説明

核燃料製造用マッフル炉及び核燃料製造用マッフル炉のマッフル破損検知装置

【課題】万が一マッフル等が破損したような場合においても、マッフル内の核物質が放出されことがない核燃料製造用マッフル炉及び核燃料製造用マッフル炉のマッフル破損検知装置を提供する。
【解決手段】炉外殻内圧力P2を不活性ガスにてマッフル内圧力P3及び大気圧P1よりも高い圧力で一定にとなるように不活性ガスの供給及び排気系統を設け、マッフル破損時に生じる不活性ガスの供給増加を流量信号18にてとらえることによりマッフル2の破損検知を可能とするとともに、破損発生後の核物質の周辺環境への放出及び水素爆発の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核燃料製造用のマッフル炉において、核物質の閉じ込めバウンダリを形成するマッフルの破損を設備運転中に検出するマッフル破損検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マッフル、ヒータ、耐熱構造物及び炉外殻からなる核燃料製造用マッフル炉では、マッフル内は大気圧よりも低い圧力を維持しつつ水素を含む還元性の混合ガスを供給及び排気している。また、炉外殻に気密は無く炉外殻内は周辺の大気と同じ雰囲気である。核燃料製造用マッフル炉においては、万が一マッフルにクラック等の破損が生じると、炉外殻内の酸素を含んだ空気が破損口を通してマッフル内に流れ込み、マッフル内にて高温による被熱処理品や部材の急速な酸化が起こったり、既存の水素と酸素とが反応する水素爆発が起こったりする可能性がある。水素爆発が起こると、一時的な圧力上昇に加え被熱処理品等の飛散により排気系統内を閉塞させる等の事象が発生する。この状態では、もはやマッフル内を大気圧よりも低い圧力で維持することは困難となり、マッフル内の被熱処理品に含まれる核物質が炉外殻内へ放出され炉外殻内の核物質による汚染が発生する。また、炉外殻内に核物質が放出されると、炉外殻自体が気密性能を有していないことから核物質は炉外殻外の大気中に放出されマッフル炉の周辺環境を汚染させるおそれがあった。そこで、マッフル炉のクラック等の破損は出来る限り早期に検知する必要がある。
【0003】
このようなマッフル炉の破損を検知する装置の一例としては、例えば、特許文献1(特開平5−248765号公報)に、マッフル内に金属帯を通板しつつ加熱し、マッフル内に、空気を含まないガスを正圧で供給し、マッフルを炉殻で囲み、マッフルを加熱手段で加熱するマッフルを備える加熱炉のマッフル割れ検出装置において、マッフル内のガスには、空気中に含まれていないかまたはごく僅かしか含まれておらず、しかもマッフル外に漏洩しても化合しない検出用ガスを混合しておき、マッフルと炉殻との間に存在する前記検出用ガスを検出する手段を設けたマッフルを備える加熱炉のマッフル割れ検出装置が記載されている。
【特許文献1】特開平5−248765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
核燃料を製造するマッフル炉においては、マッフル炉の破損を出来る限り早期に検知し、設備の運転を停止する等の破損拡大防止策を講じることにより核物質による汚染を防止或いは抑制させることが重要である。核燃料製造用マッフル炉では、マッフルは炉外殻にて覆われていることから視覚的にマッフルの破損を確認することは困難である。従って、従来のマッフル炉では保守点検時の分解解放点検にてマッフルの健全性を確認することはできたが、運転中のマッフルの破損を検知することはできなかった。
【0005】
ところで、特許文献1に記載のマッフル炉及びマッフル割れ検出装置は、核燃料を製造することが想定されていない。すなわち、マッフル炉内は大気圧より高い気圧とされているし、また、マッフル割れ検出装置は、マッフル炉内の雰囲気が多少空気中に漏洩することを前提としたマッフル割れ検出装置となっている。これに対して、核燃料を製造するためのマッフル炉は、核物質を閉じこめるためにマッフル炉内は大気圧よりも低い圧力を維持されるのが通例であり、また万が一マッフルにクラックが発生したよう場合でも、マッフル炉内の雰囲気が外部に漏洩しないような措置をとっておかねばならない。マッフルは、核燃料製造用マッフル炉において核物質の閉じ込め性能が最も重要とされる部分であるとされている。したがって、特許文献1に記載のような従来のマッフル炉及びマッフル割れ検出装置をただ単純に核燃料製造用マッフル炉に適用することはできない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
マッフル、ヒータ、耐熱構造物及び炉外殻からなる核燃料製造用マッフル炉においてマッフル炉運転中にマッフルの破損を検知する方法としては、正常時にマッフル内に存在しないガスを炉外殻内に標準ガスとして封入しておき、マッフル破損時に生じるマッフル内のガス組成の変化をガスサンプリング及び分析によりとらえて検知する方法と、マッフル破損時に破損口により生じるガス流量バランスの変化或いはガス圧力バランスの変化等のガス流動に関する状態量の変化をとらえて検知する方法とが考えられる。通常、核燃料製造用マッフル炉では被熱処理品を加熱すると被熱処理品に含まれる有機物質が熱分解し熱分解生成ガスがマッフル内に放出される。熱分解生成ガスはマッフル炉の排気系統或いはサンプリング系統に導かれると次第に冷却され系統内面への凝着をもたらす。このため、マッフルの破損検知方法として前記ガス組成の変化をとらえる方法ではサンプリング系統内の狭い流路に熱分解生成ガスが凝着し流路の閉塞が発生し分析が行えなくなるという問題がある。本発明では、前記ガス流動に関する状態量の変化をとらえる方法に関するものであり、熱分解生成ガスの凝着という事象に影響されないようにする。
【0007】
また、マッフルが破損した場合、炉外殻内の不活性ガスの圧力は破損口発生により低下しマッフル内の圧力に近づきマッフル内の核物質が炉外殻内に放出される可能性が高くなる。本発明は、炉外殻内の不活性ガスの圧力をマッフル内の圧力よりも高い圧力で一定となるように圧力調節弁を用いた不活性ガス供給及び排気系統を構成し、不活性ガスの供給流量の変化をとらえマッフルの破損を検知するものであり、マッフルの破損が生じた場合にもマッフル内と炉外殻内の圧力差が維持されマッフル内の核物質が炉外殻内に放出されないようにしている。
【0008】
また、水素は酸素との混合が一定の配分以上になると発火温度で水素爆発を生じる。マッフル内には水素が既存することから、マッフル内への酸素流入に対する防止策が重要である。本発明は、炉外殻内を不活性ガスで満たし、更に炉外殻内の不活性ガスを大気圧よりも高い圧力で一定となるように圧力調整弁を用いた不活性ガス供給及び排気系統を構成することにより常時、炉外殻外の酸素を含んだ空気が炉外殻内に入り込まないように制御するものであり、マッフル破損時に酸素を含んだ空気の破損口からマッフル内への入り込みによる水素爆発を防止できるようにしている。
【0009】
また、炉外殻は、核物質の閉じ込めバウンダリではないため気密性能を要求されていないが、前記の通り炉外殻内を不活性ガスで満たし大気圧及びマッフル内圧力よりも高い圧力で一定に保つことにより安全性を維持しつつ破損を検知するため、圧力バウンダリとしての役割が必要である。従って、炉外殻自体の圧力バウンダリとしての健全性も重要である。本発明は、前記の通り炉外殻内の不活性ガスの圧力が一定となるように圧力調節弁を用いた不活性ガス供給及び排気系統を構成し、不活性ガスの供給流量の変化をとらえ破損を検知するものであるが、この方法によれば炉外殻の破損をマッフルの破損と同時に検知できることから、炉外殻の健全性も監視することが可能となるようにしている。
【0010】
本発明は、以上のような着想に基づきなされたものであり、前記「発明が解決しようとする課題」を解決するため以下のように構成されるものである。すなわち、請求項1に係る発明は、核物質の閉じ込め性能を有した耐熱性金属材料製のトンネル状のマッフルであって、内部を大気圧より低いガスで満たし、核燃料用ペレット等の被熱処理品を搬送しながら熱処理するマッフルと、前記マッフルの外部に配置し、被熱処理品を加熱するためのヒータと、耐熱部材及び断熱部材から成り、前記マッフルの外部にあって前記マッフルを囲むように配置した耐熱構造物と、前記耐熱構造物の外側を覆い、前記マッフルと大気空間との間を隔離して炉外殻内空間を形成する金属製の炉外殻とを備える核燃料製造用マッフル炉において、前記炉外殻内空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給弁、流量計、圧力調節弁等から成る不活性ガス供給手段を設けるとともに、前記炉外殻内空間に供給した不活性ガスを排気装置に排気する排気弁からなる不活性ガス排気手段を設け、前記炉外殻内空間の圧力を圧力調整弁によって大気圧よりも高い状態に設定、維持することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、核物質の閉じ込め性能を有した耐熱性金属材料製のトンネル状のマッフルであって、内部を大気圧より低いガスで満たし、核燃料用ペレット等の被熱処理品を搬送しながら熱処理するマッフルと、前記マッフルの外部に配置し、被熱処理品を加熱するためのヒータと、耐熱部材及び断熱部材から成り、前記マッフルの外部にあって前記マッフルを囲むように配置した耐熱構造物と、前記耐熱構造物の外側を覆い、前記マッフルと大気空間との間を隔離して隔離した炉外殻内空間を形成する金属製の炉外殻と、前記炉外殻内空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給弁、流量計、圧力調節弁等から成る不活性ガス供給手段を設けるとともに、前記炉外殻内空間に供給した不活性ガスを排気装置に排気する排気弁からなる不活性ガス排気手段を設け、前記炉外殻内空間の圧力を圧力調整弁によって大気圧よりも高い状態に設定、維持する核燃料製造用マッフル炉のマッフル破損検知装置において、前記不活性ガス供給手段による不活性ガス供給流量を所定の不活性ガス供給流量と比較し、監視する不活性ガス供給流量監視手段を設け、前記不活性ガス供給流量が前記所定の不活性ガス供給流量を超える時、警報ならびに前記マッフル炉の自動運転停止等の処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施の形態によれば、(炉外殻内の圧力)>(大気圧)>(マッフル炉内の圧力)とすることにより、トンネル状のマッフルには、常に外方向より内向きの力が加わり、常に安定した応力の下でのマッフルの使用となり、応力的にも安定した状態の核燃料製造用マッフル炉を提供することができる。
【0013】
また、本発明の実施の形態によれば、マッフルの破損が生じた場合にもマッフル内と炉外殻内空間の圧力差が、圧力調節弁を備えた不活性ガス供給装置によって維持されるので、マッフル内の核物質が炉外殻内に放出されことがない。
【0014】
また、本発明の実施の形態によれば、(炉外殻内の圧力)>(大気圧)>(マッフル炉内の圧力)を維持することによって、核燃料製造用マッフル炉において、運転中にマッフル・炉外殻が破損した場合、これを検知するマッフル破損検知する仕組み(マッフル破損検知装置)を提供することが可能となり、このマッフル破損検知装置により、万が一マッフル・炉外殻に破損が発生した場合でも、マッフル内への酸素流入による炉部材の酸化や水素爆発の発生を防止することで、核物質の炉外殻内及び周辺環境への放出を防止できマッフル炉の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置を備えた核燃料製造用マッフル炉の構成例を示す図である。図2は、図1の本発明の実施の形態に係る核燃料製造用マッフル炉のA断面を示す図である。図1及び図2において、1は被熱処理品、2はマッフル、3は電気ヒータ、4は耐熱構造物、5は炉外殻、6は炉排気管、7は不活性ガス供給装置、8はガス供給弁、9は流量計、10は圧力調節弁、11はガス供給弁、12は流量計、13はガス供給弁、14は圧力計、15はガス排気流量調整弁、16はガス排気バイパス弁、17は排気装置、18は流量信号、19は圧力信号をそれぞれ示している。
【0016】
核燃料製造用マッフル炉は、図1に示す主としてマッフル2、電気ヒータ3、耐熱構造物4、炉外殻5及び炉排気管6等にて構成されている。マッフル2は核物質の閉じ込め性能を有する耐熱性金属材料製のトンネル形状のものであり、内部を大気圧より低いガスで満たされており、核燃料用ペレット等の被熱処理品を搬送しながら熱処理する。核燃料用ペレット等の被熱処理品1は被熱処理品の流れF1のように搬送され、マッフル内は還元性ガスとしてアルゴンと水素の混合ガスが還元性ガスの流れF2のように流されるものとする。電気ヒータ3は、図1及び図2に示すように、マッフル2の外部に配置されており、核燃料用ペレット等の被熱処理品を加熱する。図示するように、耐熱構造物4は、耐熱部材及び断熱部材から成り、マッフル2の外部にあってマッフル2を囲むように配置されている。炉外殻5は、この耐熱構造物4の外側を覆い、マッフル2と大気空間との間を隔離して、マッフル2外で炉外殻5内の炉外殻内空間を形成する金属製の殻である。また、マッフル2内の圧力P3(例:−200Pa)は大気圧P1よりも低い圧力で管理されているものとする。ここで、図示していないが、被熱処理品1のマッフル2への搬入口及びマッフル2からの搬出口には、例えば、二重扉式の前室(真空ガス置換室)等を配置し、マッフル2内の圧力P3ならびに雰囲気を維持する機構を有している。
【0017】
核燃料製造用マッフル炉は、前記炉外殻内空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給弁8、11、13、流量計9、圧力調節弁10等から成る不活性ガス供給手段が設けるとともに、前記炉外殻内空間に供給した不活性ガスを排気装置17に排気する排気弁15、16からなる不活性ガス排気手段が設けられる。不活性ガス供給手段による不活性ガス供給流量、すなわち流量計9が示す量は、不図示の不活性ガス供給流量監視手段によって監視され、後述するように、もし、不活性ガス供給流量監視手段によって、流量計9が示す量が所定の不活性ガス供給流量を超える時、警報ならびにマッフル炉の自動運転停止等の処理を行うように設定されている。
【0018】
本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置は、不活性ガス供給装置7と炉外殻5の間の不活性ガスを供給する系統(F3)であるガス供給弁8、11、13、流量計9、12及び圧力調節弁10、及び炉外殻5に取り付けられた圧力計14、及び、炉外殻5と排気装置17の間に炉外殻内のガスを排気する系統(F3)であるガス排気弁15、16にて構成されている。なお、不活性ガス供給装置7によって、マッフル2外で炉外殻5内の炉外殻内空間に供給する不活性ガスとしては、例えば窒素ガスが用いられる。
【0019】
ここで、圧力調節弁10は、上記の炉外殻内の圧力P2を大気圧P1よりも高い圧力(例:400Pa)で一定に保つように設定する。圧力調整弁10の制御方式は、図1では応答性の良い自圧式減圧弁を採用した場合の例にて示すが、状況に応じて圧力計14からの圧力信号19を用いたフィードバック制御を採用しても良い。
【0020】
本発明の実施の形態に係るマッフル炉によれば、上記のように(炉外殻内の圧力P2)>(大気圧P1)>(マッフル炉内の圧力P3)とされていることにより、トンネル状のマッフル2には、常に外方向より内向きの力が加わり、常に安定した応力の下でのマッフル2の使用となり、応力的にマッフル2が安定した状態で維持できることになる。また、いわゆる拡張方向の力が働かず、常に内向きの力が働き、マッフル2の材料の疲弊を招くようなことがない。
【0021】
ガス供給弁11、流量計12、ガス排気バイパス弁16は、マッフル炉運転前に実施する炉外殻5内の空気から不活性ガスへの置換が短時間で出来るように、高流量の通気を可能するために構成したものであり、マッフル炉運転中はガス供給弁11及びガス排気バイパス弁16は閉じられて、ガス供給弁8、流量計9、圧力調節弁10、ガス排気流量調整弁15からなる系統で不活性ガスが供給・排気される。
【0022】
以上のように構成された本実施形態のマッフル破損検知装置を備えた核燃料製造用マッフル炉において、昇温開始から所定の熱処理温度での熱処理運転終了迄の間に、マッフル2或いは炉外殻5にクラック等の破損が発生した場合、マッフル2外で炉外殻5内の炉外殻内空間の圧力P2はマッフル2内の圧力P3及び炉外殻5外の大気圧P1よりも高いため、炉外殻内空間に供給される不活性ガスは破損口を通してマッフル2内或いは大気中に流れ出る。
【0023】
この結果、炉外殻内の圧力P2を一定に保つように(流出を補充するように)圧力調節弁10が制御動作し、不活性ガス供給装置7からのガス供給流量が増加し、流量計9により検出・出力される流量信号18も増加する。本実施形態のマッフル破損検知装置においては、流量信号18を常に監視しておき、この流量信号18を、マッフル2又は炉外殻5の破損と判定される流量値信号と比較し、これを超えたと判定すると、破損が発生したと判定するものである。このように
本実施形態のマッフル破損検知装置によれば、マッフル2又は炉外殻5の破損が検知することができるので、破損発生後の核物質の周辺環境への放出及び水素爆発の発生を防止できる。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置における不活性ガス供給流量の挙動と破損検知の概念を示す図である。図3のグラフにおいて、横軸は時刻、縦軸は炉外殻内に供給される不活性ガスの流量を示している。また、図中、Q1はマッフル2・炉外殻5健全時の不活性ガス供給流量、Q2はマッフル2・炉外殻5破損時の不活性ガス供給流量、Q3はマッフル2・炉外殻5破損検出不活性ガス供給流量設定値をそれぞれ示している。
【0025】
核燃料製造用マッフル炉における平常状態の熱処理運転中には、流量計9によって検出・出力される流量信号18の挙動はQ1に示されるものとなる。Q3は、本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置がマッフル2又は炉外殻5に破損が生じたと判定する閾値である。ここで、もし万が一マッフル2又は炉外殻5に破損が生じ、圧力調節弁10が制御動作し、前述するように不活性ガス供給装置7からのガス供給流量が増加すると、流量計9により検出・出力される流量信号18はQ2に示される挙動となり、閾値Q3を超えることとなる。流量が閾値Q3を超えたと判定されると、本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置では、例えば、警報を発したり、或いは、マッフル炉の自動運転停止等の処理を行ったりするように設定される。
【0026】
マッフル炉運転中の破損としては高温部となるマッフル2部で最も発生し易いと考えられるが、炉外殻側の破損も想定する必要がある。従って、前記方法により破損を検知した場合、検知後に破損部位がマッフル2側と炉外殻5側の何れに生じているかを判定出来ることが必要である。このような判定には、まず、ガス供給弁13及びガス排気弁15、16を閉じ炉外殻を隔離する。この状態で炉外殻5内の圧力P2の低下を監視し、圧力P2が大気圧P1と平衡すれば炉外殻5側の破損であり、圧力P2が大気圧P1よりも少しでも低下すればマッフル2側の破損であると判断することができる。
【0027】
以上本発明の実施の形態によれば、(炉外殻内の圧力P2)>(大気圧P1)>(マッフル炉内の圧力P3)とすることにより、トンネル状のマッフル2には、常に外方向より内向きの力が加わり、常に安定した応力の下でのマッフル2の使用となり、応力的にも安定した状態の核燃料製造用マッフル炉を提供することができる。
【0028】
また、本発明の実施の形態によれば、マッフル2の破損が生じた場合にもマッフル2内と炉外殻内空間の圧力差が、圧力調節弁10を備えた不活性ガス供給装置7によって維持されるので、マッフル2内の核物質が炉外殻内に放出されことがない。
【0029】
また、本発明の実施の形態によれば、(炉外殻内の圧力P2)>(大気圧P1)>(マッフル炉内の圧力P3)を維持することによって、核燃料製造用マッフル炉において、運転中にマッフル2・炉外殻5が破損した場合、これを検知するマッフル破損検知する仕組み(マッフル破損検知装置)を提供することが可能となり、このマッフル破損検知装置により、万が一マッフル2・炉外殻5に破損が発生した場合でも、マッフル内への酸素流入による炉部材の酸化や水素爆発の発生を防止することで、核物質の炉外殻内及び周辺環境への放出を防止できマッフル炉の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置を備えた核燃料製造用マッフル炉の構成例を示す図である。
【図2】図1の本発明の実施の形態に係る核燃料製造用マッフル炉のA断面を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るマッフル破損検知装置における不活性ガス供給流量の挙動と破損検知の概念を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1・・・被熱処理品、2・・・マッフル、3・・・電気ヒータ、4・・・耐熱構造物、5・・・炉外殻、6・・・炉排気管、7・・・不活性ガス供給装置、8・・・ガス供給弁、9・・・流量計、10・・・圧力調節弁、11・・・ガス供給弁、12・・・流量計、13・・・ガス供給弁、14・・・圧力計、15・・・ガス排気流量調整弁、16・・・ガス排気バイパス弁、17・・・排気装置、18・・・流量信号、19・・・圧力信号、P1・・・大気圧、P2・・・炉外殻内圧力、P3・・・マッフル内圧力、F1・・・被熱処理品の流れ、F2・・・還元性ガスの流れ、F3・・・不活性ガスの流れ、Q1・・・マッフル2・炉外殻5健全時の不活性ガス供給流量、Q2・・・マッフル2・炉外殻5破損時の不活性ガス供給流量、Q3・・・マッフル2・炉外殻5破損検出不活性ガス供給流量設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核物質の閉じ込め性能を有した耐熱性金属材料製のトンネル状のマッフルであって、内部を大気圧より低いガスで満たし、核燃料用ペレット等の被熱処理品を搬送しながら熱処理するマッフルと、前記マッフルの外部に配置し、被熱処理品を加熱するためのヒータと、耐熱部材及び断熱部材から成り、前記マッフルの外部にあって前記マッフルを囲むように配置した耐熱構造物と、前記耐熱構造物の外側を覆い、前記マッフルと大気空間との間を隔離して炉外殻内空間を形成する金属製の炉外殻とを備える核燃料製造用マッフル炉において、前記炉外殻内空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給弁、流量計、圧力調節弁等から成る不活性ガス供給手段を設けるとともに、前記炉外殻内空間に供給した不活性ガスを排気装置に排気する排気弁からなる不活性ガス排気手段を設け、前記炉外殻内空間の圧力を圧力調整弁によって大気圧よりも高い状態に設定、維持することを特徴とする核燃料製造用マッフル炉。
【請求項2】
核物質の閉じ込め性能を有した耐熱性金属材料製のトンネル状のマッフルであって、内部を大気圧より低いガスで満たし、核燃料用ペレット等の被熱処理品を搬送しながら熱処理するマッフルと、前記マッフルの外部に配置し、被熱処理品を加熱するためのヒータと、耐熱部材及び断熱部材から成り、前記マッフルの外部にあって前記マッフルを囲むように配置した耐熱構造物と、前記耐熱構造物の外側を覆い、前記マッフルと大気空間との間を隔離して隔離した炉外殻内空間を形成する金属製の炉外殻と、前記炉外殻内空間に窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給弁、流量計、圧力調節弁等から成る不活性ガス供給手段を設けるとともに、前記炉外殻内空間に供給した不活性ガスを排気装置に排気する排気弁からなる不活性ガス排気手段を設け、前記炉外殻内空間の圧力を圧力調整弁によって大気圧よりも高い状態に設定、維持する核燃料製造用マッフル炉のマッフル破損検知装置において、前記不活性ガス供給手段による不活性ガス供給流量を所定の不活性ガス供給流量と比較し、監視する不活性ガス供給流量監視手段を設け、前記不活性ガス供給流量が前記所定の不活性ガス供給流量を超える時、警報ならびに前記マッフル炉の自動運転停止等の処理を行うことを特徴とする核燃料製造用マッフル炉のマッフル破損検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−333277(P2007−333277A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164476(P2006−164476)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【出願人】(000157072)関東冶金工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】