説明

有機薄膜トランジスタ及びそれを備えた平板ディスプレイ装置

【課題】有機薄膜トランジスタ及びそれを備えた平板ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】基板と、基板の上部に配置されたゲート電極と、ゲート電極と絶縁されたp型有機半導体層と、ゲート電極と絶縁されて相互離隔されて配置されたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極とp型有機半導体層との間に介在された正孔注入層と、を備えることを特徴とする有機薄膜トランジスタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)及びそれを備えた平板ディスプレイ装置に係り、さらに詳細には、ソース電極またはドレイン電極とp型有機半導体層との間の正孔移動がさらに円滑になった有機TFT及びそれを備えた平板ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体特性を表す共役性有機高分子のポリアセチレンが開発されて以来、有機物の特徴、すなわち、合成方法が多様であり、ファイバやフィルム状に容易に成形できるという特徴と、柔軟性、伝導性及び低コスト生産費などの長所のために、有機物を利用したトランジスタについての研究が機能性電子素子及び光素子などの広範囲な分野で活発になされている。
【0003】
従来のシリコンTFTは、高濃度の不純物でドーピングされたソース領域及びドレイン領域と、前記二つの領域の間に形成されたチャンネル領域とを有する半導体層を備え、前記半導体層と絶縁されて前記チャンネル領域に対応する領域に位置するゲート電極と、前記ソース領域及びドレイン領域にそれぞれ接するソース電極及びドレイン電極と、を有する。
【0004】
しかし、前記のような構造の既存のシリコンTFTには、製造コストが多くかかり、外部の衝撃によって容易に割れ、300℃以上の高温工程によって生産されるため、プラスチック基板を使用できないという問題点があった。
【0005】
特に、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display Device)や電界発光表示装置(ELD:Electro Luminescence Display device)などの平板表示装置には、各画素の動作を制御するスイッチング素子及び各画素の駆動素子としてTFTが使われるが、このような平板表示装置において、最近要求されている大型化及び薄型化と共にフレキシブル特性を満足させるために、既存のガラス材でないプラスチック材を用いた基板を使用しようとする試みが続いている。しかし、プラスチック基板を使用する場合には、前述したように、高温工程でない低温工程を使用せねばならない。したがって、従来のシリコンTFTを使用し難いという問題があった。
【0006】
一方、TFTの半導体層として有機膜を使用する場合には、このような問題点を解決できるので、最近、有機膜を半導体層として使用する有機TFTについての研究が活発になされている。
【0007】
しかし、有機TFTの場合、ソース電極及びドレイン電極と有機半導体層との間の接触抵抗が大きいという問題点があった。すなわち、従来のシリコンTFTに備えられたシリコン半導体層と違って、有機TFTに備えられた有機半導体層には、高濃度のドーピングを実施できず、これにより、ソース電極及びドレイン電極と有機半導体層との間の接触抵抗が大きくなって、オーミックコンタクトを形成できないという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記問題点を含む色々な問題点を解決するためのものであって、ソース電極またはドレイン電極とp型有機半導体層との間の正孔移動がさらに円滑になった有機TFT及びそれを備えた平板ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的及びその他の色々な目的を達成するために、本発明は、基板と、前記基板の上部に配置されたゲート電極と、前記ゲート電極と絶縁されたp型有機半導体層と、前記ゲート電極と絶縁されて相互離隔されて配置されたソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極と前記p型有機半導体層との間に介在された正孔注入層と、を備えることを特徴とする有機TFTを提供する。
【0010】
このような本発明の他の特徴によれば、前記p型有機半導体層は、正孔輸送層でありうる。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記p型有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上部に配置され、前記ゲート電極は、前記p型有機半導体層の上部に配置され、前記p型有機半導体層と前記ゲート電極との間には、ゲート絶縁膜がさらに備えられうる。
【0012】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記正孔注入層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極を覆うように前記基板の全面に配置されうる。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記p型有機半導体層は、前記ゲート電極の上部に配置され、前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記p型有機半導体層の上部に配置され、前記p型有機半導体層と前記ゲート電極との間には、ゲート絶縁膜がさらに備えられうる。
【0014】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記正孔注入層は、前記p型有機半導体層を覆うように配置されうる。
【0015】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記正孔注入層のHOMOレベルは、前記ソース電極または前記ドレイン電極のフェルミレベルと前記p型有機半導体層のHOMOレベルとの間に位置しうる。
【0016】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記p型有機半導体層の正孔移動度は、前記正孔注入層の正孔移動度より大きい。
【0017】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記正孔注入層の厚さは、10nmないし100nmでありうる。
【0018】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記正孔注入層は、トリアリールアミン系化合物、ジアリールアミン系化合物、アリールアミン系化合物及びメタルを含有するフタロシアニン系化合物からなる群から選択された一つ以上を含みうる。
【0019】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記p型有機半導体層は、ペンタセン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−3−へキシルチオフェン、α−へキサチエニレン、テトラセン、アントラセン、ナフタレン、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ペリレン、ルブレン、コロネン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルオレン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン−ヘテロ環芳香族共重合体及びそれらの誘導体のうち少なくとも何れか一つを備えうる。
【0020】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記p型有機半導体層に形成されるチャンネル領域の厚さは、50nmないし200nmでありうる。
【0021】
本発明はまた、前記目的を達成するために、前記のような有機TFTを備えることを特徴とする平板ディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有機TFT及びそれを備えた平板ディスプレイ装置によれば、ソース電極及びドレイン電極とp型有機半導体層との間に正孔注入層を備えることによって、ソース電極及びドレイン電極とp型有機半導体層との間の接触抵抗を大幅に減少し、それを通じてさらに鮮明かつ正確な画像を具現する平板ディスプレイ装置を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳細に説明すれば、次の通りである。
【0024】
図1は、本発明の望ましい一実施形態による有機TFTを概略的に示す断面図である。
【0025】
前記図面を参照すれば、本実施形態による有機TFTは、ゲート電極124と、前記ゲート電極124と絶縁されたp型有機半導体層122と、前記ゲート電極124と絶縁されて相互離隔されて配置されたソース電極126及びドレイン電極127と、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127と前記p型有機半導体層122との間に介在された正孔注入層122aと、を備える。
【0026】
特に、本実施形態による有機TFTは、スタガード型有機TFTであって、図1に示したように、前記p型有機半導体層122が前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127の上部に配置され、前記ゲート電極124は、前記p型有機半導体層122の上部に配置されている。このとき、前記p型有機半導体層122と前記ゲート電極124との間には、ゲート絶縁膜123がさらに備えられている。
【0027】
前記のような構造の有機TFTにおいて、前記p型有機半導体層122で、キャリアは正孔である。したがって、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127のうち何れか一つの電極から前記p型有機半導体層122に正孔が容易に移動されねばならない。このような正孔は、エネルギーバンドダイヤグラムにおいて、電極の場合には、フェルミレベルに沿って動き、半導体層においては、HOMO(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbit)レベルに沿って動く。このとき、前記二つのレベル間の差が大きいほどエネルギー差、すなわち、ポテンシャル障壁がさらに大きくなり、これにより、正孔が容易に移動できなくなる。すなわち、前記ポテンシャル障壁が大きくなるにつれて、これにより、ソース電極及びドレイン電極と有機半導体層との間の接触抵抗が大きくなる。
【0028】
したがって、本実施形態による有機TFTには、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127と前記p型有機半導体層122との間に正孔注入層122aが介在される。前記正孔注入層122aは、前記ソース電極126または前記ドレイン電極127から前記p型有機半導体層122への正孔の移動を容易にする役割を行い、これを通じて前記ソース電極126または前記ドレイン電極127が前記有機半導体層122に直接接触した場合より接触抵抗を大幅に減少させうる。
【0029】
このために、前記正孔注入層122aのHOMOレベルは、前記ソース電極126または前記ドレイン電極127のフェルミレベルと前記p型有機半導体層122のHOMOレベルとの間に位置することが望ましい。すなわち、前記ソース電極126または前記ドレイン電極127のフェルミレベルと前記p型有機半導体層122のHOMOレベルとの間の差の大きさは変わらないが、前記ソース電極126または前記ドレイン電極127のフェルミレベルと前記p型有機半導体層122のHOMOレベルとの間に位置するHOMOレベルを有する正孔注入層122aがその間に介在されることによって、正孔が前記正孔注入層122aを通じて前記p型有機半導体層122に移動できる確率をさらに高める。正孔は、電極のフェルミレベルと正孔注入層または有機半導体層のHOMOレベルとに沿って動くためである。このような正孔注入層122aは、トリアリールアミン系化合物、ジアリールアミン系化合物、アリールアミン系化合物及びメタルを含有するフタロシアニン系化合物からなる群から選択された一つ以上を含み、このような物質としては、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)またはスターバースト型アミン類であるTCTA、m−MTDATAなどがある。このような正孔注入層122aは、蒸着などの方法で形成されうる。
【0030】
また、一電極から前記p型有機半導体層122に進入した正孔は、他の電極に移動されねばならないので、前記p型有機半導体層122は、正孔輸送層の有機半導体層であることが望ましい。このような物質としては、例えば、ペンタセン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−3−へキシルチオフェン、α−へキサチエニレン、テトラセン、アントラセン、ナフタレン、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ペリレン、ルブレン、コロネン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルオレン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン−ヘテロ環芳香族共重合体及びそれらの誘導体のうち少なくとも何れか一つを備えるものを挙げられる。
【0031】
このとき、前記ソース電極126と前記ドレイン電極127との間で正孔が移動するチャンネルは、前記p型有機半導体層122に形成されるので、前記p型有機半導体層122の正孔移動度は、前記正孔注入層122aの正孔移動度より大きいことが望ましい。
【0032】
前記のような正孔注入層及びp型有機半導体層の特性についての説明は、後述する変形例または実施形態においても同じである。
【0033】
図2は、図1に示した有機TFTの変形例を概略的に示す断面図である。
【0034】
図1に示した有機TFTの場合には、正孔注入層がソース電極及びドレイン電極と有機半導体層との間にのみ介在されているが、図2に示した有機TFTの場合には、正孔注入層122aがソース電極126及びドレイン電極127を覆うように配置されている。
【0035】
図1に示したように製造するためには、有機物である正孔注入層をソース電極及びドレイン電極のみを覆うようにマスクを使用して蒸着するか、または基板の全面に正孔注入層を形成した後にそれをパターニングするか、またはインクジェットプリンティング法でソース電極及びドレイン電極のみを覆うように形成せねばならないので、工程が複雑になる。したがって、図2に示したように、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127を覆うように基板102の全面に前記正孔注入層122aを形成することによって、工程をさらに容易にできる。このような正孔注入層122aは、全面蒸着またはスピンコーティング法を利用して形成できる。
【0036】
この場合、前記ソース電極126と前記ドレイン電極127との間に形成されるチャンネルは、前記p型有機半導体層122に形成されるので、前記正孔注入層122aの厚さは、10nmないし100nmにすることが望ましい。前記正孔注入層122aの厚さが100nmより大きくなる場合には、前記p型有機半導体層122に形成されたチャンネルが前記ソース電極126または前記ドレイン電極127に連結されないこともあるためであり、前記正孔注入層122aの厚さが10nmより小さい場合には、正孔注入層としての役割を行えないこともあるためである。このとき、前記p型有機半導体層122に形成されるチャンネル領域の厚さは、50nmないし200nmにすることが望ましい。
【0037】
図1及び図2に示した実施形態及びその変形例による有機TFTは、スタガード型有機TFTであるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0038】
すなわち、図3に示したように、ソース電極126及びドレイン電極127がゲート電極124の上部に配置され、p型有機半導体層122は、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127の上部に配置され、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127と前記ゲート電極124との間にはゲート絶縁膜123がさらに備えられる、いわば、インバーテッドコプラナー型有機TFTにも適用されうる。この場合、正孔注入層122aが前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127と前記p型有機半導体層122との間にのみ備えられるようにできる。
【0039】
また、図4に示したように、p型有機半導体層122がゲート電極124の上部に配置され、ソース電極126及びドレイン電極127は、前記p型有機半導体層122の上部に配置され、前記p型有機半導体層122と前記ゲート電極124との間には、ゲート絶縁膜123がさらに備えられる、いわば、逆スタガード型有機TFTにも適用されうる。この場合、図4に示したように、前記正孔注入層122aが前記p型有機半導体層122を覆うように備えられてもよく、これと違って、前記ソース電極126及び前記ドレイン電極127と前記p型有機半導体層122との間にのみ備えられてもよいなど、その多様な変形が可能である。
【0040】
もちろん、前記のような構造の有機TFT以外の多様な変形例にも本発明が適用されうる。
【0041】
図5は、本発明の望ましいさらに他の一実施形態による電界発光ディスプレイ装置を概略的に示す断面図である。
【0042】
前述したような有機TFTは、フレキシブル特性が良く、したがって、TFTを備える多様なフレキシブル平板ディスプレイ装置に利用されうる。このような平板ディスプレイ装置として液晶ディスプレイ装置及び有機電界発光ディスプレイ装置など多様なディスプレイ装置があるが、以下では、有機電界発光ディスプレイ装置に前述したような有機TFTが備えられた場合について簡略に説明する。
【0043】
前述した実施形態による有機TFTを備える電界発光ディスプレイ装置の場合、有機TFT及び電界発光素子は、基板202上に備えられ、前記基板202は、透明なガラス材が使われうるが、これ以外にも、アクリル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、マイラー、その他のプラスチック材料が使われうる。
【0044】
電界発光ディスプレイ装置は、多様な形態のものが適用されうるが、本実施形態による電界発光ディスプレイ装置は、有機TFTを備えた能動駆動型(Active Matrix:AM)電界発光ディスプレイ装置である。
【0045】
各副画素は、図5に示したような少なくとも一つのTFTを備える。図5を参照すれば、基板202上にSiOでバッファ層(図示せず)が形成され、その上部に前述したような有機TFTが備えられる。もちろん、図5は、前述した実施形態及びその変形例のうち何れか一つの場合の有機TFTが示された図面であり、これに、本発明が限定されるものではない。
【0046】
前記TFTの上部には、SiOからなるパシベーション膜228が形成され、前記パシベーション膜228の上部には、アクリル、ポリイミドによる画素定義膜229が形成されている。前記パシベーション膜228は、前記TFTを保護する保護膜の役割を行ってもよく、その上面を平坦化させる平坦化膜の役割を行ってもよい。
【0047】
そして、たとえ図面に示されていないとしても、前記TFTには、少なくとも一つのキャパシタが連結されうる。そして、このようなTFTを含む回路は、必ずしも図5に示した例に限定されず、多様に変形可能である。
【0048】
一方、前記ドレイン電極227に電界発光素子が連結される。前記電界発光素子の第1電極231は、パシベーション膜228の上部に形成されており、その上部には、絶縁性画素定義膜229が形成されており、前記画素定義膜229に備えられた所定の開口部に少なくとも発光層を備える中間層233が形成される。そして、その上部に第2電極234が形成されるが、これは、複数個の画素において、共通に形成されうるなど多様な変形が可能である。一方、図5には、前記中間層233が前記副画素にのみ対応するようにパターニングされているものと示されているが、これは、各副画素の構成を説明するために、便宜上それと共に示したものであり、前記中間層233は、隣接した副画素の中間層と一体に形成されうる。また、前記中間層233のうち一部の層は、各副画素別に形成され、他の層は、隣接した副画素の中間層と一体に形成されてもよいなどその多様な変形が可能である。
【0049】
前記第1電極231は、アノード電極の機能を行い、前記第2電極234は、カソード電極の機能を行う。もちろん、これら第1電極231及び第2電極234の極性は、逆になってもよい。
【0050】
前記第1電極231は、透明電極または反射型電極で備えられうる。透明電極として使われるときには、ITO、IZO、ZnOまたはInで備えられ、反射型電極として使われるときには、Ag、Mg、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr及びこれらの化合物などで反射膜を形成した後、その上にITO、IZO、ZnOまたはInを形成できる。
【0051】
第2電極234も透明電極または反射型電極で備えられうるが、透明電極として使われるときには、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg及びこれらの化合物が有機膜233の方向に向かうように蒸着した後、その上にITO、IZO、ZnOまたはInなどの透明電極形成用物質として補助電極やバス電極ラインを形成できる。そして、反射型電極として使われるときには、前記のLi、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Al、Mg及びこれらの化合物を全面蒸着して形成する。
【0052】
前記第1電極231と前記第2電極234との間に備えられる前記中間層233は、有機物または無機物で備えられ、有機物の場合には、低分子または高分子有機物で備えられうる。低分子有機物を使用する場合、ホール注入層(HIL:Hole Injection Layer)、ホール輸送層(HTL:Hole Transport Layer)、有機発光層(EML:EMission Layer)、電子輸送層(ETL:Electron Transport Layer)、電子注入層(EIL:Electron Injection Layer)が単一あるいは複合の構造に積層されて形成され、使用可能な有機材料も銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)をはじめとして多様に適用可能である。これら低分子有機物は、前述したようなパターンで備えられ、前述したようなマスクを利用して真空蒸着の方法で形成される。
【0053】
高分子有機物の場合には、大体、HTL及びEMLで備えられた構造を有し、このとき、前記ホール輸送層としてPEDOT(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene))を使用し、発光層としてPPV(Poly−Phenylene Vinylene)系及びポリフルオレン系など高分子有機物質を使用する。
【0054】
基板202上に形成された電界発光素子は、対向部材(図示せず)によって密封される。対向部材は、前記基板202と同一に、ガラスまたはプラスチック材で備えられうるが、これ以外にも、メタルキャップで形成されてもよい。
【0055】
前記のような電界発光ディスプレイ装置において、前述した実施形態による有機TFTを備えることによって、入力された映像信号によって正確にイメージを具現する電界発光ディスプレイ装置を製造できる。
【0056】
また、前記実施形態において、電界発光ディスプレイ装置の構造を基準として本発明を説明したが、有機TFTが備えられるディスプレイ装置ならば、いかなるディスプレイ装置にも本発明が適用されうる。
【0057】
本発明は、図面に示された実施形態を参考として説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが分かる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、有機TFT及びそれを備えた平板ディスプレイパネル関連の技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の望ましい一実施形態による有機TFTを概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示した有機TFTの変形例を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の望ましい他の一実施形態による有機TFTを概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の望ましいさらに他の一実施形態による有機TFTを概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の望ましいさらに他の一実施形態による電界発光ディスプレイ装置を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
102 基板
122 p型有機半導体層
122a 正孔注入層
123 ゲート絶縁膜
124 ゲート電極
126 ソース電極
127 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上部に配置されたゲート電極と、
前記ゲート電極と絶縁されたp型有機半導体層と、
前記ゲート電極と絶縁されて相互離隔されて配置されたソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極と前記p型有機半導体層との間に介在された正孔注入層と、を備えることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記p型有機半導体層は、正孔輸送層であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記p型有機半導体層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上部に配置され、前記ゲート電極は、前記p型有機半導体層の上部に配置され、前記p型有機半導体層と前記ゲート電極との間には、ゲート絶縁膜がさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記正孔注入層は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極を覆うように前記基板の全面に配置されることを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記p型有機半導体層は、前記ゲート電極の上部に配置され、前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、前記p型有機半導体層の上部に配置され、前記p型有機半導体層と前記ゲート電極との間には、ゲート絶縁膜がさらに備えられることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記正孔注入層は、前記p型有機半導体層を覆うように配置されることを特徴とする請求項5に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記正孔注入層のHOMOレベルは、前記ソース電極または前記ドレイン電極のフェルミレベルと前記p型有機半導体層のHOMOレベルとの間に位置することを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記p型有機半導体層の正孔移動度は、前記正孔注入層の正孔移動度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記正孔注入層の厚さは、10nmないし100nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記正孔注入層は、トリアリールアミン系化合物、ジアリールアミン系化合物、アリールアミン系化合物及びメタルを含有するフタロシアニン系化合物からなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記p型有機半導体層は、ペンタセン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−3−へキシルチオフェン、α−へキサチエニレン、テトラセン、アントラセン、ナフタレン、α−6−チオフェン、α−4−チオフェン、ペリレン、ルブレン、コロネン、ポリチオフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリフルオレン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン−ヘテロ環芳香族共重合体及びそれらの誘導体のうち少なくとも何れか一つを備えることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記p型有機半導体層に形成されるチャンネル領域の厚さは、50nmないし200nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項13】
請求項1に記載の有機薄膜トランジスタを備えることを特徴とする平板ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−253675(P2006−253675A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56476(P2006−56476)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】