説明

断熱パネルの製造方法

【課題】 オゾン層破壊・地球温暖化等の環境破壊を起こさないが可燃性であり取扱いに細心の注意を要する発泡剤を用いて、高い安全性と生産効率の向上を図れるようにした断熱パネルの製造方法を提供すること。
【解決手段】 一対の表面板10と、両表面板10の辺部間に装着される枠材20,21と、両表面板と枠材とで形成される空間30内に注入・充填される炭素数5の飽和炭化水素を発泡剤とする発泡断熱材40とからなる断熱パネルの製造方法において、所定温度に設定されたパネルの処理温度雰囲気内に、表面板及び枠材にて組み立てられるパネルP0を設置保持すると共に、パネルの空間内に、処理温度雰囲気未満の不活性ガスであるNガスを注入して空間内をNガスで置換した後、空間内に発泡断熱材40を注入・充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断熱パネルの製造方法に関するもので、更に詳細には、一対の表面板と、両表面板の辺部間に装着される枠材とで形成される空間内に、炭素数5の飽和炭化水素を用いた例えば発泡ウレタンフォーム等の発泡断熱材を注入・充填してなる断熱パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のパネルの製造方法においては、発泡剤を含むポリオール系原液と、ポリイソシアネート系原液とを混合し、この混合組成物を一対の表面板間に注入し発泡・充填する方法が知られている。この製造方法において、発泡剤として、CC13Fフロンが使用されていたが、このCC13Fフロンは、現在「オゾンホール」の主原因であるため、使用が禁止されている。
【0003】
上記CC13Fフロンに代わり、オゾンを破壊しにくいC23FCl2(CCl2F−CH3)フロンが使用されていたが、現在では使用が禁止されている。
【0004】
その他の代替発泡剤としてフッ素含有炭化水素あるいは炭化水素がある。このうちフッ素含有炭化水素はオゾンを破壊しないが、地球温暖化の原因物質であり、使用に不向きである。一方、炭化水素はオゾンを破壊せず、地球温暖化にも起因しないが、沸点の低いものは引火・爆発の虞がある。
【0005】
そこで、上記問題を解決する手段として、フロンの代替発泡剤に高沸点の炭化水素、特に炭素数5の飽和系炭化水素が使用されている。
【0006】
しかし、炭素数5の飽和系炭化水素からなる上記代替発泡剤は、従来のフロン系発泡剤と異なり可燃性であるため、パネルの製造過程において、パネル内部に気化した発泡剤とパネル内部の空気と混合されることから、発泡中にパネル内で爆発する危険性がある。
【0007】
そのため、従来では、発泡・注入時にパネル内に不活性ガスを給気しながら発泡断熱材を発泡している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−96528号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の断熱パネルの製造方法においては、パネル内に不活性ガスを給気しながら発泡断熱材を注入するため、不活性ガスによって発泡断熱材の注入速度及び注入量が著しく低下し、製造効率が低下するという問題があった。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、オゾン層破壊・地球温暖化等の環境破壊を起こさないが可燃性であり取扱いに細心の注意を要する発泡剤を用いて、高い安全性と生産効率の向上を図れるようにした断熱パネルの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、一対の表面板と、上記両表面板の辺部間に装着される枠材と、上記両表面板と枠材とで形成される空間内に注入・充填される炭素数5の飽和炭化水素を発泡剤とする発泡断熱材とからなる断熱パネルの製造方法であって、 所定温度に設定されたパネルの処理温度雰囲気内に、上記表面板及び枠材にて組み立てられるパネルを設置保持すると共に、パネルの空間内に、処理温度雰囲気未満の不活性ガスを注入して空間内を不活性ガスで置換する工程と、 上記不活性ガスで置換する工程の後、上記空間内に上記発泡断熱材を注入・充填する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明において、上記不活性ガスの置換工程の前に、予め複数のパネルを平積みし、平積みされた上記パネルの空間内に不活性ガスを注入する方が好ましい(請求項2)。
【0012】
また、上記表面板と枠材とを組み合わせたパネルを複数平積みし、その際、各パネル間に定盤を挿入すると共に、各定盤の間に、パネルの厚さ以上の高さを有するスペーサを配置する方が好ましい(請求項3)。この場合、上記スペーサの高さと上記パネルの厚さとの差が、0.1mm以上1.0mm以下である方が好ましい(請求項4)。その理由は、差が0.1mm未満であると、表面板と枠材との間に隙間が生じにくくなってガスを外部に放出できなくなる虞があり、また、差が1.0mm以上であると、隙間が生じた際に表面板と枠材にずれが生じて形成されたパネルの形状が崩れる虞があると共に、発泡剤の注入・充填時に発泡剤が隙間から漏れ出てしまうからである。
【0013】
また、上記パネルにおける枠材のコーナー部にガス抜き孔を設け、このガス抜き孔から置換に供された不活性ガス及び発泡断熱材の注入により発生するガスを外部へ排出する方が好ましい(請求項5)。
【0014】
また、上記パネルにおける枠材に設けられた孔から空間内に不活性ガスを注入すると共に、発泡断熱材を注入する方が好ましい(請求項6)。この場合、上記不活性ガス及び発泡断熱材の注入用孔を閉塞すべく可撓性を有する薄い膜材を、枠材の空間部側に設けると共に、この膜材の下部のみが上記枠材に接着して設け、上記空間内に上記発泡断熱材が発泡・充填された際に、上記膜材によって上記孔を閉塞する方が好ましい(請求項7)。
【0015】
また、上記炭素数5の飽和炭化水素をシクロペンタンとすることができ(請求項8)、また、上記不活性ガスを窒素ガスとすることができる(請求項9)。
【発明の効果】
【0016】
(1)請求項1,8,9記載の発明によれば、パネルの空間内に炭素数5の飽和炭化水素を発泡剤とする発泡断熱材を注入・充填する前に、空間内に不活性ガスを注入して空間内を不活性ガスで置換するので、不活性ガスの置換を短時間で行うことができる。更に、不活性ガスの温度を処理温度雰囲気未満にすることで、置換後の不活性ガスの膨張によりパネル外部から再び空気がパネル空間内に侵入するのを防ぐことができる。したがって、パネル空間内で酸素と発泡剤が混合するのを防ぎ、オゾン層破壊・地球温暖化等の環境破壊を起こさないが可燃性であり取扱いに細心の注意を要する発泡剤を用いた断熱パネルの製造において、高い安全性と生産効率の向上を図ることができる。
【0017】
(2)請求項2記載の発明によれば、不活性ガスの置換工程の前に、予め複数のパネルを平積みし、平積みされたパネルの空間内に不活性ガスを注入することにより、複数のパネルを外力によることなく自重で押さえた状態で、不活性ガスで置換した後、発泡断熱材を注入・発泡することができる。したがって、上から2段目以降のパネルは上のパネルにより押さえられることになり、不活性ガス置換及び発泡断熱材の注入工程を高い流量で行うことによって生じるパネル内圧による表面板の膨れや外れを防止することができると共に、断熱パネルを容易にかつ効率よく製造することができる。
【0018】
(3)請求項3記載の発明によれば、各パネルの押さえをパネルのみならず定盤及びスペーサの重みでも行うことになり、不活性ガス置換及び発泡断熱材の注入工程をより高い流量で行うことができる。更に、各定盤間に配置するスペーサの高さをパネルの厚さ以上とすることで、パネルを平積み後、その重さを支えるのはスペーサであり、パネルを押さえる力が加わるのは不活性ガス置換及び発泡断熱材の注入工程でパネルが内圧で膨らんだときのみとなるので、パネルを平積みできる数量を増加させ、作業効率を向上させることができる。また、不活性ガス置換及び発泡断熱材注入時に発生する内圧で膨らんだ時に表面板と枠材との間に適度な隙間が生じることにより、パネル内部のガスを外部に放出することができる。この場合、スペーサの高さとパネルの厚さの差を0.1mm以上1.0mm以下とすることにより、パネル内部のガスを有効に排出することができると共に、パネルの変形を防止することができる。
【0019】
(4)請求項5記載の発明によれば、パネルにおける枠材のコーナー部にガス抜き孔を設け、このガス抜き孔から置換に供された不活性ガス及び発泡断熱材の注入により発生するガスを外部へ排出することにより、不活性ガスによる形崩れを防止することができ、断熱パネルの品質の向上を図ることができる。
【0020】
(5)請求項6記載の発明によれば、パネルにおける枠材に設けられた孔から空間内に不活性ガスを注入すると共に、発泡断熱材を注入することにより、注入孔を兼用して不活性ガスと発泡断熱材を注入することができる。したがって、パネルにおける枠材に必要最小限の注入用孔を設けるのみでパネル内の空間内を不活性ガスで置換した後、発泡断熱材を注入・充填することができる。この場合、不活性ガス及び発泡断熱材の注入用孔を閉塞すべく可撓性を有する薄い膜材を、枠材の空間部側に設けると共に、この膜材の下部のみが枠材に接着して設け、空間内に発泡断熱材が発泡・充填された際に、膜材によって孔を閉塞することにより、発泡断熱材の外部への露呈を防止することができると共に、パネルの美観の向上を図ることができる(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明に係る断熱パネルの製造方法の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、この発明に係る断熱パネルの製造方法における断熱パネルの平積み状態の一例を示す概略断面図、図2は、図1の要部拡大断面図、図3は、この発明における断熱パネルの一例を示す斜視図、図4は、図3のI−I線に沿う拡大断面図(a)及び(a)のII矢視図(b)、図5は、断熱パネルの要部断面図、図6は、断熱パネルの製造工程を示すフローチャート、図7は、断熱パネルの製造工程における不活性ガスの置換状態を示す概略平面断面図(a)及び発泡断熱材の注入状態を示す概略平面断面図(b)である。
【0023】
上記断熱パネルPは、図3ないし図5に示すように、一対の鋼板製の表面板10と、両表面板10の辺部間に装着されるプラスチック製例えば塩化ビニル製の直状枠材20及びコーナー枠材21と、両表面板10と枠材20,21とで形成される空間30内に注入・充填される発泡断熱材40とで主に構成されている。
【0024】
この場合、上記表面板10の辺部に折曲された折曲片11が、直状枠材20及びコーナー枠材21の上下端部にそれぞれ設けられた嵌合溝22内に僅かな隙間をおいて嵌挿されて表面板10と枠材20,21とが固定されている。
【0025】
また、直状枠材20の側面には、断熱パネルP同士を接合するために設けられる凹条部又は凸条部(図面では凹条部23を示す)が設けられている。この凹条部23は、開口側が拡開するテーパ状に形成されている。なお、凸条部を設ける場合は、先端が狭小なテーパ状に形成される。
【0026】
上記のように構成される直状枠材20の中間部における凹条部23の底部24には、不活性ガス例えば窒素(N)ガス及び発泡断熱材40の注入用孔25が設けられている。また、直状枠材20の空間側すなわち内方側には、注入用孔25を閉塞すべく可撓性を有する薄い膜材50が配設されている。この膜材50は、例えば紙製材料にて形成されており、その下部のみが例えば接着剤51によって直状枠材20に接着されて、上端部側が自由に変位し得るようになっている(図4参照)。したがって、上記空間30内に不活性ガスであるNガスを注入する場合や発泡断熱材40を注入する場合に、注入用孔25を介して断熱パネルPの空間30内に、Nガス供給用ノズル60又は発泡断熱材供給用ノズル70が挿入されると、膜材50は、図4(a)に二点鎖線で示すように、空間30の内方側に変位してNガス又は発泡断熱材40の注入を可能にする。そして、発泡断熱材40が注入されて発泡・充填された際に、発泡断熱材40は下部から充填されるので、膜材50は発泡断熱材40によって下方側から押されて注入用孔25を閉塞する(図5参照)。これにより、発泡断熱材40の外部への露呈が防止される。
【0027】
また、コーナー枠材21の側面には、直状枠材20に設けられた凹条部又は凸条部に連なる凹条部又は凸条部(図面では凹条部23Aを示す)が設けられている。この凹条部23Aも直状枠材20の凹条部23と同様に開口側が拡開するテーパ状に形成されている。また、各コーナー枠材21には、ガス抜き孔26が設けられている。このようにコーナー枠材21にガス抜き孔26を設けることによって、断熱パネルPの空間内に注入されるNガスを空間30内に満遍なく均一に供給して空間30内をNガスで置換した後、置換に供されたNガスをガス抜き孔26から外部に排出することができると共に、発泡断熱材40を空間30内に注入した際に発生するガスを外部へ排出することができる。したがって、パネル内圧による表面板10の膨れや外れを防止することができる。
【0028】
一方、上記発泡断熱材40は、水を有するポリオール系原液と、ポリイソシアネート系原液と、発泡剤として炭素数5の飽和系炭化水素例えばシクロペンタンとの混合組成物にて形成されている。このように形成される発泡断熱材40は、図示しないミキシング装置に接続する発泡断熱材供給用ノズル70から断熱パネルPの空間30内に注入・充填される。
【0029】
なお、ポリオール系原液は、ポリオール(多価アルコール),整泡剤,難燃剤及び他助剤等を混合・調製したものである。このうち、ポリオールはポリウレタンフォームの性質に最も大きな影響を及ぼす原料である。また、整泡剤は気泡を均一あるいは安定させるもので例えばシリコン系界面活性剤にて形成される。触媒はポリウレタンフォームの生成時の諸反応を促進し、樹脂化と発泡のバランスをとりながら目的にあったフォームを生成するために使用される助剤で、例えば第3級アミン,有機錫化合物あるいは有機酸の金属塩等が使用される。また、難燃剤はフォームを難燃化するためのもので、添加型の難燃剤としてリン酸エステル,ハロゲン化リン酸エステルが使用され、更に難燃性を高めるために水酸化アルミニウム等の無機化合物が併用される。その他必要に応じて使用される他助剤には、例えば架橋剤,着色剤,充填剤,安定剤あるいは可塑剤等が使用される。
【0030】
また、発泡剤は成形時のガス源となるもので、代替フロンであるシクロペンタンと水を有する。このシクロペンタンと、水とイソシアネートが反応して生成される炭酸ガス(CO2)との比を適宜選択することにより、発泡圧を調整することができる。
【0031】
一方、ポリイソシアネート系原液は、ポリイソシアネートと界面活性剤等他助剤とを混合・調製したものである。
【0032】
次に、上記断熱パネルを製造する手順の一例を、図1、図2、図7及び図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、図1に示すように、一対の表面板10の辺部間に直状枠材20及びコーナー枠材21を装着した仮組パネルP0を、下ベース盤80と上ベース盤81との間に、塩化ビニルを被覆したアルミニウム製の定盤82(以下に平盤82という)及びアルミニウム製のスペーサ83を介して多段に平積みし、下ベース盤80と上ベース盤81に突設されたフランジ84,85を連結ボルト86とナット87によって固定する(ステップ6−1)。なお、平盤82の表面に塩化ビニルを被覆した理由は、仮組パネルP0との接触によって傷が付くのを防止するためである。このようにして仮組パネルP0を平積みした後、多段に平積みされた仮組パネルP0を処理室100内に搬入する。この処理室100内の処理温度雰囲気は約35℃に設定される。この際、製造する断熱パネルPの厚さ寸法に合わせてスペーサ83の高さ寸法を適宜変更する。この場合、平盤82を仮組パネルP0の表面板10よりも大きくすると共に、各平盤82間に配置されるスペーサ83の高さを仮組パネルP0の厚さより若干高くして、その差分の隙間Sが設けられている。この場合、隙間Sは、0.1mm以上1.0mm以下に設定する方がよい。なお、ここでは、下ベース盤80と上ベース盤81とを連結ボルト86とナット87によって固定しているが、上ベース盤81によって最上段の仮組パネルP0を押さえない状態で複数の仮組パネルP0を平積みするようにしてもよい。
【0034】
次に、平積みされた仮組パネルP0を図示しない移動機構によって水平移動して注入用孔25とNガス供給ノズル60とを位置調整する(ステップ6−2)。この際、Nガス供給ノズル60を垂直方向のみに移動してNガス供給ノズル60と注入用孔25とを位置合せすることができる。そして、図7(a)に示すように、注入用孔25にNガス供給ノズル60を挿入し、仮組パネルP0の空間30内に処理温度雰囲気未満のNガスを注入し、空間30内をNガスで置換する(ステップ6−3)。なお、このときのNガスの供給量は1000L/min以上である。このとき、Nガスは処理温度雰囲気未満すなわち35℃未満の温度であるので、パネル空間30内に注入された後、膨張して外部から空間30内に空気が侵入するのを積極的に防止することができる。そして、置換に供されたNガスはパネルコーナー部すなわちコーナー枠材21に設けられたガス抜き孔26を介して外部に排出される。これにより、パネル内圧による表面板10の膨れや外れが防止される。なお、この際、最上段の仮組パネルP0の上部を押さえない場合では、最上段の仮組パネルP0の空間30内にはNガスを注入せず、後述する発泡断熱材40の注入直前に手動によってNガスを注入する。なお、この仮組パネルP0の押さえは、発泡断熱材40の注入工程を行う場所に仮組パネルP0を移動させる際にエアバックによって行う。
【0035】
次に、平積みされ、Nガスで置換された仮組パネルP0を移動機構(図示せず)によって水平移動して注入用孔25と発泡断熱材供給ノズル70とを位置調整する(ステップ6−4)。この際、発泡断熱材供給ノズル70を垂直方向のみに移動して発泡断熱材供給ノズル70と注入用孔25とを位置合せすることができる。そして、図7(b)に示すように、注入用孔に発泡断熱材供給ノズル70を挿入し、仮組パネルP0の空間30内に、発泡断熱材40{具体的には、上記水を有するポリオール系原液、ポリイソシアネート系原液及び発泡剤としてのシクロペンタンの混合組成物}を注入し、発泡・充填する(ステップ6−5)。この発泡断熱材40の注入工程において発生するガスは、ガス抜き孔26から外部に排出される。これにより、パネル内圧による表面板10の膨れや外れが防止される。
【0036】
上記発泡断熱材40の注入工程の際、上記ポリオール系原液と、ポリイソシアネート系原液と、シクロペンタンは、それぞれ計量されて所定の割合例えばシクロペンタン:ポリオール系原液:ポリイソシアネート系原液は、例えば5.5:75:100の割合で配合された後、所定の圧力に調整されてミキシング装置へ供給され、ミキシング装置で所定の割合に攪拌・混合された後、その混合組成物は発泡断熱材供給ノズル70から適宜間隔をおいて配置された一対の表面板10間に注入されて発泡し、その後硬化して断熱材(フォーム)が成形される。なお、混合組成物の注入時の処理温度雰囲気(処理室100内の室温)を発泡温度(例えば35℃)に設定しておく方が好ましい。
【0037】
なお、異なる寸法の断熱パネルPすなわち仮組パネルP0の高さ寸法に応じて最適な量の発泡断熱材40を注入する必要があるので、予め設定された断熱パネルPの寸法すなわち仮組パネルP0の高さ寸法とパネル温度の情報を記憶した制御手段例えば中央演算処理装置(CPU)からの制御信号に基づいて発泡断熱材供給ノズル70から所定量の発泡断熱材40を空間30内に注入する。あるいは、仮組パネルP0を仮組するときに、例えば仮組パネルP0を平積みする各平盤82あるいは直状枠材20に断熱パネルPの寸法(仮組パネルP0の高さ寸法)に応じた情報を記憶した記号例えばバーコードを設け、発泡断熱材40を注入する前に、温度センサによってパネル温度を検出すると共に、上記バーコードの情報を読み取り、その検出信号をCPUに伝達に伝達し、CPUにおいて、この検出信号と予め記憶された情報とを比較して、その制御信号を発泡機(図示せず)に送り、発泡断熱材供給ノズル70から所定量の発泡断熱材40を空間30内に注入する。
【0038】
上述のようにして仮組パネルP0の空間30内に発泡断熱材40を注入し、発泡・充填した後、約2〜5分間待機させる(ステップ6−6)。この待機中において、パネル内への発泡断熱材40の発泡・充填後に生じるシクロペンタンのパネル外への漏出が、注入工程が行われる場所のみに存在することになる。そのため、注入工程が行われる場所に、図示しない排気設備,静電気除去設備及び可燃性気体検出設備等の各種安全設備を備えることで、パネル製造設備全体の高い安全性を保つことができる。そして、発泡・充填した後、約2〜5分間待機させて安全を確認した後、作製された断熱パネルPを所定の場所に搬出する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明に係る断熱パネルの製造方法における断熱パネルの平積み状態の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1の要部拡大断面図である。
【図3】この発明における断熱パネルの一例を示す斜視図である。
【図4】図3のI−I線に沿う拡大断面図(a)及び(a)のII矢視図(b)である。
【図5】断熱パネルの要部断面図である。
【図6】断熱パネルの製造工程を示すフローチャートである。
【図7】断熱パネルの製造工程における不活性ガスの置換状態を示す概略平面断面図(a)及び発泡断熱材の注入状態を示す概略平面断面図(b)である。
【符号の説明】
【0040】
P 断熱パネル
P0 仮組パネル
S 隙間
10 表面板
20 直状枠材
21 コーナー枠材
25 注入用孔
26 ガス抜き孔
30 空間
40 発泡断熱材
50 膜材
100 処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の表面板と、上記両表面板の辺部間に装着される枠材と、上記両表面板と枠材とで形成される空間内に注入・充填される炭素数5の飽和炭化水素を発泡剤とする発泡断熱材とからなる断熱パネルの製造方法であって、
所定温度に設定されたパネルの処理温度雰囲気内に、上記表面板及び枠材にて組み立てられるパネルを設置保持すると共に、パネルの空間内に、処理温度雰囲気未満の不活性ガスを注入して空間内を不活性ガスで置換する工程と、
上記不活性ガスで置換する工程の後、上記空間内に上記発泡断熱材を注入・充填する工程と、
を有することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の断熱パネルの製造方法において、
上記不活性ガスの置換工程の前に、予め複数のパネルを平積みし、平積みされた上記パネルの空間内に不活性ガスを注入することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の断熱パネルの製造方法において、
上記表面板と枠材とを組み合わせたパネルを複数平積みし、その際、各パネル間に定盤を挿入すると共に、各定盤の間に、パネルの厚さ以上の高さを有するスペーサを配置することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の断熱パネルの製造方法において、
上記スペーサの高さと上記パネルの厚さとの差が、0.1mm以上1.0mm以下であることを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の断熱パネルの製造方法において、
上記パネルにおける枠材のコーナー部にガス抜き孔を設け、このガス抜き孔から置換に供された不活性ガス及び発泡断熱材の注入により発生するガスを外部へ排出することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の断熱パネルの製造方法において、
上記パネルにおける枠材に設けられた孔から空間内に不活性ガスを注入すると共に、発泡断熱材を注入することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の断熱パネルの製造方法において、
上記不活性ガス及び発泡断熱材の注入用孔を閉塞すべく可撓性を有する薄い膜材を、枠材の空間部側に設けると共に、この膜材の下部のみが上記枠材に接着して設け、上記空間内に上記発泡断熱材が発泡・充填された際に、上記膜材によって上記孔を閉塞することを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の断熱パネルの製造方法において、
上記炭素数5の飽和炭化水素がシクロペンタンであることを特徴とする断熱パネルの製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の断熱パネルの製造方法において、
上記不活性ガスが窒素ガスであることを特徴とする断熱パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−1263(P2006−1263A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232875(P2004−232875)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(303013811)日軽パネルシステム株式会社 (47)
【Fターム(参考)】