説明

材料を処理するための大気圧プラズマ処理方法

【解決手段】材料を実質的に大気圧のプラズマに曝す工程を含み、それにより、高価な真空装置およびポンプアセンブリを準備する必要性を取り除くと同時に、制御された作業環境においても持続的且つ迅速な処理を促進する、材料を処理するためのプラズマ処理方法である。処理される材料に応じて、複数の処理方法を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、材料を処理するための大気圧プラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既知のように、プラズマ処理を基礎にした技術または方法は、多くの産業分野、主に、それらがほぼ不可欠となっているマイクロエレクトロニクス分野において基本的に重要である。
【0003】
上記技術または方法が有利に使用される他の典型的な分野は、航空宇宙、自動車、製鋼、廃棄物処理および生物医学分野であり、それらの分野では、プラズマ処理を使用することにより、例えば、処理される材料の、表面を硬化し、光学的特性を変化させ、有害物質を中和し、また、生体適合性を向上することが可能である。
【0004】
材料をプラズマに曝すことによる前記材料の表面改質は、一般に、類似した従来の化学処理に対していくつかの利点を有する。
【0005】
実際、プラズマ処理は、環境に対する危険を示しやすい溶媒または化学製品を必要としない乾式処理であり、そして更に、上述したプラズマ処理によりもたらされた改質は、副層または基板の表面層のみに作用し、処理される材料の一般的な物理−機械的性質を変えない。
【0006】
工業的なプラズマ処理の大部分は、真空法を利用することにより、低圧希薄気体中(一般に、10−4から数十ミリバールの圧力)で実施される。
【0007】
これらの条件下で、「グロー放電」プラズマと称される非常に均一なプラズマが得られる。
【0008】
そのようなプラズマは、通常、希薄気体に電界を印加することにより生じる。
【0009】
電界は、連続的なものであってもよいし、または、マイクロ波から光学的放射(レーザー)周波数まで変わる動作周波数をもつ交流のものであっても良い。
【0010】
処理される材料の表面と反応できる何種類かのイオン、電子および中性ラジカルが、プラズマ中で発生し、そのような技術または処理方法は、非常に少量の反応ガスを使用し、且つ、処理領域を環境大気から隔離するのに適合させた、制御された環境(真空チャンバ)下で実施されるので非常に有利である。
【0011】
しかしながら、大きな制限は、非常に高価になるのに加えて、ターゲット材料が連続的に処理されるのを可能とせず、更に、特別にデザインされたポンプアセンブリで処理チャンバを低圧にするのに長い待ち時間を必要とする真空技術を使用することである。
【0012】
これに関連して、指摘しておかなければならないのは、連続的に材料を処理することに関し、いくつかの技術的アプローチが既に提案されていることである。
【0013】
上記アプローチによれば、複数の連通した真空チャンバが異なる圧力で保持されて環境を徐々に目標作動圧力にする。
【0014】
しかしながら、そのような解決策は、大気圧と処理チャンバ圧力との間の非常に大きな差圧により、処理装置の総費用を低減せずに増加させ、また、そのような解決策は、高度に脱ガスした材料、例えば革製品、織物および紙材料などに対し容易に適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、大気圧用途に使用できるような処理方法を提供することである。
【0016】
上述した目的の範囲内で、本発明の主な目的は、概して、材料を処理するための、そのような大気圧プラズマ処理方法を提供し、高価な真空装置および関連したポンプアセンブリの使用の要求を克服することを可能にする一方、たとえ制御された環境下で操作することが必要であったとしても、連続処理操作を容易にすることを可能にすることである。
【0017】
本発明の更なる目的は、概して、材料を処理するための、そのような大気圧処理方法を提供し、より安価な技術を使用することを可能にする一方、一般により迅速な処理を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、上述した目的と同様に、以下でより明らかになる更に他の目的が、概して、材料を処理するためのプラズマ処理方法により達成され、前記方法は、処理される材料を実質的に大気圧のプラズマに曝す工程を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の更なる特徴および利点が、下記の好適だが排他的でない本発明の実施形態の開示から以下でより明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(大気圧処理)
大気圧コールドプラズマは、2つの電極間に電位差(一般的には、100V〜数十kV)を印加することにより、いくつかの方法で発生させることができる。
【0021】
印加される電流は、直流電流であっても、または、マイクロ波からレーザー放射周波数まで可変の周波数のAC電流であってもよい。
【0022】
処理される材料は、電極に直接接触しているか、または、電極間の中間位置にある両方の放電域近傍でプラズマに曝されても良く(近傍または近接処理と称される)、或いは、二つの電極間でプラズマを発生させ、そしてガスの流れにより、処理される表面上にプラズマを運ぶことも可能である(リモート処理と称される)。
【0023】
従って、下層は放電に直接曝されない。
【0024】
例えば、窒素、希ガス、酸素、水素、フッ素化ガス(一般的にはSF、SOF等)、ガス状炭化水素(CH、C等)、ガス状フッ化炭素(CF、C等)などのいくつかのガスが実験的に使用できる。上述したガスの混合物を使用することも可能である。
【0025】
液相化合物気化システムを使用することにより、上述したガス水蒸気に、アンモニア・ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)蒸気、並びに、他のシラン、シロキサン、炭化水素およびペルフルオロ化合物を混合することが更に可能である。
【0026】
実験や試験で使用された温度および圧力条件下で、最大で前記液体の飽和濃度(換言すれば、所定の温度および圧力で、液体がその蒸気と平衡状態である濃度)までの全てのガス(またはガス混合物)蒸気濃度範囲を達成することが可能である。
【0027】
処理ガスに、(上記に開示されたような)液体化合物、または固体化合物(ミクロ粒子およびナノ粒子を含む)を混合するのに適合させたコロイド分散(エアロゾル)発生システムを使用することも可能である。
【0028】
処理される材料および付随する要件に応じて、以下のいくつかの処理方法を使用することが可能である。
(処理方法1)
プラズマ曝露工程が、真空チャンバを使用することにより、試料が10−7〜10ミリバール、好ましくは10−3〜1ミリバールの限界圧力にされる脱ガス工程により先行された。
次に、処理チャンバは、適当なポンプシステムによりチャンバを排気することで維持される作動圧力を達成するため、ガス(またはガス混合物)により満たされる。
(処理方法2)
プラズマ曝露工程は、いかなる汚染も起きないようにするため、外側環境に対して過圧条件(一般に、Patm(大気圧)+0.1〜1200ミリバール)下に処理チャンバを保持することにより、材料(例えば、膜、織物、革材料)が連続的に処理されるプロセスであり、ここで、patmは作動条件下での大気圧である。
(処理方法3)
プラズマ曝露工程は、任意に常に低圧に保持される予備チャンバを介して処理チャンバ中に材料が満たされる連続処理を意味する。処理は、わずかな減圧下(800〜patm(大気圧)−0.1ミリバール)で実施され、それにより、有毒と思われるガスが処理チャンバから抜け出ることを防止する。
【0029】
前記処理方法2および3では、処理チャンバに供給された材料は、ガスおよび蒸気を吸着した材料に起因して、最初に、汚染ガス排出システムおよび/または不活性ガス(例えば窒素など)を使用したガス洗浄内部システムおよび/または汚染を除去するための加熱(乾燥)システムにかけられる。上述した処理方法により、疎水性、撥油性、ガスおよび蒸気バリア、親水性、抗粘性−放出、耐汚染性および劣化防止特性に加えて、更に、低圧プラズマ処理方法により従来得られていた他の特性のみならず、印刷歩留まりおよび染色性能の向上をもたらすのに適したいくつかの処理を行うことが可能である。
【0030】
直接タイプとリモートタイプの双方の広範でかつ局部的なソースを使用して試験が実施された。
【0031】
例えば、二つの導電性電極間でプラズマが低周波数で作り出される大気圧DBD放電(換言すれば、「誘電体バリア放電」)が、上記目的のために使用される。
【0032】
一般に、電極の一方または双方は、誘電材料により被覆されていても良い。
【0033】
この処理を実施するために、電源と電極システムとを備える装置が一般に使用され、電源は、一般に100V〜20kVの電圧、そして実質的にDC(直流)から10MHzまでの交流電流で動作する。
【0034】
電極システムは、一般に、高電圧が印加される放電電極と、接地電極とを備え、それらの一方または双方は、誘電材料により被覆されていても良い。接地電極は、処理される材料が連続的にスライドさせられるローラーを備えていても良く、電極間の距離は、通常は数ミリメートルである。
【0035】
放電は、500〜1500ミリバール、好ましくは800〜1200ミリバールで可変の圧力において生じさせることができ、そして、処理される材料のユニット表面への放電により移動した電力は、
コロナドーズ(D)=発生器の出力(P)/{電極幅×スライド速度(V)}
で定義される所謂「コロナドーズ」[W.分/m]で表される。
【0036】
試料は、電極から可変な距離に配置することができ、その距離は、0.1〜40mm、好ましくは1〜10mmで変化させることができる。
【0037】
試料は、自動駆動システムにより0.1〜200m/分、好ましくは1〜100m/分の駆動速度で駆動されることができ、その間に、連続タイプの処理が容易に実行されることを可能にする。
【0038】
試料は、1〜100回、好ましくは1〜10回処理されることができる。
【0039】
個々の処理のコロナドーズは、最大3000W.分/m、好ましくは30〜1000W.分/mとすることができる。使用されるコールドプラズマソースの他の例は、リモートプラズマソースである。
【0040】
上記装置は、一般に、内部に高圧電極を含む、電気的に接地された中空電極を備え、前記中空電極が、対流搬送のために処理ガスが流通するキャビティを画成し、搬送ノズルを介して、処理される表面上にプラズマが化学種を発生させる。
【0041】
電圧は、一般に0.2〜20kVまで変化し、AC電流は、DC〜20MHzの周波数を有する。ガス流速は、ソースのサイズおよびタイプ(例えば、拡張または点状ソース)に応じて数百sccm〜数百l/分まで変化する。
【0042】
放電領域が、通常、何れの汚染も持っていないガス流れにより維持されているので、チャンバレスソースまたは僅かに減圧若しくは過圧力にされたチャンバソースを使用して、有毒と思われるガスがそこから漏れ出すのを防止することが可能である。
【0043】
従って、上記大気圧プラズマを使用することにより、概して、例えば紙、織物、革、高分子膜、金属、石材、セルロース繊維および木材等の様々なタイプの材料が、簡単且つ迅速に処理される。
【0044】
上記方法は、以下の操作形態をもたらす。
A−目標表面特性をもたらすように設計された前駆的化学物質のプラズマ相中での直接使用。その前駆的化学物質は、必要であれば、蒸気(エアロゾル)またはコロイド分散として、上記キャリアガスと混合されることができる。
B−プラズマ処理の前に加えられる、液相、ガス、蒸気またはコロイド分散(エアロゾル、エマルジョン、ゾル等)前駆体として。
C−プラズマ処理中に加えられる、液体、ガス、蒸気またはコロイド(エアロゾル、エマルジョン、ゾル等)分散前駆体として。
【0045】
上記操作形態は、互いに組み合わせるようにも設計されている。
【0046】
(例1)
材料を、事前に液体、気相、或いは、ガスおよび蒸気混合物処理に曝し、そして次に、希ガスを使用することによりプラズマ処理を終了させることが可能である(b)。
【0047】
(例2)
後者を、液体若しくはガス形式で、または、蒸気混合物若しくはコロイド(エアロゾル、エマルジョン、ゾル等)分散として、活性処理に曝す前に、表面を活性化させるためにプラズマ処理を使用することが可能である(c)。
【0048】
(例3)
標的の表面を活性化し、そして第2のプラズマ処理の効率を高めるためにプラズマ処理を使用することが可能である(a+a)。
【0049】
疎水性、撥油性および親水性特性、または、高められた染色、印刷、樹脂および接着剤接着性特性と同様に、更に改良された表面特性、例えば耐汚染性、耐粘着性、放出および老化防止特性などを有する所望の表面をもたらすために、例えば紙、板紙、織物および革材料などの材料に行われる処理のいくつかの例が、これ以降に開示される。
【実施例】
【0050】
<紙の処理例>
(例1:撥水性)
異なる坪量の紙材からなる異なる紙表面が、以下のパラメータを用いて処理された。
コロナドーズ:750W.分/m
圧力:900ミリバール
ガスキャリア(N):2l/分
HMDSO:1.2g/h(HO相当)
処理数:8
結果:
結果は、例えば以下のようないくつかの方法で分析された。
分析方法1:Cobb60
試料の表面は、高さ1cmの蒸留水層に60秒間接触させて維持され、そして次に、試料により吸収された水のグラム数が試験の前後で試料の重量を測定することにより決定された。結果は、g/mで表現される。
分析方法2:接触角
液体の水滴と試料の表面との間の接触角(度で表現)が、適当なデジタル式ゴニオメーターにより決定された。
表1に示すように、処理された試料の表面は疎水性であった。
【0051】
【表1】

【0052】
(例2:撥水性/撥油性)
異なる坪量の紙材からなる異なる紙の表面が、例1などで前処理され、そして、異なる反応ガス(SF)プラズマに以下のパラメータで曝される。
コロナドーズ:750W.分/m
圧力:900ミリバール
ガス混合物:ヘリウム中に六フッ化硫黄(SF)2%
処理数:8
結果:
処理された試料の表面は、撥水性および撥油性であった。撥水性が、例1の方法により評価され、一方、撥油性が分析方法3:TAPPI T559法に従う検査キットおよび極性検査キットで評価された。
得られた結果を表3および4に示す。
【0053】
(例3:撥水性/撥油性)
50g/mの坪量を有するはがされた紙が、液相化学処理に曝され、次にプラズマ処理に更に曝された。
液相:
溶液:100g/Lテトラヒドロペルフルオロデシルアクリレートのエタノール溶液
浸漬時間:10秒
プラズマ処理:
プラズマ曝露段階が、処理チャンバが10−2ミリバールの圧力にされる脱ガス操作により先行された。処理パラメータは、以下の通りである。
コロナドーズ:900W.分/m
圧力:900ミリバール
ガス(アルゴン):10In/分
処理数:5
処理された試料は、エタノール中で更に洗浄された。
結果:
結果は、分析方法3(検査キット)により評価された。非処理試料は、0の検査キット値を有していた(検査キットおよび極性検査キットの双方が0に等しい)。液相中でのみ処理された試料も、0の検査キット値をもたらす(検査キットおよび極性検査キットの双方が0に等しい)。2種の併用処理(液体およびプラズマ処理)により処理された試料は、それぞれ8および3の検査キット値および極性検査キット値をもたらす。
【0054】
<織物の処理例>
(例4:撥水性)
コロナドーズ:790W.分/m
圧力:950ミリバール
ガスキャリア:(N):2l/分
HMDSO:1.2g/h(HO相当)
処理数:8
【0055】
分析方法4:水滴を吸収する時間
再蒸留および脱イオン化した20μlの水滴が、標準大気状態下で表面上に置かれる。総吸収水滴時間が測定される。
結果:
分析方法4により決定されたものとして、非処理絹織物は、水滴を瞬時に吸収する。処理後、吸収時間は15分15秒であった。
【0056】
(例5:撥水性)
使用したパラメータ
コロナドーズ:750W.分/m
圧力:950ミリバール
ガスキャリア(N):2l/分
HMDSO:1.6g/h(HO相当)
処理数:8
結果:
分析方法4によれば、非処理PET繊維材料は、水滴を4分50秒の時間で吸収した。処理後、水滴は蒸発し、従って水滴は吸収されなかった。
【0057】
(例6:撥水性/撥油性)
使用したパラメータ
コロナドーズ:800W.分/m
圧力:900ミリバール
ガス混合物:ヘリウム中に六フッ化硫黄(SF)2%
処理数:8
結果:
非処理親水性綿織物は、水滴を瞬時に吸収する(分析方法4による)。処理後、水滴は蒸発し、吸収されなかった。
【0058】
(例7:親水性)
使用したパラメータ
コロナドーズ:190W.分/m
圧力:1000ミリバール
ガス混合物:空気
処理数:8
結果:
非処理綿花織物は、20分超の時間で水滴を吸収する(分析方法4による)。
処理後、水滴はすぐに吸収された。
【0059】
<革材料処理例>
(例8:撥水性)
何種類かの出発動物、なめし、処理段階および最終加工に関して処理の適用性を評価するために、異なる革材料がプラズマに曝された。
【0060】
例えば、スエードの子ヤギの皮(試料Aおよび試料B)並びに子羊の皮(試料C)が、プラズマに曝された。
【0061】
前記試料は、具体的には、以下の操作パラメータに準じて、ヘキサメチルジシロキサンと窒素との混合物のプラズマに曝された。
コロナドーズ:150W.分/m
圧力:900ミリバール
ガスキャリア(N):2l/分
HMDSO:1.2g/h(HO相当)
処理数:8
結果:
処理された試料の表面は、非処理試料よりも更に撥水性であった。吸収特性を評価するために、標準気圧、温度および湿度(分析方法4)状態下で、20μlの水滴を吸収する時間が測定された。
【0062】
試料Aに関し、処理前の吸収時間は2分間であり、一方、処理後は、水滴の蒸発時間に至るまで吸収を観察することができなかった。試料Bに関しては、吸収時間は7から40分へと増加し、試料Cに関しては、吸収時間は1から15分へと増加した。
【0063】
(例9:撥水性/撥油性)
いくつかの革または皮材料が、何種類かの出発動物、なめし、作業段階および最終加工に対する処理の適用性を評価するために、以下のパラメータで六フッ化硫黄(SF)とヘリウム(He)との混合物を含むプラズマに曝された。
コロナドーズ:750W.分/m
圧力:900ミリバール
ガス混合物:ヘリウム中に六フッ化硫黄(SF)2%
処理数:8
結果:
処理された試料の表面は、非処理試料よりも更に撥水性であった。
【0064】
吸収特性を評価するために、標準気圧、温度および湿度(分析方法4)下で、20μlの水滴の吸収時間が測定された。
【0065】
例えば、非処理子羊皮(植物+クロムなめし、染色された外皮段階)は、水滴を3分で吸収し、一方、処理後は水滴を12分で吸収した。
【0066】
非処理子羊皮(クロムなめし、外皮段階)は、水滴を1分20秒で吸収し、一方、処理後は水滴を16分以内で吸収した。
【0067】
(例10:親水性)
異なる種類の皮が、何種類かの出発動物、なめし、作業および最終加工段階に対する処理の適用性を評価するために、大気圧空気プラズマに曝された。
【0068】
処理された試料の表面は、非処理の試料の表面よりも更に親水性であることが見出され、従って、皮または革印刷、インクジェット印刷および染色処理の高い効率をもたらす。
【0069】
吸収特性を評価するために、標準気圧、温度および湿度状態下(分析方法4)で、20μlの水滴の吸収時間が測定された。
【0070】
異なる皮および処理に関するいくつかの結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
本発明は、意図した目標および目的を完全に達成したことが実質的に見出された。
【0073】
実際、本発明は、材料を処理するための大気圧プラズマ処理方法、換言すれば、大気圧プラズマ活用で使用できる方法を提供する。
【0074】
大気圧で生成されたプラズマは、高価な真空装置および関連したポンプアセンブリを使用する必要を克服し、一方、制御された環境下においても連続処理を容易に実行するのを可能にする。
【0075】
実際には、作動圧力と外圧との間の小さい圧力差が、より安価な技術的な解決策の使用に加え、概して速い処理の提供を可能にする。
【0076】
本発明の実施において、使用された材料および不確定なサイズは、必要に応じて任意とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理される材料の少なくとも表面を、実質的に大気圧プラズマに曝す工程を含むことを特徴とする、材料を処理するためのプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記処理される材料が、放電領域の近傍で、電極と直接接触して、または、前記電極間の中間位置で前記プラズマに曝されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマを二つの電極間で発生させ、そして、発生させた前記プラズマを、前記処理される材料の表面上にガス流れにより搬送し、一方、前記材料の基板部分は前記放電に直接曝されないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマが、窒素、希ガス、酸素、水素、SF、SOFのようなフッ素化ガス、CH、Cのようなガス状炭化水素、およびCF、Cのようなガス状フッ化炭素からなるガスの一種以上により生じることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記ガスと混合される液体化合物の気化システムの使用をもたらし、
前記液体化合物が、水蒸気、アンモニア・ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、および他のシラン化合物、シロキサン、炭化水素、並びに、ペルフルオロ化合物蒸気から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸気が、目標温度および圧力条件で、最大で前記液体化合物の飽和濃度まで、換言すれば、所定の温度および圧力で前記液体化合物がその蒸気と平衡状態にある濃度のガスまたはガス混合物濃度を有することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、処理ガス、および液体または固体の化合物の混合物をもたらすように構成されたコロイド分散およびエアロゾル発生システムの使用をもたらし、
前記固体化合物がミクロ粒子とナノ粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
プラズマ曝露工程が、脱ガス工程に先行され、
前記脱ガス工程では、真空チャンバを使用することにより、処理された試料が10−7〜10ミリバール、好ましくは10−3〜1ミリバールの限界圧力にされ、
前記チャンバに、目標作動圧力を達成するように前記ガスまたはガス混合物を供給することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プラズマ曝露工程において、膜、織物、革または皮材料を含む前記材料は、作動チャンバを、patm(大気圧)+0.1ミリバールから1200ミリバールまでの過圧条件(ここで、patmは作動大気圧である。)に保持することにより、連続的に処理されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
プラズマ曝露工程において、前記材料が、前記処理チャンバよりも低圧に保持された複数の予備チャンバを経て前記処理チャンバに供給され、
前記処理が、有毒なガスが前記処理チャンバから抜け出るのを防止するため、僅かに減圧下、特に800ミリバールからpatm(大気圧)−0.1ミリバールで実施されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記処理チャンバに供給される前記材料が、汚染ガスを排出するための排出システム、および/または、窒素のような不活性ガスの洗浄ガスを用いた洗浄システム、および/または、加熱および乾燥システムにより予め処理されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記プラズマ曝露工程が、撥水性および撥油性、ガスバリアまたは水蒸気、親水性、耐粘着性、耐汚染性および劣化防止特性を備えており、それにより印刷および染色の収率が増加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、2つの導電性電極間に低周波数で前記プラズマを発生させるための大気圧誘電バリア放電を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記電極の少なくとも一つが誘電材料で被覆されていることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、電圧および電流用電源と電極システムとを備える装置の使用をもたらし、
前記電源が、100V〜20kVの電圧と、DC〜10MHzのAC電流をもたらし、
前記電極システムが、高電圧放電電極と接地電極とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記接地電極が、その上に前記材料が連続的にスライドさせられるローラーを備え、
前記電極が互いに数ミリメートルだけ離間していることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記放電電極が、500〜1500ミリバール、好ましくは800〜1200ミリバールで可変な圧力で放電をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記材料が、前記電極から0.1〜40mm、好ましくは1〜10mmの距離に配置されていることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記材料が、自動駆動システムにより0.1〜200m/分、好ましくは1〜100m/分の駆動速度で駆動されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記材料は、1〜100回、好ましくは1〜10回の処理回数で処理されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記材料が、
コロナドーズ(D)=発生器の出力(P)/{電極幅×スライド速度(V)}
により定義されるコロナドーズにより処理され、
前記コロナドーズが、前記材料の処理ごとに、最大3000W.分/mの値、好ましくは30〜1000W.分/mの値を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記プラズマが、高電圧用電極を含む、中空電極キャビティを有する、電気的に接地された中空電極を備えるリモートコールドプラズマソースによりもたらされるコールドプラズマであり、そして、前記中空電極を通って、前記プラズマ中で発生した化学種を前記表面へ対流的に搬送するように前記ガスが流れることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記高電圧が、DC〜10MHzの周波数を有するAC電流で、0.2〜20kVまで変化し、
前記ガスが、数百sccm〜数百l/分の流量で供給されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記材料が、紙、織物、革または皮、高分子膜、金属、石、リグノセルロース繊維および木質繊維材料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記方法において、前記材料が、目標表面特性をもつ材料をもたらすように構成された前駆的化学物質により、直接プラズマ相中で、または、蒸気、エアロゾル、コロイダル若しくは分散混合状態で前処理されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記液体、ガス、コロイド分散前駆体が、プラズマ処理操作において事前に使用されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記液体、ガス、コロイド分散前駆体が、前記プラズマ処理操作後に使用されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記材料に希ガスプラズマ相中で仕上げ工程を施す追加的な工程を含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記プラズマが、前記液体、ガス状若しくは蒸気の混合物、またはコロイド分散処理の前に前記表面に作用することを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が、第1のプラズマ処理の後に、前記表面上に少なくとも第2のプラズマ処理を実施する工程を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−519701(P2010−519701A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550779(P2009−550779)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/IT2008/000115
【国際公開番号】WO2008/102408
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509236922)ウニヴェルシタ デグリ ステュディ ディ ミラノ‐ビコッカ (3)
【Fターム(参考)】