説明

新規な熱硬化性組成物およびその硬化物

【課題】大気中における硬化性にすぐれ、その硬化物は、種々の基材に対する接着性や低硬化収縮性に優れ、且つ金属基材を腐食させることがない熱硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】(a)エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、(b)アルミニウム錯体、(c)フェノール樹脂、からなる熱硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱により硬化塗膜を形成し、形成された塗膜が、塗料、接着剤、インキ、フィルムコーティング、電子材料用コーティング材料などに有用な熱硬化性組成物およびその硬化物に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
熱または、光のエネルギーを硬化反応に利用しイオン的に硬化するエポキシ化合物系硬化材料は、(a)酸素による硬化阻害を受けないため表面および薄膜硬化性に優れる、(b)硬化収縮が小さく幅広い基材に対し良好な接着性を有する、(c)活性種の寿命が長く一旦熱や光により硬化が開始されるとその後エネルギーを積極的に注入しなくても硬化が徐々に進む、(d)その結果残留モノマー量を低く抑えることが可能、等の点で、ラジカル的に硬化するアクリル系硬化材料に比べ優れた特長を有する。これらの特徴を生かして、塗料、接着剤、ディスプレイ用シール剤、印刷インキ、立体造形、シリコーン系剥離紙、フォトレジスト、電子部品用封止剤等への応用がなされている(非特許文献1)。
【0003】
熱エネルギーを利用したエポキシ系化合物の硬化は、アミン系硬化剤を使用したり、熱酸発生剤を使用することが行われている。また、光のエネルギーを利用したエポキシ系化合物の硬化は、光酸発生剤を使用することが行われている。これらの硬化系で主に用いられる化合物としてグリシジル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物(特許文献1、特許文献2)、オキセタン化合物(非特許文献2)、ビニルエーテル化合物(特許文献3、4、5、6)などが例示できる。
【0004】
上記の熱酸発生剤や光酸発生剤を使用した場合、硬化物中にこれらに由来する強酸が存在する可能性があり、これらの酸は基材の金属を腐食させ、基材の劣化の原因となりやすい。特に電子デバイス用途では、強酸の存在は問題となる可能性が大きい。強酸の発生機構としては、熱や光により発生した酸が硬化反応(重合反応)に使用されずにそのまま残ったものや、下記反応により、成長ポリマーの活性端であるオキシラニウムイオンが系内に存在する微量の水により失活することにより発生する酸が考えられる。
【0005】
【化1】

【0006】
上記問題の発生が少ない技術として、アルミニウム錯体からなる非強酸系の開始剤が報告されているが(非特許文献3、特許文献7)、強固な架橋構造を有し、硬化性に優れた脂環式エポキシ系の熱硬化組成物は開発されていない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第3794576号明細書
【特許文献2】WO 2005/019299号明細書
【特許文献3】特開平6−298911号公報
【特許文献4】特開平9−328634号公報
【特許文献5】特許第2667934号公報
【特許文献6】特開平4−120182号公報
【特許文献7】特開2006−22342号公報
【非特許文献1】角岡正弘、他著「カチオン硬化技術の工業展開」 MATERIAL STAGE、 技術情報協会、2002年5月10日、第2巻、第2号、P.39−92
【非特許文献2】3-Ethyl-3-hydroxymethyloxetane/Epoxide配合系の光カチオン重合性,佐々木 裕, 東亞合成研究年報TREND 2005 第8号
【非特許文献3】S. Hayase, T. Ito, S. Suzuli, and M. Wada,“Polymerization of Cyclohexene Oxide with Al(acac)3-Silanol Catalyst,” J. Polymer Science: Polymer Chemistry Edition, vol. 19, 2185-2149(1981).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の組成物は、大気中の酸素により硬化反応が阻害されず優れた熱硬化性を(表面硬化性、内部硬化性)有し、その硬化物が樹脂、金属、ガラスといった様々な基材に対する良好な密着性を示し、金属を腐食させることがないエポキシ系熱硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、脂環式エポキシ化合物、ビニルエーテル、テトラアルコキシシランなどの化合物が、アルミニウム錯体とノボラック樹脂の存在下で迅速に硬化し、上記課題が解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
1.(a)エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、(b)アルミニウム錯体、(c)芳香環のオルト位で結合した構造を有するノボラック樹脂、からなる熱硬化性組成物、
2.(a)エポキシ化合物が脂環式エポキシ化合物である1.に記載の熱硬化性組成物、
3.(b)アルミニウム錯体が、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)及び/又はトリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(III)である1.又は2.に記載の熱硬化性組成物、
4.(a) エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、(b)アルミニウム錯体、(c)芳香環のオルト位で結合した構造を有するノボラック樹脂、からなる熱硬化性組成物を熱硬化させることにより得られる硬化物、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱硬化性組成物は、大気中における硬化性にすぐれ、その硬化物は、種々の基材に対する接着性や低硬化収縮性に優れ、且つ金属基材を腐食させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明においては、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が使用される。これらの化合物は、単独で用いても、2種以上併用して用いても良い。また上記官能基の1種または2種以上が1分子中に複数存在する化合物を用いても良い。
エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物が例示できる。
【0012】
グリシジルエーテル型エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジクリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0013】
脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル− 3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、プロピレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、等が挙げられる。
工業的に入手しやすい2官能脂環式エポキシ化合物としてはセロキサイド2021、2080、3000(ダイセル化学工業社製)、UVR−6110、6105、6128、ERLX−4360(ダウ・ケミカル日本社製)、3官能以上の多官能脂環式エポキシ化合物としてはエポリードGT300、GT400(ダイセル化学工業社製)等を用いることができる。
【0014】
ビニルエーテル基を有する化合物とは、下記の一般式を有する化合物である。
【化2】

(Rはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、ビニル基を有するアルキル基、アリール基を有するアルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基を表す。)
【0015】
より具体的には、単官能ビニルエーテルとしてメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが例示できる。
多官能ビニルエーテルとしては、エチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジ
オールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができる。
【0016】
水酸基を有するビニルエーテル化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールモノビニルエーテル、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールモノビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジオールモノビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールモノビニルエーテル等を挙げることができる。これらの中では、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテルが、硬化膜の柔軟性と高度のバランスが良好であるために特に好ましい。その理由は明確にはなっていないが、水酸基を有する化合物は、エポキシ基やオキセタニル基と反応した場合、水酸基をポリマー骨格に導入することになるので、このことにより硬化性、接着性、耐水性を向上させると推定される。
【0017】
異種の官能基を有するビニルエーテルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが例示できる。
テトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランなどが例示できる。これらの中で、テトラエトキシシランが硬化性に優れており好ましい。テトラアルコキシシランは、酸を触媒として、ポリシロキサンを生成する。テトラアルコキシシランを用いることで、粘度が低く、高度と柔軟性のバランスに優れた硬化膜を得ることができる。
【0018】
本発明で使用されるアルミニウム錯体としては、種々の配位子の錯体が使用可能であり、アルミニウムのカルボン酸塩、アルミニウムアルコキシド、塩化アルミニウム、アルミニウム(アルコキシド)アセト酢酸キレート、アセトアセトナトアルミニウム、エチルアセトアセタトアルミニウムなどが例示できる。これらの中で、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)(Al(CHCOCHCOCH)、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(III)(Al(CHCOCHCOOC)が触媒活性に優れているので好ましい。アルミニウム錯体の使用量は、組成物全体に対して、0.01%−10%が好ましい。
【0019】
本発明で使用される(c)芳香環のオルト位で結合した構造を有するノボラック樹脂とは、鎖状または環状の下記構造からなる樹脂である。
【化3】

(ここでR1、R2、は水素原子または、炭素数1以上10以下のアルキル基、またはアリール基を表し、R3は炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。)
【0020】
【化4】

(上式は、環状構造の繰り返し単位を表し、R3は炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。)
【0021】
(c)ノボラック樹脂の使用量は目標物性に合わせて調整され、(a)エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物に対して、(c)/(a)質量比として、1/99−90/10が好ましく、1/99−50/50がより好ましい。また、ノボラック樹脂の分子量としては、幅広く使用可能であるが、繰り返し単位で表した重合度が10以下であることが組成物の粘度が低くなるので特に好ましい。
また、(b)アルミニウム錯体の使用量は、(c)ノボラック樹脂100質量部に対して、0.01−100質量部が好ましく、0.01−50質量部がより好ましい。
【0022】
本発明の組成物の硬化機構は明らかになっていないので推定の域を出ないが、アルミニウム錯体にフェノール樹脂が配位することにより、フェノール性水酸基の水素が活性化され、カチオン重合機構で硬化反応が進行する機構が考えられる。 非特許文献3では、フェノールは、アルミニウム錯体と組み合わせても、シクロヘキセンオキサイドの重合活性が無いと報告されている。特許文献7では、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン誘導体から熱によりフェノール性水酸基を発生させ、これがアルミニウム錯体と供に硬化触媒となって硬化反応が進行する。一方、本発明においては、アルミニウム錯体と特定構造のノボラック樹脂の組み合わせにより、脂環式化合物等が50℃〜150℃の低温領域においても重合することが見出された。この場合、当該ノボラック樹脂は、効果触媒と架橋剤を兼ねていると推定される。
本発明においては、上記化合物の他に使用可能な化合物の例としては、オキセタニル基を有する化合物、プロペニルエーテル基を有する化合物、分子中に水酸基を2個以上有する脂肪族多価アルコール化合物が例示できる。
【0023】
オキセタニル基を有する化合物とは、下記一般式で表される化合物である。
【化5】

(ここでR1は水素、アルキル基、アリール基、オキセタニルアルキル基、シリルアルキル基、アリールアルキル基、ヒドロキシアルキル基、オキシアルキレン基、オキセタニルオキシフェニレン基、フェノキシアルキル基、を表す。R2はアルキル基、アリール基、アリールアルキル基をあらわす。)
【0024】
より具体的には、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス([(
3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル)ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ベンゼン、4,4‘−ビス[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン等が例示できる。
【0025】
プロペニルエーテル基を有する化合物とは、下記一般式で表される化合物である。
【化6】

(ここで、Rはアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ビニル基、ビニル基を有するアルキル基、アリール基を有するアルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基を表す。)
【0026】
分子中に水酸基を2個以上有する脂肪族多価アルコール化合物は、硬化膜の機械的強度の向上、表面硬度の向上、基材密着性の向上に効果がある。脂肪族多価アルコールとは、芳香環を含まない脂肪族系の多価アルコールであり、低分子でもオリゴマーでも高分子でも良い。その分子内に、水酸基を除いた酸素原子を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。脂肪族多価アルコールの構成部分として、水酸基を除く酸素原子が含まれる場合を例示すると、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アセタール結合などがあげられる。また、脂肪族多価アルコールは、非環式、単環式、橋かけ環状、スピロ環状の多価アルコールが幅広く使用可能である。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ジメチロールシクロヘキサン、トリシクロデカンジメタノール(ジ(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,0 2,6]デカン)、ヒドロキシエチルメタクリレートを含むポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエステルジオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトンポリオール、水添ポリフェノール系樹脂、水添テルペン系樹脂などが例示できる。
さらに、本発明の熱硬化性組成物には、フェノール樹脂やその誘導体、テルペン系樹脂などを光硬化膜の機械的物性や接着性改良のために併用することが可能である。
【0027】
本発明の熱硬化性組成物には、さらに必要に応じて、レベリング剤、ワックス類、酸化防止剤、非反応性ポリマー、微粒子無機フィラー、シランカップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ剤等を添加することもできる。
微粒子無機フィラーおよびシランカップリング剤の添加は、塗膜の非透湿性能を向上させたり、絶縁性を向上させるのに有効である。このような微粒子無機フィラーとしては、一次粒子の平均径が0.005〜10μmの無機フィラーであり、具体的にはシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、雲母等が挙げられる。微粒子無機フィラーは、表面未処理のもの、および表面処理したもの共に使用でき、表面処理した微粒子無機フィラーとしては例えば、メトキシ化、トリメチルシリル化、オクチルシリル化、またはシリコーンオイルで表面処理したものが挙げられ、これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基等の反応性基を有するアルコキシシラン化合物であり、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル安息香酸、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等
が挙げられ、これらの1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0028】
本発明の熱硬化性組成物は、その優れた熱硬化性、低硬化収縮性および種々の基材に対する優れた接着性を有することから、塗料、接着剤、インキ、コーティング材料等として有用である。より具体的には、建材用塗料、自動車用塗料、航空機用塗料、電気製品用塗料、グラビア印刷用インク、フレキソ印刷用インク、オフセット印刷用インク、スクリーン印刷用インク、金属印刷用インク、印刷物用のOPニスが例示できる。また、液晶、有機EL、電子ペーパー等のディスプレイパネル用シール材、光ディスクの貼り合わせ用接着剤、次世代光ディスクであるBlu−rayディスクの表面保護層形成材、反射防止膜形成用コーティング材、ハードコーティング材、半導体製造用コーティング材料、カバーレイ、微細配線用材料、太陽電池シール剤、汎用接着剤、電子材料用接着剤、構造材料用接着剤等として有用である。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例に基づいて説明する。
なお、硬化膜の物性評価は、以下の方法で行った。
<硬化性および硬化膜の物性評価>
・タックフリー時間:加熱硬化開始後被膜を指触観察し、表面が硬化しベタツキがなくなるのに必要な加熱時間を求めた。
・金属腐食性:所定の金属試験片上に形成した皮膜を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間入れ、金属面の腐食の状況を観察した。銅板の場合は、腐食すると濃褐色に銅が変色した。銀の場合は、腐食すると銀が白く変色した。アルミニウムの場合も腐食すると白く変色した。これらの金属表面の色変化がない場合を○(腐食無し)、色変化がある場合を×(腐食有り)とした。
金属板の仕様は以下の通りである。
銅試験片 60mm×60mm×2mm
アルミニウム試験片 60mm×60mm×2mm
銀試験片 シリコンウエハー上に銀を200nmで蒸着したもの。
・耐熱性(TG/DTA):島津製作所DTG−60Aを用い、初期温度50℃、終了温度450度、昇温速度50℃/分でサンプルの重量減少を求めた。
【0030】
[実施例1]
UVR−6105(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダウケミカル社製)が90.0wt%、PAPS−PTBPN01(p−tert−ブチルフェノール・ホルムアルデヒド重縮合物、旭有機材工業(株)製、繰り返し単位で表した重合度は約4)が10.0wt%、の組成物を調整し(表1)、この組成物の100質量部(phr)にトリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(Al(CHCOCHCOOC)の50wt%トルエン溶液を4phr添加し、硬化用組成物を調整した。上記硬化用組成物を、ワイヤーバーを用いて、銅試験片、アルミニウム試験片、銀試験片上に12μmの厚みで塗工した。これらの試験片を80℃のホットプレート上に置いて加熱したところ、硬化反応が進行し、15分でタックフリーの状態に達した。これらの試験片を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間放置したが、各金属面に腐食は見られなかった。
【0031】
[実施例2]
HBVE(ヒドロキシブチルビニルエーテル、丸善石油化学(株)製)が90.0wt%、PAPS−PTBPN01が10.0wt%、の組成物を調整し(表1)、この組成物の100質量部(phr)にトリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(Al(CHCOCHCOOC)の50wt%トルエン溶液を4phr添加し、硬化用組成物を調整した。上記硬化用組成物を、ワイヤーバーを用いて、銅試験片、アルミニウ
ム試験片、銀試験片上に12μmの厚みで塗工した。これらの試験片を80℃のホットプレート上に置いて加熱したところ、硬化反応が進行し、19分でタックフリーの状態に達した。これらの試験片を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間放置したが、各金属面に腐食は見られなかった。
【0032】
[実施例3]
UVR−6105が72.3wt%、HBVEを23.6wt%、PAPS−PTBPN01が4.1wt%、の組成物を調整し(表1)、この組成物の100質量部(phr)にトリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(Al(CHCOCHCOOC)の50wt%トルエン溶液を4phr添加し、硬化用組成物を調整した。上記硬化用組成物を、ワイヤーバーを用いて、銅試験片、アルミニウム試験片、銀試験片上に12μmの厚みで塗工した。これらの試験片を80℃、120℃、150℃のホットプレート上に置いて加熱したところ、硬化反応が進行し、それぞれ順に25分、2.5分、1.5分でタックフリーの状態に達した。これらの試験片を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間放置したが、各金属面に腐食は見られなかった。
【0033】
[実施例4−6]
表1の組成で硬化用組成物を調整し、これを熱硬化させ表1の結果を得た。実施例4で得られた硬化物のTG/DTAによる耐熱性を測定した結果、5%重量減は277℃、10%重量減は298℃であった。
【0034】
[実施例7]
UVR−6105が60.24wt%、HBVEが19.72wt%、PAPS−PTBPN01が3.44wt%、TEOS(テトラエトキシシラン)が16.60wt%の組成物を調整し(表1)、この組成物の100質量部(phr)にトリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(Al(CHCOCHCOOC)の50wt%トルエン溶液を4phr添加し、硬化用組成物を調整した。上記硬化用組成物を、ワイヤーバーを用いて、銅試験片、アルミニウム試験片、銀試験片上に12μmの厚みで塗工した。これらの試験片を50℃のホットプレート上に置いて加熱したところ、硬化反応が進行し、それぞれ順に60分でタックフリーの状態に達した。これらの試験片を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間放置したが、各金属面に腐食は見られなかった。
【0035】
[実施例8]
UVR−6105が60.24wt%、HBVEが19.72wt%、PAPS−PTBPN01が3.44wt%、TEOSが16.60wt%の組成物を調整し(表1)、この組成物の100質量部(phr)にトリス(アセトアセトナト)アルミニウム(Al(CHCOCHCOCH)の50wt%トルエン溶液を4phr添加し、硬化用組成物を調整した。上記硬化用組成物を、ワイヤーバーを用いて、銅試験片、アルミニウム試験片、銀試験片上に12μmの厚みで塗工した。これらの試験片を50℃のホットプレート上に置いて加熱したところ、硬化反応が進行し、それぞれ順に70分でタックフリーの状態に達した。これらの試験片を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間放置したが、各金属面に腐食は見られなかった。
【0036】
[比較例1]
UVR−6105が60.23wt%、HBVEが19.71wt%、PAPS−PTBPN01が3.46wt%、TEOSが16.60wt%の組成物を調整し(表1)、この組成物の100質量部(phr)にCPI−100P(主成分ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、50%プロピレンカーボネート溶液、サンアプロ(株))製Al)を4phr添加し、硬化用組成物を調整した。上記硬化用組成物を、ワイヤーバーを用いて、銅試験片、アルミニウム試験片、銀試
験片上に12μmの厚みで塗工した。これらの試験片に400W高圧水銀燈を用いて、照射強度30mW/cm、積算光量160mJ/cmの条件でUV光を照射し、光硬化を行った。これらの試験片を80℃、湿度90%RHの恒温恒室槽に24時間放置したところ、各金属面に全面的な腐食が見られた。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の熱硬化性組成物は、大気中における硬化性にすぐれ、その硬化物は、種々の基材に対する接着性や低硬化収縮性に優れ、且つ金属基材を腐食させることがない。用途として、塗料、接着剤、インキ、コーティング、半導体保護用コーティング剤などに使用可能である。より具体的には、建材用塗料、自動車用塗料、航空機用塗料、電気製品用塗料、インクジェット印刷用インク、グラビア印刷用インク、フレキソ印刷用インク、オフセット印刷用インク、スクリーン印刷用インク、金属印刷用インク、印刷物用のOPニスが例示できる。また、液晶、有機EL、電子ペーパー等のディスプレイパネル用シール材、光ディスクの貼り合わせ用接着剤、次世代光ディスクであるBlu−rayディスクの表面保護層形成材、反射防止膜形成用コーティング材、ハードコーティング材、半導体製造用コーティング材料、カバーレイ、微細配線用材料、太陽電池シール剤、汎用接着剤、電子材料用接着剤、構造材料用接着剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、(b)アルミニウム錯体、(c)芳香環のオルト位で結合した構造を有するノボラック樹脂、からなる熱硬化性組成物。
【請求項2】
(a)エポキシ化合物が脂環式エポキシ化合物である請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【請求項3】
(b)アルミニウム錯体が、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム(III)及び/又はトリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム(III)である請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
(a) エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、テトラアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、(b)アルミニウム錯体、(c)芳香環のオルト位で結合した構造を有するノボラック樹脂、からなる熱硬化性組成物を熱硬化させることにより得られる硬化物。

【公開番号】特開2008−24804(P2008−24804A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198127(P2006−198127)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】