説明

有機性廃液の処理装置及び処理方法

【課題】有機性廃液などから放流可能な蒸留水を連続式に取り出し、最終的に炭化することによって容積を極めて小さくした炭化物を得る。
【解決手段】処理液に対して所定の処理を施す液処理部と乾燥部と炭化部を有し、液処理部は、処理液を蒸発させる第1蒸発器18と、そこで蒸発しなかった残渣を蒸発させる第2蒸発器20と、第1、第2蒸発器で蒸発した蒸気をそれぞれ2段階で凝縮する第1分縮器19あるいは第2分縮器とを有し、第1、第2分縮器で凝縮した所定の蒸留水を第1蒸発器18へ還流させるようにしたものであり、乾燥部は、第2蒸発器20で蒸発しなかった濃縮液を乾燥機本体51内に噴霧させ、熱風によって乾燥させるようにした乾燥機50を有し、記炭化部は、乾燥部で得られた粉体物を炭化する炭化炉60を有する有機性廃液の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜舎から排出される蓄糞尿などの有機性廃液や、その有機性廃液を嫌気発酵させてバイオガスを取り出した後のいわゆる消化液を減容化し、貯留や運搬などの取り扱いが容易な肥料を生産するものであって、連続処理が可能な有機性廃液の処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、バイオガスプラントでは、嫌気発酵により蓄糞尿からバイオガスの採取処理が行われるが、処理後の消化液には多量の窒素分やSS分が残存しているので、この液を一般の河川や水環境へ直接放流することはできない。そのため、消化液を液体肥料として有効に利用することが望まれる。ただし、消化液はバイオガスを採取する前の状態からほとんど重量や容積の変化がないため、大量の消化液の貯留や運搬などが問題であった。例えば、牛200頭を有する畜舎では、およそ一日16トンの蓄糞尿が排出されるが、肥料として散布する時期は春と秋の年2回であるため、半年分の約3000tonの消化液を貯留しておく極めて大型のタンクが必要になる。また、液体肥料として消化液をタンクの周辺に散布できる環境が整っていればよいが、離れた土地に散布する場合には運搬の手間やコストがかかってしまう。更に、圃場が狭くて散布できないような場所では、そもそも消化液を液体肥料として利用できないため、多大な手間とコストをかけて排水処理を行うこととなる。
【0003】
そうした問題を解決するため、特開2003−117593号公報には有機性廃液の処理装置及び処理方法が提案されている。これは、アンモニア及び水分を含む有機性廃棄物の原液、有機性廃棄物に前処理(固形分の一部除去等)を施した液、有機性廃棄物をメタン発酵処理した後の消化脱離液、又は消化脱離液から固形分を一部除去した液などを処理するものであって、加熱濃縮して濃縮液と蒸留水とに分けることにより、廃水処理設備を必要とせず、濃縮工程で得られた蒸留水は簡便な方法で放流可能であり、濃縮液を液体肥料として有効利用する場合には利用性、輸送性を向上する処理装置及び処理方法として記載されている。
【0004】
図7は、同公報に記載された有機性廃液処理装置について、その概略構成を示した図である。これには、畜糞尿等の有機性廃棄物をメタン発酵した後の消化液を処理する場合が示されている。消化液貯槽100内の消化液は、ポンプ101により第1蒸発装置110における吸収塔111に導かれるが、その間に熱交換器102,103,104で加温される。吸収塔111に噴霧された消化液は、蒸発したアンモニアがポンプ112を経由して第1蒸発装置110の熱交換器113に導入される。熱交換器113にはアンモニアを除去した消化液が循環しており、導入されたアンモニアが循環消化液と熱交換して冷却・凝縮される。
【0005】
凝縮したアンモニア水は、熱交換器104で冷却され、気液分離装置105にて気体側の濃縮アンモニアと残りの液体とに分離される。分離された液体は吸収塔111に噴霧され、気体側の濃縮アンモニアは熱交換器102で冷却・凝縮されてアンモニアタンク200に貯留される。この濃縮アンモニア水は液体肥料として利用可能である。一方、アンモニアを除去した消化液は、ポンプ114により抜き出されて加熱器115で加熱され、熱交換器113でさらに加熱されて循環し、その一部が抜き出されて第2蒸発装置120に導入される。
【0006】
第2蒸発装置120では、アンモニアを除去した消化液がポンプ121に送り出されて加熱器122、さらに熱交換器123でも加熱されて循環している。消化液は、加熱器122や熱交換器123によって加熱濃縮され、蒸発した水分が蒸気取出し口124から取り出される。取り出された蒸気はポンプ125を経由してスクラバー等の湿式ガス洗浄装置126に導入され、ここでガス洗浄が行われる。湿式ガス洗浄装置126からの洗浄後の液は第2蒸発装置120の循環消化液に混合される。湿式ガス洗浄装置126には、薬品タンク130,140からそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液、硝酸水溶液をガス洗浄用の薬品が供給されている。
【0007】
湿式ガス洗浄装置126で洗浄された蒸気は、前述の熱交換器123で循環消化液と熱交換して冷却・凝縮され、蒸留水として取り出される。蒸留水は蒸留水受槽127及びポンプ128を経由して熱交換器103で冷却され、蒸留水貯槽300に貯留される。蒸留水はそのまま、あるいは簡単な処理を施して一般の河川などに放流できる。一方、加熱器122及び熱交換器123で加熱濃縮された消化液は、第2蒸発装置120から抜き出され、濃縮液貯槽400に貯留される。この濃縮消化液は液体肥料として利用可能であり、濃縮により利用性、輸送性が高まっている。
【特許文献1】特開2003−117593号公報
【特許文献2】特開2002−241759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
こうした従来の有機性廃液の処理装置および処理方法では、排水基準を満たした蒸留水を得るために、湿式ガス洗浄装置126に薬品タンク130,140から水酸化ナトリウム水溶液や酸水溶液といったガス洗浄用の薬品が使用されるため、消化液を処理するためのコストが上がってしまい、薬品供給のための手間もかかるものであった。
また、従来の有機性廃液の処理装置および処理方法では、有機性廃棄物に前処理(固形分の一部除去等)を施した液を用いる場合、例えば濃硫酸を使用することが考えられ、濃硫酸を使用すれば濃縮液が酸性になるので中和する必要がある。そのため、薬品使用の安全性やコストがかかることになり、好ましいものではない。
【0009】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、薬品を使用することなく有機性廃液などから放流可能な蒸留水を連続式に取り出し、最終的に炭化することによって容積を極めて小さくした炭化物を得るようにした有機性廃液の処理装置および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機性廃液の処理装置は、有機性廃液やその有機性廃液に対して一定処理を施した消化液などアンモニア及びアンモニウム塩及び水分を含む処理液から、蒸留水、アンモニア水および濃縮液を分離して取り出す液処理部と、その液処理部で取り出された濃縮液を噴霧乾燥させて粉体物を生成する乾燥部と、その粉体物を加熱処理して炭化物を生成する炭化部とを有し、前記液処理部は、前記処理液を蒸発させる第1蒸発器と、前記第1蒸発器で蒸発しなかった残渣を蒸発させる第2蒸発器と、前記第1蒸発器で蒸発した蒸気を高温側凝縮部と低温側凝縮部との2段階で凝縮する第1分縮器と、前記第2蒸発器で蒸発した蒸気を高温側凝縮部と低温側凝縮部との2段階で凝縮する第2分縮器とを有し、前記第1分縮器の高温側凝縮部で凝縮した蒸留水と、前記第2分縮器の低温側凝縮部で凝縮した蒸留水とを前記処理液の一部として前記第1蒸発器へ還流させるようにしたものであり、前記乾燥部は、前記第2蒸発器で蒸発しなかった残渣(濃縮液)を乾燥機本体内に噴霧させ、熱風によって乾燥させるようにした乾燥機を有し、前記炭化部は、前記乾燥部で得られた粉体物を炭化させる炭化炉を有するものであることを特徴とする。
また、本発明に係る有機性廃液の処理装置は、前記炭化部が、前記炭化炉から発生する乾留ガスを再燃焼する燃焼機を有し、その乾留ガスを再燃焼して得られた高温ガスを前記乾燥部の乾燥機に熱風として供給するようにしたものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る有機性廃液の処理装置は、前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼する微粉炭ボイラを有し、当該微粉炭ボイラに前記液処理部で得られた蒸留水を供給して蒸気を得るようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理装置は、前記微粉炭ボイラで得られた蒸気を、前液処理部の記第1蒸発器及び第2蒸発器へ供給するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理装置は、前記微粉炭ボイラには蒸気タービン発電機が接続され、前記微粉炭ボイラで得られた蒸気によって当該蒸気タービン発電機を駆動させて電気を得るようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理装置は、前記炭化炉が炭化室と賦活室とを備え、賦活処理によって活性炭を得るものであり、前記微粉炭ボイラで発生した蒸気が前記燃焼機に送られ、乾留ガスの燃焼により得られた熱エネルギを受け取って過熱蒸気を得るものであって、その過熱蒸気を前記炭化炉の賦活室に導入するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理装置は、前記液処理部には、処理液を生成する工程に固液分離機が設けられ、その固液固液分離機から排出された固形分を前記乾燥部で得られた粉体物とともに炭化炉へと投入するようにしたものであることが好ましい。
【0012】
本発明に係る有機性廃液の処理方法は、有機性廃液やその有機性廃液に対して一定処理を施した消化液などアンモニア及びアンモニウム塩及び水分を含む処理液から、蒸留水、アンモニア水および濃縮液を分離して取り出す液処理工程と、その液処理工程で取り出された濃縮液を噴霧乾燥させて粉体物を生成する乾燥工程と、その粉体物を炭化させて炭化物を生成する炭化工程とを有し、前記液処理工程は、前記処理液を蒸発させる第1蒸発工程と、その第1蒸発工程で蒸発しなかった残渣を蒸発させる第2蒸発工程と、第1蒸発工程で蒸発した蒸気を高温側と低温側との2段階で凝縮する第1分縮工程と、第2蒸発工程で蒸発した蒸気を高温側と低温側との2段階で凝縮する第2分縮工程とを有し、第1分縮工程の高温側凝縮で得た蒸留水と、第2分縮工程の低温側凝縮で得た蒸留水とを前記処理液の一部として前記第1蒸発工程へ還流させるようにしたものであり、前記乾燥工程は、前記第2蒸発工程で蒸発しなかった残渣(濃縮液)を乾燥機本体内に噴霧させ、熱風によって乾燥させるようにしたものであり、前記炭化工程は、前記乾燥工程で得られた粉体物を炭化炉で炭化するようにしたものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記第1蒸発工程と前記第2蒸発工程が、前記第1蒸発工程で蒸発する処理液の蒸発量よりも前記第2蒸発工程で蒸発する処理液の蒸発量を多くするようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記炭化工程では、前記炭化炉から発生する乾留ガスを再燃焼し、その再燃焼で得られた高温ガスを前記乾燥工程の熱風とするようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記第1凝縮工程で得られたアンモニア水に硫酸を添加し、アンモニアを固定化した硫酸アンモニウムを前記濃縮液に所定量混入したものを噴霧乾燥し、更に炭化させるようにしたものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼することにより、前記液処理工程で得られた蒸留水から蒸気を得るようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼することにより、前記液処理工程で得られた蒸留水から蒸気を得て、更にその蒸気を前液処理工程の記第1蒸発工程及び第2蒸発工程で前記処理液を蒸発させるための熱源とするようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼することにより、前記液処理工程で得られた蒸留水から蒸気を得て、更にその蒸気によって蒸気タービン発電機を駆動させて電気を得るようにしたものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記炭化工程が、炭化室と賦活室とを備え、賦活処理によって活性炭を得るものであり、前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼して発生させた蒸気を、前記炭化炉で発生した乾留ガスの再燃焼によって得た熱エネルギにより過熱蒸気とし、その過熱蒸気を前記炭化炉の賦活室に導入するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係る有機性廃液の処理方法は、前記液処理工程には、処理液を生成する工程に固液分離機が設けられ、その固液固液分離機から排出された固形分を前記乾燥工程で得られた粉体物とともに炭化炉へと投入するようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
よって、本発明に係る有機性廃液の処理装置および処理方法によれば、その液処理部の処理工程において、第1蒸発器と第2蒸発器の2段階で処理液を蒸発させ、それぞれにおいて発生した蒸気を高温側と低温側とで凝縮する分縮を行い、アンモニア水や蒸留水以外のものを還流液として再び第1蒸発器へ戻すように還流させる。このことにより、薬品を使用することなく連続処理において高濃度のアンモニア水を得ることができ、供給する処理液から多くの蒸留水を効率良く取り出すことができる。そして、乾燥部の乾燥工程で濃縮液を粉体化し、更に炭化部炭化工程によって炭化物にすることで、極めて重量や容積を小さくすることが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る有機性廃液の処理装置及び処理方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。バイオガスプラントでは、前述したように畜舎から排出される蓄糞尿においてCH4 ,CO2 ,H2S ,H2 などのバイオガスを採取し、本実施形態の有機性廃液処理装置では、そのバイオガスプラントから得られる消化液を固液分離機にかけて固形分と、濾液とに分離する。ここで得られる固形分は、バイオガスプラントにおいてメタン菌によって有機物が無機化されているので、そのまま発酵済み堆肥として利用することができる。そして、本実施形態では特に、固形分が除かれた消化液の濾液(以下、このようにして得られた濾液を「原液」という)について液量を減容化し、多くを一般河川へ放流できるようにしたものである。
【0018】
図1及び図2は、有機性廃液処理装置の実施形態を概念的に示した図である。そこで先ず、図1に示す有機性廃液処理装置の液処理部の構造について説明する。
有機性廃液処理装置は、バイオガスプラントから送られた消化液を一時的に蓄える消化液タンク11を有し、それには所定量の消化液を二次側に送るための定量ポンプ12が接続されている。そして、この定量ポンプ12を介して固液分離機13が接続されている。固液分離機13としては、例えばフィルタープレス、スクリュープレスまたは遠心式分離機が用いられる。
【0019】
その固液分離機13には、消化液から分離して排出された固形分を蓄えておくための堆肥タンク14が接続され、更に、消化液から固形分が除かれた原液を予熱するための加熱容器15が接続されている。固液分離機13を用いて固形分を除去した原液を送り出すのは、例えば蓄糞尿を扱うバイオガスプラントからの消化液には、藁くずなどの夾雑物が発酵されずに残っているので、それが二次側に接続されている蒸発器などにおいて悪影響を及ぼさないようにするためである。
【0020】
本実施形態の有機性廃液処理装置は、連続処理によって原液を蒸留水とアンモニア水に分離するようにしたものであり、加熱容器15の二次側には供給ポンプ16があって単位時間当たり一定量の原液が連続して送られるようになっている。供給ポンプ16には混合槽17が接続され、その先に第1蒸発器18が接続されている。この第1蒸発器18には、そこで蒸発した原液の蒸気が送り込まれる第1分縮器19と、第1蒸発器18で蒸発しないで残った原液が送り込まれる第2蒸発器20が接続されている。そして、その第2蒸発器20には、やはりそこで蒸発した蒸気が送り込まれる第2分縮器21と、第2蒸発器20で蒸発しないで残った濃縮液が送り込まれるタンク23が接続されている。
【0021】
第1分縮器19及び第2分縮器21は、第1蒸発器18及び第2蒸発器20でそれぞれ発生した蒸気を2段階の温度で別々に凝縮、いわゆる分縮させるようにしたものである。原液内に含まれているアンモニアは水よりも沸点が低く、蒸発して気化したアンモニアが水より凝縮し難いことから、第1分縮器19及び第2分縮器21は、アンモニア濃度が低くなるように高温帯で高沸分を凝縮させる高温側凝縮部と、アンモニア濃度が高くなるように低温帯で低沸分を凝縮させる低温側凝縮部とが設けられている。
【0022】
こうした蒸発器18,20や分縮器19,21には、例えば次のような構成のものが使用されている。第1蒸発器18と第2蒸発器20は、蒸発缶に伝熱管が設けられ、噴霧されて落ちてくる原液が伝熱管に触れて蒸発するようにするため、伝熱管にはボイラで発生した蒸気が送り込まれるように構成されている。そして、この第1蒸発器18と第2蒸発器20にそれぞれ接続された第1分縮器19と第2分縮器21は、高温側凝縮部と低温側凝縮部の冷却源にクーリングタワーが設置され、そこで生成された冷水が両者を循環するような流路が形成されている。その際、冷水の流量を調節して高温側凝縮部と低温側凝縮部とで温度差が生じるように構成されている。
【0023】
そして、第1分縮器19は、アンモニア濃度の低い蒸留水が取り出される高温側凝縮部が混合槽17に接続され、アンモニア濃度の高い蒸留水が取り出される低温側凝縮部がタンク22に接続されている。一方、第2分縮器21は、アンモニア濃度の低い蒸留水を取り出す高温側凝縮部がタンク24に接続され、アンモニア濃度の高い蒸留水を取り出す低温側凝縮部が混合槽17に接続されている。すなわち、本実施形態の有機性廃液処理装置では、2組の蒸発器と分縮器とを使用して蒸発と凝縮を行って原液からアンモニア水と蒸留水とを連続的に取り出すようにしたものであり、その際、分縮器から取り出したアンモニア濃度の低い蒸留水を再び蒸発器に戻す還流構造となっている。
【0024】
ところで、バイオガスプラントから得られた原液には水の他にリンやカリ、アンモニア態窒素などが多量に含まれているが、最終的に得られる蒸留水は放流可能な排水基準として定められている全窒素の含有量120mg/Lを超えないようにする必要がある。この点、従来の有機性廃液処理装置では薬品を使用して浄化を行っていた。本実施形態では、第1蒸発器18及び第1分縮器19と、第2蒸発器20及び第2分縮器21との2段階で原液の蒸発と凝縮を行い、更には分縮したアンモニア濃度の低い蒸留水を還流させて原液に加えて再び蒸発及び凝縮を行わせることで、効率良くアンモニアの含有量を基準値以下とした蒸留水を取り出すようにしている。なお、混合槽17から送り出される原液と還流した蒸留水との混合液を以下では「処理液」という。
【0025】
つまり、第1蒸発器18では低沸点のアンモニアが水よりも先に蒸発するため、蒸発しなかった処理液(濃縮液)はアンモニア濃度が低い状態で第2蒸発器20へと供給され、そこで再び蒸発し第2分縮器で分縮することにより放流可能な蒸留水が取り出されるようにしている。第1分縮器19及び第2分縮器21で分縮されたアンモニア濃度の低い蒸留水は、排水基準を超えてしまうため放流することはできず、一方でこれを液体肥料となるアンモニア水とするならば、供給された原液から蒸留水として取り出す割合が低下した効率の悪いものになってしまう。そこで、本実施形態では、分縮したアンモニア濃度の低い蒸留水を還流させて再処理することで、高い割合で放流可能な蒸留水が取り出されるようにしている。
【0026】
第1蒸発器18と第1分縮器19、或いは第2蒸発器20と第2分縮器21は、例えば図3に示すように一体に構成した濃縮機によって構成されている。図3は、その濃縮機の構造を概念的に示した図である。
濃縮機30は、蒸発缶31内に処理液が噴霧され、落ちていく処理液が複数の伝熱管32によって加熱されるようになっているが、その伝熱管32には、蒸発缶31内で発生した蒸気が送り込まれるよう構成されている。そのため蒸発缶31には蒸気管33が接続され、発生した蒸気を断熱圧縮するための圧縮機34が設けられている。
【0027】
従って、この圧縮機34の断熱圧縮によって加圧された蒸気が伝熱管32に送り込まれ、その伝熱管32に噴霧された処理液が触れることにより新たな蒸気を発生させ、その一方で伝熱管32内の過熱蒸気は潜熱を奪われて凝縮するようになっている。また、濃縮機30は、缶内を真空引きして沸点を下げるようにするため、真空ポンプ35が接続されている。これにより、缶内が25kPa abs.の圧力に保たれ、処理液の蒸発および凝縮が同圧における水の沸点である65℃近傍で行われるようになっている。
【0028】
濃縮機30の内部には数百本の単位で伝熱管32が設置され、上下方向に3つのブロックに分けられている。そして、圧縮機34を通って加圧された過熱蒸気が下段のブロックに送り込まれるように蒸気管33が接続されている。伝熱管32は、下段ブロック及び中段ブロックが高温側凝縮部36となり、伝熱管32の上段ブロックが低温側凝縮部37となり、その凝縮部36,37には、各工程で凝縮した蒸留水を貯留する補助タンク38と39が設けられている。
【0029】
濃縮機30へ送られた処理液は、蒸発缶31内の伝熱管32に噴霧され、その表面に触れて一部が蒸発しながら落下していき、蒸発しなかったものが残渣となる。蒸気は、蒸気管33の途中で圧縮機34によって断熱圧縮が行われ、加圧された過熱蒸気が伝熱管32へと送り込まれ、蒸発缶31内に噴霧された処理液が伝熱管32に触れることによって潜熱を奪われて凝縮する。その際、高温側凝縮部36では、伝熱管32に触れる処理液の温度が上がっているため、沸点より僅かに低い温度で過熱蒸気が凝縮し、凝縮した蒸留水は補助タンク38に蓄えられ。そして、高温側凝縮部36で凝縮しなかった過熱蒸気は低温側凝縮部37に送られ、そこで完全に凝縮されて蒸留水が補助タンク39に蓄えられる。一方、蒸発缶31内で蒸発しなかったものが残渣(濃縮液)として取り出される。
【0030】
そして、下部タンク40には蒸留水とならずに濃縮液が残るため、この濃縮液を蓄えるタンク23が下部タンクに接続されている。この濃縮液は、肥料の主成分となる3要素、窒素、リン酸、カリの肥料成分を保ったままの液体肥料として回収することができるが、本実施形態では、図2に示す乾燥部で粉体化し、更に間接加熱によって炭化することにより、取り扱いの容易な炭化物をつくり出すようにしている。そこで次に、図2に示す有機性廃液処理装置の乾燥部及び炭化部の構造について説明する。
【0031】
乾燥部は、主に乾燥機50によって構成されている。乾燥機50の乾燥機本体51は、下端の口が小さくなるように漏斗状が形成されたものであり、上端部に噴霧手段としてロータリーアトマイザ52が設けられている。乾燥機本体51とタンク23とはポンプ53を介して接続され、ポンプ53の駆動によってロータリーアトマイザ52に濃縮液が供給されるようになっている。そして、その乾燥機本体51には、二次側の炭化部で発生した熱風が上方から供給される一方、乾燥機本体51の下端には漏斗状の排出口51aが形成され、粉体が落下するようになっている。
【0032】
乾燥機50には排出管を介して微粉を回収するバグフィルタ57が接続され、更にその二次側には排風機58が接続され、乾燥機本体51内の排気処理が行われるよう構成されている。そうしたバグフィルタ57にも下端に漏斗状の排出口57aが形成され、乾燥機本体51及びバグフィルタ57の下方に配置されたコンベア59に、各排出口51c,57cから落下した粉体物が受けられるようになっている。コンベア59は、炭化炉60へと延び、乾燥機本体51やバグフィルタ57から炭化炉60へ粉体物を搬送するように構成されている。
【0033】
次に、本実施形態の有機性廃液処理装置には、様々な構造の炭化炉が使用可能であるが、例えば特開2002−241759号公報に記載された炭化炉を例に挙げて説明する。この炭化炉60にはバーナー61が設けられ、燃焼室を構成する燃焼体62内に熱風が送り込まれるようになっている。その燃焼体62内には更に炭化処理物である粉体を入れる炭化室を構成する熱分解体63が設けられ、燃焼体62と熱分解体63との2重構造になっている。燃焼体62は断熱壁で覆われ、その燃焼体62と熱分解体63との間に触媒を充填した触媒固定層64が形成されている。
【0034】
熱分解体63には、燃焼体62を突き抜けて上方に供給管65が接続され、その先端にはロータリーバルブ66を備え、コンベア59によって搬送された粉体物を受けて熱分解体63内に供給する投入フィーダ67が設けられている。そして、燃焼体62には燃焼済みの高温ガスを排気するための排気ガス出口62aが突設されている。一方、熱分解体63には、その内部で発生した可燃性ガス(乾留ガス)を外部に送るための乾留ガス口63aが設けられており、燃焼機68に接続されている。燃焼機68は、可燃性ガスである乾留ガスを燃焼し、発生する高温ガスを乾燥部で使用する熱風として供給するようにしたものである。また、熱分解体63には、熱分解処理してできた粉体物の炭化物を排出するため、底部にスクリュウを備えた排出口63bが形成されている。
【0035】
次に、有機性廃液処理方法の一実施形態を、図1に示した有機性廃液処理装置の運転によって行われる処理の流れに従って説明する。
バイオガスプラントから送られた消化液は消化液タンク11に一時的に蓄えられ、定量ポンプ12によって所定量の消化液が固液分離機13に送り込まれる。固液分離機13では、遠心分離によって固形分が取り除かれた原液が加熱体15へ送られ、藁くずなどの固形分は堆肥タンク14に入れられる。こうして堆肥タンク14に送られた固形分は、無機態の窒素、リン、カリを含んだ発酵済みの堆肥として利用される。加熱体15では、原液が撹拌されながらヒータによって暖められて予熱処理が施される。そして、供給ポンプ16によって単位時間当たりに一定量の原液が混合槽17へと供給される。
【0036】
混合槽17から以下の流れについては、供給ポンプ16から単位時間当たりに供給される原液aの流量を(100)、アンモニア濃度が1200mg/kgとし、流量とアンモニア濃度について具体的に数値を示して説明する。図5は、各工程での流量とアンモニア濃度を示した図である。
先ず、定常運転時の混合槽17には、第1分縮器19からアンモニア濃度が445mg/kgで流量(20)の還流液bが戻され、更に第2分縮器21からはアンモニア濃度が1805mg/kgで流量(10)の還流液cが戻されている。従って、混合槽17からは、アンモニア濃度1130mg/kg、流量(130)の処理液dが第1蒸発器18へと送り込まれる。
【0037】
第1蒸発器18では、流量(130)のうち流量(30)が蒸発して第1分縮器19へ蒸気eとなって送られ、第2蒸発器20側へは2段階の蒸発量を多くすべく、流量(130)のうち流量(100)が残渣fとして送られる。このとき、沸点が低いアンモニアが多く蒸発し、蒸気eのアンモニア濃度は4198mg/kgと高い値を示し、逆に残渣fは210mg/kgと低い値となる。第1分縮器19では、その蒸気eが高温側凝縮部に送り込まれ(図3参照)、沸点の高い水分が先に凝縮した蒸留水が還流液bとして混合槽17へと戻され、更に低温側凝縮部に送り込まれて凝縮した蒸留水がアンモニア水gとなってタンク22へと蓄えられる。
【0038】
第1分縮器19に供給された蒸気eは、流量(30)のうち流量(20)が還流液bとなり、流量(10)がアンモニア水となる。また、このときのアンモニア濃度は、還流液bが445mg/kgと低く、アンモニア水gは11700mg/kgと高濃度である。第1蒸発器18から第2蒸発器20へと送られたアンモニア濃度の低い残渣fは、更にここで蒸発して蒸気hが取り出されて第2分縮器21へと送られ、蒸発しなかった残渣は濃縮液iとしてタンク23へと蓄えられる。このときも、アンモニアの沸点が低いため蒸気hのアンモニア濃度は259mg/kgと高く、逆に濃縮液iは13mg/kgとアンモニア濃度が低くなった。そして、タンク23内の濃縮液iは後述するように図2の乾燥部へと送られる。
【0039】
一方、第2分縮器21に供給された蒸気hは、高温側凝縮部で凝縮した蒸留水のアンモニア濃度が40mg/kgと低く、これが排水基準を満たした蒸留水jとしてタンク24に蓄えられ、低温側凝縮部で凝縮した蒸留水は還流液cとして混合槽17へと戻される。なお、蒸気hの流量(80)に対して蒸留水jは流量(70)であり、還流液cは流量(10)となる。
【0040】
こうして本実施形態では、供給ポンプ16から送り出される原液aは連続的に処理され、単位時間当たりに供給される流量(100)の原液aのうち、流量(70)が放流する蒸留水としてタンク24に採取され、流量(10)がアンモニア水として採取され、更には流量(20)が濃縮液iとしてタンク23に取り出される。従って、連続処理において高濃度のアンモニア水gを得ることができ、供給される原液の70%を蒸留水jとして効率良く取り出すことができる。
【0041】
ところで、濃縮液は、全体の20%であっても長期にわたって蓄えておくには、容量の大きなタンクが必要になり、液体のままでは取り扱いも不便である。そこで、本実施形態では、図2に示す乾燥部で濃縮液の粉体化が行われる。
乾燥部では、タンク23の濃縮液はポンプ53によってロータリーアトマイザ52へと供給され、同時に二次側の燃焼機68から乾燥機本体51へ熱風が送り込まれる。乾燥機本体51内では、ロータリーアトマイザ52から高速回転した遠心力によって濃縮液が霧状化に噴霧され、燃焼機63から送り込まれた熱風に触れた濃縮液が噴霧直後に蒸発して乾燥する。
【0042】
前工程で得られた濃縮液は、こうして乾燥機本体51内で粉体になり、その粉体物が底部に形成された漏斗状の排出口51cから落下して取り出される。また、乾燥機本体51に接続された排出管59からは内部の空気が排風機58によって吸引排気され、途中のバグフィルタ57によっても、粉体物が漏斗状の排出口57cから落下して取り出される。乾燥機本体51やバグフィルタ57から落ちた粉体物は、下のコンベア61に載って炭化炉62へと搬送され、炭化炉60の投入フィーダ67へ落とされる。本実施形態では、乾燥部で得られた粉体物を更にこの炭化炉60によって熱分解処理して炭化させるようにしている。
【0043】
投入フィーダ67に落とされた粉体物は、ロータリーバルブ66の回転によって熱分解体63内に堆積されていく。そして、バーナー61の稼働によって加熱した高温ガスが燃焼体62内に送り込まれると、充填された触媒固定層64加熱され、それによって粉体物を内部に有する熱分解体63が加熱される。熱分解体63を加熱した燃焼済みの高温ガスは、燃焼体62内を抜けて排気ガス出口62aから排気される。そして、炭化炉60では、こうした間接加熱によって熱分解体63内の粉体物が次第に炭化し、下層の炭化物が順次、スクリューの回転によって排出口63bから取り出して回収される。
【0044】
なお、炭化部では、粉体物の炭化に伴って熱分解体63から乾留ガスが発生する。本実施形態では、その乾留ガスが燃焼機68へ供給され、そこで再燃焼することによって高温ガスが得られるため、この高温ガスが乾燥機本体51へ熱風として送り込まれる。
ところで、乾燥機本体51へは図1の液処理部で生成されたタンク23の濃縮液のみを供給するようにしているが、タンク22に回収されたアンモニア水に硫酸を添加して窒素を固定化した硫酸アンモニウムを濃縮液に所定量混入するようにしてもよい。これにより、最終的に得られる炭化物は、所定の窒素濃度を有する肥料として使用可能なものとなる。
【0045】
よって、本実施形態の有機性廃液処理装置によれば、図1に示す液処理部で、原液aを連続的に処理し、第1、第2蒸発器18,20で蒸発させて高温側と低温側とで凝縮する分縮を行い、一部の蒸留水を還流液b,cとして第1蒸発器18へ戻すようにしているので、連続処理において高濃度のアンモニア水gを得ることができ、供給される原液の70%を蒸留水jとして効率良く取り出すことができるようになった。
また、本実施形態では、液処理部で得られた濃縮液を、最終的には乾燥部及び炭化部とを介し、炭化物として得られるようにしているため、極めて重量や容積を小さくすることが可能になった。
【0046】
ここで、図4は、炭化物による重量軽減及び減溶の結果を示した図である。例えば、200頭の牛を有する畜産農家では、蓄糞尿からバイオガスの採取処理をした消化液の重量は半年分で2000tonにもなる。しかし、本実施形態の有機性廃液処理装置によって廃液処理方法を実行すれば、液処理部によって濃縮液が500tonになり、それが乾燥部で粉体物として100tonになり、更に最終の炭化部では炭化物として30tonにまで減らすことができる。そして、これを体積に換算してみると、消化液、濃縮液、粉体物および炭化物の比重がおよそ1:1:0.3:0.3であるので、消化液から炭化物までの体積が、2000m3 、500m3 、300m3 および100m3 と変化することになる。そして、これを格納しておく円筒形のタンクについて高さHを6mとして直径φがどれくらいになるかを概算すると、濃縮液の場合には20mもの大きさが必要であったが、炭化物では4.5mにも小さくすることが可能になった。
【0047】
従って、本実施形態によれば、炭化することによって家畜糞尿の重量や体積を大幅に減らすことができ、輸送が容易に行えるようになるが、これはその家畜農家内での運搬のみならず、国内から海外までをも含めて輸送が容易になるということである。現在、家畜が食べる飼料は海外からの輸入に多くを依存しているが、その飼料輸出国では肥料不足が問題なところもある。そこで、飼料を消費するだけではなく、本実施形態で得られた炭化物を肥料として飼料輸出国に返すことで、グローバルな資源循環型社会を構築することが可能になる。また、本実施形態では、濃縮液を炭化することによって長時間の保存が可能になるほか、肥料以外にも融雪剤や土壌改良材に用いることができるため、用途が広がることになる。
【0048】
ところで、有機性廃液の処理装置は、更に図6に示すように発展させた構成とすることが有効である。本装置では、炭化炉60の排出口63bから取り出された炭化物を肥料として蓄えておくための炭タンク71を有し、更に得られた炭化物の一部を微粉炭燃料として燃焼する微粉炭ボイラ72が設けられている。その微粉炭ボイラ72は、液処理部で得られた蒸留水を蒸発するためタンク24が接続され、蒸留水が供給されるようになっている。そして、微粉炭ボイラ72は濃縮機30に接続され、その第1蒸発器18と第2蒸発器20の伝熱管に発生した蒸気が送り込まれるようになっている。
【0049】
従って、微粉炭ボイラ72によって得られた蒸気は、濃縮機30の稼働に際して伝熱管32に送り込まれ、蒸発缶31内に噴霧された処理液の最初の蒸気を発生させるようにすることができる。また、微粉炭ボイラ72には蒸気タービン発電機73が接続されている。従って、微粉炭ボイラ72で得られた蒸気は、高圧蒸気にして蒸気タービン発電機に供給され、そこで発電機を回して電気がつくり出される。こうして、炭化炉60で得られた炭化物を燃焼し、液処理部からの蒸留水を蒸発させて得た蒸気から電気エネルギを発生させ、これによって液処理部や乾燥部のポンプ12,16,53などを駆動させることができる。なお、微粉炭ボイラ72には、そこでの燃焼によって発生した灰を溜めておくための灰タンク74が用意されている。
【0050】
更に、前記実施形態では炭化炉60は、炭化物を得る構成のものを示したが、例えば炭化室と賦活室を仕切板で分け、炭化室に投入された粉体物を賦活室側へ移動させるよう構成し、賦活処理を行わせることで活性炭を得るようにした構造のものでもよい。このとき、微粉炭ボイラ72で発生した蒸気の一部は燃焼機に送られ、乾留ガスの燃焼により得られた熱エネルギを受け取って過熱蒸気が得られる。従って、濃縮機30と炭化炉60を接続し、濃縮機30で得られた過熱蒸気を賦活室に過熱蒸気が導入され、賦活に最適な温度に調節するようにする。
この他、液処理部では、固液分離機13から排出された固形分が堆肥タンク14に蓄えられているため、これを粉体物と一緒に炭化させるようにしてもよい。その際、粉体物と固形分とを混合して炭化炉へと投入する。
【0051】
以上、本発明に係る有機性廃液の処理装置及び処理方法について一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態で記載した炭化炉60の他の構造をした炭化炉を使用することも可能であり、例えば、炭化炉を選択することにより炭化物として活性炭を作り出すことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一実施形態の有機性廃液処理装置の液処理部を概念的に示した図である。
【図2】一実施形態の有機性廃液処理装置の乾燥部及び炭化部を概念的に示した図である。
【図3】濃縮機の構造を概念的に示した図である。
【図4】炭化物による重量軽減及び減溶の結果を表にして示した図である。
【図5】液処理部の各処理工程における流量割合や流体中のアンモニア濃度を数値で示したものである。
【図6】有機性廃液の処理装置の全体構造を示した図である。
【図7】従来の有機性廃液処理装置の概略構成を示した図である。
【符号の説明】
【0053】
11 消化液タンク
12 定量ポンプ
13 固液分離機
14 堆肥タンク
15 加熱容器
16 供給ポンプ
17 混合槽
18 第1蒸発器
19 第1分縮器
20 第2蒸発器
21 第2分縮器
22,23,24 タンク
50 乾燥機
51 乾燥機本体
52 ロータリーアトマイザ
60 炭化炉
61 バーナー
62 燃焼体
63 熱分解体
67 投入フィーダ
68 燃焼機
71 炭タンク
72 微粉炭ボイラ
73 蒸気タービン発電機
74 灰タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃液やその有機性廃液に対して一定処理を施した消化液などアンモニア及びアンモニウム塩及び水分を含む処理液から、蒸留水、アンモニア水および濃縮液を分離して取り出す液処理部と、その液処理部で取り出された濃縮液を噴霧乾燥させて粉体物を生成する乾燥部と、その粉体物を加熱処理して炭化物を生成する炭化部とを有し、
前記液処理部は、前記処理液を蒸発させる第1蒸発器と、前記第1蒸発器で蒸発しなかった残渣を蒸発させる第2蒸発器と、前記第1蒸発器で蒸発した蒸気を高温側凝縮部と低温側凝縮部との2段階で凝縮する第1分縮器と、前記第2蒸発器で蒸発した蒸気を高温側凝縮部と低温側凝縮部との2段階で凝縮する第2分縮器とを有し、前記第1分縮器の高温側凝縮部で凝縮した蒸留水と、前記第2分縮器の低温側凝縮部で凝縮した蒸留水とを前記処理液の一部として前記第1蒸発器へ還流させるようにしたものであり、
前記乾燥部は、前記第2蒸発器で蒸発しなかった残渣(濃縮液)を乾燥機本体内に噴霧させ、熱風によって乾燥させるようにした乾燥機を有し、
前記炭化部は、前記乾燥部で得られた粉体物を炭化させる炭化炉を有するものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する有機性廃液の処理装置において、
前記炭化部は、前記炭化炉から発生する乾留ガスを再燃焼する燃焼機を有し、その乾留ガスを再燃焼して得られた高温ガスを前記乾燥部の乾燥機に熱風として供給するようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する有機性廃液の処理装置において、
前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼する微粉炭ボイラを有し、当該微粉炭ボイラに前記液処理部で得られた蒸留水を供給して蒸気を得るようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載する有機性廃液の処理装置において、
前記微粉炭ボイラで得られた蒸気を、前液処理部の記第1蒸発器及び第2蒸発器へ供給するようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載する有機性廃液の処理装置において、
前記微粉炭ボイラには蒸気タービン発電機が接続され、前記微粉炭ボイラで得られた蒸気によって当該蒸気タービン発電機を駆動させて電気を得るようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載する有機性廃液の処理装置において、
前記炭化炉は、炭化室と賦活室とを備え、賦活処理によって活性炭を得るものであり、前記微粉炭ボイラで発生した蒸気が前記燃焼機に送られ、乾留ガスの燃焼により得られた熱エネルギを受け取って過熱蒸気を得るものであって、その過熱蒸気を前記炭化炉の賦活室に導入するようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載する有機性廃液の処理装置において、
前記液処理部には、処理液を生成する工程に固液分離機が設けられ、その固液固液分離機から排出された固形分を前記乾燥部で得られた粉体物とともに炭化炉へと投入するようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理装置。
【請求項8】
有機性廃液やその有機性廃液に対して一定処理を施した消化液などアンモニア及びアンモニウム塩及び水分を含む処理液から、蒸留水、アンモニア水および濃縮液を分離して取り出す液処理工程と、その液処理工程で取り出された濃縮液を噴霧乾燥させて粉体物を生成する乾燥工程と、その粉体物を炭化させて炭化物を生成する炭化工程とを有し、
前記液処理工程は、前記処理液を蒸発させる第1蒸発工程と、その第1蒸発工程で蒸発しなかった残渣を蒸発させる第2蒸発工程と、第1蒸発工程で蒸発した蒸気を高温側と低温側との2段階で凝縮する第1分縮工程と、第2蒸発工程で蒸発した蒸気を高温側と低温側との2段階で凝縮する第2分縮工程とを有し、第1分縮工程の高温側凝縮で得た蒸留水と、第2分縮工程の低温側凝縮で得た蒸留水とを前記処理液の一部として前記第1蒸発工程へ還流させるようにしたものであり、
前記乾燥工程は、前記第2蒸発工程で蒸発しなかった残渣(濃縮液)を乾燥機本体内に噴霧させ、熱風によって乾燥させるようにしたものであり、
前記炭化工程は、前記乾燥工程で得られた粉体物を炭化炉で炭化するようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載する有機性廃液の処理方法において、
前記第1蒸発工程と前記第2蒸発工程は、前記第1蒸発工程で蒸発する処理液の蒸発量よりも前記第2蒸発工程で蒸発する処理液の蒸発量を多くするようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載する有機性廃液の処理方法において、
前記炭化工程では、前記炭化炉から発生する乾留ガスを再燃焼し、その再燃焼で得られた高温ガスを前記乾燥工程の熱風とするようにしたものであることを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載する有機性廃液の処理方法において、
前記第1凝縮工程で得られたアンモニア水に硫酸を添加し、アンモニアを固定化した硫酸アンモニウムを前記濃縮液に所定量混入したものを噴霧乾燥し、更に炭化させるようにしたものであること特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれかに記載する有機性廃液の処理方法において、
前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼することにより、前記液処理工程で得られた蒸留水から蒸気を得るようにしたことを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項13】
請求項8乃至請求項11のいずれかに記載する有機性廃液の処理方法において、
前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼することにより、前記液処理工程で得られた蒸留水から蒸気を得て、更にその蒸気を前液処理工程の記第1蒸発工程及び第2蒸発工程で前記処理液を蒸発させるための熱源とすることを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項14】
請求項8乃至請求項11のいずれかに記載する有機性廃液の処理方法において、
前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼することにより、前記液処理工程で得られた蒸留水から蒸気を得て、更にその蒸気によって蒸気タービン発電機を駆動させて電気を得るようにしたことを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項15】
請求項12乃至請求項14のいずれかに記載する有機性廃液の処理方法において、
前記炭化工程は、炭化室と賦活室とを備え、賦活処理によって活性炭を得るものであり、前記炭化炉で得られた炭化物を微粉炭燃料として燃焼して発生させた蒸気を、前記炭化炉で発生した乾留ガスの再燃焼によって得た熱エネルギにより過熱蒸気とし、その過熱蒸気を前記炭化炉の賦活室に導入するようにしたことを特徴とする有機性廃液の処理方法。
【請求項16】
請求項8乃至請求項15のいずれかに記載する有機性廃液の処理方法において、
前記液処理工程には、処理液を生成する工程に固液分離機が設けられ、その固液固液分離機から排出された固形分を前記乾燥工程で得られた粉体物とともに炭化炉へと投入するようにしたことを特徴とする有機性廃液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−173591(P2008−173591A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10712(P2007−10712)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】