説明

有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法

【課題】本発明は、優れた放熱性、絶縁性を有する成形物を提供することを課題とする。
【解決手段】金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの溶液と、片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンの溶液または片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有する液状ポリオルガノシロキサンとを混合し、反応を行なって液状有機・無機ハイブリッド低縮合物あるいは有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液を調製し、該液状有機・無機ハイブリッド低縮合物または有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液に無機充填材を添加して25℃のアスカーC硬度を20以上90以下のペースト状成形材料を調製し、該ペースト状成形材料を上型と下型とからなる成形装置の下型上に載置し、プレス成形によって所定の形状に成形すると共に該ペースト状成形材料に含まれる揮発成分を外界に逃散せしめかつ該有機・無機ハイブリッド低縮合物を硬化せしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の有機・無機ハイブリッド成形物を成形するには、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、あるいはジメチルジエトキシシラン等のシロキサン結合を有する有機化合物と、Ti、Al、Zr、Ta、Nb等の金属のアルコキシドとを無溶媒状態で縮合反応させて有機・無機ハイブリッド片を調製し、該有機・無機ハイブリッド片を容器状の型に入れて蓋をして加圧加熱し、その後得られた成形物を型より取り出す方法が提供されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−130863号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、成形材料が片体であるために容器状の型を使用しなければならず、したがって成形物の形状が制限されること、実質的に密閉した状態で有機・無機ハイブリッドの縮合反応が行われるために縮合反応によって生成した水、アルコールあるいは未反応の低分子化合物等の揮発成分が逃散しにくくなり、蓋を開けて密閉状態を解除した時に該揮発成分が一気に逃散して、その結果得られる成形物がスポンジ状になり、機械的強度が小さく実用的にみて問題があること等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決して高強度で柔軟性を有する成形物を提供することを目的とし、金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの溶液と、
片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンの溶液または片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有する液状ポリオルガノシロキサンとを混合し、反応を行なって液状有機・無機ハイブリッド低縮合物あるいは有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液を調製し、
該液状有機・無機ハイブリッド低縮合物または有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液に無機充填材を添加して25℃のアスカーC硬度を20以上90以下のペースト状成形材料を調製し、
該ペースト状成形材料を上型と下型とからなる成形装置の下型上に載置し、プレス成形によって所定の形状に成形すると共に該ペースト状成形材料に含まれる揮発成分を外界に逃散せしめかつ該有機・無機ハイブリッド低縮合物を硬化せしめることを特徴とする有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法を骨子とするものである。
該類金属アルコキシドはトリエトキシシランであることが望ましく、また該ポリオルガノシロキサンは片末端または両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンであることが望ましい。更に該無機充填剤は酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素および/または窒化ホウ素であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明において使用する有機・無機ハイブリッドは、金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドと、片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンとの縮合反応物であって、無機部分として金属−酸素−金属結合鎖を有し、有機部分としてシロキサン骨格の側鎖であるメチル基、エチル基、イソプロピル基等のオルガノ基を有し、無機部分に由来する無機的性質とオルガノ基に由来する有機的性質とを併せ有することから、この縮合物を有機・無機ハイブリッドと称する。
【0007】
上記有機・無機ハイブリッドは、上記したように無機的性質と有機的性質とを併せ有するので、耐熱性、放熱性、絶縁性に優れ、また有機材料、無機材料を問わず優れた接着性を示す。
更に上記アルコキシドと上記ポリオルガノシロキサンとの比率を変えることによって、有機性/無機性の調節、硬度の調節等が広い範囲で可能である。
【0008】
本発明の有機・無機ハイブリッド成形物を製造するには、上記金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドと、上記ポリオルガノシロキサンとの反応を行って液状有機・無機ハイブリッド低縮合物または有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液を調製し、該液状有機・無機ハイブリッド低縮合物または有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液に無機充填材を添加して25℃のアスカーC硬度が20以上90以下のペースト状成形材料を調製し、該ペースト状成形材料を上型と下型とからなる成形装置の下型上に載置し、プレス成形によって所望の形状に成形するが、このようなプレス成形は開放状態で行われるので、該ペースト状成形材料に含まれる揮発成分はプレス工程中に外界に揮散し、得られる成形物はスポンジ状にならない。上記プレス工程において、該ペーストの硬度が20に満たない場合には流動性が大きくなり、かつプレス圧によって液状物が搾出され所定の形状に成形することが困難になり、また硬度が90を越えると該ペーストが硬くなり流動性が不足して亀裂が生じ易くなり所望の形状に成形することが困難になり、あるいは未焼成のグリーン成形物がひび割れるおそれがある。
【0009】
〔効果〕
本発明にあっては、所望の形状を有しかつ機械的強度の大きな有機・無機ハイブリッド成形物を容易に製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔金属または類金属アルコキシド〕
本発明で使用される金属アルコキシドの金属の種類としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、ランタン、セリウム、カドミウム、タンタル、タングステン等のアルコキシドを形成し得る金属、類金属アルコキシドの類金属の種類としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム等のアルコキシドを形成し得る類金属が挙げられるが、特に望ましい金属または類金属はチタン、ジルコニウム、ケイ素である。
またアルコキシドの種類としては特に限定されることなく、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類が挙げられる。
上記金属または類金属アルコキシドはアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル等のアセト酢酸エステル等の化学修飾剤によって化学修飾されることが望ましい。
【0011】
〔ポリオルガノシロキサン〕
本発明に使用されるポリオルガノシロキサンは、主鎖の片末端または両末端に上記アルコキシドと反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンであって、該ポリオルガノシロキサンはシロキサン骨格の側鎖に例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基を有する化合物である。一般に使用されるポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン(以下PDMSと略称する)がある。そして上記アルコキシドと反応可能な官能基として一般的なものは、シラノール基であるが、それ以外に例えば以下に示される官能基(化学式1〜化学式12)が適用されてもよい。
【0012】
【化1】


但し、X=−OCH3、−OC2H5等のアルコキシル基、
−Cl、Br等のハロゲン原子
【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

【0021】
【化10】

【0022】
【化11】

【0023】
【化12】

【0024】
本発明のPDMSは、主鎖の両末端または片末端に上記金属または類金属のアルコキシドと反応可能なシラノール基を有するものであり、一般にGPC(ゲル浸透クロマトグラフ)東ソーSC8010によって測定した質量平均分子量が400〜80,000、好ましくは4,000〜60,000、更に好ましくは6,000〜30,000のものが使用されるが、耐熱性の点から見ると、質量平均分子量は15,000以上であることが望ましく、また上記金属アルコキシドまたは類金属アルコキシドとの相溶性や反応性の点から見ると、質量平均分子量20,000〜60,000程度のPDMSの使用が望ましい。
PDMSの質量平均分子量が400を下回るものでは、低分子シロキサンや液状シロキサンを多量に含み、これらが硬化後の有機−無機ハイブリッドポリマーにかなり残存することになるし、硬化後の有機−無機ハイブリッドポリマーが硬く脆くなる。
上記PDMSにあっては、主鎖の両末端または片末端のシラノール基は、炭素数10以下のアルコール、フェノール等で変性されていてもよい。
【0025】
〔有機・無機ハイブリッドの製造〕
有機・無機ハイブリッドを製造するには、まず、所望の金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの加水分解物を含む金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシド溶液と、上記液状のPDMSあるいはPDMS溶液とを混ぜ合わせ、上記PDMSの片末端または両末端の金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドと反応可能な官能基と金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドとの反応を行い、液状有機・無機ハイブリッド低縮合物または有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液を調製する。この溶液のことを以下有機・無機ハイブリッドゾル液と称する。上記PDMSと上記金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドとの反応は加水分解反応を伴う縮合反応であると思われる。
【0026】
具体的には、液状のPDMSあるいはPDMS溶液中に上記金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドあるいは、所望なれば上記化学修飾剤によって修飾された金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの溶液を滴下して縮合反応を行なうが、該縮合反応は80℃以上に加熱して該液状のPDMSあるいはPDMS溶液を低粘度化した状態で行なうことが望ましい。
【0027】
上記PDMS溶液の場合に使用される溶媒は、PDMSや金属アルコキシドまたは類金属アルコキシドの溶解度を考慮して選択されるが、一般的に、メタノール、エタノール等のアルコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシメタノール等のアルコキシアルコール、アセトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等が望ましい。
【0028】
上記金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの上記PDMSに対する添加量は、通常上記金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシド:上記PDMSを1:0.1〜1:10モル比の範囲とし、更に金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドに対して上記PDMSを80体積%程度とすることが望ましい。上記比率範囲よりも金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドが多い場合には、金属または類金属が粒塊を形成して得られる有機・無機ハイブリッド層の平滑性がなくなったり、気孔が形成され、またPDMSが多い場合には無機成分によるシナジー効果が顕著でなくなり、有機成分の特性に近づく。
上記比率よりも金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの添加量が多いと該金属または類金属成分が過剰となり、熱的安定性が極端に低下するおそれがある。
【0029】
上記液状PDMSまたはPDMS溶液に加えられる金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドを化学修飾剤によって化学修飾する場合、該化学修飾剤は金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシド1モルに対して2モル以下の量、望ましくは0.5モル以上1.5モル以下の量で使用される。
【0030】
〔無機充填材〕
本発明に使用される無機充填材としては、例えば、銅、アルミニウム、銀、ステンレス等の金属粉、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化セリウム等の金属酸化物粉、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化クロム、窒化ケイ素、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウム等の金属窒化物、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化鉄、炭化ホウ素等の金属炭化物等の微粒子があり、好ましい無機充填材としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ホウ素、酸化チタン、窒化アルミニウムであり、更に好ましい無機充填材としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、窒化ホウ素であり、通常数平均粒度は0.1μm〜30μm程度、好ましくは2〜15μm、更に好ましくは4〜8μmであり、粒度の異なるものを2種類以上併用することが好ましい。
【0031】
〔その他の添加剤〕
上記有機・無機ハイブリッドには更にガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ロックウール、ウィスカ等の無機繊維や増粘剤、合成樹脂、ゴム、エラストマー等が添加されてもよい。
【0032】
〔ペースト状成形材料の調製〕
本発明のペースト状成形材料は、上記有機・無機ハイブリッドに所定量の上記無機充填材を添加することによってペーストの硬さを、25℃のアスカーC硬度を20以上90以下、望ましくは30以上85以下、さらに望ましくは50以上80以下に調節することによって調製される。上記ペーストのアスカーC硬度は無機充填材の添加量によって調製されるが、通常このような硬度を与える無機充填材の添加量は、上記有機・無機ハイブリッド100に対して400質量部以上2,000質量部以下、望ましくは400質量部以上1,200質量部以下、さらに望ましくは600質量部以上1,000質量部以下である。
この範囲の添加量で得られる成形物は、良好な放熱性(熱伝導性)、絶縁性、あるいは接着性を有する。
【0033】
〔成形〕
成形は、上型、下型からなるプレス成形型において、上記ペーストを下型上に所定量設置して所定形状に成形するプレス成形方法が適用される。成形条件としては、通常プレス圧3MPa以上50MPa以下、望ましくは5MPa以上30MPa以下、プレス温度は常温で行われる場合と、80℃以上300℃以下、望ましくは80℃以上250℃以下で行われる場合とがあり、常温プレスの場合には、得られたグリーン成形物を80℃以上300℃以下、好ましくは150℃以上200℃以下で焼成する。プレス時間は1分以上6時間以下、望ましくは30分以上4時間以下である。
上記ペーストの硬度が25℃アスカーC硬度20に満たないと、該ペーストを下型上に設置した時、該ペーストが自然流動してしまうおそれがあり、またプレスの際に液状物が搾出され所定の形状に成形することが困難になり、一方硬度が90を越えるとペーストの流動性が乏しくなって亀裂が生じ易くなり所望形状に成形することが困難になり、あるいは未焼成のグリーン成形物がひび割れるおそれがある。
【0034】
成形形状は任意でよいが、一般的にはシート状、板状等の成形物に成形される。
本発明の成形物は、例えば放熱シート、絶縁シート等に有用である。
【0035】
以下に本発明を具体的に説明するための実施例について述べる。なお本発明は該実施例にのみ限定されるものではない。
【0036】
〔プレス成形シート作成方法〕
本実施例での有機・無機ハイブリッドゾル液の調製方法は以下の通りである。PDMS(東芝シリコーン製、XF3905、質量平均分子量20,000)0.25molと、テトラエトキシシラン(関東化学製、40863−08)1molと、2−エトキシエタノール(和光純薬工業製、054−01066)4molとを容器内において混合し、攪拌しながら室温から90℃まで暖め、90℃の状態で、純水4mol、2−エトキシエタノール2mol、酢酸0.05molの混合溶液を滴下し、混合した。
その後、90℃で30分間攪拌の後、攪拌しながら40分間室温に放置し、有機・無機ハイブリッドゾル液を調製した。
【0037】
〔充填材量とアスカーC硬度との関係〕
上記ハイブリッドゾル液100質量部に対してアルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−18、数平均粒径18μm):アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−05、数平均粒径5μm):窒化ホウ素(電気化学工業製、SP−2)=57:30:13質量比混合物を表1に示す量で添加してペースト状の混合物を作成し、該混合物のアスカーC硬度を測定し、かつプレス成形可能なプレス圧範囲を求めた。結果を表1、表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
上記プレスは得られた混合物の適量を離型性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(アズワン製ナフロンシート(PTFE)、0,1mm厚)で挟んで半径1.5cmの円形金属金型内に入れた後に、加熱プレス機(井元製作所、小型熱プレス)にて行った。
表2から、アスカーC硬度20以上の混合物は成形可能であることが確認される。
【0041】
上記有機・無機ハイブリッドゾル液に実施例に示す種類、量の無機充填材を添加して乳鉢で混練してペーストを作製した。得られたペーストの適量を離型性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート(アズワン製ナフロンシート(PTFE)、0,1mm厚)で挟んで半径1.5cmの円形金属金型内に入れた後に、加熱プレス機(井元製作所、小型熱プレス)にて下記の実施例、比較例に示す条件でプレスしてシート化した。その後、加熱プレスの時点で硬化が充分でない場合、実施例、比較例にそれぞれ示す熱処理を加えることで、硬化シート体を作製した。
【0042】
(熱伝導率評価方法)
熱伝導率測定系はペルチェ素子冷却用の放熱フィン/ペルチェ素子/アルミブロック/サンプル/アルミブロック/ブロックヒーター構造となっている。2つのアルミブロックそれぞれに穴を開け、熱電対を挿入してヒーター側の温度Th、ペルチェ素子側の温度Tpをそれぞれ測定し、測定サンプルから2cm離れた位置に配置した熱電対で環境温度Tmを測定する。一定のパワーでヒーターを加熱し、(Th+Tp)/2=Tmとなるようにペルチェ素子のパワーを調節する。このときヒーターからサンプルへ伝わる熱量とサンプルからペルチェ素子によって吸収される熱量は等しい(=Q)とみなせる。その後、5分経過後のアルミブロック間の温度差△T=Th−Tpと熱流量Q、ならびにアルミブロックの熱抵抗を考慮して、試料の熱伝導率を計算により求める。
【0043】
〔実施例1〕(室温プレス成形)
上記ハイブリッドゾル液100質量部に対して、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−18、数平均粒径18μm)660質量部、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−05、数平均粒径5μm)340質量部、窒化ホウ素(電気化学工業製、SP−2)150質量部を添加して乳鉢で混練してペーストを作製した。該ペーストの25℃アスカーC硬度は84であった。
プレス条件は室温(25℃)、プレス圧1,3,5,10,20,30,40MPaで上記ペーストを30分間プレスしてシート状に成形した。その後、得られたグリーン成形物を120℃で4時間、200℃で2時間、250℃で5時間焼成することで硬化シートとした。熱伝導率の測定結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3に示すようにシートの熱伝導率はプレス圧5MPaで3.5W/m・K以上になり、更にプレス圧を高くしてもその後は熱伝導率の急激な上昇は見られない。また熱抵抗値はプレス圧10MPa以上で殆んど一定になることが認められる。
【0046】
〔比較例1〕(室温プレス成形)
上記ハイブリッドゾル液100質量部に対して、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−18、数平均粒径18μm)280質量部、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−05、数平均粒径5μm)120質量部、窒化ホウ素(電気化学工業製、SP−2)50質量部を添加して乳鉢で混練してペーストを作製した。該ペーストの25℃アスカーC硬度は18であった。
プレス条件は室温(25℃)、プレス圧30MPaでプレスしたところペーストから液状物が搾出され、シートを成形することは困難であった。そこでプレス圧を1MPaに設定し30分間プレスして0.6mm厚のシート状に成形した。その後、120℃で4時間、200℃で2時間、250℃で5時間焼成することで硬化シートとした。熱伝導率を測定した結果は2.0W/m・Kであった。
【0047】
〔比較例2〕
上記ハイブリッドゾル液100質量部に対して、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−18、数平均粒径18μm)1150質量部、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−05、数平均粒径5μm)580質量部、窒化ホウ素(電気化学工業製、SP−2)280質量部を添加して乳鉢で混練してペーストを作製した。該ペーストの25℃アスカーC硬度は97であった。
プレス条件は室温(25℃)、プレス圧30MPaとしてプレスしたところ、PTFEシートに破れが発生し、あるいはペーストに亀裂が発生し、シート状に成形することは不可能であった。
【0048】
〔実施例2〕(加熱プレス)
上記ハイブリッドゾル液100質量部に対して、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−18、数平均粒径18μm)560質量部、アルミナ(住友化学製スミコランダム、AA−05、数平均粒径5μm)240質量部、窒化ホウ素(電気化学工業製、SP−2)100質量部を添加して乳鉢で混練してペーストを作製した。該ペーストの25℃アスカーC硬度は61であった。
プレス条件は300℃、プレス圧30MPaで6時間プレスして0.6mm厚のシート状に成形した。熱伝導率を測定した結果は3.8W/m・Kであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明においては、優れた放熱性、絶縁性を示す成形物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルコキシドおよび/または類金属アルコキシドの溶液と、
片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有するポリオルガノシロキサンの溶液または片末端または両末端に該アルコキシドと反応可能な官能基を有する液状ポリオルガノシロキサンとを混合し、反応を行なって液状有機・無機ハイブリッド低縮合物あるいは有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液を調製し、
該液状有機・無機ハイブリッド低縮合物または有機・無機ハイブリッド低縮合物の溶液に無機充填材を添加して25℃のアスカーC硬度を20以上90以下のペースト状成形材料を調製し、
該ペースト状成形材料を上型と下型とからなる成形装置の下型上に載置し、プレス成形によって所定の形状に成形すると共に該ペースト状成形材料に含まれる揮発成分を外界に逃散せしめかつ該有機・無機ハイブリッド低縮合物を硬化せしめることを特徴とする有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法。
【請求項2】
該類金属アルコキシドはトリエトキシシランである請求項1に記載の有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法。
【請求項3】
該ポリオルガノシロキサンは片末端または両末端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサンである請求項1または請求項2に記載の有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法。
【請求項4】
該無機充填剤は酸化アルミニウムおよび/または酸化ケイ素および/または窒化ホウ素である請求項1〜請求項3のいづれか1項に記載の有機・無機ハイブリッド成形物の製造方法。

【公開番号】特開2008−120054(P2008−120054A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309769(P2006−309769)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】