説明

有機半導体材料、これを含む組成物、これを用いた有機半導体薄膜および有機電子素子

【課題】常温湿式工程が可能であり且つ分子間の積層もよく誘導することが可能な新規の有機半導体材料の提供。
【解決手段】分子内に1つ以上の窒素または酸素を含んで、分子と分子との間または一つの分子内における窒素と水素間および酸素と水素間の強い水素結合を発生させることにより、分子間積層(intermolecular stacking)を誘導することができる低分子芳香族環化合物の混合物からなる有機半導体材料およびその適用を提供する。本発明の有機半導体材料を素子に適用すると、常温湿式工程によって製造が可能であるうえ、分子間のパッキング密度が向上して高い電荷移動度および低い遮断漏れ電流を同時に満足する優れた有機電子素子を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料、これを含む組成物、これを用いた有機半導体薄膜および有機電子素子に関し、さらに詳しくは、分子内に1つ以上の窒素または酸素を含んで、分子と分子との間または一つの分子内における窒素と水素間および酸素と水素間の強い水素結合を発生させることにより、分子間の積層(intermolecular stacking)を誘導することができる低分子芳香族環化合物の混合物からなる有機半導体材料およびその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体は、半導体特性を示す共役性有機高分子であるポリアセチレンが開発されて以来、有機物の特性、すなわち合成方法の多様さ、繊維状またはフィルム状への成形の容易さ、柔軟性、伝導性、低い生産コストなどに起因して新規の電気電子材料として機能性電子素子および光素子などの広範囲な分野で盛んに研究されている。
このような電導性高分子を用いた素子の中でも、有機物を半導体層として使用する有機薄膜トランジスタに関する研究は1980年以後から始まり、近年では全世界で多くの研究が進行中にある。
有機薄膜トランジスタ(OTFT)は、既存のシリコン薄膜トランジスタと比較すると、プラズマを用いた化学蒸着(PECVD)ではなく、常圧の湿式工程による半導体層の形成が可能であり、必要に応じて、全工程がプラスチック基板を用いた連続工程(roll to roll)によって達成でき、安価なトランジスタを実現することができるという大きな利点がある。
【0003】
従って、有機薄膜トランジスタは、能動型ディスプレイの駆動素子やスマートカード、インベントリタグ用プラスチックチップなどの多様な分野での活用が期待されている。
一方、有機薄膜トランジスタは、常温湿式工程によって薄膜を形成する場合、分子間の整列が無秩序になり、よく整列された薄膜を得難いという問題点がある。その結果、電荷移動度が低くなり、遮断漏れ電流が高くなって、実際の素子に適用することが難しいという問題点がある。
従来では、かかる問題点を解決するために、絶縁体を、半導体物質と相互互換できる表面処理剤で処理する方法を主に使用してきたが、この方法は、追加の材料を使用することによって製造コストが上昇し、その工程が複雑であるうえ、目的の効果を十分達成することができないという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、常温湿式工程が可能であり且つ分子間の積層も良好に誘導することが可能な、新規の有機半導体材料を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記有機半導体材料を含んで、高度に整列された半導体薄膜を形成することが可能な半導体層形成用組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、前記の組成物を用いて形成されることにより、分子間のパッキング密度が向上して高い電荷移動度および低い遮断漏れ電流を同時に満足する有機半導体薄膜および有機電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一実施形態は、式(1)で表される芳香族環化合物と、式(2)で表される芳香族環化合物とを混合した混合物からなる有機半導体材料を提供する。
式(1)
(Ar−(Ar−(Ar (1)
(式中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、Ar、Ar、Arのうち少なくとも1つは窒素または酸素で置換されており、
a、bおよびcは、それぞれ独立に、0〜20の整数である(但し、a+b+c≠0)。)
(Ar−(Ar (2)
(式中、Ar、Arは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、ArおよびArのうち少なくとも1つは、1つ以上の炭素環原子が窒素または酸素で置換されており、或いは1つ以上の水素原子が、−NHまたは−OHを含んでいる置換基で置換されており、
dおよびeはそれぞれ独立に0〜10の整数である(但し、d+e≠0)。)
【0006】
上記目的を達成するための本発明の他の実施形態は、前記有機半導体材料および有機溶媒を含む半導体層形成用組成物を提供する。
上記目的を達成するための本発明の別の実施形態は、前記組成物を用いて形成された有機半導体薄膜を提供する。
上記目的を達成するための本発明の別の実施形態は、前記有機半導体薄膜を含む有機電子素子を提供する。
【発明の効果】
【0007】
上述したように、本発明の有機半導体材料は、分子内に1つ以上の窒素または酸素を含む低分子芳香族環化合物の混合物から構成されるため、常温湿式工程が可能であり、安定的であるうえ、強い水素結合によって分子間の積層を誘導して分子間のパッキング密度を向上させることができるので、電荷移動度が高く、遮断漏れ電流が低い、優れた半導体薄膜および有機電子素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、式(1)で表される芳香族環化合物と式(2)で表される芳香族環化合物との混合物で構成された有機半導体材料を提供する。
式(1)
(Ar−(Ar−(Ar (1)
(式中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、Ar、Ar、Arのうち少なくとも1つは窒素または酸素で置換されており、
a、bおよびcは、それぞれ独立に、0〜20の整数である(但し、a+b+c≠0)。)
(Ar−(Ar (2)
(式中、Ar、Arは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、ArおよびArのうち少なくとも1つは、1つ以上の炭素環原子が窒素または酸素で置換されており、或いは1つ以上の水素原子が、−NHまたは−OHを含んでいる置換基で置換されており、
dおよびeはそれぞれ独立に0〜10の整数である(但し、d+e≠0)。)
なお、Ar〜Arにおいては、a〜eの整数によっては、1価のみならず、2価の置換基となり得る。従って、これらの置換基においては、2価の形態をも包含する。
【0009】
ここで、前記Ar、Ar、Arのうち少なくとも1つは、1つ以上の炭素環原子が窒素または酸素で置換されており、或いは1つ以上の水素原子が−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、RおよびRはそれぞれ独立に水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基またはC2〜C30のヘテロアリール基であり、Rは水素、ヒドロキシ基、ハロゲン、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C2〜C30のヘテロアリール基であり、RはC1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基またはC2〜C30のヘテロアリール基である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、および窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基よりなる群から選択された置換基で置換されている。
【0010】
すなわち、本発明の有機半導体材料は、それぞれ分子内に1つ以上の窒素または酸素を含む低分子芳香族環化合物の混合物から構成される。このように式(1)で表される芳香族環化合物および式(2)で表される芳香族環化合物は、分子内に酸素または窒素を含むことにより、相互間にまたはそれぞれの分子内で水素結合アクセプタ(H-bond acceptor)または水素結合ドナー(H-bond donor)として作用し、窒素と水素(例えば、Nの非共有電子対と−NHまたは−OH)および酸素と水素(C=Oと−NHまたは−OH)の間に強い水素結合を発生させ、それにより分子間の積層をよりよく誘導することができる。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る有機半導体材料を構成する芳香族環化合物間の水素結合を示す模式図である。図1を参照すると、式(1)の化合物に属するピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体の窒素環原子と式(2)の化合物に属するチオフェンカルボン酸の−OHとの間、および式(1)の化合物に属するピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体のN−Hと式(2)の化合物に属するチオフェンカルボン酸のC=Oとの間に強い水素結合が発生し、前記2分子の間に積層が誘導されることが分かる。
したがって、本発明の有機半導体材料は、実際の素子に適用したときに分子間のパッキング密度を向上させ、高い電荷移動度および低い遮断漏れ電流の優れた電気的特性を示す半導体薄膜を形成することができ、分子自体の分子量が高くなく、置換基としてアルキル基、ヒドロキシアルキル基などを含むことができるため、有機溶媒に対する溶解性に優れて常温で公知の従来の湿式工程によってコートすることができる。
【0012】
具体的に、式(1)および(2)において、前記アリール基またはヘテロアリール基は、それぞれ、C6〜30又はC2〜30が適しており、C6〜20又はC2〜320が好ましい。また、別の観点から、以下の化学式で表された化合物の1価又は2価の基からなる群から選択できる。なお、結合手の位置は、例えば、2価の5員環の場合には、2,5位、2価の6員環の場合には、1,4位、1,5位、2,5位、2,6位、3,6位等90が挙げられるが、これらに限定されず、いずれの位置であってもよい。
また、アリール基またはヘテロアリール基は、環集合型(同一単位集合型、異種単位集合型)の形態であってもよい。
アリール基またはヘテロアリール基としては、好ましくはチオフェン基、フェニル基、ピロール基、ピリジン基、ピリミジン基またはピリミドピリミジン基及びこれらの2価の基である。
【0013】
【化1】

【化2】

【0014】
また、前記アリール基またはヘテロアリール基に置換されていてもよい置換基は、特に限定されるものではないが、好ましくは、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択された1種以上とすることができる。
【0015】
ここで、C1〜C30のアルキル基は、C1〜C20、さらにC1〜C14であることが好ましい。また、別の観点から、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
アリール及びヘテロアリール基は、上記と同様のものが挙げられる。
また、C1〜C30のヒドロキシアルキル基は、C1〜C20、さらにC1〜C14であることが好ましく、上述したアルキル基にヒドロキシ基を、1以上、1〜6程度、好ましくは1〜4、1〜2、例えば、1つ置換したものが挙げられる。
なお、C2〜C30のヘテロアリール基に含まれる窒素または酸素は、1以上、1〜6程度、好ましくは1〜4、1〜2、例えば、1つが挙げられる。
C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基は、C1〜C20、さらにC1〜C14であることが好ましい。これらは、上述したアルキル基に対応するアルケニル、アルキニル、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキシ等)が例示される。
C1〜C30のアルコキシアルキル基としては、例えば、20、さらに14であることが好ましい。例えば、上述したアルコキシ基に上述したアルキル基が置換したものが例示される。
C6〜C30のアリールアルキル基は、C1〜C20、さらにC1〜C14であることが好ましい。
C5〜C30のシクロアルキル基は、C1〜C20、さらにC1〜C14であることが好ましい。
これらの置換基は、環集合型(同一単位集合型、異種単位集合型)の形態であってもよい。
【0016】
より具体的に、式(1)で表される芳香族環化合物としては、特に限定されるものではないが、式(5)〜(13)で表される化合物を例示することができる。
【化3】

【化4】

【0017】
式(5)〜(13)において、X、X、X3--およびXはそれぞれ独立に−0−、−NR−、−CO−または単結合であり(ここで、Rは水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基またはC2〜C30のヘテロアリール基である。)、
、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換または非置換のC6〜C30のアリール基、または置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、
前記アリール基またはヘテロアリール基に置換された置換基は、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択される1種以上である。
【0018】
式(5)〜(13)で表される芳香族環化合物は、n型半導体特性を持つピリミドピリミジンを分子の中心に含み、p型半導体特性を持つオリゴチオフェンを前記ピリミドピリミジンに結合させたPNP構造のピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体であって、前述したような構造によってp型特性とn型特性を同時に示し、有機半導体材料として用いる場合、均一な酸化電位および優れた安定性を持つ効果を示す。
【0019】
好ましくは、このような芳香族環化合物として、式(14)および(15)で表される化合物を挙げることができ、
【化5】

【0020】
式(14)および(15)において、R、R、RおよびRは式(5)〜(13)で定義した通りである。
より好ましくは、式(16)および(17)で表される化合物を挙げることができる。
【化6】

【0021】
式(16)および(17)において、Rは−H、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COORd-(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。
)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択される。
なかでも、Rが水素原子、C1〜C30のアルキル基(好ましくはC1〜C20のアルキル基、さらにC1〜C10のアルキル基、C1〜C6のアルキル基が好ましい)が好ましい。
また、式(16)及び(17)において、アリール基またはヘテロアリール基として、異種単位環集合型(3つ)及び同一単位環集合型(6つ)の環集合型の置換基が示されているが、これらの置換基は、1〜10程度、好ましくは1〜6程度の異種または同一単位環集合型の形態であってもよい。
最も好ましくは、式(1)の芳香族環化合物として、式(18)および(19)で表される化合物を挙げることができる。
【化7】

このような化学式1の芳香族環化合物としては、重量平均分子量(Mw)100〜10,000範囲のものを使用することができる。
【0022】
一方、式(2)で表される芳香族環化合物は、特に限定されるものではないが、以下の化合物から選択できる。
【化8】

【化9】

【0023】
上記化合物においてR、Rはそれぞれ独立に−H、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COORd-(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択できる。
【0024】
本発明において、式(2)で表される芳香族環化合物は、式(1)で表される芳香族環化合物の間に位置して強い水素結合によって分子間の積層をよりよく誘導する役割を果たす。したがって、式(2)の化合物としては、式(1)の化合物の特性を低下させることなくそれらの間に入り込んで水素結合を誘導することができるように、分子量が小さく、式(1)の化合物構造と類似の構造をもつものを適切に選択することが好ましい。式(1)の化合物とより様々な水素結合を形成し得るように、−COOH、−NH−などの置換基で置換されていることが好ましい。
【0025】
その具体的な例としては、チオフェンカルボン酸、チオフェンカルボン酸、チオフェンジカルボン酸(2,5-thiophenedicarboxylic acid)、ベンゾ酸(Benzoic acid)、フタル酸(phthalic acid)、ナフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(naphthalenedicarboxylic acid)、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸(biphenyl-4,4'-dicarboxylic acid)、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルジカルボン酸(4'-hydroxy-4-biphenyldicarboxylic acid)、ベンジルアミン、チオフェンカルボキシルアミド、チオフェンエチルアミン、フェノール、チオフェンメタノール、チオフェンエタノール、およびビピリジンジカルボン酸(2,2'-bipyridine-4,4'-dicarboxylic acid)などを挙げることができる。
【0026】
このような化学式(2)の芳香族環化合物としては、重量平均分子量(Mw)50〜10,000範囲のものを使用することができる。
ひいては、本発明の有機半導体材料は、式(2)で表される芳香族環化合物が、式(1)で表される芳香族環化合物に対し0.001〜1000当量含まれることが好ましく、より好ましくは、式(1)で表される芳香族環化合物に対し0.01〜10当量含まれることがよい。これは、大部分の化学式1の芳香族環化合物が半導体性質を示すことにより、前記化合物が極小量混合されると絶縁体性または金属性を示し易いからである。
【0027】
本発明の有機半導体材料を構成する芳香族環化合物は、通常の方法を用いて合成できる。例えば、特に限定されるものではないが、式(16)で表される芳香族環化合物の合成過程を例示すると、次の通りである。
すなわち、前記芳香族環化合物は、下記反応式1で得られたピリミドピリミジンおよび下記反応式2で得られたオリゴチオフェンボロラン(borolane)をパラジウム触媒と共に反応式3のように反応させることにより、合成することができる。
【0028】
【化10】

(式中、Rは上記と同義である。)
【0029】
前記反応式1および2で得られた化合物は、鈴木カップリング(Suzuki Coupling)という公知の縮合反応をさせることにより、本発明の芳香族環化合物に合成されるが、この反応において、溶媒は、通常のトルエン、N−メチルピロリジノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどを使用することができ、窒素雰囲気の下で50〜180℃で2〜24時間反応させることが好ましい。
【0030】
この際、
PdL (24)
PdL (25)
PdL (26)
で表されるパラジウム触媒を用いて本発明の芳香族環化合物を合成することができる。
式(24)〜(26)において、Lはトリフェニルホスフィン(PPh)、トリフェニルアルシン(AsPh)、トリフェニルホスファイト(P(OPh))、ジフェニルホスフィノフェロセン(dppf)、ジフェニルホスフィノブタン(dppb)、アセテート(OAc)、およびジベンジリドンアセトン(dba)よりなる群から選択されたリガンドであり、XはI、BrまたはClである。
なお、式(1)及び(2)、式(5)〜(15)の化合物は、対応する置換基を変更する以外、上記と同様の方法又はそれに準じた方法、下記合成例に示した方法又はそれに準じた方法、当該分野で公知の反応を利用することにより製造することができる。
【0031】
本発明の他の側面によれば、前記有機半導体材料および有機溶媒を含む半導体層形成用組成物を提供する。
前記有機溶媒としては、通常の有機溶媒を特別な限定なしに使用することができ、好ましくは、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコールおよびジアセトンアルコールを含むアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンを含むケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールおよび1,6−へキサンジオールを含むグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルを含むグリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を含むグリコールエーテルアセテート類;エチルアセテート、ブトキシエトキシエチルアセテート(butoxyethoxy ethyl acetate)、ブチルカルビトールアセテート(BCA)およびジヒドロテルピネオールアセテート(dihydroterpineol acetate;DHTA)を含むアセテート類;テルピネオール類;トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート(Trimethyl pentanediol monoisobutyrate;TEXANOL)、ジクロロエテン(DCE);クロロベンゼン;およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0032】
この際、前記組成物の組成比は、場合に応じて当業者が適切に判断して選択することができるが、溶解度の側面において、有機半導体材料0.1〜10重量%および有機溶媒90〜99.9重量%を含むことが好ましく、有機半導体材料0.5〜4重量%および有機溶媒96〜99.5重量%を含むことがより好ましい。
【0033】
また、前記有機半導体材料の溶解度および貯蔵性などを増加させるために、本発明の目的を阻害しない範囲内において、用途および必要に応じて当業者が適切に判断して有機バインダー、感光性モノマー、光開始剤、粘度調節剤、貯蔵安定剤、湿潤剤などのその他の添加剤を1種以上添加することもできる。前記有機バインダーなどのその他の添加剤は、それぞれ従来の有機電子素子分野で知られている公知の物質を制限なしに使用することができる。
【0034】
本発明の別の側面によれば、前記半導体層形成用組成物を用いて形成された有機半導体薄膜を提供する。この際、前記薄膜は、本発明の半導体層形成用組成物を基板上にコートさせて形成することができる。
前記基板としては、目的を阻害しない限り特に限定されるものではないが、例えば、ガラス基板;シリコンウェハー;ITOガラス;石英(quartz);シリカ塗布基板;アルミナ塗布基板;および例えばポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリノルボルネン、ポリエーテルスルホンなどのプラスチック基板などを用途に応じて当業者が適切に選択して使用することができる。
【0035】
前記コーティング方法としては、通常の常温湿式工程を限定なしに使用することができるが、好ましくは、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スクリーンコーティング(screen coating)、噴霧コーティング(spray coating)、スピンキャスティング(spin casting)、フローコーティング(flow coating)、スクリーン印刷(screen printing)、インクジェッティング(ink-jetting)、およびドロップキャスティング(drop casting)などを使用することができる。便宜性および均一性の側面では、スピンコーティングまたはインクジェッティングを使用することが最も好ましい。スピンコーティングを行う場合、スピン速度は100〜10,000rpmの範囲内で適切に調節されることが好ましい。
【0036】
このような本発明の有機半導体薄膜は、約300〜2,000Å範囲の厚さとすることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
このように本発明に係る有機半導体薄膜は、水素結合によって分子間の積層を誘導することが可能な芳香族環化合物の混合物で構成された有機半導体材料を用いて形成されることにより、簡単な常温湿式工程が可能であるうえ、分子間のパッキング密度が向上して高い電荷移動度および低い遮断漏れ電流を同時に満足する優れた電気的特性を示す。したがって、前記本発明の有機半導体薄膜は、各種有機電子素子に効果的に適用できる。
【0037】
すなわち、本発明の別の側面によれば、前述した有機半導体薄膜を半導体層として含む有機電子素子を提供する。
前記有機電子素子としては、有機薄膜トランジスタ、有機電気発光素子、太陽電池、ポリマーメモリなどを挙げることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。この際、前記有機半導体薄膜は、当業界に知られている通常の工程によって前記素子に適用できる。
これらの有機電子素子の中でも、特に本発明は有機薄膜トランジスタを提供する。本発明の有機薄膜トランジスタは、基板、ゲート電極、有機絶縁層、半導体層およびソース/ドレイン電極を含み、前記半導体層として、本発明に係る有機半導体材料から形成された有機半導体薄膜を含むことができる。
【0038】
本発明の有機薄膜トランジスタは、一般に知られているボトムコンタクト型、トップコンタクト型、またはトップゲート型の構造を持つことができ、本発明の目的を阻害しない範囲内において変形された構造を持つことができる。
本発明の有機薄膜トランジスタの基板としては、通常用いられる基板であれば特に限定されないが、具体的には、ガラス基板、シリカ基板、並びに例えばポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリノルボネンおよびポリエーテルスルホンなどのプラスチック基板などが使用できる。
【0039】
前記ゲート電極、ソースおよびドレイン電極としては、通常用いられる金属が使用でき、具体的には金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム錫酸化物(ITO)、モリブデン/タングステン(Mo/W)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。前記ゲート電極、ソースおよびドレイン電極の厚さは、それぞれ約500〜2,000Åの範囲であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
前記絶縁層としては、通常用いられる誘電率の大きい絶縁体を使用することができ、具体的には、Ba0.33Sr0.66TiO(BST)、Al、Ta、La、YおよびTiOよりなる群から選択された強誘電性絶縁体、PbZr0.33Ti0.66(PZT)、BiTi12、BaMgF、SrBi(TaNb)、Ba(ZrTi)O(BZT)、BaTiO、SrTiO、BiTi12、SiO、SiNおよびAlONよりなる群から選択された無機絶縁体、またはポリイミド、ベンゼンシクロブテン(BCB)、パリレン(parylene)、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールおよびポリビニルフェノールなどの有機絶縁体を使用することができるが、これらに限定されるものではない。このような絶縁層の厚さは約3000Å〜1μmの範囲であることが好ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0040】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。
【0041】
製造例1:ピリミドピリミジン4の製造
【化11】

2,4,6,8−テトラクロロピリミドピリミジン(2,4,6,8-Tetrachloropyrimidopyrimidine)2.7g(10mmol)にアニリン50mLを入れて180℃で25分間加熱還流した。2N塩酸(Hydrochloric acid)水溶液500mLに反応溶液を注ぎ、30分間攪拌した後、クロロホルムで抽出した。有機層を重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)水溶液で洗浄した。有機層を受け取って溶媒を減圧蒸留し、オーブンで乾燥させることにより、5gの黄色固体3を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) d(ppm) 6.95 (t, 2H, J = 7.4 Hz), 7.14 (t, 2H, J = 7.4 Hz), 7.32 (t, 4H, J = 7.5 Hz), 7.42 (t, 4H, J = 7.5 Hz), 8.95 (s, 2H), 9.31 (s, 2H)
【0042】
2gの化合物3(4.03mmol)に臭素5mL(10mmol)をクロロホルム溶媒で徐々に添加して1時間攪拌した。この攪拌された水溶液を重炭酸ナトリウム水溶液に注ぎ、クロロホルムで抽出して有機層を分離する。その後、溶媒を減圧蒸留し、オーブンで乾燥させることにより、3gのジブロマイドフォーム(dibromide form)4を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) d(ppm) 7.17 (t, 2H, J = 7.4 Hz), 7.40 - 7.47 (m, 8H), 7.78 (d, 4H, J = 8.4 Hz), 7.92 (d, 4H, J = 8.4 Hz), 9.10 (s, 2H), 9.53 (s, 1H)
【0043】
製造例2:オリゴチオフェンボロラン(borolane)2の製造
【化12】

(式中、RはC13である。)
【0044】
3−ヘキシルチオフェンとn−BuLiをテトラヒドロフラン(THF)溶媒に−20℃で加えた後、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine、TMEDA)を入れて70℃で3時間加熱した。次いで、ジオキサボロラン(dioxaborolane)を−78℃で添加した後、常温までゆっくり昇温してチオフェンボロラン1を得た。
【0045】
合成されたチオフェンボロラン1と2−ブロモチオフェンをトルエンと水に添加した後、Pd(PPh[テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium)(0)(Aldrich社)]触媒と炭酸カリウム(potassium carbonate)を入れて110℃で8時間反応させて2aを得た。
得られた2aをn−BuLiと共にテトラヒドロフラン溶媒に−20℃で加えた後、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine、TMEDA)を入れて70℃で3時間加熱した。次いで、ジオキサボロラン(dioxaborolane)を−78℃で添加した後、常温までゆっくり昇温してチオフェンボロラン2を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d(ppm) 0.89 (t, 3H, J = 6.8Hz), 1.21-1.35 (m, 18H), 1.59-1.66 (m, 2H), 2.58 (t, 2H, J = 7.8Hz), 6.68 (s, 1H), 7.00 (s, 1H), 7.20 (d, 1H, J = 3.5Hz), 7.47 (d, 1H, J = 3.5Hz)
【0046】
製造例3:ピリミドピリミジン5aの製造
【化13】

【0047】
2,4,6,8−テトラクロロピリミドピリミジン(2,4,6,8-Tetrachloropyrimidopyrimidine)4g(19mmol)をクロロホルム50mLに入れ、0℃の浴(bath)でアニリン8.7mL(95mmol)をゆっくり滴下した。TLCで反応の終了を確認した後、塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、その後クロロホルムで抽出した。次いで、有機層を分離して溶媒を減圧蒸留した後、オーブンで乾燥させることにより、5gの浅黄色固体5aを得た。
1H-NMR (DMSO-d6) d(ppm) 7.23 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 7.46 (t, 4H, J = 7.8 Hz), 7.87 (t, 4H, J = 8.1 Hz), 8.66 (s, 2H)
【0048】
製造例4:オリゴチオフェンボロラン(borolane)4の製造
【化14】

【0049】
THFにヘキサナル(hexanal)を混ぜてチオフェン−2−イル−マグネシウムブロマイド(thiophene-2-yl-magnesium bromide)を加えて3aを得、1,2−ジクロロエタンにヨウ化亜鉛(zinc iodide)とシアノ水素化ホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride)を加えて85℃で3時間加熱することにより3bを得た。THF溶媒で−78℃の下にジオキサボロラン(dioxaborolane)を加えてチオフェンボロラン3を得た後、2−ブロモビチオフェンと製造例1に提示された同一の条件で鈴木カップリング反応によって4aを得、THF溶媒で−78℃の下にリチウムジイソプロピルアミド(lithium diisopropylamide、LDA)を加えた後、ジオキサボロランを加えてオリゴチオフェンボロラン4を合成した。
1H-NMR (300MHz, CDCl3) d(ppm) 0.89 (t, 3H, J = 6.8Hz), 1.25-1.43 (m, 18H), 1.57-1.88 (m, 2H), 2.79 (t, 2H, J = 7.5Hz), 6.68 (d, 2H, J = 3.5Hz), 6.97-7.00 (m, 2H), 7.05 (d, 1H, J = 3.5Hz), 7.21 (d, 1H, J = 3.5Hz), 7.52 (d, 1H, J = 3.5Hz)
【0050】
合成例1:ピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体の合成
【化15】

【0051】
製造例3で得た0.5g(1.33mmol)のジクロライド(Dichloride)5aと製造例2で得た1.8g(3.0mmol)のボロラン(borolane)2をトルエン/テトラヒドロフラン(toluene/tetrahydrofuran)(3/1)30mLと2N炭酸カリウム10mLに入れた。反応混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0))[Pd(PPh]0.31g(0.27mmol)を入れ、窒素の下で8時間110℃で加熱した。2N HCl50mLに反応物を注ぎ、クロロホルムで抽出した後、有機層を水で洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、減圧蒸留した後、へキサン/クロロホルム(hexane/chloroform)でシリカゲルカラムクロマトグラフィ(silica gel column chromatography)して黄色固体0.92gを得た。0.4g(0.41mmol)の生成された化合物をクロロホルムに溶かし、N−ブロモサクシニミド(N-bromosuccinimide)(NBS)0.15g(0.84mmol)を0℃の下に添加した。重炭酸ナトリウム(Sodium bicarbonate)水溶液に反応物を注ぎ、クロロホルムで抽出した後、有機層を水で洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、減圧蒸留した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(silica gel column chromatography)して0.43gのオレンジ色固体5bを得た。
1H-NMR (CDCl3) d(ppm) 0.83 - 0.94 (m, 12H), 1.25 - 1.40 (m, 24H), 1.60 - 1.88 (m, 8H), 2.60 (t, 4H, J = 7.5 Hz), 2.76 (br t, 4H, J = 7.5 Hz), 6.85 (s, 2H), 7.20 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 7.48 (t, 4H, J = 7.3 Hz), 7.78 (s, 2H), 7.99 (d, 4H, J = 7.7 Hz), 8.80 (s, 2H)
【0052】
0.43g(0.38mmol)のジブロマイド5bと0.34g(1.14mmol)のボロラン1をトルエン/テトラヒドロフラン(3/1)30mLと2N炭酸カリウム10mLに入れた。反応混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.22g(0.19mmol)を入れ、窒素の下、8時間110℃で加熱した。2N HCl50mLに反応物を注ぎ、クロロホルムで抽出した後、有機層を水で洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、減圧蒸留した後、へキサン/クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィし、ねっとりした0.44gのオレンジ色固体を得た。0.44g(0.34mmol)の生成された化合物をクロロホルムに溶かし、N−ブロモサクシニミド0.12g(0.69mmol)を0℃の下に添加した。重炭酸ナトリウム水溶液に反応物を注ぎ、クロロホルムで抽出した後、有機層を水で洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、減圧蒸留した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィして0.47gの赤色固体5cを得た。
1H-NMR (CDCl3) d(ppm) 0.87 - 0.94 (m, 18H), 1.25 - 1.45 (m, 36H), 1.60 - 1.75 (m, 12H), 2.58 (t, 4H, J = 7.4 Hz), 2.71 - 2.83 (m, 8H), 6.85 (s, 2H), 7.04 (s, 2H), 7.19 (t, 2H, J = 7.4 Hz), 7.47 (t, 4H, J = 7.4 Hz), 7.77 (s, 2H), 7.80 (d, 4H, J = 7.4 Hz), 8.78 (s, 2H)
【0053】
0.47g(0.31mmol)のジブロマイド5cと製造例4で得た0.36g(0.78mmol)のボロラン4をトルエン/テトラヒドロフラン(3/1)30mLと2N炭酸カリウム10mLに入れた。反応混合物にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.22g(0.19mmol)を入れ、窒素の下、8時間110℃で加熱した。2N HCl50mLに反応物を注ぎ、クロロホルムで抽出した後、有機層を水で洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥、濾過、減圧蒸留した後、へキサン/クロロホルムでシリカゲルカラムクロマトグラフィして0.43gの赤色固体(ピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体)を得た。
1H-NMR (CDCl3) d(ppm) 0.90 - 0.94 (m, 24H), 1.26 - 1.55 (m, 48H), 1.62 - 1.70 (m, 16H), 2.74 - 2.82 (m, 16H), 6.70 (s, 2H), 6.98 - 7.11 (m, 14H), 7.19 (t, 2H, J = 7.4 Hz), 7.50 (t, 4H, J = 7.4 Hz), 7.79 (s, 2H), 8.03 (d, 4H, J = 7.4 Hz), 8.82 (br s, 2H)
【0054】
実施例1
まず、前記合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体にチオフェンカルボン酸を前記誘導体に対し0.1当量混合した後、それから得られた混合物をトルエンに2重量%の濃度で溶解させて本発明の半導体層形成用組成物を製造した。
次いで、洗浄されたプラスチック基板に、ゲート電極として用いられるクロムをスパッタリング法で1000Å蒸着した後、ゲート絶縁膜として用いられるSiOをCVD法で1,000Å蒸着した。その上に、ソース−ドレイン電極として用いられるITOをスパッタリング法で1,200Å蒸着した。基板は、有機半導体材料を蒸着する前に、イソプロピルアルコールを用いて10分間洗浄し、乾燥させて使用した。試料は、ヘキサンに10mMの濃度で希釈させたオクタデシルトリクロロシラン溶液に30秒間浸漬し、アセトンで洗浄した後、乾燥させる。その後、前記で準備した組成物を1,000rpmで800Åの厚さにスピンコードしてアルゴン雰囲気の下で100℃、1時間ベーキングして半導体層を形成することにより、図2に示したボトムコンタクト(Bottom-contact)型構造のOTFT素子を製作した。
【0055】
実施例2
半導体層を形成する物質として、前記合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体にチオフェンカルボン酸を前記誘導体に対し1当量混合した混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0056】
実施例3
半導体層を形成する物質として、前記合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体にチオフェンカルボン酸を前記誘導体に対し10当量混合した混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0057】
実施例4
半導体層を形成する物質として、前記合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体にチオフェンエチルアミンを前記誘導体に対し1当量混合した混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0058】
実施例5
半導体層を形成する物質として、前記合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体にビピリジンジカルボン酸(2,2'-bipyridine-4,4'-dicarboxylic acid)を前記誘導体に対し1当量混合した混合物を使用した以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0059】
実施例6
チオフェンカルボン酸に代えて、安息香酸、フタル酸、ナフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルジカルボン酸、ベンジルアミン、チオフェンカルボキシルアミド、チオフェンエチルアミン、フェノール、チオフェンメタノール及びチオフェンエタノールをそれぞれ使用する以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0060】
実施例7
合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体に代えて、式(18)の化合物を用いる以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0061】
比較例1
半導体層を形成する物質として、前記合成例1で得たピリミドピリミジンオリゴチオフェン誘導体のみを使用した以外は実施例1と同様にして、有機薄膜トランジスタを製造した。
【0062】
[有機薄膜トランジスタの特性評価]
前記実施例1〜3および比較例1で製造した有機薄膜トランジスタの電気的特性を評価するために、KEITHLEY社のSemiconductor Analyzer(4200−SCS)を用いて電流伝達特性を測定した後、その測定結果を図3に示した。
図3を参照すると、実施例で製造した本発明の有機薄膜トランジスタの場合、比較例1の有機薄膜トランジスタに比べてオン(on)状態における電流が大きく向上して電荷移動度と電流点滅比が同時に改善されたことを確認することができる。
【0063】
また、前記実施例1〜5および比較例1で製造した有機薄膜トランジスタの電荷移動度および電流点滅比を下記の通りに測定し、その測定結果を表1に示した。
【0064】
1)電荷移動度
電荷移動度は、前記電流伝達曲線を用いて下記の飽和領域(saturation region)の電流式から(ISD1/2とVG-を変数としたグラフを得、そのグラフの傾きから求めた。
【数1】

上記式中、ISDはソース−ドレイン電流、μまたはμFETは電荷移動度、Cは酸化膜の静電容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vはゲート電圧、Vはしきい電圧をそれぞれ示す。
【0065】
2)電流点滅比(Ion/Ioff
電流点滅比は、オン(on)状態の最大電流値とオフ(off)状態の最小電流値との比で求められ、下記の関係を持つ。
【数2】

式中、Ionは最大電流値、I-offは遮断漏れ電流(off-state leakage current)、μは電荷移動度、σは薄膜の伝導度、qは電荷量、Nは電荷密度、tは半導体膜の膜厚、Cは酸化膜の静電容量、Vはドレイン電圧をそれぞれ示す。遮断漏れ電流Ioffは、オフ状態のときに流れる電流であって、オフ状態における最小電流から求めた。

【表1】

表1より、本発明の有機半導体材料を用いて製造された実施例1〜5の有機薄膜トランジスタは、比較例1の有機薄膜トランジスタに比べてオン状態における電流が約100倍〜1000倍程度増加して、特に電荷移動度が20倍〜120倍程度向上した優れた電気的特性を示すことを確認することができる。
また、実施例6及び実施例7の有機薄膜トランジスタについて、同様に評価したところ、実施例1とほぼ同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一具現例に係る有機半導体材料を構成する芳香族環化合物間の水素結合を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1で製造した有機薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1〜3および比較例1で製造された各有機薄膜トランジスタの電流伝達特性曲線である。
【符号の説明】
【0067】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4、5 ソース/ドレイン電極
6 半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
(Ar−(Ar−(Ar (1)
(式中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、Ar、Ar、Arのうち少なくとも1つは窒素または酸素で置換されており、
a、bおよびcは、それぞれ独立に、0〜20の整数である(但し、a+b+c≠0)。)
で表される芳香族環化合物と、式(2)
(Ar−(Ar (2)
(式中、Ar、Arは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、ArおよびArのうち少なくとも1つは、1つ以上の炭素環原子が窒素または酸素で置換されており、或いは1つ以上の水素原子が、−NHまたは−OHを含んでいる置換基で置換されており、
dおよびeはそれぞれ独立に0〜10の整数である(但し、d+e≠0)。)
で表される芳香族環化合物との混合物からなる有機半導体材料。
【請求項2】
前記Ar、Ar、Arのうち少なくとも1つは、1つ以上の炭素環原子が窒素または酸素で置換されており、或いは1つ以上の水素原子が−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、RおよびRはそれぞれ独立に水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基またはC2〜C30のヘテロアリール基であり、Rは水素、ヒドロキシ基、ハロゲン、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C2〜C30のヘテロアリール基であり、RはC1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基またはC2〜C30のヘテロアリール基である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、および窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基よりなる群から選択された1種以上の置換基で置換されている請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項3】
前記アリール基またはヘテロアリール基は、
【化1】

【化2】

で表される化合物の1価又は2価の基からなる群から選択される1以上の基である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項4】
前記アリール基またはヘテロアリール基に置換された置換基は、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択された1種以上である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項5】
式(1)で表される芳香族環化合物は、式(5)〜(13)
【化3】

【化4】

(式中、X、X、XおよびXは、それぞれ独立に−O−、−NR−、−CO−または単結合であり(ここで、Rは水素、C1〜C30のアルキル基、C6〜C30のアリール基またはC2〜C30のヘテロアリール基である。)、
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、置換または非置換のC6〜C30のアリール基、または置換または非置換のC2〜C30のヘテロアリール基であり、
前記アリール基またはヘテロアリール基に置換された置換基は、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択される1種以上である。)
で表される化合物である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項6】
式(1)で表される芳香族環化合物は、式(14)および(15)
【化5】

(式中、R、R、RおよびRは、上記と同義である。)
で表される請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項7】
式(1)で表される芳香族環化合物は、式(16)および(17)
【化6】

(式中、Rは−H、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COOR(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択される。)
で表される請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項8】
式(1)で表される芳香族環化合物は、式(18)および(19)
【化7】

で表される請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項9】
式(1)で表される芳香族環化合物は、重量平均分子量(Mw)が100〜10,000の範囲である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項10】
式(2)で表される芳香族環化合物は、
【化8】

【化9】

(式中、R、Rは、それぞれ独立に、−H、−OH、−NR、−CONR、−COR、−COORd-(ここで、R、R、R及びRは上記と同義である。)、C1〜C30のヒドロキシアルキル基、窒素または酸素を含むC2〜C30のヘテロアリール基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、C1〜C30のアルキル基、C1〜C30のアルケニル基、C1〜C30のアルキニル基、C1〜C30のアルコキシ基、C1〜C30のアルコキシアルキル基、C6〜C30のアリール基、C6〜C30のアリールアルキル基、およびC5〜C30のシクロアルキル基よりなる群から選択できる。)
で表される化合物である請求項1に記載の有機半導体素材。
【請求項11】
式(2)で表される芳香族環化合物は、チオフェンカルボン酸、チオフェンジカルボン酸、安息香酸、フタル酸、ナフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4’−ヒドロキシ−4−ビフェニルジカルボン酸、ベンジルアミン、チオフェンカルボキシルアミド、チオフェンエチルアミン、フェノール、チオフェンメタノール、チオフェンエタノール、およびビピリジンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項12】
式(2)で表される芳香族環化合物は、重量平均分子量(Mw)が50〜10,000の範囲である請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項13】
式(2)で表される芳香族環化合物は、式(1)で表される芳香族環化合物に対し0.001〜1000当量含まれる請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項14】
式(2)で表される芳香族環化合物は、式(1)で表される芳香族環化合物に対し0.01〜10当量含まれる請求項1に記載の有機半導体材料。
【請求項15】
請求項1に記載の有機半導体材料および有機溶媒を含むことを特徴とする半導体層形成用組成物。
【請求項16】
前記有機溶媒は、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコールおよびジアセトンアルコールを含むアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンを含むケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールおよび1,6−へキサンジオールを含むグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノエチルエーテルを含むグリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を含むグリコールエーテルアセテート類;エチルアセテート、ブトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)およびジヒドロテルピネオールアセテート(DHTA)を含むアセテート類;テルピネオール類;トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート(TEXANOL)、ジクロロエテン(DCE);クロロベンゼン;およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)よりなる群から選択される1種以上である請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、有機半導体材料0.1〜10重量%および有機溶媒90〜99.9重量%を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、有機半導体材料0.5〜4重量%および有機溶媒96〜99.5重量%を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
請求項15に記載の組成物を用いて形成された有機半導体薄膜。
【請求項20】
前記薄膜は、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スクリーンコーティング、噴霧コーティング、スピンキャスティング、フローコーティング、スクリーン印刷、インクジェッティングおよびドロップキャスティングよりなる群から選択されるコーティング方法で形成されたものである請求項19に記載の有機半導体薄膜。
【請求項21】
請求項19に記載の有機半導体薄膜を含む有機電子素子。
【請求項22】
前記有機電子素子は、薄膜トランジスタ、電界発光素子、太陽電池又はメモリのいずれかである請求項21に記載の有機電子素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−329481(P2007−329481A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−149929(P2007−149929)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】