説明

有機エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】外光による光電流の発生を抑制するとともに、バックチャネルの影響によるトランジスタ特性の変動やショート不良を防止する。
【解決手段】絶縁基板10上に、非導電材料から成る遮光膜70が形成される。遮光膜70を覆ってバックゲート絶縁膜11が形成される。このバックゲート絶縁膜11上に能動層33が形成される。その能動層33を覆ってゲート絶縁膜12が形成され、そのゲート絶縁膜12上にゲート電極31が形成される。遮光膜70は、バックゲート絶縁膜11を間に挟んで能動層33を覆って配置され、絶縁基板10を通して能動層33へ入射しようとする外光を遮光する働きをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画素毎に薄膜トランジスタを備えた有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTやLCDに代わる表示装置として、自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略称する)を用いた有機EL表示装置が開発されている。特に、ビデオ信号に応じて有機EL素子を駆動する薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と略称する)を画素毎に備えたアクティブマトリクス型の有機EL表示装置が開発されている。
【0003】
TFTは、ガラス基板上に形成される。このため、このガラス基板を通して有機EL素子からの光が放射されるボトムエミッション型の有機EL表示装置では、ガラス基板を通して外光がTFTの能動層に入射する。この外光が強いと、能動層内でキャリアを励起して、ソースドレイン間に光電流(オフリーク電流)が流れ、クロストーク等の発生により、表示コントラストが劣化するという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されているように、TFTの能動層へ入射する外光を遮光する遮光膜を設けることで、光電流の生成を抑止するようにした技術が知られている。
【特許文献1】特開2004−134356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、遮光膜を導電材料で形成すると、バックチャネルの影響により、TFTの特性(例えば、閾値)の変動が生じ、あるいは遮光膜と能動層とのショートにより表示不良が発生するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、絶縁基板上に形成され、前記絶縁基板を通して光を放出するエレクトロルミネッセンス素子と、前記エレクトロルミネッセンス素子を駆動する薄膜トランジスタとを備え、前記薄膜トランジスタは、前記絶縁基板上に形成された半導体層と、前記絶縁基板上に形成され、前記絶縁基板を通して前記半導体層に入射する外光を遮光する非導電材料からなる遮光膜と、前記遮光膜と前記半導体層の間に挟まれたバックゲート絶縁膜と、前記半導体層のチャネル領域を覆って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置によれば、薄膜トランジスタの半導体層に入射する外光を遮光する非導電材料からなる遮光膜を設けたので、外光による光電流の発生を抑制することができるとともに、バックチャネルの影響によるトランジスタ特性の変動やショート不良を防止することができる。これらにより、表示不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
「第1の実施形態」
次に、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置の画素の構造について説明する。図1
に有機EL表示装置の画素の平面図を示し、図2(a)に図1中のA−A線に沿った断面図を示し、図2(b)に図1中のB−B線に沿った断面図を示す。
【0009】
図1に示す如く、ゲート信号線51とドレイン信号線52との交差点に対応して画素100が形成されており、これらの画素100はマトリクス状に配置されている。画素100内には、有機EL素子60と、この有機EL素子60に電流を供給するタイミングを制御する画素選択用TFT30と、有機EL素子60に電流を供給する駆動用TFT40と、保持容量56とが配置されている。
【0010】
画素選択用TFT30のソース33sは保持容量電極線54との間で容量をなす容量電極55を兼ねるとともに、駆動用TFT40のゲート電極41に接続されており、駆動用TFT40のソース43sは有機EL素子60のアノード層61に接続され、他方のドレイン43dは有機EL素子60に供給される電流源である駆動電源線53に接続されている。
【0011】
また、ゲート信号線51と並行に保持容量電極線54が配置されている。この保持容量電極線54はクロム等から成り、ゲート絶縁膜12を介してTFT30のソース33sと接続された容量電極55との間で電荷を蓄積する容量を成している。この保持容量56は、駆動用TFT40のゲート電極41に印加される電圧を保持するために設けられている。
【0012】
次に、上記の画素選用TFT30について図2を参照して説明する。石英ガラス、無アルカリガラス等からなる絶縁基板10上に、非導電材料から成る遮光膜70が形成される。非導電材料としては非晶質シリコン(以下、「a−Si」と称する。)が好ましいが、この他に、シリコン窒化物(SiN)や黒色等の顔料を含んだエポキシ樹脂などでもよい。a−Siからなる遮光膜70は、a−Si膜をCVD法等にて成膜して、パターニングを行うことで形成される。その後、遮光膜70を覆ってSiO膜、SiN膜の単層あるいは積層膜からなるバックゲート絶縁膜11が形成される。
【0013】
このバックゲート絶縁膜11上にもう一度、a−Si膜がCVD法等にて成膜される。そのa−Si膜にレーザー光を照射して溶融再結晶化させて多結晶シリコン膜(以下、「p−Si膜」と称する。)とし、これを能動層33とする。その能動層33上には、SiO2膜、SiN膜の単層あるいは積層膜がゲート絶縁膜12として形成され、そのゲート絶縁膜12上に、Cr、Moなどの高融点金属からなるゲート電極31が形成される。ゲート電極31の下方の能動層33がチャネル領域33cとなる。
【0014】
前記遮光膜70は、バックゲート絶縁膜11を間に挟んで能動層33を覆って配置され、絶縁基板10を通して能動層33へ入射しようとする外光を遮光する働きをする。外光による光電流は主に、TFTのチャネル領域33cの端で発生するので、遮光膜70は図3に示すように、チャネル領域33cの端から2μm以上拡張されて形成されることが遮光効果を高める上で好ましい。
【0015】
また、遮光膜70がa−Siからなる場合には、その厚さは250Å以上、600Å以下であることが好ましい。膜厚を250Å以上に設定するのは、遮光率を確保するためであり、膜厚を600Å以下に設定するのは、膜厚が厚くなるとバックゲート絶縁膜の被覆性が悪くなり、能動層をレーザー照射により結晶化する際、溶融、再結晶化の過程で膜厚が不均一となり遮光膜の段差による断線等の不良が発生しやすくなるためである。
【0016】
そして、ゲート絶縁膜12及び能動層33上の全面には、SiO2膜、SiN膜及びSiO2膜の順に積層された層間絶縁膜15が形成される。層間絶縁膜15にはドレイン3
3dに対応して設けたコンタクトホールにAl等の金属を充填したドレイン電極36(ドレイン信号線52)が設けられる。また、層間絶縁膜15上には駆動電源線53が形成される。その上に、有機樹脂から成り表面を平坦にする平坦化絶縁膜17が形成されている。
【0017】
次に、駆動用TFT40について図2(b)を参照して説明する。前記絶縁性基板10上に、a−Si膜にレーザー光を照射して多結晶化してなる能動層43、ゲート絶縁膜12、及びCr、Moなどの高融点金属からなるゲート電極41が順に形成されており、その能動層43には、チャネル領域43cと、このチャネル領域43cの両側にソース43s及びドレイン43dが設けられている。そして、ゲート絶縁膜12及び能動層43上の全面に、層間絶縁膜15を形成し、ドレイン43dに対応して設けたコンタクトホールにAl等の金属を充填して駆動電源に接続された駆動電源線53が配置されている。更に全面に平坦化絶縁膜17が形成されている。そして、その平坦化絶縁膜17のソース43sに対応した位置にコンタクトホールを形成し、このコンタクトホールを介してソース43sとコンタクトしたITOから成る透明電極、即ち有機EL素子のアノード層61を平坦化絶縁膜17上に設けている。このアノード層61は表示画素ごとに島状に分離形成されている。
【0018】
有機EL素子60は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極から成るアノード層61、MTDATA(4, 4-bis(3-methylphenylphenylamino)biphenyl)から成る第1ホール輸送層、TPD(4,4,4-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylanine)からなる第2ホール輸送層から成るホール輸送層62、キナクリドン(Quinacridone)誘導体を含むBebq2(10-ベンゾ〔h〕キノリノール−ベリリウム錯体)から成る発光層63、及びBebq2から成る電子輸送層64、マグネシウム・インジウム合金もしくはアルミニウム、もしくはアルミニウム合金から成るカソード層65が、この順番で積層形成された構造である。有機EL素子60は、アノード層61から注入されたホールと、カソード層65から注入された電子とが発光層の内部で再結合し、発光層を形成する有機分子を励起して励起子が生じる。この励起子が放射失活する過程で発光層から光が放たれ、この光が透明なアノード層61から絶縁基板10を介して外部へ放出されて発光する。
【0019】
この駆動用TFT40についても前記画素選択用TFT30の遮光膜70と同様の遮光層を設けてもよい。
【0020】
「第2の実施形態」
図6に90000lxの光をTFTに照射した際に発生する光電流を調べた結果を示す。遮光膜がない場合に発生する光電流を1.0とし、それに対する相対値で示している。200Å程度の膜厚でも遮光の効果はあるが、400Å以上の膜厚を用いると遮光性が高くなり、600Å以上では更に遮光性が高くなり、約2000Åで金属膜と同等の遮光性が得られることがわかる。従って、非導体膜による遮光膜を用いた場合でも、厚い膜厚を採用したい場合がある。しかし、前述したように能動層の被覆性の問題が生じる。
【0021】
そこで、第2の実施形態においては、能動層33とそれに連なる容量電極55の全体を覆うようにする。つまり、能動層と一体になっている多結晶シリコン膜全体を覆うようにする。図4に平面図、図5に図4中のA−A線に沿った断面図を示す。遮光膜80が第1の実施形態の遮光膜70より大きくなっている以外は、第1の実施形態と符号は共通である。このように遮光すると、多結晶シリコン膜の被覆性の悪化という問題が生じなくなるので、第1の実施形態と比較して膜厚を厚くすることが可能となり、遮光性の高い遮光膜を得ることが可能となる。本実施形態では、遮光能力、成膜の容易さ、段差被覆性などを考慮すると、遮光膜の膜厚は400Å〜2000Åとするのが好ましい。
【0022】
なお、本実施例では、画素選択用TFTを構成する半導体層と保持容量を構成する半導体層が一体となっており、一体となった半導体層全体を遮光するように遮光膜を設けた。しかし、これらが配線等で接続されて島状に分離している場合や画素選択TFT以外の駆動用TFTやその他の用途に用いるTFTがある場合、それぞれの要素毎に遮光膜を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の画素の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る有機EL表示装置の画素の断面図である。
【図3】図1の画素選択用TFTの拡大平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置の画素の平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る有機EL表示装置の画素の断面図である。
【図6】遮光膜の膜厚と外光がTFTの能動層に入射した際に発生するオフ電流との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0024】
10 絶縁基板 11 バックゲート絶縁膜 12 ゲート絶縁膜
15 層間絶縁膜 17 平坦化絶縁膜 30 画素選択用TFT 31 ゲート電極 32 ゲート絶縁膜 33 能動層
36 ドレイン電極 40 駆動用TFT 41 ゲート電極
43 能動層 51 ゲート信号線 52 ドレイン信号線
53 駆動電源線 54 保持容量電極線 55 容量電極
56 保持容量 60 有機EL素子 61 アノード層
62 ホール輸送層 63 発光層 64 電子輸送層
65 カソード層 70、80 遮光膜 100 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に形成され、前記絶縁基板を通して光を放出する有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を駆動する薄膜トランジスタとを備え、
前記薄膜トランジスタは、前記絶縁基板上に形成された半導体層と、前記絶縁基板上に形成され、前記絶縁基板を通して前記半導体層に入射する外光を遮光する非導電材料からなる遮光膜と、前記遮光膜と前記半導体層の間に挟まれたバックゲート絶縁膜と、前記半導体層のチャネル領域を覆って形成されたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極とを備えることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記非導電材料はアモルファスシリコンであることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記遮光膜の厚さが250Å以上、600Å以下であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記遮光膜は前記チャネル領域の端から2μm以上拡張されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記遮光膜は前記半導体層全体を遮光するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記遮光膜の厚さが400Å以上、2000Å以下であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記遮光膜は、薄膜トランジスタを構成する半導体層と一体となっている半導体層全体を遮光することを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
前記遮光膜は、保持容量や他のTFTを構成する半導体層を遮光することを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−114726(P2007−114726A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91900(P2006−91900)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】