説明

新規ビベンゾ[b]フラン化合物、並びに該化合物を含有してなる有機半導体材料及び有機半導体素子

【課題】製造が容易であり、有機半導体材料として半導体素子に用いた際に高いキャリア移動度を実現できる新規な化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物。式中、R1及びR2は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基又はトリアルキルシリル基を表し、R3〜R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、チオアルキル基、アリール基又は複素環基を表し、Y1、Y2、Z1及びZ2は、直接結合、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−又はアリーレン基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する新規なビベンゾ[b]フラン化合物に関する。斯かる化合物は有機半導体材料として有用であり、該化合物を含有してなる有機半導体材料は、特に有機薄膜トランジスタ(OTFT)等の電流制御デバイスにおける有機半導体層の形成に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子デバイスに使用される有機電界発光素子、光電変換素子、有機薄膜トランジスタ(OFET)素子等の半導体素子には、無機化合物が使用されてきた。しかしながら、無機化合物を用いた半導体では製造プロセスが高価であり、大面積化が難しく環境負荷が大きい等の問題もあった。
【0003】
近年、有機分子で半導体に使用可能なものが見出され、安価な製造プロセス(低温での製膜化や希少元素を必要としない)、素子の軽量化、材料の多様性、大面積化・薄型化、環境負荷の低減(例えば毒性のある元素を含有しない)、高集積化等が期待され、研究が盛んになっている。
【0004】
OFETに用いられる材料には、高いキャリア移動度(デバイスの高性能化)と優れた溶解性(塗工プロセスの容易性)が求められるが、両方を兼ね備えることは難しいという問題があった。
【0005】
特許文献1〜4には、チオフェン環を有する化合物が開示され、有機薄膜トランジスタに有用であると記載されている。しかし、これらのチオフェン環を有する化合物は、製造が困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−010541号公報
【特許文献2】特開2008−140989号公報
【特許文献3】特表2008−543736号公報
【特許文献4】特開2009−152383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、製造が容易であり、有機半導体材料として半導体素子に用いた際に高いキャリア移動度を実現できる新規な化合物、並びに該化合物を用いた有機半導体材料、有機半導体層及び有機半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するビベンゾ[b]フラン化合物は、製造が容易で製造コストが小さく、しかも、溶解性に優れるため、有機半導体材料に使用すると、有機半導体層を容易に製造できることを知見した。さらに検討を進めた結果、該有機半導体層を有する有機半導体素子は、高いキャリア移動度を示し、上記課題を解決し得ることを知見した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物を提供するものである。
【0010】
【化1】

【0011】
また、本発明は、上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物を少なくとも一種含有してなる有機半導体材料、及び該有機半導体材料を製膜してなる有機半導体層を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、上記有機半導体層を少なくとも1層有する有機半導体素子を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コストで製造可能で、しかも溶解性に優れる、有機半導体材料として有用な新規なビベンゾ[b]フラン化合物を提供することができる。該化合物を含有する本発明の有機半導体材料を用いれば、優れた溶解性により、半導体製造における塗工プロセスが容易になり、且つ、高いキャリア移動度により、素子の高性能化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の有機半導体素子の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例で作製した有機薄膜トランジスタ素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物、該ビベンゾ[b]フラン化合物を少なくとも一種含有する有機半導体材料、有機半導体層、及び有機半導体素子について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0016】
本発明のビベンゾ[b]フラン化合物は、上記一般式(I)で表される化合物である。上記一般式(I)において、R1とR2、R3〜R8、Y1とY2、Z1とZ2のそれぞれは、同一でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0017】
上記一般式(I)におけるR1〜R8で表される炭素原子数1〜30のアルキル基は、直鎖でも分岐でもよく、また環状でもよい。また、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−へプタデシル、n−オクタデシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、1−ブチルオクチル、2−ブチルオクチル、3−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−デシルヘキサデシル、トリフルオロメチル等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)におけるR1〜R8で表される炭素原子数6〜30のアリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセン−1−イル、アントラセン−2−イル、ナフタセン−1−イル、ナフタセン−2−イル、ペンタセン−1−イル、ペンタセン−2−イル、フェナントレン−1−イル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,5−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェニル、2,5−ジ−t−アミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル、2−フルオロフェニル、3−フルオロフェニル、4−フルオロフェニル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−ブロモフェニル、3−ブロモフェニル、4−ブロモフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、パーフルオロフェニル等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)におけるR1〜R8で表される炭素原子数3〜30の複素環基としては、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)におけるR1及びR2で表される炭素原子数3〜20のトリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)におけるR1〜R8で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)におけるR3〜R8で表される炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、メトキシメトキシ、メトキシエトキシメトキシ、メチルチオメチル、エトキシ、ビニルオキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、t−ブトキシカルボニルメトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、イソトリデシルオキシ、ミリスチルオキシ、パルミチルオキシ、ステアリルオキシ等の直鎖、分岐及び環状のアルコキシ基が挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)におけるR3〜R8で表される炭素原子数1〜20のチオアルキル基としては、例えば、チオメチル、チオエチル、チオプロピル、チオイソプロピル、チオブチル、チオ−s−ブチル、チオ−t−ブチル、チオイソブチル、チオアミル、チオイソアミル、チオ−t−アミル、チオヘキシル、チオヘプチル、チオイソヘプチルチオシクロヘキシル等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられる。
【0024】
上記一般式(I)におけるR3〜R8で表される炭素原子数7〜30のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル、4−クロロフェニルメチル等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)におけるY1、Y2、Z1、Z2で表される炭素原子数6〜30のアリーレン基は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アリーレン基の具体例としては、例えば、1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロフェニレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、4,4’−ビフェニレンが挙げられる。
【0026】
上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物の中でも、R3〜R8が水素原子の化合物;R1とR2、Y1とY2、Z1とZ2のそれぞれが同一である化合物は、製造が特に容易であるため好ましい。また、−Y1−Z1−、−Y2−Z2−が、直接結合又は−S−である化合物も、製造が特に容易であるため好ましい。
【0027】
1及びR2が炭素原子数1〜20(特に1〜16)のアルキル基であるものは、溶解度に優れるため好ましい。
また、R1及びR2が炭素原子数3〜20(特に5〜10)のトリアルキルシリル基であるものは、有機半導体材料に用いた際にとりわけ高いキャリア移動度を実現することができるため好ましい。Y1とZ1が、直接結合と−C≡C−、−CH=CH−若しくは炭素原子数6〜30(特に6〜20)のアリーレン基との組み合わせ;又は−C≡C−若しくは−CH=CH−と該アリーレン基との組み合わせであるものも、有機半導体材料に用いた際にとりわけ高いキャリア移動度を実現することができるため好ましい(Y2とZ2についても同様である)。
【0028】
上記一般式(I)で表される、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜No.24が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物は、何れも、その製造方法に制限されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物の製造方法の一例を以下に挙げる。
【0033】
先ず、上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物における3,4:3’4’−ビベンゾ[b]フラン骨格(化合物No.1)を、例えば下記反応ルートの如く、アントラルフィンからジエーテル化、加水分解、環化反応の3工程を経て製造する。R3〜R8の導入は、例えば1,5−ジアミノ−4,8−ヒドロキシアントラキノンから、保護基導入、ハロゲン化反応、置換基とのカップリング反応の3工程の反応により可能である。
【0034】
【化5】

【0035】
次に、得られた3,4:3'4'−ビベンゾ[b]フランをハロゲン化してジハロゲン体とし、該ジハロゲン体と、R1−Z1−Y1−及びR2−Z2−Y2−に対応する合成中間体とのカップリング反応を経て、目的のビベンゾ[b]フラン化合物を得ることができる。
また、R1−Z1−Y1−及びR2−Z2−Y2−の構造によっては、ハロゲン化せずに、3,4:3'4'−ビベンゾ[b]フランに対し、直接、R1−Z1−Y1−及びR2−Z2−Y2−に対応する合成中間体とのカップリング反応を行うことができる。
【0036】
本発明のビベンゾ[b]フラン化合物は、有機半導体材料として好適なほか、酸化防止剤等の用途にも使用することができる。
【0037】
本発明の有機半導体材料は、上記一般式(I)で表される本発明のビベンゾ[b]フラン化合物を少なくとも一種含有していれば良い。即ち、本発明の有機半導体材料は、一種又は二種以上の本発明のビベンゾ[b]フラン化合物のみからなっていてもよいし、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物に加えて、必要に応じて一種又は二種以上の溶媒等を含有してもよい。
【0038】
上記溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、アルコール系溶剤、ジオール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、シアノ基を有する炭化水素溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、その他の溶剤等が挙げられる。
【0039】
上記アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、第3ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、2−ペンタノール、ネオペンタノール、第3ペンタノール、ヘキサノール、2−ヘキサノール、ヘプタノール、2−ヘプタノール、オクタノール、2―エチルヘキサノール、2−オクタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、メチルシクロペンタノール、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘプタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、2−(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、3(N,N−ジメチルアミノ)プロパノール等が挙げられる。
【0040】
上記ジオール系溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、イソプレングリコール(3−メチル−1,3−ブタンジオール)、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、オクタンジオール(2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0041】
上記ケトン系溶剤としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、エチルブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0042】
上記エステル系溶剤としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第2ブチル、酢酸第3ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸第3アミル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸第2ブチル、プロピオン酸第3ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸第3アミル、プロピオン酸フェニル、2−エチルヘキサン酸メチル、2−エチルヘキサン酸エチル、2−エチルヘキサン酸プロピル、2−エチルヘキサン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸メチル、メトキシプロピオン酸エチル、エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第2ブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート、ブチレングリコールモノ第3ブチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、オキソブタン酸メチル、オキソブタン酸エチル、γ−ラクトン、マロン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、プロピレングリコールジアセテート、δ−ラクトン等が挙げられる。
【0043】
上記エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。
【0044】
上記脂肪族又は脂環族炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカリン、ソルベントナフサ、テレピン油、D−リモネン、ピネン、ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株)、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等が挙げられる。
【0045】
上記芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン、クメン、イソブチルベンゼン、シメン、テトラリン等が挙げられる。
【0046】
上記シアノ基を有する炭化水素溶剤としては、アセトニトリル、1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等が挙げられる。
【0047】
上記ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。
【0048】
上記その他の有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、2硫化炭素等が挙げられる。
【0049】
これらのうちでも、好ましい溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。
【0050】
本発明の有機半導体材料に上記溶媒を含有させる場合、その含有量は、該有機半導体材料を用いた有機半導体層の形成に支障が生じない限り特に制限されるものではないが、例えば、上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物100質量部に対し、100質量部以上の範囲から適宜選択することができ、500〜1000000質量部の範囲から適宜選択することが望ましい。しかしながら、上記ビベンゾ[b]フラン化合物は溶解性が高いため、溶媒の含有量が比較的少量であっても、塗工性が良好で且つ有機半導体層の作製効率の良い有機半導体材料とすることができる。この観点からすると、上記溶媒の含有量は、上記ビベンゾ[b]フラン化合物100質量部に対し、好ましくは1000〜100000質量部、さらに好ましくは7000〜20000質量部の範囲から選択することが望ましい。
【0051】
本発明の有機半導体材料には、さらに任意成分として、有機半導体素子における有機半導体層の形成に使用可能な成分を特に制限なく使用することができる。該任意成分の例としては、金属酸化物等が挙げられる。これらの任意成分を含有させる場合、特に制限されるものではないが、有機半導体層の機能を損ねない観点から、上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物100質量部に対し30質量部以下の範囲とすることが好ましい。
【0052】
本発明の有機半導体材料は、各種の有機半導体素子を構成する有機半導体層の形成に有用である。
【0053】
本発明の有機半導体層は、本発明の有機半導体材料を製膜してなる薄膜である。本発明の有機半導体層は、その形成に本発明の有機半導体材料を使用する点以外は、従来の有機半導体層と同様とすることができる。本発明の有機半導体層の形成は、通常、支持体上で行われる。本発明の有機半導体層は、支持体上に形成されたままであってもよいし、また、任意に支持体を取り除き有機半導体層の単独層とされていても良い。尚、本発明の有機半導体材料が上記溶媒を含む場合は、本発明の有機半導体層は、溶媒を取り除く工程を経た層である。
【0054】
本発明の有機半導体層を製造する方法としては、例えば、蒸着法、物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、原子層堆積法(ALD)、原子層エピタキシー法(ALE)、分子線エピタキシー法(MBE)、気相エピタキシー法(VPE)、スパッタ法、プラズマ重合法等のドライプロセス;ディップコート法、キャスト法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、LB法、印刷法、インクジェット法或いはエクストルージョンコート法等のウェットプロセスによって支持体上に塗膜形成する方法が挙げられる。スピンコート法、キャスト法、ディップコート法、インクジェット法、印刷法等は、簡便に有機半導体層を製造可能であり、製造コストが抑えられるため好ましい。
尚、上記ドライプロセスにおいては、上記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物そのもの又は該化合物を上記溶媒中に溶解若しくは分散した溶液の形態の本発明の有機半導体材料が適宜用いられる。上記ウェットプロセスにおいては、上記溶液の形態の本発明の有機半導体材料が用いられる。
【0055】
本発明の有機半導体層の膜厚は特に制限されないが、一般的に1nm〜100μmであり、更に好ましくは1nm〜500nmである。膜厚が1nmより小さい場合、膜に欠陥を生じやすくなり、100μmより大きい場合、リーク電流が増加するため好ましくない。
【0056】
本発明の有機半導体層は常法によりドーピング処理されていても良く、有機半導体層の形成時又は形成後にドーパントを導入してもよい。
【0057】
上記ドーパントとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、金属酸化物、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン等のドナー性ドーパント、ハロゲン化合物、遷移金属化合物、電解質アニオン等のアクセプター性ドーパントが挙げられる。
【0058】
上記支持体としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、樹脂基板、石英、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等が挙げられる。
【0059】
本発明の有機半導体素子は、本発明の有機半導体層を少なくとも1層有していれば特に限定されるものではなく、この点を除いては従来の有機半導体素子と同様とすることができる。本発明の有機半導体素子の構成例を、図1及び図2に断面図として示す。
【0060】
図1(a)はボトムゲート−トップコンタクト型を表し、図1(b)はボトムゲート−ボトムコンタクト型を表し、図1(c)及び(d)はトップゲート−ボトムコンタクト型を表し、図1(e)及び(f)はボトムゲート−トップ&ボトムコンタクト型を表し、図1(g)は縦型静電誘導トランジスタ(SIT:Static Induction Transistor)を表す。図2は、図1(a)のボトムゲート−トップコンタクト型の変形例である。図1及び図2において、11が本発明の有機半導体層である。
【0061】
ゲート電極15としては、白金、金、銀等の貴金属材料;銅、アルミニウム等の金属材料;炭素等の導電性材料;ITO、酸化錫、フッ素ドープされた酸化錫等の透明導電材料;ドーピング処理された導電性ポリマー;高濃度にn型ドープされたシリコンウェハー、高濃度にp型ドープされたシリコンウェハー等が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、あるいは複数併用してもよい。ゲート電極15層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
【0062】
絶縁層14としては、各種の絶縁材料を用いることができるが、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、酸化タンタル、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、酸化チタン、酸化イットリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、アクリロニトリル共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、シアノエチルプルラン等が挙げられる。絶縁層14層の厚みは、特に限定されないが、500nm以下であり、より好ましくは300nm以下である。絶縁層14は薄膜であるほど良く、100nm以下であることが特に好ましい。尚、12はドレイン電極、13はソース電極、16は基板である。
【0063】
本発明の有機半導体素子は、例えば、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機電界効果トランジスタ(OFET)等の電流制御デバイス、電極等の導電性デバイス、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイや有機レーザー等の発光デバイス、太陽電池等の光電変換デバイス等の各種電子デバイスに用いることができる。これらの中でも、特に、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機電界効果トランジスタ(OFET)等の電流制御デバイスに好ましく用いられる。
【実施例】
【0064】
以下、合成例、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0065】
合成例1は、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物の合成に使用する中間体の合成例であり、合成例2〜13は、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物の実施例である。実施例1〜7及び比較例1、2においては、合成例で得られた化合物又は比較化合物を用いて有機半導体材料を調製し、該有機半導体材料を用いて有機半導体層及び有機半導体素子を作成し、素子の評価を行った。
【0066】
〔合成例1〕ジカルボン酸体の合成
アントラルフィン25.0g(0.10mol)、2−ブタノン470ml、炭酸カリウム54.7g(0.40mol)、ブロモ酢酸エチル60.8g(0.36mol)を仕込んだ溶液を、90℃まで昇温し、6時間反応させた後、室温まで冷却し塩酸を加え、ろ過した。残渣を塩酸、超純水、メタノールにて洗浄した後、減圧にて乾燥させ、茶色結晶42.1gを得た(収率98%)。
引き続き、上記茶色結晶36.0g(0.09mol)、水酸化ナトリウム12.1g(0.30mol)、超純水32.0g、エタノール65g、2−ブタノン600mlを仕込んだ溶液を90℃まで昇温し、6時間反応させた後、室温付近まで冷却し塩酸を加え、残渣をろ過した。この残渣を塩酸、超純水、トルエンにて洗浄した後、減圧にて乾燥させ、黄緑色結晶のジカルボン酸体30.8gを得た(収率99%)。得られた黄緑色結晶がジカルボン酸体であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0067】
1H−NMR(DMSO−D6)δ:13.09(2H、s)、7.80−7.71(4H、m)、7.37(2H、d、J=7.3Hz)、4.91(4H、s)
【0068】
【化6】

【0069】
〔合成例2〕化合物No.1の合成
合成例1で得られたジカルボン酸体200mg(0.56mmol)、4−ピコリン3.6g、無水酢酸3.3gを仕込んだ溶液を175℃まで昇温した後、2時間反応させた。5℃まで冷却し、塩酸、クロロホルムを加え、油水分離し、有機層を塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、超純水にて洗浄した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、ろ過、減圧濃縮した後、薄層クロマトクロマトグラフィー(ヘキサン−クロロホルム)にて化合物No.1の生成を確認した。化合物No.1であることは1H−NMR及び13C−NMRで確認した。また質量分析も行った。分析結果を次に示す。
【0070】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.89(2H、s)、7.42(2H、dd、J=5.8、2.1Hz)、7.32(4H、t、J=3.0Hz)
13C−NMR(CDCl3)δ:154.13、137.91、128.74、126.39、123.63、117.90、117.17、110.23
MS(TOF−MS、Dith):m/z 232.2(100%)、464.3(8%)
MS(TOF−MS、DHB):m/z 232.2(100%)、464.3(14%)
【0071】
〔合成例3〕化合物No.2の合成
窒素雰囲気下、化合物No.1の1.0g(4.3mmol)、ジメチルホルムアミド(DMF)22mlを仕込んだ溶液を0℃まで冷却した後、N−ブロモこはく酸イミド(NBS)1.8g(10.3mmol)のDMF溶液15mlを滴下し、20分間撹拌した。室温まで昇温し2時間反応させ、超純水、トルエンを加え油水分離し、有機層を超純水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、減圧濃縮、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒:ヘキサン−トルエン)、茶色結晶を得た(収率10%)。得られた茶色結晶が目的物である化合物No.2であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0072】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.75(2H、d、J=7.3Hz)、7.39−7.31(4H、m)
【0073】
〔合成例4〕化合物No.3の合成
窒素雰囲気下、化合物No.1の1.0g(4.3mmol)、テトラヒドロフラン(THF)50mlを仕込んだ溶液を−78℃まで冷却した後、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)7.2mL(1.8M、12.9mmol)を滴下し1時間撹拌した。この溶液に、同温度でI23.6g(14.2mmol)をゆっくりと加え、2時間反応させた。超純水、クロロホルムを加え油水分離し、有機層を抽出した。さらにこの抽出液を超純水にて3回洗浄した。チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、更に硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた後、ろ過、減圧濃縮を行い、淡黄色油状物質を得た。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒:トルエン)、茶色結晶を0.42g得た(収率19%)。得られた茶色結晶が化合物No.3であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0074】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.94(2H、t、J=4.0Hz)、7.35−7.35(4H、m)
【0075】
〔合成例5〕化合物No.4の合成
窒素雰囲気下、化合物No.1の400mg(1.72mmol)、THF16mlを仕込んだ溶液を、−60℃まで冷却した後、LDA3.1ml(1.8M、5.5mmol)を滴下し1時間撹拌した。この溶液に、ジヘキシルジスルフィド1.6g(6.9mmol)を加え、1時間反応させた。塩酸、トルエンを加え油水分離し、有機層を超純水、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、減圧濃縮、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒:ヘキサン−トルエン)、乳白色結晶を450mg得た(収率58%)。得られた乳白色結晶が化合物No.4であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0076】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.85(2H、d、J=7.3Hz)、7.35(2H、t、J=7.9Hz)、7.26(2H、t、J=4.0Hz)、3.06(4H、t、J=7.3Hz)、1.74−1.66(4H、m)、1.47−1.40(4H、m)、1.25(8H、dd、J=7.6、4.0Hz)、0.84(6H、t、J=7.0Hz)
【0077】
〔合成例6〕化合物No.7の合成
窒素雰囲気下、化合物No.2の150mg(0.38mmol)、トルエン25mlを仕込んだ溶液を超音波照射し、更にこの溶液に4−ブチルフェニルボロン酸203mg(1.14mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム45mg(0.04mmol)、炭酸カリウム水溶液1.0ml(2.0M、1.9mmol)を加え、100℃で9時間反応させた。塩酸、トルエンを加え油水分離し、有機層を超純水にて2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、減圧濃縮、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒:ヘキサン−トルエン)、黄色結晶を140mg得た(収率76%)。得られた黄色結晶が化合物No.7であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0078】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.92(4H、d、J=7.9Hz)、7.77(2H、d、J=7.3Hz)、7.38(4H、d、J=7.9Hz)、7.31(2H、d、J=7.9Hz)、7.26(8H、t、J=7.9Hz)、2.73(4H、t、J=7.6Hz)、1.74−1.67(4H、m)、1.44(4H、td、J=14.8、7.1Hz)、0.99(6H、t、J=7.6Hz)
【0079】
〔合成例7〕化合物No.22の合成
窒素雰囲気下、化合物No.1を500mg(1.72mmol)、THF20mlを仕込んだ溶液を、−78℃まで冷却した後、LDA3.8ml(1.8M、6.9mmol)を滴下し1時間撹拌した。この溶液に、ジメチルジスルフィド0.81g(8.6mmol)を加え、1時間反応させた。塩酸、トルエンを加え油水分離し、有機層を超純水、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、減圧濃縮、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒:ヘキサン−トルエン)、乳白色結晶を780mg得た(収率99%)。得られた乳白色結晶が化合物No.22であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0080】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.76(2H、d、J=7.9Hz)、7.34(2H、t、J=7.6Hz)、7.24(4H、d、J=5.5Hz)、2.64(6H、s)
【0081】
〔合成例8〜11〕化合物No.11、12、13及び23の合成
合成例6で用いた4−ブチルフェニルボロン酸を各々対応するボロン酸に変更した以外は合成例6と同様の手順で化合物No.11、12、13及び23を得た。同定は、1H−NMRにて行った。分析結果を次に示す。
【0082】
化合物No.11:
1H−NMR(CDCl3)δ:8.09(4H、d、J=7.9Hz)、7.85(2H、d、J=7.3Hz)、7.80(4H、d、J=8.5Hz)、7.63(4H、d、J=7.9Hz)、7.33(8H、t、J=8.8Hz)、2.69(4H、s)、1.70−1.67(4H、br m)、1.27−1.25(16H、br m)、0.91−0.89(6H、m)
化合物No.12:
1H−NMR(CDCl3)δ:8.46(2H、s)、8.10(4H、t、J=12.2Hz)、7.98(2H、d、J=8.5Hz)、7.87(4H、dd、J=17.7、7.9Hz)、7.61(2H、d、J=9.8Hz)、7.40−7.30(4H、m)、1.20−1.19(42H、m)
化合物No.13:
1H−NMR(CDCl3)δ:8.11(2H、d、J=7.9Hz)、7.85(2H、d、J=7.3Hz)、7.80(4H、d、J=8.5Hz)、7.66(4H、t、J=4.0Hz)、7.61(4H、d、J=8.5Hz)、7.38−7.29(4H、m)、1.17(36H、s)
化合物No.23:
1H−NMR(CDCl3)δ:7.61(2H、d、J=7.9Hz)、7.57(4H、d、J=7.9Hz)、7.43−7.41(6H、m)、7.31(2H、d、J=8.5Hz)、7.25(4H、d、J=7.9Hz)、2.65(4H、t、J=7.6Hz)、1.66(4H、q、J=7.3Hz)、1.36−1.36(8H、m)、0.91(6H、t、J=7.0Hz)
【0083】
〔合成例12〕化合物No.9の合成
窒素雰囲気下、化合物No.3の500mg(0.27mmol)、トルエン14mlを仕込んだ溶液を超音波照射し、更にこの溶液にトリイソプロピルシリルアセチレン148mg(0.81mmol)、ヨウ化銅11mg(0.054mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド19mg、ジイソプロピルエチルアミン52mg(0.41mmol)を仕込み、100℃で9時間反応させた。反応後、塩酸、トルエンを加え油水分離し、有機層を抽出し、さらにこの抽出液を超純水にて2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、減圧濃縮を行い、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒:ヘキサン−トルエン)、黄色結晶を得た(収率90%)。得られた黄色結晶が化合物No.9であることは1H−NMRで確認した。分析結果を次に示す。
【0084】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.80(2H、d、J=7.3Hz)、7.42(2H、t、J=7.9Hz)、7.30(2H、d、J=7.9Hz)、1.25−1.22(2H、m)
【0085】
〔合成例13〕化合物No.24の合成
合成例12で用いたトリイソプロピルシリルアセチレンを対応するアセチレンに変更した以外は合成例12と同様の手順で化合物No.24を得た。同定は、1H−NMRにて行った。分析結果を次に示す。
【0086】
1H−NMR(CDCl3)δ:7.83(2H、d、J=7.9Hz)、7.59(4H、d、J=7.9Hz)、7.46(2H、t、J=7.9Hz)、7.33(2H、d、J=8.5Hz)、7.25(4H、d、J=6.7Hz)、2.67(4H、t、J=7.9Hz)、1.66−1.64(4H、m)、1.35−1.33(8H、m)、0.90(6H、t、J=7.0Hz)
【0087】
〔実施例1〕
クロロホルム1mlに対し化合物No.9を10mgの割合で溶解して、溶液状の有機半導体材料を得た。この有機半導体材料を用いて、図2に示す層構成を有する有機薄膜トランジスタ(OTFT)素子を、以下の手順で作製した。
厚さ300nmのシリコン酸化膜(絶縁層14)が形成されたn型ドープシリコン基板(基板16、ゲート電極15)をUVオゾン処理した後、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理し自己組織化膜を作成した(以下、自己組織化膜まで形成されたものをSi処理基板と称する)。大気中にてSi処理基板上に、化合物No.9を含有する溶液状の上記有機半導体材料を滴下し、スピンコート法により有機半導体層11を厚さ25〜30nmとなるように形成した。有機半導体層11の表面にパターニングされたニッケルマスクを重ね、金を真空蒸着することにより、電極となるソース電極12及びドレイン電極13を形成した。このソース電極12及びドレイン電極13は、チャネル幅5mm、チャネル長20μmとした。
【0088】
作製したOTFT素子は、負のゲート電圧を印加するに従い、ドレイン電流が増強するpチャネル−エンハンス型の動作特性を示した。作製したOTFT素子において、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度(電荷移動度)を求め、更にOn/Off比(Vd=−80Vとし、Vgを−80〜0Vにした時のドレイン電流値の比)を算出した。また、OTFT素子を70℃、30分間の条件下で加熱(アニール処理)した時の、キャリア移動度及びOn/Off比についても測定した。それらの結果を表1に記載した。
【0089】
〔実施例2〜6〕
実施例1で用いた化合物No.9を表1に記載の化合物に変更した以外は実施例1と同様の方法でOTFT素子を作製し、その評価を行った。
【0090】
〔比較例1〕
実施例1で用いた化合物No.9をペンタセンに変更した以外は実施例1と同様の方法でOTFT素子を作製した。
【0091】
〔比較例2〕
実施例1で用いた化合物No.9をα−セキシチオフェンに変更した以外は実施例1と同様の方法でOTFT素子を作製した。
【0092】
【表1】

【0093】
比較例1及び2で用いた比較化合物は、クロロホルムに溶解しなかったため製膜できず、OTFT特性の測定が不可能であった。これに対し、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物は溶解性に優れ、〔表1〕の結果から明らかなように、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物を含有する有機半導体材料を用いたOTFT素子はキャリア移動度及びOn/Off比に優れ、加熱してもOTFTとしての特性を示した。
【0094】
〔実施例7〕
図2に示す層構成を有する有機薄膜トランジスタ(OTFT)素子を、以下の手順で作製した。
Si処理基板上に、有機半導体材料としての化合物No.7を高真空下(10-4〜10-3Pa)にて、蒸着速度0.02nm/secで30nm積層し、有機半導体層11とした。この有機半導体層11の表面にパターニングされたニッケルマスクを重ね、金を用いて真空蒸着することにより、ソース電極12及びドレイン電極13を形成して、OTFT素子とした。このソース電極12及びドレイン電極13は、チャネル幅W=5mm、チャネル長20μmにて形成した。
【0095】
作製したOTFT素子は、負のゲート電圧を印加するに従い、ドレイン電流が増強するpチャネル−エンハンス型の動作特性を示した。I−V特性の飽和領域から電荷移動度を求め、更にOn/Off比(Vd=−80Vとし、Vgを−80〜0Vにしたときのドレイン電流値の比)を算出したところ、電荷移動度4.3×10-3cm2/Vs、On/Off比105の値を示した。また、このOTFT素子を70℃、30分間の条件で加熱した後、同様に評価したところ、電荷移動度6.3×10-3cm2/Vs、On/Off比104の値を示した。
【0096】
実施例1〜7の結果から明らかなように、本発明のビベンゾ[b]フラン化合物は溶解性に優れ、ウェットプロセスによる製膜に適するのみならず、真空蒸着等のドライプロセスによっても製膜が可能であり、いずれのプロセスで作製した有機半導体素子も高いキャリア移動度を示す。従って、本発明の特定の構造を有するビベンゾ[b]フラン化合物は有機半導体素子に有用であることは明白である。
【符号の説明】
【0097】
11 有機半導体層
12 ソース電極
13 ドレイン電極
14 絶縁層
15 ゲート電極
16 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるビベンゾ[b]フラン化合物。
【化1】

【請求項2】
1とR2、Y1とY2、Z1とZ2のそれぞれが同一である請求項1に記載のビベンゾ[b]フラン化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のビベンゾ[b]フラン化合物を少なくとも一種含有してなる有機半導体材料。
【請求項4】
請求項3に記載の有機半導体材料を製膜してなる有機半導体層。
【請求項5】
請求項4に記載の有機半導体層を少なくとも1層有する有機半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195566(P2011−195566A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30839(P2011−30839)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】