説明

新規な医薬品組成物および様々な形の薬物嗜癖を制御するためのそれらの使用

本発明は生命に必須なもの、特に治療法の分野に関する。本発明は具体的には、嗜癖性薬物を使用者が絶つことを援助する医薬品組成物に関し、前記組成物は、ドーパミンレセプター(特にD2およびD3レセプター)の部分または完全アンタゴニスト、および代替ドーパミン生成物から成る、2つの薬物の組合せの形であり、経口、非経口または経皮的投与できる。本発明はまた、合法または違法薬物への種々の形の嗜癖を制御するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生きるために必要なものの分野、詳細には治療法の領域に関する。
【0002】
それはより正確には、嗜癖を引き起こす薬物の常用者が断薬に戻るのを強力な手法で支援し、再び正常な社会的および/または職業的活動を見出させるための医薬品組成物に関する。
【0003】
嗜癖(あるいは依存性)を、この依存性を引き起こす生成物を衝動的に探索する、しかも嗜癖の人々は、それが健康、家庭生活、職業生活その他に対して有害の結果になることに完全に気付いているにもかかわらず探索する、行動の障害として定義することができる。
【0004】
この行動制御の喪失は、反復摂取の後に現れるが、しかしヘロインおよびオピエートの場合には、これらの物質の乱用から嗜癖への移行が、非常に短期間で環境依存的であり得る。これは各個体に特異的ないくつかの遺伝的及び環境的パラメーターの関数である。
【0005】
この依存性は、オピオイドレセプターの、特にμ型の(Mattes and al., Nature 1996, 383, 819-823)、より具体的には大脳辺縁系(腹側被蓋野、側坐核、扁桃核、前頭前皮質、その他)を形成する脳構造におけるオピオイドレセプターの、過度のおよび反復した刺激による。それは、次第にニューロンの機能の変化をもたらし、それがこの依存状態を維持し、さらにまた非常に強く長時間に亘るその物質の効果の残存を引き起こす。
【0006】
これらは、使用者の鎮静、多幸感、内部的緊張の減少、の効果によって定義される。さらに例として、ヘロイン注入に続いて「ラッシュ」と呼ばれる「オルガスム様の」悦楽効果が存在する。この物質ならびにオピオイドまたはコカインなどの非常に嗜癖性の薬物の効果は、その引き換えに、逆の作用、即ち不安、不快気分その他を引き起こすニューロン制御システムを刺激する。この逆作用は、特に薬物の使用を止めたときに現われる。それは非常に苦痛な、ほとんど場合には短期間続き反復的に再発する、「離脱症候群」である。
個人をその薬物に「フック」させるこれらの極めて苦痛な状態を減少させる方法の一つは、エクスタティックな「ラッシュ」状態を避けることにより、そして嗜癖をもたらす重要な行動障害の原因を処置することによって患者を安定化させることを追求することである。
【0007】
ヘロインまたは他の嗜癖性オピオイドを、オピオイドレセプターを刺激できるが、あまり強くない方式で刺激する物質に取り換えたときに、最もスペクタクルな結果が得られており、それは様々な理由による。それらのうちのいくつかについては、脳がこのオピオイド物質によってゆっくりと長時間満たされるという薬物動態学の問題である。この事実により、レセプターは、ヘロインによってのように強く刺激されることはないが、しかしそれらは、患者が、不足状態によって、および「物質」を得るための制御しがたい必要性(渇望)によって苦しめられない程度には十分に強力である。これが、アメリカ合衆国で1964年以来ヘロインに対する代替治療で用いられ、1973年にFDAによって承認されたメタドン(完全アゴニスト)の場合である。ますます利用されるようになっている別の物質が、オピオイドレセプターμの部分アゴニストであり、作用時間が長いブプレノルフィンである。この事実からブプレノルフィンは、高用量においてさえ、前述の「ラッシュ」をもたらすことはできない。
【0008】
これらの代替療法は著しい成果を提供するが、大きな欠陥を有する。それらは嗜癖を少し減少させるだけであり、その結果、ヘロイン依存の人々はしばしば、例えばメタドンによって数年間(20〜30年まで)治療される。したがってそれは、代替薬への一種の依存に直面することになる。
【0009】
明らかに、理想的なのは、断薬への到達を有意に促進する治療を見つけることであろう。ところで、オピオイドの多幸感をもたらす効果に含まれる神経伝達物質は、特に側坐核および前頭前皮質中のドーパミン作動性神経末端から放出されるドーパミンである。ドーパミンがD1、D2およびD3レセプターと十分に相互作用して、快楽効果をもたらす。
【0010】
神経遮断薬によるこれらのレセプターのブロックが、統合失調症、パニック障害、または一般的苦痛の発作のようないくつかの主な障害の際に、多く利用される。この種の治療は、一般に患者における快楽効果および社会的活動の減少を伴う不快な症状をもたらす。
【0011】
本特許出願の対象としての本発明は、すべての予想に反して、ヘロインおよびオピオイドへ依存しており、さらに覚醒剤(例えばコカイン)にもより少ない程度にであるが依存している人々の、ドーパミンレセプター(詳細にはD2および/またはD3型の)のアンタゴニストによる治療が、嗜癖性薬物の衝動的な探索をもたらす内的緊張状態の迅速な改善を引き起こすという事実に関する。
【0012】
しかし、この顕著な改善は、これらのアンタゴニストを、代替生成物(メタドン、ブプレノルフィン、LAM(レボアルファアセチルメタドール)と、あるいはこのオピオイドレセプターに作用する特性を有すると主張されている他の多くの物質と、同時にまたは組合せて与える場合にのみ得られる。
【0013】
このように、この組合せは−両方の物質(ドーパミンアンタゴニストおよびプロドーパミン製品)を与える間は−少なくとも治療の最初の数週の間、抗嗜癖効果を生じることができる。
【0014】
この記述を完全に説明することはできないであろうが、それは実験的臨床テストからもたらされる結果である。
【0015】
依存症の人々の身体状況の改善は、嗜癖の特徴である衝動的な行動の深い理由の探求の構築を、非常に速やかに可能にするようなものである。
【0016】
本発明はしたがって具体的には、離脱をより容易にするために同時にまたは逐次的に与えるために、これらの2つの薬の組合せを好ましくはキットの形で含む医薬品組成物を対象としており、それは、ドーパミンレセプター、詳細にはD2およびD3レセプターの完全または部分アンタゴニストと、プロドーパミン製品、好ましくはオピオイドの代替化合物との組合せであり、経口的、非経口的、または経皮的に与えるための医薬品組成物の形である。
【0017】
ドーパミンアンタゴニストは、好ましくはD2型アンタゴニストであり、特にD2/D3アンタゴニストである。
【0018】
ドーパミンアンタゴニストの中では、純粋ドーパミンアンタゴニスト、およびさらにセロトニン作動性の要素も有する部分ドーパミンアンタゴニストがよく挙げられる。ドーパミンアンタゴニストの中で、最もよく利用される分子は次の通りである:
【0019】
アミスルプリド
リスペリドン
VOTAL et al, J.Neuroscience 22 (2002) 9595 -9603 に開示されているSB 2770II−Aと呼ばれるD3アンタゴニスト。
スルピリド、メトクロプラミド、または同様にオランザピンまたはハロペリドールなどの他のドーパミンアンタゴニスト化合物が利用できる。
【0020】
プロドーパミン製品を、オピオイドに対するレセプター上またはレセプター内に結合することができ、弱い多幸作用のみ、および/または限られた習慣性効果のみも有する物質として定義することができる。これに関して、メタドン、ブプレノルフィン、LAMという名の化合物、ナロルフィン、ナルトレキサート、レバロルファンおよび一般にそのような作用も有するとして開示された任意の物質を挙げることができる。
【0021】
本発明においては、そのような組合せを、同時に、一定の単独の医薬品組成物の形で、あるいは前記有効成分の各々を個別の形で含むキットの形で、様々な用量、別個のリズム、もしくは異なる順序、または種々の剤型で、与えることができる。
【0022】
このようにして2つの有効成分の組合せを、2つの異なる剤形で、即ち同一の形式(錠剤、柔いゼラチンカプセル、糖衣錠、ドロップなどの)、または異なる形式の、どちらかで投与することができよう。
【0023】
有効成分の含量は、さらに治療上の必要性、治療の継続性、および副作用の発生に応じて、高い用量からより低用量に亘る範囲で変化してもよい。
【0024】
アミスルプリドまたはその塩の、詳細にはS(−)アミスルプリドの、統合失調症に関する感情的または認知的症状の治療への使用、自閉症の治療または神経遮断薬によって引き起こされた遅発性ジスキネジアの治療への使用は、既に知られている(PCT/EP99/05325)。この特許PCT/EP99/05325はまた、薬物嗜癖性に対してS(−)アミスルプリドを、詳述することなく、使用することができることを開示している。
【0025】
アミスルプリドは、抗アポモルフィン化合物としてUSP 4,401,822に開示されている、ベンズアミドの範疇の様々な代表的物質の1つである。ラセミ形またはエナンチオマー的に純粋なS(−)型のアミスルプリド、ならびにそれの塩類の合成が、特許出願PCT/EP99/05325中で開示されている。
【0026】
アミスルプリドは、薬理学のレベルで、辺縁系レセプターD2から[H]ラクロプリドと置換するものとして開示されている。アミスルプリドはまた、アポモルフィンに対してアンタゴニスト作用を示す。即ちアミスルプリドはその中枢作用により統合失調症に罹患している患者の抗精神病薬と見なすことができ、一方で既知の抗精神病性神経遮断性化合物より少ない副作用(錐体外路症候群などの)を示す。
【0027】
アミスルプリドはこのように、今まで他の神経精神病の適応症にも使用されている既知の薬物である。
【0028】
本発明中で調べた抗嗜癖性効果は、ドーパミンレセプター特にD2およびD3レセプターに対するアンタゴニストの別の効果である。
【0029】
この組合せの対象である薬の作用は速やかに生じ、既にいくつかの臨床テストでは、含浸効果の結果として肯定的な効果が認められている。
【0030】
本発明による医薬品組成物の枠組みの中で与えられる用量は、望ましい効果、嗜癖性薬物への依存の古さ、および嗜癖に対する望ましい作用の強さに応じて変えることができる。
【0031】
抗ドーパミン化合物の用量は、単回投与量当たり1mg〜1,200mgまで変化することができる。プロドーパミン製品の用量は、プラトーに達するまで、0.2〜300mgまで変化することになろう。
【0032】
本発明の好ましい実施態様では、組合せは単回投与量当たり、400〜1,200mgの有効成分を含むアミスルプリドなどの抗ドーパミン化合物の錠剤、および0.2〜30mgの範囲の用量のブプレノルフィンなどのプロドーパミン製品の錠剤、で構成されるであろう。プロドーパミン製品の用量は、より高い用量(200〜300mg)を許容できる新陳代謝の速い人では高くなるであろう。
【0033】
より特別に有用な別の実施態様では、例えば、固体または液体製剤の2個のボトル(1つのボトルは抗ドーパミン化合物の溶液を含み、別のボトルは例えばメタドンのシロップもしくは水性懸濁液などの代替化合物の溶液または懸濁液を含む)を含むキットの形の外観になるであろう。
【0034】
本発明による組合せの別の実施態様では、組合せ製剤、即ち両方の有効成分を含み、したがって同時投与ができる、特に乾燥形態の製剤が提供される。薬学製剤の1つの部分に抗ドーパミン化合物、また別の部分にプロドーパミン製品を含む、2つのコア二重の核を備えた二層の錠剤または糖衣錠にすることも考えられる。分割錠も投与が容易な形式である。
【0035】
注射可能な製剤を作ることもできる。それらは、組合せの両方の有効成分の同時投与を可能にする。それらは長期作用を有するデポ製剤の作製に特に適する。長期活性を有する経皮製剤も考えられる。
【0036】
さらに、各有効成分の規定の用量を、遊離型で、または物理的に組合せた形で、あるいは例えばポリカルボン酸とまたは酸樹脂塩との複塩などの化学的に結合した形で含む、固定的な組合せを実現することも可能である。これらの固定的な組合せはしかし、用量の調整ができないので、使用があまり容易でない。それらはしかし、治療の開始時に、副作用の欠如または抗ドーパミン効果の有益性の少なかれ多かれ速い発生をモニターして患者の感度を決定するために、有用である。
【0037】
通常の投与体制では、一般に代替ドーパミン薬物の低用量を使用し、次に「プラトー」効果を得るために着実に用量を増加させる。
【0038】
アミスルプリドの場合には、毎日の用量は400〜1200mg、および単回投与量当たり100〜400mgの範囲となるであろう。
【0039】
リスペリドンの場合には、用量は1日当たり1〜16mgの範囲であろう。
【0040】
プロドーパミン製品、すなわちメタドンの投与は、単回投与量当たり5〜60mgであろう。ブプレノルフィン、モルヒネ硫酸塩、またはナロルフィンの用量は、本発明による組合せの2つの成分と同じオーダーの大きさであろうが、そのことは重要ではなく、治療法の必要性よって調節してもよい。最初にプロドーパミン製品を確実に投与し、次に抗ドーパミン化合物を投与するのがより良いように思われる。逆に、最初に抗ドーパミン化合物を与え、続いてその後でプロドーパミン製品を投与することもできる。いずれにせよ、2つの有効成分の投与を同時に行うのがより適切である。
【0041】
本発明はまた課題として、不活性で無毒の薬学的に許容される担体または基剤中に、例えば400〜1,200mgのアミスルプリドおよび0.2〜30mgのブプレノルフィンを含む、抗ドーパミン化合物またはその塩とブプレノルフィンとの組合せで作られた医薬品組成物を有しており、その用量を調整する時は、最初に増やし、閾値の効果が得られた場合は用量を減らす。
【0042】
本発明の別の課題は、単回位投与量当たり、第1の薬学的に適当な用量の、塩基の形または塩の形、ラセミ形またはエナンチオマーの形の抗ドーパミン化合物を100〜400mgの範囲の投与量で含み、および第2の薬学的に適当な用量のメタドンを5〜60mg含む、キットの生産である。
【0043】
本発明はまた、ラセミ形もしくは光学活性形の、フリーのまたは鉱酸塩もしくは有機酸塩のスルピリドとブプレノルフィンとの組合せから成る抗嗜癖薬に関する。
【0044】
患者が薬により持続的に満たされていることを保証するために、本発明による組合せを1日当たり1〜4回の割合で所定の間隔で与えるようにする。
【0045】
本明細書に付加する図にその詳細を示す、薬学的および臨床的治験が、本発明による組合せの有効性を示す。
【0046】
本発明はさらに、合法または違法薬物に対する様々な形の嗜癖に対抗する方法に関し、それは、違法薬物に嗜癖現象を示す患者に、十分で有効な量の代替ドーパミンアゴニストとドーパミンアンタゴニストの組合せを、単一の剤形または別々の剤形で同時に投与するか、あるいは不連続的に、例えばキットの形で、最初に規定の剤形のドーパミンアゴニストを、その次に異なる剤形のドーパミンアンタゴニストを投与する工程よりなる。
【0047】
上記の方法は特に、ヘロインなどのオピエート様薬物への嗜癖に対抗するために適する。その方法はまた、例えばアンフェタミンおよびその誘導体、アルコール、コカイン、NMDAなどの習慣性を引き起こす有効成分の使用または乱用に対する苦闘に使用することができる。
【0048】
実験の部
1. オピエートおよびオピオイド系
1.1 オピオイドレセプター
オピオイドレセプターの活性化により、極めて多くの薬理学的および生理学的応答が得られるようになる。実際、オピオイド系は、主としてストレス、痛み、気分、心臓血管機能、および食物摂取のモジュレーションに関わる(Vaccarino et al.2000)。
【0049】
高い比活性を有する放射性同位体でラベルされたリガンドを利用することにより、立体特異的で、飽和可能な、また高アフィニティーのレセプターを哺乳動物の中枢神経系で発見することが可能になる。生体膜に結合していて外因性オピエートに特異的なこれらの部位が、3つのチーム(Simon et al. 1973 ; Teremins 1973 ; Pert and Snyder 1973)によって脚光を浴びるようになった。より最近、それらのレセプターがクローニングされ、3つの型:δ、μ、およびκ型と定められている(Kieffer et al. 1992 ; Chen et al. 1993 ; Yasuda et al. 1993)。配列から推定して、オピオイドレセプターは明白に、ヘテロ三量体のGタンパク質を結合する7回膜貫通ドメインを有するレセプターの大きなファミリーに属するようである(Dohlman et al. 1987)。これらのレセプターは、ヒトにおいて60%の配列同一性を有し、膜貫通ドメインおよび細胞内ループに、より多くの保存された配列がある。さらに、それらはCNSのレベルで異なる方式で扱われている。オピオイドレセプターμはCNS全体に豊富に存在し、基底神経節、辺縁構造、視床核、および侵害受容用に重要な領域などのいくつかの領域では非常に高濃度に、存在する。δおよびκレセプターはもっと少なく分布している。それらは、前者は腹側および背側線条体のレベルに、および後者は背側線条体および視索前野のレベルに、ほとんど存在する(Mansour et al. 1988)。
【0050】
オピオイドレセプターに関連したシグナルトランスダクションカスケードが、大規模にニューロンの種々の組織、細胞型、または標品で研究された。これらの3種のレセプターは、多くのエフェクターをモジュレートするGi/Goタンパク質に共役していることが示された。具体的には、オピオイドレセプターは、アデニル酸シクラーゼ活性を抑制し(Sharma et al. 1977)、これにより細胞内のcAMPレベルの減少を引き起こし、カルシウムコンダクタンスを減少させ(Herschel et al. 1987, Surprenant et al. 1990)、カリウム・チャンネルを刺激し(North et al 1987)、細胞内のカルシウムレベルを増大させる(Jin et al. 1992)。より最近、レセプターが、MAPキナーゼを活性化することにより、有糸分裂促進シグナルを生成することができることが示された(Fukuda et al. 1996)。
【0051】
1.2 内因性オピオイドペプチド
オピオイドレセプターの内因性リガンドはエンドモルフィンである(Hughes et al 1975)。それらは、ニューロン刺激の結果として大型有芯小胞からシナプス間隙に放出されるニューロペプチドであり、シナプス間隙でエンドモルフィンは他の神経伝達物質と共存する。エンドモルフィンは、別個の前駆物質に由来し、CNSのニューロンの様々な集団中に不均一に存在する。プロオピオメラノコルチン(即ちPOMC)は、β−エンドルフィンおよび関連するペプチドを生じ、プロエンケファリンAは、エンケファリン(Met−エンケファリンおよびLeu−エンケファリン)、および密接に関連するペプチドの起源であり、また、プロダイノルフィンは、ネオエンドルフィンおよびダイノルフィンを生ずる(Akil et al. 1988)。
【0052】
1.3 エンケファリン分解酵素およびこれらの酵素の合成阻害剤
エンケファリンは、その放出後に、極めて短い寿命を有している(1分未満)。この短かさは、古典的なニューロメディエーターの大部分のような再取込み系によるのではなく、それらの酵素的分解による。Met−エンケファリン(Tyr−Gly−Gly−Phe−Met)およびLeu−エンケファリン(Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu)は、最初はエンケファリナーゼと名付けられ、その頃中性エンドペプチダーゼ(NEP)と同一のものであると示されたペプチダーゼによる、Gly−Phe結合の切断により、およびアミノペプチダーゼN(APN)によるTyr−Gly結合のレベルの切断により、速やかに加水分解される(Roques 1986)。これらの2つの酵素は、同一の亜鉛メタロペプチダーゼのグループに属する。
【0053】
これらの酵素の多くの阻害剤が、エンケファリンの寿命を増大させ、その結果その効果を延長するために、合成された(Roques 1993)。しかし、内因性オピオイドペプチドを酵素の分解から完全に防御するためには、NEPだけでなくAPNも同じように阻害することが必要なように見える(Bourgoin et al. 1986)。
【0054】
いく通りものエンケファリンの混合型阻害剤が開発されたが(Roques 1986)、それらの中でRB101は、血液脳関門を通過することができるが(Fournier - Zaluski et al. 1992)、弱い経口的バイオアベイラビリティしかない分子である。
【0055】
エンケファリンの異化の阻害剤は、その放出に影響せずに、エンケファリンの細胞外濃度を増加させる(Dange et al 1996 ; Bourgoin et al 1986 ; Waksman et al 1985)。これらの分子の長所は、非常に高用量でさえ、それがモルヒネほど強い薬理学的反応を引き起こすことがなく(Ruin-Gayo and et 1992, Abbadie et al. 1994)、したがって、オピエートの古典的副作用(便秘、口渇、かゆみ、不規則な出血、ならびに、より厳しいレベルで、胃腸障害および呼吸低下)がないということである。
【0056】
1.4 オピエート
医薬品で最も昔から知られ、用いられているオピオイドレセプターの外因性リガンドは、インドポピーに由来するアルカロイドのモルヒネである。
【0057】
他の物質がモルヒネと同じ薬理学的特徴を持つ。モルヒネへ代謝されるヘロイン(ジアセチルモルヒネ、ジアモルヒネ)が1898年に結核治療において、医薬品に導入された。今日、薬物常用者は、その脳の中の浸透が速く、オルガスム様の「ハイ」と呼ばれる応答を生成するという事実から、この物質を高く評価する。
【0058】
他のオピエート様アゴニストが、メタドンとブプレノルフィンがそうであるが、今日代替治療で用いられている。メタドンは合成オピエートであり、モルヒネがそうであるように、μレセプターの選択的アゴニストである。
【0059】
DAMGOまたはDPPEのような他の合成オピオイドは、それぞれμおよびδレセプターに選択的なリガンドとして、実験薬理学において、それぞれ古典的に用いられている(Handa et al. 1981; Mosberg et al. 1983)。
【0060】
オピオイドレセプターの別のクラスの外因性リガンドが存在する:それはオピオイドアンタゴニストである。中でも、オピエートへの急性中毒の治療における療法中で利用されるナロキソンを特に挙げてもよい。この分子はμおよびδレセプターの両方へ同じ親和性で結合する。別の既知のアンタゴニストはナルトリンドールであり、δレセプターに強い親和性で結合する(Fang et al. 1994)。それは実験薬理学で広く用いられている。
【0061】
2. オピオイド嗜癖
2.1 序:依存性または嗜癖
WHOの定義から、依存性/嗜癖は、ある生成物の摂取が、以前に最も重要であると判断された他の行動より高い、専横的な要求となる症候群である。依存性は薬物の摂取の反復によって定着し、薬物の強迫的必要性によって特徴付けられ、薬物の衝動的な探索をもたらす。依存性は2つの異なる側面、精神的および身体的側面を持つ。
【0062】
身体的成分は、嗜癖者に、欠乏症候群(それはある例外を除いて、感じる疼痛の強さにもかかわらず致死的ではない)による特異的な痛み感覚の疼痛に対して、薬物を摂取するように指令する。それは数日繰り返した後に消滅するであろう。精神的成分は嗜癖者が再開しようとする欲望である。それは、強化/報酬系によって脳髄の強い刺激に結び付けられ、それが麻薬常用癖における多くの再発の基盤である。それは数年間続く場合がある。
【0063】
2.2 オピエートに対する依存性および耐性
耐性は、生物体のある物質への適応行動であり、この物質の効果の漸進的な減弱が見られ、同じ効果を得るため用量を増加させる必要性を伴うことになる。動物では、耐性には、薬物の繰り返し投与の結果として引き起こされる行動的効果の減少が含まれる。
【0064】
オピオイド系の、モルヒネなどのいくつかの外因性リガンドによる慢性的活性化によって、薬物の衝動的な探索によって特徴付けられる依存性が起こる。動物で、すなわちラットで、多数の実験モデルによって、オピエートの行動的効果を証拠づけることが可能になっている。自動投与または条件付け場所嗜好性などの技術が、オピオイドレセプターμ(Matthes et al. 1996)によって媒介されるように見えるヘロインおよびモルヒネの強化効果を実証した(Mc Bride et al. 1999)。
【0065】
2.3 離脱
薬物摂取の乱暴な中断が、麻薬常用者に物理的および精神的症状をもたらす。オピエートの離脱症状がとりわけ、高血圧症および腹部激痛によって、そして無快感症および不快感としても、出現する。
【0066】
動物では、オピオイドのアンタゴニスト−ナロキソンの投与が、オピエートの離脱症状を引き起こすことができる。そして、モルヒネ依存症のラットでいくつかの行動の変化:用便の増加、咀嚼、まばたき、および下痢の増加、さらに体重減少が観察される。
【0067】
3. ドーパミン作動系およびアミスルプリド
3.1 ドーパミン作動系
ドーパミンは、D1−様およびD2−様の、2つのクラスのレセプターに作用する。D1−様レセプター(D1およびD5)は、Gsによってアデニル酸シクラーゼに連結され、cAMPの生産を可能にし、cAMPはプロテインキナーゼAに依存する様々な代謝応答を引き起こす。D2−様レセプター(D2、D3、およびD4)は、Gi/oに連結され、cAMPの合成を阻害し、それが特に過分極化するKチャンネルの開口をより容易にする。
【0068】
ドーパミンを含むニューロンが、2つの中脳核に主として集まっている。1つが、被蓋即ち腹側被蓋野(ATV、すなわち中脳A10領域)であり、その軸索の投射路は、皮質(ほとんどがその前部)、大脳辺縁系(ほとんどが中隔および扁桃体)、および基底核(被核および側坐核)中に神経支配している。これらのファイバーの主要点は、終脳メディアンバンドル(FMT)を通り抜けて、認知−感情段階の情報処理に関わっている。
【0069】
実際、このニューロン配線は、種または個体の生存にとって不可欠な行動のときに、ある喜び(快楽作用)を経験させるために非常に強い脳刺激を引き起こす報酬/強化系に属する。これは薬物によってバイパスされる保証回路である。したがって、ある発散を生み出すとき、これらは衝動的な行動へと個体を動機づけ、そこでの薬物の使用は生存行動の代替の働きをしている。
【0070】
別のドーパミン作動性核は、線条体(尾状核および被殻)へ軸索を伸ばし、運動の指令に参加する黒質(黒座核もしくは黒質、または中脳Ag野)である。線条体中のドーパミン放出レベルを変化させる薬物が、運動能力を混乱させる。
【0071】
3.2 ドーパミンに依存する機構
モルヒネ投与は、黒質およびATV中のドーパミン作動性ニューロンの活性を刺激し、それは尾状核/被殻、および側坐核におけるドーパミンの放出の増大を引き起こす(Mathews and German 1984. Spanagel et al. 1990; di Chiara and North 1992)。
【0072】
この増大はオピオイドの間接作用によるものであると、一般に認められている。確かに、網状黒質およびATVに存在するGABA作動性介在ニューロンの表面に存在するμレセプターの活性化が、それらの介在ニューロンによってドーパミン作動性ニューロンに及ぼされる阻害の除去をもたらすことになろう。
【0073】
3.3 アミスルプリド、ドーパミンアンタゴニスト、
アミスルプリドは、ベンズアミドと化学的に関係している物質である。低用量では、アミスルプリドは、前頭皮質のシナプス前レセプターD2およびD3にアンタゴニストの効果を有する(明らかな作用=促進)。反対に、高用量で用いられるアミスルプリドは、大脳辺縁系のレベルでシナプス後レセプターD2およびD3を阻害する(明らかな効果:遮断)。さらに、アミスルプリドは線条体(Perrault et al. 1996)のレベルで弱い効果しか持たないので、錐体外路効果がない。これらの要素のすべてが、この分子を非典型的抗精神病化合物にしており、統合失調症の陽性および陰性症状の治療において現在利用されている。
【0074】
材料および方法
動物および処置
この研究で利用する動物は、実験の開始時に重さ約20gのOF1系統のオスのマウスである(Charles River, France)。マウスは毎日のサイクルが、照明は一日の長さの一定時間(7時間30分〜19時間30分)で、温度は22℃に維持された環境に生きている。動物実験のための国際的な倫理規定に従って実験を行なう。
【0075】
動物を、慢性的にアミスルプリドまたは食塩水で腹腔内法(IP)により処理する。注入を、3週まで1日2回、各注入間で約8時間の間隔をおいて行なう。薬理学的テストの日には、動物にはアミスルプリドを注入しない。化合物RB101を、テストの日に静脈内(IV)に、テスト開始の10分前(注入直後に行なわれる自発運動測定を除いて)に与える。
【0076】
化合物
アミスルプリド(200mg/4mlの注射用溶液)を、食塩水で希釈された形で用いる。RB101は、Beamonde et al.(Europ. J.Pharmacol (1992) T216 p157-166)によって開示された合成品である。化合物RB101を、エタノール(10%)/クレモホルEL(10%)/蒸留水(80%)からなる基剤中に溶解する。
【0077】
塩酸メタドンおよび塩酸モルヒネは市販されている。それらを生理食塩水に溶解する。
【0078】
3.方法
3.1 自発運動の測定
マウスを個々に雑音から隔離されたプラスチックケージ(255cm×205cm)に入れ、5ルックスの照明強度に晒した。動物の動きを光電管によって45分間収集し、コンピューターに記録する。動物に基剤(エタノール(10%)、クレモホルCL(10%)、水(80%))またはRB101化合物(5mg(Kg))を、静脈内に0.1ml体積/10gの比率で投与する。実験は生成物の注入直後に開始する。この研究では、用語「自発運動」は、動物の水平運動だけを考慮に入れる。
【0079】
3.2 ホットプレートテストを用いる痛覚消失の測定
マウスを個々に、水回路を用いて52±1℃に熱したプレート上の円筒の内部に置く。マウスがジャンプするまでの潜時を測定する。痛覚消失のパーセント値100は、皮膚の損傷を回避するために240秒までに制限された1組の時間に対応する。そのテストを、RB101(5mg/Kg、IV)または基剤の注入の10分後に行なう。結果を、下記の式によって計算された痛覚消失のパーセンテージとして表す:(処理グループのジャンプの潜時の平均−対照のジャンプの潜時の平均)/(240−対照のジャンプの潜時の平均)×100。結果を、平均±semとして示す。
【0080】
3.3 強制水泳テスト(Porshol’tのテスト):うつ病モデル
マウスを個々に、高さ15cmまで水で満たされた円筒状の容器中に置く、水は室温である。2分後に、4分間のうちで、動物の完全な無動時間を測定する。動物が水から頭を出しているために必要な動きは考慮に入れない。
【0081】
3.4 条件付け場所嗜好性:精神的依存の測定
条件付け場所嗜好性を測定するための装置は、3つの別々の区画:滑らかな地面を持つ黒い区画、でこぼこの地面を持つ黒と白の縞模様の区画、および中央の中立の区画、に分割された箱で作られている。
【0082】
テストは3つの段階を経由した:
【0083】
予備テスト段階:動物を中央の中立区画に置き、20分間装置の3つの区画へ自由に出入りさせる。各区画で費やされた時間を、コンピューターに接続されたカメラによって記録する。区画の1つに対して自発的嗜好を示す(即ち外側の区画の1つに所与の時間の75%以上を費やす)マウスを、実験から除く。この最初の段階の後、動物を処理(モルヒネまたは生理食塩水、SC)し、また動物が薬物を受け取る区画(黒および縞模様の区画)を決めるために、動物を無作為化する。動物を「嗜好」が最も顕著でなかった区画で条件付けることにする。
【0084】
条件付け段階:動物に、3日間連続してモルヒネ(10mg/Kg、SC)または食塩水のどちらかを二者択一で投与する。同じ動物に対して朝食塩水を、および午後モルヒネを注入する。動物を、注入直後に約20分間、1つのまたは別の区画に保持する。薬物に関連した区画は、同じマウスに対して常に同一である。
【0085】
テスト段階:予備テスト段階と同じく、中央の区画に動物を置き、3つの区画へ自由に出入りさせる。動物は、この日にはモルヒネまたは食塩水の注入を受けない。
結果は、テスト段階と予備テスト段階とで、モルヒネに関連した区画で費やされた時間の組のあいだの差異に対応している。
【0086】
4.統計分析
すべての遂行した行動テストに単一因子(処理)の分散分析(ANOVA)を用い、それに続いて、分散分析でp<0.05の場合に、Student−Newman−Keulsテストを用いる。すべての場合にp<0.05であるときは有意性が認められる。
【0087】
結果
1.RB101およびアミスルプリドの使用用量の決定
1.1 ホットプレートでのRB−101の効果・用量関係
古典的にホットプレートテストが、分子の鎮痛能力を評価するために用いられる。これは、統合中枢の応答を行動に変える方法であり、ジャンプは痛い刺激からの逃避の意志に結びついている。以前にこのテストでRB101の鎮痛能力が実証され(Noble et al. 1992)、効果/用量関係が証拠づけられたことから、この研究を行う。40%の痛覚消失が得られるRB101の用量が調べられ、それにより、任意でその効果のアミスルプリドによる増強を観察することが可能になった。3つの用量:2.5mg/Kg、5mg/Kg、および10mg/Kgを、テスト開始10分前の静脈内投与でテストした。
【0088】
5mg/Kgの用量が、45.2%±10.6%の痛覚消失を与える。したがってそれが、アミスルプリドとの混用を考慮して用いる用量である。
【0089】
1.2 自発運動に対するアミスルプリドの用量の決定
ドーパミンアンタゴニスト活性を有する分子が、自発運動を減少させる。この特性を行動に変えて、マウスにおいてアミスルプリドがどのような用量でドーパミンアンタゴニスト活性を有するか(すなわち、シナプス後レセプターD2およびD3に対する効果であって、オートレセプターD2およびD3に対する効果ではない)、を決定する。テストした用量は:0.5mg/Kg、2mg/Kg、10mg/Kg、20mg/Kg、および50mg/Kgである。
【0090】
自発運動の減少は10mg/Kgから有意である。選択された用量は20mg/Kgで、ドーパミンアンタゴニスト活性が明白で、議論の余地がない用量である。
【0091】
2. アミスルプリドによる処理期間の決定(アミスルプリド/RB101混用および自発運動の測定)。
アミスルプリドとは対照的に、RB101は、単独ではマウスの自発運動の増加を引き起こす(Baamonde et al. 1992)。
【0092】
アミスルプリドで処理する工程(20mg/Kg、IP、1日2回)をはじめに3週間行ない、その終りにRB101(5mg/Kg IV)を注入し、そのあと直ちに自発運動を45分間測定した。
【0093】
RB101の効果が、アミスルプリドによる3週間の処理後に有意に増強された。そこで、この処理期間を短縮できるかどうかを調べることにした。そのために5日のみの処理後に自発運動を測定した。
【0094】
アミスルプリドによるRB101の効果の増強は、処理の5日後にさえ存在する。そうすると今度はアミスルプリドによる処理を停止した後にこの増強がどれくらい長く持続するかが問題になる。したがって自発運動を、5日間の処理を受けたマウスの処理を停止して3日または10日後に、次のスキームによって測定する:
【0095】
【化1】

【0096】
5日間のアミスルプリド処理後のRB101の効果の増強は、アミスプリドからの離脱3日目の終りにはまだ存在するが、離脱10日後にはもはや存在しない。
研究のために、5日間のアミスルプリドによる処理後に実験を行い、それが成功した場合には、3日間の離脱の終りに同じ実験を行なうことを、選択した。
【0097】
3. 強制水泳テストにおけるアミスルプリドとRB101との組合せ
強制水泳テストを、分子の抗うつ効果を評価するために古典的に利用する。化合物RB101は、このテストでマウスの無動期間を減少さるので、化合物RB101は単独で抗うつ型の特性を有している(Baamonde et al. 1992)。
【0098】
5日間アミスルプリドよる処理を行い、RB101をテストの日(処理停止の翌日から)に注入する。
5日間のアミスルプリドによる処理の終りに、抗うつ型のRB101(5mg/Kg IV)の効果の増強が常に存在する。
離脱の3日間後に同じテストを行なった。
【0099】
アミスルプリド(5日間の処理)によるRB101(5mg/Kg、IV)の抗うつ型効果の増強が、3日間離脱後にも存在する。
【0100】
4. ホットプレートテストにおけるアミスルプリド/RB101の組合せ
アミスルプリドによる処理を5日間行ない、テストの日(処理停止の翌日からの)にRB101(5mg/Kg IV)を注入する。
【0101】
RB101はそれ自身鎮痛効果を有する(38.4%±10.8%)。アミスルプリド/RB101の組合せそれ自身は、49.6%±8.9%の痛覚消失レベルを有する。しかし、5日間処理後のホットプレートテストにおいては、これらの2つのグループ間にいかなる有意差も存在せず、したがってアミスルプリドによるRB101の効果のいかなる増強も存在しない。
【0102】
5. アミスルプリド/RB101の組合せと場所嗜好性
始めに、「材料および方法」の章で開示された方法によって、動物に条件付けを行う。この条件付けの終りに得られた結果を、本明細書の後に添付する図1に示す。それはモルヒネ(10mg/Kg SC、n=10マウス/グループ)による条件付け場所嗜好性を示す。 *は、食塩水グループに対してp<0.05を意味する。
【0103】
モルヒネ(10mg/Kg)による場所嗜好性が観察され、それはこの薬物の増強効果をよく表す。
モルヒネおよび食塩水の両方のグループのマウスを、次に等しい数の2つのサブグループに分け、1つのサブグループは5日間、通常のプロトコルによりアミスルプリドで処理し、他のサブグループは生理食塩水を注射する。
第2のテストを6日目に行ない、アミスルプリドで処理された動物はテストする日にRB101を投与され、他のものは同じ基剤を投与された。
このテストの結果を本明細書の後に添付する図2に示す。それは、第1のテストに他の観点で用いられた動物における、1日2回5日間のIPによる20mg/Kgアミスルプリド処理の、第2のテストの日の55mg/Kg、IVのRB101投与と組み合わせた効果を示す。
【0104】
いずれのグループも対照(生理食塩水:NaCl+ベヒクル)に対して有意な結果が得られていない。しかしアミスルプリド+RB101による処理を受けなかったモルヒネグループのマウスの場所嗜好性が持続する傾向は、すべてに同じく観察される。処理を受けたモルヒネグループのマウスに関しては、それらの結果が食塩水のグループのマウスに近づいているように見える。
【0105】
この傾向が持続するかどうかを確かめるために、第3のテストをテストの4日後に行なった。第3のテストの日には、RB101を注入しない。図3に得られた結果を示す。
【0106】
それらは、同じ動物について第2のテストをした4日後の、アミスルプリド(IPによる20mg/Kg、1日2回5日間)+RB101(IVにより5mg/Kg、第2のテストをした日に)による処理の効果を示す−モルヒネ/アミスルプリド+RB101のグループについてp<0.05、/対照についてp<0.05。
【0107】
アミスルプリド+RB101処理を受けていないモルヒネグループのマウスに、場所嗜好性が再び見られる。さらに、アミスルプリド+RB101処理を受けたモルヒネグループのマウスには、場所嗜好性が全くない。
【0108】
6. アミスルプリドとメタドンの組合せ:自発運動の測定
アミスルプリドによる処理を5日間行ない、テストの日に、メタドンを注入する(0.25mg/Kg IV)。ホットプレートテストで選択されたメタドンの用量は、RB101に似た鎮痛作用のレベルであるという結果であった。
【0109】
図4は、アミスルプリドによる5日間の処理(IPによる20mg/Kg、1日2回)後の、自発運動の測定を示す。テストにおいて、テストの開始直前にメタドンを注入する(n=10マウス/グループ)。どのグループも対照に対して有意な結果を得ていない。
【0110】
7. 強制水泳テストにおけるアミスルプリド・メタドンの組合せ
アミスルプリドによる処理を5日間行ない、テストの日にメタドンを注入する(0.25mg/Kg IV)。
【0111】
以下に添付する図5は、アミスルプリド(S20)をIPにより20mg/Kgの割合で1日2回5日間処理した後の、強制水泳テストでの無動時間の測定を示す。
メタドン(Meth)をテストの日に、テスト開始10分前に注入する(n=10マウス/グループ)。
【0112】
図6は、20mg/Kgの割合で1日2回5日間のIPによるアミスルプリド(S24)処理、および3日間の離脱の後の自発運動の測定を示す。RB101(RB)はテストする日に、テストの開始直前に注入する(n=10マウス/グループ)。
対照に対して:
* p<0.05
**p<0.01
【0113】
図7は、10日間の離脱の後に得られた結果を図示する。
【0114】
図8は、1日2回5日間アミスルプリドによる処理(S20、20mg/Kgの割合、IP)を受けたマウスの強制水泳テストにおける無動時間の測定によって得られた結果を示す。RB101(RB)をテスト開始の10分前に注入する(n=10マウス/グループ)。
** 対照に関してp<0.001
【0115】
図9は、1日2回5日間、20mg/Kgの割合でIPによるアミスルプリド処理(S20)を受け、続いて3日間離脱させたマウスの強制水泳テストにおける無動時間の測定によって得られた結果を示す。RB101(RB)をテスト開始の10分前に注入する(n=10マウス/グループ)。
対照に対して:
* p=0.005
**p<0.001。
【0116】
この研究で得られた結果は、エンケファリン異化の混合阻害剤であるRB101の効果が、ドーパミンD2/D3アンタゴニストであるアミスルプリドで前もって慢性的に処理されたマウスで行なわれた3つの薬理学的テストのうちの2つ(強制水泳テスト、自発運動の測定)において、増強されることを示す。アミスルプリドによる5日間の処理で十分であるので、この増強はやや速く得られること、またこの効果が、この短期間の処理の後でさえ、長時間(3日)に亘って持続するように見えることを観察するのは興味深く思われる。
【0117】
さらに、アミスルプリドとRB101の単回投与の後に行なわれた同じテストによっては、この増強をもたらすことが不可能であり、RB101によってオピオイド系のより大きな刺激を得るためには、これらのドーパミンレセプターを短期間であっても「慢性的に」遮断する必要があることが観察される。
【0118】
RB101の代わりにメタドンを使用することによっては、アミスルプリドによる慢性的処理と組合せる場合に、自発運動テストおよび強制水泳テストにおけるこの化合物の効果の増強を引き起こすことはできない。さらに、RB101およびアミスルプリドの組合せは、ホットプレートテストでは増強を示さなかった。
【0119】
これらの結果は、この組合せへのμ以外のオピオイドレセプターの優先的関与によって説明することができる。確かに、ホットプレートテストは、μレセプターによって媒介されるオピオイドの脊柱上痛覚消失を、優先的に行動に変えるものである(Roques, 1993)。メタドンはそれ自身が、μレセプターの優先的なアゴニストである。さらに、化合物RB101によって保護されるエンケファリンの抗うつ型の効果は、オピオイドレセプターμではなくδの刺激によって媒介されることが示された(Baamonde et al. 1992)。
【0120】
レセプターδが気分の改良に貢献することもさらに示された(Fillol et al. 2000)。このことから、オピオイドレセプターδのレベルで優先的に作用することにより、アミスルプリド/RB101の組合せがRB101の効果の増強を可能にすると考えることもできる。さらに、ナルトリンドールのようなδレセプターの優先的アンタゴニストを用いて、アミスルプリド/RB101の組合せで得られる効果を遮断することが可能かどうか確かめることは興味深い。
【0121】
さらに、この研究で用いられる薬理学的テスト(強制水泳テストおよび自発運動の測定)における効果を観察するために、アミスルプリドによる処理の後で、RB101の代わりにSNC80またはBUBU(これらは全身的に投与できる)などのδレセプターの優先的アゴニストを利用することもできる。
【0122】
しかし、選ばれた用量(0.25mg/Kg IV)のメタドンのみでは、自発運動および強制水泳テストにおいて何の有意な効果も示さなかったこと、およびこの同じ用量でそれはホットプレートテストに基づく著しい痛覚消失を引き起こすこと、を指摘しなければならない。
【0123】
しかしメタドンは、マウスにおいて過剰自発運動活性を有することが知られており(Browne 1980)、またそれは、オピオイドアゴニストとして抗うつ型の効果を持つ。この研究で述べたアミスルプリドによるメタドン(0.25mg/Kg,IV)の効果の増強がないのは、低すぎる用量のメタドンを用いたためではないことを、テストをもっと高い用量で繰り返すことによって証明している(この場合、非常に高い用量を用いるときには、オピオイドレセプターμのみが影響される危険性はない)。
【0124】
強制水泳テストおよび自発運動測定においてRB101の効果のアミスルプリドによる増強が存在すること、一方この増強はホットプレートテストでは見出されないことは、アミスルプリドの作用の領域選択性の存在によって説明される可能性がある。
【0125】
確かに、自発運動および抗うつ型の効果は、鎮痛効果がほとんどオピオイド系による場合に、ドーパミン作動性に強く関係する行動である。
【0126】
さらに脳の微小透析の実験を行なうこともできる。これはアミスルプリドによる慢性的処理の後に、様々な脳領域(例えば、大脳辺縁系の一部である側座核および線条体ならびに水道周辺灰白質、より詳細には痛みに含まれる部位)で得られるエンケファリンの細胞外レベルの測定を、可能にする。場所嗜好性モデルによってこの研究で描写された依存性の関係では、選択された条件付け処理のプロトコル(アミスルプリド:5日間、RB101:6日目)が、アミスルプリドによる処理の停止の5日後に依存動物における場所嗜好性の発現を抑制する(テスト3)。
【0127】
処理停止後当日に行なわれたテスト(テスト2)では有意な結果を得ることができないことを指摘することは、それでもなお賢明なことである。これらの結果は、今まで使用されたプロトコルをさらに改良することができ、本明細書に得られた結果を補強することができるかも知れないが、アミスルプリド/RB101の組合せがヘロインへの依存性の機構において効果的であろうことを示している。
【0128】
【表1】







【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】条件付けの終りに得られた結果を示す。
【図2】第2のテストの結果を示す。
【図3】第3のテストの結果を示す。
【図4】アミスルプリドによる5日間の処理後の、自発運動の測定を示す。
【図5】アミスルプリド(S20)をIPにより20mg/Kgの割合で1日2回5日間処理した後の、強制水泳テストでの無動時間の測定を示す。
【図6】20mg/Kgの割合で1日2回5日間のIPによるアミスルプリド(S24)処理、および3日間の離脱の後の自発運動の測定を示す。
【図7】10日間の離脱の後に得られた結果を図示する。
【図8】1日2回5日間アミスルプリドによる処理(S20、20mg/Kgの割合、IP)を受けたマウスの強制水泳テストにおける無動時間の測定によって得られた結果を示す。
【図9】1日2回5日間、20mg/Kgの割合でIPによるアミスルプリド処理(S20)を受け、続いて3日間離脱させたマウスの強制水泳テストにおける無動時間の測定によって得られた結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同時にまたは逐次的に使用するための2つの薬物の組合せを含む、好ましくはキットの形の新規な医薬品組成物であって、不活性で無毒の担体または基剤と混合または組み合わせた、ドーパミンレセプターの部分または完全アンタゴニストとプロドーパミン製品との組合せであり、経口的、非経口的、または経皮的方法による投与に適する、医薬品組成物。
【請求項2】
ドーパミンレセプターのアンタゴニストが、D2および/またはD3レセプターのアンタゴニストである、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項3】
ドーパミンアンタゴニストがD2およびD3レセプターのアンタゴニストである、請求項1または2記載の医薬品組成物。
【請求項4】
ドーパミンアンタゴニストがさらにセロトニン作動性の要素も有する分子である、請求項1〜3のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項5】
ドーパミンアンタゴニストが、アミスルプリド、リスペリドン、SB277 0IIAとして知られるD3アンタゴニスト、スルピリド、メトクロプラミド、およびオランザピンから成る群より選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項6】
ドーパミンアンタゴニストがラセミ分割されたアミスルプリド、特にS(−)アミスルプリドである、請求項1〜5のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項7】
プロドーパミン製品が、オピオイドレセプターに、または安定してドーパミン作動性システムを興奮させることができるシステムに、結合することができる物質である、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項8】
プロドーパミン製品が、メタドン、ブプレノルフィン、LAMとして知られる生成物、ナロルフィンおよびナルトレキサート、ならびにレバロルファンから成る群より選ばれる、請求項1または請求項7記載の医薬品組成物。
【請求項9】
神経遮断薬をさらに含む、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項10】
ドーパミンアンタゴニストとプロドーパミン製品との組合せが単一の規定された医薬品組成物の形である、請求項1〜9のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項11】
ドーパミンアンタゴニストとプロドーパミン製品との組合せが、各有効成分を分離した形で含むキットの形である、請求項1〜9のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項12】
有効成分の組合せが2つの同一の剤形である、請求項1〜11のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項13】
2つの有効成分の組合せが2つの別個の、請求項1〜12のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項14】
抗ドーパミン物質の用量が、単回投与量当たり0.3〜1200mgの範囲である、請求項1〜13のいずれか1項記載の医薬品組成物。
【請求項15】
ラセミ化合物のアミスルプリドまたはS(−)異性体の形のアミスルプリドの、単回投与量当たりの用量が200〜1200mgの範囲である、請求項14記載の医薬品組成物。
【請求項16】
プロドーパミン製品の用量が0.2〜300mgの範囲である、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項17】
単回投与量当たり、100〜400mgの用量のアミスルプリドの錠剤および0.2〜100mgの用量のプロドーパミン製品の錠剤である、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項18】
新陳代謝の速い人のためのプロドーパミン製品の用量が200〜300mgのオーダーである、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項19】
一方が抗ドーパミン物質の液体または固体の製剤であり、もう一方がプロドーパミン製品の液体製剤である、2個のボトルを含むキットの形である、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項20】
ラセミ化合物またはエナンチオマー的に純粋な化合物の形であるアミスルプリドまたはその塩とメタドンとの組合せから成り、単回投与量当たり100〜400mgのアミスルプリドおよび0.2〜30mgのブプレノルフィンを含む、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項21】
単回投与量当たり、第1に、塩基または塩の形の、ラセミ体またはエナンチオマーの形の、100〜400mgの範囲の薬学的に適切な用量のアミスルプリドを、および第2に、5〜60mgの薬学的に適切な用量のメタドンを、含む、キットの形である、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項22】
リスペリドンとドーパミンアゴニストとの組合せから成り、1〜16mgのリスペリドンを含むことを特徴とする、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項23】
アミスルプリドと、ブプレノルフィンもしくはナルトレキソンもしくはナロルフィンとの組合せであり、単回投与量当たり、400〜1200mgのアミスルプリド、および0.2〜300mgのブプレノルフィンナルトレキソンもしくはナロルフィンを含むことを特徴とする、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項24】
1日1〜4回の割合で与えるための、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項25】
合法または違法薬物への様々な形の嗜癖と戦うための方法であって、嗜癖現象を示す被験者に、十分で効果的な量のドーパミンアンタゴニストとドーパミンアゴニストとの組合せを、同時にまたは不連続的に、単一のまたは別々の剤形で投与する工程から成る、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−519016(P2008−519016A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539613(P2007−539613)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002775
【国際公開番号】WO2006/048560
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(507147149)トリマラン・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】TRIMARAN LIMITED
【Fターム(参考)】