説明

有機光電変換素子と、それを用いた太陽電池及び光センサアレイ

【課題】高い曲線因子、開放電圧及び光電変換効率を有し、かつ耐久性に優れた有機光電変換素子と、それを構成要素として組み込んだ太陽電池及び光センサアレイを提供する。
【解決手段】陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、該陰極と陽極の間に、下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイに関し、さらに詳しくは、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子と、この有機光電変換素子を用いた太陽電池及び光アレイセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギー(光エネルギー)から直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶、多結晶、アモルファス等のシリコンを用いた太陽電池、GaAsやCIGSなどの化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案及び実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの太陽電池を用いて発電するのに要するコストは、未だ化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、これが普及の大きな妨げとなっている。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事を施す必要があり、これらも発電コストが高くなる一因であった。
【0004】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低い発電コストを達成しうる太陽電池として、陽極と陰極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合されたバルクヘテロジャンクション層を挟んだバルクヘテロジャンクション型光電変換素子が提案されている。
【0005】
これらのバルクヘテロジャンクション型太陽電池においては、陽極と陰極以外は塗布プロセスで形成されているため、高速かつ安価な製造が可能であると期待され、前述の発電コストの課題を解決できる可能性を有している。更に、上記のシリコン系太陽電池、化合物半導体系太陽電池、色素増感太陽電池などと異なり、160℃より高温のプロセスがないため、安価でかつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0006】
太陽電池の性能を表す光電変換効率は、短絡電流(Jsc)×開放電圧(Voc)×曲線因子(FF)の積で算出され、より高い溶解性とキャリア移動度を有する材料を、有機光電変換素子の光電変換材料として用いて、高い短絡電流(Jsc)を得るために、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)において、高い光電変換効率が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1〜3、特許文献1、2参照。)。
【0007】
光電変換プロセスは、大きく分けると、1)入射光の吸収、2)電荷の生成、3)薄膜中の電荷の輸送、4)電極での電荷収集が含まれるが、例えば、1)を満たすためp型材料として低バンドギャップの材料を用いると、n型分子とのエネルギーレベルが一致しないことにより、2)の効率が低下したり、また電荷移動度が低いことによって、3)がスムーズに起こらなかったりすることで、変換効率の向上につながらず、高い光電変換効率の素子を得るためには、1)から4)のプロセスを同時に効率化する材料が必要である。また、材料単体としての電荷移動度が高くても、素子の性能はバルクヘテロジャンクション層における材料のナノレベルの構造体としての性質で決まるため、高い光電変換効率を有する素子を得るために、これらの性能を満たす材料が待望されていた。
【0008】
曲線因子は、主には光電変換素子の内部抵抗と密接に関わっており、曲線因子向上のためには、有機薄膜の低抵抗化、電荷分離効率の向上(整流性の向上)が有効であることが知られている。
【0009】
有機EL素子と同様にバソキュプロイン(BCP)からなる正孔ブロック層を挿入することで、電荷の分離効率が向上し、光電変換効率を向上できるとの開示がある(例えば、特許文献3参照。)。これらの材料は、結晶性が高く溶解性が低いため、生産性の高い塗布方式に適用することは困難であるといった課題を有している。
【0010】
また、塗布プロセスで作製できる正孔ブロック層として、TiOx層が開示されている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、TiOx層を形成するためには水分とチタニウムアルコキシド類を反応させる必要があり、水分によって劣化が起きる有機光電変換素子においては好ましい形成方法であるとは言えず、耐久性において課題を有している。
【0011】
また、類似の構成を有しながら、逆の機能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)においては、同様に発光効率向上のために、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体を正孔ブロック層に用いるとの開示がある(例えば、特許文献4、5参照。)。一般に、正孔ブロック層が、所望の正孔ブロック層として機能するかどうかは隣接する層のHOMOレベルとの関係で決まるため、OLEDにおいて用いられる正孔ブロック層がどのようなものでも有機光電変換素子に適用できるとは限らず、特にバルクヘテロジャンクション層に含まれるn型半導体であるフラーレン誘導体のHOMOおよびLUMOが比較的深いため、有機光電変換素子にも効果的に非水系の塗布法で形成することのできる正孔ブロック層の開発が待ち望まれていた。
【0012】
新たな正孔ブロック層材料の開発が待ち望まれている中、本発明者はHOMO準位の深いジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾセレノフェン誘導体を見出した。
【0013】
したがって、本発明に係るHOMO準位の深いジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾセレノフェン誘導体を、正孔ブロック層の半導体材料として用いることができれば、一層高い曲線因子及び光電変換効率が得られると推定される。
【0014】
また曲線因子だけでなく、高い光電変換効率を得るためには、高い開放電圧も得る必要があるが、一般に開放電圧はバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位とn型半導体材料のLUMO準位との差分と相関があるといわれ、この値が大きいほど高い開放電圧が得られると考えられている。
【0015】
例えば、非特許文献5においては、カルバゾール誘導体をバルクヘテロジャンクション層に用いた有機光電変換素子が提案され、開放電圧が0.89Vと非常に高い開放電圧が得られている。他方で、カルバゾール構造を含チオフェンカルバゾール誘導体へと変換した構造を有する非特許文献6に記載の化合物では、バンドギャップが低減してより長波の波長まで吸収できるようになったものの、HOMO準位が浅くなったために開放電圧が0.52V低下し、光電変換効率も低いものとなっている。
【0016】
したがって、本発明のようなHOMO準位の深いジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾセレノフェン誘導体をバルクヘテロジャンクション層の半導体材料として用いることができれば、一層高い開放電圧及び光電変換効率が得られると推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−106239号公報
【特許文献2】特開2008−106240号公報
【特許文献3】米国特許第65,800,027B2号明細書
【特許文献4】WO2007−069569号明細書
【特許文献5】特開2008−545729号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Adv.Mater.;vol.15,p988(2003)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.;vol.128,p8980(2006)
【非特許文献3】App.Phy.Let.;vol.92,033307,(2008)
【非特許文献4】A.Heeger:Science;vol.317(2007),p222
【非特許文献5】Adv.Mater.,vol.19(2007)p2295
【非特許文献6】Macromol.,vol.41(2008)p8302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い曲線因子、開放電圧及び光電変換効率を有し、かつ耐久性に優れた有機光電変換素子と、それを構成要素として組み込んだ太陽電池及び光センサアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0021】
1.陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、該陰極と陽極の間に、下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【0022】
【化1】

【0023】
〔式中、Z、Zは各々置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環または置換若しくは無置換の芳香族複素環を表す。Qはカルコゲン原子を表す。〕
2.前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層が、前記バルクヘテロジャンクション層と前記陰極との間に存在していることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0024】
3.前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層が、前記バルクヘテロジャンクション層であることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0025】
4.前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、前記一般式(1)で表される部分構造を分子内に2つ以上有している化合物であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0026】
5.前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0027】
【化2】

【0028】
〔式中、X〜Xは各々置換若しくは無置換の炭素原子または窒素原子を表し、X〜Xのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。Qはカルコゲン原子を表す。〕
6.前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、下記一般式(3)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0029】
【化3】

【0030】
〔式中、R〜Rは各々置換基を表し、Qはカルコゲン原子を表す。〕
7.前記一般式(1)から(3)で表される部分構造を有する化合物におけるQのそれぞれが、酸素原子であることを特徴とする前記1から6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0031】
8.前記一般式(1)から(3)で表される部分構造から選ばれる少なくとも1つを有する化合物が、分子量が3000未満の低分子化合物であることを特徴とする前記1から7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0032】
9.前記一般式(1)から(3)で表される部分構造から選ばれる少なくとも1つを有する化合物を含有する層が、溶液塗布法によって形成された層であることを特徴とする前記1から8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0033】
10.前記1から9のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
【0034】
11.前記1から9のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されていることを特徴とする光センサアレイ。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、高い曲線因子、開放電圧及び光電変換効率を有し、かつ耐久性に優れた有機光電変換素子と、それを構成要素として組み込んだ太陽電池及び光センサアレイを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。
【図2】p−i−nの三層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。
【図4】光センサアレイの構成の一例を示す上面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0038】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、該陰極と陽極の間に、下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層を有することを特徴とする有機光電変換素子により、高い曲線因子、開放電圧及び光電変換効率を有し、かつ耐久性に優れた有機光電変換素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0039】
以下、本発明の各構成要素の詳細について、順次説明する。
【0040】
〔一般式(1)〜(3)で表される部分構造を有する化合物〕
本発明の有機光電変換素子においては、陰極と陽極の間に、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層を有することを特徴とする。
【0041】
更に、一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、一般式(1)で表される部分構造を分子内に2つ以上有している化合物であること、一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が前記一般式(2)で表される部分構造を有する化合物であること、あるいは一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が前記一般式(3)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましい。
【0042】
前記一般式(1)において、Z、Zは各々置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環または置換若しくは無置換の芳香族複素環を表す。Qはカルコゲン原子を表す。Z、Zとしては、例えば、フェニル、インデニル、アズレニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニルイル又はクワドフェニルイル、as−インダセニル、s−インダセニル、アセナフチレニル、フェナントリル、フルオランテニル、トリフェニレニル、クリセニル、ナフタセン、ピセニル、ペリレニル、ペンタフェニル、ヘキサセニル、ピレニル、アントラセニル、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ジベンゾ[b,d]チエニル、チアントレニル、フリル、フルフリル、2H−ピラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、2H−クロメニル、キサンテニル、ジベンゾフラニル、フェノキシチエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ビピリジル、トリアジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1H−ピロリジニル、イソインドリル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、3H−インドリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニル又はフェノキサジニルという構造が挙げられる。
【0043】
前記一般式(1)で表される部分構造は、深いHOMO準位を有しており、高い開放電圧を有する素子を得ることができる。また、酸素の順位よりも十分深いために、高い耐久性を有する。中でも、これらの部分構造を複数有する化合物が効果的である。
【0044】
一般式(1)において、Z、Zが含窒素芳香族を表す場合、各環の窒素原子数は1〜3の範囲が好ましいが、化合物の安定性から各環の窒素原子数は1〜2、より好ましくは1つである。また窒素原子が占める位置としては、中央の含カルコゲン5員環のカルコゲン原子に近い側からα位、β位、γ位、δ位とした場合、化合物の安定性の観点からγ位およびδ位であることが好ましい。
【0045】
一般式(1)で表される部分構造において、Z、Zで表される芳香族炭化水素環または芳香族複素環が取りうる置換基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基等を挙げることができる。
【0046】
前記一般式(2)において、X〜Xは各々置換または無置換の炭素原子または窒素原子を表す。この場合も各環の窒素原子数は1〜3の範囲が好ましいが、化合物の安定性から各環の窒素原子数は1〜2、より好ましくは1つである。また窒素原子が占める位置としては、中央の含カルコゲン5員環のカルコゲン原子に近い側からα位、β位、γ位、δ位とした場合、化合物の安定性の観点からγ位およびδ位であることが好ましい。
【0047】
なお高い効果を得るためには、芳香環の炭素原子を多数の窒素原子で置換するほど好ましいが、他方で化合物の安定性が低下するため、高い効果と化合物の安定性を両立するためにはZとZの芳香族環のδ位にそれぞれ1つずつ窒素原子を含有した芳香族6員環とすることが好ましい。
【0048】
一般式(2)で表される部分構造において、X〜Xで表される炭素原子が取りうる置換基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基等を挙げることができる。
【0049】
前記一般式(3)において、R〜Rは各々置換基を表し、置換基としては、例えば、水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基等を挙げることができる。
【0050】
なお、正孔ブロック層は、バルクヘテロジャンクション層上に塗設して積層するという観点から、ベルクヘテロジャンクション層を溶かさない溶媒で塗布できることが望ましい。そのためには、一般式(1)〜(3)で表される部分構造を有する化合物は、含窒素芳香環部分を含んでいることが、アルコール系溶媒への溶解性が向上し、塗布の選択条件が広くなる観点から好ましい。ベルクヘテロジャンクション層を溶かさない溶媒としては、好ましくはピリジル、ピロリル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、などが挙げられ、より好ましくはピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジルである。
【0051】
以下、本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される部分構造を有する化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
【化4】

【0053】
【化5】

【0054】
【化6】

【0055】
【化7】

【0056】
【化8】

【0057】
【化9】

【0058】
【化10】

【0059】
【化11】

【0060】
【化12】

【0061】
【化13】

【0062】
【化14】

【0063】
【化15】

【0064】
【化16】

【0065】
【化17】

【0066】
本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される部分構造を有する化合物は、例えば、米国特許第65,800,027B2号明細書等に記載の方法を参考にして合成することができる。
【0067】
また、本発明においては、高純度の精製が可能な点と、高い移動度の薄膜が得られるといった観点から、一般式(1)から(3)で表される部分構造から選ばれる少なくとも1つを有する化合物が、分子量が3000未満の低分子化合物であることが好ましい。特に、p型半導体材料は、低分子化合物であることが好ましい。なお、本発明において低分子化合物とは、化合物の分子量に分布のない、単一分子であることを意味する。他方、高分子化合物とは、所定のモノマーを反応させることによって一定の分子量分布を有する化合物の集合体であることを意味する。しかし、実用上分子量によって定義をする際には、好ましくは分子量が3000未満の化合物を低分子化合物と区分する。より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下である。他方、分子量が3000以上、さらには5000以上の化合物を高分子化合物と区分する。なお、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
【0068】
このような構造を有する化合物は、特開2008−106239号公報、特開2008−106240号公報、あるいは、App.Phy.Let.;vol.92,033307,(2008)、Tetrahedron vol.51,No.44(1995)、p12127等を参考として合成することができる。
【0069】
更に、本発明の有機光電変換素子の構成について、更に詳しく説明する。
【0070】
〔有機光電変換素子および太陽電池の構成〕
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、透明電極(一般に陽極)12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、電子輸送層18及び対極(一般に陰極)13が順次積層されている。
【0071】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に透明電極12及び対極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0072】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、「光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体」であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0073】
図1において、基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0074】
なお、図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0075】
更に好ましい構成としては、図2に示すような光電変換部14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、i層14i単体であるが、p型半導体材料単体からなるp層14p、およびn型半導体材料単体からなるn層14nで挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0076】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0077】
以下に、上述した各層を構成する材料について述べる。
【0078】
(p型半導体材料)
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられる。
【0079】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0080】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0081】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008000664に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0082】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0083】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、本発明のn型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
【0084】
また、バルクヘテロジャンクション層上にさらに溶液プロセスで電子輸送層や正孔ブロック層を形成する際には、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に積層することができるが、通常溶解性の良い材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
【0085】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、および特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0086】
(n型半導体材料)
本発明に係るバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0087】
本発明においては、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0088】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称:PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(略称:PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(略称:PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(略称:PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等に記載のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等に記載のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等に記載の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0089】
(バルクヘテロジャンクション層の形成方法)
本発明に係る電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、例えば、蒸着法、溶液塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を挙げることができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、溶液塗布法が好ましい。また溶液塗布法は、膜形成速度にも優れている。
【0090】
塗布法により、バルクヘテロジャンクション層を形成した後は、残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上及び吸収長波化を引き起こすために加熱処理(アニール処理)を施すことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理を施すと、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0091】
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0092】
(電子輸送層、正孔ブロック層)
本発明の有機光電変換素子は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間に、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、電子輸送層を形成することが好ましい。
【0093】
電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。より好ましくは、n型半導体のHOMO準位よりも深い材料を電子輸送層として用いることである。また、電子を輸送する特性から、電子移動度の高い化合物を用いることが好ましい。
【0094】
このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
【0095】
上記の化合物の他に、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0096】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0097】
(正孔輸送層、電子ブロック層)
本発明の有機光電変換素子においては、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、正孔輸送層を有していることが好ましい。
【0098】
正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層(電子ブロック層)を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。
【0099】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0100】
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を有機光電変換素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0101】
(電極)
本発明の有機光電変換素子においては、少なくとも陽極と陰極とを有する。また、タンデム構成をとる場合には、中間電極を用いることでタンデム構成を達成することができる。なお、本発明においては、主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。
【0102】
また、透光性があるかどうかといった機能から、透光性のある電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極を呼び分ける場合がある。通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
【0103】
〈陽極〉
本発明に適用可能な陽極は、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0104】
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて陽極とすることもできる。
【0105】
〈陰極〉
本発明に適用可能な陰極は導電材料の単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。陰極の導電材料としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0106】
陰極の導電材料として金属材料を用いれば、陰極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0107】
また、陰極は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成でき好ましい。
【0108】
また、陰極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の陰極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記陽極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性陰極とすることができる。
【0109】
〈中間電極〉
また、前記図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記陽極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0110】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0111】
(基板)
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0112】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0113】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0114】
(光学機能層)
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
【0115】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0116】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0117】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0118】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0119】
(パターニング)
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0120】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0121】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【0122】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子などで公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0123】
〔光センサアレイ〕
次いで、以上説明したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子を応用した光センサアレイについて詳細に説明する。
【0124】
光センサアレイは、前記のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が受光によって電流を発生することを利用して、前記の光電変換素子を細かく画素状に並べて作製し、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する効果を有するセンサである。
【0125】
図4は、光センサアレイの構成を示す図である。図4の(A)は、上面図であり、図4の(B)は、図4の(A)のA−A′線断面図である。
【0126】
図4において、光センサアレイ20は、保持部材としての基板21上に、下部電極としての陽極22、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部24及び陽極22と対をなし、上部電極としての陰極23が順次積層されたものである。光電変換部24は、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有してなる光電変換層24bと、バッファ層24aとの2層で構成される。図4に示す例では、6個のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が形成されている。
【0127】
これら基板21、陽極22、光電変換層24b及び陰極23は、前述したバルクヘテロジャンクション型の光電変換素子10における陽極12、光電変換部14及び陰極13と同等の構成及び役割を示すものである。
【0128】
基板21には、例えば、ガラスが用いられ、陽極22には、例えば、ITOが用いられ、陰極23には、例えば、アルミニウムが用いられる。そして、光電変換層24bのp型半導体材料には、例えば、前記BP−1前駆体が用いられ、n型半導体材料には、例えば、前記例示化合物13が用いられる。また、バッファ層24aには、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)導電性高分子(スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP)が用いられる。このような光センサアレイ20は、次のようにして製作された。
【0129】
ガラス基板上にスパッタリングによりITO膜を形成し、フォトリソグラフィにより所定のパターン形状に加工した。ガラス基板の厚さは、0.7mm、ITO膜の厚さは、200nm、フォトリソグラフィ後のITO膜における測定部面積(受光面積)は、0.5mm×0.5mmであった。次に、このガラス基板21上に、スピンコート法(条件;回転数=1000rpm、フィルタ径=1.2μm)によりPEDOT−PSS膜を形成した。その後、該基板を、オーブンで140℃、10分加熱し、乾燥させた。乾燥後のPEDOT−PSS膜の厚さは30nmであった。
【0130】
次に、上記PEDOT−PSS膜の上に、P3HT(ポリ−3ヘキシルチオフェン)とPCBMの1:1混合膜を、スピンコート法(条件;回転数=3300rpm、フィルタ径=0.8μm)により形成した。このスピンコートに際しては、P3HTおよびPCBMをクロロベンゼン溶媒に=1:1で混合し、これを攪拌(5分)して得た混合液を用いた。P3HTとPCBMの混合膜の形成後、窒素ガス雰囲気下においてオーブンで180℃、30分加熱しアニール処理を施した。アニール処理後のP3HTとPCBMの混合膜の厚さは70nmであった。
【0131】
その後、所定のパターン開口を備えたメタルマスクを用い、P3HTとPCBMの混合膜の上に、電子輸送層として本発明の化合物16を5nm蒸着し、ついで陰極としてのアルミニウム層を蒸着法により形成(厚さ=10nm)した。その後、PVA(polyvinyl alcohol)をスピンコートで1μm形成し、150℃で焼成することで図略のパッシベーション層を作製した。以上により、光センサアレイ20が作製された。
【0132】
この光センサアレイ20上に、所定のパターンを有する光を照射したところ、光の当たったセルのみから光電流が検出され、光センサとして機能することが確認された。
【実施例】
【0133】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0134】
実施例1
《有機光電変換素子の作製》
〔有機光電変換素子1の作製:比較例〕
ガラス基板上にパターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄した後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0135】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0136】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、プレクストロニクス社製のプレックスコアOS2100を1.5質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製のE100(PCBM)を1.5質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルタでろ過を行いながら500rpmで60秒、次いで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温で30分放置した。
【0137】
次に、アルドリッチ社製のバソキュプロイン(BCP)を0.5質量%の比率で、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールと混合した溶液を、1500rpmでスピンコートし、膜厚10nmの正孔ブロック層を形成した。
【0138】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を大気に晒すことなく、真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下まで真空蒸着機内を減圧した後、Alを100nm蒸着した。最後に、120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子1を得た。なお、蒸着速度は2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0139】
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後、大気環境下に取り出した。
【0140】
〔有機光電変換素子2の作製:比較例〕
上記有機光電変換素子1の作製において、正孔ブロック層の形成に用いたバソキュプロインを0.5質量%含む2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール溶液に代えて、エタノールにTi−イソプロポキシドを25mmol/Lになるように溶解した液を調製し、取り出し電極部をマスキングして2000rpmでスピンコートした後、大気中に取り出して60分間放置してTi−イソプロポキシドを加水分解することによって、膜厚10nmのTiOx層を形成して、これを正孔ブロック層とした以外は同様にして、比較の有機光電変換素子2を作製した。
【0141】
〔有機光電変換素子3〜9の作製:本発明〕
上記有機光電変換素子1の作製において、正孔ブロック層の作製に用いたバソキュプロインを、表1に記載の本発明に係る各例示化合物に変更した以外は同様にして、本発明の有機光電変換素子3〜9を作製した。
【0142】
《有機光電変換素子の評価》
上記作製した有機光電変換素子1〜9について、下記の方法に従って、変換効率と曲線因子の測定と、耐久性評価(相対低下効率の測定)を行った。
【0143】
(エネルギー変換効率および曲線因子の評価)
上記作製した各有機光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)より100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)及び曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部でそれぞれ測定し、平均値を求めた。またJsc、Voc、FFから、下記式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
【0144】
式1
Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
(耐久性評価)
ソーラシミュレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、初期のエネルギー変換効率を測定した。さらに、この時の初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100時間照射し続けた後のエネルギー変換効率を測定し、下記式2より相対低下効率を算出した。
【0145】
式2
相対低下効率(%)=(1−100時間照射後のエネルギー変換効率/初期のエネルギー変換効率)×100
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる正孔ブロック層を有する有機光電変換素子は、比較例に対し、曲線因子が向上し、変換効率も高いことが分かる。また、耐久性を示す相対低下効率も低く、耐久性に優れていることが分かる。
【0148】
実施例2
《有機光電変換素子の作製》
〔有機光電変換素子11の作製:比較例〕
比較のp型半導体材料として、下記の比較化合物1をAdv.Mater.,vol.19(2007)p2295に記載の方法を参考として合成した。合成後、メタノール:純水=10:1溶液で再沈殿を行い、次いでアセトン・ヘキサン・ジクロロメタン・クロロホルムの順でソックスレー抽出を行い、再びクロロホルム溶解成分をメタノール:純水=10:1溶液に再沈殿を行うことで精製した。
【0149】
次いで、実施例1に記載の有機光電変換素子1と同様にして、透明基板上にPEDOT:PSS層まで設けた後、同様に基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、前記比較のp型半導体材料1(比較化合物1)を0.5質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製のE100(PCBM)を2.0質量%を溶解した液を調製し、0.45μmのフィルタでろ過を行いながら2000rpmで60秒間のスピンコートを行い50℃で10分間加熱した後、室温で12時間放置した。
【0150】
【化18】

【0151】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を大気に晒すことなく真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下まで真空蒸着機内を減圧した後、フッ化リチウムを0.6nm、およびAlを100nm蒸着した。最後に、120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子11を得た。なおAlは蒸着速度2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0152】
得られた有機光電変換素子11は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出した。
【0153】
〔本発明の有機光電変換素子12〜16の作製〕
上記有機光電変換素子11の作製において、p型半導体材料として、比較のp型半導体材料1(比較化合物1)に代えて、下記表2に記載の本発明に係る各例示化合物に変更した以外は同様にして、本発明の有機光電変換素子12〜16を作製した。
【0154】
なお、p型半導体材料がポリマーの場合は、前記比較のp型半導体材料1と同様の精製を行い、低分子材料の場合にはシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびゲルパーミエーションクロマトグラフィーをもちいて精製を行った。
【0155】
〔本発明の有機光電変換素子17の作製〕
バルクヘテロジャンクション層を有機光電変換素子16と同様に形成した後、例示化合物206を0.5質量%の比率で2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールと混合した溶液を1500rpmでスピンコートし、膜厚10nmの正孔ブロック層を形成した。それ以外は、有機光電変換素子15の作製と同様にして、有機光電変換素子17を作製した。
【0156】
《有機光電変換素子の評価》
上記作製した有機光電変換素子11〜17について、実施例1に記載の方法と同様にしてソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)より100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、開放電圧Voc(V)の測定、エネルギー変換効率η(%)の算出及び耐久性評価(相対低下効率の測定)を行い、得られた結果を表2に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明に係るp型半導体材料を用いた有機光電変換素子は、比較例に対し、高い開放電圧と光電変換効率が得られることが明らかである。また、本発明に係る材料からなる正孔ブロック層を設けることで、より高い光電変換効率が得られることも分かる。
【0159】
実施例3
実施例1及び実施例2で作製した有機光電変換素子を用いて、公知の方法に従って太陽電池及び光センサアレイを作製した結果、高い光電変換効率の太陽電池及び電気的な信号への変換効率が高い光センサアレイを得ることができることを確認することができた。
【符号の説明】
【0160】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 陽極
23 陰極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、及びp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、該陰極と陽極の間に、下記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【化1】

〔式中、Z、Zは各々置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環または置換若しくは無置換の芳香族複素環を表す。Qはカルコゲン原子を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層が、前記バルクヘテロジャンクション層と前記陰極との間に存在していることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層が、前記バルクヘテロジャンクション層であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、前記一般式(1)で表される部分構造を分子内に2つ以上有している化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、下記一般式(2)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【化2】

〔式中、X〜Xは各々置換若しくは無置換の炭素原子または窒素原子を表し、X〜Xのうち少なくとも一つは窒素原子を表す。Qはカルコゲン原子を表す。〕
【請求項6】
前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物が、下記一般式(3)で表される部分構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【化3】

〔式中、R〜Rは各々置換基を表し、Qはカルコゲン原子を表す。〕
【請求項7】
前記一般式(1)から(3)で表される部分構造を有する化合物におけるQのそれぞれが、酸素原子であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項8】
前記一般式(1)から(3)で表される部分構造から選ばれる少なくとも1つを有する化合物が、分子量が3000未満の低分子化合物であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項9】
前記一般式(1)から(3)で表される部分構造から選ばれる少なくとも1つを有する化合物を含有する層が、溶液塗布法によって形成された層であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されていることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−71163(P2011−71163A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218598(P2009−218598)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】