程で得られ、コストダウンを図ることができる。
【0052】
また、本発明に係る断熱シートの製造方法は、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の一面に伸張性布材を、他面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布をそれぞれ重ねて融着させ、伸張性布材により第1の外層を、別の不織布により第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程を有するようにしているので、高い断熱防音性能と成型性能とを備えるとともに、外観ソフトで変形に対する追従性の高い断熱シートを簡素な工程で得られ、コストダウンを図ることができる。さらに、外観がソフトに形成されることにより、外観上柔らかい感じを与えるとともに、柔らかい肌触りともなる。しかも、厚手であったり起毛してある不織布を用いた場合は、生地中に空気を含むことになり、断熱性能が向上する。
【0053】
さらに、本発明に係る断熱シートの製造方法は、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の両面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布を重ねて融着させ、これら別の不織布により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有するようにしているので、高い断熱防音性能と成型性能とを備えるとともに、外観ソフトで変形に対する追従性の高い断熱シートを簡素な工程で得られ、コストダウンを図ることができる。断熱シートの外側には、ソフトで伸張性布材により伸縮層が形成されているので、変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。中間層両面に不織布が積層されることにより強度が向上する。さらに、外観がソフトに形成されることにより、外観上柔らかい感じを与えるとともに、柔らかい肌触りともなる。しかも、厚手であったり起毛してある不織布を用いた場合は、生地中に空気を含むことになり、断熱性能が向上する。
【0054】
本発明に係る被覆材は、請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の断熱シートを、被覆対象の形状に応じて成型したことにより、被覆材の外側には、伸張性を有する外層が積層されて、成型性能が向上し、弾性と伸張性とが増大され、変形に対する追従性が高くなっているので、成型された被覆材は被覆する施工対象に完全に合致しなくとも、大凡の形状が確保されてさえいれば、被覆材の両端を引っ張って被覆対象に対して確実に密着させることができる。このため、施工効率が向上する。また、成型された被覆材が被覆する施工対象の形状に完全に合致していなくても用いることができるので、多種の形状に成型する必要がなく、無駄を省くことができる。さらに、吸音性が向上し防音材としても用いることができ、用途を拡大することができる。
【0055】
本発明に係る被覆材の製造方法は、請求項5ないし8のうちいずれか1に記載の方法により製造される断熱シートを、被覆対象の形状に応じて室温でまたは加熱した後、常温以上の温度でプレス加工(コールドプレス加工とホットプレス加工)し、プレス加工された半製品を打ち抜き加工して成型するようにしているので、高い断熱防音性能と成型性能とを備えるとともに、変形に対する追従性の高い被覆材を簡素な工程で得られ、コストダウンを図ることができる。
【0056】
本発明に係る被覆材の施工方法は、請求項9ないし12のうちいずれか1に記載の被覆材を、施工対象に添え当てて保持する第1の工程と、施工対象に添え当てられて保持された被覆材の外面に防水性および防湿性を有する熱収縮性保持材を被せる第2の工程と、被覆材に被せられた熱収縮性保持材に熱風を吹き付け保持材を収縮させて被覆材を施工対象に取り付ける第3の工程とを有するようにしているので、取付作業が効率化され、被覆材の長寿命化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
伸張性を有する布材に断熱体を含み弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ、この含浸された布材の両面に伸張性を有する別の布材を重ねて融着させ、両伸張性布材間に断熱体を含む弾性樹脂からなる中間層を積層し、3層構造を有する断熱シートを製造するとともに、この断熱シートを加熱して所望の形状にプレスし、打ち抜き加工して被覆材を得ることにより実現した。
【実施例1】
【0058】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は、本発明の第1の実施例に係る断熱シート示す断面図である。図1に示すように、本実施例に係る断熱シート2は、一対の伸張性布材4、5により構成される第1第2の外層と、これら両外層4、5の間に積層された中間層3との3層構造を有している。中間層3は、伸張性布材4、5のうち、一方の伸張性布材4の一面に、断熱体6を含む弾性樹脂7の液を塗布して乾燥させ、この弾性樹脂7を硬化させて形成された断熱体6を含む弾性樹脂の層により構成される。断熱シート2は、まず、一方の伸張性布材4に断熱体6を含み弾性樹脂7の液を塗布して乾燥させ、伸張性布材4の一面に中間層3となる弾性樹脂7の層を形成する。そして、伸張性布材4の弾性樹脂7側の面に、他方の伸張性布材5を重ねて融着し、第1第2の両外層4、5間に弾性樹脂7が硬化された中間層3を積層し、3層構造をなす断熱シート2を得るようにしている。
【0059】
ここでいう弾性樹脂7の液とは、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、オレフィン系エラストマー樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、ウレタン系エラストマー樹脂、ポリエステル系エラストマー樹脂、ポリアミド系またはアラミド系エラストマー樹脂のうちいずれか1またはこれらのうち1以上を含む混合物の分散液である。このような弾性樹脂7の分散液に、後述する断熱体6を配合し、必要に応じて、クミルパーオキシネオデカノネート、ベンゾイルパーオキサイド等の硬化触媒を配合し、これらが配合された樹脂の混合液を固化または硬化させて中間層3となる。この弾性樹脂7の分散液には、さらに分散性を良くするために、分散助剤としてのシリコン系界面活性剤を少量配合したり、難燃性を高めるため、リン系難燃剤を配合してもよい。上述の如く配合された弾性樹脂7は、後述する試験結果からも明らかなように、硬化または固化後、十分な弾性を示し、伸縮層4、5と相俟って変形に対する高い追従性を示した。
【0060】
断熱体6は、合成樹脂の外殻を有し熱により内部に発生したガスを密封する発泡性中空ビーズ6Aまたは耐熱耐火性を有する無機質の素材からなる外殻により構成され内部にガス(エア)を密封した独立気泡性中空ビーズ6Bにより構成される。
【0061】
発泡性中空ビーズ6Aは、樹脂の外皮がヘプタン等の炭化水素(低沸点炭化水素、昇華材)または発泡剤を含む微粒子体を内部に包み込んで構成される。外皮をなす熱により軟化して膨張性を有する樹脂は、フェノール系樹脂、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン・アクリル共重合体、アクリル系共重合体または塩化ビニル系共重合体のうちいずれか1からなっている。発泡性中空ビーズ6Aは、加熱工程で、内部の低沸点炭化水素または発泡剤を発泡させてガス化させ、軟質の合成樹脂の外皮がこのガスを内部に密封するようになっている。すなわち、発泡性中空ビーズ6Aは、加熱により内包する低沸点炭化水素や発泡剤が発泡して膨張する一方、外皮をなす樹脂が軟化して発泡したガスを密封し閉じ込めるようになっている。このように構成することにより、発泡性中空ビーズ6Aはそれぞれが独立した断熱性を有する発泡体として形成される。
【0062】
このような発泡性中空ビーズ6Aの微粒子体は、摂氏80度以上で発泡し外皮をなす樹脂がガスバリヤー性と密閉性に優れた中空ビーズを形成するため、熱伝導率の低い断熱層を形成するようになっている。このような中空ビーズ6Aを有する弾性樹脂層すなわち中間層3は、発泡条件にもよるが、実験の結果0.021〜0.028W/m・Kの熱伝導率となることが判明した。
【0063】
また、独立気泡性中空ビーズ6Bは、有機質系バルーンまたは無機質系バルーンからなる微粒子中空体により構成される。有機質系バルーンを、フェノール樹脂バルーンにより、また、無機質系バルーンを、ガラスバルーン、アルミナバルーン、シリカアルミナバルーン、シリカバルーン、シラスバルーンまたはカーボンバルーンのうちいずれか1により構成してもよい。このように構成することにより、耐熱、防火性が向上するとともに、上記発泡性中空ビーズ6Aとほぼ同様の低い熱伝導率が得られる。
【0064】
断熱体6と弾性樹脂7との配合割合は、含浸される弾性コート樹脂の塗布量、断熱層の厚みにより決められるが、固形分配合比で、断熱体6(発泡性中空ビーズ6Aまたは独立気泡性中空ビーズ6B):弾性を有する樹脂7は、20:80ないし50:50重量%の範囲の配合が好ましい。なお、ここでいう弾性コート樹脂は、発泡性ビーズ6A、6Bが配合された弾性を有する樹脂7の分散液をいう。
【0065】
伸張性布材4、5、14は、難燃性の弾性ポリエステル繊維、ポリアミド繊維またはエステル型またはエーテル型ウレタン樹脂からなる弾性繊維を芯糸とし、これをシングルカード、ダブルカード等の方法で加工した伸度40%以上の撚糸とし、撚糸からなる縦糸および横糸を交織した厚み0.05〜2.0mm、伸度10%以上のX方向(1方向)またはXY方向(互いに直交する方向)に伸張(または伸縮)するワンウェイファブリック型の基布4A、5Aまたはツウウエイファブリック型の基布4B、5Bにより構成される。ファブリック型の基布4A、4B、5A、5Bは熱融着性素材により構成しているが、熱融着性素材を含ませるようにしてもよい。XY方向に伸張(または伸縮)するツウウエイファブリック型の基布4B、5Bの場合、1方向のものに比べて深しぼりできる。
伸度のJISは以下の通りで、繊維については、JIS L1030「化学繊維フィラメント糸試験方法」に、また、生地については、JIS L1018「ニット生地試験方法」にそれぞれ基づいている。
【0066】
なお、この伸張性布材4A、4B、5A、5Bの好ましい厚さを、0.05〜2.0mmとしたのは、0.05mmより薄いと、断熱シート2を立体形状に成形加工する時に、布材にかかるテンションに耐えられる引裂強度が充分でなく、外観が良好な立体形状の後述する被覆材の製造が困難になることによる。他方、布材4A、4B、5A、5Bを2.0mmより厚くすると引裂強度は充分となるが、断熱シート2を立体形状に形成して所望の形状に加工される被覆材を、薄手の断熱被覆とするには中間層3を薄くすることになり、結果として満足できる断熱性能が得られなくなる虞があるからである。満足できる断熱性能を得るために中間層3を厚くすると断熱シート2全体の厚さが厚くなり、狭い空間に設置された配管を断熱するために被覆する場合、使いにくくなるからである。従って、伸張性布材4A、4B、5A、5Bの厚みとして含浸されていない層の厚みを含め0.05〜2.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.1〜1.0mmの範囲が適正である。そして、後述する試験結果から、伸縮層4、5がこのような薄肉であっても、変形に対する追従性が高いことが判明した。
【0067】
また、伸張性布材4、5は後述するように、一方または両方を、熱融着性繊維を含有する伸張性ポリエステル不織布10(図2、図3参照)により構成してもよい。すなわち、伸張性ポリエステル不織布10は、融点80〜160℃のポリアミド、ポリオレフィン樹脂の単独または複合樹脂からなる熱融着性繊維を含有する含浸されていない層の厚みを含めて厚み0.05〜3.0mm、目付20〜200g/mのポリエステル繊維からなる不織布で、好ましくは0.1〜2.0mm、目付40〜150g/mの範囲が適正である。熱融着性繊維としては、ポリカプロラクタム系ポリアミド樹脂、ポリブチレンサクシネート・アジペート樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレン・ポリプロピレン複合樹脂からなる繊維で、融点が80〜160℃の範囲にある繊維が用いられる。不織布の厚みが0.05mmより薄いと、断熱シート2を立体形状に成形加工する時に、不織布にかかるテンションに耐えられる引裂強度が充分でなく、外観が良好な立体形状の後述する被覆材の製造が困難となることによる。反面、不織布を3.0mmより厚くすると引裂強度は充分となるが、断熱シート2を立体形状に形成して所望の形状に加工される被覆材を、薄手の断熱被覆とするには中間層3を薄くすることになり、結果として満足できる断熱性能が得られなくなる。満足できる断熱性能を得るために中間層3を厚くすると断熱シート2全体の厚さが厚くなるため、狭い空間に設置された配管を断熱するために被覆する場合、使いにくくなるからである。従って、伸張性不織布(伸張性ポリエステル不織布)9、10の厚みとして含浸されていない層の厚みを含め0.05〜3.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.1〜2.0mmの範囲が適正である。
【0068】
このように、断熱シート2は、一対の伸張性布材4、5により構成される第1第2の外層と、これら両外層4、5の間に積層され断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7の中間層3との3層構造を有するようになっている。
【0069】
この断熱シート2は、基布(伸張性布材4、5)またはポリエステル不織布10を延展する移動式テンター装置(図示せず)とドクターナイフまたはダブルカットバー等の塗工装置(図示せず)、および150℃以下の温度で乾燥発泡させる加熱炉を有する連続駆動型の塗工設備(図示せず)で製造される。
【0070】
具体的には、テンターで延展された基布に、コーティング用弾性樹脂7の分散液を常温で厚み100〜300μmでコートし、100℃以下の温度で溶剤または水分をある程度乾燥させ、続いてコート樹脂層を有する基布が内側にくるように外側には別の基布を重ねて圧着し100℃以上の温度で加熱融着させて3層構造の伸張性断熱シート2が得られるようになっている。
【0071】
例えば、図1に示す断熱シート2の場合、テンターで延展された基布(伸張性布材)4に、断熱体6が配合されたコーティング用弾性樹脂7を常温で厚み100〜300μmをコートし、100℃以下の温度で溶剤または水分をある程度乾燥させる。続いてこの基布4の弾性樹脂7の層側の面に他方の基布(伸張性布材)5を重ねて圧着し100℃以上の温度で加熱融着させ3層構造の伸張性断熱シート2が製造されるようになっている。両外層となる伸張性布材4、5には、弾性樹脂7は含浸されておらず、含浸されていない層(未含浸層)4M、5Mが確保されている。断熱体6に、発泡性中空ビーズ6Aを使用した場合、加熱融着する際、熱により内部にガスが発生するとともに、発生したガスを合成樹脂の外殻が密封して閉じ込めるようになっている。
【0072】
次に、上記第1の実施例に係る断熱シートの製造方法について説明する。上記実施例に係る断熱シート2の製造方法では、図4に示すように、まず、第1の工程で、一方の伸張性布材(ファブリック型の基布)4(4A、4B)に、断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を塗布し、所定温度(例えば摂氏100度以下の温度)で乾燥させる(ステップS1)。乾燥後、次に、第2の工程で、一方の伸張性布材4の弾性樹脂7の層側の面に、他方の伸張性布材5(5A、5B)を重ねて圧着し、熱融着性繊維の溶融温度(例えば摂氏100度以上)で加熱して熱融着させるようになっている(ステップS2)。こうして製造された断熱シート2は、一対の伸張性布材4、5から構成される両外層4、5と、これら両外層4、5の間に積層され断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7からなる中間層3との3層構造となっている。中間層3の弾性樹脂には、断熱体6(6A、6B)が含まれているので、断熱性能が向上するとともに、弾性を有する中間層3の両面には伸張性を有する外層4、5が形成されているので、成型性能が向上し、弾性と伸張性とが増大され、変形に対する追従性が高まり断熱対象に対する密着性が向上する。このため、施工効率が向上する。また、中間層3両面に布材4、5が積層されることにより強度が向上し、防音性能も向上する。弾性樹脂7に断熱体6として加熱により発泡して断熱発泡体となる発泡性中空ビーズ6Aが含まれている場合、加熱時に中空ビーズ6Aの内部に含まれる低沸点炭化水素または発泡剤も同時にガス化し、このガスを軟質の樹脂の外皮が膨張して内部に閉じ込め、断熱性の高い断熱発泡体が形成される。断熱体6として独立気泡性中空ビーズ6Bが含まれている場合、断熱性に加え耐熱性が向上する。
【0073】
なお、上記第1の実施例では、第1の外層4側にのみ弾性樹脂層7を形成するようにしているがこれに限られるものではなく、第1第2の外層の両方に弾性樹脂層7を形成するようにしてもよい。
【実施例2】
【0074】
次に、本発明の第2の実施例に係る断熱シート12について説明する。本実施例に係る断熱シート12は、上記第1の実施例に係る断熱シート2が、各外層を構成する伸張性布材4、5をそれぞれ、ファブリック型の基布4A、4Bおよび5A、5Bにより構成しているのに対し、一方の外層を伸張性布材14により、他方の外層を熱融着性繊維を含有するポリエステル不織布10により構成するとともに、これら両外層の間に積層される中間層13を、熱融着性繊維を含有するポリエステル不織布M1に断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7を含浸させた弾性樹脂層としている点が異なっている。すなわち、第2の実施例に係る断熱シート12は、図2に示すように、伸張性布材14により構成される第1の外層14と、伸張性を有し熱融着性素材を含む不織布10により構成される第2の外層15と、これら両外層14、15の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布M1に断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7を含浸した中間層13との3層構造を有している。中間層13は、ポリエステル不織布M1に断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の分散液を塗布して乾燥させ、含浸させるようになっている。
【0075】
具体的には、伸張性布材14(4A、4B)を延伸状態で断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を常温で塗布し、所定温度(例えば摂氏100度以下の温度)で乾燥させ、伸張性布材14の一面に弾性樹脂7の層を形成する。一方、融点80〜160℃のポリアミド、ポリオレフィン樹脂の単独または複合樹脂からなる熱融着性繊維を含有する厚み0.05〜3.0mmのポリエステル不織布M1に、断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を常温で塗布し、続いて、例えば摂氏100度以下の温度で乾燥させ、ポリエステル不織布M1に弾性樹脂7を含浸させる。次に、含浸されたポリエステル不織布M1の一面に、伸張性布材14の弾性樹脂7の層側の面を、他面に含浸されていない別のポリエステル不織布10をそれぞれ重ねて圧着し加熱融着させて、3層構造の断熱シート12が製造されるようになっている。こうして製造された伸張性シート12には、第1の外層14に未含浸層14Mが、第2の外層15に未含浸層15Mがそれぞれ確保されるようになっている。
【0076】
上記第2の実施例に係る断熱シート12の製造方法では、第1の工程で、熱融着性素材を含む不織布M1に、断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7の液を塗布し、所定温度(例えば摂氏100度以下の温度)で乾燥させる。一方、伸張性布材14の一面に、断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を常温で塗布し、例えば摂氏100度以下の温度で乾燥させ、伸張性布材14に弾性樹脂7の層を形成する(ステップS11)。次に、第2の工程で、含浸されたポリエステル不織布M1の一面に、第1の外層となる伸張性布材14の弾性樹脂7の層側の面を重ね、他面に第2の外層となる含浸されていない別の伸張性を有するポリエステル不織布10を重ね、これら重ねられた伸張性布材14、含浸された不織布M1および含浸されていない不織布10(第2の外層15)を圧着し加熱融着させて、両外層14、15の間に含浸された不織布M1の中間層13を積層して3層構造とするようになっている。なお、上記第2の実施例では、第1の工程で、伸張性布材14に弾性樹脂7の層を形成するようにしているがこれに限られるものではなく、伸張性布材14に弾性樹脂7の層を形成せず、含浸された不織布M1に重ねて融着するようにしてもよい。すなわち、第1の工程で、熱融着性素材を含む不織布M1に断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7の液を塗布し乾燥させて含浸させ、第2の工程で、この含浸された不織布M1の一面に弾性樹脂層のない伸張性布材14を、他面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布10をそれぞれ重ねて融着させ、伸張性布材14により第1の外層を、別の不織布10により第2の外層15を構成するとともに、これら両外層14、15の間に含浸された不織布M1の中間層13を積層して3層構造とするようにしてもよい。
【実施例3】
【0077】
次に、本発明の第3の実施例に係る断熱シート22について説明する。本実施例に係る断熱シート22は、上記第2の実施例に係る断熱シート12が、第1の外層14を熱融着性素材を含むファブリック型の伸張性布材4A、4Bにより、第2の外層15を伸張性を有するポリエステル不織布10によりそれぞれ構成しているのに対し、両外層24、25とも、ポリエステル不織布10により構成している点が異なっている。すなわち、第3の実施例に係る断熱シート22は、図3に示すように、伸張性のポリエステル不織布10により構成される第1、第2の外層24、25と、これら両外層24、25の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布M1に断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7を含浸した中間層23との3層構造を有している。中間層23は、ポリエステル不織布M1に断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の分散液を塗布して乾燥させ、含浸させるようになっている。
【0078】
具体的には、融点80〜160℃のポリアミド、ポリオレフィン樹脂の単独または複合樹脂からなる熱融着性繊維を含有する厚み0.05〜3.0mmのポリエステル不織布M1を延伸状態に保持し、このポリエステル不織布M1に、断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を常温で一面に薄く塗布し(厚み100〜300μm)、続いて、例えば摂氏100度以下の温度で乾燥させ、ポリエステル不織布M1に弾性樹脂7を含浸させる。一方、別のポリエステル不織布10を延伸状態に保持し、このポリエステル不織布10に、断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を常温で一面に薄く塗布し(厚み100〜300μm)、続いて、例えば摂氏100度以下の温度で乾燥させ、ポリエステル不織布10に弾性樹脂7を含浸させる。次に、含浸されたポリエステル不織布M1の一面に、別のポリエステル不織布10の弾性樹脂7の層側の面を、他面に含浸されていない別のポリエステル不織布10をそれぞれ重ねて圧着し加熱融着させて、3層構造の伸張性シート22が製造される。こうして製造された断熱シート22には、第1の外層24に未含浸層24Mが、第2の外層25に未含浸層25Mがそれぞれ確保されるようになっている。
【0079】
上記各工程で得られる伸張性断熱シート2、12、22は、ロール巻きしてマルチカッターにより所望の巾にスライスしテープ状に加工することができる。さらに、通常の粘着加工と同様に伸張性断熱シートの外皮に離形紙とブチルゴム等の粘着剤を塗布加工することで、粘着加工をした伸張性断熱防音シートを製造することができる。このテープ状の伸縮断熱防音シートは、比較的、形状が複雑でない配管の断熱防音被覆材として、テープの伸張性を利用して密着性の良い被覆施工ができる。
【0080】
上記第3の実施例に係る断熱シート22の製造方法では、第1の工程で、熱融着性素材を含む不織布M1に、断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7の液を塗布し、所定温度(例えば摂氏100度以下の温度)で乾燥させる。一方、片方の外層24となるポリエステル不織布10の一面に、断熱体6(6A、6B)が配合された弾性樹脂7の液を常温で塗布し、弾性樹脂7の層を形成する(ステップS21)。次に、第2の工程で、含浸されたポリエステル不織布M1の一面に、第1の外層24となる不織布10の弾性樹脂7の層側の面を重ね、他面に第2の外層25となる含浸されていない別の伸張性を有するポリエステル不織布10を重ね、これら重ねられた弾性樹脂層を有する不織布10(第1の外層24)、含浸された不織布M1および含浸されていない不織布10(第2の外層25)を圧着し加熱融着させて、両外層24、25の間に含浸された不織布M1の中間層23を積層して3層構造とするようになっている。なお、上記第3の実施例では、第1の工程で、第1の外層24となる不織布10に弾性樹脂7の層を形成するようにしているがこれに限られるものではなく、第1の外層24に弾性樹脂7の層を形成せず、含浸された不織布M1に重ねて融着するようにしてもよい。すなわち、第1の工程で、熱融着性素材を含む不織布M1に断熱体6(6A、6B)を含む弾性樹脂7の液を塗布し乾燥させて含浸させ、第2の工程で、この含浸された不織布M1の両面に、いずれも含浸されていない別の不織布10を重ねて融着させ、これら不織布10、10により第1第2の外層を構成し、これら両外層24、25の間に含浸された不織布M1の中間層23を積層して3層構造とするようにしてもよい。
【0081】
このように、上記第1ないし第3の実施例に係る断熱シートの製造方法では、第1の工程で、含浸された中間層を形成し、第2の工程で、含浸されていない部分を有する伸張性のある外層間に中間層を積層するようにしている。このため、上記実施例に係る断熱シート2、12、22では、単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とを向上させて薄肉化を図り、複雑な立体形状の施工対象にも変形に対する追従性を高めて密着性を向上させ、施工効率の向上を図ることができる。
【実施例4】
【0082】
次に、本発明の第4の実施例に係る被覆材について説明する。本発明の第4の実施例に係る被覆材30は、図6(A)ないし(D)に示すように、上記第1ないし第3の実施例に係る断熱シート2、12、22(厚さ0.1〜6.0mm)の構造体31を、所望の立体的な形状に成型して構成される。被覆材30は被覆対象の形状に応じて、曲面を有する立体形状または円筒形状に成型されるのが好ましい。このため、被覆材30は、構造体31を、半割円筒形状または半割箱体形状に成型し、半割状に成型された被覆材片31A−31A、31B−31Bを互いに組み合わせ接合して構成されるようになっている。成型された被覆材30の表面には、表面の少なくとも一部の形状に応じて型取りされた紙型40を貼着するようになっている。被覆材30を、半割円筒形状に成型した場合、この半割円筒形被覆材片31Aの長手方向の端部32、33側に、この端部32、33側の形状に応じて型取りされた紙型40A、40Bを貼着するようになっている。被覆材30は、断熱シート2、12、22の有する性能、すなわち、断熱性能、防音性能、変形に対する追従性能、被覆対象に対する密着性能、施工性能を備えているだけでなく、所望の立体的な形状に成型されることにより、成型された被覆材30は被覆する施工対象に完全に合致しなくとも、大凡の形状が確保されてさえいれば、被覆材片31A、31Bの両端を引っ張って被覆対象に対して確実に密着させることができる。このため、施工効率が向上する。また、成型された被覆材30が被覆する施工対象の形状に完全に合致していなくても用いることができるので、多種の形状に成型する必要がなく、無駄を省くことができる。
【0083】
次に、本発明の第4の実施例に係る被覆材の製造方法について説明する。上記第4の実施例に係る被覆材30の製造方法では、図7に示すように、まず、第1の工程で、
(1)伸張性布材4(第1の外層4)の一面か(第1の実施例参照)、(2)ポリエステル不織布M1(中間層13、23)か(第2第3の実施例参照)、のいずれかに断熱体6が配合された弾性樹脂7の分散液を塗布し、摂氏100度以下の温度で乾燥させる(ステップS1(S11、S21)参照)。乾燥後、次に、第2の工程で、コーティングされ含浸された弾性樹脂側を内側にして、第1の外層4、14、24と第2の外層5、15、25を重ねて圧着し、熱融着性繊維の溶融温度である、例えば摂氏100度以上で加熱して熱融着させ断熱シート2、12、22の構造体31を形成する(ステップS2(S12、S22))。
【0084】
次に、第3の工程で、断熱シート2、12、22に対応する構造体31を、図8に示す赤外線加熱炉50で予め所定の温度(摂氏150度)で所定時間(1分間)予備加熱し(ステップS103)、次に、予備加熱された構造体31をコールドプレス51A(図8参照)に挿入し、所定時間(30秒)プレス成形して、立体形状に成形して脱型する(ステップS104(S104A))。コールドプレス51Aは、上部の可動盤にオス型の型板を、下部の固定盤にメス型の型板をそれぞれクリアランス3mmで装着したものである。または、断熱シート2、12、22に対応する構造体31を、予熱せず室温でホットプレス51B(摂氏80度以上に加熱)に挿入し、所定時間(30秒)プレス成形し冷却後、脱型する(ステップS104(S104B))。ホットプレス51Bはコールドプレス51Aと同様の構成を有している。ホットプレス51Bによる成形加工では、コールドプレス51Aに比較して外観がよりソフトに形成される。すなわち、外観上柔らかい感じを与えるとともに、不織布はプレスにより曲面に変形した部位の繊維の一部が外部にわずかに起毛して綿毛状となるため、柔らかい肌触りともなる。しかも、厚手であったり起毛してある不織布を用いた場合は、生地中に空気を含むことになり、断熱性能が向上する。脱型後、次に、連続して繋がり立体形状に成形された構造体31を図示しない打ち抜き機により打ち抜き加工して図6の(A)に示すような箱形立体形状の被覆材片31Bまたは図6の(C)に示すような半割円筒形状の被覆材片31Aが製造される(ステップS105)。さらに、製造されたこれら被覆材片31A、31Bには、端部の接合される部分35にブチルゴム粘着剤によりテープ加工を施すようにしている(ステップS106)。なお、テープ加工は施工性を高めるため必要に応じて行えばよく、行わなくてもよい。
【0085】
こうして製造された被覆材30は、被覆材の各片31A、31Aまたは31B、31Bを被覆対象外面に添え当てて保持し、互いに端部の接合部35を接合させて対で被覆対象を包み込むようにして取り付けられる。また、被覆材の各片31A、31Aまたは31B、31Bには、強度の向上をはかるため、半割円筒形被覆材片31Aの長手方向の端部32、33側に、この端部32、33側の形状に応じて型取りされた紙型40A、40Bを貼着するようになっている。このように、本実施例に係る製造方法で製造された被覆材30は、断熱性が向上し被覆材の厚みを薄くしてコストダウンと狭隘な作業空間での施工性の向上を図ることができる。また、弾性変形と伸張性とが増大し複雑な形状の被覆対象にも密着させて確実に接合させることができる。さらに、吸音性が向上し防音材としても用いることができ、用途を拡大することができる。
【0086】
以上述べたように、本発明の立体形状を有する断熱性防音性に優れた被覆材30は、第1〜第3の実施例に係る伸張性の断熱シート2、12、22を赤外線加熱炉50で予め予備加熱して、または予備加熱をしないで、立体形状を付与する型板を装着したコールドプレス51A(51)またはホットプレス51B(51)に挿入しプレスにより立体形状に被覆材片31A、31Bを成形し、続いて抜き打ち型板を装着した抜き打ちプレス機(図示せず)で打ち抜き加工し、例えば、箱形状あるいは半割り形状の所望の立体形状の断熱性能と防音性能の高い被覆材30に加工されるようになっている。
【0087】
また、箱形状および半割り円筒形状の被覆材片31A、31Bの、外皮端部の接合部に離形紙付きのブチルゴム等の粘着テープ加工をして、これら被覆材片31A、31Bの施工性を高めることもできるようになっている。また、被覆材片31A、31B同士を紙綴器(ホッチキス(登録商標))により接合してもよい。さらに、被覆材片31A、31B同士を接着剤で貼り合わせて接合することが好ましい。また、接合にあたっては、ウェルダー方式のホットメルトがより好ましい。このような被覆材片31A、31Bは、伸張性、断熱性と防音性に優れるため、曲面形状、異径管継手エルボ、T字型形状管等の直線形状以外の複雑形状の配管に密着性を高めて被覆することができる。また被覆施工後の形状保形性もよく、粘着テープによる接合固定をするだけで被覆形状が崩れることもなく簡便に固定することができる。このように、本実施例に係る被覆材30では、単位厚さ当たりの断熱性能と防音性能とを向上させて薄肉化を図り、複雑な立体形状の施工対象にも変形に対する追従性を高めて密着性を向上させ、施工効率の向上を図ることができる。
【実施例5】
【0088】
次に、本発明の第5の実施例に係る被覆材の施工方法について説明する。本実施例に係る被覆材の施工方法は、上記第4の実施例の被覆材30を被覆対象に取り付ける際、図9に示すように、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の樹脂で作られた熱収縮性の延伸チューブ(熱収縮性保持材)60を用いるようになっている。すなわち、第1の工程で、被覆材片31A−31A、31B−31Bを、被覆対象外面に添え当てて保持する(ステップS201)。次に、第2の工程で、被覆対象に添え当てられて保持された被覆材30の外面に熱収縮性保持材を被せる(ステップS202)。次に、第3の工程で、被覆材30に被せられた延伸チューブ60に、図示しないハンドドライヤーで熱風を吹き付けチューブ60を収縮させて被覆材30を被覆対象に取り付ける(ステップS203)。このように、本実施例に係る被覆材の施工方法では、熱収縮性の延伸チューブ60を、配管(被覆対象)に被覆した被覆材30の外側に装着し、このチューブ60をハンドドライヤーを利用し加熱収縮させて被覆材30に防水・防湿性の外皮を形成させることもできるようになっている。このような方法により、配管が設置されている部位に応じた被覆施工が効率よくできる。また、用途部位を拡大させることも可能である。さらに、被覆材30の伸張性布材と弾性樹脂層とで音の振動を吸収することもできるので、防音を目的に施工することも可能である。
【実施例6】
【0089】
以下、実際に製造した断熱シートおよび被覆材の例とその性能の結果を示す。
外皮をなす樹脂が塩化ビニリデン・アクリルニトリル共重合体である発泡性ビーズと、メタアクリル酸メチル樹脂エマルジョンとポリエーテルタイプの弾性ウレタン樹脂エマルジョンを固形分比で20:80に混合したバインダー樹脂とを固形分配合比で65:35の割合で混合し、弾性コート樹脂(濃度80wt%、粘度350mPa・s)を得た。
ウレタン弾性糸を含む伸張性基布(目付90g/m)を使用した。係る基布を軽く延展した状態で、前記した弾性コート樹脂を常温バーコーターで200g/m塗布し、80〜100℃の温度でコート樹脂を乾燥し、続いて弾性コート樹脂層が内側にくるように2層に重ね、120〜130℃の温度で加熱圧着と発泡をさせて3層構造の伸張性断熱シート(以下、実験例1という)を製造した。
【実施例7】
【0090】
アルミノシリケート微小中空体からなる発泡中空ビーズとニトリルゴムを60:40の重量割合で、シリコン系分散助剤を0.1重量部添加し混合して弾性コート樹脂〈樹脂粘度41000mPa・s〉を得た。
ポリエステル弾性糸からなる伸張性基布に(目付75g/m)を軽く延展した状態で、前記した弾性コート樹脂を常温、バーコーターで250g塗布し80〜100℃の温度で乾燥し、弾性コート樹脂層が内側にくるように2層に重ね、120〜130℃の温度で加熱圧着と発泡をさせて3層構造の伸張性断熱シート(以下、実験例2という)を製造した。
樹脂の粘度は、JIS K7117−1「プラスチック−液状、乳濁状又は分散状の樹脂−ブルックフィールド形回転粘度計による見かけ粘度の測定方法」に基づく。
【実施例8】
【0091】
実験例2のポリエステル弾性糸を含む伸張性基布(目付75g/m)と、ポリエチレン・ポリプロピレン複合樹脂からなる熱融着性繊維を30重量%含有する厚み2mm、目付130g/mのポリエステル繊維不織布に延伸状態で実験例1の弾性コート樹脂を常温で200g/m含浸し80〜100℃の温度で乾燥した不織布とを、弾性樹脂層が内側にくるように重ね、120〜130℃の温度で加熱圧着と発泡をさせ未含浸層を含む3層構造の伸張性断熱シート(以下、実験例3という)を製造した。
【実施例9】
【0092】
実験例1、実験例2、実験例3で得たシートの熱伝導率を熱伝導率測定装置(英弘精機社製HC−D72)を用いASTMC−518法に準拠して測定した。
表1に配合組成、コート樹脂の厚さ、発泡後の伸張性断熱シートの厚さ、常温で測定した熱伝導率を示した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1の実験例1、2および3のシートは断熱性と伸張性で良好な結果を示した。
【実施例10】
【0095】
1.27cm(0.5インチ)のステンレス管に実験例1で得た伸張性断熱防音シートを2重巻した断熱配管(以下、配管Aという)を20℃の雰囲気に放置し、管内に60℃の温水を流通させ、配管外皮の温度が定常になった時点で温水の流通を止めて静止させ、60分後の配管外皮の温度を測定した。
1.27cm(0.5インチ)のステンレス管に実験例3で得た伸張性断熱防音シートを2重巻した断熱配管(以下、配管Bという)を20℃の雰囲気に放置し、管内に60℃の温水を流通させ、配管外皮の温度が定常になった時点で温水の流通を止めて静止させ、60分後の配管外皮の温度を測定した。
【実施例11】
【0096】
比較のために、肉厚8mmの市販ポリエチレンチューブ(熱伝導率0.04W/m・k)を被覆した断熱配管(以下、配管Cという)を20℃の雰囲気に放置し、管内に60℃の温水を流通させ、配管外皮の温度が定常になった時点で温水の流通を止めて静止させ、60分後の配管外皮の温度を測定した。
配管Aは23℃、配管Bは24℃、配管Cは28℃で配管A、配管Bは配管Cに比較し被覆した厚さが薄くても断熱性に優れていた。
【実施例12】
【0097】
実験例1、2、3の伸張性断熱シートを炉内温度150℃に設定した赤外線加熱炉で1分、予備加熱をし、続いて上部の可動盤、下部の固定盤に立体形状を付与すオス型メス型の型板をクリアランス3mmで装着したコールドプレスに挿入し、30秒プレス成形して立体形状を付与し、脱形後、形状に合わせた打ち抜き板を装着した打ち抜き機で打ち抜き加工をして立体形状の断熱防音被覆材、半割り型の立体円筒形状の断熱防音被覆材を製造した。さらに、図示しないが、端部接合部分にブチルゴム粘着剤によるテープ加工を施した。
製造プロセス例を図7に、製造した立体形状の断熱防音被覆材を図6の(A)、(C)に示した。
【実施例13】
【0098】
実施例10のプロセスで、外径5mmと8mmの異径継手を含む立体形状の配管に合わせて試作製造した半割り型の立体円筒刑状の伸張性断熱防音被覆材は、異径継手管に良く密着して被覆された。この被覆材の端部接合部分に加工したブチルゴム粘着テープで、被覆材はしっかりと固定された。
【実施例14】
【0099】
実施例10のプロセスで、厚み0.6mmの立体形状の鋼板(サイズ:900mm×900mm)に合わせて試作製造した立体形状の断熱防音被覆材をブチルゴム粘着剤で鋼板の裏面に貼り付けた。この鋼板をボックスの天板としてボックスの上部に自由状態でかぶせた。天井の中心に高さ3mからシャワーによる放水を行い、ボックス内部に装置したマイクロホンでボックス内の騒音レベルを測定した。裏打材のない鋼板単独では84dBであるのに対し、シート貼りした鋼板では76dBとなり、雨音を遮音する働きがあり、防音被覆として有効であった。
【0100】
本発明の立体形状の伸張性断熱防音被覆材は、複雑形状の機器、配管に良く密着し、効率よく断熱被覆することができ薄手の被覆が可能で、かつ、狭い空間に配置された配管の断熱被覆も可能である。さらに、本発明の立体形状の伸張性断熱防音被覆材は、弾力性を有し、衝撃音を吸収する作用があり、排水管等の排水音や雨音などの衝撃音や固体伝播音を防音する機能も有している。
【0101】
なお、上記実施例では、被覆材を予め予備加熱した後、コールドプレス加工しているがこれに限られるものではなく、ホットプレス時に加熱してもよい。コールドプレス加工は、加工後すぐ脱型でき、生産性が高いという利点がある。一方、ホットプレス加工は、加工後冷却して脱型するため、加工時間がコールドプレス加工より長いが、製品の形状をよりシャープに加工できる利点がある。また、上記各実施例では、中間層に積層される伸張性を有する外層を両方とも伸張性素材をにより構成しているがこれに限られるものではなく、外層の一方を伸張性素材で、他方を非伸張性の柔軟材により構成してもよい。さらに、上記実施例では、弾性樹脂を塗布して含浸するようにしているがこれに限られるものではなく、含浸されてさえいればよく、弾性樹脂に浸漬して含浸させるようにしてもよいことはいうまでもない。また、上記実施例では、布材4、5、15を伸張性を有する布材(伸張性布材)により構成しているが、伸縮性を有する布材(伸縮性布材)により構成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
断熱シートや被覆材を断熱材としてだけでなく防音材としても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施例に係る断熱シートを示す拡大断面図である。(実施例1)
【図2】本発明の第2の実施例に係る断熱シートを示す拡大断面図である。(実施例2)
【図3】本発明の第3の実施例に係る断熱シートを示す拡大断面図である。(実施例3)
【図4】本発明の第1ないし第3の実施例に係る断熱シートを製造する工程を示す説明図である。
【図5】図4の製造工程を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第4の実施例に係る被覆材を示す説明図で、(A)ないし(D)はそれぞれ、箱形状の被覆材片を示す斜視図、その箱形状の被覆材片を接合した状態を示す斜視図、半割円筒状の被覆材片を示す斜視図およびその半割円筒状の被覆材片を接合した状態を示す斜視図である。(実施例4)
【図7】図6の被覆材を製造する工程を示すフローチャートである。
【図8】図6の被覆材を製造する工程を示す説明図である。
【図9】図6の被覆材に被せる延伸チューブを示す説明図である。(実施例5)
【符号の説明】
【0104】
2 断熱シート
3 中間層
4、5 伸張性布材
7 弾性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の伸張性布材により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され断熱体を含む弾性樹脂の中間層との3層構造を有することを特徴とする断熱シート。
【請求項2】
伸張性布材により構成される第1の外層と、伸張性を有し熱融着性素材を含む不織布により構成される第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有することを特徴とする断熱シート。
【請求項3】
伸張性を有し熱融着性素材を含む一対の不織布により構成される第1第2の外層と、これら両外層の間に積層され、熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂を含浸した中間層との3層構造を有することを特徴とする断熱シート。
【請求項4】
外層は、一方向または異なる二方向に伸張することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1に記載の断熱シート。
【請求項5】
伸張性布材の一面に、断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ弾性樹脂の層を形成する第1の工程と、この伸張性布材の弾性樹脂層側の面に別の伸張性布材を重ねて融着させ、これら一対の伸張性布材により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に断熱体を含む弾性樹脂の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有することを特徴とする断熱シートの製造方法。
【請求項6】
熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の一面に伸張性布材を、他面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布をそれぞれ重ねて融着させ、伸張性布材により第1の外層を、別の不織布により第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程を有することを特徴とする断熱シートの製造方法。
【請求項7】
熱融着性素材を含む不織布に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ含浸させる第1の工程と、この含浸された不織布の両面に伸張性を有し熱融着性素材を含む別の不織布を重ねて融着させ、これら別の不織布により第1第2の外層を構成するとともに、これら両外層の間に含浸された不織布の中間層を積層して3層構造とする第2の工程とを有することを特徴とする断熱シートの製造方法。
【請求項8】
第1の外層に断熱体を含む弾性樹脂の液を塗布して乾燥させ、積層時、この第1の外層の弾性樹脂の層側の面を含浸された不織布に重ねることを特徴とする請求項6または7に記載の断熱シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし4のうちいずれか1に記載の断熱シートを、被覆対象の形状に応じて成型したことを特徴とする被覆材。
【請求項10】
断熱シートを曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状の被覆材片に形成し、これら被覆片を組み合わせて被覆材を構成したことを特徴とする請求項9に記載の被覆材。
【請求項11】
成型された半割状被覆材片の表面に、表面の少なくとも一部の形状に応じて型取りされた紙型を貼着することを特徴とする請求項10に記載の被覆材
【請求項12】
半割状被覆材片には、他の半割状被覆材片ともに被覆対象に被せて互いに接合される接合面が形成され、この接合面には、粘着部を形成したことを特徴とする請求項10または11に記載の被覆材。
【請求項13】
請求項5ないし8のうちいずれか1に記載の方法により製造される断熱シートを、被覆対象の形状に応じて常温でまたは加熱してプレス加工し、プレス加工された半製品を打ち抜き加工して成型することを特徴とする被覆材の製造方法。
【請求項14】
断熱シートを、成型面が曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状に形成された金型に挿入してプレス加工し半割状被覆材片を形成するとともに、これら被覆片を組み合わせて被覆材を構成したことを特徴とする請求項13に記載の被覆材の製造方法。
【請求項15】
断熱シートを、プレス加工前またはプレス加工時に加熱することを特徴とする請求項13または14に記載の被覆材の製造方法。
【請求項16】
断熱シートを、室温または摂氏80度以上に加熱した後、成型面が曲面を有する半割箱体形状または半割円筒形状に形成された金型に挿入し常温以上の温度でプレス加工することを特徴とする請求項15に記載の被覆材の製造方法。
【請求項17】
請求項9ないし12のうちいずれか1に記載の被覆材を、施工対象に添え当てて保持する第1の工程と、施工対象に添え当てられて保持された被覆材の外面に防水性および防湿性を有する熱収縮性保持材を被せる第2の工程と、被覆材に被せられた熱収縮性保持材に熱風を吹き付け保持材を収縮させて被覆材を施工対象に取り付ける第3の工程とを有することを特徴とする被覆材の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−101635(P2009−101635A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276502(P2007−276502)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(504365744)株式会社アスカ (3)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】