説明

新型軸受リング用材及びその製造方法

本発明の新型軸受リング用材及びその製造方法は、バイメタル複合管材及びその製造方法に関する。高硬度、高耐摩耗性と高靭性、高衝撃靭性値とを互いに調和させる新型軸受リング用材及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明の新型軸受リング用材は、環状のクラッド層とベース層からなり、前記クラッド層とベース層が環状の径方向に沿って冶金で結合され、前記クラッド層には軸受鋼材料を用い、前記ベース層には軸受鋼、普通鋼、低/中合金高強度鋼又はステンレス鋼材料を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイメタル複合管材及びその製造方法に関し、特に、軸受リング用材からなる複合管材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている軸受の材料は、主に以下の数種類に分けられる。
【0003】
1)高炭素クロム軸受鋼材料(GB/T 18254-2002)
高炭素クロム軸受鋼には、主にGCr9、GCr15、GCr9SiMn及びGCr15SiMn等の材質がある。GCr9は主に、回転軸における寸法の小さい鋼球又はローラー、通常条件で作動する軸受リング及び転動体の製造に使用される。GCr15は、大型機械の軸受の鋼球、ローラー及び軸受リングの製造に使用される。GCr9SiMnは、性能はGCr15に近く、主に寸法の大きい軸受リングの製造に使用される。GCr15SiMnの耐摩耗性と硬化能はGCr15より高く、主に大型の軸受の軸受リング、鋼球及びローラーの製造に使用される。
【0004】
2)浸炭軸受鋼材料(GB/T3203-1982)
浸炭軸受の材料には、主にG20CrMo、G20Cr2Ni4、G20Cr2Mn2Mo及びG20CrNi2Mo等の材質があり、この種の軸受鋼は主に衝撃荷重を受ける軸受リング及び転動体の製造に使用される。これは、この種の鋼が表面の浸炭後に良好な硬度と靭性値を有し、大きな衝撃荷重を受けることができるためである。例えば、G20Cr2Ni4浸炭軸受鋼を浸炭・熱処理した後、表面硬度はHRC62であり、芯部硬度はHRC43であり、浸炭深度は2.3mmであり、衝撃靭性値は68.7J/cmである。
【0005】
3)ステンレス軸受鋼材料(GB/T3086-1982)
現在多く使用されているステンレス軸受鋼材料は9Cr18と9Cr18MoVであり、この種の鋼は主に耐腐食性の軸受リング及び転動体の製造に使用され、例えば、海水中、河水中、硝酸中、石油化学炉内及び原子炉内で使用される軸受等の製造に使用される。
【0006】
4)無給油潤滑バイメタル軸受の材料
無給油潤滑バイメタル軸受の材料は、高品質低炭素鋼のバッキング材を基体とし、表面に鉛錫青銅合金を焼結し、複数回にわたって高温で焼結し緻密に圧延することにより製作された銅‐鋼一体のバイメタル帯材を巻くことにより製作され、中〜高速の衝撃荷重を受けるブッシュ、押止ワッシャ等の製造に適している。
【0007】
通常、転がり軸受は高回転数で又は高荷重を受けながら動作しているので、転がり軸受の材料には、以下の特徴を有することが求められる。
1)十分に焼入れ硬化可能であることが必要で、高い硬度と耐摩耗性を有すること。
2)高い疲労耐性を有し、特に作用面の剪断に対する疲労耐性が高いことが必要であること。
3)作業温度下で、軸受部品の構造と寸法の安定性が確保されること。
4)衝撃荷重を受けた場合に、軸受が大きな抗衝撃能力を有すること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、同じ種類の材料に対して、硬度及び耐摩耗性と、靭性及び抗衝撃能力とは、互いに相反しており、十分に高い硬度、強度及び耐摩耗性が要求されれば、代償として必然的に材料の靭性及び抗衝撃性能が下がる。浸炭軸受鋼材料はある程度は作用面の硬度と全体的な靭性の調和を満たすことができるものの、浸炭層の炭素含有量の不均一性により、作用面の剪断に対する疲労耐性が大きく低下してもいる。いかにして、十分な硬度、耐摩耗性の下で材料の衝撃靭性が下がらないことを保証すると同時に、作用面が剪断に対する高い疲労耐性を有することを保証するかが、本発明が解決しようとする課題である。
【0009】
本発明の目的は、高硬度及び高耐摩耗性と高靭性及び高衝撃靭性値とが互いに調和した新型軸受リング用材及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の新型軸受リング用材は、環状のクラッド層とベース層からなり、前記クラッド層と前記ベース層は環状の径方向に沿って冶金で結合され、前記クラッド層には軸受鋼材料を用い、前記ベース層には軸受鋼、普通鋼、低/中合金高強度鋼又はステンレス鋼材料を用いる。
【0011】
本発明の新型軸受リング用材において、前記クラッド層は作用層であり、前記ベース層は支持層である。
【0012】
本発明の新型軸受リング用材において、前記クラッド層は、前記ベース層の径方向に沿って前記ベース層の外側に設けられている。
【0013】
本発明の新型軸受リング用材において、前記クラッド層は、前記ベース層の径方向に沿って前記ベース層の内側に設けられている。
【0014】
本発明の新型軸受リング用材において、前記クラッド層には、高炭素クロム軸受鋼又はステンレス軸受鋼材料を用いる。
【0015】
本発明の新型軸受リング用材の製造方法は、以下のステップにより行われる:
(1)材料選択
使用条件に応じてクラッド層材料である軸受鋼材料を選択し、強度要求及びクラッド層の熱膨張係数に応じて、相応のベース層材料である軸受鋼、普通鋼、低/中合金高強度鋼又はステンレス鋼材料を選択し、ベース層材料の靭性はクラッド層材料より高く、
(2)遠心鋳造
A:金属管型を200〜300℃までベーキングした後、塗料をスプレーし、塗装の厚みは1.0〜3.0mmであり、
B:塗料をスプレーした金属管型を200〜350℃までベーキングし、
C:ステップBに記載の金属管型内に、第1層であるクラッド層又はベース層の材料の液体金属を遠心鋳造で鋳込み、冷却し、
D:鋳込んで凝固させた第1層の金属に伝熱数値シミュレーション分析を行い、温度分析の結果に応じて、第2層であるベース層又はクラッド層の材料の液体金属を鋳込み、
E:鋳込みが完了した複合管の半製品を700℃以下に冷却した時に、ノックアウトを行い、
F:後続の加工条件に応じて、ステップEで得られた管の半製品を熱処理し、
(3)縦圧延
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、縦圧延に求められる寸法まで加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を縦に圧延することにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る。
【0016】
本発明の新型軸受リング用材の製造方法において、熱間押出し方式を前記ステップ(3)の代わりに利用する。即ち、
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、熱間押出しに求められる寸法まで加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を熱間押出しすることにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る。
【0017】
本発明の新型軸受リング用材の製造方法において、熱間圧延方式を前記ステップ(3)の代わりに使用する。即ち、
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、熱間圧延に求められる寸法に加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を熱間圧延することにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る。
【0018】
本発明の新型軸受リング用材の製造方法において、鍛造方式を前記ステップ(3)の代わりに使用する。即ち、
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、鍛造に求められる寸法に加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を鍛造することにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る。
【0019】
本発明の新型軸受リング用材の製造方法において、前記ステップFにおける熱処理には、焼ならし、球状化焼なまし又は拡散焼なましが含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の新型軸受リング用材は、バイメタル複合管材を提供し、クラッド層とベース層からなり、クラッド層には軸受鋼材料を選択して使用し、ベース層には、靭性、衝撃靭性値が相対的に高く、熱膨張係数がクラッド層に近い軸受鋼、普通鋼、低/中合金高強度鋼又はステンレス鋼を選択して使用し、正常な軸受鋼材料に求められる性能要求を確保した上で、軸受の材料に求められる靭性と高衝撃靭性値を大きく向上させて、大きな衝撃荷重を受けた場合に引き起こされる軸受の衝撃破壊を防止すると同時に、浸炭軸受鋼において浸炭層の不均一によりもたらされる作用面の表層の剪断に対する疲労耐性が低いという問題も克服する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の新型軸受リング用材の第1の実施形態の構造の概略図である。
【図2】本発明の新型軸受リング用材の第2の実施形態の構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の新型軸受リング用材及びその製造方法を詳細に説明する。
【0023】
(実施例1)
(1)材料選択
外層(ベース層)には低合金高強度鋼16MnVを選択して使用し、内層(クラッド層)には軸受鋼GCr15を選択して使用し、合計2層である。
【0024】
16MnVの成分(質量含有量):Cは0.14〜0.2%であり、Siは0.3〜0.6%であり、Mnは1.0〜1.6%であり、P≦0.025%であり、S≦0.025%であり、Vは0.05〜0.15%であり、残部はFeであり、融点は約1510℃、1783.15Kである。
【0025】
GCr15の成分(質量含有量):Cは0.95〜1.05%であり、Siは0.15〜0.35%であり、Mnは0.25〜0.45%であり、P≦0.025%であり、S≦0.025%であり、Crは1.4〜1.65%であり、残部はFeであり、融点は約1450℃、1723.15Kである。
【0026】
(2)遠心鋳造
A:金属管型を250〜260℃までベーキングした後、塗料をスプレーし、塗装の厚みは2.0〜2.1mmである。
【0027】
B:塗料をスプレーした金属管型を260〜290℃までベーキングする。
【0028】
C:Bに記載の金属管型内に、16MnV液体金属を遠心鋳造で鋳込んで冷却し、鋳込み温度は1587℃であり、鋳込み重量は360Kgである。
【0029】
D:鋳込んで凝固させた外層金属16MnVに伝熱数値シミュレーション分析を行い、内外層の金属に良好な結合厚みを持たせるために、外層の内表面の温度が1400℃まで下がるのを待って、内層GCr15液体金属を鋳込み、鋳込み温度は1504℃であり、鋳込み重量は90Kgである。
【0030】
E:上記の鋳込みが完了した複合管材を室温まで冷却すると、内層と外層の間には十分な冶金結合の形成が達成され、冶金の溶着厚みは1.0〜1.5mmである。
【0031】
(3)熱間押出し
F、ステップEで得られた鋳造状態の複合管材に機械加工を行って、押出し機に求められる寸法まで加工し、加工寸法はφ248/φ142/φ108×573mmである。
【0032】
G、ステップFで得られた複合管材を熱間押出しし、押出し温度は1195℃であり、押出し力は22〜25MPaであり、押出し比は12.0であり、完成品の管の寸法はφ90/φ64/φ58×5600mmである。
【0033】
ステップGで得られた新型軸受リング用材の構造の概略図は図1に示す通りであり、内層であるクラッド層1が作用層であり、外層であるベース層2が支持層である。
【0034】
(実施例2)
(1)材料選択
外層(クラッド層)には軸受鋼GCr15を選択して使用し、内層(ベース層)には中合金高強度鋼30CrMnSiを選択して使用し、合計2層である。
【0035】
30CrMnSiの成分(質量含有量):Cは0.27〜0.34%であり、Siは0.9〜1.2%であり、Mnは0.8〜1.1%であり、Crは0.8〜1.1%であり、P≦0.035%であり、S≦0.035%であり、残部はFeであり、融点は約1480〜1500℃、1753.15〜1773.15Kである。
【0036】
GCr15の成分(質量含有量):Cは0.95〜1.05%であり、Siは0.15〜0.35%であり、Mnは0.25〜0.45%であり、P≦0.025%であり、S≦0.025%であり、Crは1.4〜1.65%であり、残部はFeであり、融点は約1450℃、1723.15Kである。
【0037】
(2)遠心鋳造
A、金属管型を250〜260℃までベーキングした後、塗料をスプレーし、塗装の厚みは2.0〜2.2mmである。
【0038】
B、塗料をスプレーした金属管型を270〜300℃までベーキングする。
【0039】
C、Bに記載された金属管型内に、GCr15液体金属を遠心鋳造で鋳込んで冷却し、鋳込み温度は1556℃であり、鋳込み重量は270Kgである。
【0040】
D、鋳込んで凝固させた外層金属GCr15に伝熱数値シミュレーション分析を行い、内外層の金属に良好な結合厚みを持たせるために、外層の内表面の温度が1387℃まで下がるのを待って、内層金属30CrMnSiを鋳込み、鋳込み温度は1587℃であり、鋳込み重量は858Kgである。
【0041】
E、上記の鋳込みが完了した複合管材を室温まで冷却すると、内層と外層の間には十分な冶金結合の形成が達成され、冶金の溶着厚みは1.0〜1.5mmである。
【0042】
(3)熱間押出し
F、ステップEで得られた鋳造状態の複合管材に機械加工を行って、押出し機に求められる寸法まで加工し、加工寸法はφ280/φ260/φ130×780mmである。
【0043】
G、ステップFで得られた複合管材を熱間押出しし、押出し温度は1200℃であり、押出し力は22〜25MPaであり、押出し比は11.3であり、完成品の管の寸法はO139.7/φ136/φ118.6×7000mmである。
【0044】
ステップGで得られた新型軸受リング用材の構造の概略図は図2に示す通りであり、外層であるクラッド層1’が作用層であり、内層であるベース層2’が支持層である。
【0045】
(実施例3)
(1)材料選択
外層(ベース層)には低合金高強度鋼16MnVを選択して使用し、内層(クラッド層)には軸受鋼GCr15を選択して使用し、合計2層である。
【0046】
16MnVの成分(質量含有量):Cは0.14〜0.2%であり、Siは0.3〜0.6%であり、Mnは1.0〜1.6%であり、P≦0.025%であり、S≦0.025%であり、Vは0.05〜0.15%であり、残部はFeであり、融点は約1510℃、1783.15Kである。
【0047】
GCr15の成分(質量含有量):Cは0.95〜1.05%であり、Siは0.15〜0.35%であり、Mnは0.25〜0.45%であり、P≦0.025%であり、S≦0.025%であり、Crは1.4〜1.65%であり、残部はFeであり、融点は約1450℃、1723.15Kである。
【0048】
(2)遠心鋳造
A:金属管型を250〜260℃までベーキングした後、塗料をスプレーし、塗装の厚みは2.0〜2.2mmである。
【0049】
B:塗料をスプレーした金属管型を270〜300℃までベーキングする。
【0050】
C:Bに記載の金属管型内に、16MnV液体金属を遠心鋳造で鋳込んで冷却し、鋳込み温度は1576℃であり、鋳込み重量は372Kgである。
【0051】
D:鋳込んで凝固させた外層金属16MnVに伝熱数値シミュレーション分析を行い、内外層の金属に良好な結合厚みを持たせるために、外層の内表面の温度が1395℃まで下がるのを待って、内層金属GCr15を鋳込み、鋳込み温度は1555℃であり、鋳込み重量は135Kgである。
【0052】
E:上記の鋳込みが完了した複合管材を室温まで冷却すると、内層と外層の間には十分な冶金結合の形成が達成され、冶金の溶着厚みは1.0〜1.5mmである。
【0053】
(3)連続圧延
F:ステップEで得られた鋳造状態の複合管材に機械加工を行って、連続圧延に求められる寸法まで加工し、加工寸法はφ220/φ140/φ110×2000mmである。
【0054】
G:ステップFで得られた複合管材を連続圧延し、圧延温度は1210℃であり、完成品の管の寸法はφ219/φ198.6/φ193×6000mmである。
【0055】
(実施例4)
(1)材料選択
外層(ベース層)には浸炭軸受鋼G20CrNi2Moを選択して使用し、内層(クラッド層)には軸受鋼GCr15を選択して使用し、合計2層である。
【0056】
G20CrNi2Moの成分(質量含有量):Cは0.17〜0.23%であり、Siは0.15〜0.40%であり、Mnは0.40〜0.70%であり、P≦0.02%であり、S≦0.02%であり、Crは0.4〜0.6%であり、Niは1.6〜2.0%であり、Moは0.2〜0.3%であり、Alは0.1〜0.5%であり、Cu≦0.2%であり、残部はFeであり、融点は約1490℃である。
【0057】
GCr15の成分(質量含有量):Cは0.95〜1.05%であり、Siは0.15〜0.35%であり、Mnは0.25〜0.45%であり、P≦0.025%であり、S≦0.025%であり、Crは1.4〜1.65%であり、残部はFeであり、融点は約1450℃である。
【0058】
(2)遠心鋳造
A:金属管型を250〜260℃までベーキングした後、塗料をスプレーし、塗装の厚みは2.0〜2.2mmである。
【0059】
B:塗料をスプレーした金属管型を270〜300℃までベーキングする。
【0060】
C:Bに記載の金属管型内に、G20CrNi2Moを遠心鋳造で鋳込んで冷却し、鋳込み温度は1589℃であり、鋳込み重量は204Kgである。
【0061】
D:鋳込んで凝固した外層金属G20CrNi2Moに伝熱数値シミュレーション分析を行い、内外層の金属に良好な結合厚みを持たせるために、外層の内表面の温度が1362℃まで下がるのを待って、内層金属GCr15を鋳込み、鋳込み温度は1570℃であり、鋳込み重量は105Kgである。
【0062】
E:上記の鋳込みが完了した複合管材を室温まで冷却してノックアウトを行うと、内層と外層の間には十分な冶金結合の形成が達成され、冶金の溶着厚みは0.8〜1.2mmであり、上記の管の半製品を焼ならし処理し、焼ならし温度は930℃である。
【0063】
(3)圧延
F:ステップEで得た鋳造状態の複合管材に機械加工を行って、圧延に求められる寸法まで加工し、加工寸法はφ219/φ162/φ135×75mmである。
【0064】
G:ステップFで得られた複合管材を圧延し、圧延の温度は1180℃であり、完成品のリングの寸法はφ275/φ230/φ211×71mmである。
【0065】
実施例1、2、3、4においてステップGで得られた管材をサンプリングして、通常の軸受鋼の熱処理プロセスにより熱処理を行ったベース層とクラッド層の性能を、表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
上記4つの実施例におけるステップGで得られた新型軸受リング用材に通常の熱処理を行った後、通常の軸受リング製造方法により、軸受リングを製作することができる。
【0068】
上記に記載された実施例は、本発明の好ましい実施形態を記述したものであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、当業者が本発明の設計思想を逸脱しない範囲で、技術的解決手段に対して実施した各種の変形及び改善を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の新型軸受リング用材及びその製造方法は、従来の金属材料と生産設備を利用し、特殊な製造方法により、性能がより優れた軸受リング用材を製作する。このような軸受リング用材は、軸受の性能と使用寿命を向上させることができるため、広大な市場展望と良好な産業上の利用可能性を有している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
新型軸受リング用材であって、環状のクラッド層とベース層からなり、前記クラッド層と前記ベース層は環状の径方向に沿って冶金で結合され、前記クラッド層には軸受鋼材料を用い、前記ベース層には軸受鋼、普通鋼、低/中合金高強度鋼又はステンレス鋼材料を用いることを特徴とする新型軸受リング用材。
【請求項2】
前記クラッド層は作用層であり、前記ベース層は支持層であることを特徴とする請求項1に記載の新型軸受リング用材。
【請求項3】
前記クラッド層は、前記ベース層の径方向に沿って前記ベース層の外側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の新型軸受リング用材。
【請求項4】
前記クラッド層は、前記ベース層の径方向に沿って前記ベース層の内側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の新型軸受リング用材。
【請求項5】
前記クラッド層には、高炭素クロム軸受鋼又はステンレス軸受鋼材料を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の新型軸受リング用材。
【請求項6】
請求項1に記載の新型軸受リング用材の製造方法であって、以下のステップ:
(1)材料選択
使用条件に応じてクラッド層材料である軸受鋼材料を選択し、強度要求及びクラッド層の熱膨張係数に応じて、相応のベース層材料である軸受鋼、普通鋼、低/中合金高強度鋼又はステンレス鋼材料を選択し、ベース層材料の靭性はクラッド層材料より高く、
(2)遠心鋳造
A:金属管型を200〜300℃までベーキングした後、塗料をスプレーし、塗装の厚みは1.0〜3.0mmであり、
B:塗料をスプレーした金属管型を200〜350℃までベーキングし、
C:ステップBに記載の金属管型内に、第1層であるクラッド層又はベース層の材料の液体金属を遠心鋳造で鋳込み、冷却し、
D:鋳込んで凝固させた第1層の金属に伝熱数値シミュレーション分析を行い、温度分析の結果に応じて、第2層であるベース層又はクラッド層の材料の液体金属を鋳込み、
E:鋳込みが完了した複合管の半製品を700℃以下に冷却した時に、ノックアウトを行い、
F:後続の加工条件に応じて、ステップEで得られた管の半製品を熱処理し、
(3)縦圧延
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、縦圧延に求められる寸法まで加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を縦に圧延することにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る
ことを特徴とする新型軸受リング用材の製造方法。
【請求項7】
熱間押出し方式を前記ステップ(3)の代わりに利用する、即ち、
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、熱間押出しに求められる寸法まで加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を熱間押出しすることにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る
を含むことを特徴とする請求項6に記載の新型軸受リング用材の製造方法。
【請求項8】
熱間圧延方式を前記ステップ(3)の代わりに使用する、即ち、
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、熱間圧延に求められる寸法に加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を熱間圧延することにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る
ことを特徴とする請求項6に記載の新型軸受リング用材の製造方法。
【請求項9】
鍛造方式を前記ステップ(3)の代わりに使用する、即ち、
G:ステップFで得られた鋳造状態の複合管の半製品に機械加工を行って、鍛造に求められる寸法に加工し、
H:ステップGで得られた複合管材を鍛造することにより、軸受リングの加工に用いる複合管リングを得る
ことを特徴とする請求項6に記載の新型軸受リング用材の製造方法。
【請求項10】
前記ステップFにおける熱処理には、焼ならし、球状化焼なまし又は拡散焼なましが含まれることを特徴とする請求項6から9のいずれか一つに記載の新型軸受リング用材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−515614(P2013−515614A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546356(P2012−546356)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【国際出願番号】PCT/CN2011/077797
【国際公開番号】WO2012/019509
【国際公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【出願人】(512051974)新▲興▼▲鋳▼管股▲ふぇん▼有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】XINXING DUCTILE IRON PIPES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Research Institute, Xinxing Ductile Iron Pipes Industry Area Wuan, Hebei 056300 China
【出願人】(512051996)北京▲長▼▲興▼▲凱▼▲達▼▲複▼合材料科技▲発▼展有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】BEIJING CHANGXING KAIDA COMPOSITE MATERIAL DEVELOPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.15 Fengtaixincunyili,Fengtai Beijing 100070 China
【出願人】(512052007)
【氏名又は名称原語表記】TANG,Yong
【住所又は居所原語表記】Cross−Strait Technology Park, Wenjiang, Chengdu, Sichuan 611130 China
【Fターム(参考)】