説明

有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、同組成物ならびに半導体装置

【課題】耐候性および耐熱性が良く、高温条件下においても長期にわたり光学的透明性を維持することが可能な硬化物を与える有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(工程1)(A)化学改質されていない周期律表第5族の金属アルコキシドと(B)前記(A)成分と反応可能なケイ素原子に直接結合する水酸基を有する有機ケイ素化合物との混合物〔成分(A)中のアルコキシ基に対する成分(B)中の水酸基が0.03〜0.50(モル比)〕を無水条件下、かつ、加熱条件下で反応させる工程、
(工程2)前記工程1で得られた反応生成物と(C)オルガノアルコキシシラン〔成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基が0.5〜5.0(モル比)〕
を水〔成分(A)、(C)中の全アルコキシ基に対して0.15(モル比)以上〕で加水分解して縮合反応させる工程、
(工程3)前記工程2で得られた反応生成物を加熱して低沸物を留去または還流させながら、加水分解と縮合反応を促進させる工程を含むことを特徴とする有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、その製造方法により得られた組成物、および、その組成物により半導体素子を被覆してなる半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、耐熱性がよく、高温条件下においても長期にわたり光学的透明性を維持することが可能な硬化物を与える有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、その製造方法により得られた組成物、および、その組成物により半導体素子を被覆してなる半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機・無機ハイブリッド材料は有機成分の柔軟性・成形性と、無機成分の強度・熱安定性を併せ持つことが可能であると考えられ、様々な分野での応用が期待されている。特に最近の光学分野では、部材に求められる要求特性が高くなっており、透明な有機・無機ハイブリッド材料は注目されている。
例えば、発光ダイオード(LED)素子は、通常、LED素子の保護や発色変更のために、封止材で覆われている。LED素子(3.3〜3.5)と封止材の屈折率が近いほどLED素子からの光を効率的に取り出せるために、この封止材には高い屈折率、高い光学的透明性が要求されている。
青色LEDや紫外LEDなど波長約350nm〜500nmの光を発光するLEDは半導体チップからの発熱量が大きく、また光が短波長であることから、封止材によく用いられるエポキシ樹脂では劣化による着色が促進され、これにより半導体チップから発光する光を吸収してしまうため透過光が減少し、結果的に短時間でのLEDの輝度低下の原因となっている。
有機・無機ハイブリッド材料の合成において、高反応性の金属アルコキシドを用いる場合には、それ以外の構成成分との反応速度が異なり単独での高分子化、それに因る白沈の発生や透明性を阻害するゲル化が進行してしまうため、あらかじめ高反応性の金属アルコキシドとβ−ジケトンやβ―ケトエステルなどの有機物からなる反応制御剤を反応させておくのが一般的である(特許文献1)。
一方、金属アルコキシドと末端シラノールポリジメチルシロキサンから合成される有機・無機ハイブリッド材料は、Si以外の無機成分(Al、Ti、Zr、Nb、Ta等)を系内に導入して、金属元素の高い電子分極による高屈折率化が行われている(特許文献2)。
しかしながら、上記特許文献1で使用されている反応制御剤を取り除くためには長時間のアフターキュアが必要であり、また、安定性のよいものや沸点の高いものは完全にその反応制御剤を取り除くことはできない。
前記のようなハイブリッド材料も、残存した反応制御剤の劣化などにより、長期にわたる光学的透明性を維持することは困難であった。また、残存した反応制御剤により屈折率が低下し、望む屈折率が得られない事がある。特許文献2で得られた有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物は屈折率の点で十分ではない。
また、最初にオルガノアルコキシシランを水と反応させて加水分解し、次いで末端シラノールポリジアルキルシロキサン、金属アルコキシドを順次反応させて有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法、ならびに、最初に末端シラノール型ジアルコキシシランの有機溶媒溶液中に2官能アルコキシドおよび金属アルコキシドを加え、次いで水とアルコールで加水分解して有機−無機ハイブリッド材料を製造する方法が開示されている(特許文献3、4)。しかしながら、これらの製造方法で得られた有機−無機ハイブリッド材料は耐熱性と柔軟性を兼ね備え、長時間使用しても体積収縮の小さいことを特徴とする材料であるが、光学的特性が改良されているわけではない。
さらに、前記近紫外光や紫外光による黄変が発生せず、耐熱性を有する封止材としてシリコーン樹脂封止材が検討されているが、ジメチルシロキサンからなるシリコーン樹脂は屈折率が低いため、例えば、屈折率を1.5以上とするために、分子中にフェニル基を有するシリコーン樹脂を用いている(特許文献5)。
しかしながら、このような方法では長期にわたり光学的透明性を維持することは困難であった。
光学的特性に着目した技術として、反応制御剤を用いることなく、特性の異なる2種類の金属アルコキシドの混合物の加水分解物とオルガノアルコキシシランとの縮合反応物である有機・無機ハイブリッド組成物が提案されている。しかしながら、このような有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物は屈折率や光線透過率の点で十分ではない(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−78489号公報
【特許文献2】特開平11−246661号公報
【特許文献3】特開2005−281492号公報
【特許文献4】特開2005−281635号公報
【特許文献5】特開2006−63092号公報
【特許文献6】特開2008−231402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の問題に鑑み、本発明の目的は屈折率が高く、透明性に優れ、耐候性、耐熱性がよく、高温条件下においても長期にわたり光学的透明性を維持することが可能な硬化物を与える有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、その製造方法により製造された組成物、および、その組成物により半導体素子を被覆してなる、優れた信頼性を有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは金属アルコキシドを用いたシリコーン組成物について種々検討したところ、耐熱黄変性に悪影響を及ぼすβ―ジケトンやβ―ケトエステルのような有機成分から構成される反応制御剤を用いる必要がなく(化学改質する必要がなく)、高反応性の金属アルコキシドとケイ素原子に直接結合する水酸基を含有するケイ素化合物との反応物およびオルガノアルコキシシランを加水分解し、それに続く縮合反応を行う有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法を見出した。
また、金属アルコキシドを用いたシリコーン組成物は、それを用いないシリコーン組成物と比較すると耐熱黄変性に劣るという傾向があった。
本発明者らはこのような現象についてさらに研究した結果、金属アルコキシド由来の残存アルコキシ基が耐熱黄変性に悪影響を及ぼしていることをつきとめ、縮合反応後の金属アルコキシド由来の残存アルコキシ基を10モル%以下に低減させることにより、上記課題を解決することができた。
すなわち、本発明は、以下、
(1)(工程1)(A)化学改質されていない周期律表第5族の金属アルコキシドと(B)前記(A)成分と反応可能なケイ素原子に直接結合する水酸基を有する有機ケイ素化合物との混合物〔成分(A)中のアルコキシ基に対する成分(B)中の水酸基が0.03〜0.50(モル比)〕を無水条件下、かつ、加熱条件下で反応させる工程、
(工程2)前記工程1で得られた反応生成物と(C)オルガノアルコキシシラン〔成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基が0.5〜5.0(モル比)〕
を水〔成分(A)、(C)中の全アルコキシ基に対して0.15(モル比)以上〕で加水分解して縮合反応させる工程、
(工程3)前記工程2で得られた反応生成物を加熱して低沸物を留去または還流させながら、加水分解と縮合反応を促進させる工程を含むことを特徴とする有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(2)前記工程2における成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基が0.5〜3.0(モル比)である上記(1)に記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(3)前記工程2における成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基(モル比)が0.5〜2.0である上記(2)に記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(4)前記工程2における水の量が、成分(A)、(C)中の全アルコキシ基に対して0.30(モル比)以上〕である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(5)前記工程2において、アルコールを共存させる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(6)前記(A)成分由来の残存アルコキシ基が反応前のアルコキシ基に対して10モル%以下である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(7)(A)成分の5族の金属成分の含有量が組成物中に5〜50質量%の範囲である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(8)(A)成分の5族の金属アルコキシドがタンタルアルコキシドである上記(1)〜(7)のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法、
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする有機・無機ハイブリッド組成物および
(10)上記(9)に記載の有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物により半導体素子が封止されてなる半導体装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法で得られた有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物は、高い屈折率を示し、耐光性、耐熱性に優れ、かつ近紫外から可視光線波長領域で長期にわたり光学的透明性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
<金属アルコキシド>
本発明の有機・無機ハイブリッド組成物において、(A)成分である金属アルコキシドとしては、一般式M(OR)nで表される金属アルコキシドを使用することができる。
式中、Mは周期律表第5族に属する金属元素、Rは炭素数1〜5のアルキル基、もしくは炭素数6〜12のアリール基を示し、nはMの価数で2〜5の整数を示す。nは、好ましくは5である。
また、「周期律表」とは、IUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による周期律表をいう。
金属アルコキシドを用いる場合、通常、前記背景技術の欄で述べたように、あらかじめ高反応性の金属アルコキシドとβ−ジケトンやβ―ケトエステルなどの有機物からなる反応制御剤を用いて反応性を制御(化学改質)しておくのが一般的であるが、本発明で用いられる金属アルコキシドは反応性を制御されていない(化学改質されていない)状態のものである。換言すれば、β−ジケトンまたはβ−ケトエステルなどが配位していない金属アルコキシドである。
本発明の製造方法のように、反応の順序を工夫することにより反応性を制御されていない(化学改質されていない)状態の金属アルコキシドでも副反応を生じることなく所望の有機・無機ハイブリッド組成物を得ることができる。
本発明の製造方法で得られる有機・無機ハイブリッド組成物中の(A)成分に由来するアルコキシ基の残存量が反応前の(A)成分に由来するアルコキシ基に対して10モル%以下であることが、特に耐黄変性の観点から好ましく、後で述べる工程1〜3の条件で反応させることにより達成することができる。アルコキシ基の残存量は、より好ましくは、5モル%以下であり、低ければ低いほど耐黄変性の観点から好ましい。
【0008】
(A)成分である金属アルコキシドにおける炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(n-、イソ、sec-、t-)、各種ペンチル基等が挙げられ、中でも好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、である。
炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が挙げられ中でも好ましくはフェニル基である。アリール基は、全炭素数が6〜12の範囲内で置換基を有していても良く、置換基としては前記アルキル基が挙げられる。
【0009】
周期律表第5族に属する金属アルコキシドの具体的な例としては、ペンタエトキシニオブ、ペンタ−n−プロポキシニオブ、ペンタ−n−ブトキシニオブ、ペンタ−sec−ブトキシニオブ、ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタ−n−プロポキシタンタル、ペンタイソブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−sec−ブトキシタンタル、ペンタ−tert−ブトキシタンタル等が挙げられる。屈折率の向上効果、金属アルコキシドが無色透明である事、加熱時に変色しにくいという点から、ペンタメトキシタンタル、ペンタエトキシタンタル、ペンタイソプロポキシタンタル、ペンタ−n−プロポキシタンタル、ペンタイソブトキシタンタル、ペンタ−n−ブトキシタンタル、ペンタ−sec−ブトキシタンタル、ペンタ−tert−ブトキシタンタルなどのタンタルアルコキシドが好ましい。
【0010】
一般的に、有機・無機ハイブリッド組成物を白色LEDの封止に用いる場合、LEDは青色LEDまたは近紫外LEDであることが多い。青色LEDの主発光ピーク波長は400〜500nmであり、近紫外LEDの主発光ピーク波長は370〜420nmである。したがって、本発明の有機・無機ハイブリッド組成物を白色LEDの封止材として使用する場合、400nm付近の封止材の光透過率は光の取り出し効率に大きな影響を与える。タンタルアルコキシドが他の金属アルコキシドと比較して、無色で透明性が高く、さらに、タンタルアルコキシドを用いた有機・無機ハイブリッド組成物は他の金属のものよりも400nmにおける光透過率が高いことはこれまでの研究により知られている。
したがって、白色LEDの分野ではタンタルアルコキシドを用いた有機・無機ハイブリッド組成物を封止材として用いることが望ましい。
【0011】
(A)成分の添加量は、後で述べる(B)成分の添加量と関係付けて述べるが、金属アルコキシドが前記式M(OR)nで表されるとき、式中のMが組成物中、5〜50質量%程度、好ましくは10〜40質量%の範囲となるようにコントロールする。
組成物中のMの量が5質量%未満であると(A)成分の導入量が少なくなり無機成分によるシナジー効果が顕著でなくなり、有機成分の特性に近づくため、耐熱黄変性や屈折率が低下する。組成物中のMの量が50質量%より大きいと、(A)成分の導入量が多くなり有機成分によるシナジー効果が顕著でなくなり、無機成分の特性に近づくため、有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物が脆くなる。
【0012】
<有機ケイ素化合物>
本発明の有機・無機ハイブリッド組成物中の(B)成分である有機ケイ素化合物は、ケイ素原子に直接結合する水酸基(以下、「シラノール基」又は単に「水酸基」と記載することがある)を有するため、水が存在しなくとも前記(A)成分と反応することができる。(B)成分と反応した(A)成分は、高い反応性が抑制され、加水分解・縮合反応において白色沈殿が生じたり、ゲル化現象が起こりにくくなる。したがって、(B)成分はあらかじめ(A)成分と反応させることで、β―ジケトンやβ―ケトエステルなどの有機成分からなる反応制御剤を用いずに(化学改質せずに)、水による加水分解・縮合反応をゲル化することなく行うことができる。その結果、耐熱黄変性の高い有機・無機ハイブリッド組成物を得ることができる。
【0013】
(B)成分の添加量は、(A)成分の反応前のアルコキシ基に対する(B)成分の水酸基の比率が0.03〜0.50(モル比)の範囲となるようにする。モル比が0.03未満であると、水を加えた加水分解・縮合反応の際にゲル化現象が起こりやすくなる。また、モル比が0.50より大きいと、(A)成分の導入量が少なくなり無機成分によるシナジー効果が顕著でなくなり、有機成分の特性に近づく。
(A)成分中のアルコキシ基に対する(B)成分中の水酸基の好ましいモル比の範囲は0.05〜0.30である。
【0014】
(B)成分である有機ケイ素化合物は、成分中に含まれる水酸基の含有量が0.50モル/kg以上であることが望ましく、より望ましくは1.0モル/kg以上である。
(B)成分中に含まれる水酸基の含有量が0.50モル/kg未満であると、(A)成分に対する反応制御効果が低くなり(B)成分を多く用いなければならないため、結果的に(A)成分の導入量が少なくなり無機成分によるシナジー効果が顕著でなくなり、有機成分の特性に近づく。
【0015】
本発明で使用する(B)成分である有機ケイ素化合物とは一般に平均組成式:(OH)a1bSiO(4-a-b)/2で表される直鎖状あるいは分岐状のシロキサン骨格を有する有機ケイ素化合物であり、式中のR1が−H、−CH3、−C25、−C37、−C49、−CH=CH2、−C65等で構成されるものである。
aは0.1〜4.0の数であり、bは0〜3.9の数であり、a+bは0.1〜4.0を満たす数である。
水酸基を有する有機ケイ素化合物の具体例としては、直線状ポリシロキサンである片末端または両末端に水酸基を有するポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジプロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等や、低分子化合物であるトリメチルシラノール、トリフェニルシラノール、ジメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、テトラメチルジシロキサンジオール等や、分岐状ポリシロキサンであるシラノール基を有するポリシルセスキオキサン、MQレジン等が挙げられる。
【0016】
<オルガノアルコキシシラン>
本発明の有機・無機ハイブリッド組成物中の(C)成分であるオルガノアルコキシシランは、化学式Si(R´)m(OR")(4-m)〔有機基R′が−H、−CH3、−C25、−C37、−C49、−CH=CH2、−C65等であり、R"は炭素数1〜
5のアルキル基もしくは炭素数6〜12のアリール基を示し、mは0〜3の整数を示す〕で表されるオルガノアルコキシシランを用いることができる。
炭素数1〜5のアルキル基および炭素数6〜12のアリール基は前記(A)成分の説明で列挙したものと同じものが用いられる。
【0017】
(C)成分は(A)、(B)成分の反応物と水による加水分解、縮合反応を行う際に、水を加えたことによる(A)成分の単独反応による白色沈殿の発生やゲル化現象を防ぐ効果がある。(B)成分はシラノール基当量が低すぎると一定の濃度以上に濃縮すると自己縮合反応が起こってしまい、所望のシラノール基当量を確保するのが困難となる。一方、オルガノアルコキシシランは加水分解時の反応基であるアルコキシ基の当量を低くしても、そのような現象は起こらず、取り扱いが容易となり、(A)成分の単独反応の抑制効果を向上させることができる。また(B)成分と反応することで組成物中に残る低分子シリコーンの残存を抑制する。残存する低分子成分の抑制は有機・無機ハイブリッド組成物の表面のべたつき、機械的強度の劣化等の不具合を効果的に解消することができる。
【0018】
オルガノアルコキシシランの具体的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0019】
(C)成分の添加量は、(A)成分の反応前のアルコキシ基に対する(C)成分の反応前のアルコキシ基が0.5〜5.0(モル比)の範囲となるようにする。(C)成分のアルコキシ基のモル比が0.5未満であると、加水分解・縮合反応の際にゲル化現象が起こりやすくなる。また(A)成分のアルコキシ基に対する(C)成分のアルコキシ基のモル比が5.0より大きいと、(A)成分の導入量が少なくなり無機成分によるシナジー効果が顕著でなくなり、有機成分の特性に近づく。
上記モル比の好ましい範囲は0.5〜3.0、より好ましくは0.5〜2.0である。
【0020】
<製造方法>
本発明の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法は下記の工程1〜3を含む。
(工程1)
工程1は前記β−ジケトンやβ―ケトエステルのような反応制御剤で制御(化学改質)されていない(A)成分と(B)成分との混合物を無水条件化で反応させる工程である。本工程では水を使用しないので、(A)成分単独の加水分解・縮合反応による白色沈殿の発生やゲル化現象は起こらない。この場合の加熱温度は30〜120℃程度、好ましくは50〜90℃で、反応時間は0.1〜5時間程度、好ましくは0.5〜3時間である。
工程1では水が存在していないので、(C)成分はいずれの成分とも反応しない。したがって、工程1であらかじめ(C)成分を加えておいても問題はない。
【0021】
(工程2)
工程2は前記工程1で得られた反応生成物と(C)成分を水で加水分解して縮合反応させる工程である。この場合の加熱温度は30〜120℃程度、好ましくは50〜90℃で、反応時間は1〜10時間程度、好ましくは1〜6時間である。
工程2における水の量は前記(A)、(C)の全アルコキシ基に対してモル比で0.15以上の範囲となるようにコントロールする必要がある。
モル比が0.15未満であると、加水分解および縮合反応が円滑に進行せず、(A)成分由来のアルコキシ基が多く残存してしまい、得られる有機無機ハイブリッド組成物の硬化物の耐熱黄変性に悪影響を及ぼす上、加水分解および縮合反応が円滑に進行しないため、良好な有機・無機ハイブリッド組成物を得ることができない。
モル比が2.0を超えると、それ以上の水は加水分解および縮合反応を促進させる効果はなく、経済的に非効率となるので好ましくない。モル比は、好ましくは0.30〜1.20である。
【0022】
(工程3)
工程3は前記工程2で得られた反応生成物を加熱(通常、60℃以上の温度)して低沸物を留去又は還流させながら、反応を促進させる工程である。この工程により、(A)成分由来の残存アルコキシ基を10モル%以下に減らすことができる。
また、この工程で水を追加的に添加することで、さらに(A)成分由来のアルコキシ基の低減を促進させることができ、所望の有機・無機ハイブリッド組成物を含むゾル液を得ることができる。
追加的に添加する水の量は前記(A)、(C)の全アルコキシ基に対してモル比で0.5程度である。
(A)、(B)、(C)成分をあらかじめ前記条件下、工程1および工程2の反応を進行させずに追加的に水を添加すると白色沈殿の発生や、ゲル化現象、反応が進行しないなどの現象が起き、所望の有機・無機ハイブリッド組成物を含むゾル液を得ることができないことがある。
上記工程2の反応において、アルコール類、セロソルブ類、芳香族類等の通常の有機溶媒を併用してもよい。これらを併用することにより、前記工程1で得られた反応生成物と(C)成分に対する水の相溶性が向上し、反応を促進させる効果が得られる。
アルコール類等を併用する場合の量は水に対して0.10〜3.00倍程度(モル比)、好ましくは、0.25〜1.50倍である。
上記のようにして調製した有機・無機ハイブリッド組成物を含むゾル液を、適応させる形状に応じて塗布、注入等を行って成形等を行う。なお、このとき、溶媒、加水分解で生成したアルコール等を常圧あるいは減圧下で留去して塗布してもよい。
【0023】
成形を行なう際、長期の光学的透明性を損なわない程度に硬化促進剤を使用してもよい。
硬化促進剤としては、塩酸、硫酸、各種スルホン酸類やジブチルスズジラウレートのような有機スズ系触媒等を用いることができる。
【0024】
前記塗布は、例えばディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、スピンコート法等により、前記注入は、例えば圧力注入法、インクジェット法等により行うことができる。
成形後、加熱により溶媒等を蒸留させるとともに縮合反応させて硬化物とする。
硬化温度は50〜250℃程度、好ましくは100〜180℃の範囲である。50℃未満であると、溶媒等が十分蒸発しなかったり、硬度、耐熱性が得られない場合がある。250℃を越えると、加熱に要する熱エネルギーが大であり、省エネの観点で好ましくなく、コストアップを招く場合がある。
【0025】
このようにして得られた本発明の有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物は、有機成分から構成される反応制御剤を用いていない(化学改質されていない)ため、近紫外から可視波長領域で高温条件下において長期にわたり光学的透明性を維持することができる。
また、LED封止材などの熱に曝される光学用途で用いる場合、200℃の雰囲気に200時間放置後の350〜800nmにおける硬化体の光透過率が、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
本発明において加熱処理後の光透過率が上記範囲であれば、例えば、用いた光学素子における発熱に対しても熱劣化せず、充分な光学特性を維持することができる。
【0026】
本発明の製造方法で得られた有機・無機ハイブリッド組成物は、耐光性、耐熱性に優れることから、LEDが青色LED素子や紫外線LED素子であるLED素子の封止材としても有用であり、得られた半導体素子は高輝度環境下においても優れた耐久性を示す。
また、その他にも、その優れた耐熱性、耐光性、透明性等の特徴から、下記のディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途にも用いることができる。
前記ディスプレイ材料としては、例えば、液晶ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶用フィルム等の液晶表示装置周辺材料;次世代フラットパネルディスプレイであるカラープラズマディスプレイ(PDP)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等;有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;フィールドエミッションディスプレイ(FED)の各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。
前記光記録媒体材料としては、例えば、VD(ビデオディスク)、CD、CD−ROM、CD−R/CD−RW、DVD±R/DVD±RW/DVD−RAM、MO、MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等が挙げられる。
【0027】
前記光学機器材料としては、例えば、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダープリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部等;ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダー等;プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等;光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等が挙げられる。
【0028】
前記光部品材料としては、例えば、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤等;光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤等;光受動部品、光回路部品である、レンズ、導波路、LED素子の封止材、接着剤等;光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等が挙げられる。
【0029】
前記光ファイバー材料としては、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等;工業用のセンサー類、表示・標識類等;通信インフラ用および家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバー等が挙げられる。また、前記半導体集積回路周辺材料としては、例えば、LSI、超LSI材料のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料等が挙げられる。
【0030】
さらに、前記光・電子機能有機材料としては、例えば、有機EL素子周辺材料、有機フォトリフラクティブ素子;光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料;ファイバー材料;これらの素子の封止材、接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下に本発明をさらに具体的に説明するための実施例について述べるが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例および比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、「質量部」及び「質量%」を意味する。
<実施例1>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた反応装置に、化学改質されていないペンタエトキシタンタル〔成分(A)、高純度化学(株)製〕30部、ケイ素原子に直接結合する水酸基(シラノール基)を有するポリジメチルシロキサン〔成分(B)、Gelest製、商品名:DMS―S12、シラノール基当量2.9モル/kg〕20部、メチルトリメトキシシラン〔成分(C)、信越化学工業(株)製、商品名:KBM−13〕10部、トルエン20部を仕込み80℃で加熱撹拌した。
同温度で2時間撹拌したのち、室温まで冷却し、水3.4部〔成分(A)、(C)中の全アルコキシ基1モルに対して0.32モル〕とエタノール3.4部の混合液をゆっくりと滴下した。滴下後、加熱(70〜80℃)して低沸物を留去し、還流下で5時間撹拌し、ゲル化することなく有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。
成分(A)であるペンタエトキシタンタル中のアルコキシ基に対する成分(B)である末端水酸基を有するポリジメチルシロキサン中の水酸基のモル比は0.16である。
得られたゾル液中の成分(A)由来の残存アルコキシ基は0モル%であった。
得られた有機・無機ハイブリッド組成物を含むゾル液について以下に示す評価を実施した。結果を表1に示した。
【0032】
<評価項目と測定法>
〔残存アルコキシ基〕
反応により得られたゾル液(0.01g)を重溶媒である重クロロホルム(2.0g)に溶解させ、1H−NMR〔日本電子データム株式会社社製、JNM−LA300〕を用いて分析し、前記(A)由来のアルコキシ基のピークから残存量を求めた。
〔屈折率〕
反応により得られたゾル液15gをガラスシャーレに流し込み、オーブンにて70℃で3時間、100℃で2時間、150℃で10時間硬化させ、2mm厚の無色透明な有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物を得た。アッベ屈折計〔株式会社アタゴ社製、DR−M2〕を用いて、波長589nmの光による硬化物の屈折率を測定した。
〔光透過率〕
反応により得られたゾル液15gをガラスシャーレに流し込み、オーブンにて70℃で3時間、100℃で2時間、150℃で10時間硬化させ、2mm厚の無色透明な有機・無機ハイブリッド組成物である硬化物を得た。分光光度計〔株式会社島津製作所社製分光光度計、UV−1650PC〕を用いて、波長400nmの光によるこの硬化物の光透過率を測定した。
〔耐熱黄変性(耐熱性)〕
反応により得られたゾル液15gをガラスシャーレに流し込み、オーブンにて70℃で3時間、100℃で2時間、150℃で10時間硬化させ、2mm厚の無色透明な有機・無機ハイブリッド組成物である硬化物を得た。
この硬化物を200℃雰囲気下、200時間放置後の400nmにおける光透過率を測定し、初期の光透過率と比較した。評価基準は以下の通りである。
○:初期の光透過率からの低下が10%未満
×:初期の光透過率からの低下が10%以上
【0033】
<実施例2>
実施例1で用いたものと同様の装置に、化学改質されていないペンタ−n−ブトキシタンタル〔成分(A)、高純度化学(株)製〕を40部、DMS―S12〔成分(B)〕を50部、フェニルトリメトキシシラン〔成分(C)、信越化学工業(株)製、商品名:KBM−103〕29部、トルエン40部を仕込み、80℃に加熱しながら撹拌した。
同温度で2時間撹拌したのち、室温まで冷却し、水16.1部とエタノール32.2部の混合液をゆっくりと滴下した。滴下後、加熱(100〜110℃)して、低沸物を留去し、還流下で5時間撹拌し、有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0034】
<実施例3>
実施例1で用いたものと同様の装置に、化学改質されていないペンタエトキシタンタル〔成分(A)〕を30部、DMS―S12〔成分(B)〕を10部、KBM−13〔成分(C)〕を28部、トルエンを30部仕込み80℃で加熱撹拌した。
同温度で2時間撹拌したのち、室温まで冷却し、水14.6部とエタノール14.6部の混合液をゆっくりと滴下した。
滴下後、加熱(70〜80℃)して、低沸物を留去し、還流下で5時間撹拌し、有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。
実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0035】
<実施例4>
実施例1で用いたものと同様の装置に、化学改質されていないペンタエトキシニオブ〔成分(A)、高純度化学(株)製〕を24部、DMS―S12〔成分(B)〕を20部、メチルトリメトキシシラン〔成分(C)、信越化学工業(株)製、商品名:KBM−13〕を10部、トルエン20部を仕込み、80℃に加熱しながら撹拌した。
同温度で2時間撹拌したのち、室温まで冷却し、水3.4部とエタノール3.4部の混合液をゆっくりと滴下した。滴下後、加熱(70〜80℃)して、低沸物を留去し、還流下で5時間撹拌し、有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0036】
<実施例5>
実施例1で用いたものと同様の装置に、化学改質されていないペンタエトキシタンタル〔成分(A)、高純度化学(株)製〕を30部、DMS―S12〔成分(B)〕を20部、メチルトリメトキシシラン〔成分(C)、信越化学工業(株)製、商品名:KBM−13〕を10部、トルエン20部を仕込み、80℃に加熱しながら撹拌した。
同温度で2時間撹拌したのち、室温まで冷却し、水3.4部をゆっくりと滴下し、40℃で10時間撹拌を行った。滴下後、加熱(70〜80℃)して、低沸物を留去し、還流下で5時間撹拌し、有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0037】
<比較例1>
実施例1の合成おいて、化学改質されていないペンタエトキシタンタルの代わりにアセト酢酸エチルで化学改質されたペンタエトキシタンタル〔比較用成分(A)〕を用いた以外は同様にして有機・無機ハイブリッド組成物の作製を行い、比較用の無色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0038】
<比較例2>
実施例1の合成おいて、DMS-S12の代わりにDMS-S27〔比較成分(B)、Gelest製、シラノール基当量0.12モル/kg)を用いた以外は同様にし、エタノール水溶液を添加したところ、撹拌中にゲル物が発生し、無色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾルを得ることができなかった。
【0039】
<比較例3>
実施例1の合成おいて、DMS-S12〔成分(B)〕を用いなかった以外は同様にし、エタノール水溶液を添加したところ、撹拌中にゲル物が発生し、無色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾルを得ることができなかった。
【0040】
<比較例4>
実施例1の合成おいて、メチルトリメトキシシラン〔成分(C)〕を10部から2部に変更した以外は同様にし、エタノール水溶液を添加したところ、撹拌中にゲル物が発生し、無色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾルを得ることができなかった。
【0041】
<比較例5>
実施例1の合成おいて、加えた水の量を3.4部から1.0部に変更した以外は同様にし、反応を行ない無色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0042】
<比較例6>
実施例1の合成おいて、化学改質されていないペンタエトキシタンタルを化学改質されていないテトラn-ブチトキシジルコニウム〔比較成分(A)、アルドリッチ社製、80質量%、1-ブタノール溶液〕を38部に変更した以外は同様に反応を行ない淡黄色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0043】
<比較例7>
実施例1の合成おいて、エタノール水溶液の滴下終了後、加熱を行わずに反応を終了させ、無色透明の有機・無機ハイブリッド組成物のゾル液を得た。実施例1と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の製造方法で得られた有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物は、高い屈折率を示し、耐光性、耐熱性に優れ、かつ近紫外から可視光線波長領域で長期にわたり光学的透明性を有するので、特にLED素子等の光学素子の封止材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(工程1)(A)化学改質されていない周期律表第5族の金属アルコキシドと(B)前記(A)成分と反応可能なケイ素原子に直接結合する水酸基を有する有機ケイ素化合物との混合物〔成分(A)中のアルコキシ基に対する成分(B)中の水酸基が0.03〜0.50(モル比)〕を無水条件下、かつ、加熱条件下で反応させる工程、
(工程2)前記工程1で得られた反応生成物と(C)オルガノアルコキシシラン〔成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基が0.5〜5.0(モル比)〕
を水〔成分(A)、(C)中の全アルコキシ基に対して0.15(モル比)以上〕で加水分解して縮合反応させる工程、
(工程3)前記工程2で得られた反応生成物を加熱して低沸物を留去または還流させながら、加水分解と縮合反応を促進させる工程を含むことを特徴とする有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程2における成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基が0.5〜3.0(モル比)である請求項1に記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程2における成分(C)中のアルコキシ基/前記成分(A)中のアルコキシ基(モル比)が0.5〜2.0である請求項2に記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程2における水の量が、成分(A)、(C)中の全アルコキシ基に対して0.30(モル比)以上である請求項1〜3のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項5】
前記工程2において、アルコールを共存させる請求項〜4のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分由来の残存アルコキシ基が反応前のアルコキシ基に対して10モル%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項7】
(A)成分の5族の金属成分の含有量が組成物中に5〜50質量%の範囲である請求項1〜6のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項8】
(A)成分の5族の金属アルコキシドがタンタルアルコキシドである請求項1〜7のいずれかに記載の有機・無機ハイブリッド組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする有機・無機ハイブリッド組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の有機・無機ハイブリッド組成物の硬化物により半導体素子が封止されてなる半導体装置。

【公開番号】特開2011−57787(P2011−57787A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206975(P2009−206975)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】